説明

導電性粘着テープ

【課題】長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮できる導電性粘着テープを提供する。
【解決手段】導電性粘着テープは、金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記粘着剤層が、5〜69重量%のゲル分率を有し、かつ導電性フィラーを含有しないことを特徴とする。また、導電性粘着テープは、金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記粘着剤層が、5〜69重量%のゲル分率を有し、かつ導電性フィラーを含有することを特徴とする。上記導電性粘着テープは、ヒートサイクル試験において測定される、1サイクル目の抵抗値の最大値が1Ω以下であり、かつ200サイクル目の抵抗値の最大値が1サイクル目の抵抗値の最大値の5倍以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粘着テープに関する。より詳しくは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途等に使用するための導電性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粘着テープは電気伝導性(特に、厚み方向の電気伝導性)を有し、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電磁波シールド用途等に利用されている。このような導電性粘着テープとしては、従来、例えば、金属箔と該金属箔の片面に設けた粘着剤層(感圧性接着剤層)とからなり、上記金属箔の粘着剤層被覆側には上記粘着剤層を貫通し、かつその先端に端子部を持つ導通部が設けられた導電性粘着テープ(例えば、特許文献1〜4参照)や、ニッケル粉などの導電性フィラーが分散された粘着剤層が金属箔上に設けられた導電性粘着テープ(例えば、特許文献5、6参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−46980号公報
【特許文献2】特開平8−185714号公報
【特許文献3】特開平10−292155号公報
【特許文献4】特開平11−302615号公報
【特許文献5】特開2004−263030号公報
【特許文献6】特開2005−277145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電子機器の高機能化や使用態様の多様化に伴って、このような電子機器等に使用される導電性粘着テープには、より長い期間、より過酷な環境条件下で使用された場合であっても、安定した電気伝導性を発揮することが要求されるようになってきている。しかしながら、上記電子機器の内部配線等に上述の導電性粘着テープを用いた場合、導電性粘着テープを貼付した部分の接触抵抗が徐々に高くなり、電気伝導性が経時で低下するという問題が生じていた。このように、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用において、安定した電気伝導性を発揮できる導電性粘着テープは得られていないのが現状である。
【0005】
従って、本発明の目的は、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮できる導電性粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、金属箔の片面側に、導電性フィラーを含有する、又は、導電性フィラーを含有しない粘着剤層を有する導電性粘着テープにおいて、上記粘着剤層のゲル分率を特定範囲に制御することによって、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮できる導電性粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記粘着剤層が、5〜69重量%のゲル分率を有し、かつ導電性フィラーを含有しないことを特徴とする導電性粘着テープを提供する。
なお、該導電性粘着テープを、「第一の態様の導電性粘着テープ」と称する場合がある。
【0008】
上記第一の態様の導電性粘着テープは、下記のヒートサイクル試験において測定される、1サイクル目の抵抗値の最大値が1Ω以下であり、かつ200サイクル目の抵抗値の最大値が1サイクル目の抵抗値の最大値の5倍以下であることが好ましい。
[ヒートサイクル試験]
導電性粘着テープを、貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキに貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流す。これを、槽内の設定温度を25℃から−40℃まで降温した後−40℃で10分間保持し、次いで、85℃まで昇温した後85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとしてこれを繰り返す設定とした恒温槽内に入れて冷却および加熱し、この間、上記貼付部分の抵抗値を連続的に測定する。
【0009】
上記第一の態様の導電性粘着テープは、上記粘着剤層側の表面に露出した端子部を有し、上記粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.15〜5mm2であることが好ましい。
【0010】
上記第一の態様の導電性粘着テープは、上記端子部が、上記金属箔側から貫通孔を開け、上記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部であることが好ましい。
【0011】
上記第一の態様の導電性粘着テープは、上記貫通孔1個あたりの端子部の平均面積が、50,000〜500,000μm2であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記粘着剤層が、5〜69重量%のゲル分率を有し、かつ導電性フィラーを含有することを特徴とする導電性粘着テープを提供する。
なお、該導電性粘着テープを、「第二の態様の導電性粘着テープ」と称する場合がある。
【0013】
上記第二の態様の導電性粘着テープは、下記のヒートサイクル試験において測定される、1サイクル目の抵抗値の最大値が1Ω以下であり、かつ200サイクル目の抵抗値の最大値が1サイクル目の抵抗値の最大値の5倍以下であることが好ましい。
[ヒートサイクル試験]
導電性粘着テープを、貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキに貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流す。これを、槽内の設定温度を25℃から−40℃まで降温した後−40℃で10分間保持し、次いで、85℃まで昇温した後85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとしてこれを繰り返す設定とした恒温槽内に入れて冷却および加熱し、この間、上記貼付部分の抵抗値を連続的に測定する。
【0014】
上記第二の態様の導電性粘着テープは、下記の方法により測定される、上記粘着剤層表面における上記導電性フィラーの表面露出率が2〜5%であることが好ましい。
[表面露出率の測定方法]
導電性粘着テープの上記粘着剤層表面を、0.5重量%ルテニウム酸水溶液を用いて室温で30分間蒸気染色する。その後、スパッタ装置「E−3200」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、上記粘着剤層表面のPt−Pdスパッタリング処理を行い、観察用試料を作製する。
走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「S−4800」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧5kV、測定倍率200倍の条件で、観察用試料の上記粘着剤層表面側の反射電子像(観察範囲:450×575μm2)を測定する。
得られた反射電子像について、画像処理ソフト「Winroof」(三谷商事株式会社製)を用いて二値化し、導電性フィラーに帰属する無機層部分の面積の割合を算出し、表面露出率を測定する。
【0015】
上記第二の態様の導電性粘着テープは、上記粘着剤層の厚みが10〜100μmであることが好ましい。
【0016】
上記第二の態様の導電性粘着テープは、上記導電性フィラーの含有量が、導電性フィラーを除く粘着剤層の全固形分(100重量部)に対して、25〜250重量部であることが好ましい。
【0017】
上記導電性粘着テープは、上記粘着剤層が、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有する粘着剤組成物より形成された粘着剤層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の導電性粘着テープは、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の一例を示す模式図(端子部における断面図)である。
【図2】図2は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の一例を示す模式図(平面図)である。
【図3】図3は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造方法の一例を部分的に示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造に用いられるピンの一例を示す模式図(平面図)である。
【図5】図5は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造に用いられるピンの一例を示す模式図(側面図)である。
【図6】図6は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造に用いられるピンの配置の一例を部分的に示す模式図(平面図)である。
【図7】図7は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造に用いられる、メス型の表面に形成される円柱状の穴の一例を示す模式図(断面図)である。
【図8】図8は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造における、オス型とメス型を用いた打ち抜き(貫通孔の形成)の際の、ピンと円柱状の穴の位置関係の一例を示す模式図(断面図)である。
【図9】図9は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造方法の工程1において、菱形四角錐形状のピンを有するオス型と、円柱状の穴を有するメス型を用いて貫通孔を形成した際の、突出部の形状の一例を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明の導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の製造方法の工程2において、スキージを用いて突出部を折り返し、端子部を形成する態様の一例を示す模式図である。
【図11】図11は、従来の導電性粘着テープの製造方法において、突出部をプレス加工することによって端子部を形成する態様の一例を示す模式図である。
【図12】図12は、導電性粘着テープのヒートサイクル試験において用いられる評価用基板の一例を示す模式図である。
【図13】図13は、導電性粘着テープのヒートサイクル試験において用いられる評価用基板における電気回路の等価回路を示す模式図である。
【図14】図14は、導電性粘着テープのヒートサイクル試験において用いられる抵抗評価用サンプルの一例を示す模式図(図12の貼付部分43における断面図)である。
【図15】図15は、導電性粘着テープのヒートサイクル試験における設定温度(ヒートサイクル条件)の、2サイクル目までのプロファイルを示す図である。
【図16】図16は、実施例のヒートサイクル試験において測定された、チャンバー内雰囲気温度(槽内温度)および導電性粘着テープの表面温度(テープ温度)プロファイルの一例を部分的に示す図である。
【図17】図17は、導電性粘着テープのヒートサイクル試験において用いた評価用基板の一例を示す模式図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の導電性粘着テープは、金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記粘着剤層のゲル分率が特定の範囲に制御された片面粘着テープである。より具体的には、本発明の導電性粘着テープは、「金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記粘着剤層が、5〜69重量%のゲル分率を有し、かつ導電性フィラーを含有しない導電性粘着テープ」、または、「金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記粘着剤層が、5〜69重量%のゲル分率を有し、かつ導電性フィラーを含有する導電性粘着テープ」である。上記の「金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記粘着剤層が、5〜69重量%のゲル分率を有し、かつ導電性フィラーを含有しない導電性粘着テープ」を「第一の態様の導電性粘着テープ」と称する場合がある。また、上記の「金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記粘着剤層が、5〜69重量%のゲル分率を有し、かつ導電性フィラーを含有する導電性粘着テープ」を「第二の態様の導電性粘着テープ」と称する場合がある。なお、本明細書においては、「導電性粘着テープ」という場合には、シート状のもの、すなわち「導電性粘着シート」も含まれるものとする。また、本明細書においては、粘着剤層表面のことを「粘着面」と称する場合がある。
【0021】
以下、本発明の導電性粘着テープにおける、第一の態様の導電性粘着テープ及び第二の態様の導電性粘着テープについて説明する。
【0022】
[第一の態様の導電性粘着テープ]
第一の態様の導電性粘着テープは、金属箔の片面側に、ゲル分率が5〜69重量%であり、かつ導電性フィラーを含有しない粘着剤層を有する。本明細書では、第一の態様の導線性粘着テープの粘着剤層であって、ゲル分率が特定の範囲内であり、かつ導電性フィラーを含有しない粘着剤層を、「第一の粘着剤層」と称する場合がある。
【0023】
(金属箔)
第一の態様の導電性粘着テープを構成する金属箔は、特に限定されず、自己支持性を有し、かつ電気伝導性を示す金属箔であればよい。上記金属箔としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鉛やこれらの合金などの金属箔が挙げられる。中でも、導電性、コスト、加工性の点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましく、より好ましくは銅箔である。
【0024】
また、上記金属箔は、各種表面処理が施されていてもよい。例えば、錫メッキ、銀メッキ、金メッキ等の金属による表面メッキ処理が施されていてもよい。特に、腐食による抵抗値上昇を抑制する点で、錫メッキが施されていることが好ましい。
【0025】
上記金属箔としては、錫メッキが施された銅箔(錫コート銅箔)が特に好ましい。
【0026】
上記金属箔の厚みとしては、特に限定されないが、10〜100μmが好ましく、より好ましくは20〜80μm、さらに好ましくは30〜60μmである。厚みを10μm以上とすることにより、十分な強度を有するため、作業性が向上する。一方、厚みを100μm以下とすることにより、コスト面で有利となる。また、厚みが100μm以下であると、特に、下記の貫通孔を有する導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の場合には貫通孔を形成しやすいため、生産性が向上する。
【0027】
(第一の粘着剤層)
第一の粘着剤層を構成する粘着剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。上記粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記粘着剤は、いずれの形態を有している粘着剤であってもよく、例えば、活性エネルギー線硬化型粘着剤、溶剤型(溶液型)粘着剤、エマルジョン型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などであってもよい。
【0028】
中でも、第一の粘着剤層を構成する粘着剤としては、耐熱性、耐候性及びポリマーの設計の容易さの点から、アクリル系粘着剤が好ましい。すなわち、第一の粘着剤層は、アクリル系粘着剤層であることが好ましい。なお、本明細書において、第一の粘着剤層としてのアクリル系粘着剤層を「第一のアクリル系粘着剤層」と称する場合がある。
【0029】
第一の粘着剤層は、粘着剤組成物により形成される。なお、本明細書において、粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する組成物であり、粘着剤を形成する組成物を含む概念である。また、第一の粘着剤層を形成する粘着剤組成物を「第一の粘着剤組成物」と称する場合がある。
【0030】
