説明

導電性樹脂組成物及びその成形品

【課題】 射出成形工程におけるショット間の導電性バラツキが少ない導電性熱可塑性樹脂成形品を得ること。
【解決手段】 金属コート有機繊維に熱可塑性樹脂(a)を含浸して得られる導電性樹脂組成物であって、有機繊維がメタ系フタルアラミド繊維であり、金属コート有機繊維における金属が銅、銀、金から選ばれた金属であり、金属コート有機繊維における金属コート量が10〜30重量%である導電性樹脂組成物。上記導電性樹脂組成物と、熱可塑性樹脂(b)を用いて得られる成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コート有機繊維を含む導電性樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性を付与したプラスチック成形品を製造する場合、熱可塑性樹脂と導電性繊維とを含有したペレット状等の樹脂組成物が用いられている。この導電性繊維は、長繊維を一方向に揃えた状態で熱可塑性樹脂が含浸されたものであり、特に射出成形品の材料として評価されている。
【0003】
導電性繊維としてはステンレス繊維、炭素繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、はんだをコートした銅繊維等が用いられている。これらの中でステンレス繊維、炭素繊維及び金属コート炭素繊維が一般的である。
【0004】
近年、導電性を付与する新たな素材として、金属を被覆した有機繊維が開発されている。有機繊維は上記繊維と比べて溶融混練の際に折損しにくく好ましく用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1にはパラ系アラミド繊維に金、銀、銅、錫、アルミニウムまたはこれらの合金でメッキをし、2〜30mmの長さにカットしたメッキ繊維を編物、織物、あるいは抄紙して不織布を作成し、これに樹脂を含浸し熱プレスで成形板にする技術が開示されている。しかし、この成形方法では板状や曲面状等の単純な形状しか作成できず、射出成形で得られるような複雑な形状のものは作成できなかった。よってOA機器、光学系電子機器等のエレクトロニクス関連の成形筐体或いは精密な箱状の部品等への成形品展開は困難であった。
【0006】
また、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名ケブラー)、コポリパラフェニレン−3,4´−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名テクノーラ)およびポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(東洋紡績株式会社製、商品名ザイロン)等の高強度で耐熱性が優れている有機繊維は共に高価である上、金属コート前処理段階における繊維表面の処理が困難で金属コート膜と繊維表面間の密着強度が弱く用いることができなかった。
【0007】
特許文献2は、金属被覆された短繊維を樹脂に混合して導電性を有するようにした樹脂組成物において、基体繊維に被覆した金属表面と基体繊維の接触面との密着強度をあげるために、基体繊維の結晶化温度以上かつ融解温度未満の温度で加熱処理することを特徴としている技術である。
しかし、金属被覆短繊維を基体繊維の結晶化温度以上かつ融解温度未満の温度で加熱処理することでは被覆金属と基体繊維表面との密着強度が弱く、金属被覆を有する短繊維を樹脂に混合して射出成形する場合、成形機のバレルとスクリュウ回転で受けるせん断力に耐えることが困難となり、金属メッキ膜が基体繊維から剥離して導電性を発現しにくかった。また、成形品間におけるバラツキも大きかった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−152389号公報
【特許文献2】特開2002−358826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、導電性を有する金属コート有機繊維が、熱履歴や剪断履歴を受けても熱可塑性樹脂中に安定して均一分散し、各成形品毎の導電性のバラツキが少なくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明は、金属コート有機繊維に熱可塑性樹脂(a)を含浸して得られる導電性樹脂組成物であって、有機繊維がメタ系アラミド繊維であり、金属コート有機繊維における金属が銅、銀、金から選ばれた金属であり、金属コート有機繊維における金属コート量が10〜30重量%である導電性樹脂組成物である。
【0011】
第2の発明は、メタ系アラミド繊維が、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維である第1の発明に記載の導電性樹脂組成物である。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明に記載の導電性樹脂組成物と、熱可塑性樹脂(b)を用いて得られる成形品である。
【0013】
第4の発明は、体積抵抗率が10−1〜10Ω・cmである第3の発明に記載の成形品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の導電性樹脂組成物は、金属コート有機繊維に熱可塑性樹脂(a)を含浸して得られる導電性樹脂組成物であって、有機繊維がメタ系アラミド繊維であり、金属コート有機繊維における金属が銅、銀、金から選ばれた金属であり、金属コート有機繊維における金属コート量が10〜30重量%なので、金属コート膜と有機繊維との密着性が良好である。
