説明

導電性ペースト

【課題】優れた耐マイグレーション性と高固形分濃度化を達成することのできる導電性ペーストを提供する。
【解決手段】バインダー樹脂と導電性フィラーを含む導電性ペーストにおいて、導電性フィラーが6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の金属粉(A)であることを特徴とする導電性ペーストである。また、バインダー樹脂と導電性フィラーを含む導電性ペーストにおいて、導電性フィラーの一部又は全部が、X線回折反射法における回折角38.05°の位置に現れるピークの半値幅が0.31以下の銀粉(B)であることを特徴とする導電性ペーストである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ペーストに関するものであり、さらに詳しくは電気回路用あるいは導電性を有する各種電子部品の素子、配線基板、金属などへの導電性塗布剤や導電性接着剤として用いることの出来る導電性ペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電子部品の素子を接続したり、配線基板を組み立てたりする際に用いる導電性を有する接着剤としては、導電性、高信頼性の観点からSn−Pb共晶半田が広く使用されてきた。
近年においては、電気電子機器の軽薄短小化や高機能化に伴い、接続端子の幅や間隔を狭くするファインピッチ化することや接続端子を数多く配線することが要求されるようになってきた。しかしながら、ファインピッチ化された接続端子では半田付け工程においてブリッジ現象が発生しやすくなる技術的問題がある。さらに、半田のリフロー温度は高温であることから、電子部品や部材などがダメージを受ける可能性があり、また環境安全性の観点より半田に含まれる鉛も問題として採り上げられている。
【0003】
上記接着剤を鉛フリー化する方法としては、鉛フリー半田を用いることや導電性ペーストを用いることなどが知られている。しかしながら鉛フリー半田はSn−Pb半田よりもさらに融点が高く、使用できる部材がさらに限定される。
【0004】
一方、導電性ペーストは半田より加工温度が低く、そこに含まれるバインダー樹脂の影響により接合部が柔軟になり、接合部にクラックが生じにくいというメリットがある。しかし、従来知られた導電性ペーストはマイグレーション性に劣るという課題があった。マイグレーションとは、回路に電圧を印加した際に、水分の影響により導電性金属フィラーがイオン化して析出し、それがデンドライト状に成長して回路間を短絡してしまう現象である。日本国公開特許公報平1−159906号では導電性フィラーとしてフレーク状の形状である銀粉を分散させた導電ペーストと、樹枝状(デンドライト状)の形状である銀粉を分散させた導電性ペーストが開示されているが、いずれも最近の高いレベルで要求される耐マイグレーション性を満足するものではない。従来のマイグレーション対策として、別途コーティングや封止により防水保護層を形成したり、グラファイトやカーボンブラックなどの非金属性導電粉を用いた導電性ペーストで防水保護層を形成したりする方法などが考えられているが、近年のさらなるファインパターン化、電子部品、素子の小型化の要求により対応が困難になってきた。
【0005】
また導電性ペーストは、ファインパターンによる回路の細線化により回路抵抗が上昇することを防止するために厚膜印刷を可能にすることや、導電接着剤用途に用いるときの体積収縮を小さくすることが求められているために、溶剤量を少なくして固形分濃度を高くすることを要求されている。一般に導電ペーストに使用されている導電性金属フィラーはフレーク状粉末、球状粉末、樹枝状(デンドライト状)粉末などが知られているが、いずれも耐マイグレーション性に劣ると共にペースト粘度が高くなりがちであり、導電性ペーストの固形分濃度を高くすることが難しい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
[図1]耐マイグレーション評価用のテストパターンである。1はPETフィルム、2はスクリーン印刷パターンを示す。
[図2]6個以上の平面からなる形状を有する多面体状で、X線回折反射法における回折角38.05°の位置に現れるピークの半値幅が0.31以下の銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
[図3]多面体状の形状を有する銀粉を粉砕して板状化したX線回折反射法における回折角38.05°の位置に現れるピークの半値幅が0.31以下の銀粉の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた耐マイグレーション性を有し、固形分濃度を高くすることが可能である導電性ペーストを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の発明に到達した。すなわち本発明は以下の導電性ペーストである。
【0009】
第1の発明は、バインダー樹脂と導電性フィラーを含む導電性ペーストにおいて、導電性フィラーが6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の金属粉(A)であることを特徴とする導電性ペーストである。
【0010】
第2の発明は、金属粉(A)が、銀粉であることを特徴とする第1の発明に記載の導電性ペーストである。
【0011】
第3の発明は、バインダー樹脂が、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする第1の発明に記載の導電性ペーストである。
【0012】
第4の発明は、バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする第1の発明に記載の導電性ペーストである。
【0013】
第5の発明は、バインダー樹脂が、エポキシ樹脂、並びにポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする第1の発明に記載の導電性ペーストである。
【0014】
第6の発明は、バインダー樹脂と導電性フィラーを含む導電性ペーストにおいて、導電性フィラーの一部又は全部が、X線回折反射法における回折角38.05°の位置に現れるピークの半値幅が0.31以下の銀粉(B)であることを特徴とする導電性ペーストである。
【0015】
第7の発明は、バインダー樹脂が、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする第6の発明に記載の導電性ペーストである。
【0016】
