説明

導電性樹脂組成物の製造方法

【課題】導電性フィラーをポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物中に効率的に分散する技術を提供し、従来技術と比較して、耐衝撃性、剛性など機械特性と流動特性のバランスに優れ、かつ、経済的な導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及び、その製法を提供すること。
【解決手段】導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法として、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が特定範囲にあるポリアミドB及び末端アミノ基/末端カルボキシル基比率がポリアミドBとは異なる特定範囲にあるポリアミドCと導電性フィラーよりなるマスターバッチを組成物成分として用いて溶融混練する製法を採用することにより、導電性、耐衝撃性、剛性、及び、流動性のバランスが極めて優れる導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械特性、及び、流動性のバランスに優れる導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は加工性・生産性に優れ、射出成形や押出成形などの成形方法により、所望の形状の製品・部品を効率よく生産でき、かつ、得られる成形体に良好に静電塗装出来るため、自動車外部部品などの材料として用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかし、従来の開示技術では、導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得るために多量の導電性フィラーを添加する必要があり、十分な耐衝撃性を付与するためにエラストマーを多量に添加する必要があった(例えば、特許文献3参照)。このため、剛性が低下するなど、材料設計に限界があり、電気・電子用部材、建築用部材、その他産業用部材としての用途に広く展開されるには至っていない。
【特許文献1】特開平2−201811号公報
【特許文献2】特開平4−300956号公報
【特許文献3】特開平8−048869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の問題に鑑み、本発明は、導電性フィラーをポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物中に効率的に分散する技術を提供し、従来技術と比較して、耐衝撃性、剛性など機械特性と流動特性のバランスに優れ、かつ、経済的な導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及び、その製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、前記課題を解決する技術を鋭意検討した結果、導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法として、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が特定範囲にあるポリアミドB、及び、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率がポリアミドBとは異なる特定範囲にあるポリアミドCと導電性フィラーよりなるマスターバッチを組成物成分として用いて溶融混練する製法を採用することにより、導電性、耐衝撃性、剛性、及び、流動性のバランスが極めて優れる導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、
1.ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)10〜90質量部、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が0.20〜4.0であるポリアミドB(B)5〜85質量部、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が0.05〜0.19であるポリアミドC(C)5〜85質量部及び導電性フィラー(D)0.1〜10質量部からなるポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、成分(D)と成分(C)を予め溶融混練して得たマスターバッチ(E)、成分(A)及び成分(B)を溶融混練することを特徴とする導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
2.成分(A)、成分(B)及び相溶化剤(F)とを予め溶融混練して得たPA−PPE組成物(G)に、さらに成分(E)を溶融混練することを特徴とする上記1に記載の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
3.成分(A)及び成分(F)を予め溶融混練して得た官能化PPE(H)、成分(B)および成分(E)を溶融混練することを特徴とする上記1に記載の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
4.組成物中のポリアミド全体の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が、0.15〜1.0であることを特徴とする上記1〜3のいずれか一項に記載の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
5.組成物中のポリアミド全体の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が、0.16〜0.7であることを特徴とする上記1〜3のいずれか一項に記載の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
6.組成物中のポリアミド全体の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が、0.17〜0.3であることを特徴とする上記1〜3のいずれか一項に記載の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、従来技術と比較して、少量の導電性フィラーの添加で静電塗装性を付与でき、機械特性の設計の自由度が大きく、かつ、経済的に優れる導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物であり、また、本発明は、該樹脂組成物を効果的に製造する方法を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について具体的に説明する。
[導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル組成物]
<ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)>
