説明

導電性ポリマー材料

【課題】導電性を損ねることなく、光耐久性に優れた導電性ポリマー材料を提供する。
【解決手段】本発明の導電性ポリマー材料は、支持体上に、波長410nmの光に対する透過率が40%以下である少なくとも一層の紫外線吸収層を有し、支持体上のいずれかの層に導電性ポリマーを含有する。導電性ポリマーは前記紫外線吸収層に含有されても、紫外線吸収層とは別の層に含有されてもよい。また、本発明の導電性ポリマー材料は、波長410nmの光に対する透過率が40%以下である支持体上に、導電性ポリマーを含有する層を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマー材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、更にエレクトロルミネッセンス(EL)素子などに代表される画像表示体(ディスプレイ)が、テレビ、コンピューターや近年普及してきた各種モバイル装置などの様々な分野で広く用いられている。また、地球環境に配慮した脱化石エネルギーとして太陽電池が注目され、更なる普及への要求に応えるべく、高機能化などの開発が求められている。このような表示素子や太陽電池には導電性膜が使用されている。
【0003】
ITO系導電性膜をはじめとする金属系材料を用いた導電性膜は、ガラス基板上に金属系材料を真空蒸着法やスパッタリング法などの気相法により製膜して製造するのが一般的である。携帯電話やモバイルなどの表示素子については軽量化が進められ、表示素子基板もガラスからプラスチックへの移行が求められている。プラスチック基板の導入で表示素子の重量は従来の半分以下となり、強度や耐衝撃性が著しく向上している。
【0004】
しかしながら、ITO系導電性膜ではガラス基板からプラスチックフィルムに代えることにより密着性が低下し、基材と形成された導電性膜とが剥がれやすいという問題があった。またITOなどの金属系材料は通常、スパッタなどの気相法を用いて成膜するために製造装置に多大な費用が必要であった。
【0005】
これらに代わる導電性材料として導電性ポリマーが知られている。導電性ポリマーを用いることで、導電性を発現する薄膜を塗布によって形成することが可能となり、安価に製造できるという利点を有する。また、導電性ポリマーで作られた電極はITO電極よりフレキシブルであり、脆性が低く、可撓性を有するものに使用しても破損し難い。このような利点を有することから、特に高フレキシブル電極が必要とされるタッチスクリーンに導電性ポリマーで作られた電極を適用すると、装置の寿命を延ばすことができるという利点をも有するものである。
【0006】
このような導電性ポリマーとしてポリアニオンを含むポリチオフェンが開発され、これを用いて導電性膜を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この導電性膜は耐久性がITO膜などに比較してやや弱く、ある用途に対しては実用上充分な耐久性を達成し得ないことが明らかになった。特に、導電性膜を表示装置などに適用する場合には、光耐久性、つまりある程度以上の光が照射された後においても透明性や導電度が低下しないことが重要である。
【0007】
これに対して、導電層に紫外線吸収剤を添加した導電性膜が提案されている(例えば、特許文献2〜4参照。)。
具体的には、前記特許文献2では、導電層に紫外線吸収剤を添加することで、紫外線吸収層という独立した層を追加することなく、表示装置の中に含まれる有機発光ダイオード材料の波長400nm未満の光による劣化を抑え、当該表示装置の寿命又は画質及び色特性を改良するタッチスクリーン等を提供できるとしている。なお、当該特許文献において最も好適な紫外線吸収剤として、380nmよりも長波長の光に対して殆ど又は全く吸収を示さない吸収剤を挙げている。
また、前記特許文献3では、紫外線照射による導電性の低下を防止するために、特定の構造を有するベンゾフェノン化合物を添加した導電性高分子溶液が開示されている。
前記特許文献4では、紫外線吸収剤を含有する基材フィルム上に透明導電塗膜層を有する導電性フィルムは、導電性の経時劣化が小さく耐久性に優れているとしている。
【特許文献1】欧州特許第440957号明細書
【特許文献2】特開2003−308736号公報
【特許文献3】特開2008−31204号公報
【特許文献4】特開2006−294533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでの技術では、導電性フィルムと紫外線吸収剤を組み合わせることで、紫外線などの光照射による導電性の劣化を抑えている。しかしながら、実用に向けては、導電性フィルムについて、光に対する安定性の更なる改善が望まれていた。
そこで本発明の課題は、導電性を損ねることなく、従来よりも光耐久性に優れた導電性ポリマー材料を提供することにある。なお、本発明において「光耐久性」とは、屋外光、もしくは例えばキセノンランプ光源などの光源で一定時間照射した後の表面抵抗値の変動が少ないことをいう。また、透明な導電性ポリマー材料の場合には、表面抵抗値に加えて定時間照射した後の透過率の変動が少ないことをいう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記状況を鑑み、本発明者らは鋭意研究を行なったところ、特定の紫外線吸収層を備える導電性ポリマー材料は、導電性を損ねることなく、光耐久性に優れることを知見として得、この知見に基づいて更に検討し、本発明を完成するに至った。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0010】
<1> 支持体上に、波長410nmの光に対する透過率が40%以下である少なくとも一層の紫外線吸収層を有し、支持体上のいずれかの層に導電性ポリマーを含有することを特徴とする導電性ポリマー材料である。
【0011】
<2> 前記導電性ポリマーが、前記紫外線吸収層に含有されてなることを特徴とする前記<1>に記載の導電性ポリマー材料である。
【0012】
<3> 前記導電性ポリマーを含有する層が、前記紫外線吸収層とは別に設けられてなることを特徴とする前記<1>に記載の導電性ポリマー材料である。
【0013】
<4> 前記紫外線吸収層が、ベンゾオキサゾール誘導体を含有することを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0014】
<5> 前記ベンゾオキサゾール誘導体が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記<4>に記載の導電性ポリマー材料である。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(1)中、R21及びR24は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルキコキシ基を表し、R22及びR23は、各々独立にアルキル基を表す。Aは置換アリール基又は置換エテニル基を表す。
【0017】
<6> 波長370nmの光に対する前記紫外線吸収層の透過率が20%以下であることを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0018】
<7> 波長410nmの光に対する透過率が40%以下である支持体上に、導電性ポリマーを含有する層を備えることを特徴とする導電性ポリマー材料である。
【0019】
<8> 前記支持体が、ベンゾオキサゾール誘導体を含有することを特徴とする前記<7>に記載の導電性ポリマー材料である。
【0020】
<9> 前記ベンゾオキサゾール誘導体が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記<8>に記載の導電性ポリマー材料である。
【0021】
【化2】

【0022】
一般式(1)中、R21及びR24は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルキコキシ基を表し、R22及びR23は、各々独立にアルキル基を表す。Aは置換アリール基又は置換エテニル基を表す。
【0023】
<10> 波長370nmの光に対する前記支持体の透過率が20%以下であることを特徴とする前記<7>〜<9>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0024】
<11> 前記導電性ポリマーが、π共役ポリマーであることを特徴とする前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0025】
<12> 前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0026】
<13> 前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンを含むことを特徴とする前記<1>〜<12>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0027】
<14> 前記導電性ポリマーを含有する層が、更にドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を含有することを特徴とする前記<1>〜<13>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0028】
<15> 前記支持体が、可撓性支持体であることを特徴とする前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0029】
<16> 前記支持体が、ポリエチレンテレフタレートを含んで形成されてなることを特徴とする前記<1>〜<15>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0030】
<17> 更に、極大吸収波長が350nm以上400nm以下であり、半値幅が55nm以下であり、極大吸収波長におけるモル吸光係数が20000以上である化合物を含有することを特徴とする前記<1>〜<16>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0031】
<18> 更に、下記一般式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする、前記<1>〜<17>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0032】
【化3】