【0015】
本発明の導電性樹脂組成物は、メタ系アラミド繊維がポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維なので、金属コートと有機繊維との密着性が更に良好であり、熱履歴や剪断履歴に伴い生じる繊維の折損や金属コート膜の剥離を抑制できる。
【0016】
本発明の成形品は、上記導電性樹脂組成物と、熱可塑性樹脂(b)を用いて得られるので、金属コート有機繊維が熱可塑性樹脂中に安定して均一分散し、成形工程におけるショット間の導電性のバラツキが少ない。よって、成形不良品や導電性不良品が少なく、生産効率も向上でき成形品の品質が安定できる。
【0017】
更に、本発明の成形品は体積抵抗率が10−1〜10Ω・cmなので、良好な導電性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<金属コート有機繊維>
本発明に用いられる有機繊維は、熱可塑性樹脂の含浸工程における温度下においても形状が保持されていること、また、成形品製造の際に、過剰な混錬等の物理的な力により有機繊維が折損したり、金属コート膜が繊維表面から剥離して導電性の低下を防ぐ観点から、成形工程の際の温度においても形状が保持されていることが必要である。
【0019】
本発明において用いられる有機繊維はメタ系アラミド繊維である。なかでもポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維が好ましく用いられる。市販品として帝人株式会社製、商品名コーネックスが挙げられる。
ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維は耐熱性に優れ、金属コート前処理段階の繊維表面の処理が容易であり、金属コート膜と繊維表面間の密着強度が強固に発現する。
【0020】
尚、本発明でいう金属コート膜と繊維表面間の密着強度の強弱とは、次の2通りの方法で得られた評価に基づいている。
(1)金属コート有機繊維を0.5重量%配合した透明な熱可塑性樹脂を射出成形してプレートを得、これを光学顕微鏡100〜200倍率にて観察する。プレート内の繊維表面からの金属コート膜の剥離状態を確認する。繊維表面からの金属剥離が多い場合は密着強度が弱い。
(2)金属コート有機繊維を6重量%配合した熱可塑性樹脂を射出成形してプレートを得、このプレートにおける電磁波の反射率を測定する。ショット回数が上がるにつれて反射率が下がる場合は密着強度が弱い。
【0021】
金属コート有機繊維において用いられる金属としては、導電性が良好で酸化し難く展性の優れた銅、銀、金である。これらから選ばれた1種以上が用いられる。展性が良好なこれらの金属は有機繊維への追随性が良好であるため、金属コートした後は剪断力等がかかっても繊維表面に密着しはがれにくい。特に導電性の観点から金、銀、低コストの観点から銅が好ましい。有機繊維への金属コート方法は特に限定されないが、公知の無電解メッキによるのが一般的である。この他真空蒸着、スパッタリング等の方法でも可能である。
【0022】
本発明においては、金属コート有機繊維におけるコートされた金属量が10〜30重量%であることが必要である。特に15〜25重量%が好ましい。10重量%未満では導電性が不充分な傾向があり、30重量%より多いと繊維の柔軟性、屈曲性に追随できず繊維表面から金属コートの剥離が発生する傾向がある。
【0023】
金属コート有機繊維の繊維径や本数等は特に限定されないが、含浸工程やその後の取り扱いの観点から1本あたりの繊維径が6〜20μm、1束あたりの本数が2500〜16000の範囲が好ましい。
【0024】
本発明の導電性樹脂組成物における金属コート有機繊維の含有量は、ペレット成形性や充分な導電率効果の観点から20〜70重量%が好ましく、特に40〜60重量%が好ましい。
【0025】
<熱可塑性樹脂(a)>
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(a)は、金属コート有機繊維に含浸されるものである。熱可塑性樹脂(a)の種類に格別の制限はないが、不飽和ポリエステル、ポリアミド、重合脂肪酸ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましい。
【0026】
そして、金属コート有機繊維に良好に含浸されるための条件として、含浸時の温度条件下においてJISK 6862に規定された方法にて測定された溶融粘度の値が、4000mPa・s以下であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂を高温状態に保つと上記溶融粘度が低下する傾向にあるが、4時間程度では上記溶融粘度は低下せずほぼ一定であることが作業効率及び品質管理の観点から好ましい。
【0027】
熱可塑性樹脂(a)の含浸方法は特に制限無く公知の方法を用いることができるが、含浸の温度は、含浸樹脂の融点または軟化温度より高いことが好ましい。含浸後、使用目的に合わせて任意の長さ(通常、数mm〜10数mm)に切断されてペレット化され、本発明の導電性樹脂組成物が得られる。
【0028】
