説明

導電性粘着テープ

【課題】長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮できる導電性粘着テープを提供する。
【解決手段】金属箔の片面側に粘着剤層を有する粘着テープであって、下記の恒温恒湿試験において測定される、初期(0時間後)の抵抗値が1Ω以下であり、かつ1500時間後の抵抗値が初期の抵抗値の5倍以下であることを特徴とする。[恒温恒湿試験]導電性粘着テープを貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキに貼付し、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽中で、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流し、前記貼付部分の抵抗値を連続的に測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粘着テープに関する。より詳しくは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途等に使用するための導電性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粘着テープは電気伝導性(特に、厚み方向の電気伝導性)を有し、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電磁波シールド用途等に利用されている。このような導電性粘着テープとしては、従来、例えば、金属箔と該金属箔の片面に設けた粘着剤層(感圧性接着剤層)とからなり、上記金属箔の粘着剤層被覆側には上記粘着剤層を貫通し、かつその先端に端子部を持つ導通部が設けられた導電性粘着テープ(例えば、特許文献1〜4参照)や、ニッケル粉などの導電性フィラーが分散された粘着剤層が金属箔上に設けられた導電性粘着テープ(例えば、特許文献5、6参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−46980号公報
【特許文献2】特開平8−185714号公報
【特許文献3】特開平10−292155号公報
【特許文献4】特開平11−302615号公報
【特許文献5】特開2004−263030号公報
【特許文献6】特開2005−277145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電子機器の高機能化や使用態様の多様化に伴って、このような電子機器等に使用される導電性粘着テープには、より長い期間、より過酷な環境条件下で使用された場合であっても、安定した電気伝導性を発揮することが要求されるようになってきている。しかしながら、上記電子機器の内部配線等に上述の導電性粘着テープを用いた場合、導電性粘着テープを貼付した部分の接触抵抗が徐々に高くなり、電気伝導性が経時で低下するという問題が生じていた。このように、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用において、安定した電気伝導性を発揮できる導電性粘着テープは得られていないのが現状である。
【0005】
従って、本発明の目的は、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮できる導電性粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、特定の構成を有する粘着テープにおいて、特定の恒温恒湿試験において測定される、初期(0時間後)の抵抗値を特定の値以下とし、かつ1500時間後の抵抗値を特定範囲に制御することによって、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮できる導電性粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、金属箔の片面側に粘着剤層を有する粘着テープであって、
下記の恒温恒湿試験において測定される、初期(0時間後)の抵抗値が1Ω以下であり、かつ1500時間後の抵抗値が初期の抵抗値の5倍以下であることを特徴とする導電性粘着テープを提供する。
[恒温恒湿試験]
導電性粘着テープを貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキに貼付し、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽中で、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流し、前記貼付部分の抵抗値を連続的に測定する。
【0008】
上記導電性粘着テープは、上記粘着剤層側の表面に露出した端子部を有し、上記粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.15〜5mm2であることが好ましい。
【0009】
上記端子部は、上記金属箔側から貫通孔を開け、上記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部であることが好ましい。
【0010】
上記貫通孔1個あたりの端子部の平均面積は、50,000〜500,000μm2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性粘着テープは、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の導電性粘着テープの恒温恒湿試験において用いられる評価用基板の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の導電性粘着テープの恒温恒湿試験において用いられる評価用基板における電気回路の等価回路を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の導電性粘着テープの恒温恒湿試験において用いられる抵抗評価用サンプルの一例を示す模式図(図1の貼付部分13における断面図)である。
【図4】図4は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の一例を示す模式図(端子部における断面図)である。
【図5】図5は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の一例を示す模式図(平面図)である。
【図6】図6は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造方法の一例を部分的に示す模式図である
【図7】図7は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造に用いられるピンの一例を示す模式図(平面図)である。
【図8】図8は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造に用いられるピンの一例を示す模式図(側面図)である。
【図9】図9は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造に用いられるピンの配置の一例を部分的に示す模式図(平面図)である。
【図10】図10は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造に用いられる、メス型の表面に形成される円柱状の穴の一例を示す模式図(断面図)である。
【図11】図11は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造における、オス型とメス型を用いた打ち抜き(貫通孔の形成)の際の、ピンと円柱状の穴の位置関係の一例を示す模式図(断面図)である。
【図12】図12は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造方法の工程1において、菱形四角錐形状のピンを有するオス型と、円柱状の穴を有するメス型を用いて貫通孔を形成した際の、突出部の形状の一例を示す模式図である。
【図13】図13は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造方法の工程2において、スキージを用いて突出部を折り返し、端子部を形成する態様の一例を示す模式図である。
【図14】図14は、従来の導電性粘着テープの製造方法において、突出部をプレス加工することによって端子部を形成する態様の一例を示す模式図である。
【図15】図15は、実施例の恒温恒湿試験において用いた評価用基板を示す模式図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の導電性粘着テープは、金属箔の片面側に粘着剤層を有する片面粘着テープである。なお、本明細書においては、「導電性粘着テープ」という場合には、シート状のもの、すなわち「導電性粘着シート」も含まれるものとする。
【0014】
本発明の導電性粘着テープは、下記の恒温恒湿試験において測定される初期(0時間後)の抵抗値が1Ω以下であり、好ましくは0.0001〜0.5Ω、より好ましくは0.0001〜0.05Ωである。上記の初期(0時間後)の抵抗値を1Ω以下とすることにより、導電性粘着テープとしての十分な電気伝導性を発揮することができる。なお、抵抗値は、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に2Aの定電流を流し、これを、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽内に入れて上記貼付部分の抵抗値(接触抵抗値)を連続的に測定することにより求められる。なお、「初期(0時間後)の抵抗値」は、下記で定義される。
【0015】
本発明の導電性粘着テープは、下記の恒温恒湿試験において測定される、1500時間後の抵抗値が初期の抵抗値の5倍以下(例えば、1〜5倍)であり、好ましくは1〜3倍、より好ましくは1〜2倍、さらにより好ましくは1〜1.5倍である。なお、本明細書では、恒温恒湿試験にける初期の抵抗値に対する恒温恒湿試験における1500時間後の抵抗値の割合[(1500時間後の抵抗値)/(初期(0時間後)の抵抗値)(倍)]を、「抵抗値倍率」と称する場合がある。
【0016】
上記抵抗値倍率は、導電性粘着テープを長期間使用した場合や過酷な環境条件下で使用した場合に、当該導電性粘着テープがどれだけ安定した電気伝導性を発揮できるかの指標となる。抵抗値倍率が小さく5倍以下である場合には、導電性粘着テープを貼付した部分の電気伝導性が経時で低下しにくく、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用に対しても安定して電流が流れ続けると考えられるため、当該導電性粘着テープを用いた製品は高い信頼性を発揮することができる。一方、上記抵抗値倍率が大きく5倍を超える場合には、導電性粘着テープを貼付した部分の電気伝導性が経時で低下し、特に、長期間、過酷な環境条件下で使用した場合には、急激に抵抗値が上昇する危険があり、導通不良が発生し得るため、当該導電性粘着テープが用いられた製品の信頼性が低下する。