本発明におけるポリフェニレンエーテル系樹脂(A)は、下記(式1)の主鎖構造を持ち、溶融射出成形法や溶融押出成形法などの成形方法により所望の形状の製品・部品を生産でき、電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野の製品・部品用の材料として幅広く用いられているプラスチック材料である。
【0008】
【化1】

【0009】
本発明の(式1)で示されるポリフェニレンエーテル系樹脂(A)における、R1、Rは、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表わす。R2、R3は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニルを表わす。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂(A)は、0.5g/dl,クロロホルム溶液を用い30℃で測定する還元粘度が、0.15〜0.7dl/gの範囲、より好ましくは0.20〜0.70dl/gの範囲にある重合体または共重合体である。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂(A)は具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等である。
【0010】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂(A)の他の具体的例として、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
上記の本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂(A)のうち、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく使用でき、最も好ましいのはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
【0011】
本発明で使用するポリフェニレンエーテル系樹脂(A)の製造方法は特に限定されない。
本発明で使用するポリフェニレンエーテル系樹脂(A)の製造方法の例として、米国特許第3306874号明細書記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法がある。また、米国特許第3306875号明細書、米国第3257357号明細書、米国第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報および特開昭63−152628号公報などに記載された方法も、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)の製造方法として好ましい。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂(A)の末端構造は、下記(式2)の構造であることが好ましい。
【0012】
【化2】

【0013】
〔式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ前記(式1)におけるR1、R2、R3、R4と同様に定義される。〕
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂(A)の末端構造は、下記(式3)の構造であることが更に好ましい。
【0014】
【化3】

【0015】
〔式中、R、Rは水素またはアルキル基を表わす。〕
(式3)の末端構造のポリフェニレンエーテル系樹脂(A)を得る手法としては、銅又はマンガンを含有する触媒を用い、第1級または第2級のアミンの存在下で、2,6−ジメチルフェノールを酸化カップリング反応する方法が一例としてあげられる。
上記第1級または第2級のアミンとしては、ジアルキルアミンが好ましく、ジ−n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミンが更に好ましく用いられる。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂(A)は目的に応じ、予め、所望の添加剤を添加しても良い。
【0016】
<ポリアミドB(B)及びポリアミドC(C)>
本発明のポリアミドB(B)として使用できるポリアミド樹脂のアミノ基末端とカルボキシル基末端のモル比率、即ち末端アミノ基/末端カルボキシル基比率は、0.20〜4.0であり、より好ましくは0.2〜3.0、更に好ましくは0.22〜2.0、特に好ましくは0.22〜1.1である。
本発明のポリアミドB(B)の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が0.20〜4.0の範囲にあると耐衝撃性、及び、成形性、流動性に優れる導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物が得られる。
【0017】
本発明のポリアミドB(B)の添加量は導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物総計100質量部に対して、5〜85質量部であり、好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは、15〜50質量部である。
本発明のポリアミドC(C)のアミノ基末端とカルボキシル基末端のモル比率、即ち末端アミノ基/末端カルボキシル基比率は、0.05〜0.19であり、更に好ましくは0.10〜0.18、特に好ましくは0.12〜0.17である。
本発明のポリアミドCの末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が0.05〜0.19の範囲にあると耐衝撃性と導電性に優れる導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得ることができる。
【0018】
本発明のポリアミドC(C)の添加量は導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物総計100質量部に対して5〜85質量部であり、好ましくは8〜50質量部、更に好ましくは、10〜30質量部である。
ポリアミドの末端基の調整方法は、当業者には明らかであるような公知の方法を用いることができる。例えばポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるようにジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物などから選ばれる1種以上を添加する方法が挙げられる。
本発明では、ポリアミドB及びポリアミドCのアミノ基末端、及び、カルボキシル基末端の定量方法として、下記文献に記載の方法を用いる。
J.E.Waltz、Guy B.Taylor,”Detemination of the molecular Weight of Nylon”, Ind. Eng. Chem. Anal. Ed., 19, 448 (1947年).