第一の粘着剤層としてのアクリル系粘着剤層(第一のアクリル系粘着剤層)は、アクリル系ポリマーを必須成分として含む粘着剤組成物(第一のアクリル系粘着剤組成物)より形成されることが好ましい。第一のアクリル系粘着剤層(100重量%)中のアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、65重量%以上(例えば、65〜100重量%)であることが好ましく、より好ましくは70〜99重量%である。なお、上記第一のアクリル系粘着剤組成物には、アクリル系ポリマーに加えて、必要に応じて、その他の成分(添加剤)などが含まれていてもよい。
【0031】
第一のアクリル系粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーは、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成されるアクリル系ポリマーであることが好ましい。また、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分には、さらに、極性基含有単量体、多官能性単量体やその他の共重合性単量体が共重合モノマー成分として含まれていてもよい。これらの共重合モノマー成分を用いることにより、たとえば、被着体への接着力を向上させたり、粘着剤層の凝集力を高めたりすることができる。なお、上記のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表す。
【0032】
上記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する場合がある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
中でも、基板表面への粘着性とバルクの粘着剤の弾性率の点から、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを併用することが好ましい。すなわち、第一の粘着剤層は、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されるアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。特に、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸n−ブチルが好ましい。また、アルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニルが好ましい。
【0034】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを併用する場合、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの割合[前者:後者](重量比)としては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの割合が多すぎるとタックが弱くなって粘着性が低下する場合があり、一方、アルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの割合が多すぎると粘着剤層が軟らかくなりすぎる場合があるので、50:50〜90:10が好ましく、より好ましくは60:40〜80:20である。
【0035】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対する、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、特に限定されないが、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは60〜99.9重量%である。
【0036】
上記の極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体(無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有単量体も含む);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾールなどの複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。中でも、カルボキシル基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体が好ましく、アクリル酸、アクリル酸4−ヒドロキシブチルがより好ましい。なお、上記の極性基含有単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対する、上記の極性基含有単量体の割合は、特に限定されないが、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。極性基含有単量体の割合を1重量%以上とすることにより、粘着剤層の凝集力が向上する。一方、極性基含有単量体の割合を30重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着性が向上する。
【0038】
また、上記の多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。なお、上記の多官能性単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対する、上記の多官能性単量体の割合は、特に限定されないが、0.5重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)が好ましく、より好ましくは、0〜0.3重量%以下である。多官能性単量体の割合を0.5重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着性が向上する。なお、架橋剤を用いる場合には多官能性単量体を用いなくてもよいが、架橋剤を用いない場合には、多官能性単量体の割合は0.001〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.1重量%である。
【0040】
また、極性基含有単量体や多官能性単量体以外のその他の共重合性単量体(以下、「その他の共重合性単量体」と称する場合がある。)としては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0041】
上記アクリル系ポリマーの作製方法としては、特に限定されず、公知乃至慣用の重合方法が挙げられる。例えば、上記アクリル系ポリマーは、上記のモノマー成分を公知乃至慣用の重合方法により重合することにより得られる。上記重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、溶液重合方法がより好ましい。
【0042】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤が用いられる。このような溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。なお、溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記アクリル系ポリマーの重合に際して用いられる重合開始剤は、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択される。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などの油溶性重合開始剤が好ましく挙げられる。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、重合開始剤の使用量は、特に限定されず、従来、重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0044】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、30万〜120万が好ましく、より好ましくは35万〜100万、さらに好ましくは40万〜90万である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量を30万以上とすることにより、粘着性が向上する。一方、120万以下とすることにより、塗工性が向上する。アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールされる。
【0045】
第一の粘着剤組成物、特に第一のアクリル系粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を用いることにより、粘着剤層が含有するベースポリマー(例えば、第一のアクリル系粘着剤層を構成するアクリル系ポリマー)を架橋させ、粘着剤層の凝集力を一層大きくすることができる。架橋剤としては、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択される。例えば、多官能性メラミン化合物(メラミン系架橋剤)、多官能性エポキシ化合物(エポキシ系架橋剤)、多官能性イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)が好ましく挙げられる。中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤がより好ましく、イソシアネート系架橋剤がさらに好ましい。なお、架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。他にも、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートHL」]などの市販品も挙げられる。
【0047】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。他にも、三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッドC」などの市販品も挙げられる。
【0048】
第一の粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されない。例えば、第一のアクリル系粘着剤組成物にイソシアネート系架橋剤を含有させる場合、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0〜5重量部が好ましく、より好ましく1〜3重量部である。また、第一のアクリル系粘着剤組成物にエポキシ系架橋剤を含有させる場合、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01〜1.0重量部が好ましく、より好ましく0.02〜0.07重量部である。
【0049】
さらに、第一の粘着剤組成物、特に第一のアクリル系粘着剤組成物は、粘着性向上の点から、粘着付与剤(粘着付与樹脂)を含有することが好ましい。上記粘着付与剤としては、例えば、テルペン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、石油系粘着付与剤などが挙げられる。また、粘着付与剤としては、オリゴマー(重量平均分子量2万未満の重合体)も挙げられる。該オリゴマーとしては、例えば、アクリル系オリゴマー、スチレン系オリゴマーなどが挙げられる。中でも、粘着付与剤としては、ロジン系粘着付与剤やアクリル系オリゴマーが好ましい。なお、上記粘着付与剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記テルペン系粘着付与剤としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0051】
また、上記フェノール系粘着付与剤としては、例えば、各種フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂など)、上記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、上記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックの他、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジン変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0052】
さらに、上記ロジン系粘着付与剤としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。なお、上記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物や、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物などのロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン類や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩などが挙げられる。
【0053】
さらにまた、上記石油系粘着付与剤としては、例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂(脂肪族環状石油樹脂)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加石油樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂などが挙げられる。上記芳香族系石油樹脂としては、例えば、炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。中でも、ビニルトルエンやインデン等の留分(いわゆる「C9石油留分」)から得られる芳香族系石油樹脂(いわゆる「C9系石油樹脂」)が好ましい。また、上記脂肪族系石油樹脂としては、例えば、炭素数4〜5のオレフィンやジエン[ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1等のオレフィン;ブタジエン、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、イソプレン等のジエンなど]が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。中でも、ブタジエン、ピペリレンやイソプレン等の留分(いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」など)から得られる脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)が好ましい。さらに、上記脂環族系石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン、エチリデンビシクロヘプテン、ビニルシクロヘプテン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、リモネンなど)の重合体又はその水素添加物、上記の芳香族系炭化水素樹脂や、下記の脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂などが挙げられる。さらにまた、脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、スチレン−オレフィン系共重合体などが挙げられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、いわゆる「C5/C9共重合系石油樹脂」なども挙げられる。
【0054】
上記粘着付与樹脂としては、市販品も挙げられ、例えば、商品名「ハリエスター」(ハリマ化成株式会社製)、商品名「エステルガム」、「ペンセル」(荒川化学工業株式会社製)、製品名「リカタック」(株式会社理化ファインテク製)などが挙げられる。
【0055】
第一の粘着剤組成物中の粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、第一のアクリル系粘着剤組成物の場合、アクリル系ポリマー(100重量部)に対して、10〜50重量部が好ましく、より好ましくは15〜45重量部である。
【0056】
さらに、第一の粘着剤組成物(特に第一のアクリル系粘着剤組成物)には、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、架橋促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤などの公知の添加剤や溶剤(上記のアクリル系ポリマーの溶液重合の際に使用可能な溶剤など)が含まれていてもよい。さらに、第一の粘着剤組成物(特に第一のアクリル系粘着剤組成物)には、本発明の効果を損なわない範囲で、オリゴマー(重量平均分子量2万未満の重合体、上記粘着付与剤としてのオリゴマーは除く)が含まれていてもよい。
【0057】
第一の粘着剤組成物は、特に限定されないが、公知の方法により作製される。例えば、第一のアクリル系粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(又はアクリル系ポリマー溶液)、架橋剤、溶剤、粘着付与剤などを混合することにより、作製されてもよい。
【0058】
