説明

導電性複合断面繊維およびブラシ

【課題】電子写真記録方式の乾式複写機や、ファクシミリ、プリンター等の画像品質向上を達成するために、コシを併せ持った高密度なパイルを安定に形成することで、均一かつ高密度な帯電付与およびクリーニング性を可能とする導電性複合断面繊維、および電子写真記録方式の乾式複写機や、ファクシミリ、プリンター用等に好適なブラシを提供する。
【解決手段】導電性カーボンを含有するポリマーからなる成分Aが、成分Aと相溶しないポリマーからなる成分Bによって複数のセグメントに分割されていることを特徴とする導電性複合断面繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真記録方式の乾式複写機や、ファクシミリ、プリンター等のブラシに用いられる導電性複合断面繊維に関するものであり、特に導電性カーボンを含有するポリマーが、それに相溶しないポリマーによって複数のセグメントに分割されている導電性複合断面繊維であり、これを割繊処理することによりブラシにした際のパイル密度を高めて画像品質向上に寄与し、さらに、前記導電性複合断面繊維を割繊処理して電子写真記録方式の乾式複写機や、ファクシミリ、プリンター等に用いる帯電ブラシ、クリーナーブラシに好適な導電性複合断面繊維およびブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真記録方式の乾式複写機や、ファクシミリ、プリンター等に用いられる現像用ブラシ、接触帯電用ブラシ、感光ドラムクリーナー用ブラシ用の繊維としては、比抵抗値が10〜10Ωcmのものが要求されている。従来このような用途における導電性カーボンを含有する繊維は、セルロース系繊維やビニロン導電糸が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
上記従来技術から得られるセルロース系繊維は低湿度(温度20℃、湿度15%RH)での比抵抗値と、高湿度(温度20℃、湿度65%RH)での比抵抗値の比が10Ωcm程度であり、さらなる複写時の温湿度変化のよる画像品質のバラツキを少なくするため導電糸の低湿度および高湿度の比抵抗の比を小さくすることが望まれている。
【0004】
また、セルロース系繊維およびビニロン導電糸では、単糸繊度が4〜5デシテックス程度であり、製織したときの導電糸のパイル密度が約3万本/インチ程度となり、さらなる画像品質を高画質化するために製織したときの高パイル密度化が望まれている。また、高パイル密度化の方法として、単純な単糸繊度の細繊度化が近年検討されているが、紡糸工程での糸切れや毛羽が多くなり、生産安定性に欠ける、また、細繊度化によりコシが無くなるためクリーニング性に欠けるといった問題を抱えている。
【0005】
一方、比抵抗値バラツキが少なく作成時の熱処理工程や長期間の使用における温湿度変化に対して安定したポリエステル、ポリアミド系導電糸について提案がなされている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、従来のセルロース系導電糸と同様、高パイル密度化のために単糸繊度を細くしても、紡糸工程での糸切れや毛羽が増えて生産安定性に欠ける、クリーニング性に欠けるといった問題は解消できていなかった。
【特許文献1】特開平9−49117号公報([0007]段落)
【特許文献2】特開2000−355823号公報([0002]〜[0003]段落)
【特許文献3】特開2000−160427号公報([0003]段落)
【特許文献4】特開2002−146629号公報([0051]段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では電子写真記録方式の乾式複写機や、ファクシミリ、プリンター等の画像品質向上を達成するために、コシを併せ持った高密度なパイルを安定に形成することで、均一かつ高密度な帯電付与およびクリーニング性を可能とする導電性複合断面繊維、および電子写真記録方式の乾式複写機や、ファクシミリ、プリンター用等に好適なブラシを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)導電性カーボンを含有するポリマーからなる成分Aが、成分Aと相溶しないポリマーからなる成分Bによって複数のセグメントに分割されていることを特徴とする導電性複合断面繊維。
(2)成分Aのポリマーがポリアミド、成分Bのポリマーがポリエステルであることを特徴とする前記(1)に記載の導電性複合断面繊維。
(3)温度が20℃、湿度が30%RHでの比抵抗値が10〜10Ωcmであることを特徴とする前記(1)または(2)のいずれかに記載の導電性複合断面繊維。
(4)成分A100gに対して、導電性カーボンを20〜40g含有して得られることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性複合断面繊維。
