説明

導電性組成物、導電性配線の形成方法および導電性配線

【課題】ベタ刷り部分における基板の変形を防ぐとともに線部における印刷性を改善し、かつ、比抵抗の小さい導電性配線を形成することができる導電性組成物ならびに該導電性組成物を用いた導電性配線の形成方法および導電性配線の提供。
【解決手段】銀粉(A)と、沸点が180℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる2級脂肪酸銀塩(B)と、溶媒(C)とを含有し、
前記銀粉(A)が、平均粒子径が0.7〜5μmの球状の銀粉末であり、
酸化銀の含有量が上記溶媒(C)100質量部に対して10質量部以下である導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、導電性配線の形成方法および導電性配線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀粒子などの導電性粒子に熱可塑性樹脂(例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等)や熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等)などからなるバインダ、有機溶剤、硬化剤、触媒等を添加し混合して得られる銀ペースト(導電性組成物)を、合成樹脂基材上(例えば、ポリエステルフィルム等)に所定の回路パターンとなるように印刷し、これらを加熱して導体回路をなす導電性配線を形成し、回路基板を製造する方法が知られている。
【0003】
例えば、本出願人により、「酸化銀(A)と、沸点が200℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる2級脂肪酸銀塩(B)と、を含有する導電性組成物。」や「酸化銀(A)と、水酸基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)と、を含有する導電性組成物。」等の導電性組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
また、特許文献1〜4には、必要に応じて0.01〜10μmの粒径の金属粉(例えば、銅、銀、アルミニウム等)を含有していてもよい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3990712号公報
【特許文献2】特開2008−21447号公報
【特許文献3】特開2009−105034号公報
【特許文献4】特開2009−158464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本発明者は、特許文献1〜4に記載の導電性組成物において、金属粉を併用した態様について検討した結果、ベタ刷り部分(面状に印刷する部分)と線部(線状に印刷する部分)とが混在する導電性配線をスクリーン印刷等で形成する場合には、酸化銀の還元反応に伴う発熱により、使用する基板の種類によってはベタ刷り部分において基板が変形することがあることを明らかとした。
また、本発明者は、特許文献1〜4に記載の導電性組成物において、酸化銀に代えて金属粉を使用した場合についても検討した結果、使用する金属粉の種類によっては線部においてカスレやニジミが生じ、また、導電性配線の比抵抗も大きくなることを明らかとした。
【0007】
そこで、本発明は、ベタ刷り部分における基板の変形を防ぐとともに線部における印刷性を改善し、かつ、比抵抗の小さい導電性配線を形成することができる導電性組成物ならびに該導電性組成物を用いた導電性配線の形成方法および導電性配線を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、沸点が180℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる2級脂肪酸銀塩に対して、特定粒径・形状の銀粉末を用い、酸化銀の含有量と特定量以下とする導電性組成物が、ベタ刷り部分における基板の変形を防ぐとともに線部における印刷性を改善し、かつ、比抵抗の小さい導電性配線を形成することができることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記(1)〜(7)を提供する。
【0009】
(1)銀粉(A)と、沸点が180℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる2級脂肪酸銀塩(B)と、溶媒(C)とを含有し、
上記銀粉(A)が、平均粒子径が0.7〜5μmの球状の銀粉末であり、
酸化銀の含有量が上記溶媒(C)100質量部に対して10質量部以下である導電性組成物。
【0010】
(2)上記2級脂肪酸銀塩(B)の含有量が、上記銀粉(A)100質量部に対して0.1〜50質量部である上記(1)に記載の導電性組成物。
【0011】
(3)上記2級脂肪酸銀塩(B)が、下記式(I)で表される化合物である上記(1)または(2)に記載の導電性組成物。
【化1】

