説明

導電性ポリマーおよびそれを用いた半導電性組成物、ならびに電子写真機器用半導電性部材

【課題】コストが安く、導電性および溶解性の双方の特性に優れた導電性ポリマーを提供する。
【解決手段】ドーパントとして下記の(B)成分を用い、このドーパントにより下記の(A)成分を導電化してなる溶剤可溶な導電性ポリマーである。
(A)π電子共役系ポリマー。
(B)スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方の官能基と、フッ化アルキル基とを有するオキシアルキレン系化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマーおよびそれを用いた半導電性組成物、ならびに電子写真機器用半導電性部材に関するものであり、詳しくは、導電性ポリマーを主成分とする半導電性組成物を用いた、現像ロール等の電子写真機器用半導電性部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、ポリアニリン等のπ電子共役系高分子は、ドーパントを用いてドーピングすることにより、導電性ポリマーとすることができる。しかし、ドーパントにより、導電性ポリマーの溶剤への溶解性が悪くなる。
【0003】
そこで、ドーピングしていない脱ドープ状態にすると、ポリマーに溶解性を付与でき、ポリマーが溶剤に可溶となり、コーティングが可能となる。例えば、脱ドープ状態でポリアニリンを合成すると、得られたポリアニリンが、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)という非常に高沸点の溶剤に可溶となり、コーティングが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−324882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の合成法では、ポリマーに導電性を付与するために、ハロゲンガス等によるドーピングが後処理として必須となるため、均一な制御が難しく、工程も煩雑となる。一方、脱ドープ状態にせず、アニリン等のモノマー主鎖に、長鎖アルキル置換基を導入することにより、溶解性を付与することも可能であるが、原料であるモノマーのコストが高いため、工業的使用には制約がある。このように、コストが安く、導電性および溶解性の双方の特性に優れた導電性ポリマーは、未だ得られていないのが実情であり、このような導電性ポリマーの開発が待望されている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、コストが安く、導電性および溶解性の双方の特性に優れた導電性ポリマーおよびそれを用いた半導電性組成物、ならびに電子写真機器用半導電性部材の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)成分を、ドーパントにより導電化してなる溶剤可溶な導電性ポリマーであって、上記ドーパントが下記の(B)成分である導電性ポリマーを第1の要旨とする。
(A)π電子共役系ポリマー。
(B)スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方の官能基と、フッ化アルキル基とを有するオキシアルキレン系化合物。
【0007】
また、本発明は、上記導電性ポリマーを主成分とする半導電性組成物を第2の要旨とし、上記半導電性組成物を、半導電性部材の少なくとも一部に用いた電子写真機器用半導電性部材を第3の要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明者らは、コストが安く、導電性および溶解性の双方の特性に優れた導電性ポリマーを得るため、鋭意研究を重ねた結果、2以上のアルキル置換基を有し、そのアルキル置換基の炭素数の合計が10〜37であるアルキルベンゼンスルホン酸またはその塩をドーパントして用い、これによりπ電子共役系ポリマーを導電化してなる溶剤可溶な導電性ポリマーについて、先に特許出願した(特願2004−246802号)。この特願2004−246802号の内容についてさらに改良を図るため研究を続けたところ、過酷な高温高湿下では、ドーパントが遊離し、π電子共役系ポリマーが凝集する傾向がみられることを突き止めた。そこで、本発明者らは、過酷な高温高湿下でも遊離が少ないドーパントについて研究を重ねた結果、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方の官能基と、フッ化アルキル基とを有するオキシアルキレン系化合物を突き止め、これをドーパントとして用いて、π電子共役系ポリマーを導電化すると、所期の目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方の官能基と、フッ化アルキル基とを有するオキシアルキレン系化合物(ドーパント)により導電化してなる本発明の導電性ポリマーは、湿熱環境下でもπ電子共役系ポリマーの凝集が殆どみられず、電気抵抗の変動が小さく、導電性に優れるとともに、汎用溶剤に可溶となるという効果が得られる。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の導電性ポリマーは、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方の官能基と、フッ化アルキル基とを有するオキシアルキレン系化合物をドーパントして用い、π電子共役系ポリマーを導電化したものである。そのため、湿熱環境下でもπ電子共役系ポリマーの凝集が殆どみられず、電気抵抗の変動が小さく、導電性に優れるとともに、汎用溶剤(メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,アセトン等のケトン系溶剤や、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル系溶剤等)に可溶となるという効果が得られる。
