説明

導電性部材、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】環境変化にかかわらず、電気抵抗調整層と像担持体との間の空隙を長期にわたって精度よく一定に維持することができる導電性部材を提供することを目的とする。
【解決手段】導電性支持体10の周面に設けた電気抵抗調整層11が、その両端近傍にその両端方向に設けられた段差外周面11aを有し、この段差外周面11aの周面上にシート状に形成された空隙保持部材12を周方向に巻き付けて、その両端が互いに重なり合うことなく継ぎ目を有し、一周全ての位置において導電性支持体10の軸方向に空隙保持部材12が存在しない部分がないように固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラム等の像担持体に対して近接配置される導電性部材(帯電部材、現像剤担持体、転写部材など)、前記導電性部材と像担持体とを少なくとも一体のユニット構成として備えたプロセスカートリッジ、および複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置は、像担持体としての感光体ドラムの表面を均一に帯電する帯電装置として、近年、コロナ放電方式の帯電装置に代わって、帯電ローラを感光体ドラムの表面に当接させる、いわゆる接触帯電方式の帯電装置が広く用いられている。
【0003】
接触帯電方式の帯電装置は、コロナ放電方式の帯電装置に対して、オゾンの発生が少なくかつ低電圧で帯電が可能であるが、帯電ローラを構成している物質が染み出して、当接している感光体ドラムの表面に付着移行する、いわゆる「帯電ローラ跡」が発生したり、また、帯電ローラに交流電圧を重畳して印加する方式では、感光体ドラムに当接しているこの帯電ローラが交流電圧の印加によって振動する、いわゆる「帯電音」が発生しやすくなる問題があった。
【0004】
更に、接触帯電方式の帯電装置では、トナー像の記録紙への転写後に感光体ドラムの表面に残った転写残トナーが帯電ローラ側に転移することによって、この帯電ローラの表面が汚れて帯電性能が低下したり、また、感光体ドラムの回転を長期間停止した状況では、帯電ローラの感光体ドラムとの当接部分が永久変形した状態になるなどの問題があった。
【0005】
そこで、上記したような問題を解決するために、帯電ローラを感光体ドラムの表面に近接させて、非接触状態で感光体ドラムを帯電させる、いわゆる近接帯電方式の帯電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
前記特許文献1のような帯電ローラは、図8に示すように、帯電ローラ20の軸棒である導電性支持体21の表面に電気抵抗調整層22を設け、この電気抵抗調整層22の両端側に感光体ドラム(不図示)の両端側表面を当接させる一対の空隙保持部材23をそれぞれ設けて、帯電ローラ20(電気抵抗調整層22)と感光体ドラム(不図示)との間に一定間隔の空隙を保持するようにしている。
【特許文献1】特開2005−91818号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図8に示した従来の帯電ローラ(帯電部材)では、導電性支持体21の表面に設けた電気抵抗調整層22の両端面にリング状の空隙保持部材23が接するようにして、この空隙保持部材23が導電性支持体21の両端側に圧入されている。
【0008】
このため、環境変化等による電気抵抗調整層22と空隙保持部材23の各厚みの変化量がことなることにより、帯電ローラ20(電気抵抗調整層22)と感光体ドラムとの間に設けられる空隙量が一定に維持されずに変化し、帯電ムラ等が発生する恐れがある。
【0009】
そこで、本発明は、環境変化にかかわらず、電気抵抗調整層と像担持体との間の空隙を長期にわたって精度よく一定に維持することができる導電性部材、プロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、長尺状の導電性支持体と、前記導電性支持体の周面に設けた電気抵抗調整層と、前記電気抵抗調整層の両端部側に設けられ、前記電気抵抗調整層に対して近接配置される像担持体の両端側に外周面を当接して、前記電気抵抗調整層と前記像担持体との間に所定の空隙を形成するための空隙保持部材とを備えた導電性部材であって、前記電気抵抗調整層が、その両端近傍にその両端方向に設けられた段差部を有し、この段差部の周面上にシート状に形成された前記空隙保持部材を周方向に巻き付けて、その両端が互いに重なり合うことなく継ぎ目を有し、一周全ての位置において前記導電性支持体の軸方向に前記空隙保持部材が存在しない部分がないように固定したことを特徴としている。