(5)成分Aセグメントの繊度が0.1〜3デシテックスであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性複合断面繊維。
(6)成分Bセグメントの繊度が3〜7デシテックスであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性複合断面繊維。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性複合断面繊維を割繊処理して用いることを特徴とするブラシ。
(8)電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、またはプリンター用のブラシであることを特徴とする前記(7)に記載のブラシ。
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電性複合断面繊維によれば、導電性複合断面繊維を割繊処理して用いることにより、コシを併せ持った高密度な導電性セグメントのパイルを形成することができる。高密度なパイルを用いて電子写真記録方式の乾式複写機や、ファクシミリ、プリンター等に用いるブラシとすることにより、均一かつ高密度な帯電付与およびクリーニング性を可能とし高画質印刷を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明の導電性複合断面繊維を構成するポリマーとしては、ポリエステルやポリアミド、またポリオレフィンに代表される熱可塑性ポリマーや、フェノール樹脂等のような熱硬化性ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルに代表される熱可塑性に乏しいポリマーや、生体ポリマー等が適用できるが、熱可塑性ポリマーが成形性の点から好ましい。また、ポリマーには本発明の効果を損なわない範囲において種々の添加剤を含んでも良い。この添加剤を例示すると、マンガン化合物等の安定剤、酸化チタン等の着色剤、可塑剤、難燃剤、繊維状強化剤等である。また、ポリマーの性質を損なわない範囲において他の成分が共重合されていても良い。また、ポリマーの分子量は繊維形成能や力学特性の点から数平均分子量で1万〜50万であることが好ましい。
【0011】
本発明の導電性複合断面繊維は、導電性カーボンを含有するポリマーからなる成分Aが、成分Aと相溶しないポリマーからなる成分Bによって複数のセグメントに分割されていることが重要である。成分Aと成分Bが相溶するポリマーの組み合わせでは、本発明の導電性複合断面繊維を割繊処理することができず、成分Aからなる高密度な導電性セグメントのパイルを形成することができない。成分AとBが相溶しないポリマーの組み合わせについては、成分Aのポリマーは導電性カーボンを練り込んだ際の均一分散性に優れるポリアミド、成分Bのポリマーはコシが強くクリーニング性に優れるポリエステルが好ましい。
【0012】
また、成分Aの成分Bでの分割(成分Aと成分Bの複合断面状態)については、成分Aが複数のセグメントに分割されていればどのような複合断面状態を形成していても良いが、製糸安定性、割繊処理のしやすさを考慮すると、形状が3〜10葉の星型(例示すると図1に例示する★のような星形や、*のような葉部分を細くしたもの)である成分Bを芯に配置し、鞘として成分Aが分割、配置されている複合断面状態を形成していることが好ましい。
【0013】
また、成分Aと成分Bとの複合比率は、成分Aセグメントの繊度が0.1〜3デシテックス、成分Bセグメントの繊度が3〜7デシテックスとなる範囲で設定することが好ましく、例えば、上記に記載した芯鞘型複合断面繊維の場合、成分Aセグメントの繊度が0.1〜3デシテックス、成分Bセグメントの繊度が3〜7デシテックスとなる範囲であり、かつ成分Aと成分Bとの複合比率(重量比率)は、20:80〜80:20であることが好ましく、さらに好ましくは30:70〜70:30である。ここで言うセグメントの繊度とは、本発明の導電性複合断面繊維の単糸において、これを構成するセグメント個々の繊度を指すものとする。例えば、図1例示する芯成分Bが星形で、鞘成分Aが芯成分Bの周りを分割、配置されている複合断面繊維の場合、芯成分Bのセグメント数は1で、鞘成分Aのセグメント数は5となる。
【0014】
上記したように、本発明の導電性複合断面繊維は、成分Aセグメントの繊度が0.1〜3デシテックスであることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜2デシテックスである。成分Aセグメントの繊度が0.1デシテックス未満では、製糸時の複合断面異常による紡糸糸切れの増加や、成分Aの剥離による毛羽が発生するばかりか、これを割繊処理してブラシにした際に、繊維が斜毛して印字することができないという問題が発生する。また、成分Aセグメントの繊度が3デシテックスを越えると、これを割繊処理してブラシにした際に高密度なパイルが得られなくなる。