【0010】
上記オキシアルキレン系化合物として、後記の一般式(1)で表される構造単位を有する化合物を用いると、導電性ポリマーとして疎水化でき、耐湿熱性が向上するという効果が得られる。
【0011】
また、上記オキシアルキレン系化合物中のフッ化アルキル基が、炭素数1〜4のフッ化アルキル基であると、導電性ポリマーへのドーピング効率が高くなるという効果が得られる。
【0012】
また、上記オキシアルキレン系化合物の数平均分子量が300〜4500の範囲内であると、溶剤や,エラストマー等のバインダーポリマーとの相溶性が良好になるという効果が得られる。
【0013】
そして、上記π電子共役系ポリマーが、アニリン,ピロール,チオフェンおよびこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つのモノマーから誘導されたものであると、電気特性が安定で、エラストマー等のバインダーポリマーとの親和性が高くなるという効果が得られる。
【0014】
また、上記半導電性組成物を、半導電性部材の少なくとも一部に用いた電子写真機器用半導電性部材は、低温・低湿、高温・高湿の環境で、均一かつ耐久性に優れた画像を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
本発明の導電性ポリマーは、特定のオキシアルキレン系化合物(B成分)をドーパントとして用い、これによりπ電子共役系ポリマー(A成分)を導電化してなる溶剤可溶な導電性ポリマーである。
【0017】
ここで、本発明においては、ドーパントとして、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方の官能基と、フッ化アルキル基とを有するオキシアルキレン系化合物(B成分)を用いるのであって、これが最大の特徴である。
【0018】
上記π電子共役系ポリマー(A成分)とは、π電子が共役できる構造、または単結合と多重結合とが交互に連なった構造をとることが可能なポリマーをいい、例えば、アニリン、ピロール、チオフェンおよびこれらの誘導体等のモノマーから誘導されるポリマーがあげられる。また、上記モノマーは、炭素数1〜4のアルキル置換基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)およびアルコキシ置換基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)の少なくとも一方の置換基を有しているものが、溶解性の点から、好ましい。上記π電子共役系ポリマー(A成分)としては、具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ3−メチルピロール、ポリチオフェン、ポリ3−メチルチオフェン、ポリo−トルイジン、ポリo−アニシジン、ポリo−エチルアニリン、ポリsec−ブチルアニリン等があげられる。
【0019】
なお、上記π電子共役系ポリマー(A成分)の重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水や過酸化ベンゾイル等の過酸化物、クロラニル等のベンゾキノン、塩化第二鉄等の化学酸化剤を用いることが可能である。
【0020】
つぎに、上記π電子共役系ポリマー(A成分)とともに用いられる、特定のオキシアルキレン系化合物(B成分)は、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方の官能基と、フッ化アルキル基とを有するものであれば特に限定はない。上記スルホン酸塩基としては、例えば、スルホン酸ナトリウム塩基,スルホン酸カリウム塩基等のスルホン酸金属塩基や、スルホン酸アンモニウム塩基、スルホン酸ピリジウム塩基等があげられる。
【0021】
上記特定のオキシアルキレン系化合物(B成分)としては、例えば、下記の一般式(1)で表される構造単位を有する化合物等があげられる。
【0022】
【化1】

【0023】
上記一般式(1)において、Rfで表される鎖長が1〜8の炭素原子を有するフッ化アルキル基としては、例えば、−Cn 2n+1(n=1〜8),−CH2 n 2n+1(n=1〜7),−C2 4 n 2n+1(n=1〜6)等があげられ、具体的には、−CF3 、−CH2 CF3 、−CH2 CF2 CF3 ,−CH2 CH2 4 9 等があげられる。
【0024】
上記特定のオキシアルキレン系化合物(B成分)の数平均分子量(Mn)は、300〜4500の範囲内が好ましく、特に好ましくは600〜2000の範囲内である。すなわち、特定のオキシアルキレン系化合物(B成分)の数平均分子量(Mn)が300未満であると、溶剤やエラストマーとの溶解性が悪化し、逆に4500を超えると、効率的なドーピングが起こらなくなる傾向がみられるからである。
【0025】
ここで、上記π電子共役系ポリマー(A成分)と、特定のオキシアルキレン系化合物(B成分)とのモル混合比は、A成分/B成分=1/0.01〜1/10範囲内が好ましく、特に好ましくはA成分/B成分=1/0.1〜1/2の範囲内である。
【0026】
本発明の導電性ポリマーは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、上記π電子共役系ポリマー(A成分)のモノマー(例えば、アニリン)と、特定のオキシアルキレン系化合物(B成分)と、塩酸,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン(MIBK)等の有機溶剤の混合溶媒等とをフラスコ中に所定量入れ、所定温度(5〜10℃程度)に制御しながら、過硫酸アンモニウム等の酸化剤を数時間(通常、1時間程度)かけて滴下し、数時間(通常、10時間程度)酸化重合させて、重合物を得る。つぎに、この重合物を水とメタノールで洗浄し、精製することにより、目的とする導電性ポリマーを調製することができる。