【0017】
恒温恒湿試験は、導電性粘着テープを貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキに貼付し、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽中で、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流し、前記貼付部分の抵抗値を連続的に測定する試験である。
上記の初期(0時間後)の抵抗値及び1500時間後の抵抗値は、次のようにして測定される。導電性粘着テープを貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に2Aの定電流を流す。これを、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽内に入れて上記貼付部分の抵抗値(接触抵抗値)を連続的に測定する。より具体的には、下記の[恒温恒湿試験]に従って測定される。「初期(0時間後)の抵抗値」は、導電性粘着テープを貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキに貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流してから、これを、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽内に入れ、入れた直後の上記貼付部分の抵抗値とする。また、「1500時間後の抵抗値」は、導電性粘着テープを貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキに貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流してから、これを、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽内に入れ、入れてから1500時間後の上記貼付部分の抵抗値とする。
[恒温恒湿試験]
(評価用基板の作製)
銀メッキが施された導体パターンが形成されたガラスエポキシ基板を用い、上記銀メッキが施された導体パターンに導電性粘着テープを貼り合わせ、さらに、上記銀メッキが施された導体パターンに定電流電源および電位計を接続することによって電気回路を形成して、評価用基板を作製する。図1は、具体的な評価用基板の構成の一例を示す。ガラスエポキシ基板18a上に、銀メッキが施された導体パターン(以下、単に「導体パターン」と称する場合がある)11a〜dが形成されており、導体パターン11a〜11dに対して、導電性粘着テープ12(幅:6mm)を、5kgのローラーを1往復させることによって貼付(圧着)する。この際、導体パターン11bと導電性粘着テープとの貼付部分13のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように貼付する。この貼付部分13により、導体パターン11bと導電性粘着テープ12の金属箔との間の電気的導通(厚み方向の電気的導通)が確保される。
なお、導電性粘着テープの幅が6mmに満たない場合には、トータルで幅が6mmとなるように貼り付ける(例えば、導電性粘着テープが2mm幅の場合には、3枚を貼り付ける)ことによって、評価を実施することができる。
次いで、導体パターン11bと11dを定電流電源14に接続し、導体パターン11aと11bを電位計15に接続して電気回路を形成し、これを評価用基板とする。なお、特に限定されないが、例えば、上記導体パターンと定電流電源、電位計の接続は、リード線の使用やはんだ付け等の通常の接続手段を利用することによって実施することができる。図2は、図1に示す評価用基板における電気回路の等価回路を示す。図2における17は、図1における貼付部分13の抵抗(接触抵抗)を表している。
(抵抗評価用サンプルの作製)
上記評価用基板における電気回路のうち、少なくとも導体パターンと導電性粘着テープとの貼り合わせ部分(貼付部分)を、ガラスエポキシ基板とガラス板の間でエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)により封止し、抵抗評価用サンプルを作製する。図3は、抵抗評価用サンプルの模式図(図1の貼付部分13における断面図)を示す。抵抗評価用サンプルは、少なくとも導体パターン11bと導電性粘着テープ12による貼り合わせ部分(貼付部分)13が、ガラスエポキシ基板18aおよびガラス板18bの間で、EVA(EVAの硬化物)19によって封止された構成を有する。なお、図1は、EVA(EVAの硬化物)によって封止される領域(封止領域)16の一例を示す。上記のEVAによる封止は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして実施される。図1に示す評価用基板における封止領域16上に、熱硬化性エチレン−酢酸ビニル共重合体のフィルム(EVAフィルム)(例えば、酢酸ビニル含有量28%の熱硬化性EVAフィルム)を載せ、さらにその上からガラス板を重ねて、「評価用基板/EVAフィルム/ガラス板」の構成を有する積層体とする。上記積層体を、真空プレス機を使用して、まず150℃の状態でプレスを行わず40秒間真空引きを行い、次いで、真空引きをしたままの状態で150℃にて0.1MPaの圧力で400秒間プレスし(真空引きは引き始めてから400秒間で終了させる)、その後真空プレス機から上記積層体を取り出して、150℃オーブンで40分間加熱し、EVAを熱硬化させる。
このように、少なくとも導体パターンと導電性粘着テープとの貼り合わせ部分(貼付部分)をEVAによって封止することによって、貼付部分が固定されるため、誤差が小さく安定した測定結果を得ることができる。
(恒温恒湿槽)
恒温恒湿槽は、温度85℃、湿度85%RHに制御される。恒温恒湿槽(チャンバー)としては、特に限定されないが、公知慣用のチャンバーが用いられる。例えば、商品名「PL−3KP」(エスペック株式会社製)、商品名「PWL−3KP」(エスペック株式会社製)などの市販品が用いられる。
(抵抗値の測定)
上記抵抗評価用サンプルにおける電気回路に対し、定電流電源(図1における定電流電源14)によって2Aの定電流を流し(すなわち、図1における貼付部分13に2Aの定電流を流し)、抵抗評価用サンプルを、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に入れ、その環境下で長期間放置する。そして、電位計15によって電圧を連続的に測定することにより、貼付部分13の抵抗値を連続的に取得する。槽内に抵抗評価用サンプルを入れた直後の抵抗値を「初期(0時間後)の抵抗値」とし、その値を求める。さらに、槽内に抵抗評価用サンプルを入れてから1500時間の抵抗値を「1500時間後の抵抗値」とし、その値を求める。そして、上記の抵抗値倍率を算出する。
【0018】
(金属箔)
本発明の導電性粘着テープを構成する金属箔は、特に限定されず、自己支持性を有し、かつ電気伝導性を示す金属箔であればよい。上記金属箔としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鉛やこれらの合金などの金属箔が挙げられる。中でも、導電性、コスト、加工性の点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましく、より好ましくは銅箔である。
【0019】
また、上記金属箔は、各種表面処理が施されていてもよい。例えば、錫メッキ、銀メッキ、金メッキ等の金属による表面メッキ処理が施されていてもよい。特に、腐食による抵抗値上昇を抑制する点で、錫メッキが施されていることが好ましい。
【0020】
上記金属箔としては、錫メッキが施された銅箔(錫コート銅箔)が特に好ましい。
【0021】
上記金属箔の厚みとしては、特に限定されないが、10〜100μmが好ましく、より好ましくは20〜80μm、さらに好ましくは30〜60μmである。厚みを10μm以上とすることにより、十分な強度を有するため、作業性が向上する。一方、厚みを100μm以下とすることにより、コスト面で有利となる。また、厚みが100μm以下であると、特に、下記の貫通孔を有する導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の場合には貫通孔を形成しやすいため、生産性が向上する。
【0022】
(粘着剤層)
本発明の導電性粘着テープの粘着剤層を構成する粘着剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。上記粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記粘着剤は、いずれの形態を有している粘着剤であってもよく、例えば、活性エネルギー線硬化型粘着剤、溶剤型(溶液型)粘着剤、エマルジョン型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などであってもよい。
【0023】
中でも、上記粘着剤としては、耐熱性、耐候性及びポリマーの設計の容易さの点から、アクリル系粘着剤が好ましい。すなわち、上記粘着剤層は、アクリル系粘着剤層であることが好ましい。
【0024】
上記粘着剤層は、粘着剤組成物により形成される。上記粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する組成物であり、粘着剤を形成する組成物を含む概念である。上記アクリル系粘着剤層は、アクリル系ポリマーを必須成分として含む粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)から形成された粘着剤層(アクリル系粘着剤層)であることが好ましい。上記アクリル系粘着剤層(100重量%)中のアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、65重量%以上(例えば、65〜100重量%)であることが好ましく、より好ましくは70〜99重量%である。なお、上記アクリル系粘着剤組成物には、アクリル系ポリマーに加えて、必要に応じて、その他の成分(添加剤)などが含まれていてもよい。
【0025】