第8の発明は、バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする第6の発明に記載の導電性ペーストである。
【0017】
第9の発明は、バインダー樹脂が、エポキシ樹脂、並びにポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする第6の発明に記載の導電性ペーストである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の導電性ペーストは、バインダー樹脂と、形状が6個以上の平面からなる多面体状の金属粉(A)を含むことにより、またはX線回折反射法における回折角38.05°の位置に現れるピークの半値幅が0.31以下の銀粉(B)を含むことにより、優れた耐マイグレーション性、耐熱性、接着性を有し、また高い固形分濃度にもかかわらず低粘度化できるので優れた作業性を実現した。本発明の導電性ペーストは、リジット基板、ポリイミドフィルム、PETフィルムなどのフレキシブル基板への印刷回路用としての使用はもちろんのこと、各種電子部品の導電性接着剤、導電性塗布剤、スルーホール用導電性ペースト、ビルドアップ多層基板用導電性ペーストとしての使用に好適であり、さらには高周波領域での等価直列抵抗に優れるため固体電解コンデンサ用としての使用に特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に用いられる導電性フィラーとしては、形状が6個以上の平面からなる多面体状の金属粉(A)を含むことが必要である。一般に金属粉は生成時に微細な金属結晶が多数集まった多結晶体であるが、本発明に用いる6個以上の平面からなる多面体状の形状を有する金属粉は核形成の後、結晶の成長過程を制御することで高結晶化されており、単結晶体又は単結晶体に近似したものである。一般に微粒子の形成過程においては、熱力学的な安定のために体積に対する表面積をできるだけ小さくする作用が働き、微粒子の形状は多面体状になる。さらに、多面体状の金属粉は高結晶化されていることから、表面が平滑なので比表面積が小さくなる。
【0020】
6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の金属粉(A)としては銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉などの貴金属粉、銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、真鍮粉、ステンレス粉などの卑金属粉が挙げられる。種類の異なる金属粉を混ぜて使用することもできる。6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の金属粉は単位体積当りの表面積が小さいことから水分との接触を小さくすることができるので耐マイグレーション性が良好となる。同様に表面積が小さいことから分散性が良好となり、導電性ペーストの固形分濃度を高くすることが可能である。これら金属粉のうち、コストや信頼性の観点から銀粉が最も好ましい。6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の金属粉は、アスペクト比の高い2次元的な六角板状、八角板状などの多角板状でもよい。また、6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の金属粉をボールミル、ビーズミル、アトライターなど公知の装置を用いて粉砕して板状化してもよい。これより得られた金属粉は同じ平均粒子径の金属粉と比較した場合、従来のフレーク粉よりも比表面積が極めて小さく、また表面に凹凸がなく平滑である。
【0021】
本発明としては、導電ペーストに用いられる導電性フィラーの一部又は全部に、X線回折反射法における回折角(2θ)38.05°の位置に現れるピークの半値幅が0.31以下の銀粉(B)を含む態様もある。ピークの半値幅が0.31以下の銀粉は、高結晶化されており、単結晶体又は単結晶体に近似したものであるからである。この半値幅の上限は0.26以下がより好ましい。下限は特に定めるものではないが0.05以上である。
【0022】
尚、本発明で言う「X線回折反射法」とは以下に示すものである。測定は広角X線回折反射法により行う。X線発生器としてはリガク製ガイガーフレックスを用い、銅対電極のX線管球を出力40kV、38mAに設定して、X線(CuKα線)を発生させる。光学系は広角反射法を用い、カウンターの前にモノクロメーターを設置してX線を単色化する。スリットは発散スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット0.3mmに設定し、走査スピードは2°/分(データサンプリング取り込み間隔0.01°)でX線強度を測定する。ここで試料の銀粉はガラス製のサンプル板につけて測定に供するものとする。得られたデータ(X線回折のピーク強度)はリガク製リントシステムに取り込み解析して、半値幅を決定する。
【0023】
X線回折反射法における回折角38.05°の位置に現れるピークの半値幅が0.31以下の銀粉(B)としては、6個以上の平面からなる多面体状の銀粉、アスペクト比の高い二次元的な六角板状、八角板状などの多角板状銀粉などが挙げられる。
【0024】
本発明に用いる金属粉(A)あるいは銀粉(B)の平均粒子径(50%D)は、接着性、導電性の観点から0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上である。分散性、印刷性の観点より上限は20μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下である。
【0025】
本発明の導電性ペーストには、金属粉(A)あるいは銀粉(B)以外の導電性フィラーを併用することも出来る。その他の導電性フィラーとしては、特性を低下しない範囲で公知の導電性フィラーを用いることができる。例えば、フレーク状(リン片状)、球状、粟状、樹枝状(デンドライト状)の金属粉、球状の一次粒子が三次元状に凝集した金属粉、銀などの貴金属でめっきあるいは合金化した金属粉、樹脂ビーズに金属でコーティングした導電粉、カーボンブラック、グラファイトのようなカーボン粉などが挙げられる。また、必要により、シリカ、タルク、マイカ、硫酸バリウム、酸化インジウムなどの無機フィラーを少量配合しても良い。これらの内、接着性の面より、金属粉(A)あるいは銀粉(B)とフレーク状の金属粉を併用することが好ましく、さらに信頼性、接着性の観点より金属粉(A)あるいは銀粉(B)とフレーク状の銀粉を併用することが最も好ましい。また、導電性の観点より導電性カーボンブラックを併用することも好ましい。
