説明

導電性金属膜の形成方法

【課題】乾燥粉末状の金属ナノ粒子を利用し、基板との密着性に優れた導電性金属膜からなる回路パターンを形成する方法を提供する。
【解決手段】基板上に所定の回路パターンの形状に対応する塗布パターンでプライマーを印刷し、基板上に乾燥粉末状の金属ナノ粒子を散布し、前記塗布パターンのプライマー塗布膜を介して乾燥粉末状の金属ナノ粒子を選択的に定着させ、定着されていない乾燥粉末状の金属ナノ粒子を除去した後、加熱処理を施すことで、前記プライマー塗布膜を介して定着されている金属ナノ粒子の焼成を行って、該プライマーに含有される、密着性付与成分に因る優れた密着性を示す、導電性金属膜からなる回路パターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性金属膜を形成する方法に関する。特に、本発明は、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を利用し、基板との密着性に優れた導電性金属膜からなる回路パターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に金属ナノ粒子相互の焼結体層からなる、導電性の配線パターンを形成する方法として、本出願人は、特に、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を利用する方法を既に提案している(特許文献1を参照)。先に提案した乾燥粉末状の金属ナノ粒子を利用する方法は、下記の二種の手法である。第一の手法では、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を高沸点溶媒中に再分散させて、金属ナノ粒子分散液を調製した上で、該金属ナノ粒子分散液を基板上に所望のパターンに塗布した後、金属ナノ粒子分散液塗布膜を加熱処理し、含有される金属ナノ粒子相互の焼結体層を形成している。第二の手法では、基板上に所望のパターン形状で、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を固体状のバインダー樹脂を介して乾式塗着した後、乾式塗着された、金属ナノ粒子塗着層を加熱処理し、含有される金属ナノ粒子相互の焼結体層を形成している。例えば、乾燥粉末状の金属ナノ粒子とバインダー樹脂とからなる、トナー粒子を作製し、電子写真方式の画像形成方法を利用して、該トナー粒子を基板上に所望のパターンで乾式塗着することで、金属ナノ粒子塗着層を形成している。作製される金属ナノ粒子相互の焼結体層は、前記バインダー樹脂を利用して、基板表面に密着固定されている。
【0003】
一方、乾燥した金属粉末を基材の表面に所望のパターンで付着させ、金属粉末の固着層を形成する手法が提案されている(特許文献2、非特許文献1を参照)。具体的には、電子部品類の表面に金属回路露出部を形成し、該金属回路露出部の表面に、粘着性付与化合物を含む液性組成物を選択的に塗布して、粘着性付与層を形成する。この粘着性付与層の表面に、乾燥したはんだ粉末を散布して、はんだ粉末の付着層を選択的に形成する。その後、加熱して、金属回路露出部の表面に定着を行っている。例えば、粘着性付与化合物として、ベンゾトリアゾール系誘導体、メルカプトベンゾチアゾール系誘導体が利用されている。
【0004】
また、基板上に形成される、金属ナノ粒子相互の焼結体層に対して、基板表面に対する優れた密着性を付与する手段も提案されている(特許文献3を参照)。具体的には、基板表面に、有機塩あるいは無機塩を含有するプライマー層を予め形成した後、該プライマー層上に金属ナノ粒子相互の焼結体層を形成している。その際、有機塩あるいは無機塩を含有するプライマー層中に、さらに、バインダー樹脂として機能する高分子化合物を含有させることで、さらに優れた密着性が達成されている。
【0005】
さらに、基板上に形成される、導電性金属膜に対して、基板表面に対する優れた密着性を付与する手段も提案されている(特許文献4を参照)。具体的には、導電性金属膜の作製に利用される、金属微粒子を散布して、熱硬化性樹脂で形成される樹脂パターン上に金属微粒子を付着させ、その後、加熱して、樹脂パターン上に金属微粒子を固着させることにより、優れた密着性が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/037465号パンフレット
【特許文献2】特開平7−30243号公報
【特許文献3】特開2010−272402号公報
【特許文献4】特開2005−203396号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】昭和電工株式会社、製品情報、「スーパージャフィット法とはどんな方法か」、インターネット<URL:http://www.sdk.co.jp/product/45/75/1293/sj_outline.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既に提案されている、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を利用し、基板上に金属ナノ粒子相互の焼結体層からなる、導電性の配線パターンを形成する方法は、有用な手段である。しかし、かかる二つの手法は、適用可能な範囲は広いが、さらに広い適用範囲を有する、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を利用し、基板上に金属ナノ粒子相互の焼結体層からなる、導電性の配線パターンを形成する方法の開発が望まれる。
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を利用し、基板上に金属ナノ粒子相互の焼結体層からなる、導電性の配線パターンを形成する際、基板上に目的とする配線パターンの形状に乾燥粉末状の金属ナノ粒子を固着してなる膜を形成する手段として、新規な手段を採用する、導電性金属膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
既に提案されている、二つの手法では、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を高沸点溶媒中に再分散させて、金属ナノ粒子分散液を調製した上で、該金属ナノ粒子分散液を基板上に所望のパターンに塗布する手段、あるいは、乾燥粉末状の金属ナノ粒子とバインダー樹脂とからなる、トナー粒子を作製し、電子印刷法を利用して、該トナー粒子を基板上に所望のパターンで乾式塗布する手段を利用している。
【0011】
発明者らは、上記の課題を解決するため、この二つの手段と異なる機構を利用して、基板上に目的とする配線パターンの形状に乾燥粉末状の金属ナノ粒子を固着してなる膜を形成する手段を探索した。
【0012】
その結果、基板上に目的とする回路パターンの形状にプライマーを塗布し、所定厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜を予め形成し、その後、基板上に乾燥粉末状の金属ナノ粒子を所定の散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerで散布すると、該プライマー塗布膜を介して、散布された乾燥粉末状の金属ナノ粒子が選択的に定着され、定着されていない乾燥粉末状の金属ナノ粒子を除去すると、目的とする回路パターンの形状に、所定厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜を形成できることを見出した。最終的に、基板上に形成された金属ナノ粒子定着膜に対して、所定の加熱温度Theatingで、所定の加熱時間theat-treatment、加熱処理を施すと、該金属ナノ粒子定着膜中に含有される金属ナノ粒子相互の焼結が進行し、平均層厚Wmetal-layerの金属ナノ粒子焼結体層の作製が可能であることも見出した。作製される金属ナノ粒子焼結体層は、当初形成した、プライマー塗布膜のパターン形状と本質的に同じパターン形状に形成されることも見出した。
【0013】
加えて、プライマー塗布膜の形成に用いる、プライマー中に、有機高分子化合物、または、有機酸塩を配合すると、基板表面と作製される金属ナノ粒子焼結体層との密着性の向上がなされることも見出した。
【0014】
以上の一連の知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明にかかる導電性金属膜の形成方法は、
基板上に導電性金属膜を形成する方法であって、
基板上に目的とする回路パターンの形状にプライマーを塗布し、所定厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜を予め形成し;
基板上に乾燥粉末状の金属ナノ粒子を所定の散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerで散布し;
プライマー塗布膜を介して、散布された乾燥粉末状の金属ナノ粒子が選択的に定着され、定着されていない乾燥粉末状の金属ナノ粒子を除去することにより、目的とする回路パターンの形状に、所定厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜を形成し;
金属ナノ粒子定着膜に対して、所定の加熱温度Theatingで、所定の加熱時間theat-treatment、加熱処理を施すことにより、該金属ナノ粒子定着膜中に含有される金属ナノ粒子から、平均層厚Wmetal-layerの導電性金属膜を形成する
ことを特徴とする、導電性金属膜の形成方法である。
【0016】
その際、
前記乾燥粉末状の金属ナノ粒子中に含有される金属ナノ粒子の平均粒子径dmetal-nano-particleは、1〜100nmの範囲に選択されていることが望ましい。
【0017】
前記乾燥粉末状の金属ナノ粒子中に含有される金属ナノ粒子は、
金、銀、銅、白金、パラジウム、スズ、ニッケル、アルミニウム、ジルコニウム、マンガン、チタン、鉄、コバルト、ビスマスからなる金属種の群から選択される一種の金属からなる金属ナノ粒子、または、前記金属種の群から選択される二種以上の金属からなる金属ナノ粒子混合物、ならびに、前記金属種の群から選択される二種以上の金属からなる合金金属ナノ粒子からなる群から選択されることが望ましい。
【0018】
前記乾燥粉末状の金属ナノ粒子中に含有される金属ナノ粒子は、
該金属ナノ粒子の表面に、平均厚さtcoating-molecule-layerの被覆剤分子層が形成されている。前記被覆剤分子層の平均厚さtcoating-molecule-layerは、0.1〜5nmの範囲に選択されている。
【0019】
前記被覆剤分子層を構成する被覆剤分子は、
金属ナノ粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物、あるいは、金属ナノ粒子に含まれる金属と金属塩を形成可能なカルボン酸であることが望ましい。
【0020】
前記乾燥粉末状の金属ナノ粒子の平均粒径ddry-powderは、0.1μm〜100μmの範囲に選択されていることが望ましい。
【0021】
前記プライマーは、溶媒中に、有機高分子化合物、高沸点の溶媒、または、有機酸塩を配合してなる組成物であることが望ましい。溶媒中に配合される、前記高沸点の溶媒は、高沸点のアルコールから選択することが望ましい。
【0022】
あるいは、前記プライマーとして、高沸点の溶媒を使用することができる。また、前記プライマーとして、高沸点のアルコールを使用することができる。
【0023】
前記基板の材質は、
ガラス、セラミック、銅張り積層板、融点350℃以上の金属、ポリイミド、ポリカーボネート、PET、ポリスチレン、ポリエステル、紙からなる群から選択される材質であることが望ましい。
【0024】
前記加熱温度Theatingは、100℃〜300℃の範囲に選択され;
前記加熱時間theat-treatmentは、5分間〜120分間の範囲に選択されることが望ましい。
【0025】
前記加熱処理は、還元性雰囲気下で実施することが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる導電性金属膜の形成方法において、導電性金属膜によって作製される回路パターンの形状は、予め基板上に形成するプライマー塗布膜のパターン形状と本質的に同じとなり、また、作製される金属ナノ粒子焼結体層の平均層厚Wmetal-layerは、金属ナノ粒子定着膜の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerに依存するので、作製される回路パターンの最小線幅Wminimum-line-widthと導電性金属膜の平均層厚Wmetal-layerとの比(Wmetal-layer:最小線幅Wminimum-line-width)を、1:2〜1:∞の範囲で任意に設定することが可能となる。さらに、プライマー塗布膜の形成に用いる、プライマー中に、有機高分子化合物、高沸点の溶媒、または、有機酸塩を配合すること、あるいは、プライマーとして、高沸点の溶媒を使用するにより、基板表面と作製される導電性金属膜との密着性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】基板表面に塗布された液体の液面形状と、基板表面に対する該液体の接触角θcを決定する要因を模式的に示す図である。
【図2】基板表面に対する液体の濡れ性を反映する接触角θcの相違と、接触角θcの差異に伴う、液体の液面形状の変化を模式的に示す図である。
【図3】基板表面に塗布された液体の液量の増加に伴う、液体の自重の影響に起因する、押しつぶされた液面形状と、基板表面に対する該液体の接触角θcを模式的に示す図である。
【図4】塗布されたプライマーの自重の影響が無視できる場合における、曲率半径rの円弧状液面形状と、液面の頂上部の高さ(プライマー塗布膜の厚さ)Tprimer-printingと、プライマー塗布膜と基板表面が接する部分の幅Wminimumの関係を模式的に示す図である。
【図5】基板表面に塗布された金属ナノ粒子分散液の液面形状と、該金属ナノ粒子分散液塗布膜中に含まれる、表面被覆剤層を有する金属ナノ粒子の分散状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明にかかる導電性金属膜の形成方法について、より詳しく説明する。
【0029】
本発明にかかる導電性金属膜の形成方法は、基板上に、目的とする回路パターンの形状に導電性金属膜を形成する方法である。
【0030】