【0015】
また、上記したように、本発明の導電性複合断面繊維は、成分Bセグメントの繊度が3〜7デシテックスであることが好ましく、さらに好ましくは3〜5デシテックスである。ただし、成分Bについては複数のセグメントに分割されていなくても良く、この場合は成分Bの単糸繊度を指すものとする。成分Bセグメントの繊度が3デシテックス未満では、成分B単糸繊維のコシが弱くなるためクリーニング性が不良となり、高画質印刷を達成することができにくくなる。また、成分Bセグメントの繊度が7デシテックスを越えると、ブラシへの均一かつ高密度な帯電付与ができないため、高画質印刷を達成することができにくくなる。
【0016】
本発明の導電性複合断面繊維は、温度が20℃、湿度が30%RHでの比抵抗値が10〜10Ωcmであることが好ましく、さらに好ましくは10〜10Ωcmである。比抵抗値が10Ωcm未満では、ブラシに電圧を掛けた時、電子が隣り合う繊維に移動するため印刷することができなくなることがある。また、比抵抗値が10Ωcmを超えると、電圧を掛けても繊維中を電子が移動できないため印刷することができなくなることがある。
【0017】
本発明の導電性複合断面繊維は、成分A100gに対し、導電性カーボンを20〜40g含有されていることが好ましく、さらに好ましくは20〜30gである。導電性カーボンの含有量が20g未満では、繊維の比抵抗値が低下するため印刷した時に印字することができなくなることがある。また、導電性カーボンの含有量が40gを超えると、繊維の強度が低下し実用性に欠けるとともに、紡糸糸切れが増加するため生産性が悪くなる。本発明で用いる成分Aに含有する導電性カーボンの種類を例示すると、アセチレンブラックやファーネスブラック、ケッチェンブラック等が挙げられ、導電性を有する粉末体であれば特に制限はないが、ポリマーに添加した時の分散およびストラクチャーの形成が良好であり、製糸安定性にも優れているアセチレンブラックが好ましい。また、1次粒子サイズとしては、製糸時の濾圧上昇抑制や、製糸安定性、繊維強度向上を考慮すると20〜50μmが好ましい。
【0018】
本発明の導電性複合断面繊維に導電性カーボンを含有せしめる方法としては、成分Aへ導電性カーボンをドライブレンドし溶融する方法、成分Aへ高濃度の導電性カーボンを含有するマスターチップをドライブレンドし溶融する方法等が挙げられるが、両者が均一に混ざればいかなる方法でも良い。
【0019】
本発明の導電性複合断面繊維を割繊処理する方法については、成分Aと成分Bのポリマーの組み合わせにより変わり、特に制限するものではないが、方法を例示すると、形状が5葉の星型(★)である成分Bを芯に配置し、鞘として成分Aが分割、配置されている複合断面状態で、鞘である成分Aがポリアミド、芯である成分Bがポリエステルの場合、織地をベンジルアルコール水溶液中に浸透させて鞘であるポリアミドを膨潤収縮させることで浮き上がらせて割繊する方法や、織地をアルカリ水溶液中に浸透させて芯であるポリエステルの一部を溶解して割繊する方法等が挙げられる。
【0020】
本発明の導電性複合断面繊維をパイルとして製織、割繊処理した後のパイル密度としては、10万本/インチ以上が好ましく、さらに好ましくは15万本/インチ以上である。パイル密度が10万本/インチ未満では、ブラシへの均一かつ高密度な帯電付与ができないため、高画質印刷を達成することができにくくなる。また、パイル密度としてはより高密度であることが好ましいが、成分A、成分Bセグメントの繊度が前述した範囲から外れないように設計することが好ましい。
【0021】
本発明の導電性複合断面繊維は溶融紡糸により得られる。成分Aと成分Bを別々にエクストルーダーあるいはプレッシャーメルター等で溶融し、複合断面繊維用紡糸パック、口金に任意の割合で供給する。口金から吐出後は冷却、給油等を経て巻取速度600〜1000m/分のいわゆる未延伸糸としていったん巻き取り、これを延伸する2工程法が好ましく用いられる。
【0022】
電子写真記録方式の乾式複写機用ブラシとは、非接触コロナ放電にかわって感光体に接触帯電させる印加ブラシ、感光体上に残存した電荷およびトナーを除去するクリーニングブラシ、およびクリーニングの性能をも併せ持つ印加ブラシのことをいう。いずれもパイルとして製織した後、導電性を有するバッキング剤でバッキングした後、幅10〜30mmにカットしたパイルテープを、円柱の金属棒にバイアスに巻き付けるか、単に板にパイルを張り付けてブラシ状に仕立てることにより得られる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。物性の測定方法は次の通りである。
【0024】
A.ナイロンの硫酸相対粘度(ηr)