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記空隙保持部材がポリオレフィン樹脂で構成されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記空隙保持部材の厚さが500μm以下であることを特徴としている。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記空隙保持部材が、前記前記電気抵抗調整層の段差部に接着固定されていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記空隙保持部材に活性処理が施されていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、前記電気抵抗調整層上に表面層が形成されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、前記導電性部材が、近接配置された像担持体を帯電する帯電部材であることを特徴としている。
【0017】
また、請求項8に記載の発明に係るプロセスカートリッジは、請求項7に記載の帯電部材と、この帯電部材によって帯電される像担持体とを、少なくとも一体のユニット構成として備えたことを特徴としている。
【0018】
また、請求項9に記載の発明に係る画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電部材として請求項7に記載の導電性部材と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、空隙保持部材が電気抵抗調整層の段差部に固定されることにより、電気抵抗調整層が環境変動によってその厚みが変化した場合でも、電気抵抗調整層の厚み変化に追従することによって、空隙保持部材が電気抵抗調整層と像担持体との間の空隙の変動を抑制することができる。また、電気抵抗調整層の端部側に設けた段差部の段差と空隙保持部材の厚みとの差で高精度の空隙を安価に形成することができる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、空隙保持部材がポリオレフィン樹脂で構成されているので、電気抵抗調整層との接着強度が向上し、空隙保持部材へのトナー固着が防止され、また、空隙保持部材の磨耗、像担持体への磨耗を低減することができる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明によれば、空隙保持部材の厚さが500μm以下であるこで、高精度な空隙を安価な汎用製品により選択することができる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明によれば、空隙保持部材が電気抵抗調整層の段差部に接着固定されているので、空隙保持部材の剥離、空隙保持部材と電気抵抗調整層との間の入り込みトナーを防止し、長期にわたって一定の空隙を保持することができる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明によれば、空隙保持部材に活性処理が施されているので、接着性をより高めることができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明によれば、電気抵抗調整層上に表面層が形成されているので、トナーおよびトナーに添加される添加剤が長期にわたって付着することを防止することができる。
【0025】
また、請求項7に記載の発明によれば、前記導電性部材を帯電部材とすることにより、電気抵抗調整層と像担持体との間の空隙を長期にわたって精度よく一定に維持することができるので、帯電ムラの発生を防止することができる。
【0026】
また、請求項8に記載の発明によれば、長期の使用においても電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の空隙を長期にわたって精度よく一定に維持することができるので、帯電ムラの発生が抑制されて良好な画像を得ることができるプロセスカートリッジを提供することができる。
【0027】
また、請求項9に記載の発明によれば、長期の使用においても電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の空隙を長期にわたって精度よく一定に維持することができるので、帯電ムラの発生が抑制されて良好な画像を得ることができる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の要部を示す概略構成図であり、本発明に係る導電性部材を、この画像形成装置の帯電部材としての帯電ローラに適用した一例である。
