説明

導電性粘着シート

【課題】シートの表面は粘着性であり粘着剤を使用することなく貼り付けることができ、筐体間等に挟み込み良好な電気的接続を得ることができ、取り付け時に作業性が良好な導電性粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の導電性粘着シート10は、弾性高分子に導電性磁性粉が含有されており、前記導電性磁性粉が前記シート中で厚み方向に配向し相互に接触した状態の複数の導電部位1と、これらの導電部位を相互に絶縁保持する絶縁部2とを含み、導電性粘着シート10の硬さは針入度で10以上100以下であり、表面粘着力はボールタック力でボールタックNo.4以上No.20以下の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの厚さ方向に導電性を有する導電性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、カーナビゲーション等の電子機器類から放射される電磁波ノイズによる他の電子機器の誤動作や、人体への影響といった電磁波障害が近年問題となっている。また電子機器類には電波を発する無線部品の搭載が進み、放送電波や全地球測位システム(GPS)電波の受信に障害が発生じるなど不都合が多く生じている。その対策として、機器にはこれらの障害を防止する目的でシールド部品や多層回路基板や基板上の部品を覆うように実装する構造を採用したり、筺体そのものを導電性にすることでシールド性を持たせる技術を多く採用したりしている。しかし、これらの工法や導電部品の使用だけでは電波障害対策が充分でなく、さまざまなシールド性を補強した部品類が多く開発され、その対策に用いられている。
【0003】
従来、このような用途に用いる、導電性シートとしてはさまざまな構造のものが知られている。例えば、金属粒子をゴム中に均一に分散した導電性シート(特許文献1)、導電性粉を高分子材料中に分散させることにより、シートの厚み方向に伸びる多数の導電回路とこれらを相互に絶縁する絶縁部が形成されてなる導電性シート(特許文献2)、異方導電シートの導電部と絶縁部との間に段差が形成された異方導電性シート(特許文献3)、接着性向上剤を含む異方導電性シート(特許文献4)などが提案されている。これらの異方導電性シートは弾性の高分子からなる絶縁基材中に導電性粒子が厚み方向に並ぶように配向された状態で含有されており、多数の導電性粒子の接触による連鎖により導電路が形成されている。
【0004】
これらの導電性シートを用い電位差のある電気回路や金属筐体間に挟み込み、加圧して電気的接続を行う場合には筐体表面などに導電性シートを固定する必要がある。しかし、必要な導電性を得るために導電性フィラーを多量に高分子材料に混合、充填するとシート表面がサラサラな状態となり、表面の粘着性は著しく低下してしまい表面の粘着性は犠牲になってしまう。これらシート表面がサラサラな導電シートを筐体に粘着固定する場合には、シート表面にあらかじめ粘着剤などを塗布した粘着部分を形成する必要がある。さらに、金属粒子をゴム中に均一に大量に分散混合した導電性シートは高額な導電性フィラーを多量に充填するので導電性シートが高額になってしまうという問題があった。さらに、これら製品は強度が低く導電シートがちぎれてしまい裂けやすく、再使用できずリペア作業性が困難であるという問題がある。
【特許文献1】特開昭51−93393号公報
【特許文献2】特開昭53−147772号公報
【特許文献3】特開昭61−250906号公報
【特許文献4】特開2006−335926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、シートの表面は粘着性であり粘着剤を使用することなく貼り付けることができ、筐体間等に挟み込み良好な電気的接続を得ることができ、取り付け時に作業性が良好な導電性粘着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導電性粘着シートは、弾性高分子に導電性磁性粉が含有されている導電性粘着シートであって、前記導電性磁性粉が前記シート中で厚み方向に配向し相互に接触した状態の複数の導電部位と、これらの導電部位を相互に絶縁保持する絶縁部とを含み、前記導電性粘着シートの硬さは針入度で10以上100以下であり、表面粘着力はボールタック力でボールタックNo.4以上No.20以下の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、導電性磁性粉が集合してシートの厚さ方向に電気を導通する部分と、前記弾性高分子による絶縁部を含み、硬さは針入度で10以上100以下であり、表面粘着力はボールタック力でボールタックNo.5〜No.11の範囲であることにより、シートの表面は粘着性であり、筐体間に挟み込み良好な電気的接続を得ることができ、取り付け時に作業性が良好な導電性粘着シートを提供できる。