説明

導電性ポリマー、導電性ポリマーの製造方法、およびポリマーの導電率の制御方法

【課題】ポリマー樹脂と、導電性フィラーと、導電性フィラーのほぼ均一な配置を促進する分散制御剤を含むポリマー組成物。
【解決手段】ポリマー組成物の導電率を制御するための方法であって、目的とする導電率を含む所望の導電率の範囲を特定する工程と、有効な量の分散制御剤をポリマー樹脂に添加し、前記所望の導電率の範囲内で前記ポリマー組成物の導電率の感度を最小化させる工程と、前記ポリマー樹脂に導電性フィラーを添加し、前記ポリマー組成物を前記目的とする導電率に調整する工程と、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は総じて、導電性ポリマー材料に関し、さらに詳細には、導電性フィラーの濃度範囲にわたって制御可能な導電率を有するポリマー材料に関する。
【0002】
[関連出願]
本願は、2003年7月29日に出願された「導電性および非導電性のナノ粒子およびマイクロ粒子の使用によるポリマーの導電率の制御(CONTROLLER ELECTRICAL CONDUCTIVITY IN POLYMERS THROUGH THE USE OF CONDUCTIVE AND NON−CONDUCTIVE NANO AND MICROPARTICLES)」と題する米国仮特許出願第60/490,871号に基づいて優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、通常は電気絶縁性であるポリマー材料の導電率を制御する方法に関する。さらに詳細には、本発明は、ポリマー組成物のパーコレーション閾値に到達させるために必要なカーボンブラック(CB)濃度および/またはカーボンナノチューブを含むその他の導電性粒子および化学品の濃度を減少させるために、導電性および非導電性のナノ粒子およびマイクロ粒子を使用することに関する。
【0004】
パッケージを製造するために使用される従来のポリマー材料は、通常、パッケージの内容物を外部の導電経路から絶縁する。電気部品および半導体部品のパッケージ、衛星・宇宙船の電磁放射線遮断、および心電図用の電極を形成する心臓用パッドなどの用途では、経時的に蓄積し得る静電エネルギーを消散させる必要がある。
【0005】
ポリマー製品に静電放電(ESD)特性を与えるための初期の試みでは、特定の製品用に選択されたポリマー樹脂にカーボンブラック粒子などの導電性フィラーを混合することが必要であった。混合時には、カーボンブラック粒子をポリマー樹脂内でランダムに分散させる。カーボンブラックをランダムに分散させるには、適度に高いカーボンブラック濃度が必要であり、適度に高いカーボンブラック濃度にすることにより、混合ポリマー樹脂から形成されたポリマー製品全体にわたって導電経路が延びることが確保される。
【0006】
最近開発された技術を使用する用途では、導電率が小さくかつ狭い中間領域内で正確な導電率を有するポリマー材料が求められる。しかしながら、そのような導電率の中間領域内におけるポリマー材料の導電率は、カーボンブラック濃度によって急激に変化し、導電率の正確な制御が困難となる。
【0007】
電子機器の最小サイズが減少し続けているため、パッケージおよび上述した他の用途のためのポリマー材料に対する要求はより厳しくなる。導電率の正確な制御に加えて、ポリマー製品から放出されて電子機器にダメージを与え得るカーボンブラック等の導電性成分の許容濃度がより小さくなっている。カーボンブラック濃度を最小化することによって、カーボンブラックがポリマー製品から放出されて、近傍の電子機器にダメージを与える可能性は減少する。
【0008】
ポリマー製品において導電率を確立するために必要なカーボンブラック濃度を最小化するために、ポリマー樹脂および導電性フィラーの組成物に多環式芳香族化合物が添加されている。多環式芳香族化合物は、2つの方法で組成物の導電性に影響を与えると考えられ
ている:第1の方法は、粒子間接触の数を増加させる方法であり、第2の方法は、導電性粒子間の電子移動に対する抵抗を低下させる方法である。多環式芳香族化合物は、得られるポリマー複合材の導電率に影響を与えることができるが、多環式芳香族化合物は高価で毒性を有する場合が多く、合成時に追加の保護手段が必要となる。また、多環式芳香族化合物は、繊細な電子機器にダメージを与え得る金属成分を含む場合が多い。
【0009】
この技術分野で知られている従来のポリマー組成物としては、カーター(Carter)らに付与された米国特許第5,298,194号に開示されているポリマー組成物が挙げられる。米国特許第5,298,194号は、ポリマー粒子と金属粒子を混合し、次に熱および/または圧力を加えることによって導電性ポリマー組成物を得ることを開示している。この組成物は、接着剤組成物として使用できることが記載されている。
【0010】
同様に、ラッケンスタイン(Ruckenstein)らに付与された米国特許第5,508,348号は、非導電性ポリマーに均一に分散された導電性ポリマー粒子を含むポリマー複合材を開示している。
【0011】
ウェスリング(Wessling)らに付与された米国特許第5,567,355号は、本質的に導電性のポリマーの形成について開示している。このポリマーは、特定の表面積を有する一次粒子の分散性固体である。
【0012】
米国特許第6,277,303号、米国特許第6,284,832号、および米国特許出願公開第2002/0004556号はいずれも、導電性ポリマー組成物を総じて示している。この組成物は主ポリマー相および副ポリマー相を含み、主ポリマー相と副ポリマー相とは非混和性である。副ポリマー相は導電性フィラーを含む。これらの文献はまた、組成物がタルク、シリカ、雲母、カオリン、およびこれらの類似材料の核形成材を含んでもよいことを開示しているが、組成物の導電率に影響を与える前記材料の使用量については開示しておらず、導電性フィラーおよび非導電性フィラーを含む均一な混合物についても何ら開示していない。
【0013】
バンディオパダイ(Bandyopadhyay)らによる米国特許出願公開第2004/0016912号は、伝導性熱可塑性複合材およびその製造方法を開示している。米国特許出願公開第2004/0016912号の複合材は、ポリマー樹脂と、導電性フィラーと、複合材の導電率を上昇させるのに有効な量の多環式芳香族化合物とを含む。多環式芳香族化合物は、粒子間接触の数を増加させることによって、あるいは、導電性粒子間の電子移動に対する抵抗を低下させることによって、複合材の導電率に影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−241607号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、ポリマー組成物であって、ポリマー樹脂と、導電性フィラーと、前記ポリマー組成物全体での前記導電性フィラーのほぼ均一な配置を促進する分散制御剤と、を含み、多環式芳香族化合物を実質的に含まないポリマー組成物が提供される。
【0016】
