説明

導電性微粒子の製造方法、及び、導電性微粒子

【課題】触媒を用いることなく、基材微粒子の表面に容易かつ均一に金属メッキ層を形成させ、基材微粒子と金属メッキ層との密着性を向上させることができる導電性微粒子の製造方法、及び、該導電性微粒子の製造方法により製造される導電性微粒子を提供する。
【解決手段】基材微粒子と、前記基材微粒子の表面に形成された下記化学式(1)で示されるシラン化合物に由来する下地層と、前記下地層の表面に形成された金属メッキ層とからなる導電性微粒子であって、前記下地層の厚さが10〜500nmである導電性微粒子。
(RO)SiRNHX (1)
(ただし、RはCH又はCを示し、RはCH、C、C、C(フェニレン基)又はR−C(フェニレン基)−R(R、Rは、CH、C又はCを示す。)を示し、XはH、CNH、CNH又はC(フェニル基)を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒を用いることなく、基材微粒子の表面に容易かつ均一に金属メッキ層を形成させ、基材微粒子と金属メッキ層との密着性を向上させることができる導電性微粒子の製造方法、及び、該導電性微粒子の製造方法により製造される導電性微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性微粒子は、バインダー樹脂や粘接着剤等と混合、混練することにより、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、異方性導電シート等の異方性導電材料として広く用いられている。
【0003】
これらの異方性導電材料は、例えば、液晶ディスプレイ、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器において、回路基板同士を電気的に接続したり、半導体素子等の小型部品を回路基板に電気的に接続したりするために、相対向する回路基板や電極端子の間に挟み込んで使用されている。
【0004】
従来、異方性導電材料に対して好適な導電性微粒子としては、粒子径の均一な樹脂微粒子やガラスビーズ等の微粒子を基材微粒子として用い、基材微粒子の表面にニッケル等の金属によるメッキを形成させた導電性微粒子が報告されていた。
【0005】
このような導電性微粒子を製造する方法としては、例えば、基材微粒子を特許文献1に示されるようなパラジウム触媒液で処理することにより、基材微粒子の表面にパラジウム触媒を付着させ、更にこの基材微粒子を金属塩溶液に分散させることにより金属メッキ層を形成させる方法が挙げられる。
【0006】
しかしながら、このような方法では、基材微粒子の材質や、金属の種類によって触媒を替えなければならず、また、触媒を付着させる工程が煩雑であるという問題があった。
更に、基材微粒子と金属メッキ層との間に触媒が存在するため、基材微粒子と金属メッキ層との密着性が悪いという問題や、触媒の粒子を中心にして金属メッキ層が成長していくため、触媒が均一に付着していないと金属メッキ層の厚さにばらつきが生じるという問題等があった。
【0007】
このような問題に対して、特許文献2には、基材微粒子の表面をポリシラン又はケイ素原子に直接結合した水素原子を有するポリシロキサン等のケイ素系ポリマーからなる被膜で被覆することにより、基材微粒子を金属塩溶液に浸漬させただけで最表面に金属メッキ層を形成させた導電性微粒子が開示されている。特許文献2で開示されている導電性微粒子においては、ケイ素系ポリマーが還元作用を有するため、触媒を必要としなくとも基材微粒子表面に高い密着性で金属メッキ層を形成させることができるとされている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示されているケイ素系ポリマーは、実際には充分な還元作用を有していないため、ニッケルや銅のような標準酸化還元電位の低い金属からなる金属メッキ層を形成させることが困難であるという問題や、金属メッキ層を形成させた場合であっても基材微粒子と金属メッキ層との密着性が充分ではなく、金属メッキ層が剥離しやすいという問題があった。
【特許文献1】特開2003−313671号公報
【特許文献2】特開平11−306855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、触媒を用いることなく、基材微粒子の表面に容易かつ均一に金属メッキ層を形成させ、基材微粒子と金属メッキ層との密着性を向上させることができる導電性微粒子の製造方法、及び、該導電性微粒子の製造方法により製造される導電性微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記化学式(1)で示されるシラン化合物と水とを含有する下地溶液を調製する工程1と、上記下地溶液に基材微粒子を付着させて上記基材微粒子の表面に厚さが10〜500nmである下記化学式(1)で示されるシラン化合物に由来する下地層を形成させる工程2と、上記下地層が形成された基材微粒子を金属塩溶液に付着させて上記下地層の表面に金属メッキ層を形成させる工程3とからなる導電性微粒子の製造方法である。
(RO)SiRNHX (1)
(ただし、RはCH又はCを示し、RはCH、C、C、C(フェニレン基)又はR−C(フェニレン基)−R(R、Rは、CH、C又はCを示す。)を示し、XはH、CNH、CNH又はC(フェニル基)を示す。)