【0027】
本発明の導電性ポリマーは、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトン(MIBK),アセトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶剤等に可溶である。
【0028】
つぎに、本発明の半導電性組成物は、上記本発明の導電性ポリマーを主成分とするものである。なお、本発明において、主成分とは、通常、全体の過半を占める成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。
【0029】
本発明の半導電性組成物には、上記本発明の導電性ポリマーとともに、π電子非共役系ポリマー、導電剤等を必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0030】
本発明において、π電子非共役系ポリマーとは、上記π電子共役系ポリマー(A成分)のように、単結合と多重結合とが交互に連なったポリマー以外のポリマーを意味する。
【0031】
なお、上記π電子非共役系ポリマーは、水には溶解せず、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶剤,トルエン等の芳香族系溶剤等に溶解するものが、乾燥速度の制御が可能となり、塗工性が良好となるため好ましい。
【0032】
上記π電子非共役系ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー,ウレタン系ポリマー,熱可塑性樹脂ポリマー,熱硬化性樹脂ポリマー,ゴム系ポリマー,熱可塑性エラストマー等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0033】
上記π電子非共役系ポリマーは、さらにスルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方のスルホン酸官能基を有するものが好ましいが、有していなくてもよい。上記スルホン酸官能基としては、例えば、スルホン酸基や、スルホン酸塩基(スルホン酸ナトリウム塩基,スルホン酸カリウム塩基等のスルホン酸金属塩基、スルホン酸アンモニウム塩基、スルホン酸ピリジウム塩基等)等があげられる。
【0034】
上記π電子非共役系ポリマー中のスルホン酸官能基量は、溶解性の点から、0.001〜0.75mmol/gの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.02〜0.5mmol/gの範囲内である。
【0035】
上記スルホン酸官能基量の測定は、例えば、上記π電子非共役系ポリマーをフラスコで燃焼させ、イオンクロマトグラフ法でイオウ元素量を求め、これをスルホン酸官能基量として換算することにより求めることができる。
【0036】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリヒドロキシメタクリレート、アクリルシリコーン系樹脂、アクリルフッ素系樹脂、公知のアクリルモノマーを共重合したもの等があげられる。また、このアクリル系ポリマーは、前述のように、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方のスルホン酸官能基をさらに有していてもよく、スルホン酸官能基の導入方法としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)等のスルホン酸基またはスルホン酸塩基を有するビニルモノマーと、ラジカル,アニオン,カチオンとを共重合する方法や、スルホン酸基を有するジオールモノマーを、ウレタン反応,エステル交換反応で導入する方法等があげられる。
【0037】
上記ウレタン系ポリマーとしては、例えば、分子構造中にウレタン結合を有する樹脂であれば特に限定はなく、例えば、エーテル系,エステル系,アクリル系,脂肪族系等のウレタンや、それにシリコーン系ポリオールまたはフッ素系ポリオールを共重合させたもの等があげられる。また、上記ウレタン系ポリマーは、前述のように、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方のスルホン酸官能基をさらに有していてもよい。なお、ウレタン系樹脂は、分子構造中にウレア結合またはイミド結合を有するものであってもよい。
【0038】
上記熱可塑性樹脂ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、酢酸ビニル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体等があげられる。また、上記熱可塑性樹脂ポリマーは、前述のように、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方のスルホン酸官能基をさらに有していてもよい。
【0039】
上記熱硬化性樹脂ポリマーとしては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、ポリイミド系樹脂等があげられる。また、上記熱硬化性樹脂ポリマーは、前述のように、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方のスルホン酸官能基をさらに有していてもよい。
【0040】