【0019】
本発明のポリアミドB(B)及びポリアミドC(C)は、次に上げる本発明で使用することのできるポリアミド樹脂から、それぞれ任意に選択されたものである。
本発明の樹脂組成物において組成物中のポリアミド全体の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が、0.15〜1.0の範囲が好ましく、0.16〜0.7の範囲が更に好ましく、0.17〜0.3の範囲が最も好ましい。0.15〜1.0の範囲である時、耐衝撃性、流動性に優れる樹脂組成物が得られる。
本発明の樹脂組成物において使用するポリアミド全体の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率は、次の式で与えられる。
Σ((ポリアミドiの添加量)×(ポリアミドiのアミノ基末端))/Σ((ポリアミドiの添加量)×(ポリアミドiのカルボキシル基末端))
本発明で使用することのできるポリアミド樹脂の種類としては、ポリマー主鎖中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、いずれも使用することができる。
一般にポリアミド樹脂は、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合などによって得られるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
上記ジアミンとしては大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジアミンが挙げられ、具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルナノメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸としては、大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジカルボン酸が挙げられ、具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。
【0021】
ラクタム類としては、具体的にはε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタムなどが挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、具体的にはε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノナノン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸などが挙げられる。
本発明においては、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸は、単独あるいは二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類はいずれも使用することができる。
また、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω-アミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合し、押出機等で高分子量化したものも好適に使用することができる。
本発明に用いるポリアミド樹脂の重合方法は特に限定されず、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、固相重合、および、これらを組み合わせた方法のいずれでもよい。これらの中では、溶融重合がより好ましく用いられる。
【0022】
本発明で好ましく用いることのできるポリアミド樹脂は、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン),6、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド6/6,T、ポリアミド6/6,I、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミド6/6,T/6,I、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/12/6,T、ポリアミド6,6/12/6,T、ポリアミド6/12/6,I、ポリアミド6,6/12/6,Iなどのポリアミドが挙げられ、複数のポリアミドを押出機等でアミド交換反応を行い共重合化したポリアミドも使用することができる。
【0023】
本発明で更に好ましいポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6/6,6及び、それらの混合物であり、最も好ましくはポリアミド6、ポリアミド6,6、又はそれらの混合物である。
本発明で使用できるポリアミド樹脂の好ましい粘度範囲は、ISO307に従い96%硫酸中で測定した粘度数が50〜300ml/gの範囲である。より好ましくは80〜180ml/gの範囲である。
本発明においては、ポリアミド樹脂が、上記した範囲外の粘度数を持つポリアミド樹脂の混合物であっても、その混合物の粘度数が上記した範囲内に入っていれば問題なく使用可能である。
【0024】
例えば、粘度数150ml/gのポリアミド樹脂と粘度数80ml/gのポリアミド樹脂の混合物、粘度数120ml/gのポリアミド樹脂と粘度数115ml/gのポリアミド樹脂の混合物等が挙げられる。
これらの場合においても、その混合物の粘度数が上記範囲内である混合比率であれば構わない。これら混合物の粘度数が上記範囲内に有るか否かは、混合する重量比で96%硫酸に溶解して、ISO307に従い粘度数を測定することで容易に確認することができる。
ポリアミド樹脂の中で特に好ましい混合形態は、各々のポリアミド樹脂が粘度数90〜150ml/gの範囲内にあり、かつ粘度数の異なるポリアミド樹脂の混合物である。
本発明においては、ポリアミドの耐熱安定性を向上させる目的で公知となっている特開平1−163262号公報に記載されてあるような金属系安定剤も、問題なく使用することができる。
【0025】
これら金属系安定剤の中で特に好ましく使用することのできるものとしては、CuI、CuCl、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等が挙げられる。また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるアルキル金属のハロゲン化塩も好適に使用することができる。これらは、もちろん併用添加しても構わない。
金属系安定剤および、又はアルキル金属のハロゲン化塩の好ましい配合量は、合計量としてポリアミドの100質量部に対して、0.001〜1質量部である。
また、本発明においては、上述した金属系安定剤の他に、公知の有機安定剤も問題なく使用することができる。有機安定剤の例としては、イルガノックス1098等に代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤、イルガフォス168等に代表されるリン系加工熱安定剤、HP−136に代表されるラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0026】
これら有機安定剤の中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、もしくはその併用がより好ましい。
これら有機安定剤の好ましい配合量は、ポリアミドB(B)及びポリアミドC(C)の合計100質量部に対して、0.001〜1質量部である。
さらに、上記の他にポリアミドに添加することが可能な公知の添加剤等もポリアミドB(B)及びポリアミドC(C)の合計100質量部に対して10質量部未満の量で添加してもかまわない。