本発明の別の態様によれば、ポリマー組成物であって、ポリマー樹脂と、導電性フィラーと、サブミクロンからナノサイズの粒子を含まない同一の組成物と比較して、前記ポリマー組成物の導電率を上昇させるのに有効な量の非導電性フィラーと、を含み、多環式芳香族化合物を実質的に含まないポリマー組成物が提供される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、ポリマー組成物であって、ポリマー樹脂と、導電性フィラーと、サブミクロンからナノサイズの非導電性粒子を含まない同一の組成物のパーコレーション閾値と比較して、前記ポリマー組成物のパーコレーション閾値を低下させるのに有効な量のサブミクロンからナノサイズの非導電性粒子と、を含み、多環式芳香族化合物を実質的に含まないポリマー組成物が提供される。
【0018】
本発明の別の態様によれば、ポリマー組成物であって、ポリマー樹脂と、導電性フィラーと、所望の導電率領域における前記導電性フィラーの濃度の変化に対する前記ポリマー組成物の導電率の感度を最小化するのに有効な量の分散制御剤と、を含み、多環式芳香族化合物を実質的に含まないポリマー組成物が提供される。
【0019】
本発明のさらに別の態様によれば、ポリマー組成物の導電率を制御するための方法であって、目的とする導電率を含む所望の導電率の範囲を特定する工程と、有効な量の分散制御剤をポリマー樹脂に添加し、前記所望の導電率の範囲内で前記ポリマー組成物の導電率の感度を最小化させる工程と、前記ポリマー樹脂に導電性フィラーを添加し、前記ポリマー組成物を前記目的とする導電率に調整する工程と、を含む方法が提供される。
【0020】
本発明の上述した特徴および利点ならびにその他の特徴および利点は、図面を参照して以下の説明を理解することによって、当業者に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1a〜図1cは、ポリマーネットワークにおける導電性フィラーの異なる分散配置の模式図である。
【図2a】図2aは、カーボンブラック濃度の関数としてのナイロン6/カーボンブラック組成物の導電率に対する分散制御剤の異なる濃度の作用を示す。
【図2b】図2bは、異なるカーボンブラック濃度におけるナイロン6/カーボンブラック組成物の導電率の関係を示す。
【図3】図3a〜図3cは、10phrのカーボンブラック濃度を有し、0体積%、3体積%、5体積%の有機粘土をそれぞれ含むナイロン6/カーボンブラック組成物のSEM画像であり、図3dは、図3a〜図3cの分析を助けるためのSEM画像の模式図である。
【図4】図4aおよび図4bは、20phrのカーボンブラック濃度を有し、0体積%、5体積%の有機粘土をそれぞれ含むナイロン6/カーボンブラック組成物のSEM画像である。
【図5a】図5aは、10phrのカーボンブラック濃度を有し、0体積%、3体積%、5体積%の有機粘土をそれぞれ含むナイロン6/カーボンブラック組成物の最近接長さの分布を説明する3つのヒストグラムを、各組成物の拡大SEM画像と共に示す。
【図5b】図5bは、20phrのカーボンブラック濃度を有し、0体積%、5体積%の有機粘土をそれぞれ含むナイロン6/カーボンブラック組成物の最近接長さの分布を説明する2つのヒストグラムを、各組成物の拡大SEM画像と共に示す。
【図6】図6は、カーボンブラック一次凝集体の各種分散モードにおけるモリシタの分散指数Iδと分割数qとの関係の模式図である。
【図7】図7は、ナイロン6/カーボンブラック組成物におけるモリシタの分散指数Iδと分割数qとの関係を示す。
【図8】図8aおよび図8bは、(a)3体積%の有機粘土濃度および(b)5体積%の有機粘土濃度をそれぞれ有するナイロン6ナノ複合材のX線回折パターンを示し、黒い層は一次有機粘土プレートレットを示し、灰色/白色領域はNy6マトリックスを示しており(全て拡大画像)、図8cおよび図8dは、20phrのカーボンブラック濃度を有し、(c)3体積%の有機粘土濃度および(d)5体積%の有機粘土濃度をそれぞれ有するナイロン6/カーボンブラック系のX線回折パターンを示す。
【図9】図9aおよび図9bは、20phrのカーボンブラック濃度を有し、(a)3体積%の天然粘土濃度および(b)3体積%の有機粘土濃度をそれぞれ有するナイロン6/カーボンブラック組成物のX線回折パターンと拡大TEM画像を示す。
【図10a】図10aは、20phrのカーボンブラック濃度を有し、3体積%の有機粘土濃度を有するナイロン6/カーボンブラック組成物のTEM画像を示し、黒い球状領域はカーボンブラック一次凝集体を示し、灰色/白色領域はナイロン6ネットワークを示す。
【図10b】図10bは、20phrのカーボンブラック濃度を有し、5体積%の有機粘土濃度を有するナイロン6/カーボンブラック組成物のTEM画像を示し、黒い球状領域はカーボンブラック一次凝集体を示し、灰色/白色領域はナイロン6ネットワークを示している。
【図11a】図11aは、20phrのカーボンブラック濃度を有し、5体積%の有機粘土を含む剪断ナイロン6/カーボンブラック組成物のTEM画像である。
【図11b】図11bは、20phrのカーボンブラック濃度を有し、5体積%の有機粘土を含む剪断ナイロン6/カーボンブラック組成物のTEM画像である。
【図11c】図11cは、カーボンブラックを含まず、5体積%の有機粘土を含む剪断ナイロン6組成物のTEM画像である。
【図12a】図12aは、20phrのカーボンブラック濃度を有し、5体積%の有機粘土濃度を有する押出ナイロン6/カーボンブラック組成物(スクリュー速度:200rpm、230℃)の拡大TEM画像を示し、黒い球状領域はカーボンブラック一次凝集体を示し、黒い層は一次有機粘土プレートレットを示し、灰色/白色領域はナイロン6ネットワークを示す。
【図12b】図12bは、カーボンブラックを含まず、5体積%の有機粘土濃度を有する押出ナイロン6/カーボンブラック組成物(スクリュー速度:200rpm、230℃)の拡大TEM画像を示し、黒い球状領域はカーボンブラック一次凝集体を示し、黒い層は一次有機粘土プレートレットを示し、灰色/白色領域はナイロン6ネットワークを示す。
【図13】図13は、融解ポリマーの非剪断粘度における有機粘土添加誘発パーコレーション現象の提唱メカニズムの模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
パーコレーション理論(percolation theory)は、ランダムネットワークにおいて変化する接続の数を説明するものとして良く知られている。例えば、基板上の穴のアレイを考える。小さな導電性粒子を基板上にランダムに堆積させると、導電性粒子は基板に形成された穴内に入る。隣り合う穴の中の導電性粒子は、電子移動が発生して電気伝導が発生する程度に近接して配置されているため、隣り合う穴に配置された導電性粒子間で電気伝導が発生する。隣り合う導電性粒子の群はクラスターを形成することができ、金属粒子が基板上に堆積されるにしたがって、このクラスターは成長する。その結果、クラスターは基板の一端から他端に広がることができ、基板を横切ってスパニングクラスター(spanning cluster)と呼ばれる連続する導電経路を形成することができる。少なくとも最少数の導電性粒子が堆積されて基板の両端をつなぐまでは、基板を横切る電気伝導は発生しない。しかしながら、このような方法で配列するスパンニングクラスターを形成するために要求される最初のN個の導電性粒子が、スパニングクラスターの統計的確率が重要になる前に堆積される最小の金属粒子数よりも常に多いことが必要である。