上記ゴム系ポリマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素添加NBR(H−NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム、クロロプレンゴム(CR)、塩素化ポリエチレン(Cl−PE)、エピクロロヒドリンゴム(ECO,CO)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンポリマー(EPDM)、フッ素ゴム等があげられる。また、上記ゴム系ポリマーは、前述のように、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方のスルホン酸官能基をさらに有していてもよい。
【0041】
上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS),スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等のスチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー等があげられる。また、上記熱可塑性エラストマーは、前述のように、スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方のスルホン酸官能基をさらに有していてもよい。
【0042】
上記π電子非共役系ポリマーのなかでも、合成プロセスの簡便さ、溶剤との溶解性、物性(摩耗性、強度)の点で、スルホン酸官能基を有するTPU、スルホン酸官能基を有するアクリル系ポリマーが好適に用いられる。
【0043】
つぎに、上記導電剤としては、特に限定はなく、例えば、カーボンブラック,c−ZnO(導電性酸化亜鉛),c−TiO2 (導電性酸化チタン),c−SnO2 (導電性酸化錫),グラファイト等の電子導電剤や、過塩素酸リチウム,第四級アンモニウム塩,ホウ酸塩のようなポリマーに溶解する化合物等のイオン導電剤があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0044】
上記電子導電剤の配合割合は、上記π電子共役系ポリマー(A成分)の原料(モノマー)と、上記特定のオキシアルキレン系化合物(B成分)との合計100重量部(以下「部」と略す)部に対して、5〜80部の範囲内が好ましく、特に好ましくは8〜20部の範囲内である。
【0045】
また、上記イオン導電剤の配合割合は、上記π電子共役系ポリマー(A成分)の原料(モノマー)と、上記特定のオキシアルキレン系化合物(B成分)との合計100部に対して、0.01〜5部の範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5〜2部の範囲内である。
【0046】
なお、本発明の半導電性組成物には、上記導電性ポリマー、π電子非共役系ポリマーおよび導電剤とともに、架橋剤、架橋促進剤、老化防止剤等を必要に応じて配合しても差し支えない。
【0047】
上記架橋剤としては、例えば、硫黄、イソシアネート、ブロックイソシアネート、メラミン等の尿素樹脂、エポキシ硬化剤、ポリアミン硬化剤、ヒドロシリル硬化剤、パーオキサイド等があげられる。なお、上記架橋剤とともに、紫外線や電子線等のエネルギーによってラジカルを発生する光開始剤を併用しても差し支えない。
【0048】
上記架橋剤の配合割合は、物性、粘着、液保管性の点から、上記π電子共役系ポリマー(A成分)の原料(モノマー)と、上記特定のオキシアルキレン系化合物(B成分)との合計100部に対して、1〜30部の範囲内が好ましく、特に好ましくは3〜10部の範囲内である。
【0049】
また、上記架橋促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系架橋促進剤、白金化合物、アミン触媒、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤等の公知のものがあげられる。
【0050】
本発明の半導電性組成物は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、前述の方法に従い、導電性ポリマーを作製する。つぎに、この導電性ポリマーに、導電剤を配合するとともに、上記架橋剤,他種のポリマー等を必要に応じて配合する。そして、これらを溶剤に溶かさずにロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することや、溶剤に溶かして溶液化し、ビーズミルや三本ロールを用いて分散することにより、目的とする半導電性組成物を得ることができる。
【0051】
上記溶剤としては、例えば、m−クレゾール、メタノール、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の有機溶剤等があげられる。
【0052】
本発明の半導電性組成物は、上記のように、導電性ポリマー等を溶剤に溶解したコーティング液をコーティングすることにより成膜化できるが、これに限定するものではなく、押出成形法、インジェクション成形法、インフレーション成形法等により、成膜化することも可能である。
【0053】
つぎに、本発明の半導電性組成物を用いた電子写真機器用半導電性部材について説明する。
【0054】
本発明の電子写真機器用半導電性部材は、上述の半導電性組成物を半導電性部材の少なくとも一部(全部もしくは一部)に用いることにより得ることができる。この電子写真機器用半導電性部材としては、例えば、現像ロール,帯電ロール,転写ロール,トナー供給ロール等の導電性ロール、中間転写ベルト,紙送りベルト等の導電性ベルト等があげられ、これらの構成層の少なくとも一部に用いられる。すなわち、本発明の半導電性組成物を、電子写真機器用半導電性部材の構成層の少なくとも一部に用いると、この半導電性組成物を用いて形成した構成層の電気抵抗の電圧依存性および環境依存性が小さくなり、他の構成層へは、この半導体組成物層を通った電流となるため、電気抵抗の電圧依存性および環境依存性の影響を受けにくくなる。その結果、電子写真機器用半導電性部材全体としての電気抵抗の電圧依存性および環境依存性が小さくなるため、濃度むら等が少なくなり、変動のない良好な画質が得られる等の電子写真機器としての性能の向上を実現することができるようになる。