【0027】
<導電性フィラー(D)>
本発明の導電性フィラー(D)とは、プラスチックに添加することにより電導性を付与できる無機フィラーである。導電性フィラーの例として、カーボンブラック、カーボン・ナノチューブ、炭素繊維、炭素ウイスカー、金属繊維、電導性カリウムチタン・ウイスカー、金属粒子、金属でコーティングされた繊維、粒子、フレークなどを挙げることができる。
本発明で好ましい導電性フィラーは、カーボンブラック、カーボン・ナノチューブである。本発明で特に好ましい導電性フィラーは、カーボンブラックである。
本発明において使用可能なカーボンブラックとしては、例えばケッチェンブラックインターナショナル社から入手可能なケッチェンブラック(EC,EC−600JD)が好ましい。
本発明の導電性フィラー(D)は、導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル組成物総計100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは、0.5〜7質量部、更に好ましくは、1〜5質量部添加する。
【0028】
<マスターバッチ(E)>
本発明のマスターバッチ(E)は、導電性フィラー(D)とポリアミドC(C)を予め溶融混練して得ることができる。
溶融混練方法は、特に制限はないが、導電性フィラー(D)とポリアミドC(C)をドライブレンドした後に二軸押出機を用いて溶融混練することができる。
また、二軸押出機の主供給口よりポリアミドC(C)を供給し、ポリアミドCが溶融した後に、導電性フィラー(D)をサイドフィーダから供給する方法も好ましく採用できる。
更に、バンバリーミキサー等のバッチ式溶融混練機を用いることにより、高濃度の導電性フィラー(D)とポリアミドC(C)を溶融混練することが可能であり、高濃度マスターバッチ(E)を得ることができる。
【0029】
マスターバッチ(E)中の導電性フィラー(D)の濃度の範囲は、5〜30質量%の範囲が好ましい。マスターバッチ(E)中の導電性フィラー(D)の濃度が、5〜30質量%の範囲にある時、導電性、剛性、流動性のバランスに優れ、更に7〜25質量%の範囲が好ましく、10〜20質量%の範囲が特に好ましい。
本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製法は、導電性フィラー(D)とポリアミドC(C)を予め溶融混練して得た、マスターバッチ(E)とポリフェニレンエーテル系樹脂(A)、及び、ポリアミドB(B)とを溶融混練することを特徴とする導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製法である。
本発明の製法で得た導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、導電性フィラー(D)が、主にポリアミドC(C)よりなる連続相に存在するため、効果的に静電塗装性を付与できる。
【0030】
<相溶化剤(F)>
本発明で用いることのできる相溶化剤(F)として、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または三重結合、及び少なくとも1個の酸化アシル基、イミノ基、イミド基、またはグリシジル基を有するものを使用できる。
本発明の相溶化剤(F)として用いられる化合物は、例えば、マレイミド、N−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド、N−アルキルマレインアミド酸、N−アリールマレインアミド酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フェニルマレイミド、イタコン酸、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどがある。
そして、本発明の相溶化剤(F)は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フェニルマレイミド、又は、イタコン酸であることが好ましい。
本発明で用いることのできる相溶化剤(F)として、ポリカルボン酸、及び/または、ポリカルボン酸の変性物より選ばれる化合物を使用できる。
本発明の相溶化剤(F)は、クエン酸、リンゴ酸のようなポリカルボン酸、または、クエン酸、リンゴ酸の誘導体であることが好ましい。
【0031】
<PA−PPE組成物(G)>
本発明のPA−PPE組成物(G)は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と、ポリアミドB(B)が相溶化した樹脂組成物である。
本発明のPA−PPE組成物(G)は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と、ポリアミドB(B)、及び相溶化剤(F)とを予め溶融混練して得ることができる。
PA−PPE組成物(G)は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と、相溶化剤(F)とを予め溶融混練した後に、これにポリアミドB(B)を添加して更に溶融混練して得ることが好ましい。
【0032】
<官能化PPE(H)>
本発明の官能化PPE(H)は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)及び相溶化剤(F)とを予め溶融混練して得ることができる。
発明の官能化PPE(H)は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)100質量部と相溶化剤(F)0.1〜10質量部とを加熱反応することにより得られる。
相溶化剤(F)がこの範囲にある場合、官能基の量が十分で、かつ、変性されたポリフェニレンエーテル樹脂中に未反応の相溶化剤(F)の残留が少ないため、成形する際に問題となるシルバーストリークスを抑制できる。
本発明で好ましい導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製法は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と、ポリアミドB(B)、及び相溶化剤(F)とを予め溶融混練して得たPA−PPE組成物(G)にマスターバッチ(E)を、更に溶融混練する導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製法である。
本発明で極めて好ましい導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製法は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)、及び、相溶化剤(F)とを予め溶融混練して得た官能化PPE(H)と、ポリアミドB(B)とマスターバッチ(E)を混合して、更に溶融混練する導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製法である。
【0033】
<エラストマー>
本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、耐衝撃性を付与するためにエラストマーを添加することが好ましい。
本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の総量100質量部に対して1〜50質量部、更に好ましくは3〜30質量部、極めて好ましくは5〜20質量部エラストマーの添加量できる。
【0034】