以下に、本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、導電性微粒子の製造方法において、特定のシラン化合物を含有する下地溶液に基材微粒子を付着させて該基材微粒子の表面に特定のシラン化合物に由来する下地層を特定の厚さで形成させることにより、銅やニッケルのような標準酸化還元電位の低い金属を含む金属塩溶液であっても該基材微粒子を該金属塩溶液に付着させるだけで、容易に該下地層の表面に金属メッキ層を形成させることができ、かつ、基材微粒子と金属メッキ層との密着性を向上させることができるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、下記化学式(1)で示されるシラン化合物と水とを含有する下地溶液を調製する工程1を有する。
(RO)SiRNHX (1)
(ただし、RはCH又はCを示し、RはCH、C、C、C(フェニレン基)又はR−C(フェニレン基)−R(R、Rは、CH、C又はCを示す。)を示し、XはH、CNH、CNH又はC(フェニル基)を示す。)
このようなシラン化合物を用いて下地溶液を調製することにより、上記下地溶液に基材微粒子を付着させるだけで上記基材微粒子の表面に還元性を有する下地層が形成されるため、更に金属塩溶液に付着させるだけで容易に金属メッキ層を形成させることができる。
また、このようにして形成される下地層は、高い還元能力を有しているため、標準酸化還元電位の低い金属を含む金属塩溶液を用いても金属メッキ層を形成させることができる。
上記化学式(1)で示されるシラン化合物は、トリメトキシ基、トリエトキシ基等のトリアルコキシ基を有するため、上記下地層はポリシロキサン構造を容易に形成し、更に、NH基又はNH結合を有するため、高い還元能力を有すると共に、基材微粒子と金属メッキ層との密着性を向上させる。
【0013】
上記化学式(1)で示されるシラン化合物としては特に限定されないが、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン(上記化学式において、R=C、R=CH)等を挙げることができる。
【0014】
上記化学式(1)で示されるシラン化合物は、モノマーを用いてもよいが、シランオリゴマーを用いることもできる。上記シランオリゴマーとしては特に限定されないが、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシランオリゴマー、3−アミノプロピルトリエトキシシランオリゴマー、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランオリゴマー、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランオリゴマー、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシランオリゴマー等を挙げることができ、上記シランオリゴマーとして、2量体〜10量体のシランオリゴマーを用いることが好ましい。
上記シランオリゴマーを用いることにより、表面が均一な下地層を形成させることができ、後述する基材微粒子と下地層との密着性を向上させることができる。また、基材微粒子の表面に所望の厚さの還元性に優れる下地層の形成が容易となる。
上記化学式(1)で示されるシラン化合物に由来する下地層は、モノマーを用いて形成させてもよいが、上記化学式(1)で示されるシラン化合物が、多量化したシランオリゴマーを用いて形成させてもよい。
【0015】
上記下地溶液における上記化学式(1)で示されるシラン化合物の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限が1重量%、好ましい上限が50重量%である。1重量%未満であると、得られる下地層の厚さが薄くなり、金属塩溶液に付着させた際に、電子を放出するという充分な還元効果を発揮できないことがあり、50重量%を超えても、それ以上の還元効果の向上が望めない。より好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は40重量%である。
【0016】
また、上記下地溶液には、クエン酸を添加することもできる。
【0017】
上記下地溶液は、pHが9〜12.5であることが好ましい。pHがこの範囲であることにより、上記基材微粒子と上記下地層との密着性が向上するため、上記基材微粒子の表面に好ましい厚さの下地層を形成させやすくなる。なお、pHをこの範囲に調製するためには、適宜、酢酸等の酸、水酸化ナトリウム等の塩基を用いればよい。
また、上記pHの測定方法としては特に限定されず、例えば、堀場製作所社製、pHメータ「D−52」等を用いる方法等が挙げられる。
【0018】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、上記下地溶液に基材微粒子を付着させて上記基材微粒子の表面に厚さが10〜500nmである上記化学式(1)で示されるシラン化合物に由来する下地層を形成させる工程2を有する。
【0019】
上記基材微粒子としては特に限定されず、適度な弾性率、弾性変形性及び復元性を有する基材微粒子であれば、無機材料であっても有機材料であってもよいが、適度な弾性率、弾性変形性及び復元性を制御しやすいため、樹脂からなる樹脂微粒子であることが好ましい。