チップを98%濃硫酸に試料濃度が1g/100mlとなるように溶解後、オストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T)、チップを溶解していない98%濃硫酸の落下秒数(T)を測定し、下式から算出した。
ηr=T/T
【0025】
B.ポリエステルの極限粘度(IV)
チップをオルトクロロフェノールに溶解後、オストワルド粘度計にて25℃での相対粘度を求めた。これを複数点の試料濃度について求め、無限希釈度に外層して求めた。
【0026】
C.成分A、成分Bセグメントの繊度
JIS L1013 A法に基づいて繊維の正量繊度を測定し、下式から算出した。
=(T×W)/(F×S
=(T×W)/(F×S
:成分Aセグメントの繊度
T:正量繊度
:成分Aの重量比率
F:フィラメント数
:単糸中の成分Aのセグメント数
:成分Bセグメントの繊度
:成分Bの重量比率
:単糸中の成分Bのセグメント数
【0027】
D.比抵抗値
超絶縁抵抗計(川口電気製 TERAOHMMETER R-503)を用いて試長10cm間に100(V)の電圧を掛け、温度20℃、湿度30%RHの条件下での電気抵抗値(Ω/cm)を測定し、下式から算出した。尚、表1には比抵抗値RSの対数値log10(RS)を示した。
RS=R×D/(10×L×SG)×10−5
RS:比抵抗値(Ωcm)
R:電気抵抗値(Ω/cm)
D:10000m当たりの糸重量(g)
L:試長(cm)
SG:糸密度(g/cm
【0028】
E.紡糸糸切れ
1t生産したときの糸切れ回数を次の基準で評価した。
◎:2回/t未満
○:2〜3回/t
△:3〜5回/t
×:5回/t以上
【0029】
F:毛羽数
多点毛羽計数装置(東レエンジニアリング製 MFC-120)を用いて繊維パッケージから繊維を600m/分で解舒し、5時間測定、装置に表示される毛羽数をカウントした。
【0030】
G.画像品質
電子写真学会が発行するテストチャートを複写し、画質品質を10が最も優れているものとして10段階で評価し7以上を合格レベルとした。
【0031】
実施例1〜5
平均1次粒径が35μmの導電性カーボンアセチレンブラックを相対粘度2.62のポリカプラミド(N6)(成分A)チップに表1の添加量となるように混練機で溶融練り込みしチップとした。このチップと、極限粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)(成分B)チップを別々のプレッシャーメルター型紡糸機に表1の重量比率となるように供給し、複合断面繊維用パック、口金を介して吐出させた。この時の繊維横断面は図1に示す通りである。その後、冷却、給油を行い、800m/分で未延伸糸を巻き取った。ついで、得られた未延伸糸を延伸機に供給し、延伸倍率1.6倍、熱板温度170℃にて延伸し、110デシテックス12フィラメントの導電性複合断面繊維を得た。紡糸糸切れ、および得られた導電性複合断面繊維の正量繊度、成分A、成分Bセグメントの繊度、比抵抗値、毛羽数について測定した。結果を表1に示す。また、得られた導電性複合断面繊維を用いてパイル密度4万本/inch、パイル長7mmとなるように製織した後、ベンジルアルコール10%水溶液中に、100℃、30分の条件で浸透、割繊処理を行い(成分Bのセグメント数は1で、成分Aのセグメント数は5となる)、乾燥してパイル密度24万本/inchのパイルを仕上げた。次にパイルを幅15mmのテープ状にした後、直径6mmの円筒面に螺旋状に巻き付けてブラシを作成した。得られたブラシでの画像品質について確認した。結果を表1に示す。
【0032】
実施例6
平均1次粒径が35μmの導電性カーボンアセチレンブラックを相対粘度2.62のポリヘキサメチレンアジパミド(N66)(成分A)チップに表1の添加量となるように混練機で溶融練り込みしチップとする以外は実施例1と同様に製糸した。紡糸糸切れ、および得られた導電性複合断面繊維の正量繊度、成分A、成分Bセグメントの繊度、比抵抗値、毛羽数について測定した。結果を表1に示す。また、得られた導電性複合断面繊維を用いて実施例1と同様の処理を行いブラシを作成した。得られたブラシでの画像品質について確認した。結果を表1に示す。
【0033】
比較例1
平均1次粒径が35μmの導電性カーボンアセチレンブラックを相対粘度2.62のN6チップに表1の添加量となるように混練機で溶融練り込みしチップとした。このチップをプレッシャーメルター型紡糸機に供給、口金を介して吐出させた後は実施例1と同様に製糸した(成分BのPETはなく、成分AのN6が100%のもの)。紡糸糸切れ、および得られた導電性繊維の正量繊度、成分Aセグメント(単糸)の繊度、比抵抗値、毛羽数について測定した。結果を表1に示す。また、得られた導電性繊維を用いてパイル密度4万本/inch、パイル長7mmとなるように製織しパイルを仕上げた。次にパイルを幅15mmのテープ状にした後、直径6mmの円筒面に螺旋状に巻き付けてブラシを作成した。得られたブラシでの画像品質について確認した。結果を表1に示す。