【実施例】
【0055】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0056】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0057】
〔オキシアルキレン系化合物a(B成分)〕
下記の構造式(2)で表されるオキシアルキレン系化合物〔Mn:663〕
【0058】
【化2】

【0059】
〔オキシアルキレン系化合物b(B成分)〕
下記の構造式(3)で表されるオキシアルキレン系化合物〔Mn:1222〕
【0060】
【化3】

【0061】
〔オキシアルキレン系化合物c(B成分)〕
下記の構造式(4)で表されるオキシアルキレン系化合物〔Mn:1877〕
【0062】
【化4】

【0063】
〔オキシアルキレン系化合物d(B成分)〕
下記の構造式(5)で表されるオキシアルキレン系化合物〔Mn:4412〕
【0064】
【化5】

【0065】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0066】
〔実施例1〕
アニリン〔π電子共役系ポリマー(A成分)のモノマー〕1モル(93g)と、上記オキシアルキレン系化合物a(B成分)1モル(663g)と、1N塩酸とメチルイソブチルケトン(MIBK)との混合溶剤〔1N塩酸/MIBK=2/1(混合重量比)〕2000mlとをフラスコ中に入れ、5〜10℃に制御し攪拌しながら、1N塩酸1000mlに溶解した過硫酸アンモニウム(酸化剤)1モル(228.2g)を1時間かけて滴下し、10時間酸化重合させて、重合物を得た。つぎに、この重合物を水とメタノールで洗浄し、乾燥して導電性ポリマーを得た。
【0067】
〔実施例2〜7〕
π電子共役系ポリマー(A成分)のモノマー、オキシアルキレン系化合物、酸化剤もしくは溶剤の種類や配合割合等を、下記の表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様にして、導電性ポリマーを得た。
【0068】
【表1】

【0069】
〔比較例1〕
アニリン1モル(93g)と、ペンタデシルベンゼンスルホン酸(ドーパント)1モル(368g)と、1N塩酸とメチルイソブチルケトン(MIBK)との混合溶剤〔1N塩酸/MIBK=2/1(混合重量比)〕2000mlとをフラスコ中に入れ、5〜10℃に制御し攪拌しながら、1N塩酸1000mlに溶解した過硫酸アンモニウム(酸化剤)1モル(228.2g)を1時間かけて滴下し、10時間酸化重合させて、重合物を得た。つぎに、この重合物を水とメタノールで洗浄し、乾燥して導電性ポリマーを得た。
【0070】
〔比較例2〕
特開2002−179911号公報の実施例4に準じて、導電性ポリマー(導電性ポリアニリン)を得た。
【0071】
(アニリンの酸化重合によるドープ状態のキノンジイミン・フェニレンジアミン型導電性ポリアニリンの調製)
攪拌装置、温度計および直管アダプターを備えた10リットル容量セパラブル・フラスコに、蒸留水6000g、36%塩酸360mlおよびアニリン400g(4.295モル)をこの順序にて仕込み、アニリンを溶解させた。別に、氷水にて冷却しながら、ビーカー中の蒸留水1493gに97%濃硫酸434g(4.295モル)を加え、混合して、硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液を上記セパラブル・フラスコに加え、フラスコ全体を低温恒温槽にて−4℃まで冷却した。つぎに、ビーカー中にて蒸留水2293gにペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モル)を加え、溶解させて、酸化剤水溶液を調製した。フラスコ全体を低温恒温槽で冷却して、反応混合物の温度を−3℃以下に保持しつつ、攪拌下にアニリン塩の酸性水溶液に、チュービングポンプを用いて、直管アダプターから上記ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液を1ml/分以下の割合にて徐々に滴下し、重合体粉末を得た。この重合体粉末を濾別し、水洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥して、黒緑色のキノンジイミン・フェニレンジアミン型導電性ポリアニリン粉末430gを得た。
【0072】
(導電性有機重合体の脱ドーピングによるキノンジイミン・フェニレンジアミン型溶剤可溶性ポリアニリンの調製)
上記ドープされている導電性ポリアニリン粉末350gを、2Nアンモニア水4リットル中に加え、オートホモミキサーを用いて回転数5000rpmにて5時間攪拌した。ブフナー漏斗にて粉末を濾別し、ビーカー中にて攪拌しながら、蒸留水にて濾液が中性になるまで繰り返して洗浄し、続いて、濾液が無色になるまでアセトンにて洗浄した。この後、粉末を室温にて10時間真空乾燥して、黒褐色の脱ドーピングした溶剤可溶性キノンジイミン・フェニレンジアミン型ポリアニリン粉末280gを得た。つぎに、N−メチル−2−ピロリドン90gに、フェニルヒドラジン1.49gを溶解させ、ついで、上記溶剤可溶性キノンジイミン・フェニレンジアミン型ポリアニリン10gを攪拌下に溶解させた。この溶液をG2フィルターにて減圧濾過して、ポリアニリン溶液を得た。つぎに、ポリスチレンスルホン酸(5.5mmol/g)0.76gと、トリエチルアミン0.42gとを、N−メチル−2−ピロリドン3.68gに溶解させて溶液を得た。この溶液4.86gと、上記にて得られた10重量%のポリアニリン溶液5.0gとを混合し、得られた混合物を脱泡処理し、導電性ポリマー溶液とした。