【0020】
上記樹脂微粒子としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ジビニルベンゼン重合樹脂;ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体、ジビニルベンゼン−メタクリル酸エステル共重合体等のジビニルベンゼン系共重合樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等からなる樹脂微粒子が挙げられる。これらの樹脂微粒子は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
上記基材微粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は20μmである。1μm未満であると、例えば、金属メッキ層を形成させる際に凝集しやすく、単粒子としにくくなることがあり、20μmを超えると、異方性導電材料として基板電極間等で用いられる範囲を超えてしまうことがある。より好ましい上限は10μmである。
【0022】
上記化学式(1)で示されるシラン化合物に由来する下地層の厚さの下限は10nm、上限は500nmである。10nm未満であると、上記下地層の還元性が低いために下地層表面に容易に金属メッキ層(特に標準酸化還元電位の低い銅、ニッケルからなる金属メッキ層)を形成させることができず、500nmを超えると、基材微粒子と金属メッキ層との密着性が低下するため、金属メッキ層が剥離しやすくなる。好ましい下限は40nm、好ましい上限は300nmである。
なお、上記下地層の厚さは、無作為に選んだ10個の導電性微粒子の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)撮影を行い、これらを算術平均した厚さである。倍率としては特に限定されないが、観察しやすい倍率を選択することができる。
【0023】
上記基材微粒子を上記下地溶液に付着させる際の上記下地溶液の温度としては特に限定されないが、好ましい下限は10℃、好ましい上限は80℃である。10℃未満であると、充分な厚さの下地層が形成されないことがあり、80℃を超えると、下地層の厚さを制御できないことがある。より好ましい下限は20℃、より好ましい上限は60℃である。
【0024】
上記下地溶液に基材微粒子を付着させる時間としては特に限定されないが、好ましい下限は10分、好ましい上限は120分である。上記下地溶液に基材微粒子を付着させる時間が10〜120分に制御することで、上記下地層の厚さを10〜500nmの範囲内とすることが容易となる。
また、上記基材微粒子を上記下地溶液に付着させる際の上記下地溶液の温度及び/又は上記下地溶液に基材微粒子を付着させる時間を適宜調整することで、上記下地層の厚さを10〜500nmの範囲内とすることができる。
【0025】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、上記下地層が形成された基材微粒子を金属塩溶液に付着させて上記下地層の表面に金属メッキ層を形成させる工程3を有する。
ここで、工程2の後、工程3を行う際には、基材微粒子表面に付着した下地溶液を一度乾燥させてから金属塩溶液に付着させてもよいし、乾燥させずにそのまま金属塩溶液に付着させてもよい。
【0026】
上記金属塩溶液としては特に限定されず、例えば、ニッケル(標準酸化還元電位−0.23V)、銅(標準酸化還元電位0.34V)、銀(標準酸化還元電位0.80V)、パラジウム(標準酸化還元電位0.99V)、金(標準酸化還元電位1.7V)等の金属を含む金属塩溶液が挙げられる。
上述した工程2を行うことにより、上記化学式(1)で示されるシラン化合物に由来する下地層の厚さを好ましい範囲に調整し、これにより上記下地層の還元性が高くなるため、従来は触媒を用いなければ形成させることができなかった標準酸化還元電位の低い銅やニッケルからなる金属メッキ層であっても、金属塩溶液に付着させるだけで基材微粒子表面に容易に金属メッキ層を形成させることができ、また、基材微粒子と金属メッキ層との密着性を向上させることができる。
【0027】
上記金属メッキ層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は2nm、好ましい上限は100nmである。2nm未満であると、所望の導電性が得られないことがあり、100nmを超えると、金属メッキ層が剥離しやすくなることがある。より好ましい下限は5nm、より好ましい上限は50nmである。
なお、上記金属メッキ層の厚さは、無作為に選んだ10個の導電性微粒子の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)撮影を行い、これらを算術平均した厚さである。倍率としては特に限定されないが、観察しやすい倍率を選択することができる。
【0028】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、更に、上記金属メッキ層の表面に電解メッキ法又は無電解メッキ法によりメッキ層を形成させる工程4を有してもよい。
上記電解メッキ法、無電解メッキ法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0029】
