説明

導電性樹脂組成物、製造方法及びこれを用いた面状発熱体

【課題】 ポリエステル成型品を製造する際、顔料分散性に優れ、製造効率が格段に改善される顔料マスターバッチを得る。
【解決手段】 乳酸残基を70〜100質量%含有し、乳酸残基の内L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が95/5〜5/95であり、還元粘度が0.1〜1.5dl/gであるポリ乳酸樹脂(A)、導電性微粉末(B)および−N=C=N−の構造を有する化合物(C)を含むことを特徴とする導電性樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪族ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、およびポリ乳酸樹脂に代表される生分解性樹脂に導電性微粉末を溶融混練により導電性を付与する方法に関する。さらには、これらからなる、導電性マスターバッチを用いた製造方法、導電性樹脂組成物並びに成型品、面状発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房やカーシートヒーター、植木や水槽の加温用、各種曇り止めなどの用途に面状発熱体が使用されているが、近年、環境面よりベース樹脂として、生分解性あるいは植物由来のプラスチックスが注目されている。この内、ポリ乳酸を成形材料に使用する場合、機械的強度や熱的性質の観点から通常L−乳酸残基過剰のポリ乳酸樹脂が用いられる。ところが、このL−乳酸残基過剰のポリ乳酸にカーボンブラックなどの導電性微粉末を溶融混練により分散し、導電性樹脂組成物作成しようとすると、顔料分散性に劣り、外観不良(色むら)や導電性のバラツキなどが発生する問題があった。
【0003】
さらに、これらの樹脂をTダイなどを用いて押し出し成形しようとすると、ネックインなどの問題が発生し、歩留まりが低下するなど作業性の悪い物であり、こちらも改良が望まれている。
【0004】
顔料分散性を改善する方法としては、予め顔料マスターバッチを作成しておき、これをベースとなる樹脂に配合、混練する方法がある。例えば、トナーに用いられる顔料マスターバッチとしては、例えば特許文献1にて報告されている。この中では、特に3官能以上の架橋成分から成り、その結果幅広い分子量分布を持つ飽和ポリエステルを主樹脂とし、顔料マスターバッチに用いる樹脂は、主樹脂と同一のモノマー組成を持ち、さらに分子量が主樹脂の低分子領域に相当する飽和ポリエステルを主体としたものが好ましいと述べられている。
【0005】
しかし、主樹脂がポリエステル系樹脂、特に脂肪族ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、およびポリ乳酸樹脂等の生分解性樹脂となる場合、さらには、フィラーが導電性微粉末の場合、上述の技術を用いると、着色体は、色ムラや光沢不良を起こし、さらに導電性のばらつきが発生した。
【0006】
特にポリ乳酸系樹脂を溶融成形する場合、機械的強度や熱的性質の観点から通常L−乳酸残基過剰のポリ乳酸樹脂が用いられる。そこで、上述の技術を用いて、同組成でかつ低分子量とした樹脂の顔料マスターを作製し、L−乳酸残基過剰の樹脂へ少量添加し、溶融成形品を製造したが、顔料分散不良による色むらが発生した。
【0007】
これは、顔料分散を目的として、顔料マスター用の樹脂の分子量を単純に下げたとしても、溶融粘度の絶対値が若干下がるだけで、熱的性質は類似しているためと考えられる。このため、同一温度下における見かけの溶融粘度差が小さい為に顔料分散不良による色むらや導電性のバラツキが発生しているものと予想される。
【0008】
以上のように、ポリエステル系樹脂、特に脂肪族ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、およびポリ乳酸樹脂の溶融成形品への導電性微粒子を分散させ、良好な導電性樹脂組成物を得る方法がないのが実情である。
【0009】
【特許文献1】特開平10−268573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はポリエステル導電性成型品を製造する際、フィラーとしての導電性微粉末を用いた場合、顔料分散性に優れ、安定な導電性が得られ、さらに、押し出し作業性も改善され、製造効率が格段に改善される導電性樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記問題点を解決するため、導電性微粉末の分散方法について鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸として、乳酸残基の内L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が95/5〜5/95のポリ乳酸と−N=C=N−の構造を有する化合物(C)微量配合することにより、溶融成形品に対する導電性微粉末の分散性に優れ、また、Tダイなどによる押し出し成形性が大幅に改善できることを見出し本発明に到達した。さらには、これらの導電性樹脂組成物を顔料マスターバッチとして使用することが好ましい。すなわち本発明は以下のポリ乳酸樹脂系の導電性樹脂組成物およびこれを用いた面状発熱体である。