特には、基板上に目的とする回路パターンの形状にプライマーを塗布し、所定厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜を予め形成し;
基板上に乾燥粉末状の金属ナノ粒子を所定の散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerで散布し;
プライマー塗布膜を介して、散布された乾燥粉末状の金属ナノ粒子が選択的に定着され、定着されていない乾燥粉末状の金属ナノ粒子を除去することにより、目的とする回路パターンの形状に、所定厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜を形成し;
金属ナノ粒子定着膜に対して、所定の加熱温度Theatingで、所定の加熱時間theat-treatment、加熱処理を施すことにより、該金属ナノ粒子定着膜中に含有される金属ナノ粒子から、平均層厚Wmetal-layerの導電性金属膜を形成している。
【0031】
本発明にかかる導電性金属膜の形成方法は、例えば、下記の工程1〜工程4を具える形態として、実施することができる。
【0032】
工程1:プライマー塗布膜の形成工程:
基板の表面上に、目的とする回路パターンの形状にプライマーを塗布し、所定厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜を予め形成する;
工程2:乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布工程:
厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜を予め形成した、基板の表面に乾燥粉末状の金属ナノ粒子を散布して、平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerの乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜を形成する;
工程3:金属ナノ粒子定着膜の形成工程:
平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerの乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜のうち、プライマー塗布膜の液表面に接触する部分から、該プライマー塗布膜を介する、乾燥粉末状の金属ナノ粒子の定着を進行させ、
その後、プライマー塗布膜を介して、定着されていない、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を除去することにより、
基板表面に、プライマー塗布膜を介して、定着される乾燥粉末状の金属ナノ粒子によって、所定厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜を形成する;
工程4:金属ナノ粒子定着膜の加熱処理工程:
基板表面上に形成される、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜に、所定の加熱温度Theatingで、所定の加熱時間theat-treatment、加熱処理を施すことで、基板表面に、平均層厚Wmetal-layerの導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)を形成する。
【0033】
本発明にかかる導電性金属膜の形成方法に関して、その実施形態を以下に説明する。
【0034】
(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)
まず、本発明にかかる導電性金属膜の形成方法も、特許文献1に記載される導電性配線パターンの形成方法と同様に、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を利用している。本発明で利用する乾燥粉末状の金属ナノ粒子は、例えば、特許第4298704号公報に記載される乾燥粉末状の金属微粒子の作製方法を応用することで作製することが可能である。
【0035】
本発明で利用する乾燥粉末状の金属ナノ粒子中、該金属ナノ粒子は、核となる金属ナノ粒子の表面を被覆剤分子層が被覆している構造を有している。
【0036】
核となる金属ナノ粒子自体の平均粒子径dmetal-nano-particleは、少なくとも、1nm〜100nmの範囲に選択される。該金属ナノ粒子自体の平均粒子径dmetal-nano-particleは、好ましくは、3nm〜50nmの範囲、より好ましくは、5nm〜30nmの範囲に選択することが望ましい。
【0037】
目的とする導電性金属膜は、前記平均粒子径dmetal-nano-particleの金属ナノ粒子相互の焼結体層を利用して形成される。形成される金属ナノ粒子焼結体層の平均層厚Wmetal-layerに対して、該金属ナノ粒子自体の平均粒子径dmetal-nano-particleは、少なくとも、Wmetal-layer>dmetal-nano-particleである必要があり、通常、1/5(Wmetal-layer)≧dmetal-nano-particleとなる範囲、例えば、1/10(Wmetal-layer)≧dmetal-nano-particleとなる範囲に選択することが望ましい。
【0038】
乾燥粉末状の金属ナノ粒子の作製に利用される、金属ナノ粒子自体は、金、銀、銅、白金、パラジウム、スズ、ニッケル、アルミニウム、ジルコニウム、マンガン、チタン、鉄、コバルト、ビスマスからなる金属種の群から選択される一種の金属からなる金属ナノ粒子、または、前記金属種の群から選択される二種以上の金属からなる金属ナノ粒子混合物、ならびに、前記金属種の群から選択される二種以上の金属からなる合金金属ナノ粒子からなる群から選択することが望ましい。
【0039】
なお、金の抵抗率は2.35μΩ・cm(20℃)、密度は19.32g/cm3;銀の抵抗率は1.59μΩ・cm(20℃)、密度は10.49g/cm3;銅の抵抗率は1.673μΩ・cm(20℃)、密度は8.95g/cm3;白金の抵抗率は、9.85μΩ・cm(20℃)、密度は21.41g/cm3;パラジウムの抵抗率は、9.93μΩ・cm(20℃)、密度は11.99g/cm3;ニッケルの抵抗率は、6.89μΩ・cm(20℃)、密度は8.908g/cm3;金属スズの抵抗率は11μΩ・cm(20℃)、密度は7.265g/cm3、融点232℃;アルミニウムの抵抗率は2.655μΩ・cm(20℃)、密度は2.699g/cm3、融点660.37℃;ジルコニウムの抵抗率は41.1μΩ・cm(20℃)、密度は6.52g/cm3;チタンの抵抗率は42.0μΩ・cm(20℃)、密度は4.50g/cm3;マンガンの抵抗率は144μΩ・cm、密度は7.21g/cm3;鉄の抵抗率は9.61μΩ・cm(20℃)、密度は7.874g/cm3;コバルトの抵抗率は6.24μΩ・cm(20℃)、密度は8.90g/cm3;ビスマスの抵抗率は129μΩ・cm、密度は9.808g/cm3、融点271.4℃である。
【0040】
また、金属スズやビスマスのように、融点が300℃より低い金属からなる金属ナノ粒子を使用する際には、工程4の加熱処理工程における、加熱温度Theatingを該金属の融点より低く選択することで、低温焼結体を形成することが望ましい。また、融点が300℃より低い金属からなる金属ナノ粒子と、他の金属からなる金属ナノ粒子を混合し、金属ナノ粒子混合物を使用することが望ましい。あるいは、融点が300℃より低い金属と他の金属からなる合金金属ナノ粒子を使用することが望ましい。
【0041】
例えば、二種以上の金属からなる合金金属ナノ粒子の一例として、鉛フリーはんだ合金として利用可能な、SnAgCu系合金、SnCu系合金のナノ粒子を挙げることができる。例えば、SnAgCu系合金として、低銀組成のSn−1.0Ag−0.7CuやSn−0.3Ag−0.7Cu、Sn−0.1Ag−0.7Cuの合金を利用することも可能である。すなわち、工程4の加熱処理工程における、加熱温度Theatingよりも低い融点を示す、低融点合金からなる金属ナノ粒子を利用することも可能である。あるいは、低融点金属である、金属スズ、ビスマスからなる金属ナノ粒子を採用する際、その融点よりも、加熱温度Theatingを高く選択することも可能である。工程4の加熱処理工程中、前記低融点合金、低融点金属を融解させ、金属ナノ粒子焼結体層に代えて、均一な溶融金属層を形成することが可能である。さらに、融点350℃以上の金属からなる表面層を具える基板を採用する際、前記低融点合金、低融点金属が融解する結果、生成する溶融金属により、融点350℃以上の金属からなる表面層と合金化が進行し、全体として、加熱温度Theatingよりも低い融点を示す、低融点合金を形成する形態とすることも可能である。
【0042】
また、水素還元により、金属酸化物を金属に還元可能な金属種、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケルからなる金属ナノ粒子は、好適に使用できる。
【0043】
乾燥粉末状の金属ナノ粒子は、大気中で取り扱うため、金属ナノ粒子相互の融着、ならびに、金属ナノ粒子の表面の酸化を防止するため、核となる金属ナノ粒子の表面を被覆剤分子層が被覆している構造を有している。
【0044】
例えば、特許第4298704号公報に記載される乾燥粉末状の金属微粒子の作製方法を応用して作製される、乾燥粉末状の金属ナノ粒子では、次の被覆剤分子が利用されている。
【0045】
金属ナノ粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物、あるいは、金属ナノ粒子に含まれる金属と金属塩を形成可能なカルボン酸が、被覆剤分子として利用されている。
【0046】
すなわち、金属ナノ粒子の表面の金属原子に対して、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を利用して、配位的な結合を行うことで、前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物は、被覆剤分子層を形成する。
【0047】
一方、金属ナノ粒子に含まれる金属と金属塩を形成可能なカルボン酸は、そのカルボキシル基(−COOH)による、金属ナノ粒子に含まれる表面の金属原子とクーロン力的な相互作用により固定される、あるいは、金属陽イオン種とカルボン酸陰イオン種からなるカルボン酸塩(−COOM)として、被覆剤分子層を形成している。金属ナノ粒子に含まれる表面の金属原子に対して、該カルボン酸塩(−COOM)の金属陽イオン種は、金属間結合に類する相互作用により固定される。
【0048】
本発明で利用される乾燥粉末状の金属ナノ粒子においても、特許第4298704号公報に記載される乾燥粉末状の金属ナノ粒子における、被覆剤分子層の形成に利用される、前記の被覆剤分子が、利用可能である。例えば、脂肪族アミン、ならびに、脂肪族カルボン酸が、本発明で利用される乾燥粉末状の金属ナノ粒子における、被覆剤分子層の形成に利用できる。その際、乾燥粉末状の金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子と被覆剤分子のみを含有しており、室温において、含有される被覆剤分子は凝集して液相を形成しないことが必要である。
【0049】
利用可能な脂肪族アミンの一例として、アルキルアミンを挙げることができる。なお、アルキルアミンは、アミノ基上の孤立電子対を利用して、金属元素と配位的な結合を介して、被覆剤分子層を形成する。通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が、例えば、150℃以上の範囲となるものが好ましい。一方、金属ナノ粒子の低温加熱、焼成処理を行う際には、金属ナノ粒子表面から離脱した後、最終的には、蒸散することが可能であることが望ましく、少なくとも、沸点が300℃を超えない範囲、通常、250℃以下の範囲となるものが好ましい。例えば、沸点Tcoating-molecule-b.p.が150℃以上、250℃以下のアルキルアミンとして、そのアルキル基は、C8〜C12の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にアミノ基を有するものが用いられる。具体的には、炭素数8のアルキルアミンである、オクチルアミン(沸点188℃、融点−1℃)、炭素数10のアルキルアミンである、デシルアミン(沸点220.5℃、融点17℃)、炭素数12のアルキルアミンである、ドデシルアミン(沸点247℃)は、実際に、沸点Tcoating-molecule-b.p.が150℃〜250℃の条件を満たしている。
【0050】
また、3−(ジアルキルアミノ)プロピルアミンのうち、沸点Tcoating-molecule-b.p.が150℃以上、250℃以下の範囲のものも、被覆剤分子として利用可能である。実際に、ジブチルアミノプロピルアミン(沸点238℃、融点−70℃)は、沸点Tcoating-molecule-b.p.が150℃〜250℃の条件を満たしている。
【0051】
利用可能な脂肪族カルボン酸の一例として、直鎖カルボン酸、例えば、炭素数8以上の長鎖カルボン酸である、ラウリン酸(ドデカン酸、融点:44℃、沸点:225℃(100mmHg))、ミリスチン酸(テトラデカン酸、融点:53.8℃および57.5〜58℃の複融点、沸点:248.7℃(100mmHg))、パルミチン酸(ヘキサデカン酸、融点:63〜64℃、沸点:360℃、215℃(15mmHg))、ステアリン酸(オクタデカン酸、融点:69〜70℃、沸点:383℃、232℃(15mmHg)、90〜100℃で徐々に揮発)などが挙げられる。
【0052】
乾燥粉末状の金属ナノ粒子においては、平均粒子径dmetal-nano-particleの金属ナノ粒子の表面に、平均厚さtcoating-molecule-layerの被覆剤分子層が形成されている。該被覆剤分子層の平均厚さtcoating-molecule-layerは、少なくとも、0.1nm〜5nmの範囲に選択する。該被覆剤分子層の平均厚さtcoating-molecule-layerを、好ましくは、0.1nm〜2nmの範囲、より好ましくは、0.1nm〜1nmの範囲に選択することが望ましい。
【0053】
その際、金属ナノ粒子の平均粒子径dmetal-nano-particleと、被覆剤分子層の平均厚さtcoating-molecule-layerの比(dmetal-nano-particle/tcoating-molecule-layer)は、少なくとも、100:0.1〜1:0.1の範囲に選択することが望ましい。比(dmetal-nano-particle/tcoating-molecule-layer)は、好ましくは、50:0.1〜3:0.1の範囲、より好ましくは、30:0.1〜30:1の範囲に選択することが望ましい。