本発明の導電性微粒子の製造方法により製造される導電性微粒子、すなわち、基材微粒子と、上記基材微粒子の表面に形成された上記化学式(1)で示されるシラン化合物に由来する下地層と、上記下地層の表面に形成された金属メッキ層とからなる導電性微粒子であって、上記下地層の厚さが10〜500nmである導電性微粒子もまた、本発明の1つである。
【0030】
本発明においては、上述したような下地溶液を用いて基材微粒子表面を処理することにより、還元剤として働く下地層、すなわち、電子を放出する下地層が形成されるため、この基材微粒子を金属塩溶液に付着させるだけで金属イオンが還元され、従来のように触媒を用いることなく、均一かつ容易に金属メッキを施すことができるものと考えられる。
このため、基材微粒子の代わりに基体の種類を変化させることにより様々な分野に応用でき、例えば、宝石等の装飾品、自動車部品、回路基板等の作製にも期待できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、触媒を用いることなく、基材微粒子の表面に容易かつ均一に金属メッキ層を形成させ、基材微粒子と金属メッキ層との密着性を向上させることができる導電性微粒子の製造方法、及び、該導電性微粒子の製造方法により製造される導電性微粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
(下地層の形成)
純水31.5重量部に対して、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−603」)17重量部を添加し、更に酢酸を添加してpHが10になるように調整した後、純水を添加して、32重量%シラン化合物水溶液を調整し、発熱が収まるまで撹拌装置で混合し、更に、クエン酸一水和物3.0重量部を添加し、下地溶液を作製した。下地溶液におけるシラン化合物の含有量は、30.3重量%であった。
なお、pHは、pHメータ(堀場製作所社製「D−52」)を用いて測定した。以下同様である。
平均粒子径3μmのスチレン樹脂からなる基材微粒子30gを5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬した。次いで、50℃に加熱された下地溶液中に、基材微粒子を10分間浸漬、及び、攪拌した後、自然乾燥を10分間行い、基材微粒子の表面を乾燥させることにより、基材微粒子表面に下地層を形成させた。
【0034】
(導電性微粒子の作製)
次いで、硫酸パラジウム5gを10%硫酸500mLに溶解させた金属塩溶液を50℃に加熱し、この下地層が形成された基材微粒子30gを30分間浸漬することにより、表面がパラジウムメッキされた導電性微粒子を作製した。
なお、反応により白色であった基材微粒子は、表面が黒色となり、金属塩溶液の色は、オレンジ色から無色透明になった。また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面にパラジウムが付着していることが確認され、導電性微粒子の断面を集束イオンビーム(FIB)により切り出し、倍率5万倍にてTEM撮影すると、下地層の厚さは50nm、パラジウムメッキ層の厚さは13nmであることが確認された。
なお、X線回折はRIGAKU社製「X−RAY DIFFRACTOMETER」を用い、TEM撮影はJEOL社製、「JEM−2010FEF」を用いて行った。以下同様である。
【0035】
(実施例2)
(下地層の形成)
純水47.5重量部と、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−603」)25重量部とを混合し、更に、酢酸を添加してpHが10になるように調整した後、純水を添加して、31重量%シラン化合物水溶液を調整し、発熱が収まるまで撹拌装置で混合し、更に、クエン酸一水和物4.5重量部を添加し、下地溶液を作製した。下地溶液におけるシラン化合物の含有量は、29.4重量%であった。
平均粒子径3μmのスチレン樹脂からなる基材微粒子30gを5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬した。次いで、50℃に加熱された下地溶液中に、基材微粒子を10分間浸漬、及び、攪拌した後、自然乾燥を10分間行い、基材微粒子の表面を乾燥させることにより、基材微粒子表面に下地層を形成させた。
【0036】
(導電性微粒子の作製)
次いで、硫酸パラジウム5gを10%硫酸500mLに溶解させた金属塩溶液を50℃に加熱し、この下地層が形成された基材微粒子30gを30分間浸漬することにより、表面がパラジウムメッキされた導電性微粒子を作製した。
なお、反応により白色であった基材微粒子は、表面が黒色となり、金属塩溶液の色は、オレンジ色から無色透明になった。また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面にパラジウムが付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは65nm、パラジウムメッキ層の厚さは14nmであることが確認された。
【0037】
(実施例3)
(下地層の形成)