【0026】
金属粉(A)、銀粉(B)は導電性フィラーの全量に対して耐マイグレーション性を良好にし、固形分濃度を高めるためには、15質量%以上配合することが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。上限は特に制限はなく、100質量%でもかまわない。
【0027】
導電性フィラーとバインダー樹脂の配合比は、導電性フィラーとバインダー樹脂の合計量を100質量%としたとき、導電性フィラーの下限は導電性の観点より75質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上である。上限は接着性、インキの粘度の面より95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下である。
【0028】
本発明の導電性ペーストに用いるバインダー樹脂の種類としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂などの各種変性ポリエステル樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類などが挙げられる。バインダー樹脂は、耐熱性の要求されるコンデンサ素子電極などの塗布剤として用いる場合、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。また、耐熱性を向上し、固形分濃度を高くすることができることから、導電性接着剤やスルーホール用途などに用いる場合、バインダー樹脂としてはエポキシ樹脂を使用することが好ましい。より好ましくはエポキシ樹脂とフェノール樹脂の併用である。さらに接着性の観点より末端にカルボン酸を有するブタジエンアクリロニトリル共重合体などの柔軟成分を適量配合することが特に好ましい。一般に耐熱性とは、熱履歴前後の接着力などの物性変化を意味するが、ここでいう耐熱性とは、これら以外に導電性ペーストで導体と導体を接着した後の熱履歴前後の塗膜抵抗値の変化が少ないことも含む。チップ部品素子などへの導電性ペーストの塗布、チップ電子部品の基板への搭載など用途においては、導電ペーストに求められる特に重要な特性として、接着後の塗膜抵抗値の変化の少ないことが挙げられる。本発明の導電性ペーストは、初期の導電性に優れると共に、熱履歴後の抵抗値の変化が特に少ない。
【0029】
本発明の導電性ペーストにおいて、バインダー樹脂にはエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製NC−3000などのビフェノール骨格を含有したノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製CER−3000Lなどのビフェノール骨格を含有したエポキシ樹脂、高分子量のフェノキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、アクリルウレタン変性エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。耐熱性、硬化性の面より、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール骨格を含有したノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール骨格を含有したエポキシ樹脂が好ましい。さらに好ましくは、ノボラック型エポキシ樹脂である。
【0030】
また、エポキシ樹脂と反応し得る樹脂又は硬化剤を配合してもよい。これらの化合物としてはノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アルキルエーテル化アミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、酸無水物などが挙げられる。硬化性、耐熱性の観点よりノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
【0031】
接着性、可撓性を向上させる目的でバインダー樹脂としてポリエステル樹脂を使用してもよい。ポリエステル樹脂は公知の方法により常圧または減圧下で重縮合して得られたものを使用できる。
【0032】
ポリエステル樹脂に共重合するジカルボン酸は、耐熱性、接着力、耐久性の観点より、全酸成分中、芳香族ジカルボン酸を50モル%以上共重合することが望ましく、より好ましくは60モル%以上、最も好ましくは70モル%以上である。上限は特に制限はなく、100モル%でも良い。芳香族ジカルボン酸が50モル%未満では、耐熱性、接着力、耐久性などが低下する場合がある。
【0033】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。この内、耐熱性、接着性などの特性と溶剤溶解性より、テレフタル酸とイソフタル酸を併用することが好ましい。
【0034】
その他のジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、炭素数12〜28の二塩基酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールA、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールS、ダイマー酸、水素添加ダイマー酸、水素添加ナフタレンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられ、芳香族ジカルボン酸と共重合することができる。
【0035】
この内、耐久性の観点より、脂肪族ジカルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸などの主鎖の炭素数が9以上のものが好ましい。また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸も好ましい。
【0036】
ポリエステル樹脂に用いられるアルキレングリコールは、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオールなどが挙げられる。また、発明の内容を損なわない範囲でトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリンなどの多価ポリオールを併用してもよい。