【0033】
一般式(2)中、A21及びA22は、水素原子及び炭素原子以外の原子を表し、(B)はA21及びA22が互いに連結して5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表す。Y21及びY22は各々独立に水素原子又は1価の置換基を表す。但しY21及びY22のうち少なくとも一方は、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基を表す。また、Y21及びY22は、互いに結合して環を形成してもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、導電性を損ねることなく、光耐久性に優れた導電性ポリマー材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0036】
本発明の導電性ポリマー材料は、波長410nmの光に対する透過率が40%以下である少なくとも一層の紫外線吸収層を有し、いずれかの層に導電性ポリマーを含有する。または、本発明の導電性ポリマー材料は、波長410nmの光に対する透過率が40%以下である支持体上に、導電性ポリマーを含有する層を備える。
【0037】
具体的な導電性ポリマー材料の層構成の例を、図1(A)〜(D)に示す。
図1(A)の導電性ポリマー材料は、支持体10の光入射側に紫外線吸収層20を備え、支持体10の紫外線吸収層20とは反対面に導電性ポリマーを含有する層(以下「導電性ポリマー層」と称する)30を備える。
図1(B)の導電性ポリマー材料は、支持体10の光入射側に、導電性ポリマーを含有する紫外線吸収層21を備える。
図1(C)の導電性ポリマー材料は、紫外線吸収剤を含有する支持体12が紫外線吸収層としても機能し、光入射側ではない面に導電性ポリマー層30を備える。
図1(D)の導電性ポリマー材料は、支持体10の光入射側ではない面に、支持体側から順に、紫外線吸収層20、導電性ポリマー層30を備える。
【0038】
支持体の紫外線劣化を抑える観点からは、図1(A)〜(C)の導電性ポリマー材料が好ましい。湿熱耐久性の向上(高湿度下で放置後の透過率および表面抵抗値の変動が少ない)という観点からは、紫外線吸収層と導電性ポリマー層とが隣接するか、或いは紫外線吸収層に導電性ポリマーを含有する場合が好適であり、具体的には図1(B)〜(D)の導電性ポリマー材料が好ましい。
図1(A)〜(D)では、支持体上に1層又は2層を備える導電性ポリマー材料を示したが、3層以上を備えていてもよい。例えば、紫外線吸収層や導電性ポリマー層を複数層備えたり、更に保護層や中間層を設けてもよい。
【0039】
以下、図1(A)の態様の導電性ポリマー材料を「第一の実施形態の導電性ポリマー材料」、図1(B)の態様の導電性ポリマー材料を「第二の実施形態の導電性ポリマー材料」、図1(C)の態様の導電性ポリマー材料を「第三の実施形態の導電性ポリマー材料」、図1(D)の態様の導電性ポリマー材料を「第四の実施形態の導電性ポリマー材料」として説明を行う。
【0040】
<第一の実施形態>
図1(A)で表される第一の実施形態の導電性ポリマー材料は、支持体10の光入射側に紫外線吸収層20を備え、支持体10の紫外線吸収層20とは反対面に導電性ポリマー層30を備える。
【0041】
(紫外線吸収層)
第一の実施形態の紫外線吸収層20は、波長410nmの光に対する透過率が40%以下である。好ましくは、波長410nmの光に対する透過率が30%以下であり、更に好ましくは、20%以下である。
なお、一般的に紫外線とは、可視光よりも波長が短く(約400nm以下)、X線よりも波長の長い(約10nm)電磁波をいう。本発明における「紫外線吸収層」とは、300nm〜400nmの波長の光を50%吸収するものをいう。
【0042】
本発明における紫外線吸収層が波長410nmの光を吸収し、結果、波長410nmの光に対する透過率が40%以下であることによって、導電性ポリマー材料の光耐久性が向上する理由は明らかではないが、波長410nmの光は導電性ポリマーに吸収されることにより励起状態を経由して分解を促進させるものと推測される。よって、これを吸収して透過率を40%以下に低減することで、導電性ポリマーの分解を促進させる光の吸収量が減少し、結果、導電性ポリマー材料における光照射後の透過率の変動が少なくなるものと推測される。また、波長410nmの光を吸収して透過率を40%以下に低減することで、導電性ポリマーによる光の吸収が減少し、光照射後の表面抵抗値の変動が少なくなるものと推測される。特に、屋内で導電性ポリマーを使用する場合、蛍光灯には410nm付近に輝線が存在するため、410nmの光を紫外線吸収層で吸収することが効果的に導電性ポリマーの光耐久性を向上させることが可能となる。
しかしながら、本発明は上記推測によって限定されることは無い。
【0043】
波長410nmの光に対する紫外線吸収層20の透過率は、市販の紫外・可視吸収スペクトル測定器で測定することができる。
【0044】
また、紫外線吸収層による波長410nmの光の透過率は、紫外線吸収剤の種類の選定、紫外線吸収剤の添加量の調整、紫外線吸収層の膜厚の調整、及びこれらの組み合わせによって上記範囲内になるよう調整できる。
【0045】
本発明に係る紫外線吸収層に適用する紫外線吸収剤としては、波長410nmの光を吸収させるため、極大吸収波長が350nm以上420nm以下の化合物を用いることが好ましく、極大吸収波長が370nm以上410nm以下の化合物を用いることがより好ましい。
また、この紫外線吸収剤は、少ない添加量で紫外線を効率的に吸収するという観点から、極大吸収波長におけるモル吸光係数が5000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、8000以上であることが更に好ましい。
【0046】
本発明において規定される極大吸収波長および半値幅は、当業者が容易に測定することができる。測定方法に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座7、分光II」(丸善、1992年)180〜186ページなどに記載されている。具体的には、適当な溶媒に試料を溶解し、石英製またはガラス製のセルを用いて、試料用と対照用の2つのセルを使用して分光光度計によって測定される。用いる溶媒は、試料の溶解性と合わせて、測定波長領域に吸収を持たないこと、溶質分子との相互作用が小さいこと、揮発性があまり著しくないこと等が要求される。上記条件を満たす溶媒であれば、任意のものを選択することができる。本発明においては、酢酸エチル(EtOAc)を溶媒に用いて測定を行うこととする。
【0047】
本発明における紫外線吸収剤の極大吸収波長は、酢酸エチルを溶媒として、濃度約5×10-5mol・dm-3の溶液を調製し、光路長10mmの石英セルを使用して測定した値を使用する。
【0048】
極大吸収波長におけるモル吸光係数の測定は、市販の紫外・可視吸収スペクトル測定器で測定することができる。
【0049】
本発明に係る紫外線吸収層に適用する紫外線吸収剤としては、ベンゾオキサゾール誘導体、クマリン誘導体、スチルベン誘導体が好ましく、ベンゾオキサゾール誘導体、クマリン誘導体がより好ましく、ベンゾオキサゾール誘導体が高い吸光係数と溶解性を有するという観点で更に好ましい。
【0050】
ベンゾオキサゾール誘導体としては具体的には、下記一般式(1)で表される化合物が、高い吸光係数と溶解性を有するという観点から好ましい。
【化4】

【0051】
一般式(1)中、R21及びR24は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルキコキシ基を表し、R22及びR23は、各々独立にアルキル基を表す。Aは置換アリール基又は置換エテニル基を表す。
一般式(1)におけるR21、R22、R23、R24及びAについて以下に詳しく説明する。
【0052】
21及びR24は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。
21及びR24で表されるアルキル基は、炭素数1〜50のアルキル基が好ましく、炭素数1〜30のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜20のアルキル基が更に好ましく、炭素数1〜8のアルキル基が更に好ましい。
21及びR24で表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、更に置換基を有していてもよい。
21及びR24で表されるアルキル基は、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−オクチル、イソプロピル、イソブチル、2−エチルヘキシル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0053】
21及びR24で表されるアルコキシ基は、炭素数1〜50のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜30のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜20のアルコキシ基が更に好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基が更に好ましい。
21及びR24で表されるアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、更に置換基を有していてもよい。
21及びR24で表されるアルコキシ基は、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、t−ブトキシ、又はシクロヘキシルオキシである。
【0054】
21及びR24は、好ましくは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基である。また、R21およびR24は、好ましくは水素原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0055】
22及びR23はアルキル基を表す。好ましくは炭素数1〜16のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜14のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。
22及びR23で表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、更に置換基を有していてもよい。
【0056】
22及びR23で表されるアルキル基は、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−オクチル、n−ヘキサデカニル(セチル)、イソプロピル、イソブチル、2−エチルヘキシル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル等である。
好ましくは、R22 はメチル、イソプロピル、又はt−ブチル又はシクロヘキシル基であり、R23はメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル又は2−エチルヘキシル基である。特に好ましくは、R22はt−ブチル又はシクロヘキシル基であり、R23はメチル、n−ブチル、n−オクチル又は2−エチルヘキシル基である。
【0057】
Aは、置換アリール基又は置換エテニル基を表す。
Aで表される置換アリール基は、炭素数6〜40の置換アリール基が好ましく、炭素数6〜30の置換アリール基がより好ましく、炭素数6〜20の置換アリール基が更に好ましい。
置換アリール基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、スルホ基、カルボキシ基、アミノ基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、スルホ基、又はカルボキシ基であり、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、更に好ましくは、アルキル基又はアルコキシ基である。
【0058】
Aで表される置換エテニル基は、炭素数2〜80の置換エテニル基が好ましく、炭素数6〜60の置換エテニル基がより好ましく、炭素数8〜50の置換エテニル基が更に好ましい。
置換エテニル基の置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、スルホ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を挙げることができ、好ましくは、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、スルホ基、カルボキシ基であり、より好ましくは、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルコキシ基である。
【0059】
Aで表される置換アリール基及び置換エテニル基は、下記構造式(1)を有していることが、高い吸光係数と溶解性を有するという観点から好ましい。
【0060】
【化5】

【0061】
構造式(1)中、R31及びR34は前記R21及びR24とそれぞれ同義である。R32は前記R22と同義である。R33は前記R23と同義である。*は、Aにおけるアリール基又はエテニル基との連結部位を表す。
【0062】
Aで表される置換アリール基及び置換エテニル基は、以下に示す置換アリール基及び置換エテニル基が好適である。
【0063】
【化6】

【0064】
【化7】

【0065】
上記式中、R31及びR34は、それぞれ前記R21及びR24と同義である。R32は前記R22と同義である。R33は前記R23と同義である。mは1〜5の整数を表す。X及びYは、各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミノ基又は水酸基を表す。
【0066】
X及びYで表されるアルキル基は、各々独立に、炭素数1〜50のアルキル基が好ましく、炭素数1〜30のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜20のアルキル基が更に好ましく、炭素数1〜8のアルキル基が更に好ましい。
X及びYで表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、更に置換基を有していてもよい。
X及びYで表されるアルキル基は、具体的には、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル又はシクロヘキシルを挙げることができる。
【0067】
X及びYで表されるアリール基は、各々独立に、炭素数6〜40のアリール基が好ましく、炭素数6〜30のアリール基がより好ましく、炭素数6〜20のアリール基が更に好ましい。
X及びYで表されるアリール基は、更に置換基を有していてもよい。
X及びYで表されるアリール基は、具体的には、フェニル、トリル又はナフチルを挙げることができる。
【0068】
X及びYで表されるアルコキシ基は、各々独立に、炭素数1〜50のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜30のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜20のアルコキシ基が更に好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基が更に好ましい。
X及びYで表されるアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、更に置換基を有していてもよい。
X及びYで表されるアルコキシ基は、具体的には、メトキシ、エトキシ又はイソプロポキシを挙げることができる。
【0069】
X及びYで表されるアルキルアミノ基は、各々独立に、炭素数1〜60のアルキルアミノ基が好ましく、炭素数1〜50のアルキルアミノ基がより好ましく、炭素数1〜40のアルキルアミノ基が更に好ましい。
X及びYで表されるアルキルアミノ基は、更に置換基を有していてもよい。
X及びYで表されるアルキルアミノ基は、具体的には、アミノ、アミノメチル、エチルアミノ、オクチルアミノ、ジメチルアミノ又はN−メチル−N−エチルアミノを挙げることができる。
【0070】
X及びYで表されるアリールアミノ基は、各々独立に、炭素数6〜60のアリールアミノ基が好ましく、炭素数6〜50のアリールアミノ基がより好ましく、炭素数6〜40のアリールアミノ基が更に好ましい。
X及びYで表されるアリールアミノ基は、更に置換基を有していてもよい。
X及びYで表されるアリールアミノ基は、具体的には、アニリノ、4−トリルアミノまたはN−メチルアニリノ等のアリールアミノを挙げることができる。
【0071】
X及びYは、好ましくはアリール、アルコキシ又はアニリノ基である。
【0072】
一般式(1)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(3)で表される化合物である。
【0073】
【化8】

