説明

導電性熱可塑性組成物、製造方法、及びかかる組成物から導かれる物品

本明細書中には、有機ポリマー前駆体、0.1wt%以上の製造関連不純物を含む単層ナノチューブ組成物、及び任意のナノサイズ導電性充填材を含んでなる導電性前駆体組成物が開示される。また、有機ポリマー、0.1wt%以上の製造関連不純物を含む単層ナノチューブ組成物、及びナノサイズ導電性充填材を含んでなる導電性組成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電消散又は電磁遮蔽が重要な要件となる包装用フィルム、チップキャリヤー、コンピューター、プリンター及び写真複写機部材のような材料管理装置及び電子装置で、有機ポリマーから作られた物品が常用されている。静電消散(以後はESD)は、直接接触又は誘導静電界による、電位の異なる物体間での静電荷の移動として定義される。電磁遮蔽(以後はEM遮蔽)の効率は、遮蔽に入射した電磁界のうち、それを透過する部分の比率(単位デシベル)として定義される。電子装置が小型化及び高速化するのに伴い、静電荷に対するその感受性は増大し、したがって向上した静電消散性を示すように改質した有機ポリマーを使用することが一般に望ましい。同様に、有機ポリマーの有利な機械的性質の一部又は全部を保持しながら向上した静電遮蔽を示し得るように有機ポリマーを改質することも一般に望ましい。
【0003】
電気的性質を向上させると共にESD及びEM遮蔽を達成するため、ピッチ及びポリアクリロニトリルから導かれる直径2マイクロメートル超の黒鉛繊維のような導電性充填材が有機ポリマー中にしばしば混入される。しかし、黒鉛繊維のサイズは大きいので、かかる繊維の混入は一般に耐衝撃性のような機械的性質の低下を引き起こす。したがって、当技術分野では、十分なESD及びEM遮蔽をもたらしながらその機械的性質を保持し得る導電性ポリマー組成物に対するニーズが今なお存在している。
【特許文献1】米国特許第2465319号明細書
【特許文献2】米国特許第3047539号明細書
【特許文献3】米国特許第3847867号明細書
【特許文献4】米国特許第3850885号明細書
【特許文献5】米国特許第3852113号明細書
【特許文献6】米国特許第3852242号明細書
【特許文献7】米国特許第3855178号明細書
【特許文献8】米国特許第3972902号明細書
【特許文献9】米国特許第3983093号明細書
【特許文献10】米国特許第4005053号明細書
【特許文献11】米国特許第4115475号明細書
【特許文献12】米国特許第4141927号明細書
【特許文献13】米国特許第4195015号明細書
【特許文献14】米国特許第4230838号明細書
【特許文献15】米国特許第4331786号明細書
【特許文献16】米国特許第4332920号明細書
【特許文献17】米国特許第4443591号明細書
【特許文献18】米国特許第4455410号明細書
【特許文献19】米国特許第4492382号明細書
【特許文献20】米国特許第4559164号明細書
【特許文献21】米国特許第4565684号明細書
【特許文献22】米国特許第4572813号明細書
【特許文献23】米国特許第4637945号明細書
【特許文献24】米国特許第4663230号明細書
【特許文献25】米国特許第4749451号明細書
【特許文献26】米国特許第4816289号明細書
【特許文献27】米国特許第4839441号明細書
【特許文献28】米国特許第4864014号明細書
【特許文献29】米国特許第4871613号明細書
【特許文献30】米国特許第4876033号明細書
【特許文献31】米国特許第4876078号明細書
【特許文献32】米国特許第4908418号明細書
【特許文献33】米国特許第4908419号明細書
【特許文献34】米国特許第4966729号明細書
【特許文献35】米国特許第4968418号明細書
【特許文献36】米国特許第5004561号明細書
【特許文献37】米国特許第5024818号明細書
【特許文献38】米国特許第5036580号明細書
【特許文献39】米国特許第5071329号明細書
【特許文献40】米国特許第5093435号明細書
【特許文献41】米国特許第5159053号明細書
【特許文献42】米国特許第5165909号明細書
【特許文献43】米国特許第5171761号明細書
【特許文献44】米国特許第5227038号明細書
【特許文献45】米国特許第5256335号明細書
【特許文献46】米国特許第5284093号明細書
【特許文献47】米国特許第5300203号明細書
【特許文献48】米国特許第5300553号明細書
【特許文献49】米国特許第5302274号明細書
【特許文献50】米国特許第5312866号明細書
【特許文献51】米国特許第5354607号明細書
【特許文献52】米国特許第5385970号明細書
【特許文献53】米国特許第5439987号明細書
【特許文献54】米国特許第5445327号明細書
【特許文献55】米国特許第5484837号明細書
【特許文献56】米国特許第5514748号明細書
【特許文献57】米国特許第5516837号明細書
【特許文献58】米国特許第5543474号明細書
【特許文献59】米国特許第5556517号明細書
【特許文献60】米国特許第5566892号明細書
【特許文献61】米国特許第5571875号明細書
【特許文献62】米国特許第5589152号明細書
【特許文献63】米国特許第5591312号明細書
【特許文献64】米国特許第5591382号明細書
【特許文献65】米国特許第5591832号明細書
【特許文献66】米国特許第5604284号明細書
【特許文献67】米国特許第5641455号明細書
【特許文献68】米国特許第5643502号明細書
【特許文献69】米国特許第5643990号明細書
【特許文献70】米国特許第5651922号明細書
【特許文献71】米国特許第5652326号明細書
【特許文献72】米国特許第5654357号明細書
【特許文献73】米国特許第5718995号明細書
【特許文献74】米国特許第5744235号明細書
【特許文献75】米国特許第5830326号明細書
【特許文献76】米国特許第5840807号明細書
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【特許文献123】米国特許出願公開第2002/0031465号明細書
【特許文献124】米国特許出願公開第2002/0035170号明細書
【特許文献125】米国特許出願公開第2002/0039675号明細書
【特許文献126】米国特許出願公開第2002/0046872号明細書
【特許文献127】米国特許出願公開第2002/0048632号明細書
【特許文献128】米国特許出願公開第2002/0053257号明細書
【特許文献129】米国特許出願公開第2002/0068170号明細書
【特許文献130】米国特許出願公開第2002/0084410号明細書
【特許文献131】米国特許出願公開第2002/0085968号明細書
【特許文献132】米国特許出願公開第2002/0086124号明細書
【特許文献133】米国特許出願公開第2002/0088938号明細書
【特許文献134】米国特許出願公開第2002/0090331号明細書
【特許文献135】米国特許出願公開第2002/0092613号明細書
【特許文献136】米国特許出願公開第2002/0092983号明細書
【特許文献137】米国特許出願公開第2002/0092984号明細書
【特許文献138】米国特許出願公開第2002/0094311号明細書
【特許文献139】米国特許出願公開第2002/0096634号明細書
【特許文献140】米国特許出願公開第2002/0098135号明細書
【特許文献141】米国特許出願公開第2002/0102196号明細書
【特許文献142】米国特許出願公開第2002/0109086号明細書
【特許文献143】米国特許出願公開第2002/0109087号明細書
【特許文献144】米国特許出願公開第2002/0110513号明細書
【特許文献145】米国特許出願公開第2002/0127169号明細書
【特許文献146】米国特許出願公開第2002/0136681号明細書
【特許文献147】米国特許出願公開第2002/0136683号明細書
【特許文献148】米国特許出願公開第2002/0150524号明細書
【特許文献149】米国特許出願公開第2002/0155333号明細書
【特許文献150】米国特許出願公開第2002/0159943号明細書
【特許文献151】米国特許出願公開第2002/0159944号明細書
【特許文献152】米国特許出願公開第2002/0161101号明細書
【特許文献153】米国特許出願公開第2002/0179564号明細書
【特許文献154】米国特許出願公開第2002/0172789号明細書
【特許文献155】米国特許出願公開第2002/0176650号明細書
【特許文献156】米国特許出願公開第2002/0180077号明細書
【特許文献157】米国特許出願公開第2002/0185770号明細書
【特許文献158】米国特許出願公開第2003/0001141号明細書
【特許文献159】米国特許出願公開第2003/0004058号明細書
【特許文献160】米国特許出願公開第2003/0008123号明細書
【特許文献161】米国特許出願公開第2003/0010910号明細書
【特許文献162】米国特許出願公開第2003/0026754号明細書
【特許文献163】米国特許出願公開第2003/0044608号明細書
【特許文献164】米国特許出願公開第2003/0053801号明細書
【特許文献165】米国特許出願公開第2003/0066960号明細書
【特許文献166】米国特許出願公開第2003/0075682号明細書
【特許文献167】米国特許出願公開第2003/0089890号明細書
【特許文献168】米国特許出願公開第2003/0089893号明細書
【特許文献169】米国特許出願公開第2003/0100653号明細書
【特許文献170】米国特許出願公開第2003/0108477号明細書
【特許文献171】米国特許出願公開第2003/0111333号明細書
【特許文献172】米国特許出願公開第2003/0122111号明細書
【特許文献173】米国特許出願公開第2003/0124717号明細書
【特許文献174】米国特許出願公開第2003/0132376号明細書
【特許文献175】米国特許出願公開第2003/0133865号明細書
【特許文献176】米国特許出願公開第2003/0143350号明細書
【特許文献177】米国特許出願公開第2003/0151030号明細書
【特許文献178】米国特許出願公開第2003/0153965号明細書
【特許文献179】米国特許出願公開第2003/0164427号明細書
【特許文献180】米国特許出願公開第2003/0165658号明細書
【特許文献181】米国特許出願公開第2003/0168756号明細書
【特許文献182】米国特許出願公開第2003/0171457号明細書
【特許文献183】米国特許出願公開第2003/0180526号明細書
【特許文献184】国際公開第97/09272号パンフレット
【特許文献185】国際公開第97/32646号パンフレット
【特許文献186】国際公開第98/05920号パンフレット
【特許文献187】国際公開第98/39250号パンフレット
【特許文献188】国際公開第00/17101号パンフレット
【特許文献189】国際公開第00/17102号パンフレット
【特許文献190】国際公開第00/26138号パンフレット
【特許文献191】国際公開第00/52710号パンフレット
【特許文献192】国際公開第01/17101号パンフレット
【特許文献193】国際公開第01/30694号パンフレット
【特許文献194】国際公開第01/38219号パンフレット
【特許文献195】国際公開第01/49599号パンフレット
【特許文献196】国際公開第01/57284号パンフレット
【特許文献197】国際公開第01/75902号パンフレット
【特許文献198】国際公開第01/89013号パンフレット
【特許文献199】国際公開第01/92381号パンフレット
【特許文献200】国際公開第01/99146号パンフレット
【特許文献201】国際公開第02/16257号パンフレット
【特許文献202】国際公開第02/20402号パンフレット
【特許文献203】国際公開第02/39051号パンフレット
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【特許文献205】国際公開第02/055769号パンフレット
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【特許文献209】国際公開第02/064869号パンフレット
【特許文献210】国際公開第02/068170号パンフレット
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【特許文献213】国際公開第02/076888号パンフレット
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【特許文献215】国際公開第02/079082号パンフレット
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【特許文献217】国際公開第02/081372号パンフレット
【特許文献218】国際公開第02/088025号パンフレット
【特許文献219】国際公開第02/090330号パンフレット
【特許文献220】国際公開第02/095097号パンフレット
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【特許文献225】国際公開第03/004741号パンフレット
【特許文献226】国際公開第03/005450号パンフレット
【特許文献227】国際公開第03/007314号パンフレット
【特許文献228】国際公開第03/011755号パンフレット
【特許文献229】国際公開第03/012722号パンフレット
【特許文献230】国際公開第03/013199号パンフレット
【特許文献231】国際公開第03/020638号パンフレット
【特許文献232】国際公開第03/040026号パンフレット
【特許文献233】国際公開第03/049219号パンフレット
【特許文献234】国際公開第03/070821号パンフレット
【特許文献235】国際公開第03/072679号パンフレット
【特許文献236】国際公開第03/076703号パンフレット
【特許文献237】国際公開第03/078317号パンフレット
【特許文献238】国際公開第03/078315号パンフレット
【特許文献239】国際公開第03/085049号パンフレット
【特許文献240】国際公開第03/085681号パンフレット
【特許文献241】国際公開第03/092763号パンフレット
【特許文献242】欧州特許出願公開第0198558号明細書
【特許文献243】欧州特許出願公開第0365168号明細書
【特許文献244】欧州特許出願公開第0822224号明細書
【特許文献245】欧州特許出願公開第0854839号明細書
【特許文献246】欧州特許出願公開第1209123号明細書
【特許文献247】欧州特許出願公開第1336673号明細書
【特許文献248】欧州特許出願公開第1073090号明細書
【特許文献249】欧州特許出願公開第1359169号明細書
【特許文献250】特開2002−273741号公報
【特許文献251】特開2003−096313号公報
【特許文献252】特開2001−011344号公報
【特許文献253】特開2002−313147号公報
【特許文献254】特開2003−146632号公報
【非特許文献1】"Conductive Plastics for Medical Applications" Medical Device and Diagnostic Industry Magazine, January 1999 http://www.devicelink.com/mddi/archive/99/01/009.html
【非特許文献2】Bernie Miller "Tiny Graphite 'tubes' Create High-Efficiency Conductive Plastics" Conductive Plastics, Plastics World Magazine article http://www.fibrils.com/conplas1.htm 01/18/2001
【非特許文献3】Hyperion Catalysis International "Unique Slough Resistant SRtm Series ESD Thermoplastic Product Line Offers Reduced Particle Contamination for Demanding Electronic Applications" http://www.fibrils.com/esd.htm 01/18/2001
【非特許文献4】M.S.P. Shaffer et al. "Dispersion of Carbon Nanotubes: Polymeric Analogies" Proc. Polymer 1999, Department of Materials Science, Cambridge University. Pp 24-27
【非特許文献5】Collins et al. "Controlling the Electronic Properties of Carbon Nanotube Bundles" Abstract only IBM Research Division, T.J. Watson Research Center, Yorktown Heights, NY 10598, USA, http://www.nanotube.org/abstracts/collinsp.html
【非特許文献6】Tesner et al. "Formation of Carbon Fibers from Acetylene" Carbon, 1970, Vol.8, pp.435-442, Pergamon Pres. Great Pritain
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書中には、有機ポリマー前駆体、0.1wt%以上の製造関連不純物を含む単層ナノチューブ組成物、及び任意のナノサイズ導電性充填材を含んでなる導電性前駆体組成物が開示される。
【0005】
本明細書中にはまた、有機ポリマー、0.1wt%以上の製造関連不純物を含む単層ナノチューブ組成物、及びナノサイズ導電性充填材を含んでなる導電性組成物も開示される。
【0006】
本明細書中にはまた、導電性組成物の製造方法であって、約10Ω−cm以下の体積抵抗率及び約5キロジュール/平方メートル以上のノッチ付きアイゾット衝撃強さを組成物に付与するのに有効なやり方で有機ポリマー、0.1wt%以上の製造関連不純物を含む単層カーボンナノチューブ組成物、及びナノサイズ導電性充填材をブレンドすることを含んでなる方法も開示される。
【0007】
本明細書中にはまた、上述の組成物及び方法で製造される物品も開示される。
【0008】
図面の簡単な説明
図1は、高いSWNT添加量におけるSWNTとカーボンブラックとの協力作用を示すグラフである。
【0009】
図2は、表4の試料の体積抵抗率を対照組成物と共に示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書中には、1種以上の有機ポリマー前駆体、0.1wt%以上の製造関連不純物を含む単層カーボンナノチューブ(SWNT)組成物、及び任意には1種以上のナノサイズ導電性充填材を含んでなる導電性前駆体組成物が開示される。有機ポリマー前駆体は、約10以下の繰返し単位を有するモノマー、ダイマー、トライマー又は分子種、或いは上述の有機ポリマー前駆体の1種以上を含む組合せであり得る。ナノサイズ導電性充填材は、充填材の実質的な部分について、1以上の寸法が約100ナノメートル(nm)以下であるようなものである。かかる寸法の好適な例には、面の辺、直径、回転半径などがある。
【0011】
本明細書中にはまた、1種以上の有機ポリマー、SWNT組成物及びナノサイズ導電性充填材を含んでなる導電性組成物であって、約5キロジュール/平方メートル以上の耐衝撃性及びA種表面仕上を示しながら約10Ω−cm以下のバルク体積抵抗率を有する導電性組成物も開示される。SWNT組成物は、SWNTの全重量を基準にして約1重量%(wt%)以上、好ましくは約2wt%以上、さらに好ましくは約5wt%以上の量で製造関連不純物を含むSWNTからなる。有利な特徴として、かかる製造関連不純物の存在は有機ポリマーの母材中でのSWNTの分散を容易にし、及び/又は有機ポリマーの母材を通して導電性ネットワークを形成する際における使用エネルギー量の低減を促進する。
【0012】
一実施形態では、導電性組成物は、約5キロジュール/平方メートル以上の耐衝撃性及びA種表面仕上を示しながら、約10Ω−cm以下のバルク体積抵抗率を有すると共に約10オーム/平方(Ω/sq)以上の表面抵抗率を有する。別の実施形態では、導電性組成物は、約5キロジュール/平方メートル以上の耐衝撃性及びA種表面仕上を示しながら、約10Ω−cm以下のバルク体積抵抗率を有すると共に約10オーム/平方(Ω/sq)以下の表面抵抗率を有する。かかる導電性組成物は、静電荷から保護する必要のあるコンピューター、電子製品、半導体部品、回路板などで有利に使用できる。これらは、所望ならば静電塗装し得る自動車の内部部品及び外部部品用の車体パネルでも有利に使用できる。
【0013】
導電性組成物中に使用する有機ポリマーは、広範囲の様々な熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂ブレンド、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のブレンドから選択できる。有機ポリマーはまた、ポリマーブレンド、コポリマー、ターポリマー、又は上述の有機ポリマーの1種以上を含む組合せでもあり得る。有機ポリマーの例は、ポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド、ポリキノキサリン、ポリベンゾイミダゾール、ポリオキシンドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン・ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリ・ン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリアンヒドリド、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリ尿素、ポリホスファゼン、ポリシラザンなど、又は上述の有機ポリマーの1種以上を含む組合せである。
【0014】
熱可塑性樹脂ブレンドの非限定的な具体例には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド、ポリカーボネート/ポリエステル、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィン、及び上述の熱可塑性樹脂ブレンドの1種以上を含む組合せがある。
【0015】
熱硬化性樹脂の例には、ポリウレタン、天然ゴム、合成ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリアミド、シリコーン、及び上述の熱硬化性樹脂のいずれか1種を含む混合物がある。熱硬化性樹脂のブレンド及び熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のブレンドも使用できる。
【0016】
導電性組成物を得るためには、有機ポリマー前駆体中にSWNTを分散させると共に、有機ポリマー前駆体から有機ポリマーを重合させる。有機ポリマー前駆体は、約40以下の繰返し単位を有するモノマー、ダイマー、トライマー又はオリゴマー反応性化学種であって、重合後には約3000グラム/モル(g/mole)以上、好ましくは約5000g/mole以上、さらに好ましくは約10000g/mole以上の数平均分子量を有する有機ポリマーを与えるものであり得る。以下のセクションでは、様々な有機ポリマーの例及びこれらの有機ポリマーを重合させるためのポリマー前駆体を詳述する。ポリマー前駆体は、導電性前駆体組成物を得るためにSWNT及び任意のナノサイズ導電性充填材と混合できるモノマーの例である。
【0017】
一実施形態では、導電性組成物中に使用できる有機ポリマーはポリアリーレンエーテルである。ポリ(アリーレンエーテル)という用語には、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリ(アリーレンエーテル)コポリマー、グラフトコポリマー、ポリ(アリーレンエーテル)イオノマー、並びにアルケニル芳香族化合物とポリ(アリーレンエーテル)、ビニル芳香族化合物及びポリ(アリーレンエーテル)とのブロックコポリマーなど、並びに上述のものの1種以上を含む組合せが包含される。ポリ(アリーレンエーテル)ポリマー自体は、下記の式(I)の構造単位を有するポリマー前駆体を複数含むポリマーである。
【0018】
【化1】