【0073】
このようにして得られた実施例および比較例の導電性ポリマーを用いて、下記のようにして各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表2および表3に併せて示した。
【0074】
〔溶解度〕
各導電性ポリマーを各種溶剤(THF、MEK、アセトン、酢酸エチル)に混合し、攪拌して各種溶剤に対する溶解度を測定した。なお、比較例1,2については、溶剤を揮発、乾燥させたものに対する溶解度を測定した。
【0075】
〔フリードーパント量〕
各導電性ポリマー中のフリー(遊離)ドーパント量を、熱重量分析法(TGA)に準じて測定した。すなわち、乾燥した導電性ポリマー10mgを、窒素雰囲気下、30〜750℃まで20℃/分の昇温速度で上昇させた後、空気中で900℃まで20℃/分の昇温速度で上昇させた。そして、このときの加熱減量から、ドーピングに関与していないドーパント量(フリードーパント量)を求めた。
【0076】
〔電気抵抗〕
(初期)
各導電性ポリマーをTHFに混合し、超音波処理した後、アプリケータを用いてガラス板上にキャスティングし、乾燥(120℃×30分)して塗膜(厚み5μm)を形成した。そして、この塗膜の電気抵抗を、25℃×50%RHの環境下、4端子法で電気抵抗を求めた(ダイヤインストルメント社製、ロレスタGP)。なお、比較例2については、THFへの溶解性が極端に低いため、またはNMPは150℃では揮発が充分できないため、水に溶解し、キャスティングを行った。
【0077】
(オゾン後の変動桁数)
上記塗膜を50℃×80pphmのオゾン環境下に1ヶ月放置し、その後の電気抵抗を上記と同様にして測定した。そして、初期とオゾン後の電気抵抗の変動桁数を求めた。
【0078】
〔湿熱後の変動桁数〕
上記塗膜を50℃×95%RHの湿熱環境下に1ヶ月放置し、その後の電気抵抗を上記と同様にして測定した。そして、初期と湿熱後の電気抵抗の変動桁数を求めた。
【0079】
〔ブリード〕
各導電性ポリマーを用いて、上記と同様にして塗膜を形成し、塗膜からのドーパントのブリードの有無を、目視と指触により観察した。
【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
上記結果から、実施例品は、溶解性に優れ、湿熱環境下での電気抵抗の変動が小さく、導電性に優れていた。
【0083】
これに対して、比較例1品は、高温高湿(50℃×95%RH)の環境下では、ドーパント(ペンタデシルベンゼンスルホン酸)が遊離し、フリードーパント量が高かった。そのため、ポリアニリンが凝集してブリードが生じた。また、湿熱環境下での電気抵抗の変動も大きかった。比較例2品は、溶剤への溶解性が著しく劣っていた。
【0084】
つぎに、上記導電性ポリマーを用いた半導電性組成物の実施例について、比較例と併せて説明する。
【0085】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0086】
〔π電子非共役系ポリマーa(カーボネート系TPU)〕
分子構造中にスルホン酸基を有しないカーボネート系TPU(日本ミラクトラン社製、E980)
【0087】
〔π電子非共役系ポリマーb(PMMA)〕
分子構造中にスルホン酸基を有しないポリメチルメタクリレート(PMMA)(住友化学社製、LG6A)
【0088】
〔π電子非共役系ポリマーc(H−NBR)〕
分子構造中にスルホン酸基を有しないH−NBR(日本ゼオン社製、ゼットポール0020)
【0089】
〔π電子非共役系ポリマーd(スルホン化ウレタン)〕
アジピン酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸=4/1(重量比)と、エチレングリコールとを共重合して得たポリオール〔重量平均分子量(Mw):2000〕と、ポリエチレンアジペートポリオール(Mw:2000)と、MDIとを反応させてスルホン化ウレタン(スルホン酸ナトリウム基0.01mmol/g、Mw:8万)を作製した。
【0090】
〔π電子非共役系ポリマーe(スルホン化アクリルフッ素樹脂)〕
メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/パーフルオロオクチルエチレン=8/1/1(重量比)と、スルホエチルメタクリレートとを共重合して、スルホン化アクリルフッ素樹脂(スルホン酸アンモニウム基0.02mmol/g、Mw:4万)を作製した。
【0091】
〔加硫促進剤a〕
スルフェンアミド系架橋促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラーCZ)
【0092】
〔加硫促進剤b〕
ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラーBZ)
【0093】
〔実施例8〜16、比較例3,4〕
後記の表4および表5に示す各成分を同表に示す割合で配合し、三本ロールを用いて混練して、半導電性組成物(コーティング液)を作製した。
【0094】
〔電気抵抗、電気抵抗の電圧依存性〕
各半導電性組成物(コーティング液)をSUS304板上に塗布して、120℃×30分乾燥し、厚み30μmの導電性塗膜を作製した。つぎに、この導電性塗膜について、25℃×50%RHの環境下、10Vの電圧を印加した時の電気抵抗(Rv=10V)と、100Vの電圧を印加した時の電気抵抗(Rv=100V)を、SRIS 2304に準じてそれぞれ測定した。そして、Log(Rv=10V/Rv=100V)により、電気抵抗の電圧依存性を変動桁数で表示した。
【0095】
〔電気抵抗の環境依存性〕