【0029】
図1に示すように、この電子写真方式の画像形成装置(例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリなど)1は、回転自在に支持された像担持体としての感光体ドラム2と、感光体ドラム2の周囲に配置された、感光体ドラム2に対して帯電処理を行う帯電ローラ(帯電部材)3と、露光装置(不図示)からのレーザ光Lによる露光によって感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させる現像装置の現像ローラ4と、感光体ドラム2の表面に形成されたトナー像を記録紙Sに転写する転写ローラ5と、転写後の感光体ドラム2の表面をクリーニングするクリーニング装置6とを、主構成部材として備えている。なお、この画像形成装置1では、帯電ローラ3は感光体ドラム2に対して近接して非接触状態に設置されている。(本発明の特徴である帯電ローラ3の詳細な説明は後述する)。
【0030】
この画像形成装置1による画像形成動作時には、まず、電源7から所定の電圧が印加された帯電ローラ3により、矢印A方向に回転している感光体ドラム2の表面を負極性の高電位に均一に帯電処理する。そして、露光装置(不図示)からのレーザ光Lによる露光によって、感光体ドラム2の表面に入力した画像情報に対応する静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像ローラ4によりトナーを付着させてトナー像として現像(可視像化)した後、所定のタイミングで感光体ドラム2と転写ローラ5間に搬送される記録紙Sに対して、転写バイアスが印加された転写ローラ5により前記トナー像を転写する。
【0031】
トナー像が転写された記録紙Sは、定着装置(不図示)に搬送されて定着処理された後に排出される。一方、トナー像転写後の感光体ドラム2の表面に残留している転写残トナー等は、クリーニング装置6により除去されてクリーニングされる。
【0032】
また、図2に示すように、前記した感光体ドラム2、帯電ローラ3、現像ローラ4およびクリーニング装置6を、プロセスカートリッジ8内に設置してユニット化し、このプロセスカートリッジ8を画像形成装置1に対して着脱自在に装着する構成にしてもよい。
【0033】
次に、前記帯電ローラ(導電性部材)3の構成について説明する。図3は、本実施形態に係る帯電ローラを示す概略縦断面図、図4は、帯電ローラと感光体ドラムとの位置関係を示す図、図5は、この帯電ローラの一方の端部近傍を示す拡大断面図である。
【0034】
図3に示すように、この近接帯電方式の帯電ローラ3は、前記電源7(図1参照)から電圧が印加される長尺の円柱状のSUM−Niメッキ等からなる円柱状の導電性支持体10と、導電性支持体10の外周面に設けた電気抵抗調整層11と、帯電ローラ3の電気抵抗調整層11と感光ドラム2(図4参照)との間に所定の空隙(ギャップ)を形成するための一対の空隙保持部材12とを備えている。帯電ローラ3には回転駆動系(不図示)が連結されており、モータ(不図示)の駆動によって回転する感光体ドラム2の回転方向に対して、帯電ローラ3が逆方向に回転するように構成されている。なお、電気抵抗調整層11の表面には、トナー等の付着物の付着を低減するための表面層(不図示)が形成されている。
【0035】
図4に示すように、帯電ローラ3の電気抵抗調整層11(表面層)は、感光ドラム2の画像形成領域B1の少し外側まで位置しており、電気抵抗調整層11の両端側の段差外周面11aに設けた各空隙保持部材12の外周面は、感光ドラム2の両端部の非画像形成領域B2に当接している。電気抵抗調整層11の外径は、その両端側の空隙保持部材12の外径に対して僅かに小径に形成されている。これにより、帯電ローラ3の電気抵抗調整層11(表面層)と感光ドラム2との間に所定の空隙Gが形成される。
【0036】
このように、空隙保持部材12によって、帯電ローラ3の電気抵抗調整層11(表面層)と感光ドラム2との間に所定の空隙Gが形成されることにより、帯電ローラ3に電圧を印加すると、帯電ローラ3の電気抵抗調整層11と感光ドラム2との間で放電が生じ、感光ドラム2の表面が帯電される。本実施形態では、この空隙Gが100μm以下となるように、電気抵抗調整層11とその段差外周面11aの厚さを調整している。この空隙Gが100μm以上の場合には、高電圧を帯電ローラ3に印加する必要があり、感光ドラム2の電気的劣化や異常放電が発生しやすくなる。
【0037】
