説明

導電性ポリアニリン組成物

【課題】高電導度及び空気中での高耐久性を有する成形体が製造可能なポリアニリン組成物を提供する。
【解決手段】フェノール性水酸基を含まない有機溶剤(A)、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)、及び下記式(1)で表される化合物(C)を含む導電性ポリアニリン組成物。さらにフェノール樹脂(D)を(B)100質量部に対し10〜300質量部含む組成物。さらに、フェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリアニリン組成物に関する。さらに詳しくは、その製造及び取り扱いが容易で、空気中で経時劣化しにくく、優れた電気的特性を有する成形体が製造可能な導電性ポリアニリン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリンは、導電性高分子の1つとして周知の材料である。ポリアニリンは、その電気的特性に加え、導電性を示す状態で酸素等に対して優れた安定性を示すという特性を有する。
【0003】
ポリアニリンは安価なアニリンから比較的容易に合成でき、例えば特許文献1は簡便かつ高電導のポリアニリン組成物の製造方法を開示している。特許文献1のポリアニリン組成物は、有機溶剤に溶解しているポリアニリンとプロトン酸の複合体に、少量のフェノール性水酸基を有する化合物を添加したものである。しかし、当該方法で得られるポリアニリンは、空気中での耐久性は必ずしも高いとはいえなかった。例えば、特許文献1の方法で得られたポリアニリンからなる膜厚50nm程度のフィルムを空気中に放置すると、フィルムの抵抗値が1日で約10倍上昇する傾向があった。
【特許文献1】WO2005/052058号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐久性の高い成形体が製造可能なポリアニリン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明者は鋭意研究を重ね、上述した特許文献1のポリアニリン複合体と、所定の化合物又は所定の化合物の混合物を用いた場合、導電性が高く、かつ空気中での劣化が抑制できるポリアニリン成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明によれば、以下のポリアニリン組成物等が提供される。
1.フェノール性水酸基を含まない有機溶剤(A)、
プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)、及び
下記式(1)で表される化合物(C)を含む導電性ポリアニリン組成物。
【化2】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、
及びRは、それぞれ独立にアルキル基であり、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なってもよく、
m、n、o及びpは、それぞれ独立に0から5の整数であり、及び
m、n、o及びpは、m+o≦5、n+p≦5及び4≧o+p≧2を満たす。]
2.前記式(1)で表される化合物(C)を、前記プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して10〜300質量部含む1に記載の導電性ポリアニリン組成物。
3.さらにフェノール樹脂(D)を含む1又は2に記載の導電性ポリアニリン組成物。
4.前記フェノール樹脂(D)を、前記プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して10〜300質量部含む1〜3のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物。
5.さらにフェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)を含む1〜4のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物。
6.前記フェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)を、前記プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して10〜20,000質量部含む5に記載の導電性ポリアニリン組成物。
7.前記フェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)がフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール又はベンジルアルコールである5又は6に記載の導電性ポリアニリン組成物。
8.前記フェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)が1−ナフトール、2−ナフトール、m−フェノキシフェノール又はp−フェノキシフェノールである5又は6に記載の導電性ポリアニリン組成物。
9.前記有機溶剤(A)を、前記プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して500〜200,000質量部含む1〜8のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物。
10.前記有機溶剤(A)が、トルエン、キシレン、クロロホルム、トリクロロエタン、1−ブタノール、2−ブタノール、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン及び酢酸エチルから選択される少なくとも1つである1〜9のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物。
11.1〜10のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物から得られる導電性成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空気中での耐久性が高い成形体が製造可能なポリアニリン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の導電性ポリアニリン組成物は、フェノール性水酸基を含まない有機溶剤(A)、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)、及び下記式(1)で表される化合物(C)を含む。尚、下記式(1)で表される化合物(C)は単独又は複数の種類を同時に含んでいても構わない。