本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に好ましく使用できるエラストマーは、スチレン系化合物含有ブロック共重合体よりなるエラストマーであり、少なくとも1個のスチレン系化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体、もしくは、上記ブロック共重合体中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック中の不飽和結合に対して水素添加した水素添加スチレン系化合物含有ブロック共重合体である。
上記スチレン系化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上がスチレン系化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0035】
この場合、例えばスチレン系化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%がスチレン系化合物より形成されていれば、スチレン系化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
スチレン系化合物の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
【0036】
スチレン系化合物含有ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は1,2−ビニル含量もしくは1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量の合計量が5〜80%好ましく、さらには10〜50%が好ましく、15〜40%が最も好ましい。
本発明におけるスチレン系化合物含有ブロック共重合体は、スチレン系化合物を主体とする重合体ブロック(a)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(b)がa−b型、a−b−a型、a−b−a−b型のから選ばれる結合形式を有するブロック共重合体である事が好ましい。これらの中でもa−b−a型がより好ましい。これらはもちろん混合物であっても構わない。
【0037】
また、本発明で使用するスチレン系化合物含有ブロック共重合体は、水素添加されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体であることが好ましい。
水素添加されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体とは、上述のスチレン系化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を少なくとも50%以上水素添加したものである。より好ましくは80%以上、最も好ましくは98%以上水素添加したものである。
また、本発明で用いることができる水素添加されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体の数平均分子量は、200,000以上300,000以下である事が望ましい。この分子量範囲以外の水素添加ブロック共重合体の使用も可能であるが、少量の添加で高い衝撃性を発現するためには、この範囲の水素添加ブロック共重合体を、たとえ少量でも用いることが望ましい。
【0038】
本発明でいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置[GPC SYSTEM21:昭和電工(株)製]を用いて、紫外分光検出器[UV−41:昭和電工(株)製]で測定し、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量の事を指す。[溶媒:クロロホルム、温度:40℃、カラム:サンプル側(K−G,K−800RL,K−800R)、リファレンス側(K−805L×2本)、流量10ml/分、測定波長:254nm,圧力15〜17kg/cm]。この時、重合時の触媒失活による低分子量成分が検出されることがあるが、その場合は分子量計算に低分子量成分は含めない。通常、計算された正しい分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.0〜1.2の範囲内である。
【0039】
スチレン系化合物含有ブロック共重合体は、一般的にはリビングアニオン重合法により生産され、極めて分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.0〜1.2程度)共重合体が得られる。
また、スチレン系化合物含有ブロック共重合体は、本発明の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、スチレン系化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量もしくは1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量の異なるもの、スチレン系化合物成分含有量の異なるもの、水素添加率の異なるもの等混合して用いても構わない。もちろん、本発明に規定しているスチレン系化合物含有ブロック共重合体以外のブロック共重合体を添加することに何ら問題はない。
また、本発明で使用するスチレン系化合物含有ブロック共重合体は、全部又は一部が変性されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体であっても構わない。
ここでいう変性されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体とは、相溶化剤(F)で変性されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体を指す。
【0040】
変性されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体の製法としては、
(1)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でスチレン系化合物含有ブロック共重合体の軟化点温度以上でかつ、250℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練して反応させる方法、
(2)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でスチレン系化合物含有ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、スチレン系化合物含有ブロック共重合体と相溶化剤(F)を溶液中で反応させる方法、
(3)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でスチレン系化合物含有ブロック共重合体の軟化点以下の温度でスチレン系化合物含有ブロック共重合体と相溶化剤(F)を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられる。
これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、更には(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
また、本発明のスチレン系化合物含有ブロック共重合体には、パラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合したものを用いても構わない。パラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合する事により、樹脂組成物の加工性を向上することができる。
【0041】
<その他添加剤>