すなわち、シートの厚み方向に電気導電性があるため、筐体間に挟みこんだ際に相互を電気的に導通することが可能となる。さらには、導電性磁性粉の集合体部分以外のシート表面の弾性高分子部分は粘着性を有しているので、その粘着力により筐体間を両面テープで接合した様な接合状態になり、筐体が受ける振動や衝撃などの外部要因に対して、粘着剤などを塗布すること無く良好な粘着性を示し、かつ良好な電気導電性を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の異方導電性粘着シートは、弾性高分子材料中に導電性磁性粉が配列し集合体として配置去れる部分を含むシートであって、その導電性磁性粉の集合体はシート状の厚み方向に貫通して配列している。シート内の導電路は導電性磁性粉が配列し集合体として配置されているので導電性に必要最小限度の導電性磁性粉を使用する。さらに、シート内の導電性磁性粉の配列、集合体の位置、密度などを希望する電気特性に合わせて自由に設計することができる。さらに、導電性磁性粉が集合していないその他のゴム部分の表面は、ゴム自体の粘着性を有する。導電性粘着シートの厚みは0.10mm〜0.5mm、特に好ましくは0.10mm〜0.30mmである。以下、各部材について説明する。
【0009】
導電性磁性粉が含有されている導電性粘着シートの前記弾性高分子材料としては、イソプレン系ゴム、ブタジエン系ゴム、スチレンブタジエン系ゴム、クロロプレン系ゴム、二トリル系ゴム、ブチル系ゴム、エチレンプロピレン系ゴム、アクリル系ゴム、ウレタン系ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ポリエステル系ゴム、スチレンブタジエン系ゴムなどがある。これらの高分子材料はシート成型時において導電性磁性粉を適宜混合する都合上、液体又は流動性を有することが重要である。常温時は液状で、加熱により硬化してシート成型ができることが必要であるので、常温時に固体であっても、シート成型時には流動性となり、シート成型が可能な高分子材料であれば使用することができる。好ましくは、液状のシリコーンゴムのうち、付加反応型液状シリコーンゴムである。この付加反応型液状シリコーンゴムは、ビニル基とSi−H結合との反応によって硬化するもので、ビニル基を含むポリシロキサンとSi−H結合を含むポリシロキサンからなるA、Bパーツの2成分型が多く市販されている。
【0010】
付加反応型液状シリコーンゴムはシート成型後、架橋構造になり、耐久性、耐熱性など求められる特性面から好ましいものである。用途によっては、弾力性は高くても低くても良いし粘着性が高いものや低いものでも良い。これらの弾性高分子材料は、前記の例に制限されることは無く選択される。本発明の付加反応型液状シリコーンゴムは、常温(25℃)における粘度が5P〜300Pのものを用いることが好ましい、さらに好ましくは20P〜200Pのものである。付加反応型液状シリコーンゴムの粘度が5P未満であるときは、シートを成型する場合に導電性磁性粉がシリコーンゴムの中で沈降してしまい、磁場を作用させたときに、導電性磁性粉が配列し集合体として配置し導電連鎖を成型することが困難になる。一方、この粘度が200Pを超えると、シートを成型する際に磁場を作用させたときに、導電性磁性粉が配列し集合体として配置し導電連鎖を成型することが困難になる。付加反応型液状シリコーンゴムの硬化後の常温(25℃)における針入度は10〜100のものを用いることが好まく、さらに好ましくは25〜70(ASTM D1403 1/4コーン)である。
【0011】