第一の粘着剤層の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、第一の粘着剤組成物(特に第一のアクリル系粘着剤組成物)を、金属箔又はセパレータに塗布(塗工)し、必要に応じて、乾燥及び/又は硬化する方法が挙げられる。
【0059】
なお、第一の粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法が用いられる。例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどのコーターを用いる方法が挙げられる。
【0060】
第一の粘着剤層のゲル分率は、5〜69重量%であり、好ましくは20〜69重量%、より好ましくは35〜68重量%である。上記ゲル分率を5重量%以上とすることにより、粘着剤層の凝集力が小さくなりすぎることを防ぎ、強度が不足すること及び粘着剤層が軟らかくなりすぎることを防止できる。また、粘着テープの切断加工時に粘着剤が刃に付着したり、被着体に貼付した場合に粘着剤層が変形して被着体の端部からはみ出す、いわゆる「糊はみ出し」を防止できる。さらに、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用における被着体からの浮きや剥がれを防止できる。さらにまた、良好な接着信頼性を得ることができる。一方、上記ゲル分率を69重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が大きくなりすぎることを防ぎ、柔軟な粘着剤層を得ることができる。また、段差部分や凹凸部分に粘着剤層が追従しやすくなり、良好な段差吸収性や良好な接着信頼性が得られる。さらに、被着体への貼付時における密着性や低温での追従性に優れる。さらに、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用において、環境が変化しても、被着体に対する接触面積が低下しにくく、安定した電気伝導性を発揮できる。
【0061】
なお、第一の粘着剤層のゲル分率は、多官能モノマーや架橋剤の種類や含有量(使用量)などにより制御することができる。
【0062】
第一の粘着剤層のゲル分率(溶剤不溶分の割合)は、酢酸エチル不溶分として求めることができる。具体的には、第一の粘着剤層を酢酸エチル中に室温(23℃)で7日間浸漬した後の不溶分の、浸漬前の試料(第一の粘着剤層)に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。より具体的には、上記ゲル分率とは、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
第一の粘着剤層:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、第一の粘着剤層と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、第一の粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み、凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて1週間(7日間)静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=(A−B)/(C−B)×100
(上記式において、Aは浸漬後重量であり、Bは包袋重量であり、Cは浸漬前重量である。)
【0063】
第一の粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、10〜80μmが好ましく、より好ましくは20〜60μm、さらに好ましくは20〜50μmである。厚みを10μm以上とすることにより、貼付時に発生する応力が分散されやすく、剥がれが生じにくくなる。一方、厚みを80μm以下とすることにより、製品の小型化や薄膜化に有利となる。特に、下記の貫通孔を有する導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の場合には、粘着剤層の厚みが厚すぎると、貫通孔を開けて形成した突出部が沈み込んでしまう(すなわち、突出部が貫通孔を塞ぐ方向に倒れ込む)ことにより、金属箔が粘着剤層側の表面に露出できず(当該現象を「粘着剤層による侵食」と称する)、端子部の面積を大きくすることが困難となる傾向がある。厚みを80μm以下とすることによって、上記のような粘着剤層による侵食が抑制され、端子部の面積を効率的に大きくすることができるため、安定した電気伝導性を発揮させることができる。
【0064】
第一の態様の導電性粘着テープの厚みは、特に限定されないが、20〜180μmが好ましく、より好ましくは40〜140μm、さらに好ましくは50〜110μmである。上記厚みを20μm以上とすることにより、十分なテープ強度を有し、作業性が向上する。一方、上記厚みを180μm以下とすることにより、製品の薄膜化や小型化に有利となる。なお、上記「導電性粘着テープの厚み」とは、導電性粘着テープにおける金属箔表面(金属箔表面のうち粘着剤層を有しない側の表面)から粘着面までの厚みを意味する。
【0065】
なお、第一の態様の導電性粘着テープは、上記の金属箔、粘着剤層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0066】
第一の態様の導電性粘着テープの好ましい具体的態様としては、特に限定されないが、金属箔の片面側に第一の粘着剤層を有し、第一の粘着剤層側の表面に露出した端子部を有する粘着テープであって、第一の粘着剤層(第一の粘着剤層側の表面)30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.15〜5mm2に制御された導電性粘着テープ(以下、当該具体的態様の導電性粘着テープを「導電性粘着テープA」と称する)が好ましく挙げられる。
【0067】
上記「端子部」とは、導電性粘着テープAの第一の粘着剤層側の表面に露出している金属部分(金属部分の表面が酸化されている場合も含む)であり、かつ、導電性粘着テープAにおける金属箔と電気的に導通する部分である。具体的には、導電性粘着テープAを第一の粘着剤層表面側から観察した時に、露出している金属部分をいう。
【0068】
導電性粘着テープAはこのような端子部を有するため、被着体に貼付する際には上記端子部の少なくとも一部が被着体と接触することによって、被着体と導電性粘着テープAの金属箔との間の電気的導通が確保される。すなわち、上記端子部は、導電性粘着テープAにおいて、厚み方向の電気伝導性を発揮させる役割を担う。中でも、上記端子部としては、厚み方向に安定した導電性を発揮させる点から、導電性粘着テープを構成する金属箔の一部により形成された端子部であること、すなわち、導電性粘着テープを構成する金属箔の一部が第一の粘着剤層側の表面に露出することによって形成された端子部であることが好ましい。
【0069】
導電性粘着テープAにおける、第一の粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積(第一の粘着剤層側の表面30mm2あたりに存在する端子部の総面積)(以下、単に「端子部の総面積」と称する場合がある)は、0.15〜5mm2であり、好ましくは0.3〜5mm2、より好ましくは0.4〜5mm2である。上記端子部の総面積を0.15mm2以上とすることにより、長期の使用や過酷な環境下での使用による、端子部と被着体との接触面積(以下、単に「接触面積」と称する場合がある)の低下に伴う急激な抵抗値上昇を防ぎ、安定した電気伝導性を発揮することができる。一方、上記端子部の総面積を5mm2以下とすることにより、被着体に対する粘着性が向上する。なお、「端子部の面積」とは、導電性粘着テープAの第一の粘着剤層側の表面を第一の粘着剤層表面に対して垂直方向から観察した時に、露出している金属部分(端子部)の面積をいう。すなわち、第一の粘着剤層側の表面を第一の粘着剤層表面に対して垂直方向から観察した時の、端子部の投影面積のことを指す。
【0070】
上記端子部の総面積は、特に限定されないが、例えば、第一の粘着剤層30mm2あたりに存在する全ての端子部について、それぞれの面積(投影面積)を測定し、これらを合計することによって測定することができる。より具体的には、例えば、下記の方法により測定される。
[端子部の総面積の測定方法]
導電性粘着テープを長さ6mm×幅5mm(面積:30mm2)のサイズに切り出し、これを測定サンプルとする。
上記測定サンプルの粘着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズは「VH−Z20」を使用)にて観察し、端子部(粘着剤層側の表面に露出している金属部分)の画像(投影面の画像)を撮影する。次に、計測モードにて、上記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって端子部の面積を測定する。同様に、上記測定サンプルに存在するすべての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を算出する。
より詳しくは、下記(評価)の「(3)端子部の面積」に記載の方法により測定することができる。
なお、導電性粘着テープのテープ幅が6mmに満たない場合には、例えば、粘着剤層の面積が30mm2となるように長さを調整して切り出した測定サンプルを用いて測定してもよいし、粘着剤層の面積が30mm2よりも小さい測定サンプルを用いて測定して得られた値を粘着剤層30mm2あたりの値に換算することによって測定してもよい。
【0071】
なお、上記端子部の総面積の測定方法としては、上述の測定方法に限定されず、例えば、任意の面積(例えば、100cm2など)の粘着剤層あたりに存在する全ての端子部の面積(投影面積)を測定してこれらを合計し、その後、粘着剤層30mm2あたりの数値に換算する方法を用いることもできる。
【0072】
導電性粘着テープAにおいて、上記端子部を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、金属箔側からエンボス加工を施して金属箔の一部を第一の粘着剤層側の表面に露出させ、これを端子部とする方法や、金属箔側から貫通孔を開け、第一の粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、これを端子部とする方法などが挙げられる。中でも、金属箔側から貫通孔を開け、第一の粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、これを端子部とする方法が好ましく、さらに安定した電気伝導性を発揮させる点からは、金属箔側から貫通孔を開け、第一の粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返してこれを端子部とする方法が好ましい。すなわち、導電性粘着テープAにおける端子部としては、金属箔側から貫通孔を開け、第一の粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部であることが好ましい。端子部を上記方法により形成すると、第一の粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を、上記範囲に制御することが容易となるため、好ましい。
【0073】
以下では、上述の金属箔側から貫通孔を開け、第一の粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返してこれを端子部とする方法により得られる導電性粘着テープを、「導電性粘着テープa」と称する。すなわち、導電性粘着テープaは、端子部が、金属箔側から貫通孔を開け、第一の粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部である導電性粘着テープである。以下に、導電性粘着テープaについて詳細に説明する。但し、第一の態様の導電性粘着テープは、これに限定されるものではない。なお、上記「突出部」とは、上記貫通孔を設けた時に第一の粘着剤層側の表面に突き出した金属箔のことをいい、「バリ」ということもある。また、本明細書において「突出部を折り返す」とは、突出部を構成する金属箔が粘着剤層側の表面に露出するように、上記突出部を折り曲げることを指す。
【0074】
導電性粘着テープaは、金属箔の片面側に第一の粘着剤層を有し、金属箔並びに第一の粘着剤層を貫通する孔(貫通孔)が設けられ、上記貫通孔を通して金属箔の一部が第一の粘着剤層側の表面に露出し、これを端子部とする構成を有する片面粘着テープである。このような端子部を有することにより、金属箔と被着体に対する貼着面との間で電気伝導性(厚み方向の電気伝導性)が確保される。図1および図2は、導電性粘着テープaの構成の一例を示す模式図である。図1(導電性粘着テープaの模式図(端子部における断面図))において、導電性粘着テープ13は、金属箔11の片面側に第一の粘着剤層12aを有しており、金属箔11並びに第一の粘着剤層12aには貫通孔15が設けられ、貫通孔15を通して金属箔11の一部が第一の粘着剤層側の表面に露出することによって端子部14が形成されている。このように、導電性粘着テープaにおいては、貫通孔15と端子部14とにより、金属箔11と端子部14との間を通電させる役割を果たす導通部16が形成されている。
図2は、導電性粘着テープaの一例を示す模式図(平面図)である。図2における貫通孔15の位置パターンは、いわゆる、散点パターンであり、例えば、長手方向の配置間隔がxの列を間隔yで配列し、かつ互いに隣り合う列間において半ピッチずらしたものを使用できる。上記配置間隔xとしては、特に限定されないが、例えば、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、上記間隔yとしては、特に限定されないが、例えば、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。
【0075】
導電性粘着テープaにおける、第一の粘着剤層30mm2あたりに存在する貫通孔の数(密度)(粘着剤層側の表面30mm2あたりに存在する貫通孔の数)としては、特に限定されないが、例えば、3〜10個/30mm2が好ましく、より好ましくは3〜6個/30mm2である。上記貫通孔の数を3個/30mm2以上とすることにより、被着体に対する導電性粘着テープの端子部の接触箇所が多くなるため、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用によって端子部それぞれの接触面積が低下した場合であっても、十分な接触箇所を保持することにより電気的導通を確保し、急激な抵抗値上昇を抑えることができる。一方、上記貫通孔の数を10個/30mm2以下とすることにより、導電性粘着テープが十分な強度を保持することができ、作業性が向上する。
【0076】
上記貫通孔の数(密度)は、特に限定されないが、例えば、任意の面積(例えば、30mm2、100cm2など)の粘着剤層あたりに存在する貫通孔の数を、目視又はデジタルマイクロスコープ等を用いて数え、必要に応じて粘着剤層30mm2あたりの数に換算することにより、測定することができる。
【0077】
導電性粘着テープaにおける、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積(以下、単に「端子部の平均面積」と称する場合がある)は、50,000〜500,000μm2が好ましく、より好ましくは100,000〜400,000μm2であり、さらに好ましくは100,000〜300,000μm2である。端子部の平均面積を50,000μm2以上とすることにより、被着体に対する端子部の接触面積が大きくなるため、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用によって接触面積が低下した場合であっても、電気伝導性の確保には十分な接触面積を保持することができ、安定した電気伝導性を発揮することができる。一方、端子部の平均面積を500,000μm2以下とすることにより、貫通孔が大きくなり過ぎることがないため、導電性粘着テープが十分な強度を保持することができ、作業性が向上する。
【0078】
上記端子部の平均面積は、特に限定されないが、例えば、粘着剤層30mm2あたりに存在する全ての端子部について、それぞれの投影面積を測定し、これらを合計した面積(粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積)を、粘着剤層30mm2あたりに存在する貫通孔の数で割ることによって求めることができる。より具体的には、例えば、下記の方法により測定することができる。
[端子部の平均面積の測定方法]
導電性粘着テープを長さ6mm×幅5mm(面積:30mm2)のサイズに切り出し、これを測定サンプルとする。
上記測定サンプルの粘着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズは「VH−Z20」を使用)にて観察し、端子部(粘着剤層側の表面に露出している金属部分)の画像(投影面の画像)を撮影する。次に、計測モードにて、上記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって端子部の面積を測定する。同様に、上記測定サンプルに存在する全ての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を算出する。
