説明

導電性ロール

【課題】優れた低へたり性を発揮しつつ、十分な低硬度化も図られた導電性弾性体層を有する導電性ロールを提供すること。
【解決手段】軸体の外周面上に接して配された導電性弾性体層を少なくとも有する導電性ロールにおいて、該導電性弾性体層を、イオン導電剤が配合された極性ゴム材料からなる連続相中に、非極性ゴム材料が島相として微細に分散せしめられてなる、電子導電剤が配合されていない海島構造を呈するゴム組成物にて形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ロールに係り、特に、電子写真方式を利用した複写機やプリンター等における帯電ロールや現像ロール、転写ロール等として好適に用いられ得る導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式を利用した複写機やプリンター等の画像形成装置(以下、電子写真機器という)においては、例えば、導電体たる軸体(芯金)の外周面上に、低硬度のゴム層からなる導電性弾性体層が設けられ、更に必要に応じて、導電性弾性体層の外周面上に抵抗調整層や保護層が、順次積層形成されてなる構造の導電性ロールが、帯電ロール、現像ロール、転写ロール等として、用いられている。
【0003】
かかる導電性ロールのうち、帯電ロールは、感光体(ドラム)等の像坦持体を帯電させるために用いられるものであり、具体的には、像坦持体を帯電ロールの外周面に接触せしめることにより、かかる像坦持体の表面を帯電させるものである。このため、帯電ロールを構成する導電性弾性体層に対しては、従来より、像坦持体との接触性が確保出来るように圧縮永久歪みが小さいこと(低へたり性)や、電気抵抗が適正な範囲に制御されていること(帯電均一性)等が要求されている。
【0004】
また、近年、電子写真機器に対しては、画像形成の高速化(印刷速度の向上)及び高画質化、機器の小型化が要求されているところ、それに用いられる帯電ロールに対しても、その小型化(小径化)が要求されている。ここで、小型の帯電ロールを用いて画像形成の高速化を図ると、帯電ロールの回転速度は必然的に上昇することとなるが、かかるロール回転速度の上昇により、帯電ロールと感光体との均一なニップ状態を確保することが困難となる。かかる問題に対しては、例えば種々の添加剤(可塑剤等)が配合されたゴム組成物を用いて、帯電ロールの導電性弾性体層を形成せしめることが一般的に考えられるが、極端な低硬度化は低へたり性を悪化(圧縮永久歪みを悪化)させる恐れがある。
【0005】
そのような状況の下、低硬度で、且つ低へたり性にも優れている導電性弾性体層を与え得るゴム組成物として、従来より様々なものが提案されている。例えば、特許文献1(特開平9−302232号公報)においては、平均粒子径が20μm以下でありかつトルエン不溶分が30重量%以上である架橋シリコーンゴムと、シリコーンゴム以外の未架橋有機ゴムとからなるゴム組成物(A)中に、電子伝導機構による導電性付与剤(B)とイオン伝導機構による導電性付与剤(C)とを混合分散させてなる導電性ゴム組成物が、提案されている。また、特許文献2(特開平11−124473号公報)においては、トルエン不溶分が30重量%以上の架橋ゴムからなる数平均粒子径が20μm以下の架橋ゴム粒子(A)と、導電性付与物質(B)とが、前記架橋ゴム粒子(A)を構成するものとは異なる種類の未架橋有機ゴム(C)中に分散含有されていることを特徴とする導電性ゴム組成物が、提案されている。
【0006】
しかしながら、上述したものを始めとする従来の導電性ゴム組成物にあっては、それらを用いて導電性ロールの導電性弾性体層を形成せしめると、その低硬度化及び低へたり性がある程度は発揮されるものの、未だ充分なものとは言い難いものであったのであり、特に、導電性ロールに対して要求される特性がより厳しくなってきている現在においては、導電性弾性体層としてより優れた低へたり性を発揮しつつ低硬度化も図られたものを有する導電性ロールの開発が、望まれているのである。
【0007】
【特許文献1】特開平9−302232号公報