電気抵抗調整層11は、高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。前記熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂等が挙げられる。また、前記高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドは、イオン導電性の高分子材料であり、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。これにより、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のばらつきが生じない。また、高分子材料であるため、ブリードアウトが生じにくい。配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があることから、熱可塑性樹脂が30〜70重量%、高分子型イオン導電材料が70〜30重量%とすることが好ましい。
【0038】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造することができる。電気抵抗調整層11の導電性支持体10上への形成は、押出成形や射出成形等で導電性支持体10に前記熱可塑性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
【0039】
電気抵抗調整層11の厚さは、本実施形態では100〜500μmに形成されている。この理由は、電気抵抗調整層11の厚さが500μm以上の場合は、高温高湿環境下では電気抵抗調整層11の吸湿によって膨張してその厚み変動が大きくなってしまう。また、電気抵抗調整層11の厚さが100μm程度以下であると、帯電ローラ3に電圧印加して感光体ドラム2を帯電するときにこの抵抗調整層11に絶縁破壊が生じる可能性があるためである。
【0040】
また、電気抵抗調整層11の体積固有抵抗値が、106〜109Ωcmであることが好ましい。即ち、電気抵抗調整層11の体積固有抵抗が109Ωcm以上の場合は、帯電能力が不足してしまい、電気抵抗調整層11の体積固有抵抗が106Ωcm以下の場合は、感光体ドラム2に対して電圧集中による異常放電(リーク)が生じてしまう。
【0041】
表面層(不図示)を形成する材料としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、トナー固着防止の面で好ましい。なお、樹脂材料は電気的に絶縁性であるため、樹脂に対して各種導電材料を分散することによって、表面層(不図示)の抵抗を調整する。表面層(不図示)は、その抵抗値が電気抵抗調整層11の抵抗値よりも大きくなるように形成されており、これによって、感光体ドラム2の表面欠陥部への電圧集中、異常放電(リーク)を回避することができる。ただし、表面層(不図示)の抵抗値を高くしすぎると帯電能力が不足してしまうため、表面層(不図示)と電気抵抗調整層11との抵抗値の差を103Ωcm以下にすることが好ましい。
【0042】
表面層(不図示)の電気抵抗調整層11上への形成は、前記材料(フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等)を有機溶液に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の湿式塗布方法で行うことができる。表面層(不図示)の膜厚については、5〜30μm程度が好ましい。
【0043】
また、帯電ローラ3は、電気特性(抵抗値)が重要であるため、表面層(不図示)を導電性にする必要がある。表面層(不図示)を導電性にするには、樹脂材料中に導電剤を分散することにより可能である。導電剤としては、特に制約を受けるものではなく、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラー用カーボン、熱分解カーボン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、及び金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。
【0044】
また、導電性付与材として、イオン導電性物質もあり、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、更に、変性脂肪酸ジメチルアンミニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等の有機イオン性導電性物質がある。
【0045】