上記アクリル系ポリマーは、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成されるアクリル系ポリマーであることが好ましい。また、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分には、さらに、極性基含有単量体、多官能性単量体やその他の共重合性単量体が共重合モノマー成分として含まれていてもよい。これらの共重合モノマー成分を用いることにより、たとえば、被着体への接着力を向上させたり、粘着剤層の凝集力を高めたりすることができる。なお、上記のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。また、上記の「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。
【0026】
上記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する場合がある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
中でも、基板表面への粘着性とバルクの粘着剤の弾性率の点から、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを併用することが好ましい。すなわち、本発明の導電性粘着テープにおいて、金属箔の片面側に設けられる粘着剤層は、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されるアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。特に、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸n−ブチルが好ましい。また、アルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニルが好ましい。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを併用する場合、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの割合[前者:後者](重量比)としては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの割合が多すぎるとタックが弱くなって粘着性が低下する場合があり、一方、アルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの割合が多すぎると粘着剤層が軟らかくなりすぎる場合があるので、50:50〜90:10が好ましく、より好ましくは60:40〜80:20である。
【0029】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対する、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、特に限定されないが、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは60〜99.9重量%である。
【0030】
上記の極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体(無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有単量体も含む);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾールなどの複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。中でも、カルボキシル基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体が好ましく、アクリル酸、アクリル酸4−ヒドロキシブチルがより好ましい。なお、上記の極性基含有単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対する、上記の極性基含有単量体の割合は、特に限定されないが、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。極性基含有単量体の割合を1重量%以上とすることにより、粘着剤層の凝集力が向上する。一方、極性基含有単量体の割合を30重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着性が向上する。
【0032】
また、上記の多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。なお、上記の多官能性単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対する、上記の多官能性単量体の割合は、特に限定されないが、0.5重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)が好ましく、より好ましくは、0〜0.3重量%以下である。多官能性単量体の割合を0.5重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着性が向上する。なお、架橋剤を用いる場合には多官能性単量体を用いなくてもよいが、架橋剤を用いない場合には、多官能性単量体の割合は0.001〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.1重量%である。
【0034】
また、極性基含有単量体や多官能性単量体以外のその他の共重合性単量体としては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0035】
上記アクリル系ポリマーの作製方法としては、特に限定されず、公知乃至慣用の重合方法が挙げられる。例えば、上記アクリル系ポリマーは、上記のモノマー成分を公知乃至慣用の重合方法により重合することにより得られる。上記重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、溶液重合方法がより好ましい。
【0036】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤が用いられる。このような溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。なお、溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記アクリル系ポリマーの重合に際して用いられる重合開始剤は、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択される。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などの油溶性重合開始剤が好ましく挙げられる。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、重合開始剤の使用量は、特に限定されず、従来、重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0038】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、30万〜120万が好ましく、より好ましくは35万〜100万、さらに好ましくは40万〜90万である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量を30万以上とすることにより、粘着性が向上する。一方、120万以下とすることにより、塗工性が向上する。アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールされる。
【0039】
本発明の導電性粘着テープの粘着剤層を形成する粘着剤組成物(特にアクリル系粘着剤組成物)は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を用いることにより、粘着剤層を構成するベースポリマー(例えば、アクリル系粘着剤層を構成するアクリル系ポリマー)を架橋させ、粘着剤層の凝集力を一層大きくすることができる。架橋剤としては、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択される。例えば、多官能性メラミン化合物(メラミン系架橋剤)、多官能性エポキシ化合物(エポキシ系架橋剤)、多官能性イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)が好ましく挙げられる。中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤がより好ましく、イソシアネート系架橋剤がさらに好ましい。なお、架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。他にも、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートHL」]などの市販品も挙げられる。
【0041】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。他にも、三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッドC」などの市販品も挙げられる。
【0042】
上記粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤組成物の場合、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して、0〜5重量部が好ましく、より好ましくは1〜3重量部である。
【0043】
さらに、上記粘着剤組成物(特にアクリル系粘着剤組成物)は、粘着性向上の点から、粘着付与剤(粘着付与樹脂)を含有することが好ましい。上記粘着付与剤としては、例えば、テルペン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、石油系粘着付与剤などが挙げられる。また、粘着付与剤としては、オリゴマー(重量平均分子量2万未満の重合体)も挙げられる。該オリゴマーとしては、例えば、アクリル系オリゴマー、スチレン系オリゴマーなどが挙げられる。中でも、粘着付与剤としては、ロジン系粘着付与剤やアクリル系オリゴマーが好ましい。なお、上記粘着付与剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記テルペン系粘着付与剤としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0045】