【0023】
導電性粒子の堆積時のある時点において、基板を横切る電気伝導の急激な上昇が発生する。このような電気伝導の上昇が発生する時の金属粒子の濃度は、パーコレーション閾値(percolation threshold)(「V」)と呼ばれ、パーコレー
ション閾値よりも低い濃度では基板は主として電気絶縁体として機能する。
【0024】
穴のアレイを含む二次元基板を例に挙げてパーコレーション理論を上述したが、基板に形成され、金属粒子がランダムに充填された穴の三次元アレイについても同様な原理を適用することができる。しかしながら、金属粒子は、基板を横切って配列するだけではなく、基板を通過して三次元的にスパニングクラスターを形成するように配列することが必要である。
【0025】
予期しないことに、多環式芳香族化合物を実質的に含まず、かつ、ポリマーネットワークと、導電性フィラーと、有効な量の分散制御剤とを含むポリマー組成物が、分散制御剤を含まない同一のポリマー組成物と比較して、パーコレーション閾値Vを低下させることが明らかになった。分散制御剤は、ポリマー組成物の導電性フィラーのほぼ均一な配置を促進する任意の材料であることができる。ポリマー組成物内での導電性フィラーのほぼ均一な配置とは、各導電性フィラー粒子が複数の凝集体を形成するように分散され、かつ、該凝集体がランダムに分散されてスパニングクラスターを形成していることを意味する。分散制御剤は、ポリマー樹脂および導電性フィラーの組み合わせにおいて、ポリマー樹脂と導電性フィラーとの間の物理相互作用および化学相互作用の少なくとも1つを促進する。好ましい分散制御剤には、粘土材料が含まれる。分散制御剤によって促進されたほぼ均一な配置を少なくとも部分的な一因として、スパニングクラスターを形成するために必要な導電性フィラー粒子の数、したがって導電性フィラーの濃度が最小化される。
【0026】
図1a〜図1cは、ポリマー組成物内の導電性フィラーのほぼ均一な配置を模式的に示している。図1aは、分散制御剤を使用しない場合の導電性フィラー粒子のランダムな分散の模式図であり、図1aに示す分散をレギュラーモード(Regular Mode)分散と呼ぶ。レギュラーモードにおける導電性フィラー粒子のランダム配置は、凝集体を形成するために分散制御剤を使用した場合に必要とされるよりもかなり高い導電性フィラーの濃度を必要とする。レギュラーモードで分散される凝集体を形成する代わりに、各導電性フィラー粒子がポリマーネットワーク内でランダムに分散される。
【0027】
一方、図1bは、分散制御剤によって促進された導電性フィラー粒子のほぼ均一な配置の一実施形態を模式的に示しており、図1bに示すほぼ均一な配置を凝集モード(Aggregated Mode)分散とも呼ぶ。上述したように、各導電性フィラー粒子は、分散制御剤によって複数の凝集体を形成し、凝集体は全体としてレギュラーモードで分散される。
【0028】
導電性フィラー粒子のほぼ均一な配置または凝集モード分散は、ポリマー組成物内の分散制御剤の濃度に少なくとも部分的に依存して、任意のサイズの凝集体を含むことができる。例えば、図1bの導電性フィラー粒子の凝集体は、図lcに模式的に示す小さな凝集体よりも大きな凝集体である。
【0029】
分散制御剤は、ポリマー樹脂および導電性フィラーの組み合わせにおいて、ポリマー樹脂と導電性フィラーとの間の物理相互作用および化学相互作用の少なくとも1つを促進する任意の材料であることができる。好ましい分散制御剤には、粘土材料が含まれる。層状粘土材料(layered clay material)、層状粘土(layered
clay)、層状材料(layered material)、粘土材料(clay material)、および粘土(clay)は、相互に交換可能な用語として、複数の隣り合う結合層の形態で、有機または無機材料またはそれらの混合物(スメクタイト粘土鉱物等)を意味するものとして使用する。層状粘土はプレートレット(platelet)粒子を含み、通常は膨張性である。プレートレットおよびプレートレット粒子とは、粘土材料の各層または凝集した未結合層(unbound layer)を意味する。これ
らの層は、個々のプレートレット粒子、プレートレット粒子の規則的または不規則的な小凝集体(タクトイド(tactoid))、および/またはタクトイドの小凝集体の形態であってもよい。
【0030】
理論に拘泥することなく、分散制御剤は、導電性フィラー粒子とポリマー樹脂の反応部位との間の相互作用を確立する。ポリマーネットワークと分散制御剤(ここでは「ナノ粒子」とする。)との間の熱力学的な親和性が、ナノ粒子の適切な分散/剥離を可能とするために必要であると考えられる。そのような親和性はいくつかの方法で生じさせることができる。第1の方法は、ポリマーネットワークとナノ粒子との間の強い分子間力の存在を確保することである。強い分子間力は、ナイロン6と粘土ナノ粒子のような極性相互作用あるいはその他の既知の強い結合であってもよい。強い分子間力が存在しない場合には、ポリマーネットワークを変性させて、ポリマーネットワークとナノ粒子との間に親和性を生じさせることができる。例えば、ポリオレフィンをマレイン酸無水物によって変性すると、ポリオレフィンは変性粘土ナノ粒子と相互作用することができる。親和性を高めるために、ナノ粒子の界面化学を変化させてポリマーネットワークとナノ粒子との強い相互作用を促進することができる。ポリマーネットワークとナノ粒子との相互作用が確立されると、部分的および/または完全に分散/剥離した系が得られる。そのような組成物に導電性フィラーを混合することによって、Vの予期しない減少と、所望の導電率範囲におけるパーコレーション曲線の傾きの減少が可能となる。
【0031】
不可能ではないにしても、多相ポリマー材料における導電性フィラーとポリマーネットワークとの相互作用の所定の形態を特定することは非常に困難であるが、該相互作用は、双極子−双極子相互作用等の弱い物理相互作用と、水素結合等の強い化学相互作用との組み合わせであると考えられる。特定の相互作用とは無関係に、最初の導電性フィラー粒子が導入された反応部位でクラスターを形成する代わりに、分散制御剤は、続いて導入された導電性フィラー粒子とポリマー樹脂の利用可能な反応部位との間の相互作用の形成を促進する。その結果、分散制御剤は、ポリマー樹脂の1つの反応部位でクラスターが形成される前に、導電性フィラー粒子とポリマー樹脂の他の反応部位との間の相互作用を優先させる。このようにして、導電性フィラー粒子は、得られるポリマー組成物全体でほぼ均一に分散される。ほぼ均一な分散によって、スパニングクラスターを形成するために必要とされる導電性フィラーの濃度が最小化され、その結果、パーコレーション閾値Vが低下する。
【0032】