【化3】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、
及びRは、それぞれ独立にアルキル基であり、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なってもよく、
m、n、o及びpは、それぞれ独立に0から5の整数であり、及び
m、n、o及びpは、m+o≦5、n+p≦5及び4≧o+p≧2を満たす。]
【0009】
有機溶剤(A)としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素系溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等の含ハロゲン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の高極性溶剤;1−ブタノール、2−ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これらの中では、ポリアニリン複合体の溶解性に優れる点でトルエン、キシレン、クロロホルム、トリクロロエタン及び酢酸エチルが好ましい。本発明の組成物は、有機溶剤(A)を、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して、好ましくは500〜200,000質量部、より好ましくは1000〜50,000質量部含む。
【0010】
プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)(以下、ポリアニリン複合体という)としては、置換又は未置換ポリアニリン(以下、単にポリアニリンという)が、下記式(I)で示される有機プロトン酸(以下、有機プロトン酸(I)という)によってプロトネーションされてなるものが、導電性及び溶解性の点で好ましい。
M(YARn’m’ (I)
【0011】
本発明において、置換又は未置換ポリアニリンの重量平均分子量は、10,000g/mol以上の高分子量体であることが好ましい。これにより組成物から得られる導電性物品の強度や延伸性を向上することができる。重量平均分子量の上限値は特に存在せず、重量平均分子量が数百万g/mol程度のポリアニリンも製造可能であり、本発明の導電性ポリアニリン組成物も製造できる。しかし、溶解の観点から、重量平均分子量は10,000,000程度以下であることが好ましい。
尚、ポリアニリンの分子量は、ゲルパーミェションクロマトグラフィ(GPC)により測定したものである。
【0012】
置換ポリアニリンの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐の炭化水素基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、アリーロキシ基、CF基等の含ハロゲン炭化水素基等が挙げられる。
【0013】
上記式(I)において、Mは、水素原子又は有機若しくは無機遊離基である。有機遊離基としては、例えば、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、アニリニウム基等が挙げられ、無機遊離基としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、セリウム、アンモニウム等が挙げられる。
【0014】
Yは、酸性基であり、例えば、−SO基、−PO2−基、−PO(OH)基、−OPO2−基、−OPO(OH)基、−COO基等が挙げられる。これらの中では、酸性度が高く、ドープし易い点で−SO基が好ましい。
【0015】
Aは、置換基を含んでもよい炭化水素基であり、例えば、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキルやアルケニル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、メンチル等の置換基を含んでいてもよいシクロアルキル基、ビシクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル等の縮合してもよいジシクロアルキル基又はポリシクロアルキル基、フェニル、トシル、チオフェニル、ピローリニル、ピリジニル、フラニル等の置換基を含んでいてもよい芳香環を含むアリール基、ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、インダニル、キノリニル、インドニル等の縮合していてもよいジアリール基又はポリアリール基、アルキルアリール基等が挙げられる。
【0016】
Rは、それぞれ独立して、−R101、−OR101、−COR101、−COOR101、−CO(COR101)、又は−CO(COOR101)である。ここで、R101は炭素数が4以上の置換基を含んでもよい炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、又は−(R102O)−R103基、−又は(OSiR103−OR103(R102はアルキレン基、R103はそれぞれ同一でも異なってもいてもよい炭化水素基であり、xは1以上の整数である)である。R101が炭化水素基である場合の例としては、直鎖若しくは分岐のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、エイコサニル基等が挙げられる。
n’は2以上の整数であり、m’は、Mの価数である。
【0017】
式(I)で示される化合物としては、ジアルキルベンゼンスルフォン酸、ジアルキルナフタレンスルフォン酸、スルホフタール酸エステル、下式(II)で表される化合物が、ドープし易い点から好ましく利用できる。
M(YCR104(CR105COOR106)COOR107p’ (II)