また、上記フェノール系粘着付与剤としては、例えば、各種フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂など)、上記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、上記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックの他、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジン変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0046】
さらに、上記ロジン系粘着付与剤としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。なお、上記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物や、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物などのロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン類や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩などが挙げられる。
【0047】
さらにまた、上記石油系粘着付与剤としては、例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂(脂肪族環状石油樹脂)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加石油樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂などが挙げられる。上記芳香族系石油樹脂としては、例えば、炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。中でも、ビニルトルエンやインデン等の留分(いわゆる「C9石油留分」)から得られる芳香族系石油樹脂(いわゆる「C9系石油樹脂」)が好ましい。また、上記脂肪族系石油樹脂としては、例えば、炭素数4〜5のオレフィンやジエン[ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1等のオレフィン;ブタジエン、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、イソプレン等のジエンなど]が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。中でも、ブタジエン、ピペリレンやイソプレン等の留分(いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」など)から得られる脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)が好ましい。さらに、上記脂環族系石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン、エチリデンビシクロヘプテン、ビニルシクロヘプテン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、リモネンなど)の重合体又はその水素添加物、上記の芳香族系炭化水素樹脂や、下記の脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂などが挙げられる。さらにまた、脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、スチレン−オレフィン系共重合体などが挙げられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、いわゆる「C5/C9共重合系石油樹脂」なども挙げられる。
【0048】
上記粘着付与樹脂としては、市販品も挙げられ、例えば、商品名「ハリエスター」(ハリマ化成株式会社製)、商品名「エステルガム」、「ペンセル」(荒川化学工業株式会社製)、製品名「リカタック」(株式会社理化ファインテク製)などが挙げられる。
【0049】
上記粘着剤組成物中の粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤組成物の場合、アクリル系ポリマー(100重量部)に対して、10〜50重量部が好ましく、より好ましくは15〜45重量部である。
【0050】
上記の粘着剤組成物(特にアクリル系粘着剤組成物)には、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、架橋促進剤、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤や溶剤(上記のアクリル系ポリマーの溶液重合の際に使用可能な溶剤など)が含まれていてもよい。さらに、上記粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、オリゴマー(重量平均分子量2万未満の重合体、上記粘着付与剤としてのオリゴマーは除く)が含まれていてもよい。
【0051】
上記粘着剤組成物は、特に限定されないが、公知の方法により作製される。例えば、上記アクリル系粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(又はアクリル系ポリマー溶液)、架橋剤、溶剤、粘着付与剤などを混合することにより、作製されてもよい。
【0052】
上記粘着剤層の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、上記の粘着剤組成物(特にアクリル系粘着剤組成物)を、金属箔又はセパレータに塗布(塗工)し、必要に応じて、乾燥及び/又は硬化する方法が挙げられる。
【0053】
なお、上記粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法が用いられる。例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどのコーターを用いる方法が挙げられる。
【0054】
本発明の導電性粘着テープを構成する粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば、10〜80μmが好ましく、より好ましくは20〜60μm、さらに好ましくは20〜50μmである。厚みを10μm以上とすることにより、貼付時に発生する応力が分散されやすく、剥がれが生じにくくなる。一方、厚みを80μm以下とすることにより、製品の小型化や薄膜化に有利となる。特に、下記の貫通孔を有する導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の場合には、粘着剤層の厚みが厚すぎると、貫通孔を開けて形成した突出部が沈み込んでしまう(すなわち、突出部が貫通孔を塞ぐ方向に倒れ込む)ことにより、金属箔が粘着剤層側の表面に露出できず(当該現象を「粘着剤層による侵食」と称する)、端子部の面積を大きくすることが困難となる傾向がある。厚みを80μm以下とすることによって、上記のような粘着剤層による侵食が抑制され、端子部の面積を効率的に大きくすることができるため、安定した電気伝導性を発揮させることができる。
【0055】
本発明の導電性粘着テープは、上記の金属箔、粘着剤層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0056】
本発明の導電性粘着テープの厚みは、特に限定されないが、20〜180μmが好ましく、より好ましくは40〜140μm、さらに好ましくは50〜110μmである。上記厚みを20μm以上とすることにより、十分なテープ強度を有し、作業性が向上する。一方、上記厚みを180μm以下とすることにより、製品の薄膜化や小型化に有利となる。なお、上記「導電性粘着テープの厚み」とは、導電性粘着テープにおける金属箔表面(金属箔表面のうち粘着剤層を有しない側の表面)から粘着面までの厚みを意味する。
【0057】
本発明の導電性粘着テープにおける粘着面には、セパレータ(剥離ライナー)が設けられていてもよい。上記セパレータとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や、無極性ポリマーからなる低接着性基材などが挙げられる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。上記の中でも、セパレータの浮き(セパレータが粘着面から部分的に剥離する現象)を抑制する点で、ポリエチレン又はポリプロピレンからなるセパレータを用いることが好ましい。なお、セパレータは、公知慣用の方法により形成される。また、セパレータの厚み等も特に限定されない。
【0058】
本発明の導電性粘着テープは、金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記恒温恒湿試験において測定される、初期(0時間後)の抵抗値及び抵抗値倍率が上記範囲を満たせばよく、特に限定されないが、その具体的態様としては、例えば、金属箔の片面側に粘着剤層を有する粘着テープであって、粘着剤層側の表面に露出した端子部を有し、粘着剤層(導電性粘着テープにおける粘着剤層側の表面)30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.15〜5mm2に制御された導電性粘着テープ(以下、当該具体的態様の導電性粘着テープを「導電性粘着テープA」と称する)が挙げられる。
【0059】
上記「端子部」とは、導電性粘着テープAの粘着剤層側の表面に露出している金属部分(金属部分の表面が酸化されている場合も含む)であり、かつ、導電性粘着テープAにおける金属箔と電気的に導通する部分である。具体的には、導電性粘着テープAを粘着剤層表面側から観察した時に、露出している金属部分をいう。
【0060】
導電性粘着テープAはこのような端子部を有するため、被着体に貼付する際には上記端子部の少なくとも一部が被着体と接触することによって、被着体と導電性粘着テープAの金属箔との間の電気的導通が確保される。すなわち、上記端子部は、導電性粘着テープAにおいて、厚み方向の電気伝導性を発揮させる役割を担う。中でも、上記端子部としては、厚み方向に安定した導電性を発揮させる点から、導電性粘着テープを構成する金属箔の一部により形成された端子部であること、すなわち、導電性粘着テープを構成する金属箔の一部が粘着剤層側の表面に露出することによって形成された端子部であることが好ましい。
【0061】