上記で計測した端子部の総面積を、上記測定サンプルに存在する貫通孔の数(目視又やデジタルマイクロスコープ等により数えることができる)で割ることによって、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を求めることができる。
なお、導電性粘着テープのテープ幅が6mmに満たない場合には、例えば、粘着剤層の面積が30mm2となるように長さを調整して切り出した測定サンプルを用いて測定してもよいし、粘着剤層の面積が30mm2よりも小さい測定サンプルを用いて測定して得られた値を粘着剤層30mm2あたりの値に換算することによって測定してもよい。
なお、より詳しくは、下記(評価)の「(3)端子部の面積」に記載の方法により測定することができる。
【0079】
なお、上記端子部の平均面積の測定方法としては、上述の測定方法に限定されず、例えば、任意の面積(例えば、100cm2など)の粘着剤層あたりに存在する全ての端子部の面積(投影面積)を測定してこれらを合計し、その後、上記の粘着剤層(任意の面積の粘着剤層)あたりに存在する貫通孔の数で割る方法を用いることもできる。
【0080】
導電性粘着テープaを構成する金属箔としては、上記で例示したものを好ましく使用することができる。また、上記金属箔の厚みについても上述の範囲に制御することが好ましい。なお、導電性粘着テープaにおける「金属箔の厚み」とは、導電性粘着テープaにおいて端子部が形成されていない部分の金属箔の厚みのことをいう。
【0081】
導電性粘着テープaを構成する第一の粘着剤層としては、上記で例示したものを好ましく使用することができる。また、第一の粘着剤層の厚みについても上述の範囲に制御することが好ましい。なお、導電性粘着テープaにおける「第一の粘着剤層の厚み」とは、導電性粘着テープaにおいて端子部が形成されていない部分の第一の粘着剤層の厚みのことをいう。
【0082】
導電性粘着テープaにおける、金属箔の厚みに対する第一の粘着剤層の厚みの比[(第一の粘着剤層の厚み)/(金属箔の厚み)]としては、0.1〜10が好ましく、より好ましくは0.2〜9、さらに好ましくは0.3〜8である。金属箔の厚みに対する第一の粘着剤層の厚みの比を0.1以上とすることにより、基材(金属箔)の剛性に対して十分な粘着力を得ることができる。一方、金属箔の厚みに対する第一の粘着剤層の厚みの比を10以下とすることにより、上記の粘着剤層による侵食が抑制され、端子部の面積を広くすることができる。
【0083】
導電性粘着テープaの具体的な製造方法としては、特に限定されないが、例えば、金属箔の片面側に第一の粘着剤層を有する積層体に、金属箔側から貫通孔を開け、第一の粘着剤層の表面に金属箔の突出部を形成する工程(当該工程を「工程1」と称する場合がある)、次いで、上記突出部を折り返す工程(当該工程を「工程2」と称する場合がある)を少なくとも含む製造方法が挙げられる。上記工程2の後には、必要に応じて、プレス加工を施す工程(当該工程を「工程3」と称する場合がある)を含んでいてもよい。図3は、導電性粘着テープaの製造方法の一例を示す模式図である。図中の11は金属箔を、12aは第一の粘着剤層を表している。また、15は貫通孔を、17は突出部を表し、14は端子部を表している。
【0084】
金属箔の片面側に第一の粘着剤層を有する積層体は、特に限定されないが、例えば、金属箔の片面側に第一の粘着剤層を形成することによって製造されてもよい。なお、金属箔の片面側に粘着剤層を形成する工程は、導電性粘着テープaの製造とは別に実施してもよいし、導電性粘着テープaの製造と一連の工程として(すなわち、インラインで)実施してもよい。上記積層体を製造する際の金属箔の片面側への第一の粘着剤層の形成方法としては、公知慣用の粘着剤層の形成方法を用いることができ、特に限定されず、例えば、上記の第一の粘着剤層の形成方法を用いることができる。なお、この際、金属箔の表面に第一の粘着剤層を直接形成してもよいし(直写法)、セパレータ上に第一の粘着剤層を形成した後、これを金属箔に転写する(貼り合わせる)ことにより、金属箔の表面に第一の粘着剤層を設けてもよい(転写法)。
【0085】
(工程1)
工程1では、金属箔の片面側に第一の粘着剤層を有する積層体に、金属箔側から貫通孔を開け、第一の粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成する。貫通孔を開ける方法としては、特に限定されないが、例えば、公知慣用の穿孔方法が挙げられる。中でも、均一な貫通孔を形成する点で、表面に貫通孔を形成するためのピンが設けられたオス型を用いた貫通孔形成方法が好ましい。
【0086】
上記ピンの形状としては、貫通孔を形成可能な突起形状であればよく、特に限定されないが、例えば、円錐、三角錐、四角錐等の角錐(多角錐)、円柱、三角柱、四角柱等の角柱(多角柱)やこれらに類似した形状などが挙げられる。中でも、上記ピンの形状としては、均一な貫通孔を形成する点で、角錐形状が好ましい。
【0087】
上記オス型における上記ピンの配置としては、特に限定されず、導電性粘着テープaが有する貫通孔の配置に応じて、適宜選択される。例えば、導電性粘着テープaの長手方向(MD)に対応するピンの間隔としては、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、導電性粘着テープの幅方向(TD)に対応するピンの間隔としては、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。上記ピンの位置パターンについても、特に限定されないが、例えば、図2に示す導電性粘着テープaにおける貫通孔の位置パターンと同様の散点パターンで配置することができる。
【0088】
より具体的には、上記貫通孔を設ける際に用いるオス型としては、例えば、図4および図5に示すような菱形四角錐形状のピンを、図6に示すような位置パターン(長手方向(導電性粘着テープの長手方向)の配置間隔がiの列を間隔hで配列し、かつ互いに隣り合う列間で半ピッチずらした散点パターン)で配置したものを使用することができる。このようなピンの底面形状(菱形)のサイズとしては、例えば、図4におけるcが0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2mm、図4におけるdが0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2mmのものを使用することができる。また、図4における底面の角度eとしては、例えば、30〜120°が好ましく、より好ましくは40〜100°である。
また、図5におけるf(ピンの高さ)としては、例えば、0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは1〜2mmである。図5におけるgとしては、例えば、0.01〜0.5mmが好ましく、より好ましくは0.02〜0.4mmである。
さらに、図6における間隔iとしては、例えば、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、図6における間隔hとしては、例えば、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。
【0089】
特に限定されないが、上記オス型を用いて貫通孔を形成する場合には、オス型が有するピンの形状に対応した凹部分を有するメス型を併せて用いることが好ましい。このようなメス型を用いることにより、より折り返しやすい突出部を形成することができ、端子部の面積を大きくできる傾向にある。上記メス型が有する凹部分の形状やサイズは、特に限定されず、オス型が有するピンの形状やサイズによって適宜選択することができる。具体的には、例えば、図7に示す断面形状の円柱状の穴などを挙げることができる。図7に示す円柱状の穴のサイズとしては、特に限定されないが、例えば、図7におけるj(底辺の直径)が0.5〜3mm、図7におけるk(深さ)が0.5〜3mmのものを使用することができる。
【0090】
図8は、図4、5に示すピンを有するオス型21と、図7に示す円柱状の穴を有するメス型22を用いた打ち抜きの際の、ピンと円柱状の穴の配置の一例を示す。
【0091】
図9は、上記で例示した菱形四角錐形状のピンを有するオス型と円柱状の穴を有するメス型を用いた打ち抜き加工によって形成された、貫通孔および突出部の形状の一例を示す模式図である。当該例では、貫通孔の形状は菱形であり、当該貫通孔1個あたりに4つの突出部が形成されている。
【0092】
上記のピンが設けられたオス型を用いた打ち抜きによる、具体的な貫通孔形成方法としては、例えば、金属箔の片面側に第一の粘着剤層を有する積層体を、ピンが所望の配置で表面に形成されたロール(「オス型ロール」と称する場合がある)と、ロール表面に凹部分(穴や溝など)が形成されたロール(「メス型ロール」と称する場合がある)の間を、上記積層体の金属箔側がオス型ロールと接触するようにして通過させる方法を挙げることができる。
【0093】
[工程2]
工程2では、上記突出部(工程1で形成した突出部)を折り返して端子部を形成する。突出部を折り返すことによって、端子部の面積を大きくすることができる。突出部を折り返す方法としては、特に限定されないが、効果的に端子部の面積を大きくできる点で、スキージを用いる方法が好ましい。スキージを用いることにより、一度に多くの突出部を折り返すことができ、さらにこれらをきれいに折り返すことができる。このため、第一の粘着剤層側の表面に露出する金属箔の面積、すなわち、端子部の面積を大きくすることができる。特に、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を大きくすることが容易となるため、効率的に第一の粘着剤層30mm2あたりの端子部の総面積を大きくすることができる。
【0094】
図10には、導電性粘着テープaの製造方法において、スキージを用いて突出部を折り返し端子部を形成する態様を示す模式図を示す。図10における「進行方向」とは、工程1にて得られた貫通孔および突出部を有する積層体の進行方向を示し、図11についても同様である。図10に示すように、工程1で得られる貫通孔15および突出部17を有する積層体の第一の粘着剤層12aの表面と、スキージ31の先端とが対向するように配置し、スキージ31に対して第一の粘着剤層12aを移動させることによって、スキージ31の先端によって突出部17が折り返される。この場合、突出部17の中でも、貫通孔15に対して上記積層体の進行方向側に位置する突出部17aは、通常、貫通孔15を塞ぐ方向に折り曲げられるため、突出部17aの金属箔は第一の粘着剤層側の表面には露出せず、端子部を形成しない。これに対し、貫通孔15に対して上記積層体の進行方向とは反対側に位置する突出部17bは、貫通孔15を塞ぐ方向とは反対側の方向に折り返されるため、突出部17bの金属箔が第一の粘着剤層側の表面に露出する。すなわち、突出部17bによって端子部14が形成される。このように、スキージを用いて突出部を折り返すことによって、貫通孔1個あたりの端子部の面積を効率的に大きくすることができる。
【0095】
一方、図11は、従来の導電性粘着テープにおいて端子部を形成する態様を示す模式図を示す。従来の導電性粘着テープにおける端子部は、例えば、図11に示すようなプレスロール18を用いて、貫通孔15および突出部17を有する積層体の突出部17を押し潰すことによって形成されていた。この場合、突出部17のうち貫通孔15に対して上記積層体の進行方向側に位置する突出部17aは、通常、粘着剤層によって突出部17aの金属箔が覆われる形で押し潰されるため、突出部17aの金属箔は粘着剤層の表面にはほとんど露出しない。一方、貫通孔15に対して上記積層体の進行方向とは反対側に位置する突出部17bは、プレスロールによって金属箔が粘着剤層側の表面に露出するように折り曲げられるが、同時に押し潰されるため、突出部17bの金属箔の大部分は粘着剤層によって被覆され、結果的に粘着剤層側の表面にはわずかな金属箔しか露出しない。このように、従来の製造方法では、貫通孔1個あたりの端子部の面積を大きくすることができなかったため、かかる方法により得られた導電性粘着テープは、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を上述の範囲に制御することができず、安定した電気伝導性を発揮することができなかった。
【0096】
上記スキージの材質としては、特に限定されないが、公知慣用のものが挙げられる。例えば、鉄、ステンレス等が挙げられる。中でも、剛性の点で、鉄製のスキージが好ましい。
【0097】
上記スキージの形状としては、特に限定されず、例えば、公知慣用の形状が挙げられる。中でも、突出部を折り返しやすい点で、図10に示す、断面が台形形状であり、かつ、先端が尖ったスキージ(いわゆる剣スキージ)が好ましい。
【0098】
例えば、スキージとして上記の剣スキージを用いる場合、その先端角度としては、特に限定されないが、10〜80°が好ましく、より好ましくは20〜60°である。また、上記スキージの先端半径(先端R)としては、0.1〜1が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8である。なお、上記「先端角度」とは、剣スキージの断面形状における先端の角度のことであり、例えば、図10においては32で表される角度のことをいう。
【0099】
上記突出部を折り返す際には、第一の粘着剤層表面に対してスキージの先端を完全に接触させることが好ましい。第一の粘着剤層表面とスキージの先端を完全に接触させることによって、突出部を根元から折り曲げることができ、端子部の面積を効率的に大きくすることができるためである。
【0100】
上記突出部を折り返す際の、第一の粘着剤層表面とスキージ先端のなす角度は、特に限定されないが、例えば、30〜80°が好ましく、より好ましくは40〜80°である。なお、第一の粘着剤層表面とスキージ先端のなす角度とは、例えば、図10において33で表される角度のことをいう。上記角度を30°以上とすることにより、突出部を根元から折り返すことができ、端子部の面積を効率的に大きくすることができる。上記角度を30°未満とすると、スキージの先端が突出部の先端を撫でるように滑ってしまい、折り返しが不十分となって端子部の面積を大きくできない傾向がある。一方、上記角度を80°以下とすることにより、突出部を折り返す際に発生する粘着テープのやぶれが防止することができる。
【0101】
上記突出部を折り返す際の、スキージに対して粘着剤層(積層体)を移動させる速度は、特に限定されないが、例えば、1〜20m/分が好ましく、より好ましくは2〜10m/分である。上記速度を1m/分以上とすることにより、生産性が向上する。一方、上記速度を20m/分以下とすることにより、スキージによる突出部の折り返しを安定して行うことができる。なお、上記突出部を折り返す際には、上述のようにスキージに対して粘着剤層(積層体)を移動させてもよいし、粘着剤層(積層体)に対してスキージを移動させてもよい。粘着剤層(積層体)に対してスキージを移動させる速度についても、上記範囲を満たすことが好ましい。
【0102】
(工程3)
工程3では、必要に応じて、上記工程2で折り返した突出部にプレス加工を施す。当該工程3を経ることにより、端子部と第一の粘着剤層表面を平滑とすることができるため、被着体に対して端子部を接触させやすくすることができ、なおかつ、被着体に対する導電性粘着テープの接着性を高めることができる。
【0103】
上記プレス加工の方法としては、特に限定されないが、公知慣用の方法が挙げられる。
例えば、ロール、単板等を用いたプレス加工方法が挙げられる。中でも、生産性向上の点で、ロールプレス装置を用いたプレス加工が好ましい。なお、プレス加工の際には、第一の粘着剤層をセパレータにより保護することが好ましい。
【0104】
上記の導電性粘着テープaの製造方法においては、必要に応じて、工程2又は工程3の後に、導電性粘着テープを適切な製品幅にスリットする工程、導電性粘着シートをロール状に巻き取る工程などの各種工程が設けられていてもよい。
【0105】
第一の態様の導電性粘着テープは、第一の粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を0.15〜5.0mm2に制御され、さらに、上記ヒートサイクル試験において測定される抵抗値倍率が5倍以下に制御されることにより、長期間の使用や過酷な環境下での使用に対してより安定した電気伝導性を発揮することができる。これは、主に、以下の(1)(2)の理由によるものと推定される。(1)端子部一つ一つの面積を大きくする、すなわち、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を大きくすることにより、長期間の使用や過酷な環境下の使用において接触面積が多少低下した場合であっても、電気的導通を確保するのに十分な接触面積を保持することができる。(2)単位面積の第一の粘着剤層あたりに存在する端子部の数を多くすることにより、長期間の使用や過酷な環境下の使用において接触面積が低下した場合であっても、電気的導通を確保するのに十分な接触箇所を保持することができる。特に、端子部の形成にスキージを用いることによって、従来の製造方法では形成し得ない大きさ(面積)の端子部を形成できる(すなわち、上記(1)の効果を得ることができる)ため、端子部の総面積が上述の範囲に制御された導電性粘着テープを効率よく得ることができる。
【0106】