【0074】
一般式(3)中、R25及びR27は前記R22と同義の基であり、R26およびR28は前記R23と同義の基である。nは1又は2である。
【0075】
一般式(1)で表される化合物は、特開平11−29556号公報記載の方法で合成することができる。
【0076】
第一の実施形態の導電性ポリマー材料において、このような紫外線吸収剤の塗布量は、波長410nmの光に対する透過率が40%以下となるように調整すれば特に制限されないが、0.001mg/m〜100g/mであることが好ましく、0.01mg/m〜10g/mであることがより好ましく、0.05mg/m〜5g/mであることが更に好ましい。特に上述の紫外線吸収剤が一般式(1)で表される化合物の場合、一般式(1)で表される化合物の塗布量は、0.001mg/m〜50g/mであることが好ましく、0.01mg/m〜10g/mであることがより好ましく、0.05mg/m〜5g/mであることが更に好ましい。
【0077】
以下本発明における紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
【化9】

【0079】
【化10】

【0080】
【化11】

【0081】
【化12】

【0082】
【化13】

【0083】
【化14】

【0084】
第一の実施形態の紫外線吸収層20には、更に別の紫外線吸収剤を添加してもよい。更に添加する別の紫外線吸収剤は、本発明の紫外線吸収層を充足するものであればいずれの構造であってもよい。例えば、紫外線吸収剤の構造として知られているトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、アクリレート系、安息香酸エステル系シュウ酸ジアミド系などの化合物が挙げられる。例えば、ファインケミカル、2004年5月号、28〜38ページ、東レリサーチセンター調査研究部門発行「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター、1999年)96〜140ページ、大勝靖一監修「高分子添加剤の開発と環境対策」(シーエムシー出版、2003年)54〜64ページなどに記載されている。
【0085】
更に、第一の実施形態の紫外線吸収層20は、波長370nmの光に対する透過率が20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下であり、更に好ましくは5%以下である。このような紫外線吸収層20とすることで、紫外域の波長の光を吸収することができ、導電性ポリマーの耐久性が向上する。
【0086】
第一の実施形態の紫外線吸収層20には、極大吸収波長が350nm以上400nm以下であり、半値幅が55nm以下であり、極大吸収波長におけるモル吸光係数が20000以上の紫外線吸収剤を併用することが好適である。極大吸収波長が350nm以上400nm以下にあると、併用した場合に、紫外域全体の波長の光を効果的に吸収することができるという観点で好適であり、半値幅が55nm以下であると、350nm以上400nm以下の光を効果的に吸収できるという観点で好適であり、極大吸収波長におけるモル吸光係数が20000以上であると、添加量を少なくしても光を効率的に吸収できるため、コスト的な観点で好適である。
ここで規定される極大吸収波長及び極大吸収波長におけるモル吸光係数は、上述の方法で測定した値を意味する。
【0087】
本発明において規定される半値幅は、当業者が容易に測定することができる。測定方法に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座7、分光II」(丸善、1992年)180〜186ページなどに記載されている。具体的には、適当な溶媒に試料を溶解し、石英製またはガラス製のセルを用いて、試料用と対照用の2つのセルを使用して分光光度計によって測定される。用いる溶媒は、試料の溶解性と合わせて、測定波長領域に吸収を持たないこと、溶質分子との相互作用が小さいこと、揮発性があまり著しくないこと等が要求される。上記条件を満たす溶媒であれば、任意のものを選択することができる。本発明においては、酢酸エチル(EtOAc)を溶媒に用いて測定を行うこととする。
【0088】
本発明における紫外線吸収剤の半値幅は、酢酸エチルを溶媒として、濃度約5×10-5mol・dm-3の溶液を調製し、光路長10mmの石英セルを使用して測定した値を使用する。
【0089】
スペクトルの半値幅に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座3、基本操作III」(丸善、1991年)154頁などに記載がある。なお、上記成書では波数目盛りで横軸を取った例で半値幅の説明がなされているが、本発明における半値幅は波長目盛りで軸を取った場合の値を用いることとし、半値幅の単位はnmである。具体的には、極大吸収波長における吸光度の1/2の吸収帯の幅を表し、吸収スペクトルの形を表す値として用いられる。半値幅が小さいスペクトルはシャープなスペクトルであり、半値幅が大きいスペクトルはブロードなスペクトルである。ブロードなスペクトルを与える紫外線吸収剤は、極大吸収波長から長波側の幅広い領域にも吸収を有するので、黄色味着色がなく長波紫外線領域を効果的に遮蔽するためには、半値幅が小さいスペクトルを有する紫外線吸収剤の方が好ましい。
【0090】
このような紫外線吸収剤を併用することで、少ない添加量で紫外域全体の波長の光を効果的に吸収することができ、導電性ポリマーの耐久性が向上する。
【0091】
極大吸収波長が350nm以上400nm以下であり、半値幅が55nm以下であり、極大吸収波長におけるモル吸光係数が20000以上の紫外線吸収剤としては、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。特に、前記一般式(1)で表される化合物との併用において、一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(1)との相溶性が高く、併用時における結晶化などの析出が抑制される点で好適である。
【0092】
【化15】

【0093】
一般式(2)中、A21及びA22は、水素原子及び炭素原子以外の原子を表し、(B)はA21及びA22が互いに連結して5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表す。Y21及びY22は各々独立に水素原子又は1価の置換基を表す。但しY21及びY22のうち少なくとも一方は、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基を表す。また、Y21及びY22は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0094】
一般式(2)におけるA21及びA22は、各々独立に、水素原子及び炭素原子以外の原子を表す。A21及びA22の例としては、ホウ素原子、窒素原子、酸素原子、フッ素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子、セレン原子などが挙げられる。
【0095】
21及びA22の例として好ましくは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。特に好ましくは高い吸光係数という観点から硫黄原子である。A21−A22の好ましい組み合わせとしては、酸素−窒素、窒素−硫黄、窒素−窒素、硫黄−硫黄の組み合わせであり、特に好ましい組み合わせは硫黄−硫黄の組み合わせである。
【0096】
一般式(2)における(B)は、A21及びA22が互いに連結して5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表す。
【0097】
(B)によって形成される環(以下「環(B)」と称する)は、5又は6員環であり、詳述すると、例えば、ピリミジン環、イミダゾリジン環、イミダゾリン環、オキサゾリン環、チアゾリン環、ジチオール環などが挙げられる。これらの環は1価の置換基を有していてもよい。また、芳香環などと共に縮環構造を形成してもよい。
【0098】
環(B)として好ましくはイミダゾリン環、オキサゾリン環、チアゾリン環、ジチオール環、またはこれらのベンゾ縮環体であり、更に好ましくはベンゾジチオール環、ベンゾオキサゾリン環、ベンゾチアゾリン環、ベンゾイミダゾリン環であり、特に好ましくはベンゾジチオール環である。
【0099】
一般式(2)におけるY21及びY22は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。1価の置換基としては、シアノ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、ニトロ基、置換若しくは無置換のアシル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルフィニル基、置換若しくは無置換のアリールスルフィニル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基などが挙げられる。置換基は更に置換されていてもよく、置換基が複数ある場合は、同じでも異なってもよい。この場合の置換基は上記の1価の置換基である。また置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。
【0100】
21及びY22の例としては、シアノ基、炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、モルホリノカルボニル)、炭素数0〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ピペリジノスルホニル)、ニトロ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアシル基(例えばホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリクロロアセチル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10のアリールスルホニル基(例えばメタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニルなど)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10のアリールスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル)、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜8のアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、
【0101】
炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基(ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノメチル)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、更に好ましくは炭素数6〜10の置換または無置換のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、p−カルボキシフェニル、p−ニトロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、p−シアノフェニル、m−フルオロフェニル、p−トリル、p−ブロモフェニル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数4〜6の置換されていてもよい複素環基(例えばピリジル、5−メチルピリジル、チエニル、フリル、モルホリノ、テトラヒドロフルフリル)が挙げられる。置換基は更に置換されていてもよく、置換基が複数ある場合は、同じでも異なってもよい。この場合の置換基は上記で記した置換基である。また置換基同士で結合して環を形成してもよい。
【0102】
21及びY22として好ましくは、Y21、Y22のうち少なくとも一方がハメットのσp値が0.2以上の置換基を有する場合である。
ハメットの置換基定数σ値について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(Mc Graw-Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Chem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページなどに詳しい。本発明におけるハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基とは電子求引性基であることを示している。
【0103】
21、Y22のうち少なくとも一方のσp値は、0.25以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上であり、更に好ましくは0.35以上である。
【0104】
具体例としては、シアノ基(0.66)、カルボキシル基(−COOH:0.45)、アルコキシカルボニル基(−COOMe:0.45)、アリールオキシカルボニル基(−COOPh:0.44)、カルバモイル基(−CONH:0.36)、アルキルカルボ
ニル基(−COMe:0.50)、アリールカルボニル基(−COPh:0.43)、アルキルスルホニル基(−SOMe:0.72)、またはアリールスルホニル基(−SOPh:0.68)などが挙げられる。本明細書において、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、括弧内の値は代表的な置換基のσp値をChem.Rev.,1991年,91巻,165〜195頁から抜粋したものである。
【0105】
また、Y21及びY22は互いに結合して環を形成してもよい。なお、環を形成する場合にはY21及びY22のσp値を規定することができないが、本発明においてはY21及びY22にそれぞれ環の部分構造が置換しているとみなして、環形成の場合のσp値を定義することとする。例えば1,3−インダンジオン環を形成している場合、Y21及びY22にそれぞれベンゾイル基が置換したものとして考える。
【0106】
21及びY22の好ましい例としては、各々独立に、シアノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基等が挙げられる。
特に好ましくはY21及びY22の少なくとも一方がシアノ基であり、他方はアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基である場合である。Y21及びY22は互いに結合して環を形成しないことが好ましい。
【0107】
前記一般式(2)における好ましい置換基の組み合わせは、Y21及びY22の少なくとも一方がシアノ基であり、他方がアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基であり、A21及びA22がともに硫黄原子であり、(B)がベンゾジチオール環を形成している組み合わせである。
以下に、本発明で用いられる前記一般式(2)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
【0108】
【化16】