付加反応型液状シリコーンゴムの針入度が10未満であると、導電性粘着シートは粘着力が弱くなり、電子機器類の組み立て作業時に筺体や基板に導電性粘着シートを固定することができない。一方、針入度が100を超えると導電性粘着シートが加圧されたときは導電性磁性粉の配列し集合体として配置された導電部分が過度に柔らかく導電路を保持できなくなり、且つ、極端にひずみやすくなりこちらも導電路を保持できなくなる。また極度に柔らかい為すぐに裂けて取り扱いが極めて困難になる。針入度は測定方法ASTM D1403に準拠して測定する。このような特性を有する付加反応型液状シリコーンゴムとしてはCY52−276(製品名、東レダウコーニング株式会社製)として市販されているものを用いることができる。
【0012】
弾性高分子材料中に混合し、シート中に磁気で配列し集合体として配置して存在する導電性磁性粉としては、略球状の粒子が好ましい。また、強磁性特性を有し、且つ、表面は導電性を有する粉体である。材質は単一の磁性体金属であっても良いし、他の金属との合金や複合粒子であっても良い。芯材が無機材料で、表面のみが磁性体金属で覆われた被覆タイプの粒子でも良い。このような導電性磁性粉としては、ニッケル、鉄、コバルトなどの強磁性の金属粒子又はこれらを含む合金の粒子、又はこれらの粒子の表面に金、パラジュウム、銀、錫等をメッキしたもの、又はこれらの合金をメッキ法などで表面を被覆したもの、又は非磁性金属粉又は樹脂、ガラス、炭素粉等を核材にした粒子に前記のメッキを施し導電性磁性粉としたものでも良い。より好ましくは、強磁性体であるニッケル粒子を核材とし、その表面に導電性に優れた金メッキを施したものが好ましい。核材の表面に金メッキ等で被覆する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば無電解メッキにより行うことができる。グラファイト粉を核材にしてニッケルメッキを施したのち、前記方法により、その導電性に優れる金メッキを施したものも導電性磁性粉とすることができる。
【0013】
導電性磁性粉の平均粒子径は、1μm〜300μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜150μmである。また導電性磁性粉の粒子径の分布は、60μm〜100μmであることが好ましい。加圧変形により導電性磁性粉どうし容易に電気的接触が得られる形状であれば良く、弾性高分子材料中に容易に混合、分散することができるという視点から球状又は星型状、機雷状、コンペイトウ状であることが好ましい。導電性磁性粉の粒子径はレーザー回析分析法によって測定する。
【0014】
導電性磁性粉の表面はシランカップリング剤などのカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。導電性磁性粉の表面をシランカップリング剤で処理することにより、導電性磁性粉と弾性高分子材料の接着性が向上し、その結果、導電性粘着シート中の導電性磁性粉の集合体の配置が崩れることなく、安定した導電特性の導電性粘着シートとなる。シランカップリング剤の種類及び、導電性磁性粉への処理方法、処理量は導電性に影響を与えない範囲で適宜選択される。シランカップリング剤の種類は導電性磁性粉の表面処理の種類と弾性高分子材料の種類を考慮して適宜選択される。このような特性を有するシランカップリング剤としてはプライマーD(製品名、東レダウコーニング株式会社製)として市販されているものを用いることができる。シランカップリング剤の処理量はシランカップリング剤の最小被覆面積であることが好ましい。導電部をシート中に配列し、集合体として配置され、弾性を有し、導電性を維持し、且つ、導電性粘着シートの表面粘着性を維持するためにシランカップリング剤による表面処理は重要である。
【0015】
導電性粘着シートの片面表層部には導電性メッシュを配置するのが好ましい。この導電性繊維状織物の素材は、導電性または絶縁性素材から選ばれ、導電性素材として、たとえば銅線、リン青銅線、真鍮線、ニッケル線、タングステン線などの太さ10〜30μmの金属細線から選ばれる。または銅やニッケルなどの導電体をメッキ、蒸着した導電性の太さ10〜30μm細線から選んでもよい。また絶縁性素材は絶縁性高分子体から選ばれ、たとえばナイロン線、ポリエステル線、PET線などの太さ10〜60μ、の細線から選ばれる。または銅やニッケルなどの導電体をメッキ、蒸着した導電性の太さ10〜60μm細線から選んでもよい。それらを平織りや綾織りなどで平面状に織られたものを使用する。導電性メッシュ織物を使用すると、例えば図2の態様は製品の導電性の安定化が向上することから好ましい。図3の態様では必ずしも導電性は必要ではなく、非導電性のポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維を使用したメッシュ織物を使用しても良い。