式中、各構造単位について、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一若しくは第二低級アルキル(例えば、7以下の炭素原子を含むアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、ハロゲン原子と酸素原子とを2以上の炭素原子が隔てているハロ炭化水素オキシなどであり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一若しくは第二低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、炭化水素オキシ、ハロゲン原子と酸素原子とを2以上の炭素原子が隔てているハロ炭化水素オキシなどである。好ましくは、各Qはアルキル又はフェニル、特にC1−4アルキルであり、各Qは水素である。
【0019】
ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマー及びコポリマーが共に包含される。好ましいホモポリマーは2,6−ジメチルフェニレンエーテル単位を含むものである。適当なコポリマーとしては、例えば上記単位を2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と共に含むランダムコポリマー、又は2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合で得られるコポリマーがある。また、ビニルモノマー又はポリスチレンのようなポリマーをグラフト化して得られる部分を含むポリ(アリーレンエーテル)、及び低分子量ポリカーボネート、キノン類、複素環式化合物及びホルマール類のようなカップリング剤を2本のポリ(アリーレンエーテル)鎖のヒドロキシ基と反応させてさらに高分子量のポリマーとしたカップルドポリ(アリーレンエーテル)も包含される。ポリ(アリーレンエーテル)にはさらに、上述のものの1種以上を含む組合せも包含される。
【0020】
ポリ(アリーレンエーテル)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して約3000〜約30000g/moleの数平均分子量及び約30000〜約60000g/moleの重量平均分子量を有する。ポリ(アリーレンエーテル)は、25℃のクロロホルム中で測定して約0.10〜約0.60デシリットル/グラム(dl/g)の固有粘度を有する。高い固有粘度のポリ(アリーレンエーテル)と低い固有粘度のポリ(アリーレンエーテル)とを組み合わせて使用することも可能である。2通りの固有粘度を用いる場合、正確な比率の決定は使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終的な物理的性質に依存する。
【0021】
ポリ(アリーレンエーテル)は、通例、2,6−キシレノール又は2,3,6−トリメチルフェノールのような1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングで製造される。かかるカップリングには一般に触媒系を使用する。触媒系は、通例、銅、マンガン又はコバルトの化合物のような1種以上の重金属化合物を、通常は他の各種物質と共に含む。
【0022】
多くの目的に特に有用なポリ(アリーレンエーテル)は、1以上のアミノアルキル含有末端基を有する分子からなるものである。アミノアルキル基は、通例はヒドロキシ基に対してオルト位に位置する。かかる末端基を含む生成物は、酸化カップリング反応混合物の一成分として、ジ−n−ブチルアミン又はジメチルアミンのような適当な第一又は第二モノアミンを配合することで得られる。4−ヒドロキシビフェニル末端基が存在することも多く、この基は通例、特に銅−ハロゲン化物−第二又は第三アミン系において、副生物のジフェノキノンが存在する反応混合物から得られる。ポリマー分子の実質的な割合、通例はポリマーの約90重量%もの割合が、アミノアルキル含有末端基及び4−ヒドロキシビフェニル末端基の1以上を含み得る。
【0023】
別の実施形態では、導電性組成物中に使用する有機ポリマーはポリカーボネートであり得る。芳香族カーボネート連鎖単位を含むポリカーボネートは、下記の式(II)の構造単位を有する組成物を包含する。
【0024】
【化2】

式中、R基は芳香族基、脂肪族又は脂環式基である。好ましくは、Rは芳香族有機基であり、さらに好ましくは下記の式(III)の基である。
【0025】
【化3】

式中、A及びAの各々は単環式二価アリール基であり、YはAとAとを隔てる0、1つ又は2つの原子を有する橋かけ基である。例示的な実施形態では、1つの原子がAとAとを隔てている。この種の基の具体例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデンなどである。別の実施形態では、0の原子がAとAとを隔てており、その具体例はビフェノールである。橋かけ基Yは、炭化水素基又は飽和炭化水素基(例えばメチレン、シクロヘキシリデン又はイソプロピリデン)であり得る。
【0026】
ポリカーボネートは、カーボネート前駆体とジヒドロキシ化合物とのショッテン−バウマン界面反応で製造できる。通例、水性塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなど)が、ジヒドロキシ化合物を含む水不混和性有機溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、二硫化炭素又はジクロロメタン)と混合される。反応を促進するため、一般に相間移動剤が使用される。反応体混合物には、分子量調整剤を単独で又は混合して添加できる。後述のような枝分れ剤も、単独で又は混合して添加できる。
【0027】
ポリカーボネートは、ただ1つの原子がAとAとを隔てているジヒドロキシ化合物のようなポリマー前駆体の界面反応で製造できる。本明細書中で使用する「ジヒドロキシ化合物」という用語は、例えば、下記の一般式(IV)を有するビスフェノール化合物を包含する。
【0028】
【化4】

式中、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン原子又は一価炭化水素基を表し、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xは下記の式(V)の基の1つを表す。
【0029】
【化5】

式中、R及びRは各々独立に水素原子又は一価線状若しくは環状炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基である。
【0030】
式(IV)で表すことができる種類のビスフェノール化合物の例には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンや1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンや2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(又はビスフェノールA)や2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタンや2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタンや1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンや1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタンやビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンや2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパンや1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンや2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン系列、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタンや1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン系列など、又は上述のビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せがある。
【0031】
式(IV)で表すことができる他のビスフェノール化合物には、Xが−O−、−S−、−SO−又は−SO−であるものがある。かかるビスフェノール化合物の若干の例は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルや4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドや4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドや4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンや4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホンなど、又は上述のビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せである。
【0032】
ポリカーボネートの重縮合で使用できる他のビスフェノール化合物は、下記の式(VI)で表される。
【0033】
【化6】