また、本発明の分散制御剤による導電性フィラーのほぼ均一な配置によって、導電率と導電性フィラーの濃度との関係は、分散制御剤を使用しない場合のポリマー組成物の同様な関係と比較して、より緩やかになる。分散制御剤を含むポリマー組成物の導電率と導電性フィラーの濃度との関係を示す曲線は、分散制御剤を使用しないポリマー組成物における同様の曲線よりも、所望の領域でより緩やかな傾きを有する。したがって、有効な量の分散制御剤をポリマー組成物に導入することによって、所望の範囲において導電率を正確に制御することができる。
【0033】
ポリマー組成物に含有させる分散制御剤の適切な濃度は、所望の導電率ならびに所望の導電率からの許容範囲のずれに少なくとも部分的に基づいて決定される。図2aは、ポリマー樹脂としてのナイロン6(「Ny6」)と、導電性フィラーとしてのカーボンブラック(「CB」)と、分散制御剤としてのモンモリロナイト(「有機粘土」)とを含むポリマー組成物の導電率に対する導電性フィラー濃度のプロットである。図2aに示すように、分散制御剤を含まないポリマー組成物(「Ny6/CB」組成物)の曲線は、ほぼ傾きのない部分および急激に傾いている部分を有する段階的な曲線である。Ny6/CB組成物のCB濃度を10−7〜10−6S/cmの範囲となる値に調整することは、この範囲のNy6/CB曲線の傾きが急であるため困難であり、この領域ではポリマー組成物の導
電率はCB濃度に非常に敏感となる。CB濃度の小さな変動によって組成物の導電率が大きく変化し、導電率の制御が困難となる。
【0034】
一方、分散制御剤を3体積%含むポリマー組成物(「Ny6/CB/有機粘土」(3体積%)組成物)の曲線は、CB濃度に対してほぼ負の逆指数関係を有する。Ny6/CB/有機粘土(3体積%)組成物のパーコレーション閾値は、Ny6/CB組成物のパーコレーション閾値よりも低いCB濃度で生じ、10−7〜10−6S/cmの導電率範囲内でより緩やかな曲線を有する。Ny6/CB組成物のCB濃度を10−7〜10−6S/cmの範囲となる値に調整することは、この範囲のNy6/CB曲線の傾きが急であるため困難であり、この領域ではポリマー組成物の導電率はCB濃度に影響を受ける。CB濃度の小さな変動によって組成物の導電率の著しい変化が生じ、導電率の制御が困難となる。
【0035】
ポリマー組成物に3体積%の有機粘土を含有させることによって、パーコレーション閾値は約1〜3phr CBに低下し、導電率は約10phr CBで10−7〜10−6S/cmの所望の導電率範囲の下限に達し、約4.5×10−8S/cm/phr CBのより緩やかな傾きが得られる。したがって、導電性フィラー濃度と導電率範囲内の導電性フィラー濃度の変化に対する導電率の感度を最小化させながら、導電率範囲内の所望の導電率を有するポリマー組成物を製造するために、有機粘土の有効量を最適化することができる。
【0036】
本発明のポリマー組成物から製造した成形品およびその他の製品は、導電率における最小の空間的変動(spatial variation)を示す。従来のポリマー組成物から形成された製品は、他の部分と同様に、非常に多くの非導電性部分を通常含む。従来の製品における導電率の空間的変動は、導電性フィラーのランダムな配置によって引き起こされるものと考えられ、導電性フィラーのほぼ均一のネットワークが形成されるかわりに、ポリマー組成物内の不連続な部分でクラスターが形成される。一方、本発明に係る分散制御剤による導電性フィラーの分散によって、全体にわたってほぼ均一な導電率を有するポリマー組成物が得られる。したがって、このポリマー組成物から製造された製品は、導電率が測定される位置とは無関係に、最外面の全ての位置において実質的に同じ導電率を有する。
【0037】
複合材に使用されるポリマー樹脂は、各種の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、およびそれらの1種以上の組み合わせから選択することができる。好適な熱可塑性樹脂の具体例としては、限定されないが、ポリアセタール、ポリアクリル酸、スチレンアクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリエチレン−酢酸ビニル(EVA)、ポリ乳酸(例えばPLLA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン(例えば、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン11、ナイロン12)、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、エチレンプロピレンジエンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、硫化ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレン、パーフルオロアルコキシエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、液晶ポリマー、および上記熱可塑性樹脂の1種を含む混合物が挙げられる。好ましい熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、これらの樹脂の1種以上を含む混合物である。
【0038】
熱可塑性樹脂の混合物の具体例としては、限定されないが、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ナイロン、ポリスルホン/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート/熱可塑性ウレタン、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマーアロイ、ナイロン/エラストマー、ポリエステル/エラストマー、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、アセタール/エラストマー、スチレン−マレイン酸無水物/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリエーテルエーテルケトン/ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン/ポリエーテルイミド、ポリエチレン/ナイロン、ポリエチレン/ポリアセタール、ポリエチレンオキシド/ポリ乳酸、ポリメチルメタクリレート/ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0039】
熱硬化性樹脂の具体例としては、限定されないが、ポリウレタン、天然ゴム、合成ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、シリコーン、およびこれらの熱硬化性樹脂のいずれか1種を含む混合物が挙げられる。熱硬化性樹脂の混合物および熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物も使用することができる。
【0040】
導電性フィラーの具体例としては、カーボンナノチューブ(シングルウオールおよびマルチウオール)、約2.5〜約500nmの直径を有する気相成長炭素繊維、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、グラファイトナノプレートレット、および上記フィラーの1種以上を含む混合物等の炭素フィラーが挙げられる。