図5に示すように、電気抵抗調整層11の両端部には段差によって中央側より小径の段差外周面11aを有し、この段差外周面11a上には、超高分子量ポリオレフィン樹脂からなるシート状の空隙保持部材12が周方向に沿って巻き付けられるようにして接着剤より固定されている。なお、空隙保持部材12には、予めプライマー処理あるいはコロナ処理等の活性処理が施されている。
【0046】
シート状の各空隙保持部材12は、その両端が互いに重なり合うことなく、一周全ての位置について導電性支持体10の軸方向にこの空隙保持部材12が存在しない部分がないように、その両端部をそれぞれ斜めにカットして、斜めスリット状の隙間を有する継ぎ目を設けている。空隙保持部材12の厚みは500μm程度以下である。
【0047】
なお、シート状の各空隙保持部材12の両端部の継ぎ目の変形例としては、例えば、図6(a)〜(e)に示すような継ぎ目にすることができる。
【0048】
図6(a)は、シート状の各空隙保持部材12の斜めにカットされたそれぞれの両端部同士がほぼ接するような継ぎ目である。図6(b)は、シート状の各空隙保持部材12のV字状にカットされたそれぞれの両端部が少し隙間を有するような継ぎ目であり、図6(c)は、シート状の各空隙保持部材12のV字状にカットされたそれぞれの両端部同士がほぼ接するような継ぎ目である。また、図6(d)は、シート状の各空隙保持部材12の湾曲状にカットされたそれぞれの両端部が少し隙間を有するような継ぎ目であり、図6(e)は、シート状の各空隙保持部材12の湾曲状にカットされたそれぞれの両端部同士がほぼ接するような継ぎ目である。
【0049】
次に、本実施形態に係る前記帯電ローラ(導電性部材)3の形成方法を、図7(a)、(b)、(c)を参照して説明する。
【0050】
まず、図7(a)に示すように、円柱状の前記導電性支持体10上に前記した熱可塑性樹脂組成物を押出成形または射出成形で被覆して電気抵抗調整層11を形成する。そして、図7(b)に示すように、電気抵抗調整層11を刃具13による切削加工により、その両端側に段差を設けて段差外周面11aをそれぞれ形成する。この際、段差外周面11aに接着固定される空隙保持部材12の厚さを考慮して、帯電ローラ3の電気抵抗調整層11(表面層)と感光ドラム2との間に形成される空隙Gが100μm以下となるように、電気抵抗調整層11とその段差外周面11aの厚さを調整する。
【0051】
そして、図7(c)に示すように、シート状の各空隙保持部材12を段差外周面11a上に接着固定する。この際、例えば、シート状の各空隙保持部材12の両端部は、斜めにカットして、斜めスリット状の隙間を設けている(図5参照)
【0052】
このように、本実施形態に係る帯電ローラ(導電性部材)3、およびこの帯電ローラ(導電性部材)3を備えた画像形成装置1、プロセスカートリッジ7によれば、空隙保持部材12が電気抵抗調整層11の段差部(段差外周面11a)に固定されることにより、電気抵抗調整層11が環境変動によってその厚みが変化した場合でも、空隙保持部材12が電気抵抗調整層11の厚み変化に追従することによって、電気抵抗調整層11と感光体ドラム2との間の空隙Gの変動を抑制することができる。また、電気抵抗調整層11の端部側に設けた段差部(段差外周面11a)の段差と空隙保持部材12の厚みとの差で高精度の空隙Gを安価に形成することができる。
【0053】
なお、前記した実施形態では、本発明に係る導電性部材を、感光体ドラムを帯電する帯電ローラに適用した例であったが、画像形成装置に設置される現像ローラや転写ローラなどにも同様に適用することができる。
【実施例】
【0054】
次に、前記した構成の導電性部材(帯電ローラ)を評価するために、以下に示す実施例1〜3および比較例1〜3の導電性部材を作製した。
〈実施例1〉
【0055】
SUM(Niメッキ)からなる外径10mmの導電性支持体(芯軸)上に、ABS樹脂(デンカABS GR−3000、電気化学工業社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロイトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂社製)を、ポリエーテルエステルアミドとABS樹脂の合計100重量部に対して4.5重量部を混合の後、溶融練混した樹脂組成物からなる樹脂組成物を射出成形により被覆し、外径13mmの電気抵抗調整層を形成した(図7(a)参照)。
【0056】
そして、前記したように、この電気抵抗調整層を刃具による切削加工により、その両端側に段差を設けて段差外周面をそれぞれ形成する(図7(b)参照)。そして、形成した両端の段差外周面に、空隙保持部材として、厚さ0.5mm(500μm)の超高分子量ポリエチレンフィルムであるSaxinニューライト50W(作新工業社製)をアルテコPP−550(アルテコ社製)でプライマー処理を行い、接着剤アルテコD(アルテコ社製)により接着固定した(図7(c)参照)。なお、その両端部は斜めにカットして、斜めスリット状の隙間を設けている(図5参照)。形成された電気抵抗調整層を、図7(b)に示したような寸法に形成した(外径a:12.7mm、段差外周面の幅b:10mm、段差の高さc:0.45mm)