【0054】
平均厚さtcoating-molecule-layerの被覆剤分子層を有する、平均粒子径dmetal-nano-particleの金属ナノ粒子において、金属ナノ粒子の体積比率Vmetal-nano-particleと、被覆剤分子層の体積比率Vcoating-molecule-layerの比(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)は、(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)={(4π/3)・(dmetal-nano-particle/2)3}:[(4π/3)・{(dmetal-nano-particle+tcoating-molecule-layer)/2}3}−(4π/3)・(dmetal-nano-particle/2)3]となる。
【0055】
例えば、tcoating-molecule-layer=0.1nm、dmetal-nano-particle=100nmである場合、金属ナノ粒子の体積比率Vmetal-nano-particleと、被覆剤分子層の体積比率Vcoating-molecule-layerの比(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)は、(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)≒1:0.006となる。
【0056】
例えば、tcoating-molecule-layer=5nm、dmetal-nano-particle=1nmである場合、金属ナノ粒子の体積比率Vmetal-nano-particleと、被覆剤分子層の体積比率Vcoating-molecule-layerの比(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)は、(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)=1:215となる。
【0057】
なお、個々のナノ粒子における、平均粒子径dmetal-nano-particleの金属ナノ粒子の体積比率Vmetal-nano-particleと、その表面に形成される平均厚さtcoating-molecule-layerの被覆剤分子層の体積比率Vcoating-molecule-layerの比(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)は、比(dmetal-nano-particle/tcoating-molecule-layer)≪1の場合、下記のように見積もられる。
(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)≒{(dmetal-nano-particle):(6・tcoating-molecule-layer)}
比(dmetal-nano-particle/tcoating-molecule-layer)が、100:0.1〜1:0.1の範囲である場合、比(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)は、1:0.006〜1:0.728の範囲と見積もられる。
【0058】
比(dmetal-nano-particle/tcoating-molecule-layer)が、50:0.1〜3:0.1の範囲である場合、比(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)は、1:0.012〜1:0.214の範囲と見積もられる。
【0059】
比(dmetal-nano-particle/tcoating-molecule-layer)が、30:0.1〜30:1の範囲である場合、比(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)は、1:0.020〜1:0.214の範囲と見積もられる。
【0060】
本発明では、散布工程において、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を散布して、平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerの乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜を形成する。該平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、一般に、2μm〜1000μmの範囲、好ましくは、10μm〜500μmの範囲に選択される。
【0061】
散布される、乾燥粉末状の金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子を凝集してなる、平均粒径ddry-powderの乾燥粉末の形状である。平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerに対して、該乾燥粉末の平均粒径ddry-powderは、少なくとも、Wmetal-nano-particle-spread-layer>ddry-powderである必要がある。通常、1/5(Wmetal-nano-particle-spread-layer)≧ddry-powderとなる範囲、例えば、1/10(Wmetal-nano-particle-spread-layer)≧ddry-powderとなる範囲に選択することが望ましい。
【0062】
散布工程で使用する、該乾燥粉末の平均粒径ddry-powderは、少なくとも、0.1μm〜100μmの範囲に選択される。該乾燥粉末の平均粒径ddry-powderは、好ましくは、0.5μm〜50μmの範囲、より好ましくは、1μm〜40μmの範囲に選択することが望ましい。
【0063】
従って、乾燥粉末の平均粒径ddry-powderが、散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerと、実質的に等し、ddry-powder≒Wmetal-nano-particle-spread-layerとなる形態を採用することも可能である。
【0064】
前記平均粒径ddry-powderの乾燥粉末は、金属ナノ粒子と被覆剤分子とで構成されおり、含有される金属ナノ粒子に由来する金属の体積比率Vmetal-dry-powderと、被覆剤分子体積比率Vcoating-molecule-dry-powderの比(Vmetal-dry-powder:Vcoating-molecule- dry-powder)は、1:0.1〜1:30の範囲に選択される。比(Vmetal-dry-powder:Vcoating-molecule- dry-powder)は、好ましくは、1:0.1〜1:0.8の範囲、より好ましくは、1:0.1〜1:0.4の範囲に選択することが望ましい。
【0065】
勿論、平均粒径ddry-powderの乾燥粉末は、平均厚さtcoating-molecule-layerの被覆剤分子層を有する、平均粒子径dmetal-nano-particleの金属ナノ粒子で構成されており、
(Vmetal-nano-particle/Vcoating-molecule-layer)>(Vmetal-dry-powder/Vcoating-molecule-dry-powder)の関係を満足するはずである。
【0066】
例えば、tcoating-molecule-layer=5nm、dmetal-nano-particle=1nmである場合、(Vmetal-nano-particle/Vcoating-molecule-layer)=1/215であり、
(1/0.1)≧(Vmetal-dry-powder/Vcoating-molecule-dry-powder)≧(1/30)≫(Vmetal-nano-particle/Vcoating-molecule-layer)=1/215 の関係となっている。
【0067】
また、tcoating-molecule-layer=0.1nm、dmetal-nano-particle=100nmである場合、(Vmetal-nano-particle:Vcoating-molecule-layer)≒1:0.006であり、
(1/0.006)≒(Vmetal-nano-particle/Vcoating-molecule-layer)≫(1/0.1)≧(Vmetal-dry-powder/Vcoating-molecule-dry-powder)≧(1/30) の関係となっている。
【0068】
(基板)
基板の形状、少なくとも、プライマー塗布膜を形成する表面の形状は、基本的に平坦な面とする。
【0069】
基板は、加熱処理工程の際、所定の加熱温度Theatingで、所定の加熱時間theat-treatment、加熱処理を受ける。前記加熱処理条件を満たす、耐熱性を有する材質が選択される。
【0070】
例えば、ガラス、セラミック、銅張り積層板、融点350℃以上の金属、ポリイミド、ポリカーボネート、PET、ポリスチレン、ポリエステル、紙からなる群から選択される材質を、基板の材質として、選択することができる。
【0071】
また、紙からなる基板を採用する場合、使用される紙は、前記加熱処理条件を満たす、耐熱性を有することが必要である。あるいは、使用される紙の耐熱性を考慮して、該耐熱性が許容する、加熱処理条件を選択する必要がある。さらには、紙自体は、セルロース繊維で構成され、多孔質な材料であり、毛管現象により、液体が浸潤可能な内部構造を有している。
【0072】
従って、基板の材質として、紙を採用する際には、表面に樹脂を塗布した紙、樹脂を混合した紙の形態とする。該紙の表面処理に利用する「樹脂」は、紙自体を構成するセルロース繊維間の隙間を充填する状態となる。
【0073】
例えば、前記紙の表面処理に使用する「樹脂」として、後述するプライマーに添加される、「密着性向上成分」に利用される、非イオン性有機高分子化合物、例えば、ポリイミド、エポキシ樹脂、PVA、PVP、ポリウレタン、シリコーン樹脂、シラン系樹脂;アニオン性有機高分子化合物、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの共重合体;カチオン性有機高分子化合物、例えば、高分子アミン類、ポリアミン類を利用することができる。これらの高分子化合物は、プライマーに用いる溶媒に溶解可能である場合、例えば、該高分子化合物を含有していないプライマーを塗布した際、紙の表面に塗布した「樹脂」は、溶媒中に溶解する状態となる。従って、紙の表面に塗布した「樹脂」が溶解した段階で、紙自体を構成するセルロース繊維間の隙間にプライマーに用いる溶媒が浸潤する状態とすることも可能である。
【0074】
逆に、前記紙の表面処理に使用する「樹脂」として、プライマーに用いる溶媒に対して、撥液性を示す「樹脂」を採用することもできる。その結果、表面に樹脂を塗布した紙、樹脂を混合した紙の表面に、プライマーを塗布した際、該「樹脂」の示す撥液性の結果、紙表面に対するプライマーの接触角θcは、180°>θc>90°の範囲となる形態を採用することも可能である。
【0075】
基板の材質として、「融点350℃以上の金属」を採用する場合、金属ナノ粒子自体を構成する金属種のうち、「融点350℃以上の金属」を選択することも可能である。さらには、金属ナノ粒子自体を構成する金属種と、「融点350℃以上の金属」の合金が、融点300℃以下の低融点合金となるように、「融点350℃以上の金属」を選択することも可能である。
【0076】
なお、銅張り積層板からなる基板を採用する場合、その銅箔表面にプライマー塗布膜を形成する。また、表面に「融点350℃以上の金属」からなる表面層を具えた基板を採用する場合、該「融点350℃以上の金属」からなる表面層上にプライマー塗布膜を形成する。
【0077】
従って、導電性を示す「金属膜」からなる基板表面上に、回路パターン状の導電性金属膜が作製され、導電性を示す「金属」からなる基板表面と、回路パターン状の導電性金属膜との間で、全面で導電性接触が達成されている形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。すなわち、回路パターン状の導電性金属膜を形成した後、基板表面に残る「金属膜」を選択的にエッチング除去することで、非導電性の下地層上に、導電性回路を形成する形態に利用できる。
【0078】
また、導電性を示す「金属膜」からなる基板表面は、その表面の「金属膜」は、パターン化されており、該パターン化された「金属膜」の表面の一部に、回路パターン状の導電性金属膜を作製する形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。すなわち、非導電性の下地層上に、予め作製されている、「金属膜」のパターンの表面の一部に、該パターン形状に対応する、回路パターン状の導電性金属膜を選択的に形成する形態に利用できる。
【0079】
(プライマー)
基板の表面上に、目的とする回路パターンの形状にプライマーを塗布し、所定厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜を予め形成する。
【0080】
本発明においては、目的とする回路パターンの形状で、所定厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜を、高い再現性で形成するため、通常、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法など、液体の塗布に利用可能な印刷法を適用して、プライマーを塗布する。
【0081】
塗布に利用する、プライマーの液粘度μprimerは、通常、100mPa・s〜40Pa・sの範囲、好ましくは、200mPa・s〜10Pa・sの範囲に選択する。例えば、インクジェット印刷法を利用して、プライマーを塗布する場合、塗布に利用するプライマーの液粘度μprimerは、通常、2mPa・s〜100mPa・sの範囲に選択することが望ましい。
【0082】
本発明では、形成するプライマー塗布膜の厚さTprimer-printingは、通常、0.1μm〜100μmの範囲、好ましくは、1μm〜100μmの範囲、より好ましくは、1μm〜50μmの範囲に選択する。