これに対して、従来の導電性粘着テープにおいては、端子部一つ一つの面積を大きくすることができず(具体的には、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を50,000μm2以上とすることができず)、さらに、端子部の数を増量して端子部の総面積を大きくしようとした場合には非常に多くの貫通孔を設ける必要があり、これによって導電性粘着テープの強度と粘着性とが著しく低下してしまう等の理由によって、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を0.15〜5.0mm2に制御することができなかった。従って、従来の導電性粘着テープは、長期間の使用や過酷な環境下での使用において、導通を妨げる程度まで被着体と端子部との接触面積が低下してしまうことにより、徐々に抵抗値が上昇し、安定した電気伝導性を発揮することができなかった。このような被着体と端子部との接触面積の低下は、導電性粘着テープの製造時や被着体への貼付の際に微細な気泡が粘着剤層中に発生(又は混入)し、雰囲気温度の変化等によって端子部付近に存在する気泡が膨張や収縮を繰り返し、これによって被着体と端子部との接触面に応力がかかることによって生じる現象であると推定される。
【0107】
なお、導電性粘着テープAや導電性粘着テープaは、第一の粘着剤層側表面に端子部を有するが、第一の粘着剤層のゲル分率が5〜69重量%であり、第一の粘着剤層は十分な強度を有し、柔軟性に優れ、さらに接着信頼性に優れるので、導電性粘着テープの製造時や被着体への貼付の際に気泡が混入しにくい。また、仮に、微細な気泡が粘着剤層中に発生(又は混入)し、雰囲気温度の変化等によって端子部付近に存在する気泡が膨張や収縮を繰り返し、これによって被着体と端子部との接触面に応力がかかっても、被着体と端子部との接触面積の低下は抑制されると推定される。
【0108】
[第二の態様の導電性粘着テープ]
第二の態様の導電性粘着テープは、金属箔の片面側に、ゲル分率が5〜69重量%であり、導電性フィラーを含有する粘着剤層を有する。本明細書では、第二の態様の導電性粘着テープの粘着剤層であって、ゲル分率が特定の範囲内であり、かつ導電性フィラーを含有する粘着剤層を、「第二の粘着剤層」と称する場合がある。
【0109】
(金属箔)
第二の態様の導電性粘着テープを構成する金属箔は、第一の態様の導電性粘着テープを構成する金属箔と同様の金属箔を用いることができる。第二の態様の導電性粘着テープを構成する金属箔は、特に限定されず、自己支持性を有し、かつ電気伝導性を示す金属箔であればよい。上記金属箔としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鉛やこれらの合金などの金属箔が挙げられる。中でも、導電性、コスト、加工性の点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましく、より好ましくは銅箔である。
【0110】
また、上記金属箔は、各種表面処理が施されていてもよい。例えば、錫メッキ、銀メッキ、金メッキ等の金属による表面メッキ処理が施されていてもよい。特に、腐食による抵抗値上昇を抑制する点で、錫メッキが施されていることが好ましい。
【0111】
上記金属箔としては、錫メッキが施された銅箔(錫コート銅箔)が特に好ましい。
【0112】
上記金属箔の厚みとしては、特に限定されないが、10〜100μmが好ましく、より好ましくは20〜80μm、さらに好ましくは30〜60μmである。厚みを10μm以上とすることにより、十分な強度を有するため、作業性が向上する。一方、厚みを100μm以下とすることにより、コスト面で有利となる。また、厚みが100μm以下であると、生産性の面で有利となる。
【0113】
(第二の粘着剤層)
第二の粘着剤層を構成する粘着剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、第一の粘着剤層を構成する粘着剤として例示される粘着剤が挙げられる。上記粘着剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、上記粘着剤は、いずれの形態を有している粘着剤であってもよく、例えば、活性エネルギー線硬化型粘着剤、溶剤型(溶液型)粘着剤、エマルジョン型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などであってもよい。
【0114】
中でも、第二の粘着剤層を構成する粘着剤としては、耐熱性、耐候性及びポリマーの設計の容易さの点から、アクリル系粘着剤が好ましい。すなわち、第二の粘着剤層は、アクリル系粘着剤層であることが好ましい。なお、本明細書において、第二の粘着剤層としてのアクリル系粘着剤層を「第二のアクリル系粘着剤層」と称する場合がある。
【0115】
第二の粘着剤層は、粘着剤組成物により形成される。なお、本明細書において、第二の粘着剤層を形成する粘着剤組成物を「第二の粘着剤組成物」と称する場合がある。
【0116】
第二の粘着剤層としてのアクリル系粘着剤層(第二のアクリル系粘着剤層)は、アクリル系ポリマーを必須成分として含む第二の粘着剤組成物(第二のアクリル系粘着剤組成物)より形成されることが好ましい。第二のアクリル系粘着剤層中のアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、30重量%以上(例えば、30〜100重量%)であることが好ましく、より好ましくは45〜99重量%、さらに好ましくは55〜98重量%である。
【0117】
第二のアクリル系粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーは、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成されるアクリル系ポリマーであることが好ましい。また、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分には、さらに、極性基含有単量体、多官能性単量体やその他の共重合性単量体が共重合モノマー成分として含まれていてもよい。これらの共重合モノマー成分を用いることにより、たとえば、被着体への接着力を向上させたり、粘着剤層の凝集力を高めたりすることができる。なお、上記のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0118】
上記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸アルキルエステル)としては、例えば、第一のアクリル系粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として例示される(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
特に、基板表面への粘着性とバルクの粘着剤の弾性率の点から、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを併用することが好ましい。すなわち、第二の粘着剤層は、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されるアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。特に、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸n−ブチルが好ましい。また、アルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニルが好ましい。
【0120】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを併用する場合、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの割合[前者:後者](重量比)としては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの割合が多すぎるとタックが弱くなって粘着性が低下する場合があり、一方、アルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの割合が多すぎると粘着剤層が軟らかくなりすぎる場合があるので、50:50〜90:10が好ましく、より好ましくは60:40〜80:20である。
【0121】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対する、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、特に限定されないが、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは60〜99.9重量%である。
【0122】
上記の極性基含有単量体としては、例えば、第一のアクリル系粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として例示される極性基含有単量体が挙げられる。中でも、カルボキシル基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体が好ましく、アクリル酸、アクリル酸4−ヒドロキシブチルがより好ましい。なお、上記の極性基含有単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対する、上記の極性基含有単量体の割合は、特に限定されないが、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。極性基含有単量体の割合を1重量%以上とすることにより、粘着剤層の凝集力が向上する。一方、極性基含有単量体の割合を30重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着性が向上する。
【0124】
また、上記の多官能性単量体としては、例えば、第一のアクリル系粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として例示される多官能性単量体が挙げられる。なお、上記の多官能性単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対する、上記の多官能性単量体の割合は、特に限定されないが、0.5重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)が好ましく、より好ましくは、0〜0.3重量%以下である。多官能性単量体の割合を0.5重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着性が向上する。なお、架橋剤を用いる場合には多官能性単量体を用いなくてもよいが、架橋剤を用いない場合には、多官能性単量体の割合は0.001〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.1重量%である。
【0126】
また、極性基含有単量体や多官能性単量体以外のその他の共重合性単量体としては、例えば、第一のアクリル系粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として例示されるその他の共重合性単量体が挙げられる。
【0127】
上記アクリル系ポリマーの作製方法としては、特に限定されず、公知乃至慣用の重合方法が挙げられる。例えば、上記アクリル系ポリマーは、上記のモノマー成分を公知乃至慣用の重合方法により重合することにより得られる。上記重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、溶液重合方法がより好ましい。
【0128】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤が用いられる。このような溶剤としては、例えば、第一のアクリル系粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーを溶液重合で作製する際に用いられる溶剤として例示されている溶剤が挙げられる。なお、溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
上記アクリル系ポリマーの重合に際して用いられる重合開始剤は、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択される。例えば、第一のアクリル系粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーの重合に際して用いられる重合開始剤として例示されている重合開始剤が挙げられる。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、重合開始剤の使用量は、特に限定されず、従来、重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0130】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、30万〜120万が好ましく、より好ましくは35万〜100万、さらに好ましくは40万〜90万である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量を30万以上とすることにより、粘着性が向上する。一方、120万以下とすることにより、塗工性が向上する。アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールされる。
【0131】
第二の粘着剤層は、導電性フィラー(導電性粒子)を含有する。第二の態様の導電性粘着テープは、第二の粘着剤層が導電性フィラーを含有するので、被着体に貼付し、被着体と第二の態様の導電性粘着テープの金属箔との間の電気的導通を確保しやすい。第二の粘着剤組成物、特に第二のアクリル系粘着剤組成物は、導電性フィラーを含有することが好ましい。
【0132】
上記導電性フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、ニッケル、鉄、クロム、コバルト、アルミニウム、インジウム、アンチモン、モリブデン、錫、亜鉛、チタン、銅、銀、白金、金などの金属からなるフィラー(金属フィラー、金属粒子);上記金属の合金若しくは酸化物からなるフィラーなどが挙げられる。さらに、上記導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどのカーボンからなるフィラー(カーボン粒子);ポリマービーズ、樹脂などを、上記金属で被覆したフィラー(金属被覆フィラー)などが挙げられる。なお、導電性フィラーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0133】
中でも、上記導電性フィラーは、長期導通信頼性の点より、金属フィラー、金属被覆フィラーが好ましく、銀フィラー(銀粒子)がより好ましい。
【0134】
上記導電性フィラーの形状としては、特に限定されないが、粘着剤層中での均一分散させ、粘着性と電気伝導性とを両立させる点から、例えば、球状、スパイク状が好ましく、より好ましくは球状である。なお、上記導電性フィラーは、単一の形状のみから構成されていてもよいし、2種以上の形状から構成されていてもよい。例えば、上記導電性フィラーは、球状の導電性フィラーのみから構成されていてもよいし、球状の導電性フィラー及びスパイク状の導電性フィラーから構成されていてもよい。
【0135】
上記導電性フィラーのアスペクト比は、特に限定されないが、例えば、1.0〜2.0が好ましく、より好ましくは1.0〜1.5である。なお、上記アスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0136】
なお、導電性フィラーは、市販品を用いてもよい。例えば、商品名「Ag−HWQ−400」(福田金属箔粉工業株式会社製、銀フィラー)などが挙げられる。
【0137】
第二の粘着剤組成物中の導電性フィラーの含有量は、特に限定されないが、導電性フィラーを除く粘着剤層の全固形分(100重量部)に対して、25〜250重量部が好ましく、より好ましくは30〜150重量部、さらに好ましくは35〜100重量部である。導電性フィラーの含有量を25重量部以上とすることにより、電気伝導性が向上する。一方、導電性フィラーの含有量を250重量部以下とすることにより、導電性フィラーの凝集が抑制され、粘着面が粗くなり過ぎないため、長期導通信頼性と粘着力を両立できる。さらに、コスト面でも有利である。
【0138】
第二の粘着剤組成物、特に第二のアクリル系粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を用いることにより、粘着剤層が含有するベースポリマー(例えば、第二のアクリル系粘着剤層を構成するアクリル系ポリマー)を架橋させ、粘着剤層の凝集力を一層大きくすることができる。上記架橋剤としては、特に限定されず、例えば、第一の粘着剤組成物に含有される架橋剤として例示される架橋剤が挙げられる。中でも、上記架橋剤は、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤がより好ましく、イソシアネート系架橋剤がさらに好ましい。なお、上記架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0139】
第二の粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、第二のアクリル系粘着剤組成物の場合、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0〜5重量部が好ましく、より好ましくは1〜3重量部である。