【0057】
そして、この電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤(川上塗料社製)、およびカーボンラック(全固形分に対して25重量%)からなる混合物をスプレーコーティングすることにより、膜厚約10μmの表面層を形成した。その後、オーブンで1時間、80℃の条件で塗料樹脂を加熱硬化させて導電性部材を得た。
〈実施例2〉
【0058】
前記実施例1と同様の電気抵抗調整層を導電性支持体上に形成し、電気抵抗調整層の両端の段差外周面に、空隙保持部材として、厚さ0.5mm(500μm)の超高分子量ポリエチレンフィルムであるSaxinニューライト50W(作新工業社製)に対してコロナ放電処理を行い、接着剤アルテコD(アルテコ社製)により接着固定した(図7(c)参照)。なお、その両端部は斜めにカットして、斜めスリット状の隙間を設けている(図5参照)。形成された電気抵抗調整層の寸法は、実施例1と同様である。
【0059】
そして、実施例1と同様に、この電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤(川上塗料社製)、およびカーボンラック(全固形分に対して25重量%)からなる混合物をスプレーコーティングすることにより、膜厚約10μmの表面層を形成した。その後、オーブンで1時間、80℃の条件で塗料樹脂を加熱硬化させて導電性部材を得た。
〈実施例3〉
【0060】
前記実施例1と同様の電気抵抗調整層を導電性支持体上に形成し、電気抵抗調整層の両端の段差外周面に、空隙保持部材として、超高分子量ポリエチレン、サンファインUH(旭化成ケミカルズ社製)を成形機にて長手長さ50mm,幅8mm、厚さ0.5mm(500μm)のフィルム状テストピースを作製して、アルテコPP−550(アルテコ社製)でプライマー処理を行い、接着剤アルテコD(アルテコ社製)により接着固定した(図7(c)参照)。なお、その両端部は斜めにカットして、斜めスリット状の隙間を設けている(図5参照)。形成された電気抵抗調整層の寸法は、実施例1と同様である。
【0061】
そして、実施例1と同様に、この電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤(川上塗料社製)、およびカーボンラック(全固形分に対して25重量%)からなる混合物をスプレーコーティングすることにより、膜厚約10μmの表面層を形成した。その後、オーブンで1時間、80℃の条件で塗料樹脂を加熱硬化させて導電性部材を得た。
〈比較例1〉
【0062】
前記実施例1と同様の電気抵抗調整層を導電性支持体上に形成し、その後、外径12.7mmに切削加工し、その表面に実施例1と同様の膜厚約10μmの表面層を形成した。その後、オーブンで1時間、80℃の条件で塗料樹脂を加熱硬化させた。そして、その両端側に空隙保持部材として、厚さ0.05mmのテープ状部材(材質:PET、ダイタックPF025−H、大日本インキ社製)を貼り付けて導電性部材を得た。
〈比較例2〉
【0063】
前記実施例1と同様の電気抵抗調整層を導電性支持体上に形成し、その後、外径12.7mmに切削加工し、その表面に実施例1と同様の膜厚約10μmの表面層を形成した。その後、オーブンで1時間、80℃の条件で塗料樹脂を加熱硬化させた。そして、その両端側に空隙保持部材として、熱収縮PFAチューブを貼り付けて導電性部材を得た。
〈比較例3〉
【0064】
前記実施例1と同様の電気抵抗調整層を導電性支持体上に形成し、その後、外径12.7mmに切削加工し、その表面に実施例1と同様の膜厚約10μmの表面層を形成した。その後、オーブンで1時間、80℃の条件で塗料樹脂を加熱硬化させた。そして、その両端側に、ポリアミド樹脂(ノバミット1010C2、三菱エンジニアリングプラスチック社製)からなるリング状の空隙保持部材を挿入して導電性部材を得た。
【0065】