このうち、耐久性の観点より、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、主鎖の炭素数5〜10の長鎖脂肪族ジオールが特に好ましく、全グリコール成分中20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上である。上限は特に定めるものではなく100モル%でも良い。尚、本明細書で言う組成比はH−NMR分析により決定することが出来る。
【0037】
ポリエステル樹脂の好ましい数平均分子量は、下限が2,000以上であり、より好ましくは3,000以上、最も好ましくは4,000以上である。上限は特に限定しないが、本発明の導電性ペーストを導電性接着剤として使用する場合には、溶剤の影響を少なくするために固形分濃度を高くすることが好ましく、そのためには15,000以下が好ましく、より好ましくは10,000以下である。数平均分子量が2,000未満では、耐屈曲性、耐ヒートサイクル性が低下する傾向にある。
【0038】
また、ポリエステル樹脂を重合後、180〜230℃でε−カプロラクトンなどの環状エステルを開環付加反応させてブロック共重合ポリエステル樹脂としてもよい。
【0039】
また、発明の内容を損なわない範囲で、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価のカルボン酸を共重合して分岐構造を導入したり、フマール酸などの不飽和ジカルボン酸、さらに、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩などのスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸を併用したりしてもよい。
【0040】
本発明に用いるポリエステル樹脂は変性して使用することができる。変性方法としては、ウレタン変性、エポキシ変性、アクリル変性などが挙げられる。
【0041】
ポリエステル樹脂をウレタン変性する場合は上述のポリエステルポリオールと必要に応じて低分子ポリオールをイソシアネート化合物と反応させて合成したものを使用できる。低分子ジオールとしては分子量500未満のポリオールを用いることが好ましく、例えばネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸エステル、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの公知のポリオールが挙げられる。さらに、ジメチロールプロピオン酸のようなカルボキシル基含有ポリオールを低分子ポリオールとして使用することもできる。
【0042】
ウレタン変性に使用するジイソシアネート化合物は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0043】
ウレタン変性ポリエステル樹脂のウレタン基濃度は密着性、耐屈曲性の面から500〜4000当量/10gが好ましい。数平均分子量は耐屈曲性およびペースト粘度の観点から8,000〜20,000が好ましい。
【0044】
エポキシ変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂と無水トリメリット酸、無水フタル酸などの酸無水物を反応させて、分子末端をカルボキシル基に変換した後、例えば溶液中にて、トリフェニルホスフィンなどの触媒の存在下でエポキシ樹脂と反応させて製造できる。
【0045】
これらの変性ポリエステル樹脂の内、耐熱性の面よりエポキシ変性が好ましい。
【0046】
バインダー樹脂としては、接着性の観点からエポキシ樹脂とポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂を併用することが好ましい。エポキシ樹脂とポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂の好ましい配合比として、(エポキシ樹脂の質量)/{(エポキシ樹脂の質量)+(ポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂の質量)}は0.05以上が好ましく、より好ましくは0.1以上である。上限は、0.70以下が好ましく、より好ましくは0.60以下である。0.70より大きいと耐屈曲性の低下や接着界面でのクラックが生じやすくなる可能性があり、0.05より小さいと硬化性が悪化する可能性がある。
【0047】
本発明の導電性ペーストにはイミダゾール系化合物、酸無水物、トリフェニルホスフィンなどの硬化触媒を配合することが出来る。この内、硬化性が良好で腐食性が少ないことからイミダゾール系化合物が特に好ましい。イミダゾール系化合物の例としては、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾリウムトリメリテート、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。この内、硬化性と貯蔵安定性の面より、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物が好ましい。
【0048】
本発明の導電ペーストに使用される溶剤はその種類に制限はなく、エステル系、ケトン系、エーテルエステル系、塩素系、アルコール系、エーテル系、炭化水素系などが挙げられる。このうち、作業性の面より沸点140℃以上の溶剤が好ましい。そのような溶剤としては、エチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、イソホロン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0049】
本発明の導電性ペーストを導電性接着剤として使用する場合は、溶剤の悪影響を低減するために、固形分濃度は75%以上にすることが好ましく、より好ましくは80%以上である。この場合、ブルックフィールドBH型回転粘度計を用いた、20rpm、25℃の測定条件での導電性ペーストの粘度は、1000dPa・s以下が好ましく、より好ましくは800dPa・s以下である。下限は、100dPa・s以上が好ましく、より好ましくは200dPa・s以上である。この範囲を超えると導電ペーストのスクリーン印刷性やディスペンサーを用いたときの作業性が悪化する傾向にある。
【0050】
また、導電ペーストの揺変度(チキソ性)も重要であり、後述する測定方法においては1.5以上が好ましく、より好ましくは2.0以上である。上限は7.0以下が好ましく、より好ましくは6.0以下である。揺変度が1.5未満ではディスペンサー塗布時にタレる傾向にあり、7.0を超えると逆にフローしなくなる(ペーストが流動しなくなる)傾向にある。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるものは質量部を示す。また、各測定項目は以下の方法に従った。