式中、Rはハロゲン原子、1〜10の炭素原子を有する炭化水素基、又はハロゲン置換炭化水素基であり、nは0〜4の値である。nが2以上である場合、Rは同一のものでも相異なるものでもよい。式(V)で表すことができる他のビスフェノール化合物の例は、レソルシノール、3−メチルレソルシンや3−エチルレソルシンや3−プロピルレソルシンや3−ブチルレソルシンや3−t−ブチルレソルシンや3−フェニルレソルシンや3−クミルレソルシンや2,3,4,6−テトラフルオロレソルシンや2,3,4,6−テトラブロモレソルシンなどの置換レソルシノール化合物、カテコール、ヒドロキノン、3−メチルヒドロキノンや3−エチルヒドロキノンや3−プロピルヒドロキノンや3−ブチルヒドロキノンや3−t−ブチルヒドロキノンや3−フェニルヒドロキノンや3−クミルヒドロキノンや2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノンや2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノンや2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノンや2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノンなど、又は上述のビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せである。
【0034】
下記の式(VII)で表される2,2,2’,2’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ−[1H−インデン]−6,6’−ジオールのようなビスフェノール化合物も使用できる。
【0035】
【化7】

好ましいビスフェノール化合物はビスフェノールAである。
【0036】
典型的なカーボネート前駆体には、ハロゲン化カルボニル(例えば、塩化カルボニル(ホスゲン)及び臭化カルボニル)、ビス−ハロギ酸エステル(例えば、ビスフェノールAやヒドロキノンなどの二価フェノールのビス−ハロギ酸エステル、及びエチレングリコールやネオペンチルグリコールのようなグリコール類のビス−ハロギ酸エステル)、及びジフェノールカーボネートやジ(トリル)カーボネートやジ(ナフチル)カーボネートのようなジアリールカーボネートがある。界面反応用の好ましいカーボネート前駆体は塩化カルボニルである。
【0037】
また、ホモポリマーではなくカーボネートコポリマーの使用が所望される場合には、2種以上の二価フェノールの重合から得られるポリカーボネート、或いは二価フェノールとグリコール、ヒドロキシ−若しくは酸−末端停止ポリエステル、二塩基酸、ヒドロキシ酸又は脂肪族二酸とのコポリマーを使用することも可能である。一般に、有用な脂肪族二酸は約2〜約40の炭素原子を有する。好ましい脂肪族二酸はドデカン二酸である。
【0038】
枝分れポリカーボネート並びに線状ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートのブレンドも、本組成物中に使用できる。枝分れポリカーボネートは、重合時に枝分れ剤を添加することで製造できる。これらの枝分れ剤は、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、及び上述の枝分れ剤の1種以上を含む組合せであり得る3以上の官能基を含む多官能性有機化合物からなり得る。その具体例には、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビスフェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス(p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エチル)−α,α−(ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸など、又は上述の枝分れ剤の1種以上を含む組合せがある。枝分れ剤は、所定層中のポリカーボネートの全重量を基準にして約0.05〜約2.0重量%(wt%)のレベルで添加できる。
【0039】
一実施形態では、ポリカーボネートはジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの溶融重縮合反応で製造できる。ポリカーボネートを製造するために使用できる炭酸ジエステルの例は、ジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(o−ニトロフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなど、又は上述の炭酸ジエステルの1種以上を含む組合せである。好ましい炭酸ジエステルはジフェニルカーボネート又はビス(メチルサリチル)カーボネートである。
【0040】
好ましくは、ポリカーボネートの数平均分子量は約3000〜約1000000グラム/モル(g/mole)である。この範囲内では、約10000g/mole以上、好ましくは約20000g/mole以上、さらに好ましくは約25000g/mole以上の数平均分子量を有することが望ましい。また、約100000g/mole以下、好ましくは約75000g/mole以下、さらに好ましくは約50000g/mole以下、最も好ましくは約35000g/mole以下の分子量も望ましい。
【0041】
導電性組成物中には脂環式ポリエステルも使用でき、これらは一般にジオールのような有機ポリマー前駆体と二塩基酸又はその誘導体との反応で製造される。脂環式ポリエステルポリマーの製造で有用なジオールは、直鎖、枝分れ又は脂環式ジオール、好ましくは直鎖又は枝分れアルカンジオールであり、2〜12の炭素原子を含み得る。
【0042】
ジオールの好適な例には、エチレングリコール、プロピレングリコール(即ち、1,2−及び1,3−プロピレングリコール)、ブタンジオール(即ち、1,3−及び1,4−ブタンジオール)、ジエチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−及び1,5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(特にそのシス及びトランス異性体)、トリエチレングリコール、1,10−デカンジオール、並びに上述のものの任意の混合物がある。特に好ましいのは、ジメタノールビシクロオクタン、ジメタノールデカリン、脂環式ジオール又はその化学的同等物、及び特に1,4−シクロヘキサンジメタノール又はその化学的同等物である。ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用する場合には、約1:4〜約4:1のモル比でのシス及びトランス異性体の混合物を使用するのが一般に好ましい。この範囲内では、約1:3のシス−トランス異性体比を使用するのが一般に望ましい。
【0043】
脂環式ポリエステルポリマーの製造に有用な二酸は、飽和環内の飽和炭素にそれぞれ結合した2つのカルボキシル基を有するカルボン酸を含む脂肪族二酸である。脂環式酸の好適な例には、デカヒドロナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸及びビシクロオクタンジカルボン酸がある。好ましい脂環式二酸は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。ポリエステルが脂環式環を含む1種以上のモノマーを有する場合には、線状脂肪族二酸も有用である。線状脂肪族二酸の具体例は、コハク酸、アジピン酸、ジメチルコハク酸及びアゼライン酸である。脂環式ポリエステルを製造するためには、二酸及びジオールの混合物も使用できる。
【0044】
シクロヘキサンジカルボン酸及びその化学的同等物は、例えば、炭素又はアルミナからなる好適な担体上に担持された好適な触媒(例えば、ロジウム)を用いて、芳香族二酸及び対応する誘導体(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸又はナフタレン酸)を好適な溶媒(例えば、水又は酢酸)中において室温及び大気圧下で水素化することで製造できる。これらは、反応条件下で酸が少なくとも部分的に溶解し得る不活性液体媒質を使用すると共に、炭素又はシリカ中にパラジウム又はルテニウムを含んでなる触媒を使用することでも製造できる。
【0045】
通例、水素化中には、カルボン酸基がシス位又はトランス位にある2種以上の異性体が得られる。シス及びトランス異性体は、溶媒(例えば、n−ヘプタン)を使用し又は使用しない結晶化、或いは蒸留で分離できる。シス異性体は高い混和性を有する傾向がある一方、トランス異性体は高い融解温度及び結晶化温度を有していて特に好ましい。シス及びトランス異性体の混合物も使用できる。かかる混合物を使用する場合、トランス異性体がシス及びトランス異性体の合計重量を基準にして約75wt%以上を占め、シス異性体が残部をなすことが好ましい。異性体又は2種以上の二酸の混合物を使用する場合には、コポリエステル又は2種のポリエステルの混合物を脂環式ポリエステル樹脂として使用できる。
【0046】
脂環式ポリエステルの製造に際しては、エステルをはじめとする、これらの二酸の化学的同等物も使用できる。二酸の化学的同等物の好適な例は、アルキルエステル(例えば、ジアルキルエステル)、ジアリールエステル、無水物、酸塩化物、酸臭化物など、又は上述の化学的同等物の1種以上を含む組合せである。好ましい化学的同等物は脂環式二酸のジアルキルエステルからなり、最も好ましい化学的同等物は酸のジメチルエステル、特にジメチル−トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートからなる。
【0047】
ジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートはジメチルテレフタレートの環水素化で得ることができ、シス位及びトランス位にカルボン酸基を有する2種の異性体が得られる。異性体は分離することができ、トランス異性体が特に好ましい。上述のように異性体の混合物も使用できる。
【0048】
ポリエステルポリマーは、一般に、ジオール又はジオール化学的同等物成分のようなポリマー前駆体と二酸又は二酸化学的同等物成分との縮合重合又はエステル交換重合で得られ、下記の式(VIII)の繰返し単位を有する。
【0049】
【化8】

式中、R又はRの1以上がシクロアルキル基であることを条件にして、Rは炭素原子数2〜12の直鎖、枝分れ又は脂環式アルカンジオール又はその化学的同等物の残基である炭素原子数2〜12のアルキル基又はシクロアルキル基を表し、Rは二酸から導かれる脱炭酸残基であるアルキル基又は脂環式基である。
【0050】
好ましい脂環式ポリエステルは、下記の式(IX)の繰返し単位を有するポリ(1,4−シクロヘキサンジメタノール−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)である。
【0051】
【化9】

この場合、式(VIII)中のRはシクロヘキサン環であり、Rはシクロヘキサンジカルボキシレート又はその化学的同等物から導かれるシクロヘキサン環であり、そのシス異性体、トランス異性体、及びシス異性体とトランス異性体の混合物から選択される。脂環式ポリエステルポリマーは、一般に、適当量(通例は最終生成物の全重量を基準にして約50〜400ppmのチタン)の好適な触媒(例えば、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート)の存在下で製造できる。ポリ(1,4−シクロヘキサンジメタノール−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)は、一般にポリカーボネートと好適なブレンドを形成し得る。導電性組成物中には、芳香族ポリエステル又はポリアリーレートも使用できる。
【0052】
好ましくは、コポリエステルカーボネート又はポリエステルの数平均分子量は約3000〜約1000000g/moleである。この範囲内では、約10000g/mole以上、好ましくは約20000g/mole以上、さらに好ましくは約25000g/mole以上の数平均分子量を有することが望ましい。また、約100000g/mole以下、好ましくは約75000g/mole以下、さらに好ましくは約50000g/mole以下、最も好ましくは約35000g/mole以下の数平均分子量も望ましい。
【0053】
別の実施形態では、有機ポリマーはポリスチレンを含む。本明細書中で使用する「ポリスチレン」という用語は、バルク重合、懸濁重合及び乳化重合で製造され、下記の式(X)のモノマーから導かれる構造単位を有するポリマー前駆体を25重量%以上含むポリマーを包含する。
【0054】
【化10】

式中、Rは水素、低級アルキル又はハロゲンであり、Zはビニル、ハロゲン又は低級アルキルであり、pは0〜約5である。これらの樹脂には、スチレン、クロロスチレン及びビニルトルエンのホモポリマー、スチレンとアクリロニトリル、ブタジエン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸で例示される1種以上のモノマーとのランダムコポリマー、並びにブレンド及びグラフトからなるゴム変性ポリスチレン(ここで、ゴムはポリブタジエン又は約98〜70wt%のスチレンと約2〜30wt%のジエンモノマーとのゴム状コポリマーである)がある。ポリスチレンはあらゆる比率でポリフェニレンエーテルと混和可能であり、任意のかかるブレンドはポリマーの全重量を基準として約5〜約95wt%、大抵は約25〜約75wt%の量でポリスチレンを含み得る。
【0055】
さらに別の実施形態では、導電性組成物中の有機ポリマーとしてポリイミドを使用できる。有用な熱可塑性ポリイミドは、下記の一般式(XI)を有する。
【0056】
【化11】

式中、aは約10以上、さらに好ましくは約1000以上であり、Vはポリイミドの合成又は使用を妨げない限りは特に限定されない四価リンカーである。好適なリンカーには、(a)約5〜約50の炭素原子を有する置換又は非置換で飽和、不飽和又は芳香族の単環式及び多環式基、(b)1〜約30の炭素原子を有する置換又は非置換、線状又は枝分れ、飽和又は不飽和のアルキル基、或いはこれらの組合せがある。好適な置換基及び/又はリンカーには、特に限定されないが、、エーテル、エポキシド、アミド、エステル及びこれらの組合せがある。好ましいリンカーには、特に限定されないが、下記の式(XII)の四価芳香族基がある。
【0057】
【化12】

式中、Wは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−SO−、C2y−(yは1〜5の整数である。)及びこれらのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)からなる群から選択される二価部分、又は式−O−Z−O−の基である。ここで、−O−又は−O−Z−O−基の二価結合は3,3’位、3,4’位、4,3’位又は4,4’位にあり、Zは特に限定されないが下記の式(XIII)の二価基を含む。
【0058】
【化13】

式(XI)中のRは、(a)約6〜約20の炭素原子を有する芳香族炭化水素基及びこれらのハロゲン化誘導体、(b)約2〜約20の炭素原子を有する直鎖又は枝分れアルキレン基、(c)約3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキレン基、或いは(d)下記の一般式(XIV)の二価基のような置換又は非置換二価有機基を含む。
【0059】
【化14】

式中、Qは−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−SO−、C2y−(yは1〜5の整数である。)及びこれらのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)からなる群から選択される二価部分を含む。
【0060】
導電性組成物中に使用できる好ましい部類のポリイミドポリマーには、ポリアミドイミド及びポリエーテルイミド、特に溶融加工性を有するポリエーテルイミドがある。
【0061】
好ましいポリエーテルイミドポリマーは、下記の式(XV)の構造単位を2以上、好ましくは約10〜約1000以上、さらに好ましくは約10〜約500含んでいる。
【0062】
【化15】