【0109】
【化17】

【0110】
【化18】

【0111】
一般式(2)で表される化合物は任意の方法で合成することができる。
例えば、特開昭63-225382号公報、Liebigs Ann.Chem.,1969年,726巻,103〜109頁、Journal of Organic Chemistry,1990年,55巻,5347〜5350頁、同1994年,59巻,3077〜3081頁、Tetrahedron Letters,1991年,32巻,4897〜4900頁、4897頁9行目〜4899頁3行目、同1977年,26巻,2225頁、Tetrahedron,1993年,49巻,3035〜3042頁などに記載されている類似構造を有する化合物の合成ルートを参考にして合成することができる。
【0112】
一般式(2)で表される化合物の構造を紫外線吸収性基として繰り返し単位内に含むポリマーも、本発明に好適に使用できる。以下に、繰り返し単位の例を示す。
【0113】
【化19】

【0114】
【化20】

【0115】
上記の繰り返し単位からなるホモポリマーであってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。更に他の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。以下に他の繰り返し単位の例を示す。
【0116】
【化21】

【0117】
なお、紫外線吸収剤構造を繰り返し単位内に含むポリマーについては、特公平1−53455号公報、特開昭61−189530号公報、特開昭62−260152号公報、特開昭63−53544号公報、特開昭63−56651号公報の記述を参考にすることができる。
【0118】
紫外線吸収層20に、一般式(2)で表される化合物、又は一般式(2)で表される化合物の構造を紫外線吸収性基として繰り返し単位内に含むポリマーを添加した場合、紫外線吸収層20の波長365nmの光に対する透過率が40%以下となるように添加量を調整することが好ましく、30%以下となるよう調整することがより好ましく、10%以下となるよう調整することが更に好ましい。波長350nmから400nmの範囲の波長の光が吸収されることで、導電性ポリマーの光耐久性が向上する。
【0119】
第一の実施形態の紫外線吸収層20には、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アミノアルキッド樹脂系、エポキシ樹脂系、シリカ樹脂系、フッ素樹脂系などの透明樹脂成分を含有させることができる。これらの樹脂は主剤、硬化剤、希釈剤、レベリング剤、はじき防止剤などを任意に配合することができる。
【0120】
例えば、透明樹脂成分としてアクリルウレタン樹脂、シリコンアクリル樹脂を選んだ場合には、硬化剤としてポリイソシアネートなどを、希釈剤としてトルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶剤、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系を用いることができる。
透明樹脂成分としては、具体的には、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルスチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。また、ここでアクリルウレタン樹脂とは、メタクリル酸エステル(メチルが代表的)とヒドロキシエチルメタクリレート共重合体とポリイソシアネートと反応させて得られるアクリルウレタン樹脂をいう。なおこの場合のポリイソシアネートとはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。更にこれら成分に加えアクリル樹脂、シリコーン樹脂などのレベリング剤、シリコーン系、アクリル系等のはじき防止剤等を必要に応じて配合することができる。
【0121】
紫外線吸収層20の厚さは、波長410nmの光に対する透過率が40%以下となるように調整すれば特に制限されないが、0.01μm〜1000μmであることが好ましく、0.05μm〜500μmであることがより好ましく、0.1μm〜100μmであることが更に好ましい。
【0122】
紫外線吸収層20は、単層でも2層以上の複数層であってもよい。複数層の場合、それぞれの層に同種の紫外線吸収剤を添加してもよいし、異なる種類の紫外線吸収剤を添加してもよい。好適には、単層の場合である。
【0123】
(導電性ポリマー層)
第一の実施形態の導電性ポリマー材料は、上記紫外線吸収層20とは別の層として、導電性ポリマー層30を備える。
本発明に用いられる導電性ポリマーとは、10−6s・cm−1以上の導電性を示すポリマーをいい、これに該当する高分子化合物であれば、いずれのものも使用することができる。より好ましくは、10−1s・cm−1以上の導電性を有する高分子化合物である。
【0124】
導電性ポリマーは、好ましくは芳香族炭素環または芳香族ヘテロ環を、単結合または二価以上の連結基で連結した非共役高分子または共役高分子である。
非共役高分子または共役高分子における前記芳香族炭素環としては、例えばベンゼン環が挙げられ、更に縮環を形成してもよい。
非共役高分子または共役高分子における前記芳香族ヘテロ環としては、例えばピリジン環、ビラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、ペンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環などが挙げられ、更に縮環を形成してもよく、置換基を有してもよい。
【0125】
また、非共役高分子または共役高分子における前記二価以上の連結基としては、炭素原子、珪素原子、窒素原子、硼素原子、酸素原子、硫黄原子、金属、金属イオンなどで形成される連結基が挙げられる。好ましくは、炭素原子、窒素原子、珪素原子、硼素原子、酸素原子、硫黄原子およびこれらの組み合わせから形成される基であり、組み合わせにより形成される基としては、置換もしくは無置換のメチレン基、カルボニル基、イミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、エステル基、アミド基、シリル基などが挙げられる。
【0126】
導電性ポリマーとしては、具体的には、例えば、置換および非置換の導電性ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチレン、ポリピリジルビニレン、ポリアジン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
また、所望の導電性を達成できる範囲であれば、導電性を有しない他のポリマーとの混合物として用いることもでき、これらのモノマーと導電性を有しない他のモノマーとのコポリマーも用いることができる。
【0128】
導電性ポリマーとしては、共役高分子であることが更に好ましい。共役高分子の例としては、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリフルオレン、ポリアズレン、ポリ(パラフェニレンサルファイド)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、複鎖型共役系高分子(ポリペリナフタレンなど)、金属フタロシアニン系高分子、その他共役系高分子(ポリ(パラキシリレン)、ポリ[α−(5,5’−ビチオフェンジイル)ベンジリデン]など)が挙げられる。
好ましくはポリ(パラフェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレンが挙げられ、より好ましくはポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン、ポリ(パラフェニレンビニレン)などが挙げられる。
これら共役高分子は置換基を有していてもよく、該置換基としては後述の一般式(I)においてR11として説明する置換基を挙げることができる。
【0129】
本発明では特に、導電性ポリマーが下記一般式(I)で表される部分構造を有すること(即ちポリチオフェン及びその誘導体であること)が、高い透明性と導電性を両立するという観点から好ましい。なお、ここでいう「透明性」とは、可視光である波長550nmの光に対する透過率が50%以上であることを意味する。透明性導電性ポリマー材料として好ましくは該透過率が60%以上であり、より好ましくは該透過率が70%以上である。
【0130】
【化22】

【0131】
一般式(I)中、R11は置換基を表し、m11は0〜2の整数を表す。m11が2を表すとき、複数のR11は互いに同一であっても異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。n11は1以上の整数を表す。
【0132】
11で表される置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、2−オクテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノなどが挙げられる。)、
【0133】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、
【0134】
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0135】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、
【0136】
ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12で、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。具体的には、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。
【0137】
上記R11で表される置換基は、さらに置換されていてもよい。また、置換基を複数有する場合、それらの置換基は互いに同じでも異なっていてもよく、また可能な場合は連結して環を形成してもよい。形成される環としては例えば、シクロアルキル環、ベンゼン環、チオフェン環、ジオキサン環、ジチアン環等が挙げられる。
【0138】
11で表される置換基として、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。特に好ましくは、m11が2のとき、2つのR11が連結して環を形成したアルコキシ基、アルキルチオ基であり、ジオキサン環、ジチアン環を形成することが好適である。
【0139】
一般式(I)においてm11が1のとき、R11はアルキル基であることが好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がより好ましい。
また、R11が、アルキル基であるポリ(3−アルキルチオフェン)であるとき、隣り合ったチオフェン環との連結様式はすべて2−5’で連結した立体規則的なものと、2−2’、5−5’連結が含まれる立体不規則的なものがあるが、立体的不規則なものが好ましい。
【0140】
本発明では、導電性ポリマーとしては、高い透明性と導電性を両立するという観点から、3,4−エチレンジオキシ−ポリチオフェン(下記具体例化合物(6))であることが特に好ましい。
【0141】
一般式(I)で表されるポリチオフェン及びその誘導体は、J. Mater. Chem., 2005, 15, 2077−2088.およびAdvanced Materials 2000, 12(7), page 481など公知の方法によって作製することができる。また、市販品として、Denatron P502(ナガセケミ社製)、 3,4-ethylenedioxythiophene (BAYTRON(登録商標)M V2)、3,4-polyethylenedioxythiopene/polystyrenesulfonate (BAYTRON(登録商標) P)、BAYTRON(登録商標) C、BAYTRON(登録商標) F E、BAYTRON(登録商標) M V2、BAYTRON(登録商標) P、BAYTRON(登録商標) P AG、BAYTRON(登録商標) P HC V4、BAYTRON(登録商標) P HS、BAYTRON(登録商標) PH、BAYTRON(登録商標) PH 500、BAYTRON(登録商標) PH 510(以上、シュタルク社製)などを入手することができる。
ポリアニリン及びその誘導体としては、ポリアニリン(アルドリッチ社製)、ポリアニリン(エレラルダイン塩)(アルドリッチ社製)などを入手することができる。
ポリピロール及びその誘導体としては、ポリピロール(アルドリッチ社製)などを入手することができる。
【0142】
以下に、導電性ポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの他にも、WO98/01909記載の化合物等が挙げられる。
【0143】
【化23】