【0041】
分散制御剤の具体例としては、限定されないが、少なくともナノメートルスケールのサイズを有する様々な粒子が挙げられる。それらの粒子には、粘土鉱物、有機的に変性された粘土、適切な大きさおよび形状を有する他の無機粒子(ナノ粒子等を含む)、適切な粒径、特定の比表面積、集合構造、および界面化学を有する有機粒子が含まれる。
【0042】
上述したように、本発明のポリマー組成物は、ポリマー組成物に導電性を与える導電性フィラーをさらに含む。好適な導電性フィラーには、固体導電性金属フィラーまたは固体金属フィラーでコーティングされた無機フィラーが含まれる。これらの固体導電性金属フィラーは、ポリマー樹脂に混合する際および完成品を製造する際に使用される条件下で溶融しない導電性金属または合金であってもよい。アルミニウム、銅、マグネシウム、クロム、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタニウムなどの金属およびこれらの金属のうち1種を含む混合物を固体金属粒子としてポリマー樹脂に混合することができる。ステンレス、青銅等の物理混合物および合金も、導電性フィラー粒子の金属成分として使用することができる。また、これらの金属のホウ化物、炭化物等の金属間化合物(例えば二ホウ化チタン)も導電性フィラー粒子の金属成分として使用することができる。酸化スズ、酸化インジウムスズ等の固体非金属導電性フィラー粒子をポリマー樹脂に添加することもできる。固体金属/非金属導電性フィラーは、延伸ワイヤ、チューブ、ナノチューブ、破片、積層体、プレートレット、楕円体、ディスク、およびその他の市販の形態で存在することができる。また、炭素系導電性粒子をこの目的のために使用することもできる。炭素系導電性粒子には、化学的および物理的に変性されたカーボンブラック、カーボンナノファイバー、炭素ナノプレートレット、カーボンナノチューブが挙げられる。金属ナノ粒子は、金属粒子のナノチューブおよびその他の形状の粒子を含むことができる。
【0043】
[実験]
上述した本発明の概括的な説明に加えて、具体的な実施形態を以下に説明する。この実
施形態は、ポリマー樹脂としてのナイロン6(「Ny6」)と、導電性フィラーとしてのカーボンブラック(「CB」)と、分散制御剤としてのモンモリロナイト(「有機粘土」)とを含む。以下の具体的な説明には、Ny6およびCBを含み、かつ分散制御剤を含まない従来のポリマー組成物を比較のために説明して、CB充填Ny6と有機粘土を含むCB充填Ny6とから圧縮成形された製品の電気的特性/CB分散の関係を説明する。
【0044】
CBは公知の有機ナノ粒子であり、ほぼ球形状を有し、ナノメートルオーダーの直径を有する個々の粒子の凝集体から形成されている。CBは通常、様々な酸化状態を有する様々な多環式芳香族炭化水素を含むが、本発明のポリマー組成物は、多環式芳香族化合物を実質的にままない。これは、CBの表面に存在する多環式芳香族炭化水素以外には、多環式芳香族化合物を実質的に添加していないことを意味する。
【0045】
有機粘土は、平らな表面を有する、長さが約200nmで厚みが1nmの柔軟なアルミノケイ酸塩プレートレットを含む層状粘土鉱物無機化合物である。有機粘土は、層間に交換可能なナトリウムカチオンを有し、疎水性であって、かつ、通常は有機分子と相溶性を有していない。しかしながら、ナトリウムカチオンは有機カチオンと交換することができ、有機分子に対する親和性が向上する。
【0046】
有機粘土の剥離されたケイ酸塩プレートレットを有するポリマーマトリックスナノ複合材は、従来の複合材では容易に得ることができない機械的特性およびガスバリア特性を有する。有機粘土のケイ酸塩プレートレットは極性基を有するため、極性官能基を含むポリマーに対して優れた親和性を有する。このことは、Ny6および有機粘土ナノ複合材が相溶性を有し、Ny6と有機粘土との間の界面張力が小さいために物理的性質が向上することの理由の1つであると考えられる。
【0047】
層状ケイ酸塩プレートレットナノ粒子(有機粘土)の化学変性は、ナイロン6などのポリマーマトリックスにおけるインターカレーション、剥離、およびナノ分散に影響を与え、ナノ複合材における新規な物理的特性を生じさせる。ナイロン6マトリックス内の有機粘土は、2つの主要な方法によって分散させることができる。第1の方法は、触媒としての12−アミノラウリル酸またはアミノ酸に結合した長鎖アルキレンで変性させるε−カプロラクタムおよび有機粘土の混合物を用いたin situ重合であり、ナイロン6の正に帯電したアミン末端基が、負に帯電したケイ酸塩プレートレットの表面にイオン結合を直接形成することに付随して、有機粘土の層間距離は、重合時にε−カプロラクタムの存在下で大きく増加する。もう一つの方法は、第4級塩化アンモニウム(有機変性剤)および/または水酸基またはカルボキシル基(官能基)が結合した第4級塩化アンモニウムで変性させるナイロン6と有機粘土の溶融ブレンドである。機械的剪断に伴うナイロン6分子鎖の拡散/浸透によって有機粘土の層間距離が増加し、ナイロン6のアミド基で有機変性剤に結合した官能基との水素結合が形成されるか、あるいは、アミン末端基は純粋なケイ酸塩プレートレットの表面でロンドン(双極子)相互作用等の物理相互作用を有し、ナイロン6と有機粘土との間の界面張力は非常に小さくなる。ただし、インターカレーション/剥離のためのナイロン6−粘土(または有機粘土)の相互作用のメカニズム、ならびに、剪断流がない場合の有機粘土のナノスケール分散の要因(または推進力)のメカニズムは、現在のところ不明である。
【0048】
[材料とサンプルの調製]
2種類の市販のフィルムグレード原料ナイロン6と、3.0体積%および5.0体積%の有機粘土(米国RTP社)を添加した溶融ブレンドナイロン6ナノ複合材を使用した。導電性フィラーナノ粒子として、市販のローストラクチャー(low−structure)ゴムグレードカーボンブラック(CB)(東海カーボン(株)製シースト(Seast)(登録商標) G−SVH:一次粒子径:62nm、N比表面積:32m/g、
DBP吸油量:140cm/100g)を使用した。
【0049】
原料ナイロン6、押出ペレット状のナイロン6ナノ複合材および購入した状態の微粉末状のCBを、溶融ブレンドの前に、80℃で24時間真空中で乾燥した。溶融ブレンドは、通常の密閉式混合機(米国ブラベンダー(Brabender)社製プラスチコーダー(Plasticorder))を使用し、245℃で10分間、60rpmの回転速度で行った。250℃で10分間、20MPaの圧力下で圧縮成形することによって、フィルム(膜厚:0.5mm)とディスク(膜厚:2.0mm、直径:25mm)を成形し、室温で5分間空気冷却した。
【0050】
[導電率測定(ASTM D257,D4496)]
導電率は、直流電圧源を備えたケースレー(Keithley)6487ピコアンメーターを使用してフィルムの厚さ方向で測定した。電圧値は約0.001〜5000Vとした。フィルムのバルク導電率は、4つの導電率測定値の平均として決定し、各導電率測定値は、フィルムの中央領域の異なる位置で得た。