上記式(II)において、Mは、式(I)の場合と同様に水素原子又は有機若しくは無機遊離基である。有機遊離基としては、例えば、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、アニリニウム基等が挙げられ、無機遊離基としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、セリウム、アンモニウム等が挙げられる。
【0018】
Yは、酸性基であり、例えば、−SO基、−PO2−基、−PO(OH)基、−OPO2−基、−OPO(OH)基、−COO基等が挙げられ、−SO基が好ましい。
【0019】
104及びR105は、それぞれ独立して水素原子、炭化水素基又はR108Si−基(ここで、R108は、炭化水素基であり、3つのR108は同一又は異なっていてもよい)である。R104及びR105が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、芳香環を含むアリール基、アルキルアリール基等が挙げられる。R108の炭化水素基としては、R104及びR105の場合と同様である。
【0020】
106及びR107は、それぞれ独立して炭化水素基又は−(R109O)−R110基[ここで、R109は炭化水素基又はシリレン基であり、R110は水素原子、炭化水素基又はR111Si−(R111は、炭化水素基であり、3つのR111は同一又は異なっていてもよい)であり、qは1以上の整数である]である。R106及びR107が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、芳香環を含むアリール基、アルキルアリール基等が挙げられる。これらの中では、水と混和しない有機溶剤に溶解しやすいポリアニリン複合体を得るという観点から炭素数4以上のものが好ましい。R106及びR107が炭化水素基である場合の炭化水素基の具体例としては、例えば、直鎖又は分岐状のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
【0021】
109が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、芳香環を含むアリーレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基等である。また、R110及びR111が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、R104及びR105の場合と同様であり、qは、1〜10であることが好ましい。
【0022】
106及びR107が−(R109O)−R110基である場合の具体例としては、例えば、下記式で示される基が挙げられる。
【化4】

(式中、Yは−SO基等の酸性基である)
【0023】
p’は、上記Mの価数である。
【0024】
上記有機プロトン酸(II)は、下記式(III)で示されるスルホコハク酸誘導体(以下、スルホコハク酸誘導体(III)という)であることが、導電性及び溶解性の点でさらに好ましい。
M(OSCH(CHCOOR112)COOR113m’ (III)
上記式(III)において、M及びm’は、上記式(I)と同様である。
【0025】
112及びR113は、それぞれ独立して炭化水素基又は−(R114O)−R115基[ここで、R114は炭化水素基又はシリレン基であり、R115は水素原子、炭化水素基又はR116Si−基(ここで、R116は炭化水素基であり、3つのR116は同一又は異なっていてもよい)であり、rは1以上の整数である]である。
【0026】
114が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、上記R109と同様である。また、R115及びR116が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、上記R104及びR105と同様である。
【0027】
rは、1〜10であることが好ましい。
【0028】
112及びR113が−(R114O)−R115基である場合の具体例としては、R106及びR107における−(R109O)−R110と同様である。
【0029】
112及びR113が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、R106及びR107と同様であり、水と混和しない有機溶剤に溶解しやすいポリアニリン複合体を得るという観点から、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等が好ましく挙げられる。
【0030】
有機プロトン酸は、ポリアニリンをプロトネーションする機能を有し、ポリアニリン複合体中においては、ドーパント(カウンターアニオン)として存在している。即ち、本発明の組成物においては、有機プロトン酸、及び式(1)で表される化合物の2種類の化合物がドーパントとして機能する。
ポリアニリン複合体において、ポリアニリンと有機プロトン酸との組成比については特に限定されないが、有機プロトン酸/ポリアニリンのモノマーユニットのモル比は、高い導電性を得るという観点から、通常0.25〜1、好ましくは0.4〜0.67である。
【0031】
ポリアニリン複合体は、化学酸化重合法や電解重合法により製造できる。具体的な製造条件については、上述した国際公開第2005/052058を参照すればよい。
【0032】
下記式(1)で表される化合物(C)は、芳香環を2個有しかつフェノール性水酸基を2個以上有する化合物である。
【化5】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、
及びRは、それぞれ独立にアルキル基であり、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なってもよく、
m、n、o及びpは、それぞれ独立に0から5の整数であり、及び
m、n、o及びpは、m+o≦5、n+p≦5及び4≧o+p≧2を満たす。]
【0033】
、R、R及びRのアルキル基としては、例えば炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状アルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状の低級アルキル基である。
【0034】