各半導電性組成物(コーティング液)を用いて、上記と同様にして、導電性塗膜を作製し、この導電性塗膜について、印加電圧10Vの条件下、低温低湿(10℃×10%RH)時の電気抵抗(Rv=10℃×10%RH)と、高温高湿(35℃×85%RH)時の電気抵抗(Rv=35℃×85%RH)を、SRIS 2304に準じてそれぞれ測定した。そして、Log(Rv=10℃×10%RH/Rv=35℃×85%RH)により、電気抵抗の環境依存性を変動桁数で表示した。
【0096】
〔環境による電気抵抗変動桁数〕
各半導電性組成物(コーティング液)を用いて、上記と同様にして、導電性塗膜を作製し、この導電性塗膜について、放置前の電気抵抗(Rv=0日)と、50℃×95%RHの環境下で100日間放置後の電気抵抗(Rv=100日)を、25℃×50%RH、10V印加の条件下で、SRIS 2304に準じてそれぞれ測定した。そして、Log(Rv=100日/Rv=0日)により、環境による電気抵抗変動桁数を求めた。
【0097】
〔高電圧領域での電気抵抗変動(チャージアップ)〕
各半導電性組成物(コーティング液)を用いて、上記と同様にして、導電性塗膜を作製し、この導電性塗膜について、25℃×50%RHの環境下、100Vの電圧を印加した時の電気抵抗(Rv=0秒)と、25℃×50%RHの環境下、100Vの電圧を10分間印加した時の電気抵抗(Rv=600秒)とを、SRIS 2304に準じてそれぞれ測定した。そして、Log(Rv=600秒/Rv=0秒)により、高電圧領域での電気抵抗変動を変動桁数で表示した。
【0098】
〔相溶性〕
各導電性ポリマーと、π電子非共役系ポリマーとの相溶性を評価した。評価は、両者の相溶性に優れ、0.1μm以上の凝集物が生じないものを○、両者の相溶性が悪く、導電性ポリマーが凝集して0.1μm以上の凝集物が生じたものを×とした。なお、評価が×のものは、その下欄に凝集物の粒径を記載した。
【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
上記結果から、実施例品は、溶解性に優れるとともに導電性にも優れ、湿熱環境下での電気抵抗の変動が小さかった。
【0102】
これに対して、比較例3品は、湿熱環境下での電気抵抗の変動が大きかった。比較例4品は、電気抵抗の電圧依存性が大きく、大きな粒径の凝集物が生じ、相溶性が劣っていた。
【0103】
つぎに、上記半導電性組成物を用いた帯電ロールの実施例について説明する。
【0104】
〔実施例17〕
(ベース層用材料の調製)
カーボンブラックを分散させたシリコーンゴム(信越化学工業社製、KE1350AB)を準備した。なお、このシリコーンゴムを用いて、上記と同様にして導電性塗膜を作製し、この導電性塗膜について上記と同様にして電気抵抗等を測定した結果、電気抵抗(10V) は4.5×104 Ω・cm、電気抵抗(100V) は3.8×103 Ω・cm、電気抵抗の電圧依存性は1.07桁、電気抵抗の環境依存性は0.03桁、高電圧領域での電気抵抗変動(チャージアップ)は0.13桁であった。
【0105】
(中間層用材料の調製)
ウレタンエラストマー(日本ミラクトラン社製、E980)93部を、THF300部とMEK150部とトルエン100部に溶解させた後、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS100)7部を加え、3本ロールを用いて混練して、導電性組成物(コーティング液)を調製した。なお、この導電性組成物を用いて、上記と同様にして導電性塗膜を作製し、この導電性塗膜について上記と同様にして電気抵抗等を測定した結果、電気抵抗(10V) は6.0×106 Ω・cm、電気抵抗(100V) は9.0×104 Ω・cm、電気抵抗の電圧依存性は1.82桁、電気抵抗の環境依存は0.05桁、高電圧領域での電気抵抗変動(チャージアップ)は0.09桁であった。
【0106】
(表層用材料の調製)
実施例11と同様にして、半導電性組成物を作製した。
【0107】
(帯電ロールの作製)
軸体である芯金(直径10mm、SUS304製)をセットした射出成形用金型内に、上記ベース層用材料を注型し、150℃×45分の条件で加熱した後、脱型して、軸体の外周面に沿ってベース層を形成した。つぎに、このベース層の外周面に、上記中間層材料を塗布して、中間層を形成した。ついで、上記中間層の外周面に、上記表層用材料を塗布して、表層を形成することにより、軸体の外周面にベース層(厚み3mm)が形成され、その外周面に中間層(厚み10μm)が形成され、さらにその外周面に表層(厚み40μm)が形成されてなる、3層構造の帯電ロールを作製した。
【0108】
このようにして得られた実施例の帯電ロールを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表6に併せて示した。
【0109】
〔電気抵抗、電気抵抗の電圧依存性〕
帯電ロールの表面をSUS板に押し当てた状態で、帯電ロールの両端に各1kgの荷重をかけ、帯電ロールの芯金と、SUS板に押し当てた帯電ロール表面との間の電気抵抗を、SRIS 2304に準じて測定した。なお、電気抵抗は、25℃×50%RHの環境下、10Vの電圧を印加した時の電気抵抗(Rv=10V)と、100Vの電圧を印加した時の電気抵抗(Rv=100V)をそれぞれ測定した。そして、Log(Rv=10V/Rv=100V)により、電気抵抗の電圧依存性を変動桁数で表示した。
【0110】
〔電気抵抗の環境依存性〕
上記電気抵抗の評価に準じて、印加電圧10Vの条件下、低温低湿(10℃×10%RH)の時の電気抵抗(Rv=10℃×10%RH)と、高温高湿(35℃×85%RH)の時の電気抵抗(Rv=35℃×85%RH)を、SRIS 2304に準じてそれぞれ測定した。そして、Log(Rv=10℃×10%RH/Rv=35℃×85%RH)により、電気抵抗の環境依存性を変動桁数で表示した。
【0111】
〔硬度(JIS A)〕
各帯電ロールの最表面の硬度を、JIS K 6253に準じて測定した。
【0112】