【0140】
さらに、第二の粘着剤組成物、特に第二のアクリル系粘着剤組成物は、粘着付与剤を含有することが好ましい。上記粘着付与剤としては、特に限定されず、例えば、第一の粘着剤組成物に含有される粘着付与剤として例示される粘着付与剤が挙げられる。また、粘着付与剤としては、オリゴマー(重量平均分子量2万未満の重合体)も挙げられる。該オリゴマーとしては、例えば、アクリル系オリゴマー、スチレン系オリゴマーなどが挙げられる。中でも、粘着付与剤としては、ロジン系粘着付与剤やアクリル系オリゴマーが好ましい。なお、上記粘着付与剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
第二の粘着剤組成物中の粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、第二のアクリル系粘着剤組成物の場合、アクリル系ポリマー(100重量部)に対して、10〜50重量部が好ましく、より好ましくは15〜45重量部である。
【0142】
さらに、第二の粘着剤組成物、特に第二のアクリル系粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、架橋促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤などの公知の添加剤や溶剤(上記のアクリル系ポリマーの溶液重合の際に使用可能な溶剤など)が含まれていてもよい。さらに、第二の粘着剤組成物(特に第二のアクリル系粘着剤組成物)には、本発明の効果を損なわない範囲で、オリゴマー(重量平均分子量2万未満の重合体、上記粘着付与剤としてのオリゴマーは除く)が含まれていてもよい。
【0143】
第二の粘着剤組成物は、特に限定されないが、公知の方法により作製される。例えば、第二のアクリル系粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(又はアクリル系ポリマー溶液)、架橋剤、溶剤、粘着付与剤などを混合することにより、作製されてもよい。
【0144】
第二の粘着剤層の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、第二の粘着剤組成物(特に第二のアクリル系粘着剤組成物)を、金属箔又はセパレータに塗布(塗工)し、必要に応じて、乾燥及び/又は硬化する方法が挙げられる。
【0145】
なお、第二の粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法が用いられる。例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどのコーターを用いる方法が挙げられる。
【0146】
第二の粘着剤層のゲル分率は、5〜69重量%であり、好ましくは20〜69重量%、より好ましくは35〜68重量%である。上記ゲル分率を5重量%以上とすることにより、粘着剤層の凝集力が小さくなりすぎることを防ぎ、強度が不足すること及び粘着剤層が軟らかくなりすぎることを防止できる。また、粘着テープの切断加工時に粘着剤が刃に付着したり、被着体に貼付した場合に粘着剤層が変形して被着体の端部からはみ出す、いわゆる「糊はみ出し」を防止できる。さらに、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用における被着体からの浮きや剥がれを防止できる。さらにまた、良好な接着信頼性を得ることができる。一方、上記ゲル分率を69重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が大きくなりすぎることを防ぎ、柔軟な粘着剤層を得ることができる。また、段差部分や凹凸部分に粘着剤層が追従しやすくなり、良好な段差吸収性や良好な接着信頼性が得られる。さらに、被着体への貼付時における密着性や低温での追従性に優れる。さらに、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用において、環境が変化しても、被着体に対する接触面積が低下しにくく、安定した電気伝導性を発揮できる
【0147】
なお、第二の粘着剤層のゲル分率は、多官能モノマーや架橋剤の種類や含有量(使用量)などにより制御することができる。
【0148】
第二の粘着剤層のゲル分率(溶剤不溶分の割合)は、導電性フィラーを除いた部分のゲル分率である。上記ゲル分率は、第二の粘着剤層と導電性フィラーを含有しない以外は同一組成の粘着剤層の酢酸エチル不溶分として求めることができる。具体的には、まず、ゲル分率を求める対象である第二の粘着剤層(導電性フィラーを含有する粘着剤層)を形成する粘着剤組成物とは導電性フィラーを含有しない以外は同一組成の粘着剤組成物を作製し、上記ゲル分率を求める対象である第二の粘着剤層の形成方法と同じ方法・条件で粘着剤層(評価用粘着剤層)を作製する。次に、該評価用粘着剤層を酢酸エチル中に室温(23℃)で7日間浸漬した後の不溶分の、浸漬前の試料(評価用粘着剤層)に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。より具体的には、上記ゲル分率とは、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
ゲル分率を求める対象である第二の粘着剤層(導電性フィラーを含有する粘着剤層)を形成する粘着剤組成物とは導電性フィラーを含有しない以外は同一組成の粘着剤組成物を作製し、上記ゲル分率を求める対象である第二の粘着剤層の形成方法と同じ方法・条件で粘着剤層(評価用粘着剤層)を作製する。
次に、評価用粘着剤層:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、評価用粘着剤層と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、評価用粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み、凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて1週間(7日間)静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=(D−E)/(F−E)×100
(上記式において、Dは浸漬後重量であり、Eは包袋重量であり、Fは浸漬前重量である。)
【0149】
第二の粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、10〜100μmが好ましく、より好ましくは15〜80μm、さらに好ましくは20〜40μmである。厚みを10μm以上とすることにより、貼付時に発生する応力が分散されやすく、剥がれが生じにくくなる。
一方、厚みを100μm以下とすることにより、長期間の使用や過酷条件下での使用においても、十分な長期導通信頼性を確保できる。また、製品の小型化や薄膜化に有利となる。
【0150】
下記のように、第二の態様の導電性粘着テープにおいては、導電性フィラーの表面露出率が特定範囲に制御されていることが好ましく、具体的には、導電性フィラーの表面露出率が小さすぎると(2%未満)、通電パスが十分に形成されず、導電性及び長期導通信頼性が確保できないことがあり、逆に、導電性フィラーの表面露出率が大きすぎると(5%を超える)、粘着剤層の被着体に対する接触面積が減少し、十分な粘着性を確保できないことがある。このような表面露出率の制御のためには、第二の粘着剤層の厚みと導電性フィラーの含有量の関係を制御することが有効であり、これらのバランスを取ることによって、長期間の使用や過酷な環境下での使用において、より安定した電気伝導性を発揮できる。さらに、導電性粘着テープが細幅で使用された場合であっても、十分な電気伝導性および粘着性(接着性)を両立できる。
【0151】
従って、第二の粘着剤層の厚みは、導電性フィラーの添加部数(含有量)との兼ね合いで決定されることが好ましい。導電性フィラーの含有量が少ない場合に厚みを大きくすると十分な導電パスが形成されない場合があり、導電性フィラーの含有量が多い場合に厚みを小さくすると、強度や粘着性の点で問題を生じることがある。例えば、厚みが30μmの際には、導電性フィラーの含有量を35〜100重量部程度とすることによって、第二の粘着剤層側の表面に十分な導電パスが形成され、長期導通信頼性を確保できる。さらに、第二の粘着剤層側の表面には粘着剤層も十分に存在するため粘着性も確保でき、長期導通信頼性と粘着性を両立した導電性粘着テープを作製することができる。また、例えば、厚みが50μmの第二の粘着剤層の場合、導電性フィラーの添加部数が導電性フィラーを除く粘着剤組成物の全固形分(100重量%)に対して35重量部であると、長期導通信頼性が確保できないのに対し、添加部数が200重量部であれば長期導通信頼性が確保できる。
【0152】
第二の態様の導電性粘着テープの厚みは、特に限定されないが、25〜600μmが好ましく、より好ましくは30〜200μm、さらに好ましくは40〜140μmである。上記厚みを25μm以上とすることにより、十分なテープ強度を有し、作業性が向上する。一方、上記厚みを600μm以下とすることにより、製品の薄膜化や小型化に有利となる。なお、上記「導電性粘着テープの厚み」とは、導電性粘着テープにおける金属箔表面(金属箔表面のうち粘着剤層を有しない側の表面)から粘着面までの厚みを意味する。
【0153】
なお、第二の態様の導電性粘着テープは、上記の金属箔、粘着剤層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0154】
第二の態様の導電性粘着テープは、金属箔の片面側に第二の粘着剤層を形成することにより製造される。例えば、第二の態様の導電性粘着テープは、金属箔の表面に第二の粘着剤層を直接形成してもよいし(直写法)、セパレータ上に第二の粘着剤層を形成した後、これを金属箔に転写する(貼り合わせる)ことにより、金属箔の表面に第二の粘着剤層を設けてもよい(転写法)。
【0155】
第二の態様の導電性粘着テープの、第二の粘着剤層表面における導電性フィラーの表面露出率(表面露出面積率)は、特に限定されないが、2〜5%が好ましく、より好ましくは3〜5%、さらにより好ましくは4〜5%である。上記の表面露出率を2%以上とすることにより、被着体に貼付した際の電気伝導性をより向上させることができる。また、長期間の使用や過酷な環境下での使用であっても、抵抗値の経時的上昇をより抑制でき、より安定した電気伝導性を得ることできる。特に、第二の態様の導電性粘着テープの幅が1.0〜10mmといった細幅の場合であっても、長期間の使用や過酷な環境下での使用において、より安定した電気伝導性を得ることができる。一方、上記表面露出率を5%以下とすることにより、粘着力を確保し、長期導通信頼性も確保しやすくなる。特に、導電性粘着テープの幅が1.0〜10mmといった細幅の場合であっても、粘着力を確保し、長期導通信頼性も確保しやすくなる。
【0156】
第二の粘着剤層表面における導電性フィラーの表面露出率は、下記の[表面露出率の測定方法]に従って測定することができる。
[表面露出率の測定方法]
第二の態様の導電性粘着テープの第二の粘着剤層表面を、0.5重量%ルテニウム酸水溶液を用いて室温で30分間蒸気染色する。その後、スパッタ装置「E−3200」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、粘着剤層表面のPt−Pdスパッタリング処理を行い、観察用試料を作製する。
走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「S−4800」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧5kV、測定倍率200倍の条件で、観察用試料の本発明の粘着剤層表面側の反射電子像(観察範囲:450×575μm2(450μm×575μm))を測定する。
得られた反射電子像について、画像処理ソフト「Winroof」(三谷商事株式会社製)を用いて二値化し、導電性フィラーに帰属する無機層部分の面積の割合を算出し、表面露出率を測定する。
二値化処理については、導電性フィラーおよび導電性フィラー以外の背景(粘着剤層)を異なる色で区別することができれば、例えば導電性フィラーの領域を白(0)としてもよいし、黒(1)としてもよい。
【0157】
第二の態様の導電性粘着テープの表面露出率は、例えば、導電性フィラーの添加量、第二の粘着剤層の厚みなどにより制御することができる。例えば、第二の粘着剤層の厚み(糊厚)を30μmとした場合、導電性フィラーの添加部数を35〜100重量部とすることにより、作業性を考慮した粘着力及び長期導通信頼性を確保することができる。第二の粘着剤層の厚みを50μmとした場合では、導電性フィラーの添加部数を150〜200重量部とすることにより、作業性を考慮した粘着力及び長期導通信頼性を確保することができる。第二の粘着剤層の厚みと導電性フィラーの添加部数によって、表面露出率が制御でき、それによって粘着力及び長期導通信頼性を確保したテープを設計することができる。
【0158】
第二の態様の導電性粘着テープの第二の粘着剤層表面における導電性フィラーの表面露出率は、第二の粘着剤層側の表面の面積に対する導電性フィラーの露出面積(導電性フィラーに帰属する無機層の露出面積)の割合を定量的に表したものである。第二の態様の導電性粘着テープにおいては、上記の表面露出率が、導電性粘着テープの電気伝導性と粘着性、さらには長期間の使用や過酷な環境条件下での使用における安定した電気伝導性の制御の指標となることを見出した。さらに、特に導電性粘着テープが細幅の場合であっても、高い電気伝導性及び優れた粘着性を発揮させ、かつ安定した電気伝導性を発揮させるために制御すべき表面露出率の範囲を見出した。
【0159】
これに対して、従来の、金属箔と該金属箔の少なくとも一方の表面に導電性粒子を含有する接着剤層や粘着剤層を有する導電性粘着テープは、特に、細幅の形状で用いた場合に、テープ強度の確保や導電性フィラーの添加部数が少ないため、長期導通信頼性を確保できていなかった。本発明の第二の態様の導電性粘着テープでは、導通信頼性を確保するための本質として導電性フィラーの表面露出率(導電パス)に着目し、これを定量化することにより、細幅の場合であっても優れた粘着力と高い電気伝導性、特に長期導通信頼性が確保された導電性粘着テープの設計が可能となった。第二の態様の導電性粘着テープは、広幅から細幅まで多岐に渡る形状で使用した場合であっても優れた長期導通信頼性を発揮できるため、汎用性が高い。
【0160】
(本発明の導電性粘着テープ)
本発明の導電性粘着テープの幅は、特に限定されないが、より小型化、ファインピッチ化された電子機器等に対して使用する際には、小さいことが好ましい。本発明の導電性粘着テープの幅は、例えば、1.0〜10mmが好ましく、より好ましくは1.5〜6mmである。
【0161】
また、本発明の導電性粘着テープにおける粘着剤層表面(第一の態様の導電性粘着テープにおける第一の粘着剤層表面や第二の態様の導電性粘着テープにおける第二の粘着剤層表面)の、引張速度300mm/分で測定される、アルミ板に対する180°引き剥がし粘着力は、特に限定されないが、仮貼りを可能とし、長期導通信頼性を確保する点から、0.1〜1.0N/2mmが好ましく、より好ましくは0.2〜0.9N/2mm、さらにより好ましくは0.2〜0.8N/2mmである。なお、上記180°引き剥がし粘着力は、JIS Z0237(2000)に準拠し、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機による、アルミ板を被着体とした180°剥離試験(引張速度:300mm/分、被着体への圧着条件:2kgローラーを1往復)により測定することができる。
【0162】
本発明の導電性粘着テープ(第一の態様の導電性粘着テープ及び第二の態様の導電性粘着テープ)における、下記ヒートサイクル試験において測定される1サイクル目の抵抗値の最大値は、特に限定されないが、導電性粘着テープとしての十分な電気伝導性を得る点から、1Ω以下が好ましく、より好ましくは0.0001〜0.5Ω、さらにより好ましくは0.0001〜0.05Ωである。なお、上記の1サイクル目の抵抗値の最大値を、「初期抵抗値」と称する場合がある。
【0163】
さらに、本発明の導電性粘着テープ(第一の態様の導電性粘着テープ及び第二の態様の導電性粘着テープ)における、下記ヒートサイクル試験において測定される、200サイクル目の抵抗値の最大値は、特に限定されないが、5倍以下(例えば、1〜5倍)が好ましく、より好ましくは1〜4倍、さらにより好ましくは1〜3倍、さらにまたより好ましくは1〜2.5倍である。なお、本明細書では、1サイクル目の抵抗値の最大値に対する200サイクル目の抵抗値の最大値の値[(200サイクル目の抵抗値の最大値)/(1サイクル目の抵抗値の最大値)](倍)を、「抵抗値倍率」と称する場合がある。
【0164】
本明細書において、「抵抗値倍率」は、導電性粘着テープを長期間使用した場合や過酷な環境条件下で使用した場合に、当該導電性粘着テープがどれだけ安定した電気伝導性を発揮できるかの指標となる。抵抗値倍率が小さく5倍以下であると、導電性粘着テープを貼付した部分の電気伝導性が経時で低下しにくく、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用に対しても安定して電流が流れ続けると考えられるため、当該導電性粘着テープを用いた製品はより高い信頼性を発揮することができる。