【0012】
(1)乳酸残基を70〜100質量%含有し、乳酸残基の内L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が95/5〜5/95であり、還元粘度が0.1〜1.5dl/gであるポリ乳酸樹脂(A)、導電性微粉末(B)および−N=C=N−の構造を有する化合物(C)を含むことを特徴とする導電性樹脂組成物。
【0013】
(2)化合物(C)が−N=C=N−の構造を一分子中に少なくとも2つ以上含有するポリカルボジイミドであることを特徴とする(1)に記載の導電性樹脂組成物。
【0014】
(3)化合物(C)の分子末端の少なくとも一つ以上がイソシアネート基であることを特徴とする(1)または(2)に記載の導電性樹脂組成物。
【0015】
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を顔料マスターバッチとして使用し、これを該顔料マスターバッチに使用したポリ乳酸樹脂(A)と同一もしくは異なるポリエステル樹脂に配合、溶融混練することを特徴とする導電性樹脂組成物の製造方法。
【0016】
(5)(4)に記載の顔料マスターバッチとポリエステル樹脂からなる導電性樹脂組成物。
【0017】
(6)ポリエステル樹脂が脂肪族ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂およびポリ乳酸樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である(5)に記載の導電性樹脂組成物。
【0018】
(7)(1)、(2)、(3)、(5)、(6)のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を用いた導電性成形品および面状発熱体。
【発明の効果】
【0019】
本発明は脂肪族ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、およびポリ乳酸樹脂に代表される生分解性樹脂に導電性を付与する際に好適なポリ乳酸系導電性樹脂組成物を提供し、さらにこれを用いて抵抗値の安定した面状発熱体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の導電性樹脂組成物に使用するポリ乳酸樹脂(A)は乳酸残基を70〜100質量%含有し、乳酸残基の内L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が5/95〜95/5である。L−、D−乳酸のモル比が上記を外れると溶融成形品に使用されることが多いL−乳酸残基過剰樹脂に対して顔料分散性が低下することがある。乳酸残基は80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)は10/90〜90/10がより好ましく、15/85〜85/15がさらに好ましい。
【0021】
本発明の導電性樹脂組成物に使用するポリ乳酸樹脂(A)の還元粘度(ηsp/c)は0.1〜1.5dl/gである。還元粘度が0.1dl/g未満だと、顔料分散性が低下することがあり、また、機械的特性が悪化する。1.5dl/gを越えても顔料分散性が低下する場合がある。還元粘度の好ましい範囲は0.15〜1.0dl/g、より好ましくは0.2〜0.8dl/gである。
【0022】
上記ポリ乳酸樹脂の原料として用いる乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸のいずれを用いることができる。また、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチドを用いても良い。還元粘度は該ポリエステルの重合時間、温度、重合時の減圧の程度(減圧重合の場合)を変化させたり、後述する共重合するポリアルコール成分の使用量を変化させたりすることで任意に調整することができる。尚、還元粘度はサンプル濃度0.125g/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度25℃でウベローデ粘度管を用いて測定した値である。
【0023】
本発明の導電性樹脂組成物に使用するポリ乳酸樹脂(A)は、酸価が10〜80当量/106gであることが好ましく、さらに好ましくは、15〜70当量/106gであり、最も好ましくは、20〜60当量/106gである。酸価が10当量/106g以下の場合、顔料の分散性が低下し、色むらが発生するおそれがある。また、酸価が80当量/106gを超える場合、ポリ乳酸樹脂(A)自体の長期保管安定性に欠けることがある。
【0024】
また、ポリ乳酸樹脂(A)は、せん断速度1.0×103〜1.0×105sec-1における200℃〜220℃の溶融粘度が1.0〜1.0×102dPa・sが好ましい。さらに好ましい溶融粘度は、3.0〜5.0×101dPa・sである。
せん断速度1.0×103〜1.0×105sec-1における200℃〜220℃の溶融粘度が1.0dPa・sより低い場合、耐熱性が不足し、さらに流動性が高まりすぎて成形加工時にホッパー等への食込み不良が生じるおそれがある。また、溶融粘度が1.0×103dPa・sより高い場合、樹脂の溶融粘度が高くなり、溶融成型時における主樹脂と顔料マスターバッチとの流動性のバランスが崩れ、分散不良を起こし、色むらや導電性のバラツキが発生する場合がある。
