説明

導電性液体漏洩検知線

【課題】水分の浸入に伴う誤動作の発生を防止しながら、確実に導電性液体の漏れを感知する。
【解決手段】導電性液体漏洩検知線は、水分に対して非浸食性であって、検知しようとする導電性液体に対して浸食性を有する絶縁材料3で導電線4の全体を覆い、導電線4の絶縁材料3で覆われた部分を被検査体1に添わせる。これら導電線4と前記被検査体1との間の微弱電流の通電により、それらの間の短絡を検知することが出来る。これにより、導電性液体を含む被検査体1から検知対象となる導電性液体が漏洩、浸入等をしたことを検知する。絶縁材料3としてはPbO系ガラスやBi系ガラスを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速増殖炉等の液体金属ナトリウム等の導電性液体を取り扱う設備において、導電性液体を送る配管やそれを貯える容器等から導電性液体が漏洩、浸入等をしたことを検知する線状の検知センサに関し、特に検知対象となる導電性液体に対する応答性に優れ、なお且つ水滴等の浸入により誤動作することが無い導電性液体漏洩検知線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、高速増殖炉等の液体金属ナトリウムを通す配管やそれを収納する容器においては、導電性液体漏洩検知線をそれら配管や容器に添わせて、万一の場合の液体金属ナトリウムの漏洩を検知するようにしている。配管や容器から液体金属ナトリウムが漏洩したとき、その漏洩した液体金属ナトリウムが導電性液体検知線と配管や容器が電気的に短絡、導通したことを電気的に検知することにより、液体金属ナトリウムの漏洩を検出する仕組である。液体金属ナトリウムを内包する弁のベローズからの漏洩や機器、配管等からの漏洩を監視している。このような導電性液体漏洩検知線は、高速増殖炉用機器に採用され、設置されている。
【0003】
従来の導電性液体漏洩検知線としては、セラミック碍子型導電性液体漏洩検知線が知られている。この従来のセラミック碍子型導電性液体漏洩検知線とその計測回路の例を図5に示す。この従来例のセラミック碍子型導電性液体漏洩検知線は、導電線4としてφ1.2程度のニッケルワイヤを使用し、この導電線4にφ4.2程度のセラミック碍子10を数珠繋ぎに外挿したシンプルな構造である。配管1から漏れた液体金属ナトリウムがセラミック碍子10の間の隙間に浸透し、導電線4に接触したとき、導電線4と配管1とが短絡して導通するため、これを電気的に検知することにより、液体金属ナトリウムの漏洩を検出する。検知部6は例えば試験用のスイッチ7、微弱電流を導電線4に通電する電源8、導電線4と配管1との短絡、導通を電気的に検知する電流計9を含む。スイッチ7は、定期的に閉にして導電線4が断線していないことを確認するためのもので、通常の漏洩検知状態においては、開のままである。このような導電性液体漏洩検知線は、気密性が要求されない広範囲な部位の検出に適用される。
【0004】
この他の導電性液体漏洩検知線としては、例えば下記の特許文献4(特表2002−525566号公報)に記載されたようなものも知られている。この導電性液体漏洩検知線は、導電線を囲む導電性流体に不浸透性を有する絶縁体を、前記導電線が当絶縁体から解放される絶縁体間隙が存在する如く隣接巻回ターン間における軸線方向巻回間隙を有して前記導電線上に螺旋状に巻回された少なくともひとつの絶縁テープにより構成されている。導電線が当絶縁体から解放される前記絶縁体間隙において漏洩した導電性流体で電気的に検知する点で前述したものと同様である。
【0005】
しかしならが、前述した従来の導電性液体漏洩検知線においては、絶縁体の間から導電線に水分等が侵入すると、導電線と配管等との間の絶縁抵抗が下がり、その間が短絡、導通して検知電流が流れてしまう。これにより、液体金属ナトリウム等の導電性液体の漏れがあったものとして誤警報を発してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−26264号公報
【特許文献2】特開2003−35694号公報
【特許文献3】特開2002−277341号公報