式(1)で表される化合物は、好ましくは2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)、4−(2−フェニルプロパン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオール又は4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)又はビスフェノールA又はビスフェノールEである。
【0035】
本発明の組成物は、式(1)で表される化合物(C)を、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して、好ましくは10〜300質量部、より好ましくは50〜200質量部含む。
【0036】
さらに本発明の導電性ポリアニリン組成物には、フェノール樹脂(D)を含ませることにより、高電導度を得ることができる。
このフェノール樹脂(D)としては,1分子当たり2個以上の不飽和基を有する環状炭化水素化合物(以下、単に「不飽和環状炭化水素化合物」と略記する)とフェノール類との重付加反応物を用いることができる。
不飽和環状炭化水素化合物が有する不飽和基は、1分子当たり通常4個以下であるが、好ましくは2個である。
【0037】
不飽和環状炭化水素化合物は、特に限定されるものではないが、通常炭素数5〜20、好ましくは6〜12である。具体的には、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボナ−2−エン、α―ピネン、β−ピネン、リモネン等の不飽和脂肪族炭化水素化合物や、ジビニルベンゼン等の不飽和芳香族炭化水素化合物が挙げられる。これらの中でもジシクロペンタジエンが特に好ましい。またジシクロペンタジエンは石油留分中に含まれることから、工業用ジシクロペンタジエンには他の脂肪族又は芳香族ジエン類等が不純物として含有されることがあるが、耐熱性、硬化性等を考慮すると、ジシクロペンタジエンが90重量%以上のものが望ましい。特に、純度95重量%以上のものが中でも好ましい。
【0038】
この不飽和環状炭化水素化合物と重付加させるフェノール類としては、1分子中に少なくとも1つの芳香族性水酸基を有する化合物であれば、特に限定されないが、具体的には、無置換フェノール、及びアルキル基、アルケニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン等が結合した置換フェノール類が挙げられる。置換フェノール類としては、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロピルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クロルフェノール、ブロムフェノール(各々置換位置が異なる異性体を含む)等の一置換フェノール類や、ジメチルフェノール、t−ブチル−メチルフェノール(各々置換位置が異なる異性体を含む)等の二置換フェノール類、又は、トリメチルフェノール(置換位置が異なる異性体を含む)等3置換フェノール類や、1−ナフトール、2−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン(1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、1,8−、2,3−、2,6−、2,7−の異性体)等のナフトール類や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ビスフェノールP、ビスフェノールM、ジヒドロキシナフタレンベンゾフェノン、ビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価フェノール類等が挙げられる。中でも硬化性の点からフェノール及びクレゾールが好ましい。
【0039】
本発明で用いるフェノール樹脂(D)には、上記原料を使用する限り、特にその製造方法が限定されるものではなく、例えば、特開昭61−123618号公報に記載の方法が挙げられる。
また前述のフェノール樹脂(D)は、例えば新日本石油(株)製ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂DPP−6085、6095L、6095H、6115L、6115H、6125等のDPPシリーズ等が市販されており、好ましく用いられる。
【0040】
尚、本発明の組成物は、前記フェノール樹脂(D)を、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して、好ましくは10〜300質量部、より好ましくは50〜250質量部含む。
【0041】
本発明の導電性ポリアニリン組成物は、好ましくはさらにフェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)を含む。
フェノール性水酸基を1個だけ有する化合物としては、好ましくはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール及びベンジルアルコールのうちいずれか、又は1−ナフトール、2−ナフトール、m−フェノキシフェノール及びp−フェノキシフェノールのうちいずれかである。
【0042】
尚、本発明の組成物は、フェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)を、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して、好ましくは10〜20,000質量部、より好ましくは100〜10,000質量部含む。
【0043】
本発明の導電性ポリアニリン組成物は、有機溶媒に溶解した状態のポリアニリン複合体(B)に、化合物(C)、又は化合物(C)及びフェノール樹脂(D)、又は化合物(C)及びフェノール樹脂(D)及び化合物(E)を添加することで製造できる。
使用できる溶剤は、組成物の各成分が溶解すればどのような溶剤でもよく、限定は無い。溶媒は単一溶媒でも混合溶剤でもよい。例えば、トルエン、トルエン/メチルイソブチルケトン、トルエン/アセトン、トルエン/メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0044】