【0025】
本発明の導電性樹脂組成物に使用するポリ乳酸樹脂(A)にはポリグリセリンをその共重合セグメントとして有することが好ましい。ポリグリセリンを共重合することにより、水酸基濃度を増大でき、顔料分散性を向上できる。使用されるポリグリセリンは、重合度3以上が望ましい。グリセリンやグリセリンの2量体では、十分な水酸基濃度で、しかも、高分子量の乳酸系ポリエステルが得られないことがある。また、重合度が20を越えると、樹脂の耐水性が低下してしまうことがある。
【0026】
上記ポリグリセリンセグメントは質量では好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、特に好ましくは、5質量%以下含有する。また、下限は特に定めるものではないが、0.01質量%以上、さらには0.02質量%以上であることが好ましい。
【0027】
本発明の導電性樹脂組成物に用いるポリ乳酸樹脂(A)の水酸基濃度は100当量/106g以上であることが好ましい。100当量/106g未満であると良好な顔料分散性が得られないことがある。また濃度が500当量/106gを越えると樹脂の耐水性が悪化してしまうことがある。より好ましくは130当量/106g以上であり、さらに好ましくは150当量/106g以上、上限はより好ましくは450当量/106g以下であり、さらに好ましくは400当量/106g以下、特に好ましくは350当量/106g以下、最も好ましくは300当量/106g以下である。
【0028】
本発明の導電性樹脂組成物に用いるポリ乳酸樹脂(A)には、その他の特性制御のため、乳酸の他に、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸等のオキシ酸、カプロラクトン、バレロラクトン、ブチロラクトン等のラクトン類、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの脂肪族二塩基酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール類、等を共重合することが出来るが、これらの共重合成分に限定されるものではない。なお、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール等は少量であれば共重合されていても良いが生分解性の面からは含まれないことが好ましい。共重合する他のモノマー量としては乳酸と他のモノマーの合計量を100モルとした場合、30モル%未満であることが好ましい。
【0029】
上記ポリグリセリンを共重合成分として含むポリ乳酸樹脂の製造方法としては、例えばラクチドの開環重合時に重合開始剤としてポリグリセリンを一括に仕込み窒素雰囲気下、溶融させ、開環重合させる方法や、高分子量ポリ乳酸をポリグリセリンで解重合させる方法等があり、目的の還元粘度のポリ乳酸樹脂を安定して得るためには前者の方法が好ましい。また、ポリ乳酸セグメント部分を製造後、ポリグリセリンと反応させても結合させても良い。ポリ乳酸セグメント部分を製造後、ポリグリセリンと結合させる方法としては、ウレタン結合で行う方法、エポキシ基による方法等の方法をとることができる。
【0030】
ラクチドの開環重合触媒としては、オクチル酸スズ、アルミニウムアセチルアセトネート等の開環重合触媒を用いることができ、特に限定はない。
【0031】
また、本発明の導電性樹脂組成物に用いるポリ乳酸樹脂(A)はガラス転移点温度が40℃以上であることが好ましく、60℃以下であることが好ましい。この範囲内にすることにより、顔料分散性が向上する。ガラス転移点温度を40〜60℃の範囲にする方法としては、ポリグリセリンセグメントの調整、他の共重合モノマーの選択、これらの量の適正化により調整することができる。
【0032】
本発明の導電性樹脂組成物に用いるポリ乳酸樹脂(A)にはスルホン酸金属塩基を分子内に導入することで顔料分散性を飛躍的に向上することが出来る。その際スルホン酸金属塩基に由来する硫黄原子の濃度が2500ppm以下の濃度範囲で共重合させることが好ましい。より好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1500ppm以下である。下限は特に限定されないが、スルホン酸金属塩基が共重合されていないと、無機顔料、有機顔料等の分散性が低下することがある。また、硫黄原子の濃度が2500ppmを超えると、樹脂溶融粘度が高くなりすぎて、ポリエステル樹脂、特に脂肪族ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、およびポリ乳酸樹脂への相溶性が悪く、更には顔料分散性が悪くなることがある。
【0033】
本発明の導電性樹脂組成物に用いるポリ乳酸樹脂(A)にスルホン酸金属塩を導入させる方法としては、ポリ乳酸と共重合可能なスルホン酸金属塩基を持った化合物を共重合させる方法、得られたポリ乳酸系樹脂を公知の方法でスルホン化する方法等挙げられる。特に限定するものではないが、ポリ乳酸と共重合可能なスルホン酸金属塩基を持った化合物を共重合させる方法が好ましい。共重合可能なスルホン酸金属塩基を有する好ましい化合物としては、下記式(I)、又は(II)で挙げる化合物が挙げられる。