本発明において金属コート有機繊維は熱可塑性樹脂(a)の含浸工程により、繊維の束がコンパクト化されて取り扱い性が容易になる。更に成形品製造の際に、溶融混練物中において繊維が速やかに分散できる。すなわち、繊維が速やかに均一分散できるため、混練時間が少なく剪断力も最小限で済むので過剰な混練によって繊維が折損されたり金属コートが剥離したりして導電性を失うことが少ない。
【0029】
<成形品>
本発明の成形品は、導電性樹脂組成物(ペレット)と熱可塑性樹脂(b)ペレットとを均一に攪拌混合したものを射出成形機に投入し、成形されて得られる。
成形品製造の際に成形用樹脂(希釈樹脂)として用いられる熱可塑性樹脂(b)としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS等が挙げられる。
【0030】
成形品製造の際、導電性樹脂組成物中の樹脂部分が溶融し、金属コート有機繊維の束がばらばらになって熱可塑性樹脂(b)中に均一分散される。そして成形された成形品中において、金属コート有機繊維が互いに接した分散状態になることにより、繊維表面上の金属を介して導電性を有した状態になる。
【0031】
本発明における成形品の好ましい体積抵抗率は10−1〜10Ω・cmである。尚、本発明における体積抵抗率とは、3mm×50mm×75mmの試験片の3mm×75mmの両側面に電極として銀ペーストを塗布し乾燥させた後、電極間の電気抵抗をデジタルマルチメーターにて測定し、δ=R・S/Lの式により算出した値である。(但し、δ:体積抵抗率、R:電気抵抗測定値、S:試験片の断面積、L:電極間の長さ を表す。)
【0032】
上記の導電性を得る為には、成形品における金属コート有機繊維の含有量は1.5〜8重量%が好ましい。また、成形品における導電性樹脂組成物の割合は、充分な導電性、混練・成形の容易性及び成形品における機械強度等の観点から3〜20重量%が好ましい。
【0033】
本発明の成形品の例として高周波用配線材、電磁波シールド材が挙げられる。更に詳しくはOA機器、AV機器、測定機器、輸送機器、通信機器等のハウジング用途やコネクタ、包装材等が挙げられる。
尚、本発明の導電性樹脂組成物及び成形品には、本発明の効果を阻害しない範囲内で耐熱安定剤、耐侯剤、滑剤、スリップ剤、難燃剤、核剤、顔料、染料等を配合することが出来る。
【実施例1】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明の構成及び作用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらは全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【0035】
[実施例1]
(導電性樹脂組成物の作成条件−1)
下記の条件にて金属コート有機繊維42重量%、含浸用の熱可塑性樹脂58重量%から成る導電性樹脂組成物(導電性樹脂ペレット、比重1.2)を作成した。
金属コート有機繊維:銅コートポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(20重量%量の銅を無電解メッキした金属コート有機繊維、繊維径15μm、3400本/束)
含浸樹脂:重合脂肪酸ポリアミド樹脂(軟化温度140℃(JIS K 7234(環球法))、溶融粘度3000mPa・s(JIS K 6862、測定温度220℃))
含浸条件:樹脂温度 230〜250℃、引取速度18m/min、ノズル径 2.1mm
【0036】
(射出成形条件−1)
下記の条件にて導電性樹脂ペレット14.3重量%(金属コート有機繊維含有量6重量%)、成形用の熱可塑性樹脂ペレット85.7重量%の割合で配合し、矩形の試験片(寸法;3mm×50mm×75mm)を14枚成形した。最初の4ショットを廃棄し、5ショット目から番号付け(1〜10)した。
成形樹脂:ポリカーボネイト(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、
商品名ユーピロンS−3000(比重1.20、融点152℃)
成形機:東芝機械製「IS100F−3A」
シリンダー温度:280〜290℃
金型温度:90℃
スクリュウ回転数:80rpm
スクリュウ径:36mm
射出速度:40mm/sec
冷却時間:30sec
【0037】
(体積抵抗率の測定)
各試験片の体積抵抗率を以下の様に得、ショット間の変動を
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に示した。
電極塗布電極の材質:銀ペースト(シルコートRL−10:福田金属箔粉工業製)
試験片の3mm×75mmの両側面に銀ペーストを塗布し乾燥
測定機:デジタルマルチメーター(CDM−5000:CUSTOM社製)
体積抵抗率の算出方法δ=R・S/L(但し、δ:体積抵抗率、R:電気抵抗測定値、S:試験片の断面積、L:電極間の長さを表す。)
実施例1の全サンプルにおいて体積抵抗率のバラツキが少なく、かつ体積抵抗率は10−1〜10Ω・cmの範囲であった。
【0038】
[実施例2]
(導電性樹脂組成物の作成条件−2)
下記の条件で金属コート有機繊維46重量%、含浸用の熱可塑性樹脂54重量%から成る導電性樹脂組成物(導電性樹脂ペレット、比重1.2)を作成した。
金属コート有機繊維:銀コートポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(25重量%量の銀を無電解メッキした金属コート有機繊維、繊維径15μm、3400本/束)
含浸樹脂:実施例1と同じ樹脂。
含浸条件:樹脂温度 230〜250℃、引取速度:20m/minノズル径:1.9mm