【0052】
1.分子量
GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)によりポリスチレン換算の数平均分子量を測定した。
【0053】
2.ガラス転移点温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC)を用いて、20℃/分の昇温速度で測定した。サンプルは試料5mgをアルミニウム押え蓋型容器に入れ、クリンプした。
【0054】
3.酸価
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレイン溶液を用いた。単位は、当量/tで表した(t=1000kg)。
【0055】
4.導電性ペーストの粘度および揺変度(チキソ性)の測定
粘度は、ブルックフィールドBH型回転粘度計を用いて20rpmで測定した。揺変度は同様に2rpmで粘度を測定し、次式にて算出した。測定は25℃で行った。
揺変度=粘度(2rpm)/粘度(20rpm)
【0056】
5.比抵抗の測定
厚み50μmのポリイミドフィルムに乾燥後の膜厚が8〜10μmになるように25mm幅で長さ50mmのパターンでスクリーン印刷した。印刷フィルムを熱風乾燥機にて170℃で1時間加熱硬化した。作成したテストピースを用い、4深針抵抗測定器を用いてシート抵抗と、別途膜厚を測定し、これらより比抵抗を算出した。
【0057】
6.初期抵抗の測定および耐熱性の評価
厚み100μmの銅箔をスコッチブライト(住友スリーエム社製不織布研磨剤)を用いて水中で研磨し、イオン交換水で洗浄、乾燥した。この銅箔を10mm×25mmに切断して2枚の銅箔を作成し、一方の銅箔の長手方向の先端から10mmの部分に導電性ペーストを乾燥厚みが50±5μmになるように塗布した。次にもう一方の銅箔を、導電ペーストを塗布した銅箔に重なる部分が10mm×10mmになるようにして、互い違いにして貼り合わせた。接着後、熱風乾燥機にて170℃で1時間加熱硬化した。次いで、4深針抵抗測定器を用いて、上下の接着していない(銅箔が重なっていない)銅箔部に端子を接続して初期抵抗(R)を測定した。ついで、半田リフローを想定した250℃×1分の熱処理後に再度抵抗値(R)を測定し、Rに対するRの抵抗変化率を算出した。繰り返し測定回数(以下Nと表す)=5の平均値で表した。計算式を以下に示す。
抵抗変化率(%)={(R−R)/R}×100
【0058】
7.剪断接着力の測定
6.で作成した接着テストピースを用いて、20℃雰囲気下、引っ張り速度10mm/分で剪断接着力(F)を測定した。N=5で行った。
【0059】
8.耐マイグレーション性
厚み100μmのアニール処理ポリエステルフィルム上に導電性ペーストを図1に示すような中央に1.5mmのギャップのある線幅2.0mm、長さ85.5mmのパターンを乾燥膜厚が6〜8μmになるようにスクリーン印刷し、170℃/1時間加熱硬化したものを試料とした。次いで上記ギャップ間に注射器(ニプロシリンジ1ml(ニプロ(株)製)で蒸留水0.4mlをゆるやかに滴下し、定電圧電源(高砂製作所(株)製)で10V印加し、デジタルマルチメーター(武田理研(株)製)で電流値を測定し、電流値が0.1mAになるまでの時間を測定した。N=5で行った。数値が大きいほど耐マイグレーション性は良好である。
【0060】
9.比表面積
金属粉15gをサンプル管に採り、比表面積自動測定装置(島津製作所製マイクロネリティクス2300;BET法装置Nガス吸着1点法)において、60±5℃、60±5分の条件で前処理をしてから、総表面積を測定した。総表面積をサンプル量で徐して1g当りの比表面積を算出した。
【0061】
10.タップ密度
金属粉100gを秤量し、ロートで100ccメスシリンダーに静かに落とした。タップ密度測定機にのせ、落下距離20mm・60回/分の速さで600回落下させ、圧縮した金属粉の容積を測定し、金属粉の重量と容積より算出した。
【0062】
11.レーザー光散乱法による平均粒子径(50%D)の測定
金属粉をミクロスパテラで1〜2杯、100mlトールビーカーに採り、イソプロピルアルコールを約60ml入れ、超音波ホモジナイザーで1分間分散し、粒度分布計マイクロトラックFRA型(日機装(株))で測定した。測定条件は、以下の通りである。
粒子の光透過性(T、P);YES
粒子の形状 (S、P);NO
粒子屈折率 (Pri);2.25
分散剤屈折率(Cri);1.37
【0063】
12.X線回折の測定方法
広角X線回折反射法により金属粉の結晶性を検討した。X線発生器としてはリガク製ガイガーフレックスを用い、銅対電極のX線管球を出力40kV、38mAに設定して、X線(CuKα線)を発生させた。光学系は広角反射法を用い、カウンターの前にモノクロメーターを設置してX線を単色化した。スリットは発散スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット0.3mmに設定し、走査スピードは2°/分(データサンプリング取り込み間隔0.01°)でX線強度測定した。ここで試料の銀粉はガラス製のサンプル板につけて測定に供した。得られたデータ(X線回折のピーク強度)はリガク製リントシステムに取り込み解析して、半値幅を決定した。X線の回折理論に従えば、ピークの半値幅は結晶のみかけサイズや秩序度と関係がある(参考文献 アレキサンダー著、浜田・梶訳 高分子のX線回折 化学同人刊)。金属粉の結晶性評価のために、回折角38.05°の位置に現れた回折ピークの半値幅を評価した。
【0064】
合成例1(ポリエステル樹脂a)
グビリュー精留塔を具備した四口フラスコにテレフタル酸ジメチル97部、イソフタル酸ジメチル97部、エチレングリコール93部、ネオペンチルグリコール73部、テトラブチルチタネート0.068部を仕込み、180℃、3時間エスエル交換反応を行なった。次に、1mmHg以下まで徐々に減圧し、240℃、1時間重合した。得られた共重合ポリエステルaの組成は、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=50/50//55/45(モル比)で、数平均分子量15,000、酸価35当量/t、Tgは65℃であった。結果を表1に示す。
【0065】
合成例2(ポリエステル樹脂b)