【0051】
[SEM観察]
CBの分散状態を電界放出型SEM(JEOL製)によって観察した。サンプルを液体窒素内で凍結破砕した。凍結破砕面を、真空中で1分間、ポーラロン(Polaron)高エネルギー銀スパッタ装置でコーティングした。
【0052】
[SEM写真のデジタル画像分析]
CB分散の定量分析は、最小2乗法(quadrate method)およびモリシタ(Morishita)の分散指数Iδを使用したSEM写真の統計的な処理によって特徴付けられた。この指数は、分散モードの特徴付けにおいて重要な役割を果たし、以下の式で与えられる。
【0053】
【数1】

式中、δは以下の式で与えられる。
【0054】
【数2】

式中、qはSEM画像の総面積から等分割した要素部分(elemental parts)の数であり、nは第iのセクションの粒子の数であり、Nは粒子の総数であって、以下の式で与えられる。
【0055】
【数3】

【0056】
[結果]
(電気的パーコレーション挙動)
図2aは、有機粘土の添加率が異なる各種のNy6/CBをベースとする組成物のパーコレーション曲線を示し、室温における対数σに対するCB濃度の典型的なプロットを示
しており、図2bは、各CB濃度における有機粘土の体積分率に対する対数σのプロットを示している。導電ネットワークの形成には2つのCB粒子間の直接の接触は必要ではないが、電子トンネルが発生するための十分に近接した関係(通常はナノメートルオーダー)が必要となる。有機粘土を含まないNy6/CB組成物は、CB濃度が30phr(phr=樹脂100部あたりのCBの重量)に達すると約3桁の導電率上昇を示し、パーコレーション閾値Vと決定された。
【0057】
また、図2aは、Ny6/CB/有機粘土(3体積%)組成物およびNy6/CB/有機粘土(5体積%)組成物のパーコレーション曲線を示す。これらの各曲線では、パーコレーション閾値は、有機粘土を含まないNy6/CB組成物よりも低いことは明らかである。パーコレーション閾値は、Ny6/CB/有機粘土(3体積%)組成物では10phr CBとなり、Ny6/CB/有機粘土(5体積%)組成物では20phr CBとなった。
【0058】
また、2つの新規なパーコレーションの特徴が観察された。(i)有機粘土の体積%が減少すると、パーコレーション曲線の傾きはより緩やかになり、パーコレート領域(パーコレーション閾値に続く領域)での傾きは3(5体積%添加)、2.5(3体積%添加)、1.5(0体積%添加)だった。このような挙動は、ナイロン6とCBとの間の強い親和性のためであると考えられる。導電性フィラーに対する親和性のないポリマー樹脂は、粘土濃度が減少すると傾きが増加する場合がある。(ii)導電率は、高CB濃度領域である30,35,40phr CBにおいて、有機粘土の体積%にしたがって増加した。
【0059】
図2bは、ナイロン6−CB複合材における本発明の有機粘土添加誘発パーコレーション現象の概観を示す。Ny6/CB/有機粘土(3体積%)組成物は、低CB濃度(<20phr)で最も高い導電率を示した。中間CB濃度(20phr<CB<40phr)では、Ny6/CB/有機粘土(5体積%)組成物の導電率データが上昇し、Ny6/CB/有機粘土(3体積%)組成物の導電率を超えている。高CB濃度領域(>40phr)では、全ての有機粘土添加ナイロン6−CB系の導電率データはほぼ直線的となり、安定する。各組成物では、ローストラクチャーゴムグレードCBが導電性ナノ粒子として選択され、この導電性ナノ粒子は密集した一次凝集体を有し、この一次凝集体は、分散制御剤を添加しない場合に、この特定のCBが分散してパーコレートネットワーク構造を形成するのを難しくする一次粒子をほとんど含まない。
【0060】
(CBと有機粘土の分散と分布)
図3は、有機粘土の添加率が異なるNy6/CB 10phr系の典型的なSEM像を示している。図3において、元画像の白点(拡大画像の黒点)はCB一次凝集体を示し、元画像の黒領域(拡大画像の灰色領域)はナイロン6ネットワークを示す。各対の像において、左の画像は元画像であり、右の画像は同一のSEM画像の拡大画像である。図3dの模式図は、SEM画像の理解を容易にするためのものである。図3aおよび図3bに示す有機粘土の添加量が0〜3体積%の場合には、それぞれ、図3aの元画像のCB分散は、図3bに示すように、「分岐」および/または「鎖状」モフォロジに転移している。この観察は、Ny6/CB/有機粘土(3体積%)組成物が、図2aに示すパーコレーション閾値Vである約10phr CBでのパーコレーションを達成していることと一致する。また、10phr CB濃度がNy6/CB/有機粘土(5体積%)組成物のパーコレーション閾値Vでないという事実から、有機粘土添加量を3体積%から5体積%に増加させると、Ny6/CB/有機粘土(5体積%)組成物におけるCBの分散状態がパーコレーション構造ではなくなることが分かる。
【0061】
上の段落で述べた内容のさらなる根拠として、20phr CB濃度において有機粘土の添加率が異なるNy6/CB系組成物のSEM像を図4に示す。20phr CB濃度
は、5体積%の有機粘土を添加したNy6/CB組成物のほぼパーコレーション閾値Vであるため、図4bでは、共連続CBネットワーク構造を有する発達した「漁網」モフォロジが観察される。これは、比較的分散されたCB凝集体モフォロジを示す図4aの像と対照的であり、有機粘土を含まないNy6/CB組成物は、20phr CB濃度でパーコレーション閾値Vを達成していないという事実と一致する。図2〜図4における構造成長および電気特性のばらつきは、有機粘土の添加により誘発された高度なパーコレーション現象によって生じたものと仮定することができる。モフォロジメカニズムおよび高度パーコレーションの定義を以下に説明する。
【0062】
図3および図4のさらなるモフォロジ的特徴を明らかにするために、全てのSEM画像に対して画像解析を行った。図5は、有機粘土の添加率が異なるNy6/CB 10phr CB組成物およびNy6/CB 20phr CB組成物の最近接長さ(nearest neighbor length)の分布のヒストグラムを示す。CB分散は、ポリマーマトリックス内でのCB凝集体およびCB/CB間(凝集体間)距離の分布である。図5に示すように、Ny6/CB/有機粘土(3体積%)組成物(図5a)およびNy6/CB/有機粘土(5体積%)組成物(図5b)では、200nmでヒストグラムの鋭いピークが現れている。これらのヒストグラムピークは、パーコレート構造の基準であり、200nmは、Ny6ポリマーネットワークにおけるパーコレーションを達成するためのCB/CB間相互作用のための最近接長さを示す距離である。この観察は図2から導かれる結論を支持するものであり、かつ、10 phr CB濃度および20phr CB濃度はそれぞれ、Ny6/CB/有機粘土(3体積%)組成物のパーコレーション閾値VおよびNy6/CB/有機粘土(5体積%)組成物のパーコレーション閾値Vであることから、図2から導かれる結論が予測される。
【0063】
モフォロジ的特徴に関するさらなる洞察は、モリシタの最小2乗法(quadrate