式中、Tは−O−又は式−O−Z−O−の基である。ここで、−O−又は−O−Z−O−基の二価結合は3,3’位、3,4’位、4,3’位又は4,4’位にあり、Zは特に限定されないが上記に定義したような式(XIII)の二価基を含む。
【0063】
一実施形態では、ポリエーテルイミドは、上述のエーテルイミド単位に加えて、さらに下記の式(XVI)のポリイミド構造単位を含むコポリマーであり得る。
【0064】
【化16】

式中、Rは式(XI)に関して前記に定義した通りであり、Mは特に限定されないが下記の式(XVII)の基を含む。
【0065】
【化17】

ポリエーテルイミドは、下記の式(XVIII)の芳香族ビス(エーテルアンヒドリド)と下記の式(XIX)の有機ジアミンとの反応を含むいずれかの方法で製造できる。
【0066】
【化18】

【0067】
【化19】

式中、T及びRは式(XI)及び式(XIV)に関して上述したように定義される。
【0068】
式(XVIII)の芳香族ビス(エーテルアンヒドリド)の具体例には、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパンジアンヒドリド、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテルジアンヒドリド、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィドジアンヒドリド、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノンジアンヒドリド、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホンジアンヒドリド、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパンジアンヒドリド、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテルジアンヒドリド、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィドジアンヒドリド、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノンジアンヒドリド、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホンジアンヒドリド、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパンジアンヒドリド、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテルジアンヒドリド、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィドジアンヒドリド、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノンジアンヒドリド、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホンジアンヒドリド、及びこれらの各種混合物がある。
【0069】
ビス(エーテルアンヒドリド)は、双極性非プロトン性溶媒の存在下でニトロ置換フェニルジニトリルと二価フェノール化合物の金属塩との反応生成物を加水分解し、次いで脱水することで製造できる。上記の式(XVIII)で包括される芳香族ビス(エーテルアンヒドリド)の好ましい部類には、特に限定されないが、Tが下記の式(XX)を有する化合物が含まれる。
【0070】
【化20】

ここで、例えばエーテル結合は3,3’位、3,4’位、4,3’位又は4,4’位或いはこれらの混合物にあることが好ましく、Qは上記に定義した通りである。
【0071】
ポリイミド及び/又はポリエーテルイミドの製造に際しては任意のジアミノ化合物が使用できる。好適な化合物の例は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、N−メチル−ビス(3−アミノプロピル)アミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、ビス(3−アミノプロピル)スルフィド、1,4−シクロヘキサンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレンジアミン、5−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、1,5−ジアミノナフタレン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(2−クロロ−4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,4−ビス(b−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−b−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−b−メチル−o−アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p−b−メチル−o−アミノペンチル)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル及び1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンである。これらの化合物の混合物も存在し得る。好ましいジアミノ化合物は、芳香族ジアミン、特にm−及びp−フェニレンジアミン並びにこれらの混合物である。
【0072】
例示的な実施形態では、ポリエーテルイミド樹脂は、式(XV)の構造単位であって、各Rが独立にp−フェニレン又はm−フェニレン或いはこれらの混合物であると共にTが下記の式(XXI)の二価基である構造単位を含む。
【0073】
【化21】

一般に、式(XVIII)の無水物と式(XIX)のジアミンとを反応させるためには、o−ジクロロベンゼン、m−クレゾール/トルエンなどの溶媒を用いて約100〜約250℃の温度で反応を実施することができる。別法として、出発原料の混合物を攪拌しながら高温に加熱して式(XVIII)の芳香族ビス(エーテルアンヒドリド)及び式(XIX)のジアミンの溶融重合を行うことでポリエーテルイミドを製造できる。一般に、溶融重合では約200〜約400℃の温度が使用される。また、連鎖停止剤及び枝分れ剤を反応に使用することもできる。ポリエーテルイミド/ポリイミドコポリマーを使用する場合、ビス(エーテルアンヒドリド)と共に無水ピロメリト酸のような二無水物が使用される。ポリエーテルイミドポリマーは、任意には芳香族ビス(エーテルアンヒドリド)と有機ジアミンとの反応から製造できる。ここで、ジアミンは反応混合物中に約0.2モル過剰量以下、好ましくは約0.2モル過剰量未満で存在する。かかる条件下では、ポリエーテルイミド樹脂は、氷酢酸中に33重量%(wt%)の臭化水素酸を含む溶液でクロロホルム溶液を滴定することで示されるように、約15マイクロ当量/グラム(μeq/g)未満の酸滴定可能基、好ましくは約10μeq/g未満の酸滴定可能基を有する。酸滴定可能基は、本質的にポリエーテルイミド樹脂中のアミン末端基に由来している。
【0074】
一般に、有用なポリエーテルイミドは、6.6キログラム(kg)の重りを用いてAmerican Society for Testing Materials(ASTM)D1238に従い295℃で測定した場合に約0.1〜約10グラム/分(g/min)のメルトインデックスを有する。好ましい実施形態では、ポリエーテルイミド樹脂は、ポリスチレン標準を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合に約10000〜約150000グラム/モル(g/mole)の重量平均分子量(Mw)を有する。かかるポリエーテルイミドポリマーは、通例、25℃のm−クレゾール中で測定して約0.2デシリットル/グラム(dl/g)を超え、好ましくは約0.35〜約0.7dl/gの固有粘度を有する。
【0075】
さらに別の実施形態では、導電性組成物中の有機ポリマーとしてポリアミドを使用できる。ポリアミドは、一般に4〜12の炭素原子を有する有機ラクタムの重合で導かれる。好ましいラクタムは下記の式(XXII)で表される。
【0076】
【化22】

式中、nは約3〜約11である。極めて好ましいラクタムは、5に等しいnを有するε−カプロラクタムである。
【0077】
ポリアミドは、4〜12の炭素原子を有するアミノ酸から合成することもできる。好ましいアミノ酸は下記の式(XXIII)で表される。
【0078】
【化23】

式中、nは約3〜約11である。極めて好ましいアミノ酸は、5に等しいnを有するε−アミノカプロン酸である。
【0079】
ポリアミドは、4〜12の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸及び2〜12の炭素原子を有する脂肪族ジアミンから重合させることもできる。好適で好ましい脂肪族ジカルボン酸は、ポリエステルの合成に関して上述したものと同じである。好ましい脂肪族ジアミンは下記の式(XXIV)で表される。
【0080】
【化24】