有機溶媒中のポリアニリン複合体の割合は、有機溶媒の種類によるが、通常、900g/L以下であり、好ましくは0.01〜300g/L以下である。ポリアニリン複合体の含有量が多すぎると、溶液状態が保持できなくなり、成形体を成形する際の取り扱いが困難になり、成形体の均一性が損なわれ、ひいては成形体の電気特性や機械的強度、透明性の低下を生じる。一方、ポリアニリン複合体の含有量が少なすぎると、後述する方法により成膜したとき、非常に薄い膜しか製造できず、均一な導電性膜の製造が難しくなるおそれがある。
【0045】
ポリアニリン複合体を有機溶媒に溶解させた溶液に、化合物(C)、又は化合物(C)及びフェノール樹脂(D)、又は化合物(C)及びフェノール樹脂(D)及び化合物(E)を添加する。具体的には、化合物(C)、又は化合物(C)及びフェノール樹脂(D)、又は化合物(C)及びフェノール樹脂(D)及び化合物(E)を、固体状態又は液状で加えても、溶剤中に溶解又は懸濁した状態で添加してもよい。好ましくは、添加後も溶解した状態になるように適切な溶剤添加法を選択する。
【0046】
ポリアニリン組成物の全体に占める化合物(C)、又は化合物(C)及びフェノール樹脂(D)、又は化合物(C)及びフェノール樹脂(D)及び化合物(E)のモル濃度は、0.01mol/L〜5mol/Lであることが好ましい。この範囲で特に優れた導電性が得られる。特に、0.2mol/L〜2mol/Lであることが好ましい。
【0047】
尚、本発明の導電性ポリアニリン組成物には、目的に応じて他の樹脂材料、無機材料、硬化剤、又は可塑剤等を添加してもよい。
他の樹脂材料は、例えば、バインダー基材、可塑剤、マトリックス基材等の目的で添加され、その具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。本発明の組成物が他の樹脂材料を含む場合には、本発明の組成物は導電性複合材料となる。
【0048】
また、本発明のポリアニリン組成物は、増粘剤と混合してもよい。増粘剤としては例えばポリエチレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体等が挙げられる。エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体としては、明成化学工業株式会社製アルコックスEP−10、アルコックスEP−20等を用いることができる。
【0049】
無機材料は、例えば、強度、表面硬度、寸法安定性その他の機械的物性の向上等の目的で添加され、その具体例としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、チタニア(酸化チタン)、アルミナ(酸化アルミニウム)等が挙げられる。
【0050】
硬化剤は、例えば、強度、表面硬度、寸法安定性その他の機械的物性の向上等の目的で添加され、その具体例としては、例えば、フェノール樹脂等の熱硬化剤、アクリレート系モノマーと光重合性開始剤による光硬化剤等が挙げられる。
【0051】
可塑剤は、例えば、引張強度や曲げ強度等の機械的特性の向上等の目的で添加され、その具体例としては、例えば、フタル酸エステル類やリン酸エステル類等が挙げられる。
【0052】
本発明の導電性ポリアニリン組成物は、有機溶剤、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体、式(1)で表される化合物及び任意にフェノール樹脂及び任意にフェノール性水酸基を1個だけ有する化合物から実質的になっていてもよく、また、これらの成分のみからなっていてもよい。「実質的になる」とは、上記組成物が、主に有機溶剤、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体、式(1)で表される化合物及び任意にフェノール樹脂及び任意にフェノール性水酸基を1個だけ有する化合物からなることであり、これらの成分の他に上記の添加剤等を含み得ることである。
【0053】
本発明のポリアニリン組成物を乾燥し、有機溶剤を除去することにより、導電性成形体が得られる。
例えば、所望の形状を有するガラスや樹脂フィルム、シート等の基材に塗布し、有機溶剤を除去することによって導電性膜を製造できる。
【0054】
本発明の組成物を基材に塗布する方法としては、キャスト法、スプレー法、ディップコート法、ドクターブレード法、バーコード法、スピンコート法、スクリーン印刷、グラビア印刷法,エレクトロスピニング法等、公知の一般的な方法を用いることができる。
【0055】
有機溶媒を除去するには、加熱して有機溶剤を揮発させればよい。有機溶媒を揮発させる方法としては、例えば、空気気流下250℃以下、好ましくは50〜200℃の温度で加熱し、さらに、必要に応じて、減圧下に加熱する。尚、加熱温度及び加熱時間は、特に制限されず、用いる材料に応じて適宜選択すればよい。
【0056】
また、基材を有しない自己支持型成形体とすることもできる。自己支持型成形体とする場合には、本発明の組成物に、上述した他の樹脂材料を添加することにより、所望の機械的強度を有する成形体を得ることができる。
【0057】
本発明の成形体が膜又はフィルムである場合、これらの厚さは、通常1mm以下、好ましくは10nm〜50μmの範囲である。この範囲の厚みの膜は、成膜時にひび割れが生じにくく、電気特性が均一である等の利点を有する。
【実施例】
【0058】
製造例1
[プロトネーションされたポリアニリン複合体の製造]
和光純薬工業(株)製エーロゾルOT(ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム、純度75%以上)144gをトルエン4Lに攪拌溶解し、窒素気流下においた30Lのガラス反応器(機械式攪拌器、ジャケット、温度計、滴下ロート付)に、溶液を入れ、さらにこの溶液に、150gの原料アニリンを加え、攪拌溶解した。
冷媒によるフラスコの攪拌冷却を開始し、1N塩酸12Lを溶液に添加した。
次に溶液温度が−3℃に冷却された状態で、214gの薬品過硫酸アンモニウムを1N塩酸4Lに溶解した溶液を滴下ロートで滴下し、3時間10分で完了した。滴下開始から18時間30分の間、溶液内温を0℃±1℃に保ったまま攪拌を行った。その後、トルエン8Lを加え、溶液温度を19℃に上昇させ、静置した。
静置により二相に分離した水相(下相)を反応器下部から抜き出し、粗ポリアニリン複合体トルエン溶液を得た。
さらに、この複合体溶液にイオン交換水4Lを加え攪拌した後、静置し、水相を分離した。この操作を再度行った後、1N塩酸水溶液4Lで同様に複合体溶液を洗浄し、静置後、酸性水溶液を分離して、ポリアニリン複合体のトルエン溶液を回収した。