【0034】
【化1】

(但し、R1、R2は炭素数20以下のアルキル基であり同一でも異なっていても良い、MはLi、NaまたはKを表す。)
【0035】
HO−R3−SO3M 式(II)
(但し、R3は炭素数20以下のアルキル基を表し、MはLi、NaまたはKを表す。)
【0036】
本発明の導電性樹脂組成物は、顔料マスターバッチとして同じ樹脂又は他のポリエステル系樹脂と組み合わせて使用することが好ましい。顔料マスターバッチとして使用することにより、さらに良好な導電性微粉末の分散性が得られる。
【0037】
本発明の導電性樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)と導電性微粉末(B)および−N=C=N−の構造を有する化合物(C)を必須成分とし、必要により他の無機粒子、有機粒子、ワックス類、溶剤を配合することにより得られる。
【0038】
導電性微粉末(B)としては、従来知られたフレーク状銀粉、球状銀粉、3次元高次構造の銀粉、樹枝状銀粉、グラファイト微粉末、カーボンブラック、ニッケル粉、銅粉、金粉、パラジウム粉、アルミ粉、インジウム粉などが挙げられる。この内、好ましい導電フィラーとしては、フレーク状銀粉、グラファイト粉、カーボンブラックが挙げられる。この他、溶融体の粘度を調整する目的などでシリカ粉、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、タルク、硫酸バリウムなどの非導電性フィラーを少量配合しても良い。
【0039】
また、必要によりワックス類を配合してもよい。ワックス類の具体例としては流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系ワックス類、ステアリン酸などの脂肪酸系ワックス類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミドなどの脂肪酸系アミドワックス、脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなどのエステル系ワックス、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどのアルコール系ワックス、オレフィン系ワックス、カスターワックス、カルナバワックスなどの天然物ワックス、炭素数12〜30の脂肪酸から誘導される金属石けん類などが挙げられる。これらワックス類の中でも、カスターワックス、カルナバワックスなどの天然物ワックスが生分解性に優れるため特に好ましい。これらワックス類は滑剤としての目的で配合しても良い。
【0040】
本発明の導電性樹脂組成物を発熱体として使用する場合は、カーボンブラックおよび/またはグラファイト微粉末を全樹脂量100重量%に対して30重量%以下で配合することが好ましく、より好ましくは20重量%以下である。下限は、1重量%以上が好ましい。30重量%を超えると成型品が脆くなったり、抵抗値が低くなりすぎる傾向にある。1重量%未満では、抵抗値が高くなりすぎる傾向にある。ここでいう全樹脂量とは、本発明の導電性樹脂組成物をマスターバッチとして使用した場合は、同じ又は他の樹脂と溶融混練した後の全樹脂量を示す。
【0041】
本発明の導電性樹脂組成物を成形して、床暖房など用の面状発熱体と使用する場合、発熱量が0.1W以上が好ましく、より好ましくは1W以上である。上限は、50W以下が好ましく、より好ましくは10W以下である。100Vまたは200Vの電源を用いる場合においては、回路抵抗として0.1kΩ以上が好ましく、より好ましくは1kΩ以上である。上限は50kΩ以下が好ましく、より好ましくは10kΩ以下である。
【0042】
一般的な長さが50〜100cm、幅が5〜20cmの発熱体を想定した場合、上記の条件を備えるためには、シート抵抗は1Ω/□以上が好ましく、より好ましくは10Ω/□以上である。上限は、10kΩ/□以下が好ましく、より好ましくは1kΩ/□以下である。シート抵抗が1Ω/□未満では電流が流れすぎ、温度が上がりすぎる可能性がある。また、10kΩ/□を超えると充分は発熱が得られなくなる可能性がある。もちろん、使用する電圧や用途が変われば、好ましい範囲は上記の範囲より変化する。
【0043】
本発明の導電性樹脂組成物は、成形前の段階で、本発明のポリ乳酸樹脂(A)に−N=C=N−の構造を有する化合物(C)を配合することが好ましい。−N=C=N−の構造を有する化合物(C)はポリ乳酸樹脂に含まれるカルボキシル基(酸価)と溶融混練工程において反応するため、ポリ乳酸樹脂の加水分解を防ぐとともに、低せん断速度における増粘効果がありTダイなどによる成形加工性が改善される。
【0044】
本発明の導電性樹脂組成物に用いられる−N=C=N−の構造を有する化合物(C)としては、特に限定されないが、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミドなどのモノカルボジイミド、一分子内に−N=C=N−の構造を2つ以上有するポリカルボジイミド、末端にイソシアネート基を有するモノカルボジイミド、末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド等が上げられる。
【0045】