【特許文献2】特開平11−124473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、優れた低へたり性を発揮しつつ、十分な低硬度化も図られた導電性弾性体層を有する導電性ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明は、そのような課題を解決すべく、軸体の外周面上に接して配された導電性弾性体層を少なくとも有する導電性ロールにおいて、該導電性弾性体層を、イオン導電剤が配合された極性ゴム材料からなる連続相中に、非極性ゴム材料が島相として微細に分散せしめられてなる、電子導電剤が配合されていない海島構造を呈するゴム組成物にて形成したことを特徴とする導電性ロールを、その要旨とするものである。
【0010】
なお、かかる本発明に従う導電性ロールにおける好ましい態様の一つにおいては、前記極性ゴム材料が、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びウレタンゴムからなる群より選ばれる一種以上のものである。
【0011】
また、本発明に係る導電性ロールにおける好ましい態様の他の一つにおいては、前記非極性ゴム材料が、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム及びシリコーンゴムからなる群より選ばれる一種以上のものである。
【0012】
さらに、本発明に従う導電性ロールにおける別の望ましい態様の一つにおいては、前記連続相中に液状ポリマーが配合されており、更に別の望ましい態様の一つにおいては、前記島相中に液状ポリマーが配合されている。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明に従う導電性ロールにあっては、その導電性弾性体層が、異なる種類のゴム材料からなり、且つ電子導電剤が配合されていない、海島構造を呈するゴム組成物にて形成されているところから、優れた低へたり性を発揮しつつ、十分な低硬度化も図られたものとなるのである。
【0014】
そのような効果は、特に、1)連続相を構成する極性ゴム材料として、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体等からなる群より選ばれる一種以上のものを使用することによって、2)島相を構成する非極性ゴム材料として、天然ゴム等からなる群より選ばれる一種以上のものを使用することによって、3)連続相中に液状ポリマーを配合することによって、或いは、4)島相中に液状ポリマーを配合することによって、より有利に享受することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ところで、本発明に従う導電性ロールを製造するに際しては、所定の材料を用いて、先ず、所謂海島構造を呈するゴム組成物を調製することとなるが、かかるゴム組成物の調製は、有利には以下の手法に従って行なわれる。
【0016】
先ず、島相を与える島相形成用ゴム組成物が調製される。
【0017】
かかる島相形成用ゴム組成物は、非極性ゴム材料をゴム成分とするものであるところ、非極性ゴム材料としては、従来より公知のものであれば、如何なるものであっても用いることが可能である。具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム及びシリコーンゴム等を例示することが出来、有利には、それら例示の非極性ゴム材料の中から一種又は二種以上のものが適宜に選択されて、用いられる。特に、シリコーンゴムを用いることにより、導電性ロールを作製する際の押出成形性や射出成形性(型注入性)を、有利に向上せしめることが可能である。
【0018】
本発明においては、そのような非極性ゴム材料に対して、有利には液状ポリマーが配合せしめられる。かかる液状ポリマーの配合によって、導電性ロールにおける導電性弾性体層の低硬度化をより効果的に達成することが可能となるが、その配合量が多すぎると、導電性弾性体層のへたり性(圧縮永久歪み)を悪化させる恐れがあるため、好ましくは、非極性ゴム材料と液状ポリマーの合計量:100重量部に対して、3〜30重量部となるような量的割合において、液状ポリマーは配合される。本発明において用いられ得る液状ポリマーとしては、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、液状ブタジエンゴム、液状イソプレンゴム、液状スチレン−ブタジエン共重合体、液状イソプレン−ブタジエン共重合体、液状スチレン−イソプレン共重合体及びこれらの水素添加ポリマー、液状エチレン・プロピレン・ターポリマー、液状イソブチレンゴム、液状アクリルゴム、液状クロロプレンゴム、液状シリコーンゴム、液状エーテルゴム等を、例示することが出来る。