【0059】
この複合体溶液に含まれる若干の不溶物を#5Cの濾紙により除去し、トルエンに可溶なポリアニリン複合体のトルエン溶液を回収した。この溶液をエバポレーターに移し、60℃の湯浴で加温し、減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、208gのポリアニリン複合体を得た。
このポリアニリン複合体から揮発分を実質的に取り除いたものの元素分析の結果は、炭素61.7重量%、水素:8.2重量%、窒素:3.9重量%、硫黄:5.5重量%であった。
【0060】
アニリン原料に基づく窒素重量%とスルホコハク酸エステルに基づく硫黄重量%の比率から、本複合体中のスルホコハク酸エステル/アニリンモノマーユニットのモル分率は、0.62であった。また、このポリアニリン複合体中のポリアニリン骨格の重量平均分子量はGPC測定から、150,000g/molであった。
【0061】
実施例1
[導電性ポリアニリン組成物の調製]
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gのトルエンに再度溶解し、均一な導電性ポリアニリン複合体溶液を調製した。この溶液にm−クレゾール19mmol(2.0g)及び2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)0.88mmol(201mg)を添加して、m−クレゾール濃度が約0.86mol/L及び2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)濃度が約0.044mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を得た。
【0062】
[導電性ポリアニリン薄膜の製造]
得られた導電性ポリアニリン組成物約1mLを、ITOでパターニングされた30mm×30mm角のガラス基板上に展開し、3,000rpmで1分間スピンコートした。これを空気気流下80℃で5分間乾燥し、ガラス基板上に透明で均質な薄膜を形成した。ロレスターGP(三菱化学社製;四探針法による抵抗率計)を用いて薄膜の抵抗を測定し、その値を初期値(R)とした。
【0063】
[導電性ポリアニリン成形体の経時劣化試験]
得られた導電性ポリアニリン組成物の薄膜をガラス基板のまま、空気中に一定時間放置した後に初期値(R)と同様にして抵抗を測定した。所定時間経過後の抵抗値(R)と初期値との比(R/R)を算出し、薄膜の経時劣化(抵抗の上昇率)を評価した。結果を表2に示す。
表内の値は、所定時間経過後の抵抗値Rと初期値Rとの比R/Rを示す。
【0064】
実施例2
2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)の代わりに4−(2−フェニルプロパン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオールを0.88mmol(200mg)添加した他は、実施例1と同様にして、m−クレゾール濃度が約0.86mol/L及び4−(2−フェニルプロパン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオール濃度が約0.044mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0065】
実施例3
2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)の代わりに4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)を0.78mmol(200mg)添加した他は、実施例1と同様にして、m−クレゾール濃度が約0.86mol/L及び4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)濃度が約0.039mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0066】
実施例4
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gのトルエンに再度溶解し、均一な導電性ポリアニリン複合体溶液を調製した。この溶液に4−(2−フェニルプロパン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオール0.88mmol(200mg)を添加して4−(2−フェニルプロパン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオール濃度が約0.044mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0067】
実施例5
4−(2−フェニルプロパン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオールの代わりに4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)を0.78mmol(200mg)添加した他は、実施例4と同様にして、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)濃度が約0.039mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0068】
実施例6
4−(2−フェニルプロパン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオールの代わりにビスフェノールE(本州化学社製)を1.87mmol(400mg)及びメチルイソブチルケトン2.35g添加した他は、実施例4と同様にして、ビスフェノールE濃度が約0.084mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0069】
実施例7
4−(2−フェニルプロパン−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオールの代わりにビスフェノールA(本州化学社製)を1.75mmol(400mg)及びメチルイソブチルケトン2.35g添加した他は、実施例4と同様にして、ビスフェノールA濃度が約0.078mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0070】