【0083】
また、所定厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜を目的とする回路パターンの形状に形成する際、該プライマー塗布膜のパターン中における、最小線幅Wprimer-printing-minimumと、プライマー塗布膜の厚さTprimer-printingの比(Tprimer-printing:Wprimer-printing-minimum)は、通常、1:3〜1:∞の範囲に選択する。
【0084】
プライマーは、溶媒と「密着性向上成分」で構成されている。本発明では、「密着性向上成分」として、有機高分子化合物、高沸点の溶媒、または、有機酸塩を利用する。あるいは、プライマーとして、高沸点の溶媒、例えば、高沸点のアルコールを使用し、該高沸点の溶媒、例えば、高沸点のアルコールを「密着性向上成分」として機能させることもできる。
【0085】
「密着性向上成分」として利用可能な有機高分子化合物の一例は、非イオン性有機高分子化合物、例えば、ポリイミド、エポキシ樹脂、PVA、PVP、ポリウレタン、シリコーン樹脂、シラン系樹脂;アニオン性有機高分子化合物、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの共重合体;カチオン性有機高分子化合物、例えば、高分子アミン類、ポリアミン類である。なお、「密着性向上成分」として利用可能な有機高分子化合物の平均分子量MWは、通常、500〜500,000の範囲、好ましくは、1,000〜200,000の範囲、より好ましくは、1,000〜100,000の範囲に選択する。
【0086】
前記の非イオン性有機高分子化合物、アニオン性有機高分子化合物、カチオン性有機高分子化合物は、背景技術に開示する特許文献2に記載する手法においても、プライマー層中に含有される成分として、利用されている。
【0087】
「密着性向上成分」として利用可能な有機酸塩の一例は、カルボン酸アニオン種、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、アジピン酸、酒石酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、サリチル酸などのアニオン種と、金属カチオン種、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムのカチオン種、あるいは、アンモニウム・カチオンで構成される、カルボン酸塩である。例えば、室温において固体であるカルボン酸塩を、「密着性向上成分」として利用可能である。
【0088】
前記のカルボン酸塩から生成する、カルボン酸アニオン種、ならびに、金属カチオン種、アンモニウム・カチオンは、背景技術に開示する特許文献2に記載する手法においても、プライマー層中に含有される、有機塩あるいは無機塩に由来する金属カチオン種、ならびに、金属カチオン種、アンモニウム・カチオンとして、利用されている。
【0089】
「密着性向上成分」として利用可能な「高沸点の溶媒」の沸点Thigh-boiling-solvent-b.p.は、通常、150℃〜300℃の範囲に選択する。「高沸点の溶媒」の沸点Thigh-boiling-solvent-b.p.は、好ましくは、180℃〜300℃の範囲、より好ましくは、190℃〜300℃の範囲であることが望ましい。
【0090】
溶媒中に添加する「密着性向上成分」として利用可能な「高沸点の溶媒」の一例は、高沸点のアルコール、例えば、エチレングリコール(沸点197.3℃、粘度16.1mPa・s)、グリセリン(沸点290℃、融点17.8℃、粘度1.412Pa・s)、ジエチレングリコール(沸点245℃)、トリエチレングリコール(沸点285℃)、ペンタエリスリトール(沸点276℃(30mmHg)、融点260.5℃)である。従って、溶媒中に添加する「密着性向上成分」として利用可能な「高沸点のアルコール」の沸点Thigh-boiling-alcohol-b.p.は、通常、150℃〜300℃の範囲に選択する。「高沸点の溶媒」の沸点Thigh-boiling-solvent-b.p.は、好ましくは、180℃〜300℃の範囲、より好ましくは、190℃〜300℃の範囲であることが望ましい。
【0091】
また、高沸点のアルコールのうちは、加熱した際、還元能力を示すものがある。例えば、Cu、Snなどの易酸化性金属粉末の表面を覆っている金属酸化物を、加熱した際、金属原子へと還元する能力を有する場合、かかる高沸点のアルコールは、Cu、Snなどの易酸化性金属粉末の表面を覆っている酸化被膜を除去する機能も有する。
【0092】
プライマー中に含まれる、溶媒は、上記有機高分子化合物、高沸点の溶媒、または、有機酸塩から選択される「密着性向上成分」を均一に溶解する溶媒成分として利用される。一方、加熱処理工程の際、所定の加熱温度Theatingで、所定の加熱時間theat-treatment、加熱処理を行う間に、該溶媒は蒸散する必要がある。従って、該溶媒の沸点Tsolvent-b.p.は、通常、60℃〜300℃の範囲に選択する。溶媒の沸点Tsolvent-b.p.は、好ましくは、100℃〜300℃の範囲、より好ましくは、150℃〜300℃の範囲であることが望ましい。溶媒自体は、「密着性向上成分」、金属ナノ粒子の金属種、被覆剤分子のいずれに対しても、反応性を示さない溶媒であり、その沸点Tsolvent-b.p.が、前記の温度範囲である溶媒であることが好ましい。
【0093】
「密着性向上成分」として溶媒中に添加する「高沸点の溶媒」の沸点Thigh-boiling-solvent-b.p.に対して、溶媒の沸点Tsolvent-b.p.は、Thigh-boiling-solvent-b.p.≧Tsolvent-b.p.であっても、あるいは、Thigh-boiling-solvent-b.p.≦Tsolvent-b.p.であってもよい。通常、「密着性向上成分」として溶媒中に添加する「高沸点の溶媒」の沸点Thigh-boiling-solvent-b.p.に対して、溶媒の沸点Tsolvent-b.p.は、Thigh-boiling-solvent-b.p.>Tsolvent-b.p.の範囲であることが望ましい。「密着性向上成分」として溶媒中に添加する「高沸点の溶媒」の溶媒に対する溶解性は、高くても、低くても、いずれであってもよい。通常、「密着性向上成分」として溶媒中に添加する「高沸点の溶媒」は、溶媒と均一に混合することが望ましい。さらに、「密着性向上成分」として溶媒中に添加する「高沸点の溶媒」の融点Thigh-boiling-solvent-m.p.は、室温(25℃)に対して、通常、Thigh-boiling-solvent-m.p.≦25℃であることが望ましい。但し、「高沸点の溶媒」を「密着性向上成分」として溶媒中に添加してなる組成物が、室温(25℃)において流動性を示す限り、添加される「高沸点の溶媒」の融点Thigh-boiling-solvent-m.p.は、室温(25℃)に対して、Thigh-boiling-solvent-m.p.>25℃であってもよい。
【0094】
また、「密着性向上成分」として溶媒中に添加する「高沸点のアルコール」の沸点Thigh-boiling-alcohol-b.p.に対して、溶媒の沸点Tsolvent-b.p.は、Thigh-boiling-alcohol-b.p.≧Tsolvent-b.p.であっても、あるいは、Thigh-boiling-solvent-b.p.high-boiling-alcohol-b.p.≦Tsolvent-b.p.であってもよい。「密着性向上成分」として溶媒中に添加する「高沸点のアルコール」の溶媒に対する溶解性は、高くても、低くても、いずれであってもよい。通常、「密着性向上成分」として溶媒中に添加する「高沸点のアルコール」は、溶媒と均一に混合することが望ましい。さらに、「密着性向上成分」として溶媒中に添加する「高沸点のアルコール」の融点Thigh-boiling-alcohol-m.p.は、室温(25℃)に対して、通常、Thigh-boiling-alcohol-m.p.≦25℃であることが望ましい。但し、「高沸点のアルコール」を「密着性向上成分」として溶媒中に添加してなる組成物が、室温(25℃)において流動性を示す限り、添加される「高沸点のアルコール」の融点Thigh-boiling-alcohol-m.p.は、室温(25℃)に対して、Thigh-boiling- alcohol-m.p.>25℃であってもよい。「高沸点のアルコール」を「密着性向上成分」として溶媒中に添加してなる組成物が、室温(25℃)において流動性を示す限り、例えば、「密着性向上成分」として溶媒中に添加する「高沸点のアルコール」の融点Thigh-boiling-alcohol-m.p.は、溶媒の沸点Tsolvent-b.p.に対して、Thigh-boiling- alcohol-m.p.>Tsolvent-b.p.であってもよい。
【0095】
プライマーは、溶媒中に、上記有機高分子化合物、高沸点の溶媒、または、有機酸塩から選択される「密着性向上成分」を均一に溶解してなる組成液である。プライマー中に含有される、「密着性向上成分」の体積比率Vsolute-primerと、溶媒の体積比率Vsolvent-primerの比(Vsolvent-primer:Vsolute-primer)は、通常、100:0〜100:4900の範囲に選択される。比(Vsolvent-primer:Vsolute-primer)は、好ましくは、100:10〜100:1900の範囲、より好ましくは、100:20〜100:900の範囲に選択することが望ましい。
【0096】
すなわち、有機酸塩を「密着性向上成分」として利用する場合でも、プライマー中に含有される、「密着性向上成分」の体積比率Vsolute-primerと、溶媒の体積比率Vsolvent-primerの比(Vsolvent-primer:Vsolute-primer)は、前記の範囲に選択することが望ましい。
【0097】
また、「密着性向上成分」として、上記「高沸点の溶媒」を採用する際には、溶媒を使用せず、「高沸点の溶媒」をプライマーとして使用することができる。「密着性向上成分」として利用する「高沸点の溶媒」が高沸点のアルコールである際には、溶媒を使用せず、「高沸点の溶媒」として利用可能な高沸点のアルコールをプライマーとして使用することもできる。
【0098】
沸点Thigh-boiling-solvent-b.p.が150℃以上の高沸点のアルコールの一例は、例えば、エチレングリコール(沸点197.3℃、粘度16.1mPa・s)、グリセリン(沸点290℃、融点17.8℃、粘度1.412Pa・s)、ジエチレングリコール(沸点245℃)、トリエチレングリコール(沸点285℃)、ペンタエリスリトール(沸点276℃(30mmHg)、融点260.5℃)である。沸点Thigh-boiling-solvent-b.p.が150℃以上の高沸点のアルコールのうちには、100℃以上に加熱した際、還元能力を示すものがある。例えば、100℃以上に加熱した際、Cu、Snなどの易酸化性金属粉末の表面を覆っている金属酸化物を金属原子へと還元する能力を有する場合、かかる高沸点のアルコールは、Cu、Snなどの易酸化性金属粉末の表面を覆っている酸化被膜を除去する機能も有する。
【0099】
プライマーとして使用可能な沸点Thigh-boiling-solvent-b.p.が150℃以上の高沸点のアルコールの一例は、例えば、グリセリン(沸点290℃、融点17.8℃、粘度1.412Pa・s)、ジエチレングリコール(沸点245℃、粘度 mPa・s)、トリエチレングリコール(沸点285℃、粘度 mPa・s)である。
【0100】
基板の表面に塗布される液体は、該基板表面に対する濡れ性に応じて、塗布された液体の端部では、図1に例示するように、液体の液面は、基板表面に対して特定の接触角θcで接する。塗布された液体の液量が僅かで、該液体自体の自重の影響が無視できる場合、表面張力によって、塗布された液体の液面形状は、実質的に円弧となる。
【0101】
基板表面に対する、該液体の接触角θcは、基板表面に対する該液体の濡れ性を反映しており、濡れ性が優れている場合、接触角θcは、90°>θc>0°の範囲となり、濡れ性が乏しい場合、接触角θcは、180°>θc>90°の範囲となる。液体自体の自重の影響が無視できる場合、表面張力によって、塗布された液体の液面形状は、実質的に円弧となる結果、その接触角θcに応じて、図2に例示するような、液面形状を示す。
【0102】
塗布された液体の液量が増すと、該液体自体の自重の影響により、液面の頂上部が押しつぶされ、図3に例示するような液面形状となる。液面頂上部が押しつぶされた液面形状においても、その端部において、液体の液面が基板表面に対して接する角は、接触角θcに維持される。
【0103】
基板表面に対して、プライマーが、接触角θc-primerで接する場合、プライマー自体の自重の影響が無視できる場合、表面張力によって、塗布されたプライマーの液面形状は、実質的に円弧となる。その際、図前記円弧の曲率半径をrとすると、該円弧状の液面の頂上部の高さ、すなわち、プライマー塗布膜の厚さTprimer-printingと、プライマー塗布膜と基板表面が接する部分の幅Wminimumは、Tprimer-printing=r・(1−cosθc-primer)、Wminimum=r・2sinθc-primerと見積もられる。比(Tprimer-printing:Wminimum)は、(1−cosθc-primer):(2sinθc-primer)となる。
【0104】
塗布されるプライマーの液量が増すと、該プライマー自体の自重の影響により、液面の頂上部が押しつぶされ、図3に例示するような液面形状となる。その際、液面の頂上部の高さ、すなわち、プライマー塗布膜の厚さTprimer-printingと、プライマー塗布膜と基板表面が接する部分の幅Wの比(Tprimer-printing/W)は、(Tprimer-printing/W)<(1−cosθc-primer)/(2sinθc-primer)となる。
【0105】
一方、塗布されるプライマーの液量が少なく、該プライマー自体の自重の影響により、液面の頂上部が押しつぶされる状態でない場合、表面張力によって、塗布されたプライマーの液面形状は、実質的に円弧となる。従って、プライマー自体の自重の影響が無視できるプライマー塗布膜の厚さTprimer-printingの範囲では、プライマー塗布膜の厚さTprimer-printingと、プライマー塗布膜と基板表面が接する部分の幅Wの比(Tprimer-printing/W)は、(Tprimer-printing/W)≒(1−cosθc-primer)/(2sinθc-primer)に維持される。