【0039】
(射出成形条件−2)
実施例1と同様に、導電性樹脂ペレット12.4重量%(金属コート有機繊維含有量6重量%)、実施例1と同じ成形用の熱可塑性樹脂ペレット87.6重量%の割合で配合して試験片を成形し、体積抵抗率を測定した。
実施例2の全サンプルにおいて体積抵抗率のバラツキが少なく、かつ体積抵抗率は10−1〜10Ω・cmの範囲であった。
【0040】
[比較例1](導電性樹脂組成物の作成条件−3)
下記の条件にて金属コート有機繊維54重量%、含浸用の熱可塑性樹脂46重量%から成る導電性樹脂組成物(導電性樹脂ペレット、比重1.31)を作成した。
金属コート有機繊維:銅コートポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(36重量%量の銅を無電解メッキした金属コート有機繊維、繊維径15μm、3400本/束)
含浸樹脂:実施例1と同じ樹脂。
含浸条件:樹脂温度 230〜250℃、引取速度:20m/min、ノズル径:2.1mm
【0041】
(射出成形条件−3)
実施例1と同様に、導電性樹脂ペレット13重量%(金属コート有機繊維含有量6重量%)、実施例1と同じ成形用の熱可塑性樹脂ペレット87重量%の割合で配合して成形し、各試片の体積抵抗率を測定した。
各サンプル間における体積抵抗率のバラツキが大きかった。また、体積抵抗率は10−1〜10Ω・cmの範囲を越え、ショット回数が上がるにつれて体積抵抗率が大きくなった。
【0042】
[比較例2]
(導電性樹脂組成物の作成条件−4)
下記の条件で金属コート有機繊維52重量%、含浸用の熱可塑性樹脂48重量%から成る導電性樹脂組成物(導電性樹脂ペレット、比重1.2)を作成した。
金属コート有機繊維:銀コートポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(8重量%のAgを無電解メッキした金属コート有機繊維、繊維径15μm、3400本/束)
含浸樹脂:実施例1と同じ樹脂。
含浸条件:実施例2と同じ条件。
【0043】
(射出成形条件−4)
実施例1と同様に、導電性樹脂ペレット11.5重量%(金属コート有機繊維含有量6重量%)、実施例1と同じ成形用の熱可塑性樹脂ペレット88.5重量%の割合で配合して試験片を成形し、体積抵抗率を測定した。
各サンプル間における体積抵抗率のバラツキが比較的大きかった。また、体積抵抗率は10−1〜10Ω・cmの範囲を越え、導電性が不充分であった。
【0044】
[比較例3]
(導電性樹脂組成物の作成条件−5)
下記の条件にて金属コート有機繊維60重量%、含浸用の熱可塑性樹脂40重量%から成る導電性樹脂組成物(導電性樹脂ペレット、比重1.3)を作成した。
金属コート有機繊維:銅コートコポリパラフェニレン−3、4‘ジフェニレンエーテルテレフタルアミド繊維(20重量%の銅を無電解メッキした金属コート有機繊維、繊維径12μm、5000本/束)
含浸樹脂:実施例1と同じ。
含浸条件:比較例1と同じ。
【0045】
(射出成形条件−5)
実施例1と同様に、導電性樹脂ペレット9.8重量%(金属コート有機繊維含有量6重量%)、成形用の熱可塑性樹脂ペレット90.2重量%の割合で配合して成形し、各試片の体積抵抗率を測定した。
各サンプル間における体積抵抗率のバラツキが非常に大きかった。また、体積抵抗率は10−1〜10Ω・cmの範囲を越え、導電性が不充分であった。ショット回数が上がるにつれて体積抵抗率が大きくなった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の導電性樹脂組成物は、金属コート有機繊維の熱可塑性樹脂への分散性が良好なので、導電性を安定して保つことが可能である。また、射出成形等複雑な形状の成形品も製造できる。また、成形工程中におけるショット間の導電性のバラツキが少ないので品質が良好な成形品が得られると共に機械物性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例及び比較例における10ショット試験片における体積固有抵抗のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コート有機繊維に熱可塑性樹脂(a)を含浸して得られる導電性樹脂組成物であって、
有機繊維がメタ系アラミド繊維であり、
金属コート有機繊維における金属が銅、銀、金から選ばれた金属であり、
金属コート有機繊維における金属コート量が10〜30重量%である導電性樹脂組成物。
【請求項2】
メタ系アラミド繊維が、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維である請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物と、熱可塑性樹脂(b)を用いて得られる成形品。
【請求項4】
体積抵抗率が10−1〜10Ω・cmである請求項3に記載の成形品。


【図1】
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【公開番号】特開2006−283243(P2006−283243A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105845(P2005−105845)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】