実施例8
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gのトルエンに再度溶解し、均一な導電性ポリアニリン複合体溶液を調製した。この溶液に2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)201mg(0.88mmol)及びフェノール樹脂(DPP−6085:ジシクロペンタジエン・フェノール重合物,新日本石油株式会社製,分子量350)300mg(0.88mmol)を添加して、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)濃度が約0.044mol/L及びDPP−6085濃度が約0.044mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0071】
実施例9
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gのトルエンに再度溶解し、均一な導電性ポリアニリン複合体溶液を調製した。この溶液に2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)201mg(0.88mmol)及びフェノール樹脂(DPP−6115L:ジシクロペンタジエン・フェノール重合物,新日本石油株式会社製,分子量500)440mg(0.88mmol)を添加して、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)濃度が約0.044mol/L及びDPP−6115L濃度が約0.044mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0072】
実施例10
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gのトルエンに再度溶解し、均一な導電性ポリアニリン複合体溶液を調製した。この溶液に2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)201mg(0.88mmol)及びフェノール樹脂(DPP−6085:新日本石油株式会社製)300mg(0.88mmol)及びm−クレゾール19mmol(2.0g)を添加して、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)濃度が約0.044mol/L及びDPP−6085濃度が約0.044mol/L及びm−クレゾール濃度が約0.86mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0073】
実施例11
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gのクロロホルムに再度溶解した他は、実施例10と同様にして、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)濃度が約0.044mol/L及びDPP−6085濃度が約0.044mol/L及びm−クレゾール濃度が約0.86mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0074】
実施例12
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gの1−ブタノールに再度溶解した他は、実施例10と同様にして、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)濃度が約0.044mol/L及びDPP−6085濃度が約0.044mol/L及びm−クレゾール濃度が約0.86mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0075】
実施例13
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gのキシレンに再度溶解し、均一な導電性ポリアニリン複合体溶液を調製した。この溶液に2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)200mg(0.88mmol)及びフェノール樹脂(DPP−6085:新日本石油株式会社製)300mg(0.88mmol)を添加して、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)濃度が約0.044mol/L及びDPP−6085濃度が約0.044mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0076】
実施例14
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gの酢酸エチルに再度溶解した他は、実施例13と同様にして、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)濃度が約0.044mol/L及びDPP−6085濃度が約0.044mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0077】
実施例15
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gのイソプロピルアルコールに再度溶解した他は、実施例13と同様にして、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)濃度が約0.044mol/L及びDPP−6085濃度が約0.044mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0078】
実施例16