【0106】
基板表面に対して、プライマーが、接触角θc-primer=30°で接する場合、(Tprimer-printing/W)<(1−cosθc-primer)/(2sinθc-primer)=(1−(√3)/2)≒0.134となる。その際、Tprimer-printing:W≒1:7.5となっている。
【0107】
基板表面に対して、プライマーが、接触角θc-primer=45°で接する場合、(Tprimer-printing/W)<(1−cosθc-primer)/(2sinθc-primer)=((√2)−1)/2≒0.207となる。その際、Tprimer-printing:W≒1:4.8となっている。
【0108】
基板表面に対して、プライマーが、接触角θc-primer=60°で接する場合、(Tprimer-printing/W)<(1−cosθc-primer)/(2sinθc-primer)=((√3)/6)≒0.289となる。その際、Tprimer-printing:W≒1:3.5となっている。
【0109】
基板表面に対して、プライマーが、接触角θc-primer=90°で接する場合、(Tprimer-printing/W)<(1−cosθc-primer)/(2sinθc-primer)=(1/2)=0.5となる。その際、Tprimer-printing:W≒1:2となっている。
【0110】
基板表面に対して、プライマーが、接触角θc-primer=120°で接する場合、(Tprimer-printing/W)<(1−cosθc-primer)/(2sinθc-primer)=((√3)/2)≒0.866となる。その際、Tprimer-printing:W≒1:1.15となっている。
【0111】
基板表面に対して、プライマーが、接触角θc-primer=135°で接する場合、(Tprimer-printing/W)<(1−cosθc-primer)/(2sinθc-primer)=(1/2+(√2)/2)≒1.207となる。その際、Tprimer-printing:W≒1:1.207となっている。
【0112】
基板表面に対して、プライマーが、接触角θc-primer=150°で接する場合、(Tprimer-printing/W)<(1−cosθc-primer)/(2sinθc-primer)=(1+(√3)/2)≒1.866となる。その際、Tprimer-printing:W≒1:1.866となっている。
【0113】
従って、プライマー塗布膜のパターン中における、最小線幅Wprimer-printing-minimumと、プライマー塗布膜の厚さTprimer-printingの比(Tprimer-printing:Wprimer-printing-minimum)を、所望の範囲に制御する上では、用いる基板表面に対する、プライマーの接触角θc-primerを適正に調整する必要がある。用いる基板表面に対する、溶媒の接触角θc-solventを基礎として、該プライマー中に含有される、「密着性向上成分」の体積比率Vsolute-primerと、溶媒の体積比率Vsolvent-primerの比(Vsolvent-primer:Vsolute-primer)を変化させることで、用いる基板表面に対する、プライマーの接触角θc-primerを適正に調整することが可能である。
【0114】
すなわち、溶媒の密度dsolventと、その液粘度μsolventを基礎として、該プライマー中に含有される、「密着性向上成分」の体積比率Vsolute-primerと、溶媒の体積比率Vsolvent-primerの比(Vsolvent-primer:Vsolute-primer)を変化させることで、プライマーの平均密度dprimerと、その液粘度μprimerを適正に調整することが可能である。その結果、用いる基板表面に対する、溶媒の接触角θc-solventを基礎として、用いる基板表面に対する、プライマーの接触角θc-primerを適正に調整することが可能である。
【0115】
その際、基礎となる、用いる基板表面に対する、溶媒の接触角θc-solventは、一般に、90°>θc-solventの範囲であることが望ましい。すなわち、プライマー中に含有される溶媒として、基板表面に対する濡れ性が乏しいものを採用することは、一般に望ましくない。
【0116】
(乾燥粉末状の金属ナノ粒子の定着)
平均厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜を形成した後、基板表面に、平均粒径ddry-powderの乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)を散布して、平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerの乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜を形成する。
【0117】
その際、平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerの乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜のうち、平均厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜の液表面に接触する部分から、該プライマー塗布膜を介する、乾燥粉末状の金属ナノ粒子の定着が進行する。最終的に、基板表面に、プライマー塗布膜を介して、定着される乾燥粉末状の金属ナノ粒子によって、所定厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜が形成される。プライマー塗布膜を介して、定着されていない、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を除去することで、基板表面に、パターン化された金属ナノ粒子定着膜が形成される。
【0118】
プライマー塗布膜が形成されていない基板表面部分に直接散布される、乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)は、プライマー塗布膜の液表面に接触していない。その結果、プライマー塗布膜の液表面に接触していない、乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)は、プライマー塗布膜を介して、定着されていない。さらに、プライマー塗布膜の上面に散布されたが、プライマー塗布膜の液(プライマー)に接触できなかった、乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)は、プライマー塗布膜を介して、定着されていない。これらプライマー塗布膜を介して、定着されていない乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)を除去すると、プライマー塗布膜と、プライマー塗布膜を介して定着された乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)から形成される、金属ナノ粒子定着膜が得られる。
【0119】
なお、定着されていない乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)は、除去した後、回収される。回収される乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)は、勿論、乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜の形成に再利用できる。従って、散布される乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)の量のうち、その一部が、金属ナノ粒子定着膜に利用されるのみであるが、再利用がなされる結果、実質的に無駄なく利用される。
【0120】
形成される金属ナノ粒子定着膜は、予め形成されているプライマー塗布膜のパターン形状と本質的に同じ、パターン形状を有する。従って、形成される金属ナノ粒子定着膜のパターンにおける、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、プライマー塗布膜のパターンにおける、最小線幅Wprimer-printing-minimumと、本質的に等しくなる(Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth=Wprimer-printing-minimum)。
【0121】
平均粒径ddry-powderの乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)を使用して、平均厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜と、平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerの乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜から、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜が、再現性よく形成される。
【0122】
本発明においては、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingを0.1μm〜100μmの範囲とする際、形成される金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerは、通常、1μm〜200μmの範囲、好ましくは、2μm〜100μmの範囲に選択する。また、形成される金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerを1μm〜200μmの範囲、好ましくは、2μm〜100μmの範囲に選択する際、乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜の平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、通常、2μm〜1000μmの範囲、好ましくは、10μm〜500μmの範囲に選択する。
【0123】
すなわち、乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜の平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerに対して、形成される金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerと、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingは、通常、
primer-printing≦Wmetal-nano-particle-fixed-layer≦Wmetal-nano-particle-spread-layer の関係を満足するように選択することが望ましい。
【0124】
特には、形成する金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerと、その作製に使用する、乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜の平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer)は、通常、1:1.5〜1:50の範囲に選択することが望ましい。
【0125】
また、形成する金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerと、その作製に使用する、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Tprimer-printing)は、通常、1:0.05〜1:0.8の範囲、例えば、1:0.2〜1:0.8の範囲に選択することが望ましい。
【0126】
例えば、形成する金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerをWmetal-nano-particle-fixed-layer=2μmに選択する場合、その作製に使用する、乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜の平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、Wmetal-nano-particle-spread-layer=2μmに、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingは、Tprimer-printing=0.1μmに、それぞれ選択する。
【0127】
例えば、形成する金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerをWmetal-nano-particle-fixed-layer=50μmに選択する場合、その作製に使用する、乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜の平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、Wmetal-nano-particle-spread-layer=500μmに、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingは、Tprimer-printing=30μmに、それぞれ選択する。
【0128】
また、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜を目的とする回路パターンの形状に形成する際、該金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)は、通常、1:2〜1:∞の範囲に選択する。
【0129】