そして、前記実施例1〜3および比較例1〜3で得られた各導電性部材を帯電部材(帯電ローラ)を、図1のような画像形成装置に搭載し、記録紙(A4横サイズ)を30万枚通紙して画像出力したときにおける、空隙保持部材の状態、帯電部材(帯電ローラ)表面へのトナー固着の有無を評価した。これらの評価を、表1に示す。なお、このときの帯電部材(帯電ローラ)への印加電圧は、DC=−800V、AC=2.4kVpp(周波数:2kHz)である。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示す評価結果から明らかなように、実施例1〜3の帯電部材(帯電ローラ)においては、前記したように、電気抵抗調整層が環境変動によってその厚みが変化した場合でも、空隙保持部材が電気抵抗調整層の厚み変化に追従することによって、電気抵抗調整層と感光体ドラムとの間の空隙の変動を抑制することができるので、帯電ムラ、空隙保持部材の剥がれや磨耗、トナー固着等は認められなかった。
【0068】
一方、比較例1〜3の帯電部材(帯電ローラ)においては、帯電ムラが発生し、また、空隙保持部材の剥がれや磨耗も発生し、更に、トナー固着等が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係る帯電ローラ(導電性部材)を備えた画像形成装置の要部を示す概略図。
【図2】本発明の実施形態に係る帯電ローラ(導電性部材)を含む画像形成部をプロセスカートリッジとした構成の画像形成装置の要部を示す概略図。
【図3】本発明の実施形態に係る帯電ローラ(導電性部材)を示す縦断面図。
【図4】本発明の実施形態に係る帯電ローラ(導電性部材)と感光体ドラムとの位置関係を示す図。
【図5】本発明の実施形態に係る帯電ローラ(導電性部材)の端部近傍を示す拡大図。
【図6】(a)〜(e)は、本実施形態の変形例における帯電ローラ(導電性部材)の端部近傍を示す図。
【図7】(a)〜(c)は、本実施形態に係る帯電ローラ(導電性部材)の形成方法を示す図。
【図8】従来例における帯電ローラ(導電性部材)を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0070】
1 画像形成装置
2 感光体ドラム(像担持体)
3 帯電ローラ(導電性部材、帯電部材)
4 現像ローラ
5 転写ローラ
8 プロセスカートリッジ
10 導電性支持体
11 電気抵抗調整層
11a 段差外周面(段差部)
12 空隙保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の導電性支持体と、前記導電性支持体の周面に設けた電気抵抗調整層と、前記電気抵抗調整層の両端部側に設けられ、前記電気抵抗調整層に対して近接配置される像担持体の両端側に外周面を当接して、前記電気抵抗調整層と前記像担持体との間に所定の空隙を形成するための空隙保持部材とを備えた導電性部材であって、
前記電気抵抗調整層が、その両端近傍にその両端方向に設けられた段差部を有し、この段差部の周面上にシート状に形成された前記空隙保持部材を周方向に巻き付けて、その両端が互いに重なり合うことなく継ぎ目を有し、一周全ての位置において前記導電性支持体の軸方向に前記空隙保持部材が存在しない部分がないように固定した、
ことを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記空隙保持部材がポリオレフィン樹脂で構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記空隙保持部材の厚さが500μm以下である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記空隙保持部材が、前記前記電気抵抗調整層の段差部に接着固定されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記空隙保持部材に活性処理が施されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記電気抵抗調整層上に表面層が形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記導電性部材は、近接配置された像担持体を帯電する帯電部材である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
請求項7に記載の帯電部材と、この帯電部材によって帯電される像担持体とを、少なくとも一体のユニット構成として備えた、
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電部材として請求項7に記載の導電性部材と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−147779(P2007−147779A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339310(P2005−339310)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】