ポリカルボジイミドは、ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素反応により作製される公知のものを使用できる(米国特許第2941956号、特公昭47−3279号公報、J.Org.Chem.,28,2069〜2075(1963)、Chemical Review 1981、Vol.81,No.4,619〜621参照)。具体的には、ジイソシアネートとしては4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどを単独または二種以上を共重合させ使用することが出来る。また、末端のイソシアネートを反応させることにより重合度を制御したり、末端イソシアネートを封鎖したりすることもできる。末端封鎖剤としては、フェニルイソシアネート、トリスイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物、−OH基、−COOH基、−SH基、−NH−R(Rは水素原子またはアルキル基)などを有する化合物を用いることが出来る。
【0046】
また、これら構造からなれば、熱可塑性タイプ、熱硬化性タイプのどちらでも良い。なかでも、熱安定性や耐ブリード性、安全性、作業性などの点からポリカルボジイミドが好ましい。さらに、末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミドは接着性、耐加水分解性の両点でこのましい。イソシアネート基はポリエステルの末端水酸基と優先的に反応し、ウレタン結合生成により金属やポリエステルフィルム等と密着性を高める。また、ポリエステルの鎖延長効果により分子量が向上し、加水分解による力学特性の低下発生時期を遅らせる効果もある。
【0047】
−N=C=N−の構造を有する化合物(C)に含まれる−N=C=N−基当量としては150〜350g/当量が望ましく、さらに好ましくは200〜300g/当量であることが好ましい。−N=C=N−基当量が350g/当量以上であると、接着性や耐加水分解性、製膜性を付与するために添加する化合物(B)の量が多くなり好ましくない。−N=C=N−の構造を有する化合物(B)としては、市販の製品として、ラインケミー(株)製のスタバックゾール、日清紡(株)製のカルボイライト、三井武田ケミカル製のコスモネートLK、コスモネートLL、BASF INOAC ポリウレタン製のルプラネートMM−103等があげられる。
【0048】
−N=C=N−の構造を有する化合物(C)の配合量は本発明のポリ乳酸(A)単独あるいは、これと異なったポリエステル樹脂を配合した場合はその合計を100重量部とした場合0.1〜20重量部が好ましい。化合物(C)が20重量部以上であると、機械的特性が劣り接着性、耐熱性が低下することがある。また、0.1重量部未満であると、接着剤組成物中の−N=C=N−量が少なくなり、耐加水分解性向上効果、Tダイなどにおける製膜性向上効果が見られない。
【0049】
前述したとおり、−N=C=N−の構造を有する化合物(C)はポリエステル樹脂のカルボキシル基と反応することにより効果が発現するため、本発明の結晶性ポリエステル樹脂(A)と化合物(C)を積極的に反応させる工程を取ることが好ましい。
【0050】
積極的に反応させる工程としては、結晶性ポリエステル樹脂(A)と化合物(C)を溶融状態や溶液状態にし50℃以上、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは120℃以上で反応させることが好ましい。溶融状態での反応させる工程としては同単軸もしくは二軸のスクリュー式溶融混錬機、または、ニーダー式加熱機に代表される通常の熱可塑性樹脂の混合機を用いて製造できる。また、溶液状態で反応させる工程としては、ポリエステル樹脂を溶解するときと同時に化合物(C)を加えるか、もしくは溶解した後に化合物(C)を加えることにより反応させることもできる。ポリエステルが可溶な溶剤としてはメタノールやエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶剤、クロロホルム等の塩素系溶剤等があげられる。
【0051】
本発明の導電性樹脂組成物には必要に応じ、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、香料、抗菌剤、分散剤、重合禁止剤などの各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加できる。
【0052】
本発明の導電性樹脂組成物の製造方法としては、顔料分散樹脂と無機顔料、有機顔料等を通常の分散機、例えば、2本ロール、単軸混練機、二軸混練機、ニーダー等を用いて、樹脂特性に応じた温度条件等を設定し混合分散することができる。
【0053】
具体的には、ポリ乳酸樹脂と導電性微粉末、およびその他の化合物を溶融状態下で混合する必要があるため、溶融体の混合効果があるものが必要である。好ましくは、単軸式の押出機、二軸式の押出機等があるが、これらの樹脂が充分混合されていれば良い。
【0054】