本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に使用する添加剤は、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、ポリマー添加剤、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシ、パーオキシカーボネート、ヒドロパーオキサイド、パーオキシケタール、無機充填材(タルク、カオリン、ゾノトライト、ワラストナイト、酸化チタン、チタン酸カリウム、炭素繊維、ガラス繊維など、)、無機充填材と樹脂との親和性を高める為の公知のシランカップリング剤、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、三酸化アンチモン等の難燃助剤、カーボンブラック等の着色剤、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等である。
【0042】
これらの成分の具体的な添加量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテル系樹脂の合計を100質量部とした時、100質量部を越えない範囲(付加的成分の合計として)である。
更に、ポリフェニレンエーテル系樹脂の安定化の為に公知となっている各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤であり、これらの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して5質量部未満である。
本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を各種成形法に適用するための好適な形態は、本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を溶融混練した後に、ペレタイズして得られるポリフェニレンエーテル系樹脂ペレットである。
【0043】
本発明の製造方法から得られる導電性樹脂組成物は、実施例で定義した体積抵抗率が、1.0×10以下である。
本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を溶融混練するための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも二軸押出機が好ましく使用できる。
本発明で好ましく使用できる上記加工機械は二軸押出機である。
本発明で特に好ましく使用できる加工機械は、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えたスクリュー直径40mm以上でL/Dが30以上の二軸押出機である。
この際に加工機械のシリンダー等の加工設定温度は特に限定されるものではなく、通常240〜360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
<原料>
実施例で用いた原料は以下の通りである。
<ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)>
本発明の実施例では、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)として、還元粘度:0.42dl/g(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃にてウベローデ型粘度計を用いて測定)のポリ(2,6−ジメチル−フェニレンオキシド)(以下、PPE−A)を用いた。
【0045】
<ポリアミドB(B)>
本発明の実施例、及び、比較例では、ポリアミドB(B)として、粘度数:135ml/g、アミノ基末端:61.9(μmol/g)、カルボキシル基末端比率:63.1(μmol/g)、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率:0.98であるポリアミド−6,6(以下、PA−B1)、粘度数:129ml/g、アミノ基末端:30.9(μmol/g)、カルボキシル基末端比率:93.1(μmol/g)、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率:0.30であるポリアミド−6,6(以下、PA−B2)、粘度数:132ml/g、アミノ基末端:50.0(μmol/g)、カルボキシル基末端比率:80.0(μmol/g)、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率:0.625であるポリアミド−6,6(以下、PA−B3)、粘度数:138ml/g、アミノ基末端:94.3(μmol/g)、カルボキシル基末端比率:37.7(μmol/g)、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率:2.50であるポリアミド−6,6(以下、PA−B4)、粘度数:130ml/g、アミノ基末端:106.6(μmol/g)、カルボキシル基末端比率:25.4(μmol/g)、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率:4.20であるポリアミド−6,6(以下、PA−B5)を用いた。
【0046】
<ポリアミドC(C)>
本発明の実施例、及び、比較例では、ポリアミドC(C)として、粘度数:130ml/g、アミノ基末端:18.3(μmol/g)、カルボキシル基末端比率:114.7(μmol/g)、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率:0.16であるポリアミド−6,6(以下、PA−C1)、及び、粘度数:135ml/g、アミノ基末端:13.5(μmol/g)、カルボキシル基末端比率:112.5(μmol/g)、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率:0.12であるポリアミド−6,6(以下、PA−C2)を用いた。
【0047】
<導電性フィラー(D)>
本発明の実施例では、導電性フィラー(D)として、ケッチェンブラックインターナショナル社製のカーボンブラックであるケッチェンブラック(EC,EC−600JD)を用いた。
<相溶化剤(F)>
本発明の実施例では、相溶化剤(F)として、無水マレイン酸を用いた。
<エラストマー>
本発明の実施例では、エラストマーとして、クレイトンポリマージャパン社製のスチレン系化合物含有ブロック共重合体の一種であるポリスチレン−ポリエチレンブチレン−ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)であるKratonG1651(商品名)(数平均分子量:約250,000)(以下、SEBS)を用いた。
【0048】
<二軸押出機>
本発明の実施例では、L/Dが44のZSK40MC[コペリオン社製(ドイツ国)]の同方向回転二軸押出機を用いた。シリンダー温度を全て300℃に設定し、ダイの温度を280℃に設定した。また、スクリューの全長を1.0とした時に、上流側より見て約0.35の位置及び約0.80の位置の2箇所にベントポートを設置し、上流側のベントポートより減圧吸引し、下流側のベントポートにサイドフィーダを設置した。
<マスターバッチ(E)の製造>
本発明の実施例では、二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PA−C1、又は、PA−C2を時間あたり90質量部を定量供給し、同時に、サイドフィーダより、ケッチェンブラック(EC,EC−600JD)を時間あたり10質量部定量供給し、溶融混練して得られるMB−C1、及びMB−C2を用いた。