導電性粘着テープAにおける、上記粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積(粘着剤層側の表面30mm2あたりに存在する端子部の総面積)(以下、単に「端子部の総面積」と称する場合がある)は、0.15〜5mm2であり、好ましくは0.3〜5mm2、より好ましくは0.4〜5mm2である。上記端子部の総面積を0.15mm2以上とすることにより、長期の使用や過酷な環境下での使用による、端子部と被着体との接触面積(以下、単に「接触面積」と称する場合がある)の低下に伴う急激な抵抗値上昇を防ぎ、安定した電気伝導性を発揮することができる。一方、上記端子部の総面積を5mm2以下とすることにより、被着体に対する粘着性が向上する。なお、「端子部の面積」とは、導電性粘着テープAの粘着剤層側の表面を粘着剤層表面に対して垂直方向から観察した時に、露出している金属部分(端子部)の面積をいう。すなわち、粘着剤層側の表面を粘着剤層表面に対して垂直方向から観察した時の、端子部の投影面積のことを指す。
【0062】
上記端子部の総面積は、特に限定されないが、例えば、粘着剤層30mm2あたりに存在する全ての端子部について、それぞれの面積(投影面積)を測定し、これらを合計することによって測定することができる。より具体的には、例えば、下記の方法により測定することができる。
[端子部の総面積の測定方法]
導電性粘着テープを長さ6mm×幅5mm(面積:30mm2)のサイズに切り出し、これを測定サンプルとする。
上記測定サンプルの粘着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズは「VH−Z20」を使用)にて観察し、端子部(粘着剤層側の表面に露出している金属部分)の画像(投影面の画像)を撮影する。次に、計測モードにて、上記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって端子部の面積を測定する。同様に、上記測定サンプルに存在するすべての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を算出する。
より詳しくは、下記の(評価)の「(2)端子部の面積」に記載の方法により測定することができる。
なお、導電性粘着テープのテープ幅が6mmに満たない場合には、例えば、粘着剤層の面積が30mm2となるように長さを調整して切り出した測定サンプルを用いて測定してもよいし、粘着剤層の面積が30mm2よりも小さい測定サンプルを用いて測定して得られた値を粘着剤層30mm2あたりの値に換算することによって測定してもよい。
【0063】
なお、上記端子部の総面積の測定方法としては、上述の測定方法に限定されず、例えば、任意の面積(例えば、100cm2など)の粘着剤層あたりに存在する全ての端子部の面積(投影面積)を測定してこれらを合計し、その後、粘着剤層30mm2あたりの数値に換算する方法を用いることもできる。
【0064】
導電性粘着テープAにおいて、上記端子部を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、金属箔側からエンボス加工を施して上記金属箔の一部を粘着剤層側の表面に露出させ、これを端子部とする方法や、金属箔側から貫通孔を開け、粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、これを端子部とする方法などが挙げられる。中でも、金属箔側から貫通孔を開け、上記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、これを端子部とする方法が好ましく、さらに安定した電気伝導性を発揮させる点からは、金属箔側から貫通孔を開け、上記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返してこれを端子部とする方法が好ましい。すなわち、導電性粘着テープAにおける端子部としては、金属箔側から貫通孔を開け、上記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部であることが好ましい。端子部を上記方法により形成すると、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を、上記範囲に制御することが容易となるため、好ましい。
【0065】
以下では、上述の金属箔側から貫通孔を開け、粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返してこれを端子部とする方法により得られる導電性粘着テープを、「導電性粘着テープa」と称する。すなわち、導電性粘着テープaは、端子部が、金属箔側から貫通孔を開け、上記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部である導電性粘着テープである。以下に、導電性粘着テープaについて詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。なお、上記「突出部」とは、上記貫通孔を設けた時に粘着剤層側の表面に突き出した金属箔のことをいい、「バリ」ということもある。また、本明細書において「突出部を折り返す」とは、突出部を構成する金属箔が粘着剤層側の表面に露出するように、上記突出部を折り曲げることを指す。
【0066】
導電性粘着テープaは、金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記金属箔並びに上記粘着剤層を貫通する孔(貫通孔)が設けられ、上記貫通孔を通して金属箔の一部が粘着剤層側の表面に露出し、これを端子部とする構成を有する片面粘着テープである。このような端子部を有することにより、金属箔と被着体に対する貼着面との間で電気伝導性(厚み方向の電気伝導性)が確保される。図4および図5は、導電性粘着テープaの構成の一例を示す模式図である。図4(導電性粘着テープaの模式図(端子部における断面図))において、導電性粘着テープ23は、金属箔21の片面側に粘着剤層22を有しており、金属箔21並びに粘着剤層22には貫通孔25が設けられ、貫通孔25を通して金属箔21の一部が粘着剤層側の表面に露出することによって端子部24が形成されている。このように、導電性粘着テープaにおいては、貫通孔25と端子部24とにより、金属箔21と端子部24との間を通電させる役割を果たす導通部26が形成されている。
図5は、導電性粘着テープaの一例を示す模式図(平面図)である。図5における貫通孔25の位置パターンは、いわゆる、散点パターンであり、例えば、長手方向の配置間隔がxの列を間隔yで配列し、かつ互いに隣り合う列間において半ピッチずらしたものを使用できる。上記配置間隔xとしては、特に限定されないが、例えば、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、上記間隔yとしては、特に限定されないが、例えば、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。
【0067】
導電性粘着テープaにおける、粘着剤層30mm2あたりに存在する貫通孔の数(密度)(粘着剤層側の表面30mm2あたりに存在する貫通孔の数)としては、特に限定されないが、例えば、3〜10個/30mm2が好ましく、より好ましくは3〜6個/30mm2である。上記貫通孔の数を3個/30mm2以上とすることにより、被着体に対する導電性粘着テープの端子部の接触箇所が多くなるため、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用によって端子部それぞれの接触面積が低下した場合であっても、十分な接触箇所を保持することにより電気的導通を確保し、急激な抵抗値上昇を抑えることができる。一方、上記貫通孔の数を10個/30mm2以下とすることにより、導電性粘着テープが十分な強度を保持することができ、作業性が向上する。
【0068】
上記貫通孔の数(密度)は、特に限定されないが、例えば、任意の面積(例えば、30mm2、100cm2など)の粘着剤層あたりに存在する貫通孔の数を、目視又はデジタルマイクロスコープ等を用いて数え、必要に応じて粘着剤層30mm2あたりの数に換算することにより、測定される。
【0069】
導電性粘着テープaにおける、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積(以下、単に「端子部の平均面積」と称する場合がある)は、50,000〜500,000μm2が好ましく、より好ましくは100,000〜400,000μm2、さらに好ましくは100,000〜300,000μm2である。端子部の平均面積を50,000μm2以上とすることにより、被着体に対する端子部の接触面積が大きくなるため、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用によって接触面積が低下した場合であっても、電気伝導性の確保には十分な接触面積を保持することができ、安定した電気伝導性を発揮することができる。一方、端子部の平均面積を500,000μm2以下とすることにより、貫通孔が大きくなり過ぎることがないため、導電性粘着テープが十分な強度を保持することができ、作業性が向上する。
【0070】
上記端子部の平均面積は、特に限定されないが、例えば、粘着剤層30mm2あたりに存在する全ての端子部について、それぞれの投影面積を測定し、これらを合計した面積(粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積)を、該粘着剤層30mm2あたりに存在する貫通孔の数で割ることによって求められる。より具体的には、例えば、下記の方法により測定される。
[端子部の平均面積の測定方法]
導電性粘着テープを長さ6mm×幅5mm(面積:30mm2)のサイズに切り出し、これを測定サンプルとする。
上記測定サンプルの粘着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズは「VH−Z20」を使用)にて観察し、端子部(粘着剤層側の表面に露出している金属部分)の画像(投影面の画像)を撮影する。次に、計測モードにて、上記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって端子部の面積を測定する。同様に、上記測定サンプルに存在する全ての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を算出する。
上記で計測した端子部の総面積を、上記測定サンプルに存在する貫通孔の数(目視又やデジタルマイクロスコープ等により数えることができる)で割ることによって、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を求めることができる。
なお、導電性粘着テープのテープ幅が6mmに満たない場合には、例えば、粘着剤層の面積が30mm2となるように長さを調整して切り出した測定サンプルを用いて測定してもよいし、粘着剤層の面積が30mm2よりも小さい測定サンプルを用いて測定して得られた値を粘着剤層30mm2あたりの値に換算することによって測定してもよい。