その際の温度条件としては、押出に用いるポリ乳酸樹脂と導電性微粉末、およびその他の化合物が溶融流動できる範囲であればいかなる温度でも問題ないが、ポリ乳酸樹脂の性質上、100℃以上350℃以下と考えられ、より好ましくは150℃以上300℃以下が好適である。温度が低すぎるとポリマーを送り出しできないかまたは押出機に過大な負荷がかかり、逆に温度が高すぎるとポリマーが熱劣化を起こす場合がある。顔料マスターを作製における吐出量、その他の条件に関しては、機台の適正条件に適宜調整することで設定可能である。
【0055】
本発明の導電性樹脂組成物を顔料マスターバッチとして用いて、ポリエステル樹脂に対して導電性を付与する方法としては、溶融成型時に生分解性樹脂中に圧入する方法、成型前に生分解性樹脂のペレットに添加してブレンドする方法、一旦生分解性樹脂中に添加溶融混練してペレット化したものを再度溶融成型する方法等が考えられるが、いかなる方法で実施することも可能である。
【0056】
本発明の導電性樹脂組成物の溶融成型加工法としては、Tダイ押し出し成形、射出成型、押出し成形、異形押出し成形以外の方法においても特に制限はなく、インジェクションブロー成形、ダイレクトブロー成形、ブローコンプレッション成形、延伸ブロー成形、カレンダー成形、熱成形(真空・圧空成形を含む)、反応射出成形、発泡成形、圧縮成形、粉末成形(回転・延伸成形を含む)、積層成形、注型、溶融紡糸等を挙げることができる。
【0057】
本発明の導電性樹脂組成物は非常に高濃度の顔料を効率よく分散することが出来る特徴がある。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
<合成例a>
DL−ラクチド500質量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸のエチレングリコールジエステル3.6質量部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1質量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去し本発明の顔料マスターバッチ用ポリ乳酸樹脂(a)を得た。樹脂特性と組成を表1に示す。
【0060】
<合成例b>
L−ラクチド250質量部、DL−ラクチド250質量部、乳酸1質量部、アルミニウムアセチルアセトナート0.5質量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去し本発明に使用するポリ乳酸樹脂(b)を得た。樹脂特性と組成を表1に示す。
【0061】
<合成例c>
L−ラクチド250質量部、DL−ラクチド250質量部、カプロラクトン75質量部、オクチル酸錫0.125質量部を4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱溶融させることで開環重合を進め、その後、残留ラクチドとカプロラクトンを減圧下留去し、本発明に使用するポリ乳酸樹脂(c)を得た。樹脂特性と組成を表1に示す。
【0062】
<合成例d>
L−ラクチド250質量部、DL−ラクチド250質量部、重合度10のポリグリセリン(ダイセル化学PGL10:水酸基濃度850mgKOH/g)13質量部、アルミニウムアセチルアセトナート0.5質量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去し本発明に使用するポリ乳酸樹脂(d)を得た。樹脂特性と組成を表1に示す。
【0063】
<樹脂特性値の測定方法>
以下の方法で樹脂の特性値を測定した。結果は表1に示す。
【0064】
(1)樹脂組成
200MHzの核磁気共鳴スペクトル装置を用い、ポリ乳酸ポリエステルの乳酸残基、他の成分の定量を行った。
【0065】
(2)還元粘度
ポリエステル樹脂0.125mgを測定溶剤クロロホルム25ccに溶かし、25℃の測定温度、ウベローデ粘度管で測定した。
【0066】
(3)溶融粘度
東洋精機製キャピログラフ装置にて、ポリ乳酸樹脂(A)の200〜230℃の溶融粘度を測定した。また、この時のせん断速度と溶融粘度の関係について、データを整理した。
【0067】
(4)ガラス転移温度
サンプル5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定した。ガラス転移温度は、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
【0068】
(5)水酸基濃度
ポリ乳酸樹脂をトルエンに溶解したのち水と共沸させることにより水分を除去し、ついで過剰のフェニルイソシアネートを加え樹脂水酸基を反応させる。次に未反応のフェニルイソシアネートを過剰のジエチルアミンと反応させ、未反応ジエチルアミン量を酸により滴定する。測定値より、反応アミン量を計算し、反応アミン量より、未反応イソシアネート量、反応イソシアネート量を計算する。反応イソシアネート量を樹脂水酸基濃度として算出した。
【0069】
(6)スルホン酸金属塩基中の硫黄原子濃度
金属成分である硫黄原子濃度より求めた。すなわち試料0.1gを炭化し、酸に溶解した後、原子吸光分析により求めた。
【0070】
(7)酸価の測定
ポリ乳酸系樹脂0.8gを20mlのクロロホルム/メタノール(3/1)に溶解し、0.1Nのナトリウムメトキシドメタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、樹脂106g当りの当量(eq/106g)を求めた。
【0071】