【0019】
また、液状ポリマー以外にも、従来よりゴム組成物に配合される種々の添加剤(例えば、軟化剤や可塑剤等)も、本発明の目的を阻害しない範囲内において、配合することが可能である。但し、導電性カーボンブラック等の電子導電剤を配合すると、本発明の目的が達成され得ない、即ち、最終的に得られる導電性ロールの導電性弾性体層において、その硬度が上昇し、へたり性が悪化することから、本発明においては、かかる導電性カーボンブラック等の電子導電剤は配合されない。
【0020】
上述した非極性ゴム材料に対して、必要に応じて液状ポリマーや各種添加剤を配合し、更に、加硫剤、必要に応じて加硫促進剤や加硫助剤等をも配合して、ニーダーや二軸ロール等の公知の混練機を用いて混練することにより、島相形成用のゴム組成物が調製される。なお、加硫剤、加硫促進剤及び加硫助剤としては、従来よりゴム組成物の調製に際して用いられるものの中から、非極性ゴム材料に応じたものが適宜に選択されて、使用される。
【0021】
そして、そのようにして調製された島相形成用ゴム組成物と、極性ゴム材料と、イオン導電剤とを用いて、海島構造を呈するゴム組成物が調製される。
【0022】
すなわち、島相形成用ゴム組成物は非極性ゴム材料を主たる成分とするものであり、極性ゴム材料との相溶性が乏しいものであるところから、そのような島相形成用ゴム組成物を極性ゴム材料に配合し、混練すると、非極性ゴム材料が島相として微細に分散せしめられてなる、海島構造を呈するゴム組成物となるのである。
【0023】
なお、極性ゴム材料に配合される島相形成用ゴム組成物の量は、目的とする導電性ロールの特性等に応じて、適宜に決定されることとなるが、その配合量が少な過ぎると、非極性ゴム材料からなる島相が効果的に発現せず、導電性ロールが目的とする特性(低硬度化及び低へたり性)を発揮し得ない恐れがあり、一方、その配合量が多過ぎると、導電性ロールのイオン導電性が低下する恐れがある。このようなことから、本発明においては、有利には、極性ゴム材料の100重量部に対して、島相形成用ゴム組成物中の非極性ゴム材料が5〜50重量部となるような量的割合において、島相形成用ゴム組成物が配合される。
【0024】
本発明において用いられる極性ゴム材料としては、従来より公知の極性ゴム材料であれば、如何なるものであっても用いることが可能であり、例えば、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びウレタンゴム等を、挙げることが出来る。本発明においては、有利には、それら例示の極性ゴム材料の中から一種又は二種以上のものが適宜に選択されて、用いられる。
【0025】
また、本発明においては、そのような極性ゴム材料に対して、最終的に得られる導電性ロールの導電性弾性体層が所定の導電性を発現するよう、イオン導電剤が配合される。かかるイオン導電剤としては、従来より公知の各種のもの、例えば、トリブチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムヨーダイドやテトラブチルアンモニウムパークロレート等の第4級アンモニウム塩、過塩素酸リチウムや過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、有機ホウ素錯体等を挙げることが出来る。イオン導電剤の配合量が少な過ぎると配合効果は認められず、また、多過ぎると導電剤のブルームが発生し、例えば帯電ロールとして用いた場合に感光体を汚染する恐れがあることから、本発明においては、極性ゴム材料の100重量部に対して、0.1〜5重量部程度の割合において、配合される。なお、先に述べたように、導電性カーボンブラック等の電子導電剤の配合は、本発明の目的を阻害することから、本発明においては配合されない。
【0026】