なお、より詳しくは、下記の(評価)の「(2)端子部の面積」に記載の方法により測定される。
【0071】
なお、上記端子部の平均面積の測定方法としては、上述の測定方法に限定されず、例えば、任意の面積(例えば、100cm2など)の粘着剤層あたりに存在する全ての端子部の面積(投影面積)を測定してこれらを合計し、その後、上記の粘着剤層(任意の面積の粘着剤層)あたりに存在する貫通孔の数で割る方法を用いてもよい。
【0072】
導電性粘着テープaを構成する金属箔としては、上記で例示したものが好ましい。また、上記金属箔の厚みについても上述の範囲に制御することが好ましい。なお、導電性粘着テープaにおける「金属箔の厚み」とは、導電性粘着テープaにおいて端子部が形成されていない部分の金属箔の厚みのことをいう。
【0073】
導電性粘着テープaを構成する粘着剤層としては、上記で例示したものを好ましい。また、上記粘着剤層の厚みについても上記の範囲に制御することが好ましい。なお、導電性粘着テープaにおける「粘着剤層の厚み」とは、導電性粘着テープaにおいて端子部が形成されていない部分の粘着剤層の厚みのことをいう。
【0074】
導電性粘着テープaにおける、上記金属箔の厚みに対する上記粘着剤層の厚みの比[(粘着剤層の厚み)/(金属箔の厚み)]としては、特に限定されないが、0.1〜10が好ましく、より好ましくは0.2〜9、さらに好ましくは0.3〜8である。上記の金属箔の厚みに対する粘着剤層の厚みの比を0.1以上とすることにより、基材(金属箔)の剛性に対して十分な粘着力を得ることができる。一方、上記の金属箔の厚みに対する粘着剤層の厚みの比を10以下とすることにより、上述の粘着剤層による侵食が抑制され、端子部の面積を広くすることができる。
【0075】
導電性粘着テープaの具体的な製造方法としては、特に限定されないが、例えば、金属箔の片面側に粘着剤層を有する積層体に、上記金属箔側から貫通孔を開け、上記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成する工程(当該工程を「工程1」と称する場合がある)、次いで、上記突出部を折り返す工程(当該工程を「工程2」と称する場合がある)を少なくとも含む製造方法が挙げられる。上記工程2の後には、必要に応じて、プレス加工を施す工程(当該工程を「工程3」と称する場合がある)を含んでいてもよい。図6は、導電性粘着テープaの製造方法の一例を示す模式図である。図中の21は金属箔を、22は粘着剤層を表している。また、25は貫通孔を、27は突出部を表し、24は端子部を表している。
【0076】
上記の金属箔の片面側に粘着剤層を有する積層体は、特に限定されないが、例えば、金属箔の片面側に粘着剤層を形成することによって製造されてもよいし、市販品が使用されてもよい。なお、上記の金属箔の片面側に粘着剤層を形成する工程は、導電性粘着テープaの製造とは別に実施されてもよいし、導電性粘着テープaの製造と一連の工程として(すなわち、インラインで)実施されてもよい。上記積層体を製造する際の金属箔の片面側への粘着剤層の形成方法としては、特に限定されず、例えば、公知慣用の粘着剤層の形成方法が挙げられる。例えば、上記の粘着剤層の形成方法が挙げられる。なお、この際、金属箔の表面に上記粘着剤層が直接形成されていてもよいし(直写法)、セパレータ上に粘着剤層を形成した後、これを金属箔に転写する(貼り合わせる)ことにより、金属箔の表面に粘着剤層が設けられてもよい(転写法)。
【0077】
[工程1]
工程1では、金属箔の片面側に粘着剤層を有する積層体に、上記金属箔側から貫通孔を開け、上記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部が形成される。上記貫通孔を開ける方法としては、特に限定されないが、例えば、公知慣用の穿孔方法が挙げられる。中でも、均一な貫通孔を形成する点で、表面に貫通孔を形成するためのピンが設けられたオス型を用いた貫通孔形成方法が好ましい。
【0078】
上記ピンの形状としては、貫通孔を形成可能な突起形状であればよく、特に限定されないが、例えば、円錐、三角錐、四角錐等の角錐(多角錐)、円柱、三角柱、四角柱等の角柱(多角柱)やこれらに類似した形状などが挙げられる。中でも、上記ピンの形状としては、均一な貫通孔を形成する点で、角錐形状が好ましい。
【0079】
上記オス型における上記ピンの配置としては、特に限定されず、導電性粘着テープaが有する貫通孔の配置に応じて、適宜選択される。例えば、導電性粘着テープaの長手方向(MD)に対応するピンの間隔としては、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、導電性粘着テープの幅方向(TD)に対応するピンの間隔としては、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。上記ピンの位置パターンについても、特に限定されないが、例えば、図5に示す導電性粘着テープaにおける貫通孔の位置パターンと同様の散点パターンが挙げられる。
【0080】
より具体的には、上記貫通孔を設ける際に用いるオス型としては、例えば、図7および図8に示すような菱形四角錐形状のピンを、図9に示すような位置パターン(長手方向(導電性粘着テープの長手方向)の配置間隔がiの列を間隔hで配列し、かつ互いに隣り合う列間で半ピッチずらした散点パターン)で配置したものが挙げられる。このようなピンの底面形状(菱形)のサイズとしては、例えば、図7におけるcが0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2mm、図7におけるdが0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2mmのものが挙げられる。また、図7における底面の角度eとしては、例えば、30〜120°が好ましく、より好ましくは40〜100°である。
また、図8におけるf(ピンの高さ)としては、例えば、0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは1〜2mmである。図8におけるgとしては、例えば、0.01〜0.5mmが好ましく、より好ましくは0.02〜0.4mmである。
さらに、図9における間隔iとしては、例えば、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、図9における間隔hとしては、例えば、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。
【0081】
特に限定されないが、上記オス型を用いて貫通孔を形成する場合には、オス型が有するピンの形状に対応した凹部分を有するメス型を併せて用いることが好ましい。このようなメス型を用いることにより、より折り返しやすい突出部を形成することができ、端子部の面積を大きくできる傾向にある。上記メス型が有する凹部分の形状やサイズは、特に限定されず、オス型が有するピンの形状やサイズによって適宜選択される。具体的には、例えば、図10に示す断面形状の円柱状の穴などが挙げられる。図10に示す円柱状の穴のサイズとしては、特に限定されないが、例えば、図10におけるj(底辺の直径)が0.5〜3mm、図10におけるk(深さ)が0.5〜3mmのものが挙げられる。
【0082】
図11は、図7、8に示すピンを有するオス型31と、図10に示す円柱状の穴を有するメス型32を用いた打ち抜きの際の、ピンと円柱状の穴の配置の一例を示す。
【0083】
図12は、上記で例示した菱形四角錐形状のピンを有するオス型と円柱状の穴を有するメス型を用いた打ち抜き加工によって形成された、貫通孔および突出部の形状の一例を示す模式図である。当該例では、貫通孔の形状は菱形であり、当該貫通孔1個あたりに4つの突出部が形成されている。
【0084】
上述のピンが設けられたオス型を用いた打ち抜きによる、具体的な貫通孔形成方法としては、例えば、金属箔の片面側に粘着剤層を有する積層体を、ピンが所望の配置で表面に形成されたロール(「オス型ロール」と称する場合がある)と、ロール表面に凹部分(穴や溝など)が形成されたロール(「メス型ロール」と称する場合がある)の間を、上記積層体の金属箔側がオス型ロールと接触するようにして通過させる方法が挙げられる。
【0085】
[工程2]
工程2では、上記突出部(工程1で形成した突出部)を折り返して端子部を形成する。突出部を折り返すことによって、端子部の面積を大きくすることができる。突出部を折り返す方法としては、特に限定されないが、効果的に端子部の面積を大きくできる点で、スキージを用いる方法が好ましい。スキージを用いることにより、一度に多くの突出部を折り返すことができ、さらにこれらをきれいに折り返すことができる。このため、粘着剤層側の表面に露出する金属箔の面積、すなわち、端子部の面積を大きくすることができる。特に、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を大きくすることが容易となるため、効率的に粘着剤層30mm2あたりの端子部の総面積を大きくすることができる。
【0086】
図13は、導電性粘着テープaの製造方法において、スキージを用いて突出部を折り返し端子部を形成する態様を示す模式図を示す。図13における「進行方向」とは、工程1にて得られた貫通孔および突出部を有する積層体の進行方向を示し、図14についても同様である。図13に示すように、工程1で得られる貫通孔25および突出部27を有する積層体の粘着剤層22の表面と、スキージ41の先端とが対向するように配置し、スキージ41に対して粘着剤層22を移動させることによって、スキージ41の先端によって突出部27が折り返される。この場合、突出部27の中でも、貫通孔25に対して上記積層体の進行方向側に位置する突出部27aは、通常、貫通孔25を塞ぐ方向に折り曲げられるため、突出部27aの金属箔は粘着剤層側の表面には露出せず、端子部を形成しない。これに対し、貫通孔25に対して上記積層体の進行方向とは反対側に位置する突出部27bは、貫通孔25を塞ぐ方向とは反対側の方向に折り返されるため、突出部27bの金属箔が粘着剤層側の表面に露出する。すなわち、突出部27bによって端子部24が形成される。このように、スキージを用いて突出部を折り返すことによって、貫通孔1個あたりの端子部の面積を効率的に大きくすることができる。
【0087】