例えば、形成する金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)を、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(1:2)に、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerを、Wmetal-nano-particle-fixed-layer=2μmに、それぞれ選択する場合、形成する金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth=4μmとなる。
【0130】
勿論、形成する金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、使用するプライマー塗布膜のパターン中における、最小線幅Wprimer-printing-minimumは、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth≒Wprimer-printing-minimumとする。従って、使用するプライマー塗布膜のパターン中における、最小線幅Wprimer-printing-minimumも、Wprimer-printing-minimum=4μmとなる。また、形成する金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerをWmetal-nano-particle-fixed-layer=2μmに選択する場合、その作製に使用する、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingは、Tprimer-printing=0.1μmである。従って、使用するプライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingを、Tprimer-printing=0.1μmに、該プライマー塗布膜のパターン中における、最小線幅Wprimer-printing-minimumと、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingの比(Tprimer-printing:Wprimer-printing-minimum)は、(Tprimer-printing:Wprimer-printing-minimum)=(0.1μm:4μm)=(1:40)に、それぞれ選択する必要がある。すなわち、塗布されたプライマー自体の自重の影響が無視できる、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printing=0.1μmの場合に、接触角により結滞さえる比(Tprimer-printing:Wprimer-printing-minimum)の上限値(1:3)よりも小さな比(Tprimer-printing:Wprimer-printing-minimum)=(1:40)の塗布膜を作製する必要がある。
【0131】
一方、使用するプライマー塗布膜のパターン中における、最小線幅Wprimer-printing-minimumと、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingの比(Tprimer-printing:Wprimer-printing-minimum)を、(Tprimer-printing:Wprimer-printing-minimum)=(1:3)に、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingを、Tprimer-printing=0.1μmに、それぞれ選択すると、最小線幅Wprimer-printing-minimumは、Wprimer-printing-minimum=0.3μmとなる。その際、形成する金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth≒Wprimer-printing-minimum=0.3μmとなる。形成する金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)を、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(1:2)に選択する場合、作製すべき金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerは、Wmetal-nano-particle-fixed-layer=0.15μmとなる。従って、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの選択範囲、1μm〜200μmの範囲の下限値よりも、薄い平均厚さとすることが必要となる。
【0132】
プライマー塗布膜と、プライマー塗布膜を介して定着された乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)から形成される、金属ナノ粒子定着膜は、プライマー塗布膜中に含有される、溶媒と「密着性向上成分」、ならびに、乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)中に含有される、金属ナノ粒子と被覆剤分子を含んでいる。
【0133】
形成された金属ナノ粒子定着膜中に含有される、溶媒の体積比率Vsolvent-fixed-layerと「密着性向上成分」の体積比率Vsolute-fixed-layerの比(Vsolvent-fixed-layer:Vsolute- fixed-layer)は、プライマー中に含有される、溶媒の体積比率Vsolvent-primerと「密着性向上成分」の体積比率Vsolute-primerの比(Vsolvent-primer:Vsolute-primer)と本質的に等しい。
【0134】
形成された金属ナノ粒子定着膜中に含有される、金属ナノ粒子に由来する金属の体積比率Vmetal-fixed-layerと、被覆剤分子の体積比率Vcoating-molecule-fixed-layerの比(Vmetal-fixed-layer:Vcoating-molecule-fixed-layer)は、乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)中に含有される、金属ナノ粒子に由来する金属の体積比率Vmetal-dry-powderと、被覆剤分子の体積比率Vcoating-molecule-dry-powderの比(Vmetal-dry-powder:Vcoating-molecule-dry-powder)と本質的に等しい。
【0135】
金属ナノ粒子定着膜中に含有される、プライマー塗布膜に由来するプライマーの体積比率Vprimer-fixed-layerと、乾燥粉末(乾燥粉末状の金属ナノ粒子)の体積比率Vdry-powder- fixed-layerは、それぞれ、Vprimer-fixed-layer=(Vsolvent-fixed-layer+Vsolute-fixed-layer)、Vdry-powder- fixed-layer=(Vmetal-fixed-layer+Vcoating-molecule-fixed-layer)となっている。
【0136】
金属ナノ粒子定着膜中に含有される、金属の体積比率Vmetal-fixed-layer、被覆剤分子の体積比率Vcoating-molecule-fixed-layer、溶媒の体積比率Vsolvent-fixed-layer、「密着性向上成分」の体積比率Vsolute-fixed-layerの和(Vmetal-fixed-layer+Vcoating-molecule-fixed-layersolvent-fixed-layer+Vsolvent-fixed-layer)=100体積%とする際、
金属の体積比率Vmetal-fixed-layerは、通常、40体積%〜95体積%の範囲に選択し、
「密着性向上成分」の体積比率Vsolute-fixed-layerは、通常、1体積%〜50体積%の範囲に選択する。
【0137】
金属の体積比率Vmetal-fixed-layerを、好ましくは、50体積%〜90体積%の範囲、より好ましくは、50体積%〜80体積%の範囲に選択することが望ましく、
「密着性向上成分」の体積比率Vsolute-fixed-layerを、好ましくは、1体積%〜40体積%の範囲、より好ましくは、5体積%〜40体積%の範囲に選択することが望ましい。
【0138】
一方、後述する加熱工程中に蒸散させ、除去する、被覆剤分子の体積比率Vcoating-molecule-fixed-layerと溶媒の体積比率Vsolvent-fixed-layerの和(Vcoating-molecule-fixed-layer+Vsolvent-fixed-layer)は、通常、1体積%〜50体積%の範囲に選択する。和(Vcoating-molecule-fixed-layer+Vsolvent-fixed-layer)を、好ましくは、1体積%〜40体積%の範囲、より好ましくは、5体積%〜40体積%の範囲に選択することが望ましい。
【0139】
従って、金属ナノ粒子定着膜中に含有される、金属の体積比率Vmetal-fixed-layerと、「密着性向上成分」の体積比率Vsolute-fixed-layerの合計(Vmetal-fixed-layer+Vsolute-fixed-layer)は、例えば、(40+50)体積%〜(95+1)体積%の範囲に選択することができる。また、それぞれ好ましい範囲に選択する際、合計(Vmetal-fixed-layer+Vsolute-fixed-layer)を(50+40)体積%〜(90+1)体積%の範囲に選択することができ、それぞれより好ましい範囲に選択する際、合計(Vmetal-fixed-layer+Vsolute-fixed-layer)を(50+40)体積%〜(80+5)体積%の範囲に選択することができる。
【0140】
(加熱処理)
基板表面上に形成される、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜に加熱処理を施すことで、基板表面に、平均層厚Wmetal-layerの導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)が形成される。
【0141】
加熱処理に伴い、金属ナノ粒子定着膜中に含有される、溶媒と被覆剤分子は蒸散され、作製される導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)中には、金属ナノ粒子に由来する金属と、プライマー中に含有されていた「密着性向上成分」が残され、作製される導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)と基板表面との密着性は、「密着性向上成分」によって、向上されている。
【0142】
加熱処理工程の際、所定の加熱温度Theatingで、所定の加熱時間theat-treatment、加熱処理を行う間に、金属ナノ粒子の表面を覆う、被覆剤分子の離脱が進行し、金属ナノ粒子相互の接触が可能となり、金属ナノ粒子の融着、低温焼結が進む。同時に、「密着性向上成分」が作用して、作製される導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)と基板表面との密着性を向上させる。
【0143】
一方、金属ナノ粒子の表面から離脱する被覆剤分子、ならびに、溶媒は、加熱処理の進行とともに、蒸散し、加熱処理工程を終える時点では、全て、蒸散、除去されている。
【0144】
この加熱処理工程で採用する、加熱処理条件では、通常、加熱温度Theatingは、100℃〜300℃の範囲に選択し、加熱時間theat-treatmentは、5分間〜120分間の範囲に選択する。
【0145】
溶媒の沸点Tsolvent-b.p.、被覆剤分子の沸点Tcoating-molecule-b.p.を考慮すると、加熱温度Theatingを、好ましくは、150℃〜300℃の範囲、より好ましくは、180℃〜300℃の範囲に選択することが望ましい。
【0146】
また、上記加熱処理工程では、還元性雰囲気下において、加熱処理を行うことができる。前記還元性雰囲気として、不活性ガス中に、水素ガスを0.5体積%〜5体積%の範囲、好ましくは、1体積%〜4体積%の範囲、例えば、2体積%の濃度で含む、還元性雰囲気を採用することが望ましい。
【0147】
勿論、上記加熱処理工程では、大気中において、加熱処理を行うこともできる。
【0148】
(導電性金属膜)
加熱処理を施すことにより、パターン化された、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜から、パターン化された、平均層厚Wmetal-layerの導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)が形成される。
【0149】
形成される導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)は、形成されている金属ナノ粒子定着膜のパターン形状と本質的に同じ、パターン形状を有する。従って、形成される導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)のパターンにおける、最小線幅Wminimum-linewidthは、金属ナノ粒子定着膜のパターンにおける、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、本質的に等しくなる(Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth=Wminimum-linewidth)。
【0150】
一方、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜から、平均層厚Wmetal-layerの導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)を形成する際、加熱処理工程中に、溶媒と被覆剤分子の蒸散がなされる結果、導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均層厚Wmetal-layerは、金属ナノ粒子定着膜平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerに対して、Wmetal-nano-particle-fixed-layer>Wmetal-layerの関係を満たす。
【0151】