同様に、本発明の比較例では、二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PA−B2、または、PA−B3を時間あたり90質量部を定量供給し、同時に、サイドフィーダより、ケッチェンブラックを時間あたり10質量部定量供給し、溶融混練して得られるMB−B2、及び、MB−B3を使用した。
【0049】
<PA−PPE組成物(G)の製造>
本発明の実施例では、二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PPE−A、及び、無水マレイン酸を各々、時間あたり35質量部、及び、0.5質量部定量供給し、同時に、PA−B1、又は、PA−B2をサイドフィーダより時間あたり35質量部定量供給し、溶融混練して得られるPA/PPE組成物A1、及び、PA/PPE組成物A2を使用した。
<官能化PPE(H)の製造>
本発明の実施例では、二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PPE−A、及び、無水マレイン酸を各々、時間あたり35質量部、及び、0.5質量部定量供給し、溶融混練して得られる官能化PPE―H1を使用した。
【0050】
<多目的試験片の作成>
実施例で得た本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物について、東芝機械(株)製射出成形機IS80EPNを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、通常の射出スピードの条件下でISO294の記載に従い、ISO3167に定める多目的試験片を作成した。
<SSPの測定>
実施例で得た本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物について、上記と同様の温度条件に設定した上記射出成形機、及び,金型を用いて、徐々に射出圧力を上げながら、本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物について射出成形を行い、該組成物が金型に概ね充填する圧力(SSP)を測定し、流動性を評価した。
<Izod衝撃強度の測定>
上記多目的試験片を用いて、ISO180/1Aの記載に従って行った。
<曲げ弾性率の測定>
上記多目的試験片を用いて、ISO178の記載に従って行った。
【0051】
<体積抵抗率の測定>
上記多目的試験片の狭い平行部分の体積抵抗率を測定した。
具体的には、予めカッターナイフで試験片の両面にキズ(深さ;約0.3mm)をつけた試験片を−75〜−70℃のドライアイス/メタノールの中に1時間浸漬後、手で折り取り、長さ約70mmで両端に脆性破断面をもつ破断試験片を得た。
この両端の破断面に石油エーテルに分散した銀ペーストを塗布し、室温で30分放置後、80℃×20分乾燥し、さらに23℃、50%RHに設定した恒温室で60分放置した測定用試料を体積抵抗率の測定に供した。
測定用試料の銀ペーストを塗布した両端の間の抵抗値ρをAdvantest社製、R8340A型Digital ultra-highresistance/micro current meter を用い、印加電圧100V、印加時間30秒で測定した。
測定は恒温室内で実施した。体積抵抗率は以下の式に従って求めた。
(体積抵抗率)=(抵抗値ρ)×(測定用試料の断面積)÷(測定用試料の長さ)
【0052】
[実施例1]
二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PPE−A、PA−B1、SEBS、及び、無水マレイン酸を各々、時間あたり35質量部、35質量部、12質量部、及び、0.5質量部定量供給し、同時に、MB−C1をサイドフィーダより時間あたり20質量部定量供給し、溶融混練して導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を作成した。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量は約60kg/hであった。
溶融混練してダイスより吐出する紐状のストランドをストランドカッターで切断し、導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物のペレットを得た。
このペレットを用いて、多目的試験片を作成し、SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率を測定した。
【0053】
[実施例2]
二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PPE−A、PA−B1、SEBS、及び、無水マレイン酸を各々、時間あたり35質量部、35質量部、10質量部、及び、0.5質量部定量供給し、同時に、MB−C1をサイドフィーダより時間あたり20質量部定量供給し、溶融混練して導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を作成した。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量は約58kg/hであった。
実施例1と同様に、多目的試験片を作成し、SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率を測定した。
【0054】
[実施例3]
二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PA/PPE組成物A1、及び、SEBS各々、時間あたり70質量部、及び、8質量部定量供給し、同時に、MB−C1をサイドフィーダより時間あたり20質量部定量供給し、溶融混練して導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を作成した。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量は約60kg/hであった。
実施例1と同様に、多目的試験片を作成し、SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率を測定した。
【0055】
[実施例4]
二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、官能化PPE―H、PA−B1、及び、SEBS各々、時間あたり35.5質量部、39質量部、及び、8質量部定量供給し、同時に、MB−C1をサイドフィーダより時間あたり16質量部定量供給し、溶融混練して導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を作成した。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量は約62kg/hであった。
実施例1と同様に、多目的試験片を作成し、SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率を測定した。
【0056】
[実施例5]
二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PA/PPE組成物A2、PA−B2、及び、SEBS各々、時間あたり70質量部、4質量部、及び、12質量部定量供給し、同時に、MB−C1をサイドフィーダより時間あたり20質量部定量供給し、溶融混練して導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を作成した。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量は約60kg/hであった。
実施例1と同様に、多目的試験片を作成し、SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率を測定した。
【0057】
[実施例6]