【0016】
導電性粘着シートの成型は、例えば次の様にして製造することができる。図5は本発明の一実施例における導電性粘着シートを製造するための磁気成型金型の概略断面図である。付加反応型液状シリコーンゴム中に導電性磁性粉を分散した配合物を作成したのち、この配合物27を磁気成型金型20に注入する。この磁気成型金型20は、磁性材部21と非磁性材部22からなる上金型23と、磁性材部24と非磁性材部25からなる下金型26とで構成されている。
【0017】
図6は磁気成型金型20を使用した磁気成型機30を示す断面図である。この磁気成型機30は、電磁コア材31に電磁コイル32が巻かれており、電磁コイル32に通電することにより、電磁コア材31に所定方向の磁気配向力を付与する。磁気成型金型20の下側及び/又は上側には加熱ヒーター33を有する熱板34を加熱して磁気成型金型20を加熱する。また、磁気成型金型20に加圧を加えるプレス機構35を備えている。
【0018】
付加反応型液状シリコーンゴム中に導電性磁性粉を分散した配合物27をこの磁気成型機30の中に入れ、電磁コイル32に通電することにより、磁気を配合物27の厚み方向に作用させる。その結果、当該配合物27中に分散されている導電性磁気粉は金型内の強磁気部分に磁気により集合すると共に、厚み方向に並んで配列する。この状態において、磁気成型機の熱板34を昇温し、配合物27を熱硬化させる。
【0019】
図1Aは本発明の一実施例における導電性粘着シート10の断面図、図1Bは同平面図である。図1A−Bに示すように付加反応型液状シリコーンゴム中に導電性磁性粉が密に集合された部分(導通部)1と、付加反応型液状シリコーンゴム中に全くあるいは殆ど存在しないゴム部分(絶縁部)2とを有する。この導電性粘着シートの硬化条件は、使用する、付加反応型液状シリコーンゴムの種類によって適宜選択されるが、通常は加熱硬化により硬化する。室温硬化型シリコーンゴムも使用できる。具体的な温度、圧力、時間、導電性磁性粉の配合量による加熱硬化条件などを考慮して同様に適宜選択される。
【0020】
導電性磁性粉が配列し集合体として配置している導電部の導電性磁性粉は、導電性高分子材料100体積%に対して10〜21体積%が好ましい。この割合が10体積%未満の場合には、充分な電気伝導性が得られないことがあり。一方、この割合が21体積%を超えると、導電部が脆く機械的物性が低くなる。さらに導電部として必要な弾力性と復元性が得られない傾向となる。
【0021】
導電粘着シートの厚み方向の電気抵抗は、ガラスエポキシ基板上に金メッキを施した平らな電極に平行に挟んだ状態で30gr/mm2の荷重で加圧した状態において0.5Ω以下であることが好ましい。
【0022】
導電性粘着シートの硬さは針入度が10〜100である。針入度が10未満ではシートの粘着力は弱く、電子機器類の組み立て作業時に筺体や基板にシートを固定することができない。100を超えるとシートが加圧されたとき、導電性磁性粉の集合体部分が柔らかく圧縮によって導電路を保持できない。好ましい針入度は30〜75である。さらに好ましくは25〜75である。
【0023】
異方導電性粘着シートの表面粘着力はボールタック力がNo.4〜No.20である。より好ましくはボールタック力No.5〜No.11の範囲である。ボールタック力がNo.4未満ではシートの粘着力が弱くなり電子機器類の組み立て作業時にシートを固定することができない。ボールタック力が20を超えるとシートの粘着力が強いシートとなり、組立て作業時に作業が困難になる。ボールタック力の測定方法はJIS−Z0237で、傾斜板の角度は30度とした。
【0024】