式中、nは約2〜約12である。極めて好ましい脂肪族ジアミンは、ヘキサメチレンジアミン(HN(CH)NH)である。ジカルボン酸とジアミンとのモル比は約0.66〜約1.5であることが好ましい。この範囲内では、約0.81以上、好ましくは約0.96以上のモル比を使用することが一般に望ましい。やはりこの範囲内では、約1.22以下、好ましくは約1.04以下の量が望ましい。好ましいポリアミドは、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン6,12、ナイロン10など、又は上述のナイロンの1種以上を含む組合せである。
【0081】
4〜12の炭素原子を有する脂肪族ラクトン及び4〜12の炭素原子を有する脂肪族ラクタムからポリアミドエステルの合成を行うこともできる。脂肪族ラクトンはポリエステルの合成に関して上述したものと同じであり、脂肪族ラクタムはポリアミドの合成に関して上述したものと同じである。脂肪族ラクトンと脂肪族ラクタムとの比は、最終コポリマーの所望組成並びにラクトン及びラクタムの相対反応性に応じて広範囲に変化し得る。脂肪族ラクタムと脂肪族ラクトンとの現時点で好ましい初期モル比は約0.5〜約4である。この範囲内では、約1以上のモル比が望ましい。また、約2以下のモル比も望ましい。
【0082】
導電性前駆体組成物は、さらに触媒又は開始剤を含み得る。一般に、対応する熱重合に適した任意公知の触媒又は開始剤が使用できる。別法として、触媒又は開始剤なしに重合を行うこともできる。例えば、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジアミンからポリアミドを合成する際には、触媒は不要である。
【0083】
ラクタムからポリアミドを合成するための好適な触媒には、水、及び合成で使用する開環(加水分解)ラクタムに対応するω−アミノ酸がある。他の好適な触媒には、金属アルミニウムアルキレート(MAl(OR)H(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、RはC〜C12アルキルである。))、ジヒドロビス(2−メトキシエトキシ)アルミン酸ナトリウム、ジヒドロビス(tert−ブトキシ)アルミン酸リチウム、アルミニウムアルキレート(Al(OR)R(式中、RはC〜C12アルキルである。))、N−ナトリウムカプロラクタム、ε−カプロラクタムの塩化又は臭化マグネシウム塩(MgXC10NO、X=Br又はCl)、及びジアルコキシアルミニウムヒドリドがある。好適な開始剤には、イソフタロイルビスカプロラクタム、N−アセタールカプロラクタム、イソシアネート−ε−カプロラクタム付加物、アルコール(ROH(式中、RはC〜C12アルキルである。))、ジオール(HO−R−OH(式中、C〜C12アルキレンである。))、ω−アミノカプロン酸及びナトリウムメトキシドがある。
【0084】
ラクトン及びラクタムからポリアミドエステルを合成するための好適な触媒には、式LiAl(H)(R)(式中、xは約1〜約4であり、yは約0〜約3であり、x+yは4に等しく、RはC〜C12アルキル及びC〜C12アルコキシからなる群から選択される。)を有する水素化リチウムアルミニウム触媒のような金属水素化物化合物が含まれる。極めて好ましい触媒にはLiAl(H)(OR)(式中、RはC〜Cアルキルからなる群から選択される。)が含まれ、特に好ましい触媒はLiAl(H)(OC(OC(CH))である。他の好適な触媒及び開始剤には、ポリ(ε−カプロラクタム)及びポリ(ε−カプロラクトン)の重合に関して上述したものがある。
【0085】
有機ポリマーは、一般には導電性組成物中に約5〜約99.999重量%(wt%)の量で存在する。この範囲内では、組成物の全重量の約10wt%以上、好ましくは約30wt%以上、さらに好ましくは約50wt%以上の量で有機ポリマー又はポリマーブレンドを使用することが一般に望ましい。有機ポリマー又はポリマーブレンドはさらに、一般には組成物の全重量の約99.99wt%以下、好ましくは約99.5wt%以下、さらに好ましくは約99.3wt%以下の量で使用される。
【0086】
有機ポリマー前駆体は、導電性前駆体組成物中に約2〜約99.999重量%(wt%)の量で存在する。この範囲内では、導電性前駆体組成物の全重量の約10wt%以上、好ましくは約30wt%以上、さらに好ましくは約50wt%以上の量で有機ポリマー前駆体を使用することが一般に望ましい。さらに、有機ポリマー前駆体は一般に導電性前駆体組成物の全重量の約99.99wt%以下、好ましくは約99.5wt%以下、さらに好ましくは約99.3wt%以下の量で使用される。
【0087】
本組成物中に使用するSWNTは、黒鉛のレーザー蒸発、炭素アーク合成又は高圧一酸化炭素転化法(HIPCO法)で製造できる。これらのSWNTは、一般にグラフェンシートからなる単一の壁を有すると共に、約0.7〜約2.4ナノメートル(nm)の外径を有している。本組成物中には、約5以上、好ましくは約100以上、さらに好ましくは約1000以上のアスペクト比を有するSWNTが一般に使用される。SWNTは一般にそれぞれのチューブの各端に半球状のキャップを有する閉鎖構造物であるが、片側の開放端又は両側の開放端を有するSWNTも使用できることが想定されている。SWNTは一般に中空の中心部分を有するが、これは無定形炭素で満たされていてもよい。
【0088】
例示的な一実施形態では、有機ポリマー中にSWNTを分散させる目的は、SWNTのアスペクト比にできるだけ近い有効アスペクト比が得られるようにSWNTをほぐすことにある。有効アスペクト比とアスペクト比との比は、分散効率の尺度である。有効アスペクト比は、単一のSWNTの回転半径をそれぞれのナノチューブの外径で割って2倍した値である。有効アスペクト比とアスペクト比との比の平均値は、約10000以上の倍率の電子顕微鏡写真中で測定して約0.5以上、好ましくは約0.75以上、さらに好ましくは約0.90以上であることが一般に望ましい。
【0089】
一実施形態では、SWNTはロープ状凝集体として存在し得る。これらの凝集体は一般に「ロープ」と呼ばれ、個々のSWNT間のファンデルワールス力の結果として形成される。ロープ中の個々のナノチューブは、自由エネルギーを最小にするため、互いに滑動し得ると共に、ロープ中で再配列し得る。本組成物中には、一般に10〜10のナノチューブを有するロープが使用できる。この範囲内では、約100以上、好ましくは約500以上のナノチューブを有するロープを使用することが一般に望ましい。また、約10以下、好ましくは約5000以下のナノチューブを有するロープが望ましい。
【0090】
さらに別の実施形態では、SWNTロープは分散後に枝分れ状態で互いに結合していることが望ましい。これは、SWNTネットワークの枝同士がロープを共有することで有機ポリマー母材中に三次元ネットワークの形成をもたらす。この種のネットワーク中では、分岐点間の距離は約10nmないし約10マイクロメートルであり得る。SWNTは、2000ワット/メートル・ケルビン(W/m−K)以上の固有熱伝導率及び10ジーメンス/センチメートル(S/cm)の固有導電率を有することが一般に望ましい。また、SWNTは80ギガパスカル(GPa)以上の引張強さ及び約0.5テラパスカル(TPa)以上のこわさを有することも一般に望ましい。
【0091】
別の実施形態では、SWNTは金属ナノチューブと半導体ナノチューブとの混合物からなり得る。金属ナノチューブは金属と同様な電気的特性を示すものである一方、半導体ナノチューブは電気的に半導性のものである。一般に、グラフェンシートが巻き上がる様式に応じて様々ならせん構造のナノチューブが生じる。ジグザグ形及びアームチェア形ナノチューブが2つの可能な形状をなしている。本組成物中に使用するSWNTの量を最小にするためには、本組成物はできるだけ大きい分率の金属ナノチューブを含むことが一般に望ましい。本組成物中に使用するSWNTは、SWNTの全重量の約1wt%以上、好ましくは約20wt%以上、さらに好ましくは約30wt%以上、さらに一段と好ましくは約50wt%以上、最も好ましくは約99.9wt%以上の量で金属ナノチューブを含むことが一般に望ましい。ある種の状況下では、本組成物中に使用するSWNTは、SWNTの全重量の約1wt%以上、好ましくは約20wt%以上、さらに好ましくは約30wt%以上、さらに一段と好ましくは約50wt%以上、最も好ましくは約99.9wt%以上の量で半導体ナノチューブを含むことが一般に望ましい。
【0092】
SWNTは、一般に、望ましい場合には組成物の全重量の約0.001〜約80wt%の量で使用される。この範囲内では、SWNTは一般に組成物の全重量の約0.25wt%以上、好ましくは約0.5wt%以上、さらに好ましくは約1wt%以上の量で使用される。さらに、SWNTは一般に組成物の全重量の約30wt%以下、好ましくは約10wt%以下、さらに好ましくは約5wt%以下の量で使用される。
【0093】
一実施形態では、SWNTは製造関連不純物を含み得る。本明細書中に定義されるようなSWNT中に存在する製造関連不純物は、SWNTの製造に実質的に関係する方法中に生成される。上述の通り、SWNTは例えばレーザーアブレーション、化学蒸着、炭素アーク法、高圧一酸化炭素転化法などの方法で製造される。製造関連不純物は、上述の方法又は類似の製造方法によるSWNTの製造中に自然に生成され又は故意に生成される不純物である。自然に生成される製造関連不純物の好適な例は、SWNTの製造時に使用される触媒粒子である。故意に生成される製造関連不純物の好適な例は、製造プロセス中に少量の酸化剤を故意に添加することでSWNTの表面上に生成されるダングリングボンドである。
【0094】
製造関連不純物には、例えば、不良SWNT、多層カーボンナノチューブ、枝分れ又はコイル状多層カーボンナノチューブ、無定形炭素、すす、ナノオニオン、ナノホーン、コークスなどの炭素質反応副生物、製造プロセスで使用される触媒に由来する金属、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物などの触媒残留物、或いは上述の反応副生物の1種以上を含む組合せがある。SWNTの製造と実質的に関係するプロセスは、SWNTの分率が製造関連不純物のいかなる他の分率に比べても大きいプロセスである。プロセスがSWNTの製造と実質的に関係するためには、SWNTの分率は上述の反応副生物又は触媒残留物のいかなる1種の分率より大きくなければならないであろう。例えば、SWNTの分率は多層ナノチューブの分率、又はすすの分率、又はカーボンブラックの分率より大きくなければならないであろう。SWNTの製造に実質的に向けられていると考えるべきプロセスに関しては、SWNTの分率は製造関連不純物の任意の組合せの分率の和より大きい必要はないであろう。
【0095】
一般に、本組成物中に使用するSWNTは約0.1〜約80wt%の量の不純物を含み得る。この範囲内では、SWNTはSWNTの全重量の約1wt%以上、好ましくは約3wt%以上、好ましくは約7wt%以上、さらに好ましくは約8wt%以上の不純物含有量を有し得る。やはりこの範囲内では、SWNTの全重量の約50wt%以下、好ましくは約45wt%以下、さらに好ましくは約40wt%以下の不純物含有量が望ましい。
【0096】
一実施形態では、本組成物中に使用するSWNTは約0.1〜約50wt%の量の触媒残留物を含み得る。この範囲内では、SWNTはSWNTの全重量の約3wt%以上、好ましくは約7wt%以上、さらに好ましくは約8wt%以上の触媒残留物含有量を有し得る。やはりこの範囲内では、SWNTの全重量の約50wt%以下、好ましくは約45wt%以下、さらに好ましくは約40wt%以下の触媒残留物含有量が望ましい。
【0097】
ナノサイズ導電性充填材は、1以上の寸法が約1000nm以下のものである。ナノサイズ導電性充填材は一次元、二次元又は三次元のものであり得ると共に、粉末、引抜線、ストランド、繊維、チューブ、ナノチューブ、ホイスカー、フレーク、積層板、小板、楕円体、円板、長球などの形態、又は上述の形態の1以上を含む組合せで存在し得る。これらはフラクタル次元を有することもでき、質量フラクタル又は表面フラクタルの形態で存在し得る。
【0098】
ナノサイズ導電性充填材の好適な例は、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、気相法炭素繊維(VGCF)、カーボンブラック、黒鉛、導電性金属粒子、導電性金属酸化物、金属被覆充填材、ナノサイズ導電性有機/有機金属充填材、導電性ポリマーなど、及び上述のナノサイズ導電性充填材の1種以上を含む組合せである。一実施形態では、これらのナノサイズ導電性充填材はポリマー前駆体の重合中に導電性前駆体組成物に添加できる。別の実施形態では、製造中にナノサイズ導電性充填材を有機ポリマー及びSWNT組成物に添加することで導電性組成物が形成される。
【0099】
SWNTの製造に向けられていない、レーザーアブレーションや炭素アーク合成のような方法で得られるMWNTも、本組成物中に使用できる。MWNTは、内部中空コアの周囲に巻かれた2以上のグラフェン層を有している。MWNTの両端は一般に半球状キャップで閉鎖されているが、ただ1つの半球状キャップを有するMWNT又は両方のキャップをもたないMWNTを使用するのが望ましいこともある。MWNTは、一般に約2〜約50nmの直径を有している。この範囲内では、約40nm以下、好ましくは約30nm以下、さらに好ましくは約20nm以下の直径を有するMWNTを使用することが一般に望ましい。MWNTを使用する場合には、約5以上、好ましくは約100以上、さらに好ましくは約1000以上の平均アスペクト比を有することが好ましい。
【0100】
MWNTは、一般に、望ましい場合には導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物の全重量の約0.001〜約50wt%の量で使用される。この範囲内では、MWNTは一般に導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物の全重量の約0.25wt%以上、好ましくは約0.5wt%以上、さらに好ましくは約1wt%以上の量で使用される。さらに、MWNTは一般に導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物の全重量の約30wt%以下、好ましくは約10wt%以下、さらに好ましくは約5wt%以下の量で使用される。
【0101】
約3.5〜約2000ナノメートル(nm)の直径及び約5以上のアスペクト比を有する気相法炭素繊維又は小黒鉛性若しくは部分黒鉛性炭素繊維(気相法炭素繊維(VGCF)ともいう)も使用できる。VGCFを使用する場合には、約3.5〜約70nmの直径が好ましく、約3.5〜約50nmの直径がさらに好ましく、約3.5〜約25nmの直径が最も好ましい。また、約100以上、さらに好ましくは約1000以上の平均アスペクト比を有することも好ましい。
【0102】
VGCFは、一般に、望ましい場合には導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物の全重量の約0.001〜約50wt%の量で使用される。この範囲内では、VGCFは一般に導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物の全重量の約0.25wt%以上、好ましくは約0.5wt%以上、さらに好ましくは約1wt%以上の量で使用される。さらに、VGCFは一般に導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物の全重量の約30wt%以下、好ましくは約10wt%以下、さらに好ましくは約5wt%以下の量で使用される。
【0103】
導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物中に使用するSWNT及び他のカーボンナノチューブ(即ち、MWNTやVGCF)はいずれも、相容性を向上させて有機ポリマーとの混合を容易にするために官能基で誘導体化することができる。SWNT及び他のカーボンナノチューブは、側壁、半球状キャップ、又は側壁及び半球状キャップの両方を構成するグラフェンシートについて官能化できる。官能化されたSWNT及び他のカーボンナノチューブは、下記の式(XXV)を有するものである。
【0104】
【化25】

式中、nは整数であり、Lは0.1n未満の数であり、mは0.5n未満の数であり、各Rは同一であって、−SOH、−NH、−OH、−C(OH)R'、−CHO、−CN、−C(O)Cl、−C(O)SH、−C(O)OR'、−SR’、−SiR'、−Si(OR')R'(3−y)、−R”、−AlR'、ハライド、エチレン性不飽和官能基、エポキシ官能基などから選択される。上記式中、yは3以下の整数であり、R’は水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、アルカリール、アラルキル、シクロアリール、ポリ(アルキルエーテル)、ブロモ、クロロ、ヨード、フルオロ、アミノ、ヒドロキシル、チオ、ホスフィノ、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミド、カルボキシル、ヘテロシクリル、フェロセニル、ヘテロアリール、フルオロ置換アルキル、エステル、ケトン、カルボン酸、アルコール、フルオロ置換カルボン酸、フルオロアルキルトリフレートなどであり、R”はフルオロアルキル、フルオロアリール、フルオロシクロアルキル、フルオロアラルキル、シクロアリールなどである。炭素原子Cは、カーボンナノチューブの表面炭素である。均一置換及び不均一置換SWNT及び他のカーボンナノチューブのいずれでも、表面原子Cは反応する。
【0105】
不均一置換SWNT及び他のカーボンナノチューブも、導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物中に使用できる。これらの中には、上記に示した式(I)の組成物において、各Rが酸素を含まないか、又は各Rが含酸素基であればCOOHが存在しないことを条件にして、n、L、m、R及びSWNT自体が上記に定義した通りであるような組成物が含まれる。
【0106】
また、下記の式(XXVI)を有する官能化SWNT及び他のナノチューブも包含される。
【0107】
【化26】

式中、n、L、m、R’及びRは上記と同じ意味を有する。カーボンナノチューブの表面層中にある大抵の炭素原子は、底面炭素である。底面炭素は、化学的攻撃に対して比較的不活性である。例えば黒鉛面がカーボンナノチューブの周囲に完全に広がらなかったような欠陥部位には、黒鉛面の縁端炭素原子に類似した炭素原子が存在する。縁端炭素は反応性を有しており、炭素の原子価を満たすために何らかのヘテロ原子又は基を含まなければならない。
【0108】
上述の置換SWNT及び他のカーボンナノチューブは、有利にはさらに官能化することができる。かかるSWNT組成物には、下記の式(XXVII)の組成物がある。
【0109】
【化27】

式中、n、L及びmは上述の通りであり、Aは−OY、−NHY、−CR'−OY、−C(O)OY、−C(O)NR'Y、−C(O)SY及び−C(O)Yから選択される。上記式中、Yはタンパク質、ペプチド、酵素、抗体、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、抗原、酵素基質、酵素阻害剤、又は酵素基質の遷移状態類似体の適当な官能基であるか、或いは−R'OH、−R'NH、−R'SH、−R'CHO、−R'CN、−R'X、−R'SiR'、−RSi−(OR')−R'(3−y)、−R'Si−(O−SiR')−OR'、−R'−R”、−R'−NCO、(CO)Y、−(CO)H、−(CO)R’、−(CO)R’及びR”(式中、wは1を超えて200未満の整数である。)から選択される。
【0110】
構造(XXVI)の官能性SWNT及び他のカーボンナノチューブを官能化して、下記の式(XXVIII)を有するSWNT組成物を生成することもできる。
【0111】
【化28】

式中、n、L、m、R’及びAは上記に定義した通りである。
【0112】
導電性前駆体組成物及び導電性組成物には、特定の環式化合物を吸着させたSWNT及び他のカーボンナノチューブも包含され得る。これらの中には、下記の式(XXIX)のSWNT組成物も含まれる。
【0113】
【化29】

式中、nは整数であり、Lは0.1n未満の数であり、mは0.5n未満であり、aはゼロ又は10未満の数であり、Xは多環式芳香族部分、複素多環式芳香族部分又は金属複素多環式芳香族部分であり、Rは上述の通りである。好ましい環式化合物は、ポルフィリン類やフタロシアニン類のような平面状の大環状分子である。
【0114】
吸着した環式化合物を官能化することもできる。かかるSWNT組成物には、下記の式(XXX)の化合物が含まれる。
【0115】
【化30】