【0165】
上記ヒートサイクル試験は、銀メッキが施された導体パターンに導電性粘着テープを貼付して形成された電気回路を有する評価用基板において、上記電気回路に定電流を流しながら、上記評価用基板を低温と高温とを周期的に変化させる温度雰囲気条件下に暴露し、導電性粘着テープの金属箔と銀メッキが施された導体パターンの間の抵抗(すなわち、導電性粘着テープと銀メッキが施された導体パターンとの貼り合わせ部分(貼付部分)の接触抵抗)を連続的に測定する試験である。
上記の1サイクル目の抵抗値の最大値および200サイクル目の抵抗値の最大値は、次のようにして測定することができる。導電性粘着テープを、貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に2Aの定電流を流す。これを、槽内の設定温度(ヒートサイクル条件)を25℃から−40℃まで降温した後−40℃で10分間保持し、次いで、85℃まで昇温した後85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとしてこれを繰り返す設定とした恒温槽内に入れて冷却および加熱し、この間、上記貼付部分の抵抗値(接触抵抗値)を連続的に測定する。より具体的には、下記の[ヒートサイクル試験]に従って測定することができる。
[ヒートサイクル試験]
(評価用基板の作製)
銀メッキが施された導体パターンが形成されたガラスエポキシ基板を用い、上記銀メッキが施された導体パターンに導電性粘着テープを貼り合わせ、さらに、上記銀メッキが施された導体パターンに定電流電源および電位計を接続することによって電気回路を形成して、評価用基板を作製する。図12は、具体的な評価用基板の構成の一例を示す。ガラスエポキシ基板48a上に、銀メッキが施された導体パターン(以下、単に「導体パターン」と称する場合がある)41a〜dが形成されており、導体パターン41a〜41dに対して、導電性粘着テープ42(幅:6mm)を、5kgのローラーを1往復させることによって貼付(圧着)する。この際、導体パターン11bと導電性粘着テープとの貼付部分43のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように貼付する。この貼付部分43により、導体パターン41bと導電性粘着テープ42の金属箔との間の電気的導通(厚み方向の電気的導通)が確保される。
なお、導電性粘着テープの幅が6mmに満たない場合には、トータルで幅が6mmとなるように貼り付ける(例えば、導電性粘着テープが2mm幅の場合には、3枚を貼り付ける)ことによって、評価を実施することができる。
次いで、導体パターン41bと41dを定電流電源44に接続し、導体パターン41aと41bを電位計45に接続して電気回路を形成し、これを評価用基板とする。なお、特に限定されないが、例えば、上記導体パターンと定電流電源、電位計の接続は、リード線の使用やはんだ付け等の通常の接続手段を利用することによって実施することができる。図13は、図12に示す評価用基板における電気回路の等価回路を示す。図13における47は、図12における貼付部分43の抵抗(接触抵抗)を表している。
(抵抗評価用サンプルの作製)
上記評価用基板における電気回路のうち、少なくとも導体パターンと導電性粘着テープとの貼り合わせ部分(貼付部分)を、ガラスエポキシ基板とガラス板の間でエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)により封止し、抵抗評価用サンプルを作製する。図14は、抵抗評価用サンプルの模式図(図12の貼付部分43における断面図)を示す。抵抗評価用サンプルは、少なくとも導体パターン41bと導電性粘着テープ42による貼り合わせ部分(貼付部分)43が、ガラスエポキシ基板48aおよびガラス板48bの間で、EVA(EVAの硬化物)49によって封止された構成を有する。なお、図12には、EVA(EVAの硬化物)によって封止される領域(封止領域)46の一例を示す。上述のEVAによる封止は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして実施することができる。図12に示す評価用基板における封止領域46上に、熱硬化性エチレン−酢酸ビニル共重合体のフィルム(EVAフィルム)(例えば、酢酸ビニル含有量28%の熱硬化性EVAフィルム)を載せ、さらにその上からガラス板を重ねて、「評価用基板/EVAフィルム/ガラス板」の構成を有する積層体とする。上記積層体を、真空プレス機を使用して、まず150℃の状態でプレスを行わず40秒間真空引きを行い、次いで、真空引きをしたままの状態で150℃にて0.1MPaの圧力で400秒間プレスし(真空引きは引き始めてから400秒間で終了させる)、その後真空プレス機から上記積層体を取り出して、150℃オーブンで40分間加熱し、EVAを熱硬化させる。
このように、少なくとも導体パターンと導電性粘着テープとの貼り合わせ部分(貼付部分)をEVAによって封止することによって、貼付部分が固定されるため、誤差が小さく安定した測定結果を得ることができる。
(チャンバー(恒温槽)内の雰囲気温度設定)
チャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)を下記のようにする。なお、特に限定されないが、下記設定にてチャンバー内の雰囲気温度を変化させる間には、チャンバー内の湿度(相対湿度)の制御は行わなくてもよい。
開始温度を25℃とし、25℃から100℃/時間の速度で−40℃まで降温し、−40℃で10分間保持する。次に、−40℃から100℃/時間の速度で85℃まで昇温し、85℃で10分間保持する。その後再び100℃/時間の速度で降温し、25℃に達するまでを1サイクルとし、これを少なくとも200回繰り返す設定とする。なお、1サイクルに要する時間は170分である。図15は、上記のチャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)の、2サイクル目までのプロファイルを示す。なお、この設定温度(ヒートサイクル条件)は、IEC規格のIEC61215(第2版)、IEC61646(第2版)に準じたものである。
上記のチャンバー(恒温槽)としては、公知慣用のチャンバーが挙げられる。特に限定されないが、例えば、商品名「PL−3KP」(エスペック株式会社製)、商品名「PWL−3KP」(エスペック株式会社製)などの市販品が挙げられる。図16は、下記(評価)の「(2)抵抗値(ヒートサイクル試験)」で用いたチャンバー(エスペック株式会社製、商品名「PL−3KP」)内の温度を上記設定にて制御した場合の、チャンバー(恒温槽)の槽内温度(槽内雰囲気温度)および評価用基板における導電性粘着テープの表面温度プロファイルの一例を示す。チャンバーの槽内温度は設定条件にあわせて変化し、最高温度は設定とほぼ同じ約85℃、最低温度は設定よりもやや高い約−30℃を示した。また、導電性粘着テープの表面温度は、チャンバーの槽内温度とほぼ同様の変化を示した。
(抵抗値の測定)
上記抵抗評価用サンプルにおける電気回路に対し、定電流電源(図12における定電流電源44)によって2Aの定電流を流し(すなわち、図12における貼付部分43に2Aの定電流を流し)、抵抗評価用サンプルを槽内の雰囲気温度を25℃としたチャンバー内に入れる。次に、上記の設定温度(ヒートサイクル条件)により、抵抗評価用サンプルの冷却および加熱を繰り返し、この間、電位計45によって電圧を連続的に測定(例えば、サンプリング周期:5〜10回/10分)することにより、貼付部分43の抵抗値を連続的に取得する。これにより、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)、200サイクル目の抵抗値の最大値を測定し、上記の抵抗値倍率を算出する。
【0166】
従来、導電性粘着テープがどれだけ安定した電気伝導性を発揮するかは、導電性粘着テープを導体(電気伝導体)に貼付して上記導電性粘着テープの金属箔と上記導体の間に電気的導通を確保した状態で、これを高温と低温とを繰り返す雰囲気温度条件に暴露し、暴露前後の導電性粘着テープの貼付部分の電気伝導性(すなわち、抵抗(接触抵抗))がどれだけ変化するかによって評価されていた。しかしながら、上記雰囲気温度条件に暴露前後の電気伝導性の変化は、暴露前の常温で測定される抵抗値と、暴露後に常温で測定される抵抗値とを比較することによって評価していたため、高温や低温条件に暴露されている最中にも常に安定した電気伝導性を発揮しているかどうかは不明であった。そこで、本発明者らは、高温や低温条件に暴露する間においても連続的に導電性粘着テープ貼付部分の抵抗(接触抵抗)を測定する上記のヒートサイクル試験を採用し、導電性粘着テープの電気伝導性を評価した。その結果、従来の導電性粘着テープにおいては、常温環境下で測定される抵抗値の経時的な上昇は小さいものの、特に高温環境下での抵抗値が徐々に増大して経時で電気伝導性が低下することが判明した。これに対して、導電性粘着テープにおいて、上記のヒートサイクル試験において測定される抵抗値倍率が5倍以下であると、高温環境下で測定される抵抗値の上昇が抑制され、長期の使用や過酷な環境条件下での使用に対してもより安定した電気伝導性を発揮できる。
【0167】
なお、本発明の導電性粘着テープにおける粘着面には、セパレータ(剥離ライナー)が設けられていてもよい。上記セパレータとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や、無極性ポリマーからなる低接着性基材などが挙げられる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。上記の中でも、セパレータの浮き(セパレータが粘着面から部分的に剥離する現象)を抑制する点で、ポリエチレン又はポリプロピレンからなるセパレータが好ましい。セパレータは、公知慣用の方法により形成することができる。また、セパレータの厚み等も特に限定されない。
【0168】
本発明の導電性粘着テープは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電気・電子機器やケーブルの電磁波シールド用途等に好適に使用される。特に、様々な環境下での使用や長期間の使用において、抵抗値が上昇することなく、安定な電気伝導性を発揮することが要求される用途、具体的には、例えば、プリント配線基板の接地、電子機器の外装シールドケースの接地、静電気防止用のアース取り、電源装置や電子機器等(例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの表示装置、太陽電池など)の内部配線等に使用することができる。
【実施例】
【0169】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0170】
(実施例1)
アクリル系ポリマーの製造例
モノマー成分としてアクリル酸n−ブチル(BA)70重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)30重量部、アクリル酸(AA)3重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(HBA)0.05重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、および重合溶媒としてトルエン27重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温して10時間反応させ、さらにトルエンを加えて濃度を調整し、固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
なお、アクリル系ポリマー溶液中の上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は44万であった。
【0171】
粘着剤組成物溶液の調製例
上記アクリル系ポリマー溶液に、上記アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業株式会社製)(C/L)を固形分換算で3重量部を添加し、さらに、上記アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、粘着付与剤(商品名「ペンセル D−125」、荒川化学工業株式会社製)(ペンセルD125)を固形分換算で30重量部を添加し、これを混合することによって粘着剤組成物溶液を調製した。
【0172】
導電性粘着テープ用タックテープの製造例
シリコーンが塗布された剥離紙に、上記粘着剤組成物溶液を乾燥後の厚みが45μmとなるように塗布し、これを130℃で3分間オーブンで乾燥させた後、粘着剤層を得た。
次に、得られた粘着剤層表面に錫コート銅箔(錫メッキが施された銅箔、厚み:35μm)を貼り合わせ、続いてこれをロール状に巻き取ることによって、「錫コート銅箔/粘着剤層/剥離紙」の構成を有する導電性粘着テープ用タックテープのロール状巻回体を得た。
【0173】
導電性粘着テープの製造例
上記で得たロール状巻回体から導電性粘着テープ用タックテープを繰り出し、図4および図5に示す形状のピン(c=1.0427mm、d=1.8061mm、e=60°、f=1.2mm、g=0.1mm)が、図6に示すパターン(h=2.598mm、i=1.5mm)で表面に配置されたオス型ロールと、図7に示す直径1.6mmφ×深さ1.4mmの円柱状の穴が表面に形成されたメス型ロールとを用い、上記導電性粘着テープ用タックテープの金属箔側がオス型ロールと接触するように上記ロール(オス型ロールおよびメス型ロール)間を通過させて打ち抜き、貫通孔および粘着剤層側の表面に金属箔の突出部(バリ)を形成した。
次いで、剥離紙を剥離し、図10に示すように、スキージ(材質:鉄(FK4)、先端角度:45°、先端R(先端半径):0.5)を、粘着剤層表面と上記スキージの先端がなす角度(図10における角度33)が20°となるように、粘着剤層表面と上記スキージの先端が接触するように配置し(すなわち、スキージ先端を粘着剤層表面に押し当て)、粘着剤層を1m/分の速度で移動させる(擦る)ことによって、上記突出部を折り返した。
さらに、粘着剤層表面にセパレータを貼り合わせた後、プレスロール間を通過させることにより、セパレータのラミネートを行うと同時に、折り返した突出部と粘着剤層とが平滑となるようにプレス加工を施して、粘着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性粘着テープ(貫通孔を有する導電性粘着テープ)を得た。
【0174】
(実施例2)
粘着剤組成物溶液の調製例
実施例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液を得た。
次に、該アクリル系ポリマー溶液に、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対してイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業株式会社製)(C/L)を固形分換算で3重量部を添加し、さらに、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、粘着付与剤(商品名「ペンセル D−125」、荒川化学工業株式会社製)(ペンセルD125)を固形分換算で30重量部を添加して、これを混合することによって溶液Aを得た。
そして、上記溶液Aに、銀フィラー(商品名「Ag−HWQ−400」、福田金属箔工業株式会社製、フィラー径d50:13.2μm、フィラー径d95:43.0μm、球状)を、混合溶液Aを構成している固形分100重量部に対して35重量部配合し、攪拌機で10分間混合して、粘着剤組成物溶液を得た。すなわち、銀フィラーの含有量は、銀フィラーを除く粘着剤組成物溶液の全固形分(100重量部)に対して、35重量部である。
【0175】
導電性粘着テープの製造例
シリコーンが塗布された剥離紙に、上記粘着剤組成物溶液を乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、これを130℃で3分間オーブンで乾燥させた後、粘着剤層を得た。
次に、得られた粘着剤層表面に錫コート銅箔(錫メッキが施された銅箔、厚み:35μm)を貼り合わせ、銀フィラーを含有する粘着剤を有する導電性粘着テープを得た。
【0176】
(実施例3)
モノマー成分を、アクリル酸n−ブチル(BA)95重量部、アクリル酸(AA)5重量部とし、実施例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液を得た。なお、アクリル系ポリマー溶液中の上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は60万であった。
次に、モノマー成分としてのメタクリル酸シクロヘキシル[ホモポリマー(ポリメタクリル酸シクロヘキシル)のガラス転移温度:66℃]95重量部、アクリル酸5重量部、連鎖移動剤としてのα−メチルスチレンダイマー10重量部、重合開始剤としての2,2´−アゾビスイソブチロニトリル10重量部、および重合溶媒としてのトルエン120重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら、1時間攪拌した。このようにして、重合系内の酸素を除去した後、85℃に昇温し、5時間反応させて、固形分濃度50重量%のアクリル系オリゴマー溶液を得た。
なお、アクリル系オリゴマー溶液中の上記アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は4300であった。