〔圧縮永久歪み〕
各帯電ロールの圧縮永久歪みを、温度70℃、試験時間22時間、圧縮率25%の条件下、JIS K 6262に準じて測定した。
【0113】
〔帯電ロール特性〕
(画像むら)
各帯電ロールを市販のカラープリンターに組み込み、20℃×50%RHの環境下において画像出しを行った。評価は、ハーフトーン画像での濃度むらがなく、細線のとぎれや色むらがなかったものを○、濃度むらが生じたものを×とした。
【0114】
(環境による画質の変動)
各帯電ロールを市販のカラープリンターに組み込み、15℃×10%RHの環境下において画像出しを行った時と、35℃×85%RHの環境下において画像出しを行った時の、環境による画質の変動の評価を行った。評価は、べた黒画像を印刷し、マクベス濃度計で変化が0.1以下の時を○、0.1を超える時を×とした。
【0115】
〔チャージアップによる濃度変動〕
各帯電ロールを市販のカラープリンターに組み込み、25℃×50%RHの環境下、1万枚画像出しを行った。評価は、ハーフトーン画像での濃度差がなかったもの(マクベス濃度計で0.1未満)を○、濃度差が生じたもの(マクベス濃度計で0.1以上)を×とした。
【0116】
〔環境による電気抵抗変動桁数〕
放置前の電気抵抗(Rv=0日)と、50℃×95%RHの環境下で6月間放置した後の電気抵抗(Rv=6月)を、25℃×50%RHの環境下で10V印加し、SRIS 2304に準じてそれぞれ測定した。そして、そして、Log(Rv=6月/Rv=0日)により、電気抵抗の変動桁数を求めた。
【0117】
【表6】

【0118】
上記結果から、実施例17品は、全ての特性が良好で、帯電ロール特性に優れていた。
【0119】
つぎに、上記半導電性組成物を用いた現像ロールの実施例について説明する。
【0120】
〔実施例18〕
(ベース層用材料の調製)
実施例17のベース層用材料と同様の、カーボンブラックを分散させたシリコーンゴム(信越化学工業社製、KE1350AB)を準備した。
【0121】
(中間層用材料の調製)
実施例8と同様にして、半導電性組成物を作製した。
【0122】
(表層用材料の調製)
実施例17の中間層用材料と同様にして、導電性組成物(コーティング液)を調製した。
【0123】
(現像ロールの作製)
軸体である芯金(直径10mm、SUS304製)をセットした射出成形用金型内に、上記ベース層用材料を注型し、150℃×45分の条件で加熱した後、脱型して、軸体の外周面に沿ってベース層を形成した。つぎに、このベース層の外周面に、上記中間層材料を塗布して、中間層を形成した。ついで、上記中間層の外周面に、上記表層用材料を塗布して、表層を形成することにより、軸体の外周面にベース層(厚み4mm)が形成され、その外周面に中間層(厚み45μm)が形成され、さらにその外周面に表層(厚み5μm)が形成されてなる、3層構造の現像ロールを作製した。
【0124】
このようにして得られた実施例の現像ロールを用いて、上記帯電ロールの評価基準に準じて、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表7に併せて示した。
【0125】
【表7】

【0126】
上記結果から、実施例18品は、全ての特性が良好で、現像ロール特性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の導電性ポリマーおよびそれを用いた半導電性組成物、ならびに電子写真機器用半導電性部材は、帯電ロール,現像ロール,転写ロール,中間転写ベルト等の電子写真機器部材に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分を、ドーパントにより導電化してなる溶剤可溶な導電性ポリマーであって、上記ドーパントが下記の(B)成分であることを特徴とする導電性ポリマー。
(A)π電子共役系ポリマー。
(B)スルホン酸基およびスルホン酸塩基の少なくとも一方の官能基と、フッ化アルキル基とを有するオキシアルキレン系化合物。
【請求項2】
上記(B)成分のオキシアルキレン系化合物が、下記の一般式(1)で表される構造単位を有する化合物である請求項1記載の導電性ポリマー。
【化1】

【請求項3】
上記(B)成分中のフッ化アルキル基が、炭素数1〜4のフッ化アルキル基である請求項1または2記載の導電性ポリマー。
【請求項4】
上記(B)成分のオキシアルキレン系化合物の数平均分子量が300〜4500の範囲内である請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性ポリマー。
【請求項5】
上記(A)成分のπ電子共役系ポリマーが、アニリン,ピロール,チオフェンおよびこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つのモノマーから誘導されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性ポリマー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電性ポリマーを主成分とすることを特徴とする半導電性組成物。
【請求項7】
上記半導電性組成物が、π電子非共役系ポリマーを含有するものである請求項6記載の半導電性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導電性組成物を、半導電性部材の少なくとも一部に用いたことを特徴とする電子写真機器用半導電性部材。

【公開番号】特開2006−249140(P2006−249140A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64026(P2005−64026)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】