図14は、従来の導電性粘着テープにおいて端子部を形成する態様を示す模式図を示す。従来の導電性粘着テープにおける端子部は、例えば、図14に示すようなプレスロール28を用いて、貫通孔25および突出部27を有する積層体の突出部27を押し潰すことによって形成されていた。この場合、突出部27のうち貫通孔25に対して上記積層体の進行方向側に位置する突出部27aは、通常、粘着剤層によって突出部27aの金属箔が覆われる形で押し潰されるため、突出部27aの金属箔は粘着剤層の表面にはほとんど露出しない。一方、貫通孔25に対して上記積層体の進行方向とは反対側に位置する突出部27bは、プレスロールによって金属箔が粘着剤層側の表面に露出するように折り曲げられるが、同時に押し潰されるため、突出部27bの金属箔の大部分は粘着剤層によって被覆され、結果的に粘着剤層側の表面にはわずかな金属箔しか露出しない。このように、従来の製造方法では、貫通孔1個あたりの端子部の面積を大きくすることができなかったため、かかる方法により得られた導電性粘着テープは、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を上述の範囲に制御することができず、安定した電気伝導性を発揮することができなかった。
【0088】
上記スキージの材質としては、特に限定されないが、例えば、公知慣用のものが挙げられる。例えば、鉄、ステンレス等が挙げられる。中でも、剛性の点で、鉄製のスキージが好ましい。
【0089】
上記スキージの形状としては、特に限定されないが、例えば、公知慣用の形状が挙げられる。中でも、突出部を折り返しやすい点で、図13に示す、断面が台形形状であり、かつ、先端が尖ったスキージ(いわゆる剣スキージ)が好ましい。
【0090】
例えば、スキージとして上記の剣スキージを用いる場合、その先端角度としては、特に限定されないが、10〜80°が好ましく、より好ましくは20〜60°である。また、上記スキージの先端半径(先端R)としては、0.1〜1が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8である。なお、上記「先端角度」とは、剣スキージの断面形状における先端の角度のことであり、例えば、図13においては42で表される角度のことをいう。
【0091】
上記突出部を折り返す際には、特に限定されないが、粘着剤層表面に対してスキージの先端を完全に接触させることが好ましい。粘着剤層表面とスキージの先端を完全に接触させることによって、突出部を根元から折り曲げることができ、端子部の面積を効率的に大きくすることができる。
【0092】
上記突出部を折り返す際の、粘着剤層表面とスキージ先端のなす角度は、特に限定されないが、例えば、30〜80°が好ましく、より好ましくは40〜80°である。なお、上記の粘着剤層表面とスキージ先端のなす角度とは、例えば、図13において43で表される角度のことをいう。上記角度を30°以上とすることにより、突出部を根元から折り返すことができ、端子部の面積を効率的に大きくすることができる。上記角度を30°未満とすると、スキージの先端が突出部の先端を撫でるように滑ってしまい、折り返しが不十分となって端子部の面積を大きくできない傾向がある。一方、上記角度を80°以下とすることにより、突出部を折り返す際に発生する両面粘着テープのやぶれが防止される。
【0093】
上記突出部を折り返す際の、スキージに対して粘着剤層(積層体)を移動させる速度は、特に限定されないが、例えば、1〜20m/分が好ましく、より好ましくは2〜10m/分である。上記速度を1m/分以上とすることにより、生産性が向上する。一方、上記速度を20m/分以下とすることにより、スキージによる突出部の折り返しを安定して行うことができる。なお、上記突出部を折り返す際には、上述のようにスキージに対して粘着剤層(積層体)を移動させてもよいし、粘着剤層(積層体)に対してスキージを移動させてもよい。粘着剤層(積層体)に対してスキージを移動させる速度についても、上記範囲を満たすことが好ましい。
【0094】
(工程3)
工程3では、必要に応じて、上記工程2で折り返した突出部にプレス加工を施す。当該工程3を経ることにより、端子部と粘着剤層表面を平滑とすることができるため、被着体に対して端子部を接触させやすくすることができ、なおかつ、被着体に対する導電性粘着テープの接着性を高めることができる。
【0095】
上記プレス加工の方法としては、特に限定されないが、例えば、公知慣用の方法が挙げられる。例えば、ロール、単板等を用いたプレス加工方法が挙げられる。中でも、生産性向上の点で、ロールプレス装置を用いたプレス加工が好ましい。なお、プレス加工の際には、粘着剤層をセパレータにより保護することが好ましい。
【0096】
上記の導電性粘着テープaの製造方法においては、必要に応じて、工程2又は工程3の後に、導電性粘着テープを適切な製品幅にスリットする工程、導電性粘着シートをロール状に巻き取る工程などの各種工程が設けられていてもよい。
【0097】
一般に、金属箔の片面側に粘着剤層を有する導電性粘着テープ(従来の導電性粘着テープ)は、長期間使用されたり、過酷な環境下で使用されると、金属箔の腐食などの金属部分の腐食やマイグレーション現象(導電路の金属がイオン化して移動し、導通接点の低下や欠損が生じる現象)により、電気的導通を生じる部分の面積(電気的導通に有効な面積、有効接触面積)が減少して、徐々に抵抗値が上昇し、安定した電気伝導性を発揮することができないことがあった。
【0098】
一方、本発明の導電性粘着テープは、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を0.15〜5.0mm2に制御することによって、上記恒温恒湿試験において測定される抵抗値倍率が5倍以下に制御され、長期間の使用や過酷な環境下での使用に対して安定した電気伝導性を発揮することができる。これは、主に、以下の(1)(2)の理由によるものと推定される。(1)端子部一つ一つの面積を大きくする、すなわち、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を大きくすることにより、長期間の使用や過酷な環境下の使用において、電気的導通に有効な面積が減少したとしても、電気的導通に必要な有効接触面積を確保できる。(2)単位面積の粘着剤層あたりに存在する端子部の数を多くすることにより、長期間の使用や過酷な環境下の使用において、電気的導通に有効な面積が減少したとしても、全体として電気的導通に必要な有効接触面積を確保できる。特に、本発明においては、端子部の形成にスキージを用いることによって、従来の製造方法では形成し得ない大きさ(面積)の端子部を形成できる(すなわち、上記(1)の効果を得ることができる)ため、端子部の総面積が上述の範囲に制御された導電性粘着テープを効率よく得ることができる。
【0099】
なお、従来の導電性粘着テープにおいては、端子部一つ一つの面積を大きくすることができず(具体的には、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を50,000μm2以上とすることができず)、さらに、端子部の数を増量して端子部の総面積を大きくしようとした場合には非常に多くの貫通孔を設ける必要があり、これによって導電性粘着テープの強度と粘着性とが著しく低下してしまう等の理由によって、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を0.15〜5.0mm2に制御することができなかった。従って、従来の導電性粘着テープは、安定した電気伝導性を発揮することができないことがあった。
【0100】
本発明の導電性粘着テープは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電気・電子機器やケーブルの電磁波シールド用途等に好適に使用される。特に、様々な環境下での使用や長期間の使用において、抵抗値が上昇することなく、安定な電気伝導性を発揮することが要求される用途、具体的には、例えば、プリント配線基板の接地、電子機器の外装シールドケースの接地、静電気防止用のアース取り、電源装置や電子機器等(例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの表示装置、太陽電池など)の内部配線等に使用される。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0102】
(実施例1)
アクリル系ポリマーの製造例
モノマー成分としてアクリル酸n−ブチル(BA)70重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)30重量部、アクリル酸(AA)3重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(HBA)0.05重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、および重合溶媒としてトルエン27重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温して10時間反応させ、さらにトルエンを加えて濃度を調整し、固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
なお、アクリル系ポリマー溶液中の上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は44万であった。
【0103】
粘着剤組成物溶液の調製例
上記アクリル系ポリマー溶液に、上記アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業株式会社製)を固形分換算で2重量部を添加し、さらに、上記アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、粘着付与剤(商品名「ペンセル D−125」、荒川化学工業株式会社製)を固形分換算で30重量部を添加し、これを混合することによって粘着剤組成物溶液を調製した。
【0104】
導電性粘着テープ用タックテープの製造例
シリコーンが塗布された剥離紙に、上記粘着剤組成物溶液を乾燥後の厚みが45μmとなるように塗布し、これを130℃で3分間オーブンで乾燥させた後、粘着剤層を得た。
次に、得られた粘着剤層表面に錫コート銅箔(錫メッキが施された銅箔、厚み:35μm)を貼り合わせ、続いてこれをロール状に巻き取ることによって、「錫コート銅箔/粘着剤層/剥離紙」の構成を有する導電性粘着テープ用タックテープのロール状巻回体を得た。
なお、上記導電性粘着テープ用タックテープの粘着剤層のゲル分率は、43重量%であった。
【0105】
導電性粘着テープの製造例
上記で得たロール状巻回体から導電性粘着テープ用タックテープを繰り出し、図7および図8に示す形状のピン(c=1.0427mm、d=1.8061mm、e=60°、f=1.2mm、g=0.1mm)が、図9に示すパターン(h=2.598mm、i=1.5mm)で表面に配置されたオス型ロールと、図10に示す直径1.6mmφ×深さ1.4mmの円柱状の穴が表面に形成されたメス型ロールとを用い、上記導電性粘着テープ用タックテープの金属箔側がオス型ロールと接触するように上記ロール(オス型ロールおよびメス型ロール)間を通過させて打ち抜き、貫通孔および粘着剤層側の表面に金属箔の突出部(バリ)を形成した。