【特許文献4】特表2002−525566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の導電性液体漏洩検知線における課題に鑑み、絶縁体の内部に水が浸透せず、液体金属ナトリウム等の検知しようとする導電性液体の接触によってのみ導電線が配管や容器等の監視設備と短絡、導通するようにしたものである。水分の浸入に伴う誤動作の発生を防止しながら、確実に導電性液体の漏れを感知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記の目的を達成するため、水分によっては浸食されず、検知しようとする導電性液体に浸食される絶縁材料で導電線を覆い、この絶縁材料で導電線への水分の浸透を阻みながら、導電線に微弱電流を通電し、導電線と容器や配管等の被検査体との短絡、導通を電気的に検知するようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明は、導電性液体を含む被検査体1から検知対象となる導電性液体が漏洩したことを検知する線状の導電性液体漏洩検知線であって、水分に対して非浸食性であって、検知しようとする導電性液体に対して浸食性を有する絶縁材料3で導電線4の全体を覆い、導電線4の絶縁材料3で覆われた部分を被検査体1に添わせると共に、導電線4と前記被検査体1との間の通電によりその間の短絡、導通を検知するものである。
【0010】
さらに具体的に説明すると、導電線液体として液体金属ナトリウムを検知対象とする場合、水分に対して非浸食性であって、前記液体金属ナトリウムに対して浸食性を有するガラスからなる絶縁材料3で導電線4を覆う。例えば、絶縁材料3としてはPbO系ガラスやBi系ガラスを使用する。特にBi系ガラスは液体金属ナトリウムに対して浸食性に優れ、感度が良い。
【0011】
このような本願発明による導電性液体漏洩検知線では、導電線4の全体が水分に対して非浸食性を有する絶縁材料3で覆われているので、導電線4に水分が接触しようとしても、絶縁材料3で保護され、接触が阻まれる。他方、絶縁材料3は検知しようとする導電性液体に対しては浸食性を有するため、導電性液体が絶食材料3に接触すると、絶食材料3が導電性液体に接触、反応し、絶食材料3が浸食される。その結果、導電性液体が絶食材料3の中に浸透し、導電線4と接触し、導電線4と被検査体1と間でその間の電気的に導通する。従って、導電線4の絶縁材料3で覆われた部分を被検査体1に添わせると共に、それら導電線4と前記被検査体1との間の通電により、その間の短絡、導通を検知し、導電性流体の漏れを確実に検知する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した通り、本願発明による導電性液体漏洩検知線では、水分は導電線4に接触せず、導電性液体のみが絶食材料3の中に浸透し、導電線4と接触する。従って、導電性液体によってのみ導電線4と被検査体1とが短絡される。このため、水分による誤動作が排除され、確実に導電性流体の漏洩を検知することが出来る。よって、信頼性の高い導電性液体漏洩検知線を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による導電性液体漏洩検知線の一実施例を示す全体概略断面図である。
【図2】本発明による導電性液体漏洩検知線の一実施例の検知線部分を示す要部拡大概略断面図である。
【図3】本発明による導電性液体漏洩検知線の他の実施例の検知線部分を示す要部拡大概略断面図である。
【図4】ガラス材料の生成自由エネルギーの温度に対する変化を示すグラフである。
【図5】導電性液体漏洩検知線の従来例を示す全体概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、水分によっては浸食されないが、検知しようとする導電性液体には浸食される絶縁材料を用いることで、水分の浸透を阻みながら、導電性液体によってのみ導電線と配管や容器等の被検査体との間の短絡、導通が起こるようにし、前記の目的を達成するものである。
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的且つ詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明による導電性液体漏洩検知線の一実施例を示す全体概略断面図と検知部の検査回路図であり、図2は、その検知線2の部分を示す要部拡大概略断面図である。
導電性液体漏洩検知線の本体をなす検知線2は、導電線4としてφ1.2程度のニッケルや銅等のワイヤを使用し、この導電線4をチューブ状に形成された絶縁材料3に通し、このチューブ状の絶縁材料3の両端を塞いだ端栓5、5を通して導電線4を絶縁材料3の両端に引き出している。端栓5としてPbO系ガラスやBi系ガラスを使用する。このような検知線2を配管や容器等の導電線液体を含む被検査体1に添わせる。
【0016】
この検知線2により導電性流体の検査体1からの漏洩を電気的に検知するための検知部6は、微弱電流を導電線4に通電する電源8と、試験用のスイッチ7を介して導電線4に接続され、導電線4と配管1との導通、短絡により導電線2に微弱電流が流れるのを電気的に検知する電流計9とを含む。検査体1からの導電性流体の漏洩を監視するときは、前記スイッチ7を開いた状態とする。他方、スイッチ7を閉じると、電流計9で電源8から導電線4を介して通電される微弱電流が検知されるので、これにより導電線4の導通試験を行うことが出来る。