式中、m、n、L、a、X及びAは上記に定義した通りであり、炭素はSWNT又は他のナノチューブ(例えば、MWNT、VGCFなど)上にある。
【0116】
特定の理論に拘束されることはないが、官能化されたSWNT及び他のカーボンナノチューブは有機ポリマー中に一層よく分散する。これは、修正された表面特性がカーボンナノチューブと有機ポリマーとの相容性を向上させ得るためであるか、或いは修正された官能基(特にヒドロキシル基又はアミン基)が有機ポリマーに末端基として直接結合するためである。このようにして、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルイミドなどの有機ポリマーがカーボンナノチューブに直接結合するので、カーボンナノチューブは有機ポリマーに対する向上した付着性をもって容易に分散し得る。
【0117】
官能基は、一般に、SWNT及び他のカーボンナノチューブの表面を酸化するのに十分な時間にわたってそれぞれの外面を強酸化剤に接触させ、さらに酸化された表面に官能基を付加するのに適した反応体にそれぞれの外面を接触させることで、SWNT及び他のカーボンナノチューブの外面上に導入できる。好ましい酸化剤は、アルカリ金属塩素酸塩を強酸に溶解した溶液からなる。好ましいアルカリ金属塩素酸塩は、塩素酸ナトリウム又は塩素酸カリウムである。使用される好ましい強酸は硫酸である。酸化のために十分な時間は約0.5〜約24時間である。
【0118】
導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物中にはカーボンブラックも使用できる。好ましいカーボンブラックは、約100nm未満、好ましくは約70nm未満、さらに好ましくは約50nm未満の平均粒度を有するものである。好ましい導電性カーボンブラックはまた、約200平方メートル/グラム(m/g)を超え、好ましくは約400m/gを超え、さらに好ましくは約1000m/gを超える表面積を有し得る。好ましい導電性カーボンブラックは、約40立方センチメートル/100グラム(cm/100g)を超え、好ましくは約100cm/100gを超え、さらに好ましくは約150cm/100gを超える細孔容積(ジブチルフタレート吸着法)を有し得る。例示的なカーボンブラックには、Columbian Chemicals社からConductex(登録商標)の商品名で商業的に入手できるカーボンブラック、Chevron Chemical社からS.C.F.(Super Conductive furnace)及びE.C.F.(Electric Conductive furnace)の商品名で入手できるアセチレンブラック、Cabot Corp.からVulcan XC72及びBlack Pearlsの商品名で入手できるカーボンブラック、並びにAkzo Co.LtdからKetjen Black EC300及びEC600の商品名で商業的に入手できるカーボンブラックがある。好ましい導電性カーボンブラックは、導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物の全重量を基準にして約0.1〜約25wt%の量で使用できる。
【0119】
導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物中には、固体導電性金属充填材も任意に使用できる。これらは、これらを有機ポリマー中に混入する際、及びそれから完成物品を作製する際に使用する条件下で融解しない導電性金属又は合金であり得る。アルミニウム、銅、マグネシウム、クロム、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタン、及び上述の金属のいずれか1種を含む混合物のような金属が、導電性充填材として有機ポリマー中に混入できる。ステンレス鋼、青銅などの物理的混合物及び真の合金も、導電性充填材粒子として役立ち得る。加えて、これらの金属の(ホウ化物、炭化物などの)若干の金属間化合物(例えば、二ホウ化チタン)も、導電性充填材粒子として役立ち得る。酸化スズ、酸化インジウムスズなどの固体非金属導電性充填材粒子も、有機ポリマーを導電性にするため任意に添加できる。
【0120】
導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物中には、表面の実質的な部分を固体導電性金属の密着層で被覆した非導電性非金属充填材も任意に使用できる。非導電性非金属充填材は一般に基体といわれ、固体導電性金属の層で被覆した基体は「金属被覆充填材」といわれることがある。基体を被覆するためには、アルミニウム、銅、マグネシウム、クロム、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタン、及び上述の金属のいずれか1種を含む混合物のような典型的な導電性金属が使用できる。基体の例は当技術分野で公知であり、「Plastic Additives Handbook,5th Edition」、Hans Zweifel編、Carl Hanser Verlag Publishers、ミュンヘン、2001年に記載されたものがある。かかる基体の非限定的な例には、溶融シリカや結晶性シリカのようなシリカ粉末、窒化ホウ素粉末、ケイ酸ホウ素粉末、アルミナ、酸化マグネシウム(又はマグネシア)、ウォラストナイト(表面処理ウォラストナイトを含む)、(無水塩、二水塩又は三水塩としての)硫酸カルシウム、炭酸カルシウム(一般に粉砕粒子としてのチョーク、石灰石、大理石及び合成沈降炭酸カルシウムを含む)、タルク(繊維状タルク、モジュラータルク、針状タルク及び層状タルクを含む)、ガラス球(中空及び中実)、カオリン(硬質カオリン、軟質カオリン、か焼カオリン、及びポリマー母材樹脂との相容性を高めるため当技術分野で公知の各種被膜を有するカオリンを含む)、雲母、長石、ケイ酸塩球、煙じん、セノスフィア、フィライト、アルミノケイ酸塩(アルモスフィア)、天然ケイ砂、石英、ケイ石、パーライト、トリポリ、けいそう土、合成シリカ、及び上述のもののいずれか1種を含む混合物がある。上述の基体はいずれも、導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物中に使用するために金属材料の層で被覆できる。
【0121】
固体金属及び非金属導電性充填材粒子の正確な粒度、形状及び組成にかかわらず、これらは所望ならば導電性前駆体組成物及び/又は組成物の全重量の約0.001〜約50wt%の添加量で有機ポリマー中に分散させることができる。この範囲内では、導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物の全重量の約1wt%以上、好ましくは約1.5wt%以上、さらに好ましくは約2wt%以上の量で固体金属及び非金属導電性充填材粒子を使用することが一般に望ましい。固体金属及び非金属導電性充填材粒子の添加量は、導電性前駆体組成物及び/又は導電性組成物の全重量の40wt%以下、好ましくは約30wt%以下、さらに好ましくは約25wt%以下であり得る。
【0122】
導電性組成物中には、ナノサイズ導電性有機/有機金属充填材も使用できる。ここで論じる部類の導電性分子には、導電性ヘテロ−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ペリレン系導体、トープトフラーレン、遷移金属錯体及びメタロフタロシアニンがある。弱導電性ナノサイズ導電性有機/有機金属充填材の好適な例はフタロブルー(銅フタロシアニン)である。
【0123】
ナノサイズ導電性有機/有機金属充填材は、好ましくは組成物の全重量の0.0001〜約10wt%の量で使用される。一般には、ナノサイズ導電性有機/有機金属充填材は組成物の全重量の約0.0025wt%以上、好ましくは約0.05wt%以上、さらに好ましくは約0.1wt%以上の量で使用される。さらに、ナノサイズ導電性有機/有機金属充填材は組成物の全重量の約5wt%以下、好ましくは約2wt%以下、さらに好ましくは約1wt%以下の量で存在する。
【0124】
ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンなど、及び上述のものの1種以上を含む組合せのような導電性ポリマーも使用できる。導電性ポリマーは、一般に組成物の全重量の0.0001〜約10wt%の量で使用される。一般には、導電性ポリマーは組成物の全重量の約0.0025wt%以上、好ましくは約0.05wt%以上、さらに好ましくは約0.1wt%以上の量で使用される。さらに、導電性ポリマーは組成物の全重量の約5wt%以下、好ましくは約2wt%以下、さらに好ましくは約1wt%以下の量で存在する。
【0125】
導電性前駆体組成物の一製造方法では、有機ポリマー前駆体がSWNT組成物及び任意のナノサイズ導電性充填材と共に反応器内で混合される。導電性前駆体組成物は、所望ならば、水、トルエン、アセトン、クロロホルム、トリクロロエチレンなどの溶媒を含み得る。混合時間は一般に、SWNT及びナノサイズ導電性充填材を有機ポリマー前駆体中に分散させるため、又は有機ポリマー前駆体が反応して有機ポリマーを生成するため、又は有機ポリマー前駆体又は有機ポリマーがSWNTと反応するために十分なものにすべきである。有機ポリマー前駆体をSWNTと混合できる反応器の例は、押出機、バス(Buss)ニーダー、反応がま、タンブラー、ヘンシェル(Henschel)、ワーリング(Waring)ブレンダーなど、又は上述の反応器の1以上を含む組合せである。
【0126】
一実施形態では、有機ポリマー前駆体をSWNT及び他の任意充填材と混合し、所望期間にわたり貯蔵してから、同じ反応器又は異なる反応器内で有機ポリマー前駆体を反応させて有機ポリマーにすることができる。別の実施形態では、導電性前駆体組成物を反応器内で混合し、有機ポリマー前駆体を第一の段階で部分的に重合させてから、所望期間にわたり貯蔵することができる。次いで、導電性前駆体組成物に追加の重合段階を施して有機ポリマーの重合を完了させることができる。
【0127】
有機ポリマーは、製造関連不純物を含むSWNT及びカーボンブラックや固体金属導電性充填材粒子や固体非金属導電性充填材粒子のような他の任意所望の導電性充填材と共に、一般には、特に限定されないがメルトブレンディング、溶液ブレンディングなど、又は上述のブレンディング方法の1以上を含む組合せのような数種の方法で加工できる。組成物のメルトブレンディングは、剪断力、伸長力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、或いは上述の力又はエネルギー形態の1種以上を含む組合せの使用を伴い、単一のスクリュー、複数のスクリュー、かみ合った共転又は反転スクリュー、かみ合わない共転又は反転スクリュー、往復スクリュー、ピン付きスクリュー、スクリーン付きスクリュー、ピン付きバレル、ロール、ラム、らせん状ローター、又は上述のものの1以上を含む組合せで上述の力を及ぼす加工装置で実施される。
【0128】
上述の力を伴うメルトブレンディングは、特に限定されないが、一軸又は多軸押出機、超音波ホーンを備えた一軸又は多軸押出機、バスニーダー、ヘンシェル、ヘリコーン、ロス(Ross)ミキサー、バンバリー(Banbury)、ロールミル、成形機(例えば、射出成形機、真空成形機、吹込成形機など)、又は上述の機械の1以上を含む組合せのような機械で実施できる。
【0129】
一実施形態では、押出機又はバスニーダーのようなメルトブレンディング装置への供給に先立ち、粉末状、ペレット状、シート状などの有機ポリマーをまずヘンシェル又はロールミル内でSWNT及び(所望ならば)他の任意充填材とドライブレンドすることができる。メルトブレンディング装置での剪断力が有機ポリマー中へのSWNTの分散を全体的に引き起こすことが一般に望ましいが、メルトブレンディング操作中にSWNTのアスペクト比を保存することも望まれる。そうするためには、SWNT及び任意には他のナノサイズ導電性充填材をマスターバッチの形態でメルトブレンディング装置内に導入することが望ましい場合がある。かかる方法では、マスターバッチは有機ポリマーの下流側でメルトブレンディング装置内に導入すればよい。
【0130】
メルトブレンドは、ブレンディング操作中に、有機ポリマーの少なくとも一部が(樹脂が半結晶質有機ポリマーであれば)ほぼ融解温度以上の温度又は(樹脂が非晶質樹脂であれば)流動点(例えば、ガラス転移温度)以上の温度に達したものである。ドライブレンドは、ブレンディング操作中に、有機ポリマーの全体が(樹脂が半結晶質有機ポリマーであれば)ほぼ融解温度以下の温度又は(有機ポリマーが非晶質樹脂であれば)流動点以下の温度にあると共に、有機ポリマーが液体状流体を実質的に含まないものである。本明細書中に定義したような溶液ブレンドは、ブレンディング操作中に、有機ポリマーが液体状流体(例えば、溶媒又は非溶媒)中に懸濁されるものである。
【0131】
マスターバッチを使用する場合、SWNTはマスターバッチ中に約0.05〜約50wt%の量で存在し得る。この範囲内では、マスターバッチの全重量の約1.5wt%以上、好ましくは約2wt%以上、さらに好ましくは約2.5wt%以上の量でSWNTを使用することが一般に望ましい。また、マスターバッチの全重量の約30wt%以下、好ましくは約10wt%以下、さらに好ましくは約5wt%以下の量のSWNTが望ましい。マスターバッチの使用に関する一実施形態では、SWNTを含むマスターバッチは、ストランド状に押し出すか又はドッグボーン状に成形した場合に測定可能なバルク抵抗率又は表面抵抗率を有しないこともあるが、マスターバッチを混入して得られる組成物は、組成物中でのSWNTの重量分率がマスターバッチ中より低くても測定可能なバルク抵抗率又は表面抵抗率を有する。かかるマスターバッチ中の有機ポリマーは半結晶質であることが好ましい。これらの特性を示すと共に、マスターバッチ中で使用できる半結晶質有機ポリマーの例は、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルなど、又は上述の半結晶質有機ポリマーの1種以上を含む組合せである。
【0132】
有機ポリマーのブレンドを含む組成物の製造時におけるマスターバッチの使用に関する別の実施形態では、組成物の連続相をなす有機ポリマーと同じ有機ポリマーを含むマスターバッチを使用することが時には望ましい。このような構成は、組成物に所要の体積抵抗率及び表面抵抗率を付与するSWNTを連続相のみが担持するので、実質的に少ない割合のSWNT及び他のナノサイズ導電性充填材の使用を可能にする。ポリマーブレンド中でのマスターバッチの使用に関するさらに別の実施形態では、組成物中に使用するポリマーと化学的に異なる有機ポリマーを含むマスターバッチを使用することが望ましい場合がある。この場合、マスターバッチの有機ポリマーはブレンド中で連続相をなす。さらに別の実施形態では、多層ナノチューブ、気相法炭素繊維、カーボンブラック、導電性金属充填材、固体非金属導電性充填材など、又は上述のものの1種以上を含む組合せを組成物中に含む独立のマスターバッチを使用することが望ましい場合もある。
【0133】
有機ポリマー及びSWNTを含む組成物には、所望ならば、複数のブレンディング段階及び成形段階を施すことができる。例えば、まず組成物を押し出してペレットに成形できる。次いで、ペレットを成形機に供給し、そこで他の望ましい形状(例えば、コンピューター用ハウジング、静電塗装可能な自動車用パネル、など)に成形できる。別法として、単一のメルトブレンダーから得られる組成物をシート又はストランドに成形し、次いでアニール、一軸延伸又は二軸延伸のような押出後操作を施すこともできる。
【0134】
後加工の使用を伴う一実施形態では、メルトブレンドした組成物に、さらに約2〜約1000000の延伸比を用いた一軸方向の超延伸が施される。高い超延伸比は、一般に、非晶質領域中にSWNTを含むことができるシシカバブ状半結晶質組織の形成を容易にする。別の実施形態では、組成物にさらに一軸応力又は二軸応力を加えることで、約0.01〜約5000マイクロメートルの厚さを有するフィルムが製造される。フィルムが半結晶質有機ポリマーを含む場合には、延伸フィルムはθ=約0度ないしθ=約80度の方位角方向に配向した結晶を有することが一般に望ましい。メルトブレンディング後の後加工に関するさらに別の実施形態では、ブレンディング後に、組成物が融点より約1〜約100℃低い温度に約2分間ないし約2時間にわたり過冷却される。過冷却した組成物は、一般に、SWNTを含む巨視的な半結晶質組織(例えば、球晶)を有し得る。
【0135】
半結晶質ポリマー中では、SWNTは核生成剤として挙動することがある。組成物の強度を向上させるためには、微結晶をSWNT上に核生成させることが望ましい場合がある。一般に、微結晶の1wt%以上、好ましくは10wt%以上、さらに好ましくは15wt%以上をSWNT上に核生成させることが望ましい。核生成剤の使用に関する例示的な実施形態では、核生成剤(カーボンナノチューブ核生成剤及び他の核生成剤の両方)の使用がカーボンナノチューブを含む組成物の電気的性能を向上させるように作用し得ることが認められた。結晶構造の形成方法を変えることで、導電性の高いネットワークを生み出すことができる。次いで、導電性ネットワークはさらに連続的な構造を形成することができ、これが核生成剤を含まない類似の組成物より低い電気抵抗を示す。
【0136】
溶液ブレンディングを用いて組成物を製造することもできる。溶液ブレンディングでは、剪断、圧縮、超音波振動などの追加エネルギーを用いて、SWNTと有機ポリマーとの均質化を促進することもできる。一実施形態では、流体中に懸濁した有機ポリマーをSWNTと共に超音波処理装置内に導入できる。混合物は、SWNTを有機ポリマー粒子上に分散させるのに有効な時間の超音波処理で溶液ブレンドすることができる。次いで、所望ならば、有機ポリマーをSWNTと共に乾燥し、押し出し、成形できる。流体は超音波処理操作中に有機ポリマーを膨潤させることが一般に望ましい。有機ポリマーを膨潤させることは、一般に、溶液ブレンディング操作中にSWNTが有機ポリマーに浸透する能力を高め、結果として分散を向上させる。
【0137】
溶液ブレンディングに関する別の実施形態では、SWNTが有機ポリマー前駆体と共に超音波振動数で超音波処理される。有機ポリマー前駆体は、反応して有機ポリマーを生成し得るモノマー、ダイマー、トライマーなどであり得る。SWNT及び有機ポリマー前駆体と共に、溶媒のような流体を超音波処理装置内に任意に導入できる。超音波処理の時間は、一般に、有機ポリマー前駆体によるSWNTの封入を促進するのに有効な長さである。封入後、有機ポリマー前駆体を重合させることで、内部にSWNTが分散した有機ポリマーを生成させる。このようにして有機ポリマー中にSWNTを分散させる方法は、SWNTのアスペクト比の保存を助け、したがって組成物はSWNTの低い添加量で導電性を発現できる。別法として、封入されたSWNTを含む重合樹脂をマスターバッチとして使用すること、即ち、追加の有機ポリマーとブレンドすることもできる。さらに別の実施形態では、有機ポリマー、有機ポリマー前駆体、任意の流体及びSWNT組成物の混合物を超音波処理してSWNTを封入し、次いで有機ポリマー前駆体を重合させる。
【0138】
一実施形態では、SWNT及び他の所望ナノサイズ導電性充填材を、溶媒のような流体とブレンドして超音波処理することができる。超音波処理後、SWNT及び他のナノサイズ導電性充填材を乾燥してメルトブレンド又は溶液ブレンドすることで導電性組成物を形成できる。別の実施形態では、SWNT及び他の所望ナノサイズ導電性充填材を、溶媒のような流体とブレンドして超音波処理することができる。超音波処理後、SWNT及び他のナノサイズ導電性充填材をメルトブレンド又は溶液ブレンドすることで導電性組成物を形成できる。SWNTをナノサイズ導電性充填材と共に超音波処理する方法は、SWNTと他のナノサイズ導電性充填材との相互作用の確率を高めることができる。これは、導電性組成物を得るために使用できる導電性充填材(SWNT及びナノサイズ導電性充填材)の重量分率の低下をもたらす。
【0139】
このような封入及び分散方法を容易にするために使用できる有機ポリマー前駆体の好適な例は、特に限定されないが、ポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリウレタン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂の合成で使用するものである。一般に、上述の混合物を約1分間ないし約24時間超音波処理することが望ましい。この範囲内では、約5分以上、好ましくは約10分以上、さらに好ましくは約15分以上の時間にわたり混合物を超音波処理することが望ましい。やはりこの範囲内では、約15時間以下、好ましくは約10時間以下、さらに好ましくは約5時間以下の時間が望ましい。
【0140】
一実施形態では、高い分率の不純物を含むSWNT組成物は、低い分率の不純物を含むSWNT組成物より低いエネルギーを用いて分散させることができる。理論によって限定されることはないが、ある種の有機ポリマー中では、不純物は相互作用してファンデルワールス力の低下を促進し、それによって有機ポリマー中へのナノチューブの分散を一層容易にすると考えられる。
【0141】
別の実施形態では、高い分率の不純物を含むSWNT組成物は、低い分率の不純物を含む組成物より大きい混合量を要求することがある。しかし、低い分率の不純物を含むSWNTを有する組成物は一般に追加の混合後に導電性を失うのに対し、高い分率のSWNT不純物を含む組成物は一般に混合量の増加に伴って導電性が高まる。これらの組成物は、優れたバランスの流動性、耐衝撃性及び導電性を必要とする用途で使用できる。これらはまた、導電性材料を使用すると共に、導電性材料が非常に低いレベルの導電性充填材を含む用途、例えば燃料電池、静電塗装用途などの用途でも使用できる。
【0142】
上述の組成物は、広範囲の様々な商業的用途で使用できる。これらは、静電消散から保護する必要のあるコンピューター、電子製品、半導体部品、回路板などの電子機材を包装するためのフィルムとして有利に使用できる。これらは、コンピューターの外部に位置する従業員及び他の電子部品に対する電磁遮蔽をもたらすため、並びに内部のコンピューター部品を他の外部電磁干渉から保護するため、コンピューター及び他の電子製品の内部で使用することもできる。これらは、所望ならば静電塗装できる自動車の内部部品及び外部部品用の車体パネルでも有利に使用できる。
【実施例】
【0143】
例示的なものであって限定的なものではない以下の実施例は、本明細書中に記載した導電性組成物の様々な実施形態の若干例に係る組成物及び製造方法を例示している。
【0144】
実施例1
この実施例では、(Sonics & Materials Incorporated(米国)から入手できるプローブ直径13mmの600ワット超音波処理装置を使用しながら)80%の振幅で超音波処理ホーンを用いて、10wt%の不純物を含むSWNT(約10mg)をイソプロパノール(100ml)中で20分間超音波処理した。次いで、適当量のKetjen Black粉末(Akzo社から商業的に入手できるカーボンブラック)を分散液に添加し、混合物をさらにわずか30%の振幅で2分間超音波処理して導電性混合物を形成した。カーボンブラックは約30〜約50nmの粒度を有していた。次いで、カーボンブラック及びSWNT分散液を室温で乾燥した。正確に測定した量の導電性混合物を1,2−ジクロロエタン中の5wt%ポリカーボネート溶液(50ml)に添加し、30%の振幅で軽く2分間超音波処理した。使用したポリカーボネートは、General Electric Companyから商業的に入手できるPC175であった。
【0145】
次いで、ポリカーボネート、カーボンブラック及びSWNTを含む混合物を室温で乾燥し、190℃で4時間のアニールを施した。次いで、カーボンブラック及びSWNTを含むポリカーボネート複合物を小規模溶融押出機(Atlas Materials Testing Solutions社(米国)製の実験室用混合成形装置)を用いて280℃で押し出した。
【0146】
ストランドを液体窒素下で破断し、破断した両端を導電性銀ペイントで被覆した。次いで、電圧計を用いて試料の抵抗率を測定し、表1に示す。
【0147】
【表1】