図2A−B、図3A−Bはいずれも本発明の別の実施例における導電性メッシュ織物を導電性粘着シートの片面表層部に配置した例である。図2Aは導電性繊維状織物の構成繊維糸(経糸及び/又は緯糸)3を導電性粘着シート11の片面表層部であってかつ導通部1に配置した断面図、図2Bは同平面図である。図3Aは導電性繊維状織物の構成繊維糸(経糸及び/又は緯糸)3を異方導電性粘着シート12の片面表層部であってかつ絶縁部2に配置した断面図、図3Bは同平面図である。このように、導電性粘着シートの片面に導電性メッシュ織物を一体化すると、その面は非粘着面となり、他の面のみが粘着性を有し、取り扱い性の良好な導電性粘着シートとなる。
【0025】
図4は本発明のさらに別の実施例における片面に非粘着層4を形成した導電性粘着シート13の断面図である。非粘着層4は、一例として液状で1分子中に3個のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン等の架橋剤をポリエステルフィルムから配合物シートの片面の表面に転写させ加熱することにより、架橋密度が高い状態で架橋される。このようにしても取り扱い性は向上する。
【実施例】
【0026】
以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0027】
(実施例1)
平均粒径80μmの60重量%ニッケル・グラファイト導電性磁性粉(ニッケル60重量%、グラファイト粉40重量%、グラファイト粉を核材にして無電解ニッケルメッキを施した粉)100重量%に対して、プライマーD(商品名、東レダウコーニング株式会社製)0.1重量%で表面処理した粉を作成した。次に前記フィラーをシリコーンゴム、CY52−276(製品名、東レダウコーニング株式会社製)100重量%に対し2.5重量%混合したのち、該配合物を真空状態にて配合物中の空気を抜き、配合物1を作成した。
【0028】
次にこの配合物1を0.1mm厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み、0.22mmの厚さに圧延してシート成型した後、図5に示す磁気成型金型に入れ、図6に示す磁気成型機で、まず電磁コイルに直流電源から0.6アンペア(A),13.5ボルト(V)の電気を通電させ導電性磁性粉を集合配列させた。次に、所定の位置までプレス機を閉じた。このとき所定の位置までプレス機が稼働しシートを挟み込んだ。厳密にはプレス機の自重で加圧されているが、積極的な圧力は掛かっていない状態であった。その後、配合物シートを温度80℃で20分間加熱硬化した。その後、両面のPETフィルムを剥ぎ取り、厚さ0.2mmのシートを得た。得られたシートは図1A−Bに示すとおりであり、導電粒子集合体は1mmピッチで面方向にマトリクス状に配置しており、集合体の大きさは直径0.75mmφの円状であり、10mm2あたりの抵抗値は5%圧縮時に400mΩ、針入度は55、ボールタック力はボールタックNo.7であった。
【0029】
(実施例2)
平均粒径40μmの15重量%銀・ニッケル導電性磁性粉(銀15重量%、ニッケル粉85重量%、ニッケル粉を核材にして銀メッキを施した粉)100重量%に対してプライマーD(商品名、東レダウコーニング株式会社製)0.1重量%で表面処理した粉を作成した。次に前記フィラーをシリコーンゴム、CY52−276(製品名、東レダウコーニング株式会社製)100重量%に対し90重量%を混合したのち、該配合物を真空状態にて配合物中の空気を抜き、配合物2を作成した。
【0030】
次にこの配合物2を0.1mm厚さ、ポリエチレンテレフタレートフィルムに挟み0.22mmに圧延した後、実施例1と同様に磁気成型金型に入れ磁気成型機で80℃、20分間加熱硬化し、両面のフィルムを剥ぎ取り、厚さ0.2mmのシートを得た。得られたシートは図1A−Bに示すとおりであり、導電粒子集合体は1mmピッチで面方向にマトリクス状に配置しており、集合体の大きさは0.70mmの円状であり、10mm2あたりの電気抵抗値は、5%圧縮時で100mΩであり、針入度は63であり、ボールタック力はボールタックNo.7であった。
【0031】
(実施例3)
平均粒径40μmの15重量%銀・ニッケル導電性磁性粉(銀15重量%、ニッケル粉85重量%、ニッケル粉を核材にして銀メッキを施した粉)100重量%に対してプライマーD(商品名、東レダウコーニング株式会社製)0.1重量%で表面処理した粉を作成した。次に前記フィラーをシリコーンゴム、CY52−276(製品名、東レダウコーニング株式会社製)100重量%に対し30重量%を混合したのち、該配合物を真空状態にて配合物中の空気を抜き、厚さ0.2mmの配合物シート3を作成した。