金属ナノ粒子定着膜中に含有される、被覆剤分子の体積比率Vcoating-molecule-fixed-layerと溶媒の体積比率Vsolvent-fixed-layerの和(Vcoating-molecule-fixed-layer+Vsolvent-fixed-layer)を、上述の範囲に選択することにより、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerを、1μm〜200μmの範囲に選択する場合、得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均層厚Wmetal-layerは、0.5μm〜100μmの範囲に調整することが可能である。
【0152】
具体的には、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerと、作製される導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均層厚Wmetal-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-layer)を、1:0.3〜1:0.7の範囲で、高い再現性で制御することが可能である。
【0153】
例えば、最終的に得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均層厚Wmetal-layerをWmetal-layer=0.5μmに選択する場合、その作製に使用する、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerをWmetal-nano-particle-fixed-layer=2μmとするため、乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜の平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、Wmetal-nano-particle-spread-layer=2μmに、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingは、Tprimer-printing=0.1μmに、それぞれ選択する。
【0154】
例えば、最終的に得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均層厚Wmetal-layerをWmetal-layer=100μmに選択する場合、その作製に使用する、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerをWmetal-nano-particle-fixed-layer=200μmとするため、乾燥粉末状の金属ナノ粒子の散布膜の平均散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、Wmetal-nano-particle-spread-layer=500μmに、プライマー塗布膜の平均厚さTprimer-printingは、Tprimer-printing=100μmに、それぞれ選択する。

本発明においては、平均厚さWmetal-layerの導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)を目的とする回路パターンの形状に形成する際、該導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)のパターン中における、最小線幅Wminimum-linewidthと、導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer:Wminimum-linewidth)は、通常、1:2〜1:∞の範囲に選択する。
【0155】
例えば、乾燥粉末状の金属ナノ粒子を高沸点溶媒中に再分散させて、金属ナノ粒子分散液を調製した上で、該金属ナノ粒子分散液を基板上に所望のパターンに塗布する手法では、基板上に形成される、金属ナノ粒子分散液の塗布膜は、図5に示す液面形状となる。
【0156】
基板表面に対する、該金属ナノ粒子分散液の接触角θc-dispersionは、一般に、90°≧θc-dispersionであるため、金属ナノ粒子分散液の塗布膜の厚さTdispersion-printingと、その線幅Wdispersion-printingの比(Tdispersion-printing/Wdispersion-printing)は、1/2≧(Tdispersion-printing/Wdispersion-printing)となる。形成される導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の厚さは、金属ナノ粒子分散液の塗布膜中に分散されている、金属ナノ粒子の分散密度に依存する。従って、作製される、該導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)のパターン中における、最小線幅Wminimum-linewidthと、導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)は、1/2≧(Tdispersion-printing/Wdispersion-printing)>(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)となる。実際には、金属ナノ粒子分散液中に含有される、金属ナノ粒子に由来する金属の体積比率は、40体積%を超えないため、導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)は、1/5≧(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)の範囲に留まる。
【0157】
それ対して、本発明にかかる導電性金属膜の形成方法は、該導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)のパターン中における、最小線幅Wminimum-linewidthと、導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)が、1/2≧(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)≧1/5の範囲にも適用できる。
【0158】
例えば、最終的に得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)のパターン中における、最小線幅Wminimum-linewidthと、導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)を、(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)=(1:2)に、導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均厚さWmetal-layerを、Wmetal-layer=0.5μmに、それぞれ選択する場合、得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)のパターン中における、最小線幅Wminimum-linewidthは、Wminimum-linewidth=1μmとなる。
【0159】
勿論、得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)のパターン中における、最小線幅Wminimum-linewidthと、作製に使用する、金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、Wminimum-linewidth≒Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthとする。従って、使用する金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthも、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth=1μmとなる。また、得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均厚さWmetal-layerを、Wmetal-layer=0.5μmに選択する場合、使用する金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerは、Wmetal-nano-particle-fixed-layer=2μmである。従って、使用する金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerは、Wmetal-nano-particle-fixed-layer=2μmに、該金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)を、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(2μm:1μm)=(2:1)に、それぞれ選択することが必要である。すなわち、金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)の選択範囲、1:2〜1:∞の範囲の上限値を超える、比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(2:1)を選択することが必要となる。
【0160】
一方、使用する金属ナノ粒子定着膜のパターン中における、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)を、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(1:2)に、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerを、Wmetal-nano-particle-fixed-layer=2μmに、それぞれ選択すると、最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth=4μmとなる。その際、得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)のパターン中における、最小線幅Wminimum-linewidthは、Wminimum-linewidth≒Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth=4μmとなる。最終的に得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)のパターン中における、最小線幅Wminimum-linewidthと、導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)を、(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)=(1:2)に選択する場合、作製すべき導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均厚さWmetal-layerは、Wmetal-layer=2μmとなる。すなわち、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layer=2μmの金属ナノ粒子定着膜から、平均厚さWmetal-layer=0.5μmの導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)ではなく、平均厚さWmetal-layer=2μmの導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)を作製する必要がある。
【0161】
なお、最終的に得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)全体の見かけの体積(空隙部を含む)に対する、該導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)中に含有される、金属の体積比率Vmetal-metal-layerは、通常、60体積%〜95体積%の範囲に選択する。良好な導電性を達成するためには、最終的に得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)全体の見かけの体積(空隙部を含む)に対する、該導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)中に含有される、金属の体積比率Vmetal-metal-layerは、好ましくは、65体積%〜90体積%の範囲、より好ましくは、70体積%〜85体積%の範囲に選択することが望ましい。
【0162】
原理的には、金属ナノ粒子定着膜中に含有されている、金属ナノ粒子は、全て、最終的に得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の形成に使用される。従って、得られる導電性金属膜(金属ナノ粒子焼結体層)の平均厚さWmetal-layerと含有される金属の体積比率Vmetal-metal-layerの積(Wmetal-layer×Vmetal-metal-layer)と、金属ナノ粒子定着膜の平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerと含有される、金属ナノ粒子に由来する金属の体積比率Vmetal-fixed-layerの積(Wmetal-nano-particle-fixed-layer×Vmetal-fixed-layer)の比、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer×Vmetal-fixed-layer):(Wmetal-layer×Vmetal-metal-layer)は、原理的には、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer×Vmetal-fixed-layer):(Wmetal-layer×Vmetal-metal-layer)=1:1 の関係を満足する。
【実施例】
【0163】