純水16重量部と、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−603」)17重量部とを混合し、更に、酢酸を添加してpHが10になるように調整した後、純水を添加して、44重量%シラン化合物水溶液を調整し、発熱が収まるまで撹拌装置で混合し、更にクエン酸一水和物4.5重量部を添加し、下地溶液を作製した。下地溶液におけるシラン化合物の含有量は、39.4重量%であった。
平均粒子径3μmのアクリル樹脂からなる基材微粒子30gを5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬した。次いで、50℃に加熱された下地溶液中に、基材微粒子を10分間浸漬、及び、攪拌した後、自然乾燥を10分間行い、基材微粒子の表面を乾燥させることにより、基材微粒子表面に下地層を形成させた。
【0038】
(導電性微粒子の作製)
次いで、塩化金酸溶液10gを6%塩酸500mLに溶解させた金属塩溶液を50℃に加熱し、この下地層が形成された基材微粒子30gを30分間浸漬することにより、表面が金メッキされた導電性微粒子を作製した。
なお、反応により白色であった基材微粒子は、黄色の微粒子となり、金属塩溶液の色は、黄色から青色になった。また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面に金が付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは52nm、金メッキ層の厚さは14nmであることが確認された。
【0039】
(実施例4)
(下地層の形成)
純水41重量部と、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−603」)23.5重量部を混合し、更に酢酸を添加してpHが10になるように調整した後、純水を添加して、34重量%シラン化合物水溶液を調整し、発熱が収まるまで撹拌装置で混合し、更にクエン酸一水和物1.5重量部を添加し、下地溶液を作製した。下地溶液におけるシラン化合物の含有量は、33重量%であった。
平均粒子径3μmのポリイミド樹脂からなる基材微粒子30gを5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬した。次いで、50℃に加熱された下地溶液中に基材微粒子を10分間浸漬、及び、攪拌した後、自然乾燥を10分間行い、基材微粒子の表面を乾燥させることにより、基材微粒子表面に下地層を形成させた。
【0040】
(導電性微粒子の作製)
次いで、硝酸銀5gを18%硝酸500mLに溶解させた金属塩溶液を50℃に加熱し、この下地層が形成された基材微粒子30gを30分間浸漬することにより、表面が銀メッキされた導電性微粒子を作製した。
なお、反応により黄色であった基材微粒子は、表面が銀白色となり、金属塩溶液の色は、無色透明のままであった。また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面に銀が付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは59nm、銀メッキ層の厚さは10nmであることが確認された。
【0041】
(実施例5)
硫酸パラジウムの代わりに硫酸ニッケルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面にニッケルが付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは49nm、ニッケルメッキ層の厚さは12nmであることが確認された。
【0042】
(実施例6)
硫酸パラジウムの代わりに硫酸銅を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面に銅が付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは49nm、銅メッキ層の厚さは13nmであることが確認された。
【0043】
(実施例7)
硫酸パラジウム0.2gが溶解している10%硫酸500mLの触媒液を55℃に加熱し、実施例5で得られた導電性微粒子30gを30分間浸漬した。次いで、10%ジメチルアミンボラン溶液を55℃に加熱し、導電性微粒子を10分間浸漬し、触媒還元を行った。この導電性微粒子を、シアン化金カリウム35g、シアン化カリウム8g、水酸化カリウム270g、ジメチルアミンボラン140gをイオン交換水6000mLに溶解させたメッキ溶液を75℃に加熱し、30分間浸漬することにより、表面が金メッキされた導電性微粒子を作製した。
また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面に金が付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは49nm、金属メッキ層(ニッケルメッキ及び金メッキ)の厚さは30nmであることが確認された。
【0044】
(実施例8)
(下地層の形成)
純水70重量部と、3−アミノプロピルトリエトキシシランオリゴマー(チッソ社製「MS3301」)30重量部を添加し、更に水酸化ナトリウム溶液を加えてpHが12.5になるように調整した後、純水を添加して、28重量%シラン化合物水溶液を調整し、発熱が収まるまで攪拌装置で混合し、下地溶液を作製した。下地溶液におけるシラン化合物の含有量は、28重量%であった。