【0144】
【化24】

【0145】
本発明で用いる導電性ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは10,000〜500,000であり、更に好ましくは10,000〜100,000である。
【0146】
第一の実施形態における導電性ポリマー層30の厚さは、1nm〜2μmの範囲であることが好ましく、10nm〜1μmの範囲であることがより好ましい。導電性ポリマー層30の膜厚がこの範囲内であれば、充分な導電性と透明性とを達成することができる。
【0147】
導電性ポリマー層30には、少なくとも一種のドーパントを含有することが、導電性ポリマーの溶媒への分散性が改善されるという観点から好ましい。導電性ポリマー層30の形成は、後述のように塗布によることが好ましく、分散性が良好な分散液(組成物)を得ることは製造の観点から重要である。
なお本発明においてドーパントとは、導電性ポリマーの導電性を変化させる作用を有する添加物を意味する。
このようなドーパントとしては、電子受容性(アクセプター)ドーパント、電子供与性(ドナー)ドーパントが挙げられる。
【0148】
電子受容性(アクセプター)ドーパントの例としては、ハロゲン(Cl,Br,I,ICl,ICl,IBr,IF)、ルイス酸(PF,AsF,SbF,BF,BCl,BBr,SO)、プロトン酸(HF,HCl,HNO,HSO,HClO,FSOH,CISOH,CFSOH,各種有機酸,アミノ酸など)、遷移金属化合物(FeCl,FeOCl,TiCl,ZrCl,HfCl,NbF,NbCl,TaCl,MoF,MoCl,WF,WCl,UF,LnCl(Ln=La,Ce,Pr,Nd,Smなどのランタノイド)、電解質アニオン(Cl,Br,I,ClO,PF,AsF,SbF,BF,各種スルホン酸アニオン)、その他(O,XeOF,(NO)(SbF),(NO)(SbCl),(NO)(BF),FSO00SOF,AgClO,HIrCl,La(NO・6HO等が挙げられる。
【0149】
電子供与性(ドナー)ドーパントの例としてはアルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)、アルカリ土類金属(Ca,Sr,Ba)、ランタノイド(Euなど)、その他(R,R,RAs,R,アセチルコリン)等が挙げられる。
【0150】
ドーパントと前記導電性ポリマーとの組み合わせとしては、例えば:
(A) ポリアセチレンとI,AsF,FeClなど;
(B) ポリ(p−フェニレン)とAsF,K,AsFなど;
(C) ポリピロールとClOなど;
(D) ポリチオフェン類とClO,スルホン酸化合物、とくにポリスチレンスルホン酸、ニトロソニウム塩、アミニウム塩、キノン類など;
(E) ポリイソチアナフテンとIなど;
(F) ポリ(p−フェニレンサルファイド)とAsF
(G) ポリ(p−フェニレンオキシド)とAsF
(H) ポリアニリンとHClなど;
(I) ポリ(p−フェニレンビニレン)とHSOなど;
(J) ポリチオフェニレンビニレンとIなど;
(K) ニッケルフタロシアニンとIなど;
等が挙げられる。
【0151】
これらの組み合わせの中でも、好ましくは前記(D)もしくは(H)の組み合わせであり、より好ましくは、ドープ状態の安定性が高いという観点から、ポリチオフェン類(ポリチオフェン及びその誘導体)とスルホン酸化合物の組み合わせであり、更に好ましくは、水分散液が調整可能であり、塗布により簡便に導電性薄膜が調整できるという観点から、ポリチオフェン類とポリスチレンスルホン酸の組み合わせである。
【0152】
導電性ポリマーとドーパントの比率は、いかなるものであってもよいが、ドープ状態の安定性と導電性を両立観点から、好ましくは、質量比で、導電性ポリマー:ドーパント=1.0:0.0000001〜1.0:10の範囲であり、好ましくは1.0:0.00001〜1.0:1.0の範囲、より好ましくは1.0:0.0001〜1.0:0.5の範囲である。
【0153】
一方、導電性ポリマーの分散性を高めるために、高分子鎖に電解質をドープしたイオン導電性ポリマーとしてもよい。該高分子鎖の例としては、ポリエーテル(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、ポリエステル(ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−プロピオラクトンなど)、ポリアミン(ポリエチレンイミンなど)、ポリスルフィド(ポリアルキレンスルフィドなど)などが挙げられ、ドープされた電解質としては各種アルカリ金属塩などが挙げられる。
【0154】
前記アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属イオンとしてはLi、Na、K、Rb、Csなどが、対塩を形成するアニオンとしてはF、Cl、Br、I、NO、SCN、ClO、CFSO、BF、AsF、BPhなどが挙げられる。
【0155】
高分子鎖とアルカリ金属塩の組み合わせとしては、例えばポリエチレンオキシドとLiCFSO、LiClOなど、ポリエチレンサクシネートとLiClO、LiBF、ポリ−β−プロピオラクトンとLiClOなど、ポリエチレンイミンとNaCFSO、LiBFなど、ポリアルキレンスルフィドとAgNOなどが挙げられる。
【0156】
本発明の導電性ポリマー層30や、紫外線吸収層20には、更に後述の溶媒や、このほかに更に添加剤を添加することも可能である。更に含有し得る添加剤としては、膜強度を高める目的で無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物、とくにフッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
【0157】
(支持体)
第一の実施形態の支持体10としては、安定な板状物であって、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用できる。また、ここで得られた導電性ポリマー材料を画像表示素子、太陽電池等に用いる場合には、高い透明性を要求されるため、表面平滑性の透明基材を用いることが好ましい。
【0158】
支持体10の材質としては、ガラス、透明セラミックス、金属、プラスチックフィルム等が挙げられる。ガラス、透明セラミックスは、金属、プラスチックフィルムに比べ、柔軟性に欠ける。また、プラスチックフィルムは金属より安価であり、且つ柔軟性を有する。そこで本発明の支持体10としては、プラスチックフィルムが好ましく、たとえば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリアリレート等の樹脂を用いたフィルムなどが挙げられる。特に、ポリエステル系樹脂(以下、適宜、「ポリエステル」と称する)が好ましい。ポリエステルとしては、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが好ましい。
【0159】
支持体10に用い得るポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−フタレンジカルボキシレート等が挙げられる。このうち、入手の容易性、経済性及び効果の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が好ましい。
【0160】
また、フィルムの素材として、本発明の効果を損なわない限りにおいて、これらの共重合体の混合物、又はこれら重合体と小割合のその他の樹脂との混合物なども用いることができる。
【0161】
更に、このポリエステルフィルムの中には、滑り性を良くするために少量の無機又は有機の粒子、たとえば、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム等の如き無機フィラー、アクリル、シリコーン、ベンゾグアナミン、テフロン(登録商標)、エポキシ等の如き有機フィラー、ポリエチレングリコール(PEG)、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等の接着性向上剤や帯電防止剤を含有させることができる。
【0162】
本発明に用いるポリエステルフィルムは、前記の如きポリエステル樹脂を溶融押出しでフィルム状にし、縦及び横二軸延伸による配向結晶化及び熱処理による結晶化させることにより形成し得る。これらフィルムの製造方法及び条件は、公知の方法及び条件を適宜選択して用いることができる。
【0163】
支持体10の厚みは目的により適宜選択することができるが、一般的には、5〜500μmの範囲である。
【0164】
(その他の層)
本発明では支持体10上に、導電性ポリマー層30や紫外線吸収層20の密着性を向上させる目的として易接着層(図示せず)を形成してもよい。易接着層としては、スチレン−ブタジエン共重合体(以下、適宜、「SBR」と略称する)又は水系ウレタン樹脂と架橋剤とを含有する構成が好ましい。SBRは、スチレンとブタジエンとを主体とした共重合体であり、更に必要に応じて他の成分を共重合したものを意味する。この共重合体は、スチレンとブタジエンとの含有比率を調整することにより、様々な物性のものを得られることが知られている。
【0165】
易接着層を形成する場合、スチレン−ブタジエン共重合体はラテックスであることが好ましい。具体的には、日本ゼオン社からニポール(商品名)として、住友ノーガタック社からノーガテックス(商品名)として、武田薬品工業社からクロスレン(商品名)として、旭ダウ社から旭ダウラテックス(商品名)として、その他に大日本インキ化学工業社や海外メーカーから販売されている市販品を用いることもできる。
【0166】
ラテックスの分散体粒子の粒径は、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.2μm以下が更に好ましい。粒子径が大きい場合には、塗布工程で粒子の凝集が生じやすかったり、フィルムの透明性、光沢などが不良になったりする問題がある。更に塗布層の厚さを薄くする必要がある場合には、それに応じて粒径を小さくする必要がある。
【0167】
易接着層のスチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレン/ブタジエンの含有比率は50/50〜80/20程度であることが好ましい。ラテックス中に含まれるSBRの割合は、固型分重量として30〜50重量%であることが好ましい。
【0168】
また、この易接着層には、SBRの物性を向上させるために架橋剤が添加されるが、ここで用いられる架橋剤としてはトリアジン系架橋剤が好ましい。
【0169】
(導電性ポリマー材料の作製)
大面積の電極材料を一度に作製できるという簡便性の観点からは、塗布によって導電性ポリマー層30や紫外線吸収層20を形成することが好ましい。塗布以外の方法としてはスピンコート、転写などを挙げることができる。塗布液は、水分散液であってもよいし、有機溶剤であってもよい。
【0170】
紫外線吸収層20を形成するための塗布液(以下「紫外線吸収層塗布液」と称する。)には、少なくとも前記一般式(1)等の紫外線吸収剤を含む。更に、樹脂や、塗布のための溶媒や、前記一般式(2)等のその他の紫外線吸収剤を状況に応じて適宜添加する。このほかに更に添加剤を添加することも可能である。更に含有し得る添加剤としては、紫外線吸収剤、膜強度を高める目的で無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物、とくにフッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
【0171】
紫外線吸収層塗布液の溶媒としては、水、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アミド、芳香族炭化水素などを用いることができ、コストの観点からはアルコールが好ましく、溶解性と塗布適性の観点からはトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒を用いることが好適である。
【0172】
紫外線吸収層塗布液中の固形分濃度は、粘度などを考慮して適宜調整することが望ましいが、一般的には、0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.1質量%〜20質量%であることがより好ましい。
【0173】
得られた紫外線吸収層塗布液を塗布して、紫外線吸収層20を形成する。塗布方法としては、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を採用することができる。
【0174】
支持体10上に紫外線吸収層20を2層以上形成する場合、1層毎に塗布し乾燥してもよいし、2層以上を同時重層塗布で形成してもよい。同時重層塗布の採用は、製造コストの低減、製造時間の短縮化の観点から好適である。ここで、「同時重層塗布」とは、2つの塗布液が接した状態で塗布することを意味する。
前記同時重層塗布は、カーテンコーター、スライドコーター、エクストロージョンコーター等によって行うことができ、中でも、カーテンコーターが好ましい。
【0175】
導電性ポリマー層30を形成するための塗布液(以下「導電性ポリマー層塗布液」と称する。)には、少なくとも前記導電性ポリマーを含み、塗布のための溶媒や前記ドーパントを状況に応じて適宜添加する。このほかに更に添加剤を添加することも可能である。更に含有し得る添加剤としては、紫外線吸収剤、膜強度を高める目的で無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物、とくにフッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
【0176】
導電性ポリマー層塗布液の溶媒としては、水、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アミドなどを用いることができコストの観点からは水、低級アルコールが好ましく、環境を考慮すると水を用いることが好適である。
【0177】
水を溶媒として用いた場合、導電性ポリマーを分散させる方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、ジョークラッシャ法、超遠心粉砕法、カッティングミル法、自動乳鉢法、ディスクミル法、ボールミル法、超音波分散法などの分散方法を挙げることができる。
【0178】
導電性ポリマー層塗布液中の導電性ポリマーの濃度は、粘度などを考慮して適宜調整することが望ましいが、一般的には、0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%であることがより好ましい。
【0179】
得られた導電性ポリマー層塗布液を塗布して、導電性ポリマー層30を形成する。塗布方法としては、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を採用することができる。
【0180】
支持体上に導電性ポリマー層30を2層以上形成する場合、1層毎に塗布し乾燥してもよいし、2層以上を同時重層塗布で形成してもよい。同時重層塗布は、製造コストの低減、製造時間の短縮化の観点から好適である。ここで、「同時重層塗布」とは、2つの塗布液が接した状態で塗布することを意味する。
前記同時重層塗布は、カーテンコーター、スライドコーター、エクストロージョンコーター等によって行うことができ、中でも、カーテンコーターが好ましい。
【0181】
<第二の実施形態>
図2(B)で表される第二の実施形態の導電性ポリマー材料は、支持体10の光入射側に、導電性ポリマーを含有する紫外線吸収層21を備える。
【0182】
(紫外線吸収層)
第二の実施形態における紫外線吸収層21は、波長410nmの光に対する透過率は40%以下である。好ましくは、波長410nmの光に対する透過率が20%以下であり、更に好ましくは、10%以下である。
更に、第二の実施形態の紫外線吸収層21は、波長370nmの光に対する透過率が20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下であり、更に好ましくは5%以下である。
第二の実施形態の導電性ポリマー材料で用いることのできる紫外線吸収剤の種類、併用可能な紫外線吸収剤の種類は、第一の実施形態の場合と同様であり、好ましい紫外線吸収剤の種類も同様である。
【0183】
第二の実施形態の導電性ポリマー材料において、一般式(1)で表される化合物等の紫外線吸収剤の付与量は、波長410nmの光に対する透過率が40%以下となるように調整すれば特に制限されないが、0.001mg/m〜100g/mであることが好ましく、0.01mg/m〜10g/mであることがより好ましく、0.05mg/m〜5g/mであることが更に好ましい。