(式(I)中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R2は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【0012】
(4)上記2級脂肪酸銀塩(B)が、2−メチルプロパン酸銀塩である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性組成物。
【0013】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性組成物を基材上に塗布して配線を形成する配線形成工程と、得られた配線を熱処理して導電性配線を得る熱処理工程と、を具備する導電性配線の形成方法。
【0014】
(6)上記熱処理が、100〜250℃の温度に加熱する処理である上記(5)に記載の導電性配線の形成方法。
【0015】
(7)上記(5)または(6)に記載の導電性配線の形成方法により得られる導電性配線。
【発明の効果】
【0016】
以下に示すように、本発明によれば、ベタ刷り部分における基板の変形を防ぐとともに線部における印刷性を改善し、かつ、比抵抗の小さい導電性配線を形成することができる導電性組成物ならびに該導電性組成物を用いた導電性配線の形成方法および導電性配線を提供することができる。
また、本発明の導電性組成物を用いれば、ベタ刷り部分と線部とが混在した複雑な導電性回路を耐熱性の低い基材に対しても容易かつ短時間で形成することができるため非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は実施例で使用する銀粉(AgC−103、福田金属箔社製)を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
【図2】図2は比較例で使用する銀粉(AgC−2011、福田金属箔社製)を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の導電性組成物は、銀粉(A)と、沸点が180℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる2級脂肪酸銀塩(B)と、溶媒(C)とを含有し、上記銀粉(A)が、平均粒子径が0.7〜5μmの球状の銀粉末であり、酸化銀の含有量が上記溶媒(C)100質量部に対して10質量部以下である導電性組成物である。
以下に、銀粉(A)、2級脂肪酸銀塩(B)および溶媒(C)について詳述する。
【0019】
<銀粉(A)>
本発明の導電性組成物で用いる銀粉(A)は、平均粒子径が0.7〜5μmの球状の銀粉末である。
ここで、球状とは、長径/短径の比率が2以下の粒子の形状をいう。
また、平均粒子径とは、球状の銀粉末の粒子径の平均値をいい、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された50%体積累積径(D50)をいう。なお、平均値を算出する基になる粒子径は、球状の銀粉末の断面が楕円形である場合はその長径と短径の合計値を2で割った平均値をいい、正円形である場合はその直径をいう。
例えば、後述する実施例で使用する銀粉(AgC−103、福田金属箔社製)の写真(図1)で示されるものは球状の銀粉末に該当するが、後述する比較例で使用する銀粉(AgC−2011、福田金属箔社製)の写真(図2)で示されるものは球状の銀粉末には該当せず、フレーク(鱗片)状の銀粉末に該当するものである。
【0020】
本発明においては、上記銀粉(A)の平均粒子径は、作業性に優れ、線部における印刷性がより良好となる理由から、0.7〜5μmであるのが好ましく、1〜3μmであるのがより好ましい。
また、上記銀粉(A)の含有量は、線部における印刷性がより良好となり、比抵抗のより小さい導電性配線を形成することができる理由から、後述する溶媒(C)100質量部に対して300〜700質量部であるのが好ましく、400〜600質量部であるのがより好ましい。
【0021】
また、本発明においては、上記銀粉(A)として市販品を用いることができ、その具体例としては、AgC−103(平均粒子径:1.5μm、福田金属箔社製)、AG4−8F(平均粒子径:2.2μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AG2−1C(平均粒子径:1.0μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AG3−11F(平均粒子径:1.4μm、DOWAエレクトロニクス社製)等が挙げられる。
【0022】
<2級脂肪酸銀塩(B)>
本発明の導電性組成物で用いる2級脂肪酸銀塩(B)は、沸点が180℃以下の2級脂肪酸を用いて得られるものであり、具体的には、以下に示す沸点が180℃以下の2級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られるものである。
【0023】
上記2級脂肪酸銀塩(B)の反応に用いられる2級脂肪酸は、沸点が180℃以下の2級脂肪酸であれば特に限定されず、その具体例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
【化2】

【0025】