製造例1で得た導電性ポリアニリン複合体200mgを20gのトルエンに再度溶解し、均一な導電性ポリアニリン複合体溶液を調製した。この溶液に2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)200mg(0.88mmol)及びフェノール樹脂(DPP−6085:新日本石油株式会社製)300mg(0.88mmol)を添加して、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)濃度が約0.044mol/L及びDPP−6085濃度が約0.044mol/Lの均一な溶液を調製し、さらにエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体(明成化学工業株式会社製、商品名:アルコックスEP−10)を200mg溶解させ導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0079】
比較例1
2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)を添加しなかった他は、実施例1と同様にして、m−クレゾール濃度が約0.86mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0080】
比較例2
2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)の代わりにβ−ナフトールを1.4mmol(201mg)添加した他は、実施例1と同様にして、m−クレゾール濃度が約0.86mol/L及びβ−ナフトール濃度が約0.069mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0081】
比較例3
実施例1において、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)及びm−クレゾールを添加しなかった他は、実施例1と同様にして導電性ポリアニリン組成物を調製した。
得られた導電性ポリアニリン組成物を用いて、実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜を評価した。結果を表2に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のポリアニリン組成物は、特にパワーエレクトロニクス、オプトエレクトロニクス分野において、静電・帯電防止材料、透明電極や導電性フィルム材料、エレクトロルミネッセンス素子の材料、回路材料、コンデンサの誘電体・電解質、太陽電池や二次電池の極材料、燃料電池セパレータ材料等に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基を含まない有機溶剤(A)、
プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)、及び
下記式(1)で表される化合物(C)を含む導電性ポリアニリン組成物。
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、
及びRは、それぞれ独立にアルキル基であり、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なってもよく、
m、n、o及びpは、それぞれ独立に0から5の整数であり、及び
m、n、o及びpは、m+o≦5、n+p≦5及び4≧o+p≧2を満たす。]
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物(C)を、前記プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して10〜300質量部含む請求項1に記載の導電性ポリアニリン組成物。
【請求項3】
さらにフェノール樹脂(D)を含む請求項1又は2に記載の導電性ポリアニリン組成物。
【請求項4】
前記フェノール樹脂(D)を、前記プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して10〜300質量部含む請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物。
【請求項5】
さらにフェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)を含む請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物。
【請求項6】
前記フェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)を、前記プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して10〜20,000質量部含む請求項5に記載の導電性ポリアニリン組成物。
【請求項7】
前記フェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)がフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール又はベンジルアルコールである請求項5又は6に記載の導電性ポリアニリン組成物。
【請求項8】
前記フェノール性水酸基を1個だけ有する化合物(E)が1−ナフトール、2−ナフトール、m−フェノキシフェノール又はp−フェノキシフェノールである請求項5又は6に記載の導電性ポリアニリン組成物。
【請求項9】
前記有機溶剤(A)を、前記プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体(B)100質量部に対して500〜200,000質量部含む請求項1〜8のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物。
【請求項10】
前記有機溶剤(A)が、トルエン、キシレン、クロロホルム、トリクロロエタン、1−ブタノール、2−ブタノール、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン及び酢酸エチルから選択される少なくとも1つである請求項1〜9のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物から得られる導電性成形体。

【公開番号】特開2009−84554(P2009−84554A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172009(P2008−172009)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】