method)およびモリシタの分散指数を利用するCBの分散状態の定量的画像解析から得られ、モリシタの最小2乗法およびモリシタの分散指数は、モリシタ(Morishita,M.)In Memoirs of the Faculty of Science Ser.E,Biology;九州大学:福岡県,1959;2,215.,カラセック(Karasek,L.);スミタ(Sumita,M.)J.Mater Sci.1996,31,281に開示されている。これらの文献はこの参照によって本発明の開示内容の一部をなすものとする。
【0064】
モリシタの方法によれば、各SEM画像の総面積は、小さな等面積の基本領域に分割され、各領域における点の数が計算される。CB一次凝集体は、図5に示す拡大SEM画像では単一ドットとして定義され、該CB一次凝集体は、以下の式で表される方形数(quadrate number)qの関数としてのモリシタの分散指数Iδに対するCB分散のばらつきをパターン変動のために使用される。
【0065】
【数4】

【0066】
【数5】

式中、qは、SEM画像の総面積から等分割した要素数であり、nは、sem画像の第iの部分において1つのドットとみなされるCB一次凝集体の数であり、Nは、ドット
とみなされるCB一次凝集体の総数である。
【0067】
【数6】

式1〜3に基づき、独自のプログラムソフトウェア(Windows(登録商標)用Image Analysis、バージョン4.10、ASAI(著作権))を使用して画像解析を行った。図6は、CB一次凝集体の各種分散モードにおけるモリシタの分散指数Iδと分割数qとの関係を示す模式図である。
【0068】
図7は、SEM画像から得られた有機粘土の添加率が異なる10phr CB濃度を有するNy6/CB組成物および20phr CB濃度を有するNy6/CB組成物におけるモリシタの分散指数Iδと分割数qとの関係を示す。以下の観察は図2〜図5の根拠となる。
【0069】
10phr CB濃度を有するNy6/CB組成物で有機粘土の添加率が上昇すると、モリシタの分散指数Iδは、Iδ=1(0体積%有機粘土添加)、Iδ>1(3体積%有機粘土添加)、およびIδ<1(5体積%有機粘土添加)のように変化し、これらは図6の符号(b)、(f)、および(a)でそれぞれ示される分散モードの変動に対応している。上記観察は、有機粘土の添加率が0体積%の場合には、CB凝集体の分布は、低分散(under−scattered)CB凝集体モフォロジであるポアソンモードを示すことを示唆している。有機粘土の添加率が3体積%に増加すると、分散は、小さな凝集体が全体としてポアソンモード内で分散された凝集モードに転移する。有機粘土の添加率が5体積%では、分散はレギュラーモードになる。
【0070】
20phr CB濃度を有するNy6/CB組成物では、モリシタの分散指数Iδは、Iδ<1(0体積%有機粘土添加)、Iδ>1(5体積%有機粘土添加)のように変化し、これらは、図6の符号(a)および(c)で示される分散モードの変動に対応している。この観察は、有機粘土の存在が、CB凝集体の分散を、レギュラーモードから、大きな凝集体が全体としてレギュラーモードで分散された凝集モードへと高めることを示唆する。したがって、Ny6ネットワークにおけるCB分散は、低い有機粘土添加率では、有機粘土の存在によってパーコレートネットワーク構造を形成し、高い有機粘土添加率では、CB分散に安定性および規則性が生じる。Ny6/CB組成物における新規な電気的パーコレーション挙動は、有機粘土の添加により誘発された高度なパーコレーション現象によって生じたものと考えられる。
【0071】
本発明の説明に役立てるために、各種溶融ブレンドNy6組成物の有機粘土添加構造の種類を決定した。図8aおよび図8bと図9aおよび図9bは、Ny6ナノ複合材のX線回折パターンと明視野TEM画像を示し、黒い層は一次有機粘土プレートレットを示し、灰色/白色領域はNy6マトリックスを示す(全て拡大画像)。X線回折パターンは認識できる強度ピークを示さず、TEM画像に示すように、有機粘土が十分に剥離および分散していることを示唆していると思われる。
【0072】
上記観察のさらなる根拠として、図8cおよび図8dに、有機粘土の添加率が異なる20phr CB濃度を有するNy6/CB組成物のX線回折パターンを示す。Ny6ナノ複合材にかなりの量のCBが含まれているにもかかわらず、X線回折パターンは滑らかな曲線(完全剥離構造)であり、剥離等の物理的分離による広範な層分離を示唆する。しかしながら、図9aでは、認識できる強度ピークが認められ、TEM画像から明らかであるように、ナイロン6−CB 20phr中に分散された天然粘土は剥離が生じていない。
この観察は、Ny6/CB組成物における高度なパーコレーションの推進力は、少なくとも部分的または完全に剥離された有機粘土の分散状態と関連付けられることを示唆する。
【0073】
(堅い有機炭素と脆い粘土鉱物のモフォロジ)
上述した見解を支持または拒絶する証拠を捜し出すために、異なる有機粘土添加率を有するNy6ナノ複合材およびNy6/CB組成物について、STEMによるリアルタイムのモフォロジ的な選択領域の高分解能観察(×135,000)を行った。その目的は、上述した高度パーコレーション現象のメカニズムについて説明することができるモフォロジ的証拠を探ることであり、特に、硬い球形のCBと脆い粘土プレートレットとの関係を探ることである。図10aおよび図10bには、20phr CB濃度と異なる有機粘土添加率を有する各種Ny6/CB組成物の明視野TEM画像を示し、黒い球状領域はCB一次凝集体を示し、灰色/白色領域はNy6マトリックスを示す。左の画像は元画像であり、右の画像は分割した単一のTEM画像の拡大画像である。矢印は、一次有機粘土プレートレット(または黒い単層)を示す。2つの明らかなモフォロジ的な特徴が観察された。
【0074】
CB/有機粘土は、Ny6マトリックス内において1つの「ナノ単位」として振る舞い、異なる有機粘土添加率とは無関係に、ナノ粒子(硬い球状CBと脆い粘土プレートレット)の2つの異なる弾性特性間の交渉(communion)、幾何学、および構造の可能な範囲にある。この興味深い「ナノ単位」モフォロジは、無剪断粘性流下で有機粘土/ナイロン6/CBの間には強い好ましい分子間相互作用があることを示唆している。
【0075】
図9に示すように、脆い一次有機粘土プレートレットは実質的に変形し、その幾何学にしたがって硬い岩石状のCB一次凝集体を部分的に包み込む。観察されたモフォロジは、変形した脆い有機粘土プレートレットが、一定の許容範囲の曲げおよび/または変形に対する柔軟性を有することを示している。しかしながら、CBと直接接触することは必要とせず、Ny6有機調整剤の相間厚みによって分離された1.07〜1.42nmの範囲で近接していればよい。一次有機粘土プレートレットの厚みは0.7nmであり、プレートレットの長さは200〜300nmの範囲である。一次CB粒子の直径は約60nmである。これらの値は、報告されている値(一次粘土プレートレットの厚みおよび長さはそれぞれ1.0nmおよび200nmであり、一次CB粒子モフォロジの直径は62nmである。)と非常に近い。
【0076】