【0034】
比較例2
フィラメント数を80フィラメントとする以外は比較例1と同様に製糸した。紡糸糸切れ、および得られた導電性繊維の正量繊度、成分Aセグメント(単糸)の繊度、比抵抗値、毛羽数について測定した。結果を表1に示す。また、得られた導電性繊維を用いてパイル密度27万本/inch、パイル長7mmとなるように製織しパイルを仕上げた。次にパイルを幅15mmのテープ状にした後、直径6mmの円筒面に螺旋状に巻き付けてブラシを作成した。得られたブラシでの画像品質について確認した。結果を表1に示す。
【0035】
比較例3
平均1次粒径が35μmの導電性カーボンアセチレンブラックを相対粘度2.62のN6チップに表1の添加量となるように混練機で溶融練り込みしチップとした。このチップと、相対粘度2.62のN66チップを別々のプレッシャーメルター型紡糸機に表1の重量比率となるように供給し、複合断面繊維用パック、口金を介して吐出させた。この時の繊維横断面は図1に示す通りである。その後実施例1と同様に製糸した。紡糸糸切れ、および得られた導電性複合断面繊維の正量繊度、成分A、成分Bセグメントの繊度、比抵抗値、毛羽数について測定した。結果を表1に示す。また、得られた導電性複合断面繊維を用いて実施例1と同様の処理を行いブラシを作成した。しかし比較例3については、成分Aと成分Bとが相溶するため、成分Bから成分Aが割繊しなかった。得られたブラシでの画像品質について確認した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1の結果から明らかなように、本発明の導電性複合断面繊維は、安定した製糸が可能で、かつ従来の導電性繊維のブラシと比較して、電子写真記録方式の乾式複写機やファクシミリ、プリンター等の高画質印刷に極めて顕著な効果を奏することが判る。また、印加ブラシ兼クリーニングブラシとしても使用可能であるため、機器の小型化に寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、電子写真記録方式の乾式複写機や、ファクシミリ、プリンター等の画像品質向上が可能な導電性複合断面繊維に関するものであり、電子写真記録方式の乾式複写機やファクシミリ、プリンター用ブラシ等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例および比較例で得られた導電性複合断面繊維の横断面図である。
【符号の説明】
【0040】
A:鞘成分
B:芯成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性カーボンを含有するポリマーからなる成分Aが、成分Aと相溶しないポリマーからなる成分Bによって複数のセグメントに分割されていることを特徴とする導電性複合断面繊維。
【請求項2】
成分Aのポリマーがポリアミド、成分Bのポリマーがポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の導電性複合断面繊維。
【請求項3】
温度が20℃、湿度が30%RHでの比抵抗値が10〜10Ωcmであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の導電性複合断面繊維。
【請求項4】
成分A100gに対して、導電性カーボンを20〜40g含有して得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性複合断面繊維。
【請求項5】
成分Aセグメントの繊度が0.1〜3デシテックスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性複合断面繊維。
【請求項6】
成分Bセグメントの繊度が3〜7デシテックスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性複合断面繊維。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性複合断面繊維を割繊処理して用いることを特徴とするブラシ。
【請求項8】
電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、またはプリンター用のブラシであることを特徴とする請求項7に記載のブラシ。

【図1】
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【公開番号】特開2006−9177(P2006−9177A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185850(P2004−185850)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】