次に、上記アクリル系ポリマー溶液に、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)(KBM403)を固形分換算で0.15重量部添加し、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(商品名「TETRAD−C」、三菱ガス化学株式会社製)(T/C)を固形分換算で0.075重量部添加し、さらに、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、固形分換算でアクリル系オリゴマーの量が25重量部となるように上記アクリル系オリゴマー溶液を添加し、これを混合することによって粘着剤組成物溶液を調製した。
そして、上記粘着剤組成物溶液を用い、実施例1と同様にして、粘着剤層側の表面に端子部を有する導電性粘着テープを得た。
【0177】
(実施例4)
実施例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液を得た。
次に、該アクリル系ポリマー溶液に、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対してイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業株式会社製)(C/L)を固形分換算で3重量部を添加し、これを混合することによって粘着剤組成物溶液を調製した。
そして、上記粘着剤組成物溶液を用い、実施例1と同様にして、粘着剤層側の表面に端子部を有する導電性粘着テープを得た。
【0178】
(比較例1)
実施例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液を得た。
次に、該アクリル系ポリマー溶液に、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(商品名「TETRAD−C」、三菱ガス化学株式会社製)(T/C)を固形分換算で0.2重量部を添加し、さらに、上記アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、粘着付与剤(商品名「ペンセル D−125」、荒川化学工業株式会社製)(ペンセルD125)を固形分換算で30重量部を添加し、これを混合することによって粘着剤組成物溶液を得た。
そして、上記粘着剤組成物溶液を用い、実施例1と同様にして、粘着剤層側の表面に端子部を有する導電性粘着テープを得た。
【0179】
(比較例2)
モノマー成分をアクリル酸2−メトキシエチル(2MEA)66重量部、アクリル酸エチル(EA)23重量部、メタクリル酸メチル(MMA)10重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(HBA)1重量部を、実施例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液を得た。
なお、アクリル系ポリマー溶液中の上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は90万であった。
次に、該アクリル系ポリマー溶液に、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対してポリイソシアネート(商品名「デュラネートMEA−75X」、旭化成ケミカルズ株式会社製)(デュラネート)を固形分換算で0.3重量部を添加し、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対してアセチルアセトン0.2重量部を添加し、これを混合することによって粘着剤組成物溶液を得た。
そして、上記粘着剤組成物溶液を用い、実施例1と同様にして、粘着剤層側の表面に端子部を有する導電性粘着テープを得た。
【0180】
[評価]
実施例及び比較例の導電性粘着テープについて、以下の測定又は評価を行った。その結果を表1に示した。
【0181】
(1)ゲル分率
実施例1、実施例3、実施例4、比較例1及び比較例2のゲル分率は、上記の第一の粘着剤層のゲル分率の測定方法に従って求めた。また、実施例2のゲル分率は、上記の第二の粘着剤層のゲル分率の測定方法に従って求めた。
【0182】
(2)抵抗値(ヒートサイクル試験)
(評価用基板の作製)(図17参照)
実施例および比較例で得られた導電性粘着テープを、幅6mm×長さ60mmのサイズに切り出し、セパレータを剥離して導電性粘着テープ片を得た。
銀メッキが施された導体パターン(Cu18μm/Ni3〜7μm/Au0.03μm/Ag5μm)51a〜hが、図17に示す配置で形成されたガラスエポキシ基板(厚み:1.6mm)を用い、上記導体パターンへの導電性粘着テープの貼付部分53a〜dのサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように、5kgのローラーを1往復させて、導電性粘着テープ片(52a、52b)を貼付(圧着)した。次いで、上記導体パターン51a〜hに定電流電源(54a、54b)および電位計(55a〜d)を、リード線を用いてはんだ付けによって接続した。
なお、図17に示す評価用基板における電気回路は、図12の評価用基板における電気回路を2個配列したものに相当する。
(抵抗評価用サンプルの作製)
図17に示す評価用基板における領域56に、酢酸ビニル含有量28%の熱硬化型EVAフィルム(厚み:0.6mm)を重ね、さらに上からガラス板(厚み:3.2mm)を重ねて、「評価用基板/EVAフィルム/ガラス板」の構成を有する積層体を得た。当該積層体を、真空プレス機を使用して、まず150℃の状態でプレスを行わず40秒間真空引き行い、その後真空引きしたままの状態で150℃にて0.1MPaの圧力で400秒間プレスし(真空引きは引き始めてから400秒間で終了させる)、その後プレス機から上記積層体を取り出して、150℃オーブンで40分間加熱して、EVAを熱硬化させることにより、抵抗評価用サンプルを得た。
(チャンバー内の雰囲気温度設定)
チャンバーとして、商品名「PL−3K」(エスペック株式会社製)を用い、チャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)を下記のように設定した。なお、下記条件にて冷却および加熱を繰り返す間、チャンバー内に湿度(相対湿度)については特に制御を行わず、開始時点におけるチャンバー内の相対湿度は50%RHであった。
開始温度を25℃とし、25℃から100℃/時間の速度で−40℃まで降温し、−40℃で10分間保持する。次に、−40℃から100℃/時間の速度で85℃まで昇温し、85℃で10分間保持する。その後再び100℃/時間の速度で降温し、25℃に達するまでを1サイクルとし、これを200回繰り返す設定とした。
図16には、上記設定温度(ヒートサイクル条件)にてチャンバー内の温度を制御した場合の、チャンバー(恒温槽)の槽内温度(雰囲気温度)および導電性粘着テープの表面温度プロファイルの一例を示した。
(抵抗値の測定)
上記抵抗評価用サンプルを、定電流電源(54a、54b)によって2Aの定電流を流した状態(すなわち、図17における貼付部分53a〜dに2Aの定電流を流した状態)で、槽内の雰囲気温度を25℃に調整した上記チャンバー内に入れ、上記ヒートサイクル条件にて冷却および加熱を繰り返した。この間、電位計(55a〜d)によって電圧を連続的に測定し(サンプリング周期:1回/1分)、貼付部分53a〜dの抵抗値(接触抵抗値)を連続的に取得した。これにより、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)および200サイクル目の抵抗値の最大値を測定し、抵抗値倍率を算出した。表1には、貼付部分53a〜dのそれぞれにおいて測定された、初期抵抗値および抵抗値倍率の平均値(N=4)を示した。
【0183】
(3)端子部の面積(端子部の総面積、端子部の平均面積)
実施例1、実施例3、実施例4、比較例1及び比較例2の導電性粘着テープを幅5mm×長さ6mmのサイズ(面積:30mm2)に切り出し、セパレータを剥離して、これを測定サンプルとした。
上記測定サンプルの粘着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズ:VH−Z20)にて端子部の画像(投影面の画像)を観察した。次いで、計測モードにて、上記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって、端子部の面積を計測した。同様にして、上記測定サンプルに存在する全ての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を算出した。
また、上記測定サンプルに存在する貫通孔の数を数え、上記で算出した粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を、上記貫通孔の数で割ることによって、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を算出した。
【0184】
(4)表面露出率
実施例2の導電性粘着テープの粘着剤層表面を、0.5重量%ルテニウム酸水溶液を用いて室温で30分間蒸気染色した。その後、スパッタ装置「E−3200」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、本発明の粘着剤層表面のPt−Pdスパッタリング処理を行い、観察用試料を作製した。
走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「S−4800」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧5kV、測定倍率200倍の条件で、観察用試料の本発明の粘着剤層表面側の反射電子像(観察範囲:450×575μm2)を測定した。
得られた反射電子像について、画像処理ソフト「Winroof」(三谷商事(株)製)を用いて二値化し、本発明の粘着剤層側の表面の面積に対する、導電性フィラーに帰属する無機層部分の面積の割合を算出し、表面露出率を測定した。
【0185】
【表1】

なお、表1の「粘着剤組成物の組成」の銀フィラーの量は、銀フィラーを除く粘着剤組成物の全固形分100重量部に対する量である。
【0186】
表1の「導電方式」は「粘着剤層の電気導電性を向上させるために採用した方式」のことであり、「貫通孔方式」は「金属箔側から貫通孔を開け、粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、これを端子部とする方式」のことであり、「導電粒子含有方式」は「粘着剤層中に導電性の粒子を含有させる方式」のことである。
なお、実施例1、3及び4は第一の態様の導電性粘着テープに相当し、実施例2は第二の態様の導電性粘着テープに相当する。
【符号の説明】
【0187】
11 金属箔
12 粘着剤層
12a 第一の粘着剤層
13 導電性粘着テープ
14 端子部
15 貫通孔
16 導通部
17 突出部(バリ)
17a 貫通孔15に対して粘着剤層の進行方向側に位置する突出部
17b 貫通孔15に対して粘着剤層の進行方向とは反対側に位置する突出部
18 プレスロール
21 オス型
22 メス型
31 スキージ(剣スキージ)
32 先端角度
33 粘着剤層表面とスキージ先端がなす角度
41a〜d 銀メッキが施された導体パターン(導体パターン)
42 導電性粘着テープ
43 貼付部分
44 定電流電源
45 電位計
46 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)によって封止される領域(封止領域)
47 貼付部分の抵抗(接触抵抗)
48a ガラスエポキシ基板
48b ガラス板
49 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の硬化物
51a〜h 銀メッキが施された導体パターン(導体パターン)
52a、52b 導電性粘着テープ(導電性粘着テープ片)
53a〜d 貼付部分(導電性粘着テープと導体パターンの貼り合わせ部分)
54a、54b 定電流電源
55a〜d 電位計
56 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)によって封止される領域(封止領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の片面側に粘着剤層を有し、
前記粘着剤層が、5〜69重量%のゲル分率を有し、かつ導電性フィラーを含有しないことを特徴とする導電性粘着テープ。
【請求項2】
下記のヒートサイクル試験において測定される、1サイクル目の抵抗値の最大値が1Ω以下であり、かつ200サイクル目の抵抗値の最大値が1サイクル目の抵抗値の最大値の5倍以下である請求項1に記載の導電性粘着テープ。
[ヒートサイクル試験]
導電性粘着テープを、貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキに貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流す。これを、槽内の設定温度を25℃から−40℃まで降温した後−40℃で10分間保持し、次いで、85℃まで昇温した後85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとしてこれを繰り返す設定とした恒温槽内に入れて冷却および加熱し、この間、前記貼付部分の抵抗値を連続的に測定する。
【請求項3】
前記粘着剤層側の表面に露出した端子部を有し、前記粘着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.15〜5mm2である請求項1又は2に記載の導電性粘着テープ。
【請求項4】
前記端子部が、前記金属箔側から貫通孔を開け、前記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部である請求項3に記載の導電性粘着テープ。
【請求項5】
前記貫通孔1個あたりの端子部の平均面積が50,000〜500,000μm2である請求項4に記載の導電性粘着テープ。
【請求項6】
金属箔の片面側に粘着剤層を有し、
前記粘着剤層が、5〜69重量%のゲル分率を有し、かつ導電性フィラーを含有することを特徴とする導電性粘着テープ。
【請求項7】
下記のヒートサイクル試験において測定される、1サイクル目の抵抗値の最大値が1Ω以下であり、かつ200サイクル目の抵抗値の最大値が1サイクル目の抵抗値の最大値の5倍以下である請求項6に記載の導電性粘着テープ。
[ヒートサイクル試験]
導電性粘着テープを、貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm2)となるように銀メッキに貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流す。これを、槽内の設定温度を25℃から−40℃まで降温した後−40℃で10分間保持し、次いで、85℃まで昇温した後85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとしてこれを繰り返す設定とした恒温槽内に入れて冷却および加熱し、この間、前記貼付部分の抵抗値を連続的に測定する。
【請求項8】
下記の方法により測定される、前記粘着剤層表面における前記導電性フィラーの表面露出率が2〜5%である請求項6又は7に記載の導電性粘着テープ。
[表面露出率の測定方法]
導電性粘着テープの前記粘着剤層表面を、0.5重量%ルテニウム酸水溶液を用いて室温で30分間蒸気染色する。その後、スパッタ装置「E−3200」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、前記粘着剤層表面のPt−Pdスパッタリング処理を行い、観察用試料を作製する。
走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「S−4800」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧5kV、測定倍率200倍の条件で、観察用試料の前記粘着剤層表面側の反射電子像(観察範囲:450×575μm2)を測定する。
得られた反射電子像について、画像処理ソフト「Winroof」(三谷商事株式会社製)を用いて二値化し、導電性フィラーに帰属する無機層部分の面積の割合を算出し、表面露出率を測定する。
【請求項9】
前記粘着剤層の厚みが10〜100μmである請求項6〜8のいずれか1項に記載の導電性粘着テープ。
【請求項10】
前記導電性フィラーの含有量が、導電性フィラーを除く粘着剤層の全固形分(100重量部)に対して、25〜250重量部である請求項6〜9のいずれか1項に記載の導電性粘着テープ。
【請求項11】
前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有する粘着剤組成物より形成された粘着剤層である請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−49764(P2013−49764A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187683(P2011−187683)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】