【0032】
この配合物シート3の一方の面にプライマー(東レダウコーニング株式会社製、製品名プライマーD)を刷毛塗り後、常温で充分乾燥し、プライマー塗布面に導電性繊維状織物(セーレン社製品名、“Su−10−33”、糸素材:PETの表面にCuをメッキ厚み62μm、表面抵抗0.02Ω/Sq)を配置させて押し込んだ。次に0.1mm厚さ、ポリエチレンテレフタレートフィルムで両面からに挟み、実施例1と同様に磁気成型金型に入れ磁気成型機で80℃、20分間加熱硬化し、両面のフィルムを剥ぎ取り、厚さ0.56mmのシートを得た。得られたシートは図2A−Bに示すとおりであり、導電粒子集合体は1mmピッチで面方向にマトリクス状に配置していた。また、集合体の大きさは0.55mmの円状であり、10mm2あたりの電気抵抗値は5%圧縮時に600mΩであった。針入度は63であった。また、導電性繊維状織物を貼り付けていない反対の面のボールタック力はNo.5であった。片面のみ粘着性を有し、取り扱い性の良好な導電性粘着性シートとなった。
【0033】
(実施例4)
平均粒径80μmの60重量%ニッケル・グラファイト導電性磁性粉(ニッケル60重量%、グラファイト粉40重量%、グラファイト粉を核材にして無電解ニッケルメッキを施した粉)100重量%に対してプライマーD(商品名、東レダウコーニング株式会社製)0.1重量%で表面処理した粉を作成した。次に前記フィラーをシリコーンゴム、CY52−276(製品名、東レダウコーニング株式会社製)100重量%に対し2.5重量%を混合したのち、該配合物を真空状態にて配合物中の空気を抜き配合物4を作成した。
【0034】
次に、片面のみ架橋密度を上げた導電性粘着性シートを次のように作成した。液状で1分子中に3個のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にスクリーン印刷機を用い厚さ10μmに塗布した処理フィルムを準備した。前記配合物4をこの処理フィルムの上に載せ、もう片面には厚み0.10mmのポリエチレンテレフタレートフィルムを被せて挟み、厚さ0.5mmのシートに圧延した。次いで、実施例1と同様に磁気成型金型に入れ磁気成型機で80℃、20分間加熱硬化し、両面のフィルムを剥ぎ取り、厚さ0.5mmのシートを得た。得られたシートは図4に示すとおりであり、導電粒子集合体は1mmピッチで面方向にマトリクス状に配置しており、集合体の大きさは0.75mmの円状であり、10mm2あたりの電気抵抗値は5%圧縮時に400mΩであり、針入度は63であった。また、架橋密度を上げた面(非粘着層4)と反対の面のボールタック力はNo.3であった。片面のみ粘着性を有する導電性粘着性シートとなった。非粘着層4は、前記液状で1分子中に3個のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンがポリエステルフィルムから配合物シートの片面の表面に転写され、濃度が高い状態で架橋されることにより形成されている。このようにしても取り扱い性は向上する。
【0035】
以上のようにして得られた実施例1〜4の導電性粘着シートを用い、電位差のある電気回路や金属筐体間に挟み込み、加圧して電気的接続を行う場合に筐体表面などに簡単に導電性シートを固定することができ、作業に都合の良い導電性粘着シートを得られた。また、これらの異方導電性粘着シートを用い電位差のある電気回路や金属筐体間に挟み込み、加圧して電気的接続を行うに適した導電性シートを得ることができ、さらに作業に都合の良い導電性シートが得られた。
【0036】
以上説明したとおり、本発明の導電性粘着シートは、導電性を得るために導電性フィラーを多量にシート内に混合、充填していない。したがって、粘着シートの表面は充分に粘着性がある。また、導電性粒子が配列し集合体として配置されており、導電性粒子の接触による連鎖で電気伝導性を有し、且つ、シートの表面は筐体に粘着固定する充分な粘着力を有する。本発明の異方導電性粘着シートは、粘着性を発現する為の粘着剤などを塗布する必要なく、又、弾性高分子材料中に大量に金属粒子を分散する必要も無く充分な電気伝導性を得ることができる。固定を目的とした粘着力と電気伝導性を備えた導電性粘着シートとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1Aは本発明の一実施例における導電性粘着シートの断面図、図1Bは同平面図である。