第二の実施形態の導電性ポリマー材料において、一般式(2)で表される化合物等の併用可能な紫外線吸収剤の付与量は、紫外線吸収層21の波長365nmの光に対する透過率が40%以下となるように調整することが好ましく、30%以下となるよう調整することがより好ましく、10%以下となるよう調整することが更に好ましい。具体的には、このような併用可能な紫外線吸収剤の付与量は、0.001mg/m〜100g/mであることが好ましく、0.01mg/m〜10g/mであることがより好ましく、0.05mg/m〜5g/mであることが更に好ましい。
【0184】
第二の実施形態の導電性ポリマー材料で用いることのできる導電性ポリマーの種類、ドーパントの種類も、第一の実施形態の場合と同様であり、好ましく適用できるものも同様である。
紫外線吸収層21における、導電性ポリマーと紫外線吸収剤の含有比率は、質量比で、導電性ポリマー:紫外線吸収剤=1:100〜100:1であることが好ましく、1:50〜50:1であることがより好ましく、1:10〜10:1であることが更に好ましい。
【0185】
第二の実施形態の紫外線吸収層21に、更に添加し得る添加剤としては、膜強度を高める目的で無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物、とくにフッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
【0186】
第二の実施形態において、導電性ポリマーを含む紫外線吸収層21の厚さは、0.01μm〜1000μmであることが好ましく、0.05μm〜500μmであることがより好ましく、0.1μm〜100μmであることが更に好ましい。導電性ポリマーを含有する紫外線吸収層21の膜厚がこの範囲内であれば、高い導電性、透明性および光耐久性を両立することが可能となる
【0187】
紫外線吸収層21は、単層でも2層以上の複数層であってもよい。複数層の場合、それぞれの層に同種の紫外線吸収剤及び導電性ポリマーを添加してもよいし、異なる種類の紫外線吸収剤や導電性ポリマーを添加してもよい。好適には、単層の場合である。
【0188】
(支持体)
第二の実施形態で用いることのできる支持体10は、第一の実施形態の場合と同様であり、好ましく適用できる樹脂の種類なども同様である。
【0189】
(導電性ポリマー材料の作製)
紫外線吸収層21を形成するための塗布液には、少なくとも前記一般式(1)等の紫外線吸収剤と導電性ポリマーとを含む。更に、塗布のための溶媒や、前記一般式(2)等の他の紫外線吸収剤を状況に応じて適宜添加する。このほかに更に添加剤を添加することも可能である。更に含有し得る添加剤としては、膜強度を高める目的で無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物、とくにフッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
【0190】
紫外線吸収層21を形成するための塗布液の調製は、紫外線吸収剤を溶解した溶液と、導電性ポリマーを分散させた分散液とを調製し、これらを混ぜ合わせて、塗布液を調製することが好ましい。この際、均一な状態となるよう、紫外線吸収剤を溶解した溶液と、導電性ポリマーを分散させた分散液とを混ぜ合わせることが好ましい。
【0191】
紫外線吸収剤を溶解した溶液は、第一の実施形態で説明したものと同様であり、好ましい溶媒等についても第一の実施形態の場合と同様である。
導電性ポリマーを分散させた分散液は、第一の実施形態で説明したものと同様であり、好ましい溶媒や分散方法等についても第一の実施形態の場合と同様である。
【0192】
紫外線吸収層21を形成するための塗布液における固形分濃度は、塗布性のための粘度などを考慮して適宜調整することが望ましいが、一般的には、0.001質量%〜50質量%であることが好ましく、0.005質量%〜30質量%であることがより好ましい。
【0193】
紫外線吸収層21を形成するための塗布液を、支持体の光入射面側に塗布して紫外線吸収層21を形成する。塗布方法は、第一の実施形態の場合と同様であり、好適な方法も同様である。
【0194】
<第三の実施形態>
図2(C)で表される第三の実施形態の導電性ポリマー材料は、紫外線吸収剤を含有する支持体12が紫外線吸収層としても機能し、光入射側ではない面に導電性ポリマー層30を備える。
【0195】
(導電性ポリマー層)
第三の実施形態における導電性ポリマー層30は、第一の実施形態における導電性ポリマー層30と同義であり、好適な範囲も同様である。
【0196】
(支持体)
第三の実施形態における支持体12は紫外線吸収剤を含有し、紫外線吸収層としても機能する。よって、支持体12は、波長410nmの光に対する透過率が40%以下であり、好ましくは、波長410nmの光に対する透過率が20%以下であり、更に好ましくは10%以下である。
更に、第三の実施形態の支持体12は、波長370nmの光に対する透過率が20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下であり、更に好ましくは5%以下である。
第二の実施形態の支持体に含有させることのできる紫外線吸収剤の種類、併用可能な紫外線吸収剤の種類は、第一の実施形態の場合と同様であり、好ましく適用できる紫外線吸収剤の種類も同様である。
【0197】
第一の実施形態の導電性ポリマー材料において一般式(1)で表される化合物を用いた場合、一般式(1)で表される化合物の付与量は、波長410nmの光に対する透過率が40%以下となるように調整すれば特に制限されないが、0.001mg/m〜100g/mであることが好ましく、0.01mg/m〜10g/mであることがより好ましく、0.05mg/m〜5g/mであることが更に好ましい。
【0198】
紫外線吸収剤を含有する支持体12に適用し得る樹脂としては、支持体で例示したものを挙げることができ、具体的には、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリアリレートが好ましく、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリアリレートがより好ましく、コストと透明性等の支持体としての特性の観点からポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0199】
支持体12における、紫外線吸収剤と樹脂の含有比率は、質量比で、紫外線吸収剤:樹脂=1:1〜1:1000000であることが好ましく、1:1〜1:100000であることがより好ましく、1:1〜1:1000であることが更に好ましい。
【0200】
第三の実施形態の支持体12には、第一の実施形態において紫外線吸収層の添加剤として説明したものや、支持体の添加剤として説明したものを更に添加することができる。
【0201】
第三の実施形態において、紫外線吸収剤を含有する支持体12の厚さは、10μm〜100000μmの範囲にあることが好ましく、50μm〜10000μmの範囲にあることがより好ましく、100μm〜1000μmの範囲にあることが更に好ましい。支持体12の膜厚がこの範囲内であれば、低コストに所望の導電性ポリマー材料を提供することができる
【0202】
(導電性ポリマー材料の作製)
紫外線吸収剤を含有する支持体の作製方法は、例えば、特開2002−244247号の実施例1などを参照することができる。具体的には、ポリエステル樹脂を加熱し、紫外線吸収剤を練りこむ方法である。
【0203】
導電性ポリマー層の作製方法は、第一の実施形態の場合と同様であり、好適な方法も同様である。
【0204】
<第四の実施形態>
図1(D)で表される第四の実施形態の導電性ポリマー材料は、支持体10の光入射側ではない面に、支持体側から順に、紫外線吸収層20、導電性ポリマー層30を備える。
支持体10の光入射側ではない面に紫外線吸収層20を設ける以外は、第一の実施形態と同様であり、好適に用いることのできる材料やその添加量、塗布量、膜厚等も同様である。
【0205】
(導電性ポリマー材料の作製)
第四の実施形態では、支持体10に対して同じ面側に、紫外線吸収層20と導電性ポリマー層30とを備える。これらの層を形成するための塗布液は、第一の実施形態の場合と同様であり、好適な範囲も同様である。
紫外線吸収層20と導電性ポリマー層30は、1層毎に塗布し乾燥してもよいし、2層以上を同時重層塗布で形成してもよい。同時重層塗布は、製造コストの低減、製造時間の短縮化の観点から好適である。前記同時重層塗布は、カーテンコーター、スライドコーター、エクストロージョンコーター等によって行うことができ、中でも、カーテンコーターが好ましい。
【0206】
<用途>
本発明の導電性ポリマー材料は、光耐久性及び導電性に優れた導電性膜を形成できる。この導電性膜は、電子材料の配線や電極(基板電極など)として好適に用いることができる。特に塗布による導電性膜の形成が可能であることから大面積の電極材料を作製しやすく、基板電極への応用に適している。
このような導電性膜は、フレキシブルエレクトロルミネッセンス装置(OLED)、タッチスクリーン、タッチパネル、有機TFT、アクチュエーター、センサー、電子ペーパー、フレキシブル調光材料、太陽電池などに好適に使用することができる。
【実施例】
【0207】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。
【0208】
[実施例1]
(紫外線吸収層の調整)
アクリル系樹脂(商品名アクリテック、大日本インキ製)に対し、本発明の一般式(1)で表されるNo.15の化合物5.0質量%、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール1.1質量%を加えたもの15gに、トルエン:メチルエチルケトン=1:1を85g加え固形分を溶解し、紫外線吸収組成物を得た。該組成物をPETフィルム上に塗布し、乾燥後100μmになるよう調整した。本発明の紫外線吸収層は、波長410nmの光の透過率が3%であり、波長370nmの光の透過率が2%以下であった。
【0209】
(導電性層の調整)
ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン(PEDOT)・ポリスチレンスルホン酸(PSS)の水分散液(Denatron P502、ナガセケムテックス社製)を、上記PETフィルムの紫外線吸収層が付設されていない面に9番バーコーターによって塗工し、乾燥して、試料−1を得た。得られた導電性層の厚みは200nmであった。試料−1の評価を以下の方法で行なった。
【0210】
<透過率の測定>
UV/visスペクトルメーター(島津製作所社製U2400)にて、550nmの光に対する透過率を測定した。作製直後の試料−1の4箇所を測定しその平均値を測定値とした。結果を表1に示す。なお、試料−1において、410nm及び370nmの光に対する透過率は各々1%以下であった。
【0211】
<表面抵抗値の測定>
表面抵抗値は、ロレスタ抵抗測定装置(三菱化学製)にて測定した。作製直後の試料−1の4箇所を測定しその平均値を測定値とした。結果を表1に示す。
【0212】
<膜質の評価>
鉛筆硬度計(安田精機製)にて、膜質を評価した。
【0213】
<ヘイズの測定>
日本電色工業(株)製のヘイズ測定装置MODEL1001DPを用い、作製直後の試料−1のヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0214】
<光耐久性の評価>
キセノンランプ光源(15万ルクス)で、上記フィルムの紫外線吸収層の側から光が入射するように、160時間、試料−1を照射し、照射後における透過率、表面抵抗値、ヘイズ、及び膜質を上記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0215】
[実施例2〜6]
実施例1と同様にして、ただし一般式(1)で表される紫外線吸収剤No.15の代わりに、表1に示す化合物を添加して、試料−2〜6を作製した。なお表1に示す一般式(1)で表される化合物は、実施例1で添加した一般式(1)で表される化合物と同じ質量になるよう添加した。
また、表中、ベンゾトリアゾールと記載があるものは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールを実施例1と同質量添加したことを意味し、記載のないものは2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールを添加しないことを意味する。
表1に示す一般式(2)で表される化合物は、実施例1で添加した2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールと同質量で添加した。
得られた試料−2〜6の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0216】
なお、一般式(2)で表されるNo.11の化合物については、極大吸収波長が381nm、半値幅27nm、極大吸収波長におけるモル吸収係数は20000以上であった。一般式(2)で表されるNo.14の化合物については、極大吸収波長が382nm、半値幅28nm、極大吸収波長におけるモル吸収係数は20000以上であった。
【0217】
[実施例7]
PET基板の代わりにガラス基板を用いた以外は実施例1と同様にして、試料−7を作製した。
得られた試料−7の評価を実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0218】
[実施例8]
実施例1と同様にして、但し用いる紫外線吸収剤の添加量を変えて、紫外線吸収層の410nmでの透過率が30%となるようにして試料−8を作製した。
得られた試料−8の評価を実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0219】
[実施例9]
実施例1と同様にして、但し、用いる紫外線吸収剤の添加量を変えて、紫外線吸収層の410nmでの透過率が40%となるようにして、試料−9を作製した。
得られた試料−9の評価を実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0220】
[比較例1]
一般式(1)で表される紫外線吸収剤No.15を添加せず、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール1.1質量%を加えた以外は実施例1と同様にして、比較の試料−1を作製した。得られた比較の試料−1の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。なお、比較の試料−1における紫外線吸収層は、410nmの光に対する透過率が55%であった。
【0221】
[比較例2]
紫外線吸収剤を全く添加しない以外は実施例1と同様にして、比較の試料−2を作製した。得られた比較の試料−2の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。比較の試料−2における紫外線吸収層は、410nmの光に対する透過率が100%であった。
【0222】
[比較例3]
比較例1において、紫外線吸収剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールを添加したのに代えて、特開2008−31204号記載のパラ−ヒドロキシベンゾフェノンを用いた以外は比較例1と同様にして、比較の試料−3を作製した。得られた比較の試料−3の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。比較の試料−3における紫外線吸収層は、410nmの光に対する透過率が60%であった。
【0223】
[比較例4]
比較例1において、紫外線吸収剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールを添加したのに代えて、特開2006−294533号記載のイミノエステル化合物(A)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較の試料−4を作製した。得られた比較の試料−4の評価を比較例1と同様にして行なった。比較の試料−4における紫外線吸収層は、410nmの光に対する透過率が50%であった。評価結果を表1に示す。
【0224】
【化25】