表1から、カーボンブラック及びカーボンナノチューブの組合せを含む試料は、一般に同じ重量分率のカーボンブラックのみを含む試料より低い抵抗率を有することがわかる。これは、ナノサイズ導電性充填材とSWNTとの間に協力関係が存在することを表している。表1からはまた、導電性組成物中のSWNTの重量%が増加するのに伴い、導電性組成物中での総充填材添加量(SWNT及びカーボンブラック)にかかわらず抵抗率が低下することもわかる。このような協力作用は、SWNT添加量に対してKetjen Blackをプロットした図1で実証される。図1は、カーボンブラック含有量を減少させながらSWNT含有量を増加させると共に導電率が低下することを実証している。
【0148】
実施例2
この実施例は、SWNTとナノサイズ導電性充填材との協力作用をMWNT及びカーボンブラックのような他の導電性配合物と比べて実証するために実施した。この実施例では、10wt%のSWNT及び90wt%のカーボンブラックを含む導電性充填材組成物をポリフェニレンエーテル−ポリアミド組成物とメルトブレンドした。ポリフェニレンエーテル−ポリアミド組成物は表2に示す。
【0149】
標準的なポリフェニレンエーテル−ポリアミド導電性組成物(試料23)を対照品として使用した。ポリフェニレンエーテル−ポリアミド組成物は、表2に詳述するようにして製造した。表からわかる通り、ポリフェニレンエーテルはクエン酸、ヨウ化第二銅、ヨウ化カリウム、耐衝撃性改良剤(Kraton G 1651及びG 1701X)と共に主フィーダーを通して押出機に加えた。ポリアミドはバレル1〜4に取り付けた副フィーダーを通して加えた一方、導電性配合物はバレル2〜7に取り付けた副フィーダーを通して加えた。0.6wt%の多層カーボンナノチューブ(MWNT)及び1.4wt%のカーボンブラック(Akzo社から商業的に入手できるKetjen Black)を含む比較組成物(試料26)を製造し、この実施例中の他のすべての試料と同様に試験した。導電率の測定は実施例1と同様にして行った。
【0150】
【表2】


押出しのために使用した押出機は、下記表3に示す温度をもった10のバレルを有する標準的な三ローブ型スクリュー−バレル押出機であった。スクリュー速度は600rpmに設定した。
【0151】
【表3】