【0017】
前記の試験用のスイッチ7が開いた状態で、検知線2に水分が接触しても、導電線4が絶縁材料3で保護され、水分が導電線4に接触しない。これに対し、絶縁材料3が検知しようとする導電性液体に対して浸食性を有すことにより、導電性液体が絶食材料3に接触すると、導電性液体が絶食材料3に接触、反応し、絶食材料3が浸食される。その結果、導電性液体が絶食材料3の中に浸透し、導電線4と接触し、導電線4と被検査体1との間でその間の電気的な短絡、導通が起こる。このとき前記電流計9で微弱電流の通電を検知することにより、検査体1からの導電性流体の漏れを検知することが出来る。
【0018】
このようなことから、前記絶縁材料3としては、水分に対して非浸食性であって、且つ漏れを検知しようとする導電性液体に対して浸食性を有する材料であることが必要である。例えば、漏れを検知しようとする導電性液体が液体金属ナトリウムである場合、絶縁材料3としてPbO系ガラスやBi系ガラスを使用する。特にBi系ガラスは液体金属ナトリウムに対して浸食性に優れ、感度が良い。
【0019】
図3は、本発明による導電性液体漏洩検知線の他の実施例の検知線2の部分を示す要部拡大概略断面図である。この実施例では、絶縁材料3’がチューブ状ではなく、導電線4の全体を覆うように密着して形成されている。使用する絶縁材料3’としては前述した実施例の絶縁材料3と同様のものを使用する。図3の様に導電線4に絶縁材料3’を密着させる場合は、熱膨張係数が同じでなければならないので、絶縁材料3’としてPbO系ガラスやBi系ガラスを使用し、導電線4は、絶縁材料3’に近い小さな熱膨張係数を有する封着金属のコバールやニッケル鉄合金を用いるのがよい。
【0020】
図4は、絶縁材料3として使用するPbO系ガラスやBi系ガラスの生成自由エネルギーの温度変化を通常のライムソーダガラス(NaO系ガラス)と比較したグラフである(出典:日ソ通信社1987年発行「酸化物の熱化学」や日本金属学会1964年発行「冶金物理化学」)。このグラフから明らかな通り、絶縁材料3として使用するPbO系ガラスやBi系ガラスは、通常のライムソーダガラス(NaO系ガラス)と比較して使用温度域である300℃〜500℃における生成自由エネルギーが大きく、液体金属ナトリウムと反応しやすい。しかしガラスは水分と反応することはなく、水分に対する導電線4の保護には支障はない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明による導電性液体漏洩検知線は、水分に邪魔されることなく、液体金属ナトリウムを収納する配管やそれを収納する容器から液体金属ナトリウムが漏洩したことを検出することが出来るため、液体金属ナトリウムの漏洩の監視等に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 検査体
2 検知線
3 絶縁材料
4 導電線
6 検知部
8 電源
9 電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性液体を含む被検査体1から検知対象となる導電性液体が漏洩、浸入等をしたことを検知する線状の導電性液体漏洩検知線であって、水分に対して非浸食性であって、検知しようとする導電性液体に対して浸食性を有する絶縁材料3で導電線4の全体を覆い、導電線4の絶縁材料3で覆われた部分を被検査体1に添わせると共に、これら導電線4と前記被検査体1との間の通電によりその間の短絡、導通を検知することを特徴とする導電性液体漏洩検知線。
【請求項2】
絶縁材料3がチューブ状であり、この中に導電線4が引き通されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性液体漏洩検知線。
【請求項3】
絶縁材料3が導電線4の全体を密着して覆っていることを特徴とする請求項1に記載の導電性液体漏洩検知線。
【請求項4】
絶縁材料3は、導電線液体として液体金属ナトリウムを検知対象とする場合、PbO系ガラス又はBi系ガラスであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の導電性液体漏洩検知線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220747(P2011−220747A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88225(P2010−88225)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000183945)助川電気工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】