グビリュー精留塔を具備した四口フラスコにテレフタル酸ジメチル97部、イソフタル酸ジメチル78部、エチレングリコール93部、ネオペンチルグリコール73部、テトラブチルチタネート0.068部を仕込み、180℃、3時間エスエル交換反応を行なった。ついで、セバシン酸20部を仕込み、エステル化反応を行った。次に、1mmHg以下まで徐々に減圧し、240℃、1時間重合した。得られた共重合ポリエステルbの組成は、テレフタル酸/イソフタル酸/セバシン酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=50/40/10//55/45(モル比)で、数平均分子量8,000、酸価35当量/t、Tgは45℃であった。結果を表1に示す。
【0066】
合成例3(ポリエステル樹脂c)
グビリュー精留塔を具備した四口フラスコにテレフタル酸ジメチル58部、イソフタル酸ジメチル136部、ネオペンチルグリコール172部、1,6−ヘキサンジオール65部、テトラブチルチタネート0.068部を仕込み、180℃、3時間エスエル交換を行なった。次に、1mmHg以下まで徐々に減圧し、240℃、30分間重合した。次いで、常圧、窒素中で200℃まで冷却し、無水トリメリット酸2.9部を仕込み、30分反応して末端基のカルボキシル基変性を行った。得られた共重合ポリエステルcの組成は、テレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸(後付加)//ネオペンチルグリコール/1,6−ヘキサンジオール=30/70/1.5//80/20(モル比)で、数平均分子量4,200、酸価135当量/t、Tg65℃であった。結果を表1に示す。
【0067】
合成例4(エポキシ変性ポリエステル樹脂d)
合成例3と同様にして、組成がテレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸(後付加)//エチレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物=50/50/2.0//50/50(モル比)、酸価120当量/t、数平均分子量6,500のポリエステルを得た。このポリエステル100部とビスフェノールAエポキシ樹脂であるエピコート1004(ジャパンエポキシレジン(株)製)15部をエチルカルビトールアセテートに固形分60%で溶解し、触媒としてトリフェニルホスフィン0.16部を加えた後、窒素気流中120℃で4時間反応し、酸価が初期酸価の60%になるまで反応させた後、エチルカルビトールアセテートで固形分40%に希釈し、エポキシ変性ポリエステル樹脂dを得た。得られた樹脂溶液は淡黄色透明の液体であった。
【0068】


【0069】
銀粉a
市販の6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の銀粉(RDSF11000−06、フェロ・ジャパン(株)製)をそのまま使用した。平均粒子径(50%D)は1.9μm、比表面積0.51m/g、タップ密度は4.2g/cmであった。広角X線回折反射法による回折角38.05°の位置に現れた回折ピークの半値幅は0.18であった。形状を図2に示す。粉末特性を表2に示す。
【0070】
銀粉b
銀粉aと同様の形状で粒径の小さい銀粉を使用した。平均粒子径(50%D)は0.7μm、比表面積1.60m/g、タップ密度は3.4g/cmであった。広角X線回折反射法による回折角38.05°の位置に現れた回折ピークの半値幅は0.17であった。粉末特性を表2に示す。
【0071】
銀粉c
銀粉aと同様の形状で粒径の大きい銀粉を使用した。平均粒子径(50%D)は5.8μm、比表面積0.20m/g、タップ密度は4.6g/cmであった。広角X線回折反射法による回折角38.05°の位置に現れた回折ピークの半値幅は0.23であった。粉末特性を表2に示す。
【0072】
銀粉d
市販の平均粒子径(50%D)が1.0μm、比表面積が0.85m/g、タップ密度が4.0g/cmであった6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の銀粉100部、エチレングリコール60部、滑剤としてオレイン酸を0.3部添加し、予備混合後、直径1mmのジルコニアビーズを用いてアトライターミルで3時間粉砕を行った。粉砕後のスラリーをジルコニアビーズと分離後、吸引濾過し、80℃で10時間真空乾燥を行って6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の銀粉を粉砕により板状化した銀粉dを得た。平均粒子径(50%D)は5.0μm、比表面積0.30m/g、タップ密度は4.0g/cmであった。広角X線回折反射法による回折角38.05°の位置に現れた回折ピークの半値幅は0.29であった。形状を図3に示す。粉末特性を表2に示す。
【0073】
ニッケル粉e
市販の多面体状のニッケル粉を使用した。平均粒子径(50%D)は3.0μm、比表面積0.42m/g、タップ密度は0.85g/cmであった。粉末特性を表2に示す。
【0074】
銀粉f
銀粉dと同様の形状で粒径の小さい銀粉を使用した。平均粒子径(50%D)は4.0μm、比表面積0.31m/g、タップ密度は6.1g/cmであった。広角X線回折反射法による回折角38.05°の位置に現れた回折ピークの半値幅は0.27であった。粉末特性を表3に示す。
【0075】
銀粉g
市販のフレーク状銀粉(SF7、フェロ・ジャパン(株)製)を使用した。平均粒子径は6.1μm、比表面積0.94m/g、タップ密度2.8g/cmであった。広角X線回折反射法による回折角38.05°の位置に現れた回折ピークの半値幅は0.33であった。粉末特性を表3に示す。
【0076】
銀粉h
市販の不定形粒状銀粉(AgC−156I、福田金属箔粉工業(株)製)を使用した。平均粒子径は2.9μm、比表面積1.00m/g、タップ密度4.5g/cmであった。広角X線回折反射法による回折角38.05°の位置に現れた回折ピークの半値幅は0.36であった。粉末特性を表3に示す。
【0077】
銀粉i
市販のフレーク状銀粉(SF70、フェロ・ジャパン(株)製)を使用した。平均粒子径は2.0μm、比表面積1.47m/g、タップ密度3.3g/cmであった。広角X線回折反射法による回折角38.05°の位置に現れた回折ピークの半値幅は0.32であった。粉末特性を表3に示す。
【0078】
銀粉j
市販の不定形粒状銀粉(K−ED、フェロ・ジャパン(株)製)を使用した。光散乱法による平均粒子径は0.8μm、比表面積1.89m/g、タップ密度2.8g/cmであった。広角X線回折反射法による回折角38.05°の位置に現れた回折ピークの半値幅は0.35であった。粉末特性を表3に示す。
【0079】

【0080】

【実施例1】
【0081】