平均粒子系3μmのスチレン樹脂からなる基材微粒子30gを5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬した。次いで、50℃に加熱された下地溶液中に基材微粒子を10分間浸漬、及び、攪拌した後、ろ過を行い、基材微粒子を取り出すことにより基材微粒子表面に下地層を形成させた。
【0045】
(導電性微粒子の作製)
次いで、硫酸パラジウム10gを10重量%硫酸500mLに溶解させた金属塩溶液を50℃に加熱し、この下地層が形成された基材微粒子30gを30分間浸漬することにより、表面がパラジウムメッキされた導電性微粒子を作製した。
なお、反応により白色であった基材微粒子は、表面が黒色となり、金属塩溶液の色は、オレンジ色から無色透明になった。また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面にパラジウムが付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは68nm、パラジウムメッキ層の厚さは21nmであることが確認された。
【0046】
(実施例9)
硫酸パラジウムの代わりに硫酸ニッケルを用いたこと以外は、実施例8と同様にして導電性微粒子を作製した。
また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面にニッケルが付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは70nm、ニッケルメッキ層の厚さは20nmであることが確認された。
【0047】
(実施例10)
硫酸パラジウムの代わりに硫酸銅を用いたこと以外は、実施例8と同様にして導電性微粒子を作製した。
また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面に銅が付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは71nm、銅メッキ層の厚さは20nmであることが確認された。
【0048】
(実施例11)
硫酸パラジウム0.2gが溶解している10%硫酸500mLの触媒液を55℃に加熱し、実施例9で得られた導電性微粒子30gを30分間浸漬した。次いで、10%ジメチルアミンボラン溶液を55℃に加熱し、導電性微粒子を10分間浸漬し、触媒還元を行った。この導電性微粒子を、シアン化金カリウム35g、シアン化カリウム8g、水酸化カリウム270g、ジメチルアミンボラン140gをイオン交換水6000mLに溶解させたメッキ溶液を75℃に加熱し、30分間浸漬することにより、表面が金メッキされた導電性微粒子を作製した。
また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面に金が付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは70nm、金属メッキ層(ニッケルメッキ及び金メッキ)の厚さは41nmであることが確認された。
【0049】
(比較例1)
N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−603」)を添加せず、また、酢酸を用いてpHを10に調整しなかったこと以外は、実施例1と同様にして下地溶液を作製し、下地層を形成させ、実施例1と同様にして導電性微粒子を作製しようとしたが、金属メッキが形成されなかった。これは、基材微粒子の色の変化、及び、金属塩溶液の色の変化がなかったこと、及び、X線回折により基材微粒子の表面に金属が確認されなかったことによる。
【0050】
(比較例2)
(下地層の形成)
純水31.5重量部と、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−603」)0.5重量部を添加し、更に酢酸を添加してpHが10になるように調整した後、純水を添加して、1.3重量%シラン化合物水溶液を調整し、発熱が収まるまで撹拌装置で混合し、更に、クエン酸一水和物3.0重量部を添加することにより下地溶液を作製した。下地溶液におけるシラン化合物の含有量は、1.2重量%であった。
平均粒子径3μmのスチレン樹脂からなる基材微粒子30gを5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬した。次いで、50℃に加熱された下地溶液中に基材微粒子を10分間浸漬、及び攪拌した後、自然乾燥を10分間行い、基材微粒子の表面を乾燥させることにより、基材微粒子表面に下地層を形成させた。
【0051】
(導電性微粒子の作製)
次いで、硫酸パラジウム5gを10%硫酸500mLに溶解させた金属塩溶液を50℃に加熱し、この下地層が形成された基材微粒子30gを30分間浸漬させた。
なお、白色であった基材微粒子、及び、金属塩溶液の色に変化はなかった。
また、X線回折により、得られた樹脂微粒子の表面にパラジウムが付着していないことが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは5nmであることが確認された。
【0052】
(比較例3)
(下地層の形成)