二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PPE−A、PA−B4、SEBS、及び、無水マレイン酸を各々、時間あたり35質量部、35質量部、10質量部、及び、0.5質量部定量供給し、同時に、MB−C2をサイドフィーダより時間あたり20質量部定量供給し、溶融混練して導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を作成した。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量は約58kg/hであった。
実施例1と同様に、多目的試験片を作成し、SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率を測定した。
【0058】
[比較例1]
二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PPE−A、PA−C1、SEBS、及び、無水マレイン酸を各々、時間あたり35質量部、35質量部、10質量部、及び、0.5質量部定量供給し、同時に、MB−C1をサイドフィーダより時間あたり20質量部定量供給し、溶融混練して導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を作成した。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量は約58kg/hであった。
実施例1と同様に、多目的試験片を作成し、SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率を測定した。
【0059】
[比較例2]
二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PPE−A、PA−B1、SEBS、及び、無水マレイン酸を各々、時間あたり35質量部、35質量部、10質量部、及び、0.5質量部定量供給し、同時に、MB−B2をサイドフィーダより時間あたり20質量部定量供給し、溶融混練して導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を作成した。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量は約62kg/hであった。
実施例1と同様に、多目的試験片を作成し、SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率を測定した。
【0060】
[比較例3]
二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PPE−A、PA−B5、SEBS、及び、無水マレイン酸を各々、時間あたり35質量部、35質量部、10質量部、及び、0.5質量部定量供給し、同時に、MB−C1をサイドフィーダより時間あたり20質量部定量供給し、溶融混練して導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を作成した。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量は約56kg/hであった。
実施例1と同様に、多目的試験片を作成し、SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率を測定した。
【0061】
[比較例4]
二軸押出機を用いて、押出機主供給口より、PPE−A、PA−B3、SEBS、及び、無水マレイン酸を各々、時間あたり35質量部、35質量部、10質量部、及び、0.5質量部定量供給し、同時に、MB−B3をサイドフィーダより時間あたり20質量部定量供給し、溶融混練して導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を作成した。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量は約50kg/hであった。
実施例1と同様に、多目的試験片を作成し、SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率を測定した。
<結果>
SSP、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、体積抵抗率の結果を、実施例1〜6、比較例1〜4と対比して、表1に示す。
【0062】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、導電性フィラーをポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物中に効率的に分散したものであり、従来技術と比較して、耐衝撃性、剛性など機械特性と流動特性のバランスに優れ、かつ、経済的な導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物であり、電気・電子用部材、自動車用部材、建築用部材、その他産業用部材としての用途に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)10〜90質量部、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が0.20〜4.0であるポリアミドB(B)5〜85質量部、末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が0.05〜0.19であるポリアミドC(C)5〜85質量部及び導電性フィラー(D)0.1〜10質量部からなるポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、成分(D)と成分(C)を予め溶融混練して得たマスターバッチ(E)、成分(A)、成分(B)及び相溶化剤(F)を溶融混練することを特徴とする導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
成分(A)、成分(B)及び相溶化剤(F)とを予め溶融混練して得たPA−PPE組成物(G)に、さらに成分(E)を溶融混練することを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
成分(A)及び成分(F)を予め溶融混練して得た官能化PPE(H)、成分(B)および成分(E)を溶融混練することを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
組成物中のポリアミド全体の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が、0.15〜1.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
組成物中のポリアミド全体の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が、0.16〜0.7であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
組成物中のポリアミド全体の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率が、0.17〜0.3であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2007−238668(P2007−238668A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59430(P2006−59430)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】