CB/有機粘土挙動の「ナノ単位」モフォロジに対する様々な熱履歴ならびに剪断フィールドでの剪断粘性流の作用を調査するために、様々なNy6系の等方成形ディスクに対して、レオロジー測定を使用して等温剪断(isothermal shearing)を与えた。原料は、二軸スクリュー押出機を使用して非等温混合した。図11は、剪断部分のTEM画像(ω=50rad/秒、230℃、200秒間)を示し、図12は、押出部分のTEM画像(スクリュー速度:200rpm、230℃)を示し、黒い球状領域はCB一次凝集体を示し、黒い層は一次有機粘土プレートレットを示し、灰色/白色領域はNy6マトリックスを示している(全て拡大画像)。剪断方向を矢印で示す。5体積%の有機粘土添加率を有する剪断および押出Ny6ナノ複合材の有機粘土分散(図10cと図11b)は、図9aに示す不規則な配向を有するナイロン6ナノ複合材の有機粘土分散とは異なり、剪断方向に沿ったナノスケールの有機粘土の配向を示している。配向した一次有機粘土プレートレットは、剪断方向に沿ってさらに高められた直線的配置を示しており、これは機械的剪断によって引き起こされた初期粘土プレートレットの人工的な再配向である。Ny6ナノ複合材におけるCBネットワークの存在によって、剪断流の下で配向が生じたものと思われる。しかしながら、有機粘土分散体の配向は不規則となる。CBの存在によって引き起こされた配向の不規則性は存在するが、一次有機粘土プレートレットはCB自由流路(図l1bおよび図12a)内で配向し続けている。図10aに含まれる重
要な点は、脆い一次有機粘土プレートレットが実質的に変形し、その幾何学にしたがって、硬いCB一次凝集体を部分的に包み込み、剪断フィールドにおいてもCB/有機粘土挙動の特定の「ナノ単位」モフォロジが得られることである。この観察は、図9からなされる観察を支持するものであり、このモフォロジデータは、一次粘土プレートレットの柔軟性に関して新規な特徴を有する好ましい分子間相互作用によって、有機粘土/Ny6/CB間の界面結合の強度を反映している。
【0077】
図13は、有機粘土/Ny6/CB間の熱力学的な物理的/化学的分子間相互作用に対する高度パーコレーションであると我々が考えるメカニズムを示す。有機粘土が存在しない場合には、CBの分散状態はランダム分散であり、制御することができない。3体積%の有機粘土を添加することによって、CBは導電ネットワークを形成し、元のNy6/CB系のパーコレーション閾値よりも低い初期パーコレーションが得られる。有機粘土の添加率をさらに増加させると、導電率を制御することができる「安定性」および/またはレギュラー分散をCBの分散状態にもたらす。
【0078】
多相ポリマー材料における相互作用の形態を明らかにすることは、不可能ではないにしても、非常に困難であることが判明したけれども、有機粘土/Ny6/CBの各成分は、非常に反応性の高い部位および極性官能基を有するため、相互作用の形態は、弱い物理相互作用(双極子相互作用)と強い化学相互作用(水素結合)との組み合わせに起因する。を含む、ポリマー組成物の導電率の制御方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
ポリマー樹脂と、
導電性フィラーと、
前記ポリマー組成物全体での前記導電性フィラーのほぼ均一な配置を促進する分散制御剤と、
を含み、
多環式芳香族化合物を実質的に含まない、ポリマー組成物。
【請求項2】
請求項1において、
ポリマーネットワークが熱可塑性ポリマーを含む、ポリマー組成物。
【請求項3】
請求項1において、
ポリマーネットワークが熱硬化性ポリマーを含む、ポリマー組成物。
【請求項4】
請求項1において、
ポリマーネットワークが、ポリアミド、ポリエステル、およびポリオレフィンからなる群から選択されるポリマーを含む、ポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1において、
前記導電性フィラーが、カーボンブラック、導電性カーボンブラック、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される、ポリマー組成物。
【請求項6】
ポリマー組成物であって、
ポリマー樹脂と、
導電性フィラーと、
サブミクロンからナノサイズの粒子を含まない同一の組成物と比較して、前記ポリマー組成物の導電率を上昇させるのに有効な量の非導電性フィラーと、
を含み、
多環式芳香族化合物を実質的に含まない、ポリマー組成物。
【請求項7】
請求項6において、
前記導電性フィラーが、カーボンブラック、導電性カーボンブラック、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される、ポリマー組成物。
【請求項8】
請求項6において、
前記非導電性フィラーが、サブミクロンまたはナノメートルの粒径を有する粒子状フィラーである、ポリマー組成物。
【請求項9】
請求項6において、
前記非導電性フィラーを含まない同一のポリマー組成物のパーコレーション閾値よりも低いパーコレーション閾値を有する、ポリマー組成物。
【請求項10】
ポリマー組成物であって、
ポリマー樹脂と、
導電性フィラーと、
サブミクロンからナノサイズの粒子を含まない同一の組成物のパーコレーション閾値と比較して、前記ポリマー組成物のパーコレーション閾値を低下させるのに有効な量のサブミクロンからナノサイズの非導電性フィラーと、を含み、
多環式芳香族化合物を実質的に含まない、ポリマー組成物。
【請求項11】
ポリマー組成物であって、
ポリマー樹脂と、
導電性フィラーと、
所望の導電率領域における前記導電性フィラーの濃度の変化に対する前記ポリマー組成物の導電率の感度を最小化するのに有効な量の分散制御剤と、
を含み、
多環式芳香族化合物を実質的に含まない、ポリマー組成物。
【請求項12】
目的とする導電率を含む所望の導電率の範囲を特定する工程と、 有効な量の分散制御剤をポリマー樹脂に添加し、前記所望の導電率の範囲内で前記ポリマー組成物の導電率の感度を最小化させる工程と、 前記ポリマー樹脂に導電性フィラーを添加し、前記ポリマー組成物を前記目的とする導電率に調整する工程と、を含む、ポリマー組成物の導電率の制御方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−177131(P2012−177131A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111657(P2012−111657)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【分割の表示】特願2006−522069(P2006−522069)の分割
【原出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(505395700)ザ ユニバーシティ オブ アクロン (20)
【氏名又は名称原語表記】The University of Akron
【住所又は居所原語表記】302 E. Buchtel Common, Akron, OH 44325 U.S.A.
【Fターム(参考)】