さらに、極性ゴム材料に対しては、島相形成用ゴム組成物と同様に、有利には液状ポリマーが配合される。かかる液状ポリマーは、導電性ロールの導電性弾性体層における低硬度化及び低へたり性の両立を図るべく、好ましくは、極性ゴム材料と液状ポリマーの合計量:100重量部に対して、3〜30重量部となるような量的割合において配合される。なお、極性ゴム材料に対して配合し得る液状ポリマーとしては、島相形成用ゴム組成物を調製する際に用いられ得るものとして先に例示したものを、同様に使用することが可能である。
【0027】
さらにまた、液状ポリマー以外にも、従来よりゴム組成物に配合される種々の添加剤(例えば、軟化剤や可塑剤等)も、本発明の目的を阻害しない範囲内において、配合することが可能である。
【0028】
そして、極性ゴム材料に対して、島相形成用ゴム組成物及びイオン導電剤と、必要に応じて液状ポリマーや各種添加剤を配合し、更に、加硫剤、必要に応じて加硫促進剤や加硫助剤等をも配合して、ニーダー等の公知の混練機を用いて混練することにより、非極性ゴム材料が島相として微細に分散せしめられてなる、海島構造を呈するゴム組成物が調製されるのである。なお、加硫剤、加硫促進剤及び加硫助剤としては、従来よりゴム組成物の調製に際して用いられるものの中から、極性ゴム材料に応じたものが適宜に選択されて、使用される。
【0029】
以上、本発明の導電性ロールを作製する際に用いられるゴム組成物の調製手法について述べてきたが、本発明の導電性ロールが、そのような手法によって調製されたゴム組成物以外のゴム組成物を用いて製造し得ることは、言うまでもないところである。例えば、島相形成用ゴム組成物を先に調製することなく、上述した非極性ゴム材料、極性ゴム材料、イオン導電剤、液状ポリマー、加硫剤及び必要に応じて各種添加剤等を、ニーダー等の混練機内に投入し、混練することによって得られるゴム組成物であっても、本発明の導電性ロールが得られるのであり、要するに、イオン導電剤が配合された極性ゴム材料からなる連続相中に、非極性ゴム材料が島相として微細に分散せしめられてなる、海島構造を呈するゴム組成物であれば、如何なるものであっても、使用可能である。
【0030】
そして、そのようにして調製された海島構造を呈するゴム組成物を用いて、先ず、従来より公知の各種成形法に従って、所定の軸体(芯金)の外周面上に、かかるゴム組成物からなる未加硫の導電性弾性体層を形成せしめ、その後、未加硫の導電性弾性体層に対して所定の加硫操作を施すことにより、目的とする導電性ロールが得られるのである。
【0031】
なお、成形法としては、例えば押出成形や射出成形(型注入成形)等、従来より公知の成形法の中から、ゴム組成物の性状等に応じたものが適宜に選択され、また、その後の加硫操作の際の諸条件も、ゴム組成物の組成等に応じて、適宜に設定される。
【0032】
また、そのようにして作製された導電性ロールの表面(導電性弾性体層の外周面)上には、更に必要に応じて、保護層が形成される。この保護層は、ロール表面にトナー等が付着、堆積等することを抑制するために設けられるものであり、例えば、フッ素変性アクリレート樹脂等のフッ素系樹脂を含む樹脂組成物材料や、N−メトキシメチル化ナイロン等のナイロン系材料等に、カーボンブラックや金属酸化物等の導電剤が配合されて、その体積抵抗率が、一般に1×105 〜1×1013Ω・cm程度となるように形成される。なお、このような保護層の作製は、例えばディッピング等の公知のコーティング手法に従って行なわれ、その厚さは、導電性ロールの大きさ(直径、長さ)に応じて適宜に設定されることとなるが、通常、1〜20μm程度とされる。
【0033】
さらに、本発明のゴム組成物を用いて作製された導電性弾性体層と、上記保護層との間に、導電性ロール全体の電気抵抗を制御して、耐電圧性(耐リーク性)を高めることを目的とする抵抗調整層や、導電性弾性体層上にその他の各種の層を、1層或いはそれ以上、形成することも可能である。
【0034】
そして、そのようにして得られた導電性ロールにあっては、その導電性弾性体層が、低硬度化が効果的に図られていると共に、優れた低へたり性をも発揮するものであるところから、電子写真機器の帯電ロールや現像ロール、転写ロール等として、特に、帯電ロールとして、有利に用いられるのである。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0036】