式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R2は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0026】
上記式(1)中、R1の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。R1としては、メチル基、エチル基であるのが好ましい。
また、上記式(1)中、R2の炭素数1〜10のアルキル基としては、上記R1の炭素数1〜6のアルキル基以外に、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。R2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基であるのが好ましい。
【0027】
本発明においては、上記式(1)で表されるカルボン酸としては、具体的には、例えば、2−メチルプロパン酸(別名:イソ酪酸)、2−メチルブタン酸(別名:2−メチル酪酸)、2−メチルペンタン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルブタン酸;等が挙げられる。
これらのうち、2−メチルプロパン酸、2−メチルブタン酸であるのが、得られる2級脂肪酸銀塩(B)である2−メチルプロパン酸銀塩、2−メチルブタン酸銀塩を含有する本発明の導電性組成物を用いて形成される導電性配線の形成がより低温かつ短時間で可能となる理由から好ましい。
【0028】
一方、上記2級脂肪酸銀塩(B)の反応に用いられる酸化銀は、酸化銀(I)、即ち、Ag2Oである。
【0029】
本発明の導電性組成物で用いる2級脂肪酸銀塩(B)は、上述した沸点が180℃以下の2級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られ、以下に示す反応式中の下記式(I)で表される化合物であるのが好ましい。
この反応は、例えば、上記式(1)で表される化合物を用いた場合は以下に示す反応式で表される反応が進行するものであれば特に限定されないが、上記酸化銀を粉砕しつつ進行させる方法や、上記酸化銀を粉砕した後に上記2級脂肪酸を反応させる方法が好ましい。前者の方法としては、具体的には、上記酸化銀と、溶剤により上記2級脂肪酸を溶液化したものとを、ボールミル等により混練し、固体である上記酸化銀を粉砕させながら、室温で、1〜24時間程度、好ましくは2〜8時間反応させるのが好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
式(I)中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R2は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0032】
上記2級脂肪酸を溶液化する溶媒としては、具体的には、例えば、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオール等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒を用いて2級脂肪酸銀塩(B)を調製した場合、2級脂肪酸銀塩(B)を結晶として取り出した後に後述する溶媒(C)に溶解させるのが好ましい。
【0033】
上記2級脂肪酸銀塩(B)の含有量は、線部における印刷性がより良好となり、比抵抗のより小さい導電性配線を形成することができる理由から、上記銀粉(A)100質量部に対して0.1〜50質量部であるのが好ましく、5〜30質量部であるのがより好ましい。
【0034】
本発明においては、上述した銀粉(A)および2級脂肪酸銀塩(B)を用い、酸化銀の含有量を後述する溶媒(C)100質量部に対して10質量部以下とした導電性組成物を用いることにより、ベタ刷り部分における基板の変形を防ぐとともに線部における印刷性を改善し、かつ、比抵抗の小さい導電性配線を形成することができる。
具体的には、耐熱性の低い基材(例えば、PETフイルム)上に、ベタ刷り部分(例えば、2cm2程度のエリア)と線部(例えば、0.3μm程度の線幅)とが混在した複雑な導電性回路を170℃程度の温度で5分程度で形成することができ、また、その比抵抗を10×10-6Ω・cm以下とすることができる。ここで、比抵抗は、低抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製)を用いた4端子4探針法により比抵抗(体積固有抵抗値)を測定した値である。
これは、酸化銀の含有量が低減したことによりその還元反応(発熱反応)が抑制されたことは勿論であるが、熱処理により2級脂肪酸銀塩(B)から分解される銀が融解する際に銀粉(A)を連結することにより高い導電性が発現し、また、熱処理により2級脂肪酸銀塩(B)から分解される2級脂肪酸またはその分解物が揮発されやすいためであると考えられる。
【0035】
また、本発明においては、ベタ刷り部分における基板の変形がより抑えられる理由から酸化銀の含有量は後述する溶媒(C)100質量部に対して5質量部以下であるのが好ましく、1質量部以下であるのがより好ましく、実質的に酸化銀を含有していない態様が最も好ましい。