<導電性樹脂組成物の評価>
【0072】
(8)面状発熱体の作成:ペレット化した導電性樹脂組成物を用い、単軸押し出し機(L/D=25、フルフライトスクリュー、スクリュー径65mm)を用いて、200℃でTダイを通して、厚み2mmのシート状に成形した導電性樹脂シートを幅10cm、長さ11cm長方形に断裁し、向かい合った短辺のエッジに沿わせて導電性銀ペースト(DP−120H−1、東洋紡績(株)製)を線幅5mm×長さ10cm、乾燥膜厚換算で20μmの厚みになるようにスクリーン印刷し、80℃で15分仮乾燥した。ついで、電極として幅5mmの錫めっき銅箔を印刷した銀回路上に乗せ、テスター産業社性ロールラミネーターを用いて接着した。ラミネート温度は、170℃、圧力0.3mPa、速度0.5m/分で行った。さらに、130℃で30分で銀ペーストを硬化させて面状発熱体を得た。
【0073】
(9)シート抵抗:(8)で作製した面状発熱体を用いて、接着した電極間の抵抗をデジタルマルチメーターで測定した。この電極間の抵抗体は正方形であるので、測定した抵抗値はシート抵抗となり、単位はΩ/□で表される。シート抵抗は、50枚の面状発熱体を作成して測定し、平均値とバラツキ(σ)で評価した。
【0074】
(10)顔料分散性:シート抵抗の平均値(X)統計的バラツキ(σ)により次式により評価した。顔料分散性=(3σ/X)×100(%)
○:15%未満
△:15%以上25%以下
×:25%超
また、表面平滑性の評価を行った。
表面平滑性:成形品の外側表面凹凸状態を超深度表面形状測定顕微鏡(キーエンス製VK−8500)を用いて測定し、以下の評価を行った。
○:凹凸面最大高さが100μm未満
△:凹凸面最大高さが100μm以上200μm未満
×:凹凸面最大高さが200μm以上
【0075】
(11)はくり強度:(9)で作製した面状発熱体の電極を東洋ボールドウイン社製RTM100を用いて、25℃雰囲気下、引っ張り速度50mm/分で180°はくりして測定した。
(判定) ○:接着強度2N/cm以上
△:接着強度2N/cm未満、0.5N/cm以上
×:接着強度0.5N/cm未満
【0076】
(12)発熱試験:(9)で作製した面状発熱体の電極に直流電源で電圧をかけ、100mAの電流が流れるように電圧を調整した。30分後の表面温度を熱電対により測定した。室温25℃で測定を行った。
【0077】
(13)耐湿性:厚み2mmのシート状にTダイで成形した導電性樹脂シートを相対湿度95%RH、40℃の条件で240時間放置した後に、メチルエチルケトンに溶解し、配合した導電性微粉末を日立工機(株)製超遠心分離器、55P−72を用いて、30000rpm、10℃で2時間遠心分離した。遠心分離した樹脂を80℃で2時間乾燥後、(2)に示した方法で還元粘度を測定し、次式に示す還元粘度保持率で判定した。
還元粘度保持率(%)=(耐湿試験後の還元粘度/混練前の還元粘度)×100
(判定) ○:還元粘度保持率80%以上
△:還元粘度保持率60%以上、80%未満
×:還元粘度保持率30%以上、60%未満
××:還元粘度保持率30%未満
【0078】
<実施例1>
本発明のポリ乳酸樹脂(a)92部、導電性カーボンブラックとしてのラーベン1255(コロンビアン・カーボン日本(株)製)8部、−N=C=N−の構造を有する化合物として、スタバックゾールP(ラインケミー(株)製)0.5部を混合し、該混合物を、回転数30rpm、全バレル温度200℃に設定した押出機(L/D=30、スクリュー径=20mm、フルフライト、圧縮比2.0)で溶融混練し、ノズルから紐状に押出し、水中でカッターによって切断してペレット化した導電性樹脂組成物を得た。
【0079】
次に混練した樹脂組成物を、単軸押し出し機(L/D=25、フルフライトスクリュー、スクリュー径65mm)を用いて、200℃でTダイを通じて、厚みが2mmになるように押し出し、導電性樹脂シートを得た。
【0080】
Tダイによる押し出し成形性は、少しネックインが認められたが、実用範囲内であった。得られた導電性樹脂シートの顔料分散性は良好であり、シート抵抗のバラツキも小さく外観上の色むらも認められなかった。表面平滑性も良好であった。シート抵抗は310Ω/cmであり、発熱試験では45℃となり、良好な発熱性が認められた。耐湿試験をしたところ、顔料分散のためのスルホンナトリウム基という親水性基を含有する生分解性樹脂を使用しているのにもかかわらず還元粘度保持率は65%で比較的良好であった。結果を表2に示す。
【0081】
<実施例2>
本発明のポリ乳酸樹脂(b)74部、導電性カーボンブラックとしてのケッチェンブラックECP(ライオン(株)製)6部、グラファイト微粉末としてのグラファイトBF(中越黒鉛(株)製)20部、−N=C=N−の構造を有する化合物として、スタバックゾールP(ラインケミー(株)製)0.5部を混合し、該混合物を、回転数30rpm、全バレル温度200℃に設定した押出機(L/D=30、スクリュー径=20mm、フルフライト、圧縮比2.0)で溶融混練し、ノズルから紐状に押出し、水中でカッターによって切断してペレット化したマスターバッチ用の導電性樹脂組成物を得た。
【0082】