先ず、下記表1に掲げる各配合割合にて、6種類の島相形成用ゴム組成物(組成物A〜F)を調製した。なお、各成分としては、以下に掲げるものを用いた。
・シリコーンゴムコンパウンド:GE東芝シリコーン株式会社製、XE20-A2184(商品名)
・ブタジエンゴム:日本ゼオン株式会社製、ニポールBR1220(商品名)
・ナフテンオイル:出光興産株式会社製、ダイアナプロセスオイルNM280(商品名)
・液状ブタジエン:株式会社クラレ製、クラプレンLIR300(商品名)
・過酸化物架橋剤マスターバッチ:GE東芝シリコーン株式会社製、TC-8(商品名)
・付加反応用架橋剤マスターバッチA:
GE東芝シリコーン株式会社製、TC-25A(商品名)
・付加反応用架橋剤マスターバッチB:
GE東芝シリコーン株式会社製、TC-25B(商品名)
・カーボンブラック:電気化学工業株式会社製、デンカブラック(商品名)
【0037】
具体的に、組成物A及びEについては、シリコーンゴムコンパウンドと架橋剤マスターバッチとを二軸ロールで混練することにより、また、組成物B、C、D及びFについては架橋剤(マスターバッチ)を除く成分をニーダーにて5分間、混練した後、その混練物に架橋剤(マスターバッチ)を添加し、二軸ロールで混練することにより、調製した。
【0038】
【表1】

【0039】
そのようにして得られた6種類の島相形成用ゴム組成物を用いて、下記表2に掲げる各配合割合にて、14種類のゴム組成物(試料No.1〜14)を調製した。なお、各成分としては、以下に掲げるものを用いた。
・極性ゴムA:エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、ダイソー株式会社 製、エピクロマーD(商品名)
・極性ゴムB:エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル 三元共重合体、ダイソー株式会社製、エピクロマーCG-102(商品名)
・極性ゴムC:エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテ ル三元共重合体、日本ゼオン株式会社製、ゼオスパン8030(商品名)
・極性ゴムD:アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、日本ゼオン株式会社製、ニポ ールDN3335(商品名)
・極性ゴムE:ウレタンゴム、バイエル社製、ウレパン641G(商品名)
・液状ポリマー:液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、JSR株式会社製、
JSR N280(商品名)
・イオン導電剤:下記構造式で表わされる第4級アンモニウム塩
【化1】

・カーボンブラック:電気化学工業株式会社製、デンカブラック(商品名)
【0040】
具体的に、試料No.1〜9及び12〜14のゴム組成物については、加硫剤及び加硫促進剤(2−メルカプトイミダゾリン、硫黄、ジクミルパーオキサイド、モノフォリンジスルフィド及びテトラメチルチウラムジスルフィド)を除く各成分を、ニーダーにて5分間、混練した後、得られた混練物に加硫剤(及び加硫促進剤)を添加し、二軸ロールにて混練することにより調製した。また、試料No.10及び11については、加硫剤及び加硫促進剤を除く各成分を、ニーダーを用いて、120℃で30分間、混練し、室温まで冷却せしめた後、得られた混練物に加硫剤及び加硫促進剤を添加し、二軸ロールにて混練することにより調製した。
【0041】
そのようにして得られた14種類のゴム組成物を用いて、以下の測定及び評価を行なった。
【0042】
−硬度、圧縮永久歪みの測定−
得られたゴム組成物を用いて、160℃で30分間、プレス加硫を行ない、所定の形状を呈する加硫物サンプルを得た。得られた加硫物サンプルを用いて、硬度についてはJIS−K−6253に準拠して、また、圧縮永久歪みについてはJIS−K−6262に準拠して、測定した。その測定結果を、下記表2に併せて示す。
【0043】
−帯電ロールとしてのセット評価−