【0036】
<溶媒(C)>
本発明の導電性組成物で用いる溶媒(C)は、本発明の導電性組成物を基材上に塗布することができるものであれば特に限定されない。
上記溶媒(C)としては、具体的には、例えば、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオール等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の導電性組成物は、必要に応じて、上述した銀粉(A)以外の金属粉、還元剤等の添加剤を含有していてもよい。
上記金属粉としては、具体的には、例えば、銅、アルミニウム等が挙げられ、中でも、銅であるのが好ましい。また、0.01〜10μmの粒径の金属粉であるのが好ましい。
上記還元剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール類等が挙げられる。
また、本発明の導電性組成物は、接着性を向上させる観点から、上記2級脂肪酸銀塩(B)以外に、ネオデカン酸銀塩等のその他の脂肪酸銀塩を上記2級脂肪酸銀塩(B)よりも少ないモル数で含有していてもよい。
【0038】
本発明の導電性組成物の製造方法は特に限定されず、上記銀粉(A)、上記2級脂肪酸銀塩(B)および上記溶剤(C)ならびに所望により含有していてもよい添加剤を、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合する方法が挙げられる。
【0039】
本発明の導電性配線の形成方法は、本発明の導電性組成物を基材上に塗布して配線を形成する配線形成工程と、得られた配線を熱処理して導電性被膜を得る熱処理工程と、を具備する導電性配線の形成方法である。
以下に、配線形成工程、熱処理工程について詳述する。
【0040】
<配線形成工程>
上記配線形成工程は、本発明の導電性組成物を基材上に塗布して配線を形成する工程である。
ここで、基材としては、上記で例示した耐熱性の低い基材以外に、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドなどのフィルム;銅板、銅箔、ガラス、エポキシ、紙などの基板;等が挙げられる。
また、塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。
【0041】
<熱処理工程>
上記熱処理工程は、上記配線形成工程で得られた配線を熱処理して導電性配線を得る工程である。
本発明においては、配線を熱処理することにより、2級脂肪酸銀塩(B)から分解される銀が融解する際に銀粉(A)を連結され、本発明の導電性配線(銀膜)が形成される。
【0042】
また、本発明においては、上記熱処理は、100〜250℃の温度で、数秒〜数十分間、加熱する処理であるのが好ましく、170℃程度で5分程度加熱する処理であるのがより好ましい。熱処理の温度および時間がこの範囲であると、耐熱性の低い基材にも良好な導電性配線を形成することができる。
【0043】
なお、本発明においては、上記配線形成工程で得られた配線は、紫外線または赤外線の照射でも導電性配線を形成することができるため、上記熱処理工程は、紫外線または赤外線の照射によるものであってもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて、本発明の製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1〜4、比較例1〜6)
ボールミルに、下記第1表に示す銀粉等を下記第1表中に示す組成比となるように添加し、これらを混合することにより導電性組成物を調製した。
調製した導電性組成物を基材である厚さ75μmのPETフイルム(ルミラーT60、東レ社製)上に、スクリーン印刷で塗布して配線を形成した後、オーブンにて170℃で5分間乾燥し、導電性配線を作製した。
ここで、スクリーン印刷で形成した配線には、1cm×2cmの領域のベタ刷り部分と、線幅が0.3μmで線の長さが100mmの線部とを設けた。
【0046】
<線部における印刷性>
スクリーン印刷で形成した乾燥(焼成)前の配線の線部を光学顕微鏡で観察した。
その結果、断線がなく、カスレやニジミもない配線が形成されている場合を線部における印刷性が良好なものとして「○」と評価した。
また、断線またはカスレやニジミが確認できるもののうち、後述する方法により測定する比抵抗が1.0×10-5Ω・cm未満である場合を線部における印刷性がやや劣るものの使用可能なものとして「△」と評価した。
これらの結果を下記第1表に示す。
【0047】
<ベタ刷り部分における基板の変形>
スクリーン印刷で形成した配線を乾燥(焼成)させて導電性配線を作製する際に、ベタ刷り部分における基板の変形の有無を目視により確認した。その結果を下記第1表に示す。
【0048】
<比抵抗>
作製した各導電性配線について、低抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製)を用いた4端子4探針法により比抵抗(体積固有抵抗値)を測定した。その結果を下記第1表に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・銀粉1:AgC−103(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔社製)