純水31.5重量部と、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−603」)17重量部を添加し、更に酢酸を添加してpHが10になるように調整した後、純水を添加して、32重量%シラン化合物水溶液を調整し、発熱が収まるまで撹拌装置で混合し、更に、クエン酸一水和物3.0重量部を添加することにより下地溶液を作製した。下地溶液におけるシラン化合物の含有量は、30.3重量%であった。
平均粒子径3μmのスチレン樹脂からなる基材微粒子30gを5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬した。次いで、85℃に加熱された下地溶液中に基材微粒子を360分間浸漬、及び、攪拌した後、自然乾燥を10分間行い、基材微粒子の表面を乾燥させることにより、基材微粒子表面に下地層を形成させた。
【0053】
(導電性微粒子の作製)
次いで、硫酸パラジウム10gを10%硫酸500mLに溶解させた金属塩溶液を50℃に加熱し、この下地層が形成された基材微粒子30gを30分間浸漬することにより、表面がパラジウムメッキされた導電性微粒子を作製した。
なお、反応により白色であった基材微粒子は、表面が黒色となり、金属塩溶液の色は、オレンジ色から無色透明になった。また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面にパラジウムが付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは580nm、パラジウムメッキ層の厚さは21nmであることが確認された。
【0054】
(比較例4)
N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランの代わりにN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランを用いたこと以外は、実施例5と同様にして導電性微粒子を作製した。
また、X線回折により、得られた導電性微粒子の表面にニッケルが付着していることが確認され、TEM撮影により下地層の厚さは15nm、ニッケルメッキ層の厚さは5nmであることが確認された。
【0055】
<評価>
実施例1〜11、及び、比較例3〜4で得られた導電性微粒子について以下の評価を行った。結果を表1、表2に示した。
【0056】
(金属メッキ層の密着性)
実施例1〜11、及び、比較例3〜4で得られた導電性微粒子1gを10mLのイオン交換水に分散させ、超音波照射装置(アズワン製「USD−1R」)を用いて、超音波照射(50℃、2時間、28kHz)を行った。照射後の導電性微粒子を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製「S−3000N」)にて2000倍で観察し、任意の導電性微粒子100個において、金属メッキ層の割れが生じている導電性微粒子の個数を確認し、以下の基準により金属メッキ層の密着性を評価した。
○・・・金属メッキ層の割れが確認された導電性微粒子が10個未満
△・・・金属メッキ層の割れが確認された導電性微粒子が10個以上50個未満
×・・・金属メッキ層の割れが確認された導電性微粒子が50個以上
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、触媒を用いることなく、基材微粒子の表面に容易かつ均一に金属メッキ層を形成させ、基材微粒子と金属メッキ層との密着性を向上させることができる導電性微粒子の製造方法、及び、該導電性微粒子の製造方法により製造される導電性微粒子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材微粒子と、前記基材微粒子の表面に形成された下記化学式(1)で示されるシラン化合物に由来する下地層と、前記下地層の表面に形成された金属メッキ層とからなる導電性微粒子であって、
前記下地層の厚さが10〜500nmである
ことを特徴とする導電性微粒子。
(RO)SiRNHX (1)
(ただし、RはCH又はCを示し、RはCH、C、C、C(フェニレン基)又はR−C(フェニレン基)−R(R、Rは、CH、C又はCを示す。)を示し、XはH、CNH、CNH又はC(フェニル基)を示す。)
【請求項2】
下記化学式(1)で示されるシラン化合物と水とを含有する下地溶液を調製する工程1と、
前記下地溶液に基材微粒子を付着させて前記基材微粒子の表面に厚さが10〜500nmである下記化学式(1)で示されるシラン化合物に由来する下地層を形成させる工程2と、
前記下地層が形成された基材微粒子を金属塩溶液に付着させて前記下地層の表面に金属メッキ層を形成させる工程3とからなる
ことを特徴とする導電性微粒子の製造方法。
(RO)SiRNHX (1)
(ただし、RはCH又はCを示し、RはCH、C、C、C(フェニレン基)又はR−C(フェニレン基)−R(R、Rは、CH、C又はCを示す。)を示し、XはH、CNH、CNH又はC(フェニル基)を示す。)
【請求項3】
更に、金属メッキ層の表面に電解メッキ法又は無電解メッキ法によりメッキ層を形成させる工程4を有することを特徴とする請求項2記載の導電性微粒子の製造方法。

【公開番号】特開2007−254888(P2007−254888A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44518(P2007−44518)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】