銀粉a88部、ポリエステル樹脂a8.4固形部、エポキシ当量180g/当量のフェノールノボラック型エポキシ樹脂3.6部、イミダゾール系触媒として2MA−OK(四国化成工業(株)製)0.2部、レベリング剤としてポリフローS(共栄社化学(株)製)0.5部、溶剤としてのエチルカルビトールアセテートを配合し、固形分83%に調整した。充分プレミックスした後、チルド3本ロール混練り機で、3回通して分散した。得られた導電性ペーストは耐マイグレーション性が320秒で良好だった。比抵抗は9.5×10−4Ω・cmであった。初期剪断接着力は250N/cmであった。耐熱性は、抵抗変化率+10%であった。粘度は300dPa・sで良好だった。配合を表4に、結果を表5に示す。
【実施例2】
【0082】
導電性フィラーとして6個以上の平面からなる多面体状の形状を有する銀粉bの他にフレーク状の銀粉gを配合してペーストを作成した。フレーク状の銀粉を併用した結果、実施例1より良好な比抵抗が得られた。耐マイグレーション性は300秒で良好であり、固形分濃度83%において400dPa・sと適切な粘度であり、スクリーン印刷性やディスペンサーを用いたときの作業性も良好であった。また、接着後の初期抵抗(R)は56mΩであり、導電性フィラーとして6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の銀粉だけの場合の実施例1よりさらに低い値を示した。配合を表4に、結果を表5に示す。
【実施例3】
【0083】
導電性フィラーとして6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の銀粉を粉砕により板状化した銀粉とグラファイトのBF(中越黒鉛(株)製)とカーボンブラックのバルカンXC−72(キャボット(株)製)を配合してペーストを作成した。カーボンブラックの配合で耐マイグレーション性は実施例1より良好になった。分散性は非常に比表面積が大きく、微細なカーボンブラックを配合しても良好であり、固形分濃度83%においてペースト粘度は500dPa・sと適切であった。スクリーン印刷やディスペンサーを用いたときの作業性も良好であった。比抵抗は実施例2よりもさらに良好になり、接着後の初期抵抗(R)も50mΩであった。配合を表4に、結果を表5に示す。
【実施例4〜6】
【0084】
実施例1と同様に表4に示す配合で評価した。実施例4では導電性フィラーとして6個以上の平面からなる形状を有する多面体状のニッケル粉とフレーク状の銀粉の組み合わせを検討したところ、銀粉単独の実施例2より良好な耐マイグレーション性を示した。実施例5、6ではノボラック型エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂を使用した結果、実施例1より良好な剪断接着力が得られ、固形分濃度を高くすることができた。いずれの実施例も耐マイグレーション性、耐熱性、接着性に優れており、適正な粘度で固形分濃度を高くすることができた。結果を表5に示す。
【0085】


【0086】


【0087】
比較例1〜6
実施例1と同様に導電性ペーストを作成して評価した。比較例1と比較例4では、導電性フィラーにフレーク状銀粉を検討したが、粘度が高くなったので作業性に問題が生じ、耐マイグレーション性は悪くなった。比較例2はフレーク状銀粉と不定形粒状銀粉の組み合わせを検討したが、同様に高粘度で耐マイグレーション性が悪くなった。比較例3と比較例6はフレーク状銀粉にグラファイトとカーボンブラックの配合を検討したが、著しく粘度が上昇した。比較例5はフレーク状銀粉にエポキシ樹脂とフェノール樹脂の組み合わせを検討したが、耐マイグレーション性が著しく低下した。配合を表6に、結果を表7に示す。
【0088】

【0089】


【実施例7】
【0090】
銀粉a89.0部、エポキシ当量450g/当量のビスフェノールA型エポキシ樹脂9.0部、フェノール樹脂としてPSM−4327(群栄化学工業(株)製)2.0部、イミダゾール系触媒として2MA−OK(四国化成工業(株)製)0.2部、レベリング剤としてポリフローS(共栄社化学(株)製)0.5部、溶剤としてのエチルカルビトールアセテートを配合し、固形分87.0%に調整した。充分プレミックスした後、チルド3本ロール混練り機で、3回通して分散した。得られた導電性ペーストは耐マイグレーション性が320秒で良好だった。比抵抗は9.5×10−4Ω・cmであった。初期剪断接着力は300N/cmであった。耐熱性は、抵抗変化率+10%であった。粘度は200dPa・sで良好であった。配合を表8に、結果を表9に示す。
【実施例8】
【0091】
導電性フィラーとして6個以上の平面からなる平均粒子径5.8μmの形状が多面体状の銀粉cを配合し、導電性フィラーの配合比を高くしたペーストを作成した。実施例1より高固形分濃度で良好な比抵抗が得られた。耐マイグレーション性は300秒で良好であり、固形分濃度92%において300dPa・sと適切な粘度であり、スクリーン印刷やディスペンサーを用いたときの作業性も良好であった。接着後の初期抵抗(R)は100mΩであり、実施例7よりさらに低い値を示した。配合を表8に、結果を表9に示す。
【実施例9】
【0092】
導電性フィラーとして6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の銀粉aの他に多面体状の銀粉を粉砕して板状化した銀粉dを配合し、グラファイトのBF(中越黒鉛(株)製)とカーボンブラックのバルカンXC−72(キャボット(株)製)を配合してペーストを作成した。カーボンブラックの配合で耐マイグレーション性は実施例7より良好になった。非常に比表面積が大きく、微細なカーボンブラックを配合しても分散性が良好で固形分濃度83%におけるペースト粘度は250dPa・sであり適切な粘度になった。スクリーン印刷やディスペンサーを用いたときの作業性も良好であった。比抵抗は実施例8よりもさらに良好になり、接着後の初期抵抗(R)も50mΩであった。配合を表8に、結果を表9に示す。
【実施例10】
【0093】
導電性フィラーとして6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の銀粉aの他にフレーク状の銀粉iを配合し、バインダー樹脂としてブタジエンアクリロニトリル共重合体のCTBN1300×13(宇部興産(株)製)を一部使用した結果、実施例7よりさらに良好な剪断接着力が得られた。また、固形分濃度が高くても適性粘度であり、耐マイグレーション性も良好だった。配合を表8に、結果を表9に示す。
【実施例11】
【0094】