【図2】図2Aは本発明の別の実施例における導電性繊維状織物を導電性粘着シートの片面表層部であってかつ導通部に配置した断面図、図2Bは同平面図である。
【図3】図3Aは本発明のさらに別の実施例における導電性繊維状織物を導電性粘着シートの片面表層部であってかつ絶縁部に配置した断面図、図3Bは同平面図である。
【図4】図4は本発明のさらに別の実施例における片面に非粘着層を形成した導電性粘着シートの断面図である。
【図5】図5は本発明の一実施例における導電性粘着シートを製造するための磁気成型金型の概略断面図である。
【図6】図6は同、図5の磁気成型金型を使用した磁気成型機を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 導電性磁性粉が密に集合された部分(導通部)
2 ゴム部分(絶縁部)
3 導電性メッシュ織物の構成繊維糸
4 非粘着層
10,11,12,13 導電性粘着シート
20 磁気成型金型
21,24 磁性材部
22,25 非磁性材部
23 上金型
26 下金型
27 配合物
30 磁気成型機
31 電磁コア材
32 電磁コイル
33 加熱ヒーター
34 熱板
35 プレス機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性高分子に導電性磁性粉が含有されている導電性粘着シートであって、
前記導電性磁性粉が前記シート中で厚み方向に配向し相互に接触した状態の複数の導電部位と、これらの導電部位を相互に絶縁保持する絶縁部とを含み、
前記導電性粘着シートの硬さは針入度で10以上100以下であり、
表面粘着力はボールタック力でボールタックNo.4以上No.20以下の範囲であることを特徴とする導電性粘着シート。
【請求項2】
前記導電部位の導電性磁性粉の存在割合は、弾性高分子100体積%に対して10〜21体積%の範囲である請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項3】
前記導電性磁性粉は、直径1μm〜300μmの略球形の粉体である請求項1又は2に記載の導電性粘着シート。
【請求項4】
前記導電性磁性粉は、弾性高分子100重量部中に2.5重量部以上90重量部以下含む請求項1〜3のいずれかに記載の導電性粘着シート。
【請求項5】
前記導電性磁性粉の表面は導電性の防食処理が施されている請求項1〜4のいずれかに記載の導電性粘着シート。
【請求項6】
前記導電性磁性粉の表面はシランカップリング剤処理されている請求項1〜5のいずれかに記載の導電性粘着シート。
【請求項7】
前記導電粘着シートの厚み方向の電気抵抗は、ガラスエポキシ基板上に金メッキを施した平らな電極に平行に挟んだ状態で、かつ30gr/mm2の荷重で加圧した状態において0.5Ω以下である請求項1〜6のいずれかに記載の導電性粘着シート。
【請求項8】
前記導電性粘着シートの硬さは針入度が25〜75である請求項1〜7のいずれかに記載の導電性粘着シート。
【請求項9】
前記導電性粘着シートの表面粘着力はボールタック力でNo.5〜No.11の範囲である請求項1〜8のいずれかに記載の導電性粘着シート。
【請求項10】
前記導電性粘着シートの片面表層部に、さらに導電性繊維状織物を配置した請求項1〜9のいずれかに記載の導電性粘着シート。
【請求項11】
前記導電性粘着シートの片面表層部に、さらに架橋密度を上げた非粘着層を形成した請求項1〜9のいずれかに記載の導電性粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−65188(P2010−65188A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234869(P2008−234869)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000237422)富士高分子工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】