直径6mmの金属製シャフトからなる芯金を準備し、その外周面に接着剤を塗布した後、かかる芯金を、円筒状の成形キャビティを有する金型内の軸方向中央に配置し、その状態にて、得られたゴム組成物を注入した。その後、160℃×30分の条件にて、加熱加硫を実施し、金型を取り外すことにより、芯金の外周面上に導電性弾性体層(厚さ:3mm)が形成されてなる導電性ロールを作製した。次いで、その導電性弾性体層の表面に、保護層形成用材料をディッピング法により塗布し、乾燥せしめた後、150℃で60分間、加熱することにより、目的物たる、導電性弾性体層(厚さ:3mm)の表面に保護層(厚さ:6μm)が設けられた帯電ロールを得た。なお、保護層形成用材料としては、フッ素変性アクリレート樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:ディフェンサTR230K):50重量部と、フッ素変性アクリレート樹脂(アトフィナジャパン株式会社製、商品名:カイナーSL)と、導電性酸化チタン(石原テクノ株式会社製、商品名:タイペークET-300W ):100重量部とを、200重量部のメチルエーテルケトンに添加し、その混合溶液をサンドミルにて分散せしめることによって調製したものを、用いた。
【0044】
そのようにして得られた帯電ロールを感光ドラムに圧接させ、40℃×95%RHの環境下で1週間、圧接させた状態にて放置した後、その帯電ロールを、市販のレーザープリンター(日本ヒューレット・パッカード株式会社製、商品名:レーザージェット4240)に組み込み、15℃×10%RHの環境下にて画出しを行ない、その画質を評価した。かかる評価は、画像ムラやスジ、斑点等が何ら認められなかったものを「○」と、画像ムラやスジ、斑点等の画像不具合が認められたものを「×」とした。各ゴム組成物を用いて得られた帯電ロールについての評価を、下記表2に併せて示す。
【0045】
【表2】

【0046】
かかる表2の結果からも明らかなように、本発明に従う導電性ロールにあっては、その導電性弾性体層が、低硬度であり且つ優れた低へたり性を発揮するものであり、また、そのような導電性ロールを帯電ロールとして使用した場合には、高画質な画像が得られることが認められた。
【0047】
その一方、本発明の範囲外の導電性ロール、具体的には、非極性ゴム材料からなる島相を含有しないゴム組成物(試料No.12)や、電子導電剤たるカーボンブラックを配合してなるゴム組成物(試料No.13及び14)を用いて得られる導電性ロールは、硬度が比較的高く、またへたり性も十分なものではなく、更に、帯電ロールとして使用した場合には、得られる画像に不具合を生ずるものであることが、確認されたのである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面上に接して配された導電性弾性体層を少なくとも有する導電性ロールにおいて、
該導電性弾性体層を、イオン導電剤が配合された極性ゴム材料からなる連続相中に、非極性ゴム材料が島相として微細に分散せしめられてなる、電子導電剤が配合されていない海島構造を呈するゴム組成物にて形成したことを特徴とする導電性ロール。
【請求項2】
前記極性ゴム材料が、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びウレタンゴムからなる群より選ばれる一種以上のものである請求項1に記載の導電性ロール。
【請求項3】
前記非極性ゴム材料が、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム及びシリコーンゴムからなる群より選ばれる一種以上のものである請求項1又は請求項2に記載の導電性ロール。
【請求項4】
前記連続相中に液状ポリマーが配合されている請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の導電性ロール。
【請求項5】
前記島相中に液状ポリマーが配合されている請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の導電性ロール。


【公開番号】特開2008−250101(P2008−250101A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92891(P2007−92891)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】