電気抵抗率に関する結果を表4に示す。
【0152】
【表4】


表4からわかる通り、SWNT及びナノサイズ導電性充填材(例えば、カーボンブラック)を含む組成物は、カーボンブラック又はMWNTのみ或いはカーボンブラックとSWNTの組合せを含む組成物に比べて組成物の導電率を顕著に高める協力作用を示す。
【0153】
上述のように、表4の組成物の導電性を図2中で標準的な導電性ポリフェニレンエーテル−ポリアミド組成物と比較した。図からわかる通り、マスターバッチアプローチを用いて製造した組成物(例えば、試料24及び25)の導電性は、MWNTを含む標準的な導電性組成物より2桁以上低い電気抵抗率を示す。
【0154】
実施例3
この実施例では、SWNTをMWNTと組み合わせて導電性組成物を製造した。有機ポリマーはポリカーボネートであった。各種試料の製造に関する説明を以下に示す。各種組成物の性質を表5に示す。
【0155】
試料1〜6
押出温度は285℃であった。スクリュー速度(rpm)は150であった。押出機内での混合時間は3分であった。試料を製造するためには、15wt%の(Hyperion Catalysis社から商業的に入手できる)MWNTを含むポリカーボネートマスターバッチを純ポリカーボネートとドライブレンドすることで、表5に示すようなポリカーボネート中のMWNT濃度を得た。5ニュートン−メートル(Nm)のトルクレベルが得られるまで、ブレンド混合物をDACA小型二軸押出機(TSE)に加えた。これは一般に約15〜約30秒を要し、DACA押出機は完全に装填された。次いで、混合物を3分間ブレンドしてストランドを形成した。ポリカーボネート中のMWNTが2wt%未満では、導電率は測定できない。
【0156】
試料7〜9
押出温度は285℃であった。スクリュー速度(rpm)は150であった。押出機内での混合時間は3分であった。試料を製造するためには、Carbon Nanotechnologies Inc(CNI)から入手したSWNTをポリカーボネートとドライブレンドすることで所定の濃度を得た。SWNT/ポリカーボネート複合物は、MWNT/ポリカーボネート複合物より大幅に高い性能を示す。1wt%のMWNTを含む組成物は導電性を示さないが、ポリカーボネート中に1wt%のSWNTを含む組成物をドライブレンドして押し出したものは7500Ω−cmの体積抵抗率を有している。
【0157】
試料10〜15
これらの試料は、試料1〜6及び試料7〜9と異なる方法で製造した。各試料用のSWNTを高出力超音波処理装置の使用でクロロホルム中に分散させた。超音波処理は、SWNTの好適な分散を達成するため、又はファンデルワールス力で強く結合したSWNTの束を分離するために行った。50%の振幅及び20キロヘルツ(kHz)の振動数で400ワットの出力を用いてSWNTをクロロホルム中に30分間分散させた。次いで、適当量のポリカーボネートを添加することで、表5に示すようなポリカーボネート中のSWNT濃度を得た。次いで、この混合物をさらに30分間超音波処理した。次いで、クロロホルムを蒸発させてから、混合物を真空乾燥して微粉砕した後、DACA小型TSEで押し出した。5Nmのトルクレベルが得られるまで、粉末をDACA小型TSEに加えた。これは一般に約15〜約30秒を要し、DACA押出機は完全に装填された。次いで、混合物を3分間ブレンドしてストランドを形成した。実施例1に詳述したようにして電気抵抗率を測定した。表5に示す通り、このようなSWNT分散方法を用いることで最低の体積抵抗率(最高の導電率)が得られる。ポリカーボネート中における0.1wt%のSWNT添加量で導電率が測定可能である。1wt%のSWNT添加量では、体積抵抗率は9.39Ω−cmと測定された。押出しに先立ってドライブレンディングのみを施した場合、1wt%のSWNTを含む同様な組成物は上述のように7500Ω−cmの体積抵抗率を示した。ポリカーボネート中にMWNTを使用した場合、測定可能な体積抵抗率は認められなかった。
【0158】
試料16〜20
これら5種の試料を製造するためには、CNI社からのSWNTをHyperion社からのMWNTマスターバッチとドライブレンドすることで、表5に示すSWNT及びMWNTの所定濃度を得た。次いで、試料1〜6に関して上記に詳述した方法と同様にして試料を押し出した。データが示す通り、MWNT/ポリカーボネート複合物に少量のSWNT(0.2又は0.5wt%)を添加することは体積抵抗率を低下させる(又は導電率を高める)。ここで注目すべき点は、ドライブレンディングで製造した場合、0.5wt%又は0.2wt%のSWNTのブレンドは導電性を示さないことである。SWNTを添加しない場合、MWNT/ポリカーボネートのブレンドの導電性はそれほど高くない。3wt%MWNT/ポリカーボネートブレンドは96Ω−cmの体積抵抗率を有している。0.5wt%のSWNTを添加すると、体積抵抗率は43Ω−cm、即ちほぼ半分に低下する。
【0159】
試料21〜29
高出力超音波処理装置の使用でSWNTをクロロホルム中に分散させた。これは、SWNTの十分な分散を達成するため、又はファンデルワールス力で強く結合したSWNTの束を分離するために行った。50%の振幅及び20kHzの振動数で400ワットの出力を用いてSWNTをクロロホルム中に30分間分散させた。次いで、適当量のポリカーボネートを添加することで、表5に示すようなポリカーボネート中のSWNT濃度を得た。次いで、この混合物をさらに30分間超音波処理した。次いで、クロロホルムを蒸発させてから、混合物を真空乾燥して微粉砕した後、DACA小型TSEで押し出した。次いで、この粉末をMWNT/ポリカーボネートマスターバッチと混合することで、ポリカーボネート中に所定のSWNT及びMWNT濃度を得た。試料21は非常に興味深い結果を示している。1wt%MWNT/ポリカーボネートブレンド(例えば、試料1)は導電性試料を与えないが、十分に分散させたSWNTを0.2wt%で添加した場合、体積抵抗率は709Ω−cmに低下する(低い体積抵抗率は高い導電率に等しい)。MWNTを含まない0.2wt%SWNT/ポリカーボネートのブレンドは1512Ω−cmの体積抵抗率しか示さない(試料11)。したがって、十分に分散させたSWNTをMWNT/ポリカーボネートブレンドに少量添加した場合には導電率の実質的な向上が起こる。
【0160】
【表5】


かくして上述の実施例からは、SWNTとナノサイズ導電性充填材との組合せは、向上した電気的性質を有する導電性組成物を生み出す協力作用を示すことがはっきりとわかる。特に、これらの電気的性質は、いずれか1種の導電性充填材を同じ重量分率で含む導電性組成物より優れている。
【0161】
有機ポリマー、SWNT及びナノサイズ導電性充填材を含む導電性組成物は、一般に、同様な有機ポリマー及びいずれか1種の導電性充填材を含む導電性組成物に比べて10%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上向上した導電率を有する。これらの組成物は、自動車の外部車体パネル、包装などで有利に使用できる。
【0162】
実施例4
この実施例は、SWNT及びナノサイズ有機/有機金属充填材が協力的に作用して導電性組成物の導電率を向上させることを実証するために実施した。添加剤を含む溶媒中で、10wt%の量の不純物を含むSWNTを超音波処理した。2種の溶媒(ジクロロエタン及びクロロホルム)を超音波処理のために使用した。次いで、ポリカーボネート粉末を超音波処理装置に加え、ポリカーボネート−SWNT混合物を40分間超音波処理した。混合物を1晩乾燥し、次いであらゆる痕跡量の溶媒を除去するために200℃で乾燥した。次いで、ポリカーボネート−SWNT混合物をストランド状に押し出し、実施例1に詳述したようにして電気抵抗率の測定を行った。詳細を表6に示す。
【0163】
【表6】


対照試料(試料1)及び他の試料(試料2)は共に0.3wt%のSWNTを含んでいた。表6からわかる通り、ナノサイズ有機/有機金属充填材を含む試料2は、ナノサイズ導電性有機/有機金属充填材を含まない試料より優れた導電性(低い抵抗率)を示す。
【0164】
以上、例示的な実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更及び同等物による構成要素の置換を行い得ることが理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明はこの発明を実施するために想定される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】高いSWNT添加量におけるSWNTとカーボンブラックとの協力作用を示すグラフである。
【図2】表4の試料の体積抵抗率を対照組成物と共に示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマー前駆体、
0.1wt%以上の製造関連不純物を含む単層ナノチューブ組成物、及び
任意のナノサイズ導電性充填材
を含んでなる導電性前駆体組成物。
【請求項2】
有機ポリマー前駆体を重合させて熱可塑性ポリマーにすることができ、熱可塑性ポリマーがポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド、ポリキノキサリン、ポリベンゾイミダゾール、ポリオキシンドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリジン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリアンヒドリド、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリ尿素、ポリホスファゼン、ポリシラザン、又は上述の有機ポリマーの1種以上を含む組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
有機ポリマー前駆体が、約40以下の繰返し単位を有するモノマー、ダイマー、トライマー又はオリゴマー反応性化学種である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
有機ポリマー前駆体組成物がさらに溶媒を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
単層カーボンナノチューブ組成物が約10wt%以下の不純物を含み、不純物が鉄、酸化鉄、イットリウム、カドミウム、ニッケル、コバルト、銅、すす、無定形炭素、多層カーボンナノチューブ、又は上述の不純物の1種以上を含む組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
単層カーボンナノチューブ組成物が約80wt%以下の不純物を含み、不純物が鉄、酸化鉄、イットリウム、カドミウム、ニッケル、コバルト、銅、すす、無定形炭素、多層カーボンナノチューブ、又は上述の不純物の1種以上を含む組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ナノサイズ導電性充填材の1以上の寸法が約100ナノメートル以下であり、ナノサイズ導電性充填材がカーボンブラック、多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維、導電性金属粒子、導電性金属酸化物、金属被覆充填材、ナノサイズ導電性有機/有機金属充填材、導電性ポリマー、又は上述の充填材の1種以上を含む組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
金属被覆充填材及び導電性金属粒子がアルミニウム、銅、マグネシウム、クロム、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタン、又は上述の金属の1種以上を含む組合せを含む、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
有機ポリマー、
0.1wt%以上の製造関連不純物を含む単層ナノチューブ組成物、及び
ナノサイズ導電性充填材
を含んでなる導電性組成物。
【請求項10】
有機ポリマーがポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド、ポリキノキサリン、ポリベンゾイミダゾール、ポリオキシンドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリジン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリアンヒドリド、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリ尿素、ポリホスファゼン、ポリシラザン、又は上述の有機ポリマーの1種以上を含む組合せである、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
単層カーボンナノチューブ組成物が約10wt%以下の不純物を含み、不純物が鉄、酸化鉄、イットリウム、カドミウム、ニッケル、コバルト、銅、すす、ナノオニオン、ナノホーン、無定形炭素、多層カーボンナノチューブ、又は上述の不純物の1種以上を含む組合せである、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
単層カーボンナノチューブ組成物が約80wt%以下の不純物を含み、不純物が鉄、酸化鉄、イットリウム、カドミウム、ニッケル、コバルト、銅、すす、ナノオニオン、ナノホーン、無定形炭素、多層カーボンナノチューブ、又は上述の不純物の1種以上を含む組合せである、請求項9記載の組成物。
【請求項13】
ナノサイズ導電性充填材の1以上の寸法が約100ナノメートル以下である、請求項9記載の組成物。
【請求項14】
ナノサイズ導電性充填材がカーボンブラック、多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維、導電性金属粒子、導電性金属酸化物、金属被覆充填材、ナノサイズ導電性有機/有機金属充填材、導電性ポリマー、又は上述の充填材の1種以上を含む組合せである、請求項9記載の組成物。
【請求項15】
金属被覆充填材及び導電性金属粒子がアルミニウム、銅、マグネシウム、クロム、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタン、又は上述の金属の1種以上を含む組合せを含む、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
金属被覆充填材がシリカ粉末、窒化ホウ素粉末、ケイ化ホウ素粉末、アルミナ、酸化マグネシウム、ウォラストナイト、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、雲母、長石、ケイ酸塩球、煙じん、セノスフィア、フィライト、アルミノケイ酸塩、砂、石英、けい石、パーライト、トリポリ、けいそう土、合成シリカ、又は上述の充填材の1種以上を含む組合せである、請求項14記載の組成物。
【請求項17】
導電性組成物の製造方法であって、
約10Ω−cm以下の体積抵抗率及び約5キロジュール/平方メートル以上のノッチ付きアイゾット衝撃強さを組成物に付与するのに有効なやり方で有機ポリマー、単層カーボンナノチューブ組成物及びナノサイズ導電性充填材をブレンドする
ことを含んでなる方法。
【請求項18】
ブレンドすることが、メルトブレンディング、溶液ブレンディング、又は上述のブレンディング方法の1以上を含む組合せからなる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
導電性組成物のブレンディングが、剪断力、伸長力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、又は上述の力及びエネルギーの1種以上を含む組合せの使用を伴い、単一のスクリュー、複数のスクリュー、かみ合った共転又は反転スクリュー、かみ合わない共転又は反転スクリュー、往復スクリュー、ピン付きスクリュー、ピン付きバレル、スクリーンパック、ロール、ラム、らせん状ローター、或いは上述のものの1以上を含む組合せで上述の力を及ぼす加工装置内で実施される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
請求項1記載の組成物から製造される物品。
【請求項21】
請求項9記載の組成物から製造される物品。
【請求項22】
請求項17記載の方法で製造される物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−507562(P2007−507562A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528099(P2006−528099)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/030864
【国際公開番号】WO2005/034144
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】