次いで、剥離紙を剥離し、図13に示すように、スキージ(材質:鉄(FK4)、先端角度:45°、先端R(先端半径):0.5)を、粘着剤層表面と上記スキージの先端がなす角度(図13における角度43)が20°となるように、粘着剤層表面と上記スキージの先端が接触するように配置し(すなわち、スキージ先端を粘着剤層表面に押し当て)、粘着剤層を1m/分の速度で移動させる(擦る)ことによって、上記突出部を折り返した。
さらに、粘着剤層表面にセパレータを貼り合わせた後、プレスロール間を通過させることにより、セパレータのラミネートを行うと同時に、折り返した突出部と粘着剤層とが平滑となるようにプレス加工を施して、粘着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性粘着テープ(貫通孔を有する導電性粘着テープ)を得た。
【0106】
(比較例1)
実施例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液を得た。
次に、上記アクリル系ポリマー溶液に、上記アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業株式会社製)を固形分換算で2重量部を添加し、上記アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、粘着付与剤(商品名「ペンセル D−125」、荒川化学工業株式会社製)固形分換算で30重量部を添加し、さらに、上記アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、導電粒子(商品名「Ag−HWQ−400」、福田金属箔粉工業株式会社製、銀フィラー)固形分換算で35重量部を添加し、これを混合することによって粘着剤組成物溶液を調製した。
次に、シリコーンが塗布された剥離紙に、上記粘着剤組成物溶液を乾燥後の厚みが45μmとなるように塗布し、これを130℃で3分間オーブンで乾燥させた後、粘着剤層を得た。
次に、得られた粘着剤層表面に錫コート銅箔(錫メッキが施された銅箔、厚み:35μm)を貼り合わせ、続いてこれをロール状に巻き取ることによって、「錫コート銅箔/粘着剤層/剥離紙」の構成を有する導電性粘着テープのロール状巻回体を得た。
なお、上記導電性粘着テープの粘着剤層のゲル分率は、43重量%であった。
【0107】
[測定]
上記導電性粘着テープについて以下の測定を行った。結果は表1に示した。
【0108】
(1)抵抗値(恒温恒湿試験)
(評価用基板の作製)(図15参照)
実施例および比較例で得られた導電性粘着テープを、幅6mm×長さ60mmのサイズに切り出し、セパレータを剥離して導電性粘着テープ片を得た。
銀メッキが施された導体パターン(Cu18μm/Ni3〜7μm/Au0.03μm/Ag5μm)51a〜hが、図15に示す配置で形成されたガラスエポキシ基板(厚み:1.6mm)を用い、上記導体パターンへの導電性粘着テープの貼付部分53a〜dのサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように、5kgのローラーを1往復させて、導電性粘着テープ片(52a、52b)を貼付(圧着)した。次いで、上記導体パターン51a〜hに定電流電源(54a、54b)および電位計(55a〜d)を、リード線を用いてはんだ付けによって接続した。
なお、図15に示す評価用基板における電気回路は、図1の評価用基板における電気回路を2個配列したものに相当する。
(抵抗評価用サンプルの作製)
図15に示す評価用基板における領域56に、酢酸ビニル含有量28%の熱硬化型EVAフィルム(厚み:0.6mm)を重ね、さらに上からガラス板(厚み:3.2mm)を重ねて、「評価用基板/EVAフィルム/ガラス板」の構成を有する積層体を得た。当該積層体を、真空プレス機を使用して、まず150℃の状態でプレスを行わず40秒間真空引き行い、その後真空引きしたままの状態で150℃にて0.1MPaの圧力で400秒間プレスし(真空引きは引き始めてから400秒間で終了させる)、その後プレス機から上記積層体を取り出して、150℃オーブンで40分間加熱して、EVAを熱硬化させることにより、抵抗評価用サンプルを得た。
(恒温恒湿槽)
恒温恒湿槽として、商品名「PL−3K」(エスペック株式会社製)を用い、槽内(チャンバー内)を、温度85℃、湿度85%RHに設定した。
(抵抗値の測定)
上記抵抗評価用サンプルを、定電流電源(54a、54b)によって2Aの定電流を流した状態(すなわち、図15における貼付部分53a〜dに2Aの定電流を流した状態)で、温度85℃、湿度85%RHに設定した恒温恒湿槽内に入れ、電位計(55a〜d)によって電圧を連続的に測定し、貼付部分53a〜dの抵抗値(接触抵抗値)を連続的に取得した。これにより初期(0時間後)の抵抗値および初期から1500時間後の抵抗値を測定し、抵抗値倍率を算出した。
なお、初期の抵抗値は、電流が流れている上記抵抗評価用サンプルを恒温恒湿槽内にいれた直後の抵抗値である。
表1には、貼付部分53a〜dのそれぞれにおいて測定された、初期の抵抗値、1500時間後および抵抗値倍率の平均値(N=4)を示した。
【0109】
(2)端子部の面積(端子部の総面積、端子部の平均面積)
実施例および比較例で得られた導電性粘着テープを幅5mm×長さ6mmのサイズ(面積:30mm2)に切り出し、セパレータを剥離して、これを測定サンプルとした。
上記測定サンプルの粘着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズ:VH−Z20)にて端子部の画像(投影面の画像)を観察した。次いで、計測モードにて、上記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって、端子部の面積を計測した。同様にして、上記測定サンプルに存在する全ての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を算出した。
また、上記測定サンプルに存在する貫通孔の数を数え、上記で算出した粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を、上記貫通孔の数で割ることによって、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を算出した。
【0110】
【表1】

表1の「導電方式」は「粘着剤層の電気導電性を向上させるために採用した方式」のことであり、「貫通孔方式」は「金属箔側から貫通孔を開け、粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、これを端子部とする方式」のことであり、「導電粒子含有方式」は「粘着剤層中に導電性の粒子を含有させる方式」のことである。
【0111】
表1の結果から明らかなように、本発明の導電性粘着テープ(実施例)は、初期抵抗値の値が低く、抵抗値倍率が低い。このため、本発明の導電性粘着テープ(実施例)は、常時安定した電気伝導性を発揮し、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮できる。
一方、比較例の導電性粘着テープは、初期抵抗値の値が低いが、抵抗値倍率が高い。このため、比較例の導電性粘着テープは、安定した電気伝導性を発揮することができなかった。
【符号の説明】
【0112】
11a〜d 銀メッキが施された導体パターン(導体パターン)
12 導電性粘着テープ
13 貼付部分
14 定電流電源
15 電位計
16 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)によって封止される領域(封止領域)
17 貼付部分の抵抗(接触抵抗)
18a ガラスエポキシ基板
18b ガラス板
19 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の硬化物
21 金属箔
22 粘着剤層
23 導電性粘着テープ
24 端子部
25 貫通孔
26 導通部
27 突出部(バリ)
27a 貫通孔25に対して粘着剤層の進行方向側に位置する突出部
27b 貫通孔25に対して粘着剤層の進行方向とは反対側に位置する突出部
28 プレスロール
31 オス型
32 メス型
41 スキージ(剣スキージ)
42 先端角度
43 粘着剤層表面とスキージ先端がなす角度
51a〜h 銀メッキが施された導体パターン(導体パターン)
52a、52b 導電性粘着テープ(導電性粘着テープ片)
53a〜d 貼付部分(導電性粘着テープと導体パターンの貼り合わせ部分)
54a、54b 定電流電源
55a〜d 電位計
56 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)によって封止される領域(封止領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の片面側に粘着剤層を有する粘着テープであって、
下記の恒温恒湿試験において測定される、初期(0時間後)の抵抗値が1Ω以下であり、かつ1500時間後の抵抗値が初期の抵抗値の5倍以下であることを特徴とする導電性粘着テープ。
[恒温恒湿試験]
導電性粘着テープを貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキに貼付し、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽中で、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流し、前記貼付部分の抵抗値を連続的に測定する。
【請求項2】
前記粘着剤層側の表面に露出した端子部を有し、前記粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.15〜5mm2である請求項1に記載の導電性粘着テープ。
【請求項3】
前記端子部が、前記金属箔側から貫通孔を開け、前記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部である請求項2に記載の導電性粘着テープ。
【請求項4】
前記貫通孔1個あたりの端子部の平均面積が50,000〜500,000μm2である請求項3に記載の導電性粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−49763(P2013−49763A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187682(P2011−187682)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】