【0225】
[比較例5]
実施例1と同様にして、但し、用いる紫外線吸収剤の添加量を変えて、紫外線吸収層の410nmでの透過率が43%となるようにして、比較の試料−5を作製した。
得られた比較の試料−5の評価を実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0226】
【表1】

【0227】
表1の結果に示すように、波長410nmの光に対する透過率が40%以下の紫外線吸収層を備える試料−1〜9は、光照射後においても透過率が高く表面抵抗は低い値を維持しており、光に対する耐久性に優れていた。
一方、比較例1、3及び4では、光照射後の透過率は実施例−1〜9と同等であったものの、光照射後の表面抵抗値は実施例−1〜9に比べて増大していた。また比較例2では、光照射後の透過率は低下し、表面抵抗は著しく増大した。比較例5では、表面抵抗が増加する傾向であった。
【0228】
[実施例10〜12]
実施例1において使用したDenatron P502(ナガセケミ社製)の代わりに、下記の水分散液をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、試料−10〜12を作製した。
【0229】
(実施例10) ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水分散液(Baytron P、シュタルク社製、)
(実施例11) ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水分散液(Baytron P-HC V4、シュタルク社製、)
(実施例12) ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水分散液(Baytron P-AG、シュタルク社製、)
【0230】
得られた試料−10〜12の評価を実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0231】
【表2】