導電性フィラーとして多面体状の銀粉を粉砕して板状化した銀粉fの他にフレーク状の銀粉iを配合し、カーボンブラックのケッチェンブラックECP−600JDを配合してペーストを作成した。バインダー樹脂としてダイマー酸変性エポキシ樹脂のエピコート871(ジャパンエポキシレジン(株)製)を一部使用した結果、実施例7よりさらに良好な比抵抗と剪断接着力が得られた。また、固形分濃度が高くても適性粘度であり、耐マイグレーション性も良好だった。配合を表8に、結果を表9に示す。
【実施例12】
【0095】
導電性フィラーとして6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の銀粉aの他に多面体状の銀粉を粉砕して板状化した銀粉dを配合し、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂bを一部使用した結果、実施例7よりさらに良好な比抵抗が得られた。耐マイグレーション性、耐熱性、剪断接着力も良好であり、適正な粘度で固形分濃度を高くすることができた。配合を表8に、結果を表9に示す。
【実施例13】
【0096】
片面に銅箔をラミネートした厚み50μmの液晶ポリマー(LCP)積層物に予めエッチングにより回路形成した後、所定の部分にレーザーで直径80μmの穴を50個開けて底面の銅箔を露出させた。この穴に表8の実施例8に記載の導電性ペーストをメタルマスクを用いて印刷塗布した。これを120℃で60分乾燥した後、穴を開けていない銅箔とラミネートしたLCP積層体を320℃で3分真空プレスして、二層基板を作成した。この基板の導通性をデジタルマルチメーターで測定したところ、50個の全てにおいて良好であった。これを280℃×1分の条件で半田リフロー試験を実施したところ、不良は発生しなかった。さらに−25℃×30分、150℃×10分のサイクルでヒートショック試験を500サイクル行ったが不良は発生しなかった。このように本発明の導電性ペーストは多層基板用途に好適である。
【実施例14】
【0097】
表8の実施例9に記載の導電性ペーストをスクリーン印刷し、オーブンで150℃、30分硬化させることで幅0.5mm、厚さ30μmの特性インピーダンス50Ωのコプレナ信号線路を作成した。1GHzの信号減衰量を測定した結果、3dB/cmで銅箔からなる回路とほとんど同じ高周波特性が得られた。このように本発明の導電性ペーストは高周波領域での信号減衰が小さいのでノイズが発生し難く、エネルギーを効率よく利用できるので高周波を使用する電子部品として好適である。
【0098】

【0099】


【0100】
比較例7〜12
実施例7と同様に導電性ペーストを作成して評価した。比較例7、比較例8、比較例11と比較例12では、導電性フィラーにフレーク状銀粉を検討したが、粘度が高くなったので作業性に問題が生じ、また耐マイグレーション性は悪くなった。比較例10はフレーク状銀粉と不定形粒状銀粉の組み合わせを検討したが、同様に高粘度で耐マイグレーション性が悪くなった。比較例9はフレーク状銀粉と不定形粒状銀粉にグラファイトとカーボンブラックの配合を検討したが、著しく粘度が上昇した。耐マイグレーション性も悪くなった。配合を表10に、結果を表11に示す。
【0101】
比較例13
実施例13と同様に表10の比較例8に記載の導電性ペーストを評価したところ、高粘度のために穴への埋め込みが悪く、プレス後の導通性は50個のうち32個が不良であった。また、導通性良好なものについてヒートショック試験を実施したところ、50サイクル以下で導通不良になった。
【0102】
比較例14
実施例14と同様に表10の比較例7に記載の導電性ペーストを評価したところ、1GHzの信号減衰量は15dB/cmで高周波特性が悪くなった。
【0103】


【0104】


【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の導電性ペーストは、バインダー樹脂と、導電性フィラーとして6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の金属粉またはX線回折反射法における回折角38.05°の位置に現れるピークの半値幅が0.31以下の銀粉を含むことにより、優れた耐マイグレーション性、耐熱性、接着性を示し、分散性良好であることから高い固形分濃度にもかかわらず粘度を低くすることができるので優れた作業性を実現した。本発明の導電性ペーストは、リジット基板、ポリイミドフィルム、PETフィルムなどのフレキシブル基板への印刷回路用としての使用はもちろんのこと、各種電子部品の導電性接着剤、導電性塗布剤、スルーホール用導電性ペースト、ビルドアップ多層基板用導電性ペーストとしての使用に好適である。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂と導電性フィラーを含む導電性ペーストにおいて、導電性フィラーが6個以上の平面からなる形状を有する多面体状の金属粉(A)であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
金属粉(A)が、銀粉であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
バインダー樹脂が、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
バインダー樹脂が、エポキシ樹脂、並びにポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
バインダー樹脂と導電性フィラーを含む導電性ペーストにおいて、導電性フィラーの一部又は全部が、X線回折反射法における回折角38.05°の位置に現れるピークの半値幅が0.31以下の銀粉(B)であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項7】
バインダー樹脂が、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項6に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項6に記載の導電性ペースト。
【請求項9】
バインダー樹脂が、エポキシ樹脂、並びにポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項6に記載の導電性ペースト。

【国際公開番号】WO2005/041213
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509260(P2005−509260)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015776
【国際出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】