・銀粉2:EHD(形状:球状、平均粒子径:0.5μm、住友金属社製)
・銀粉3:AgC−2011(形状:フレーク状、平均粒子径:2〜10μm、福田金属箔社製)
【0052】
・2−メチルプロパン酸銀塩:まず、酸化銀(東洋化学工業社製)50g、2−メチルプロパン酸(関東化学社製)38gおよびメチルエチルケトン(MEK)300gをボールミルに投入し、室温で24時間撹拌させることにより反応させた。次いで、吸引ろ過によりMEKを取り除き、得られた粉末を乾燥させることにより、2−メチルプロパン酸銀塩を調製した。なお、上記第1表中に、脂肪酸銀塩の反応に用いた脂肪酸の級数と沸点を記載した。
・2−メチルブタン酸銀塩:まず、酸化銀(東洋化学工業社製)50g、2−メチルブタン酸(関東化学社製)44gおよびMEK300gをボールミルに投入し、室温で24時間撹拌させることにより反応させた。次いで、吸引ろ過によりMEKを取り除き、得られた粉末を乾燥させることにより、2−メチルブタン酸銀塩を調製した。なお、上記第1表中に、脂肪酸銀塩の反応に用いた脂肪酸の級数と沸点を記載した。
・ネオデカン酸銀塩:まず、酸化銀(東洋化学工業社製)50g、ネオデカン酸(東洋合成社製)74.3gおよびMEK300gをボールミルに投入し、室温で24時間撹拌させることにより反応させた。次いで、吸引ろ過によりMEKを取り除き、得られた粉末を乾燥させることにより、ネオデカン酸銀塩を調製した。なお、上記第1表中に、脂肪酸銀塩の反応に用いた脂肪酸の級数と沸点を記載した。
【0053】
・酸化銀:酸化銀(I)(東洋化学工業社製)
・α−テルピネール:溶剤
・銀ペースト:樹脂系銀ペースト(DWP−025、東洋紡績社製)
【0054】
第1表に示す結果から、銀粉(A)に該当する銀粉を含有しない導電性組成物(比較例1および2)は、線部の印刷性がやや劣り、抵抗値が大きくなることが分かった。また、2級脂肪酸銀塩(B)に該当する脂肪酸銀塩を含有しない導電性組成物(比較例3)は、線部の印刷性がやや劣り、170℃、5分間の乾燥条件では、導電性配線の状態が悪くなるため抵抗値も大きくなることが分かった。更に、酸化銀を特定量以上含有する導電性組成物(比較例4および5)は、銀粉(A)の有無にかかわらず、ベタ刷り部分における基板に変形が生じることが分かった。
これに対し、実施例1〜4で調製した導電性組成物は、ベタ刷り部分における基板の変形を防ぐとともに線部における印刷性を改善し、かつ、比抵抗の小さい導電性配線を形成することができることが分かった。また、実施例1〜4で調製した導電性組成物により形成した導電性配線は、従来公知の樹脂系の銀ペースト(比較例6)で形成した配線よりも抵抗値が低く、良好であるとことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀粉(A)と、沸点が180℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる2級脂肪酸銀塩(B)と、溶媒(C)とを含有し、
前記銀粉(A)が、平均粒子径が0.7〜5μmの球状の銀粉末であり、
酸化銀の含有量が上記溶媒(C)100質量部に対して10質量部以下である導電性組成物。
【請求項2】
前記2級脂肪酸銀塩(B)の含有量が、前記銀粉(A)100質量部に対して0.1〜50質量部である請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記2級脂肪酸銀塩(B)が、下記式(I)で表される化合物である請求項1または2に記載の導電性組成物。
【化1】

(式(I)中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R2は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【請求項4】
前記2級脂肪酸銀塩(B)が、2−メチルプロパン酸銀塩である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の導電性組成物を基材上に塗布して配線を形成する配線形成工程と、得られた配線を熱処理して導電性配線を得る熱処理工程と、を具備する導電性配線の形成方法。
【請求項6】
前記熱処理が、100〜250℃の温度に加熱する処理である請求項5に記載の導電性配線の形成方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の導電性配線の形成方法により得られる導電性配線。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−124040(P2011−124040A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279669(P2009−279669)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】