【0232】
表2に示すように、導電性ポリマーの種類を変えても、高い透過率、低い表面抵抗を示し、光に対する耐久性にも優れていた。
【0233】
[実施例13]
実施例13では、紫外線吸収剤と導電性ポリマーとを同一の層に含む試料−13を作製した。
ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン(PEDOT)・ポリスチレンスルホン酸(PSS)の水分散液(Denatron P502、ナガセケムテックス社製)中に、実施例1で調製した紫外線吸収剤No.15を含有するメチルエチルケトン溶液を同量混合した溶液を、PETフィルム上に9番バーコーターによって塗工し、乾燥して、試料−13を得た。得られた層の厚みは200nmであった。
【0234】
試料−13における紫外線吸収層(導電性ポリマー含有)について、波長410nm及び370nmの光に対する透過率を測定した。その結果を下記表3に示す。
得られた試料−13の評価を実施例1と同様にして行なったところ、実施例1と同様に光耐久性が向上することが確認された。その評価結果を表3に示す。
【0235】
<湿熱耐久性の評価>
上記試料−13の湿熱耐久性の評価として、湿度95%RH、温度80℃、100時間経時させた後の透過率および表面抵抗値を上記方法で測定した。
【0236】
[実施例14〜18]
(試料−14〜18の作製)
実施例13と同様にして、ただし一般式(1)で表される紫外線吸収剤No.15の代わりに、表3に示す化合物を添加して、試料−14〜18を作製した。なお表3に示す化合物は、実施例13で添加した化合物と同じ質量になるよう添加した。また、表中、ベンゾトリアゾールと記載があるものは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールを実施例1と同質量添加したことを意味する。表3に示す一般式(2)で表される化合物は、実施例13で添加した2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールと同質量で添加した。
【0237】
試料−14〜18における紫外線吸収層について、波長410nm及び370nmの光に対する透過率を測定した。その結果を下記表3に示す。
得られた試料−14〜18の光耐久性の評価を実施例1と同様にして行なったところ、実施例2〜6と同様に光耐久性が向上することが確認された。その結果を下記表3に示す。
また、得られた試料−14〜18の湿熱耐久性の評価を実施例13と同様にして行なった。
【0238】
[実施例19]
実施例13と同様にして、但し、用いる紫外線吸収剤の添加量を変えて、紫外線吸収層の410nmでの透過率が30%となるようにして、試料−19を作製した。
【0239】
得られた試料−19の光耐久性の評価を実施例1と同様にして行なったところ、実施例8と同様に光耐久性が向上することが確認された。その結果を下記表3に示す。
また、得られた試料−19の湿熱耐久性の評価を実施例13と同様にして行なった。
【0240】
[実施例20]
実施例13と同様にして、但し、用いる紫外線吸収剤の添加量を変えて、紫外線吸収層の410nmでの透過率が40%となるようにして、試料−20を作製した。
得られた試料−20の光耐久性の評価を実施例1と同様にして行なったところ、実施例9と同様に光耐久性が向上することが確認された。その結果を下記表3に示す。
また、得られた試料−20の湿熱耐久性の評価を実施例13と同様にして行なった。
【0241】
[比較例6]
一般式(1)で表される紫外線吸収剤No.15を添加せず、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール1.1質量%を加えた以外は実施例13と同様にして、比較の試料−6を作製した。得られた比較の試料−6の評価を実施例13と同様にして行なった。結果を表3に示す。
また、得られた比較の試料−6の湿熱耐久性の評価を実施例13と同様にして行なった。
【0242】
[比較例7]
紫外線吸収剤を全く添加しない以外は実施例13と同様にして、比較の試料−7を作製した。得られた比較の試料−7の評価を実施例13と同様にして行なった。結果を表3に示す。
また、得られた比較の試料−7の湿熱耐久性の評価を実施例13と同様にして行なった。
【0243】
[比較例8]
比較例6において、紫外線吸収剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールを添加したのに代えて、特開2008−31204号記載のパラ−ヒドロキシベンゾフェノンを用いた以外は比較例6と同様にして、比較の試料−8を作製した。得られた比較の試料−8の評価を実施例13と同様にして行なった。結果を表3に示す。
また、得られた比較の試料−8の湿熱耐久性の評価を実施例13と同様にして行なった。
【0244】
[比較例9]
比較例6において、紫外線吸収剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールを添加したのに代えて、特開2006−294533号記載のイミノエステル化合物(A)を用いた以外は比較例6と同様にして、比較の試料−9を作製した。得られた比較の試料−9の評価を実施例13と同様にして行なった。結果を表3に示す。また、得られた比較の試料−9の湿熱耐久性の評価を実施例13と同様にして行なった。
【0245】
[比較例10]
実施例13と同様にして、但し、用いる紫外線吸収剤の添加量を変えて、紫外線吸収層の410nmでの透過率が43%となるようにして、比較の試料−10を作製した。
得られた比較の試料−10の評価を実施例13と同様にして行なった。結果を表3に示す。また、得られた比較の試料−10の湿熱耐久性の評価を実施例13と同様にして行なった。
【0246】
【表3】

【0247】
表3の結果に示すように、波長410nmの光に対する透過率が40%以下の紫外線吸収層を備える試料−13〜20は、光に対する耐久性に優れていることがわかる。
また、湿熱耐久性の評価を行なうと、波長410nmの光に対する透過率が40%以下の紫外線吸収層を備える試料−13〜20は、湿熱経時においても透過率が高く表面抵抗は低い値を維持していた。一方、比較例6〜10では、湿熱経時後の表面抵抗は実施例13〜20に比べて増大している。
【0248】
[実施例21]
実施例1において使用したDenatron P502(ナガセケムテックス社製)の代わりに、キシレン中にポリアニリン(アルドリッチ社製)を含有する分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、試料−21を作製した。得られた試料−21の評価を実施例1と同様にして行なったところ、実施例1と同様に光耐久性が向上することが確認された。
【0249】
[実施例22]
実施例22では、紫外線吸収剤を練り込んだPETフィルムを有する試料−22を作製した。
本発明の紫外線吸収剤として一般式(1)で表される化合物No.−15を1.2質量%含有するPETフィルムを、特開2002−244247号の実施例1記載と同様の方法により作製した。得られたPETフィルムは、厚みが188μmであり、波長410nmの光の透過率が1%以下であり、波長370nmの光の透過率が1%以下であった。
そのフィルム上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン(PEDOT)・ポリスチレンスルホン酸(PSS)の水分散液(Denatron P502、ナガセケミ社製)を、9番バーコーターによって塗工し、乾燥して、試料−22を得た。得られた導電性層の厚みは200nmであった。
得られた試料を、実施例1と同様の評価を行ったところ、光耐久性が向上することが確認された。
【0250】
[実施例23]
(タッチパネル装置の製造)
実施例1と同様の操作により、PETフィルムの片面側に紫外線吸収層が、もう一方の面側にポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン(PEDOT)・ポリスチレンスルホン酸(PSS)層が付設されたフィルムを作製した。
【0251】
次に、ガラス基板上にインジウムスズオキサイドを蒸着により付設した基板を用意し、厚み4μmのドットスペーサー(東洋紡製、レジストCR-103C)をフォトリソグラフィーにて形成した後、配線を銀ペースト(東洋紡製、DW-250H-5)のスクリーン印刷により形成した。更に、絶縁インク(十条ケミカル製、商品名:JELCON IN)にて絶縁部位を形成した。最後に、上記フィルムを貼り合せてタッチパネル装置を作製した。
【0252】
(タッチパネル装置の評価)
上記タッチパネル装置を屋外光が入射される条件下で作動させたところ、良好なタッチパネル特性を示すことがわかった。すなわち、本発明の導電性組成物から形成されるタッチパネル装置は、光に対する耐久性が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0253】
【図1】図1(A)〜(D)は、本発明の導電性ポリマー材料の層構成の例を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0254】
10 支持体
12 紫外線吸収剤を含有する支持体
20 紫外線吸収層
21 導電性ポリマーを含有する紫外線吸収層
30 導電性ポリマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、波長410nmの光に対する透過率が40%以下である少なくとも一層の紫外線吸収層を有し、支持体上のいずれかの層に導電性ポリマーを含有することを特徴とする導電性ポリマー材料。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、前記紫外線吸収層に含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項3】
前記導電性ポリマーを含有する層が、前記紫外線吸収層とは別に設けられてなることを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項4】
前記紫外線吸収層が、ベンゾオキサゾール誘導体を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項5】
前記ベンゾオキサゾール誘導体が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項4に記載の導電性ポリマー材料。
【化1】

〔一般式(1)中、R21及びR24は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルキコキシ基を表し、R22及びR23は、各々独立にアルキル基を表す。Aは置換アリール基又は置換エテニル基を表す。〕
【請求項6】
波長370nmの光に対する前記紫外線吸収層の透過率が20%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項7】
波長410nmの光に対する透過率が40%以下である支持体上に、導電性ポリマーを含有する層を備えることを特徴とする導電性ポリマー材料。
【請求項8】
前記支持体が、ベンゾオキサゾール誘導体を含有することを特徴とする請求項7に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項9】
前記ベンゾオキサゾール誘導体が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項8に記載の導電性ポリマー材料。
【化2】

〔一般式(1)中、R21及びR24は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルキコキシ基を表し、R22及びR23は、各々独立にアルキル基を表す。Aは置換アリール基又は置換エテニル基を表す。〕
【請求項10】
波長370nmの光に対する前記支持体の透過率が20%以下であることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項11】
前記導電性ポリマーが、π共役ポリマーであることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項12】
前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項13】
前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンを含むことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項14】
前記導電性ポリマーを含有する層が、更にドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を含有することを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項15】
前記支持体が、可撓性支持体であることを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項16】
前記支持体が、ポリエチレンテレフタレートを含んで形成されてなることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項17】
更に、極大吸収波長が350nm以上400nm以下であり、半値幅が55nm以下であり、極大吸収波長におけるモル吸光係数が20000以上である化合物を含有することを特徴とする請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項18】
更に、下記一般式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【化3】

〔一般式(2)中、A21及びA22は、水素原子及び炭素原子以外の原子を表し、(B)はA21及びA22が互いに連結して5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表す。Y21及びY22は各々独立に水素原子又は1価の置換基を表す。但しY21及びY22のうち少なくとも一方は、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基を表す。また、Y21及びY22は、互いに結合して環を形成してもよい。〕

【図1】
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【公開番号】特開2010−10089(P2010−10089A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171299(P2008−171299)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】