次に、このマスターバッチ用の導電性樹脂組成物を50部とさらに成形加工用主樹脂であるポリL乳酸樹脂50部を混合し、該混合物を、回転数30rpm、全バレル温度200℃に設定した押出機(L/D=30、スクリュー径=20mm、フルフライト、圧縮比2.0)で溶融混練し、ノズルから紐状に押出し、水中でカッターによって切断してペレット化した導電性樹脂組成物を得た。
【0083】
次に得られた導電性樹脂組成物を、実施例1と同様にTダイを通じて、厚みが2mmになるように押し出し、導電性樹脂シートを得た。
【0084】
この場合も、Tダイによる押し出し成形性はネックインや熱だれもなく、非常に良好であった。得られた導電性樹脂シートの顔料分散性は良好であり、シート抵抗のバラツキも小さく、色むらも認められなかった。また、表面平滑性も良好であった。シート抵抗は260Ω/cmであり、発熱試験では38℃となり、良好な発熱性が認められた。耐湿試験をしたところ、生分解性樹脂を使用しているのにもかかわらず還元粘度保持率は80%以上で良好であった。結果を表2に示す。
【0085】
<実施例3〜6>
実施例1または2と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0086】
<比較例1〜3>
比較例1は、実施例1と同様の方法で、ポリL乳酸に直接、導電性微粉末を分散した例であるが、本発明の分散性に優れたポリ乳酸樹脂を含まないため、樹脂の流動性が悪く、その結果として顔料分散性が悪く、シート抵抗のばらつきが非常に大きいものであった。
また、Tダイによる押し出しではネックインが発生した。さらに、耐湿性も不充分であった。
比較例2は、実施例2と同様の方法で評価したが、ホモPETを顔料マスターに用いているため、融点が高く、溶融特性が適正でない為、顔料の分散不良を起こしている。また、Tダイ押し出しにおいては、ネックインが発生した。
比較例3は、ポリL乳酸を用いた例で、成形加工用主樹脂と顔料マスター用樹脂が同一であり、このため溶融特性が同一であるが、高濃度にカーボンブラックを配合した顔料マスターを作製した場合、顔料分散不良を起こし易く、シート抵抗のバラツキが発生した。
また、Tダイ押し出しではネックインが発生し、耐湿性も不良であった。結果を表2に示す。
【0087】
<比較例4〜5>
比較例4〜5は、本発明のポリ乳酸樹脂(A)を用いて、−N=C=N−の構造を有する化合物(C)を配合しなかった例であるが、いずれも、Tダイ押し出し加工性において、ネックインが発生した。特に、比較例5では、ネックインが大きかった。一方、顔料分散性は良好で、初期物性も良好であったが、耐湿試験において、還元粘度保持率が30%以下で不良であった。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は脂肪族ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、およびポリ乳酸樹脂に代表される生分解性樹脂を用いた顔料分散性の良好な導電性樹脂組成物およびこれを用いた面状発熱体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸残基を70〜100質量%含有し、乳酸残基の内L−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が95/5〜5/95であり、還元粘度が0.1〜1.5dl/gであるポリ乳酸樹脂(A)、導電性微粉末(B)および−N=C=N−の構造を有する化合物(C)を含むことを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項2】
化合物(C)が−N=C=N−の構造を一分子中に少なくとも2つ以上含有するポリカルボジイミドであることを特徴とする請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
化合物(C)の分子末端の少なくとも一つ以上がイソシアネート基であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を顔料マスターバッチとして使用し、これを該顔料マスターバッチに使用したポリ乳酸樹脂(A)と同一もしくは異なるポリエステル樹脂に配合、溶融混練することを特徴とする導電性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の顔料マスターバッチとポリエステル樹脂からなる導電性樹脂組成物。
【請求項6】
ポリエステル樹脂が脂肪族ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂およびポリ乳酸樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である請求項5に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、5、6のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を用いた導電性成形品および面状発熱体。

【公開番号】特開2006−83261(P2006−83261A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268260(P2004−268260)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】