以下に、具体例を示し、本発明をより具体的に説明する。これらの具体例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、これら具体例の形態に限定されるものではない。
【0164】
(製造例1)
市販されている銀ナノ粒子分散液(商品名:ナノペーストNPS、ハリマ化成(株)製)を使用している。この銀ナノ粒子分散液は、平均粒子径12nmの銀ナノ粒子を、分散溶媒のカルコール1098(1−デカノール、沸点236.0〜236.1℃(764mmHg)、比重d420=0.831、花王製)とAF5号ソルベント(沸点275〜306℃、密度(15℃)0.815g/cm3)中に分散させた分散液である。その際、銀ナノ粒子の表面は、被覆剤分子:ジブチルアミノプロピルアミン(沸点238℃、比重密度:0.827g/cm3、広栄化学工業製)により被覆された状態としている。
【0165】
銀ナノ粒子分散液から、下記の手順で乾燥粉末状の銀微粒子を調製した。
【0166】
銀ナノ粒子分散液220gを準備した。該分散液220gは、平均粒子径12nmの銀ナノ粒子183g、被覆剤分子:ジブチルアミノプロピルアミン20g、その他の成分(分散溶媒)17gを含んでいる。
【0167】
分散液220gを2Lのビーカーに移し、極性溶媒メタノール、500gを添加して、常温で3分間攪拌後、静置した。前記処理において、銀微粒子は、メタノールを添加、攪拌し、静置する間に、ビーカー底部に沈降した。一方、上澄みには、混合物中に含有される、不要な有機成分が溶解し、茶褐色のメタノール溶液が得られた。この上澄み層を除去した後、再度、沈降物にメタノール、300gを添加、攪拌、静置後、銀微粒子を沈降させた後、上澄みのメタノール層を除去した。同上澄みメタノール層の着色状態を観察しながら、さらに、沈降物にメタノール、300gを添加し、同様の操作を繰り返した。次いで、沈降物にメタノール、300gを添加し、攪拌、静置を行った時点で、上澄みメタノール層を目視した範囲では、着色は見出されなくなった。この上澄みメタノール層を除去した後、ビーカー底部に沈降した銀ナノ粒子中に残余するメタノール溶液を揮発させ、乾燥を行ったところ、青色の微粉末が得られた。この乾燥粉末は、単一分子層程度の被覆層として、銀ナノ粒子表面に上記のアミン化合物が残留し、余剰のアミン化合物はメタノールを利用する洗浄によって除去されている。なお、乾燥粉末中には、銀微粒子が99質量%、その表面の被覆剤分子層として、アミン化合物(ジブチルアミノプロピルアミン)の総和が1質量%の比率で存在していた。
【0168】
すなわち、得られる乾燥粉末中では、銀(密度:10.500g/cm3)のナノ粒子の表面を、ジブチルアミノプロピルアミン(密度:0.827g/cm3)が被覆する粒子となっており、平均粒子径12nmの銀微粒子の表面に、平均厚さ0.1nmのジブチルアミノプロピルアミン被覆剤分子層が形成されているものに相当する。
【0169】
平均粒子径12nmの銀ナノ粒子と、平均厚さ0.1nmの被覆剤分子層の体積比率は、(4π/3)・(6)3:{(4π/3)・(6+0.1)3−(4π/3)・(6)3}=216:10.981≒100:5.08である。その際、(100×10.500):(5.08×0.827)≒100:0.40である。
【0170】
従って、乾燥粉末は、平均厚さ0.1nmの被覆剤分子層を有する銀ナノ粒子100.40質量部に対して、余剰の被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)0.61質量部を含んでいる。また、乾燥粉末中に含有される、銀と被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)の体積比率は、銀88.6体積%、被覆剤分子11.4体積%である
作製された乾燥粉末状の銀ナノ粒子自体の平均粒径ddry-powderは、8μmであった。
【0171】
(実施例1)
本実施例1で使用するプライマーは、下記の組成を有している。
【0172】
溶媒の2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(ジエチレングリコールエチルエーテル:CH3CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-OH、沸点196−202℃)を、80体積%、エポキシ樹脂を、20体積%含有している。前記エポキシ樹脂は、少なくとも、室温(25℃)で液状である。利用しているエポキシ樹脂の平均分子量MWは、MW=2000である。
【0173】
該プライマーの粘度μprimerは、2000 mPa・s(25℃)である。
【0174】
従って、プライマーは、スクリーン印刷によって、少なくとも、塗布膜厚さTprimer-printing30μmの際、最小線幅Wprimer-printing-minimum100μmのライン状の塗布が可能である。
【0175】
プライマーをスクリーン印刷にてガラス基板上に所望の回路パターン状に塗布した。プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingは、30μmである。回路パターンの最小線幅Wminimum-line-widthは、100μmである。
【0176】
パターン形成された基板上に、製造例1の条件で作製される、乾燥粉末状の銀ナノ粒子100gを散布した後、余分な銀ナノ粒子乾燥粉末を除去した。乾燥粉末状の銀ナノ粒子の散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、500μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerは、52μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層中に含有されている、銀の体積比率は、44.3体積%である。
【0177】
乾燥粉末は、銀88.2体積%、被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)11.8体積%を含有しており、「定着」される「金属ナノ粒子」の層中においても、銀の体積比率44.3体積%に対して、被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)が体積比率5.7体積%で含有されていると見積もられる。
【0178】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層は、プライマーと乾燥粉末状の銀ナノ粒子から形成されている。従って、乾燥粉末状の銀ナノ粒子に由来する、銀の体積比率44.3体積%、被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)の体積比率5.7体積%を除いた、50.0体積%をプライマーが占めていると見積もられる。すなわち、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の組成は、銀の体積比率44.3体積%、被覆剤分子の体積比率5.7体積%、溶媒の体積比率40.0体積%、エポキシ樹脂の体積比率10.0体積%であると、見積もられる。なお、プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingと「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(30/52)≒0.577/1である。
【0179】
プライマー層を介して、ガラス基板表面に定着されている銀ナノ粒子パターンに対して、200℃、20分、加熱処理を施すことにより、銀ナノ粒子を焼成して、基板上に銀膜パターンを形成させた。形成された銀膜における平均層厚Wmetal-layerは、28μmであった。かかる銀の導電体層の体積固有抵抗率は、3.7μΩ・cmであった。なお、金属銀の抵抗率は、1.587μΩ・cmである。比(銀の導電体層の体積固有抵抗率/金属銀の抵抗率)は、2.33倍である。
【0180】
なお、形成された銀膜における平均層厚Wmetal-layerと、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(28μm/52μm)≒0.538である。
【0181】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、プライマーの塗布膜の最小線幅Wprimer-printing-minimumと実質的に同じであり、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)は、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(52μm:100μm)≒1:1.92である。また、形成された銀膜における、最小線幅Wminimum-linewidthも、Wminimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、形成された銀膜における、最小線幅Wminimum-linewidthと、平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)は、(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)=(28μm:100μm)≒1:3.57である。
【0182】
形成された平均厚さWmetal-layerが28μmの銀膜全体の見かけの体積(空隙部を含む)に対する、該銀膜中に含有される、銀の体積比率Vmetal-metal-layerは、77体積%である。
【0183】
なお、比(52μm×44.3体積%):28μm≒1:1.215であり、また、比(52μm×44.3体積%):(28μm×77体積%)≒1:0.936である。
【0184】
(製造例2)
市販されている金ナノ粒子分散液(商品名:ナノペーストNPG−J、ハリマ化成(株)製)を使用している。この金ナノ粒子分散液は、平均粒子径7nmの金ナノ粒子を、分散溶媒のAF7号ソルベント(沸点259〜282℃、密度(15℃)0.820g/cm3)中に分散させた分散液である。その際、金ナノ粒子の表面は、2−エチルヘキシルアミン(沸点169℃、密度:0.791g/cm3、広栄化学工業製)により被覆された状態としている。
【0185】
金ナノ粒子分散液から、下記の手順で乾燥粉末状の金ナノ粒子を調製した。
【0186】
金ナノ粒子分散液300gを準備した。該金ナノ粒子分散液300gは、平均粒子径7nmの金ナノ粒子150g、被覆剤分子:2−エチルヘキシルアミン8g、その他の成分(分散溶媒:AF7号ソルベント)142gを含んでいる。
【0187】
分散液300gを2Lのビーカーに移し、極性溶媒アセトニトリル500gを添加して、常温で3分間攪拌後、静置した。前記処理において、金ナノ粒子は、アセトニトリルを添加、攪拌し、静置する間に、ビーカー底部に沈降した。一方、上澄みには、混合物中に含有される、不要な有機成分が溶解し、茶褐色のアセトニトリル溶液が得られた。この上澄み層を除去した後、再度、沈降物に、アセトニトリル300gを添加、攪拌、静置後、金ナノ粒子を沈降させた後、上澄みのアセトニトリル層を除去した。同上澄みアセトニトリル層の着色状態を観察しながら、さらに、沈降物にmアセトニトリル300gを添加し、同様の操作を繰り返した。次いで、沈降物に、アセトニトリル300gを添加し、攪拌、静置を行った時点で、上澄みアセトニトリル層を目視した範囲では、着色は見出されなくなった。この上澄みアセトニトリル層を除去した後、ビーカー底部に沈降した金ナノ粒子中に残余するアセトニトリル溶液を揮発させ、乾燥を行ったところ、黒色の微粉末が得られた。この乾燥粉末は、単一分子層程度の被覆層として、金ナノ粒子表面に上記のアミン化合物が残留し、余剰のアミン化合物はアセトニトリルを利用する洗浄によって除去されている。なお、乾燥粉末中には、金ナノ粒子が99質量%、その表面の被覆剤分子層として、アミン化合物(2−エチルヘキシルアミン)の総和が1質量%の比率で存在していた。
【0188】
すなわち、得られる乾燥粉末中では、金(密度:19.300g/cm3)のナノ粒子の表面を、2−エチルヘキシルアミン(密度:0.791g/cm3)が被覆する粒子となっており、平均粒子径7nmの金ナノ粒子の表面に、平均厚さ0.1nmの2−エチルヘキシルアミン被覆剤分子層が形成されているものに相当する。
【0189】
平均粒子径7nmの金ナノ粒子と、平均厚さ0.1nmの被覆剤分子層の体積比率は、(4π/3)・(3.5)3:{(4π/3)・(3.5+0.1)3−(4π/3)・(3.5)3}=179.5:15.83≒100:8.82である。その際、(100×19.3):(8.82×0.791)≒100:0.36である。
【0190】
従って、乾燥粉末は、平均厚さ0.1nmの被覆剤分子層を有する金ナノ粒子100.36質量部に対して、余剰の被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)0.65質量部を含んでいる。また、乾燥粉末中に含有される、金と被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)の体積比率は、金80.2体積%、被覆剤分子19.8体積%である。
【0191】
作製された乾燥粉末状の金ナノ粒子自体の平均粒径ddry-powderは、7μmであった。
【0192】
(実施例2)
本実施例2で使用するプライマーは、下記の組成を有している。
【0193】
溶媒の2−(2−エトキシエトキシ)エタノールを、80体積%、エポキシ樹脂を、20体積%含有している。前記エポキシ樹脂は、少なくとも、室温(25℃)で液状である。利用しているエポキシ樹脂の平均分子量MWは、MW=2000である。
【0194】
該プライマーの粘度μprimerは、2000 mPa・s(25℃)である。
【0195】
プライマーをスクリーン印刷にてガラス基板上に所望の回路パターン状に塗布した。プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingは、30μmである。回路パターンの最小線幅Wminimum-line-widthは、100μmである。
【0196】
従って、プライマーは、スクリーン印刷によって、少なくとも、塗布膜厚さTprimer-printing30μmの際、最小線幅Wprimer-printing-minimum100μmのライン状の塗布が可能である。
【0197】
パターン形成された基板上に、製造例2の条件で作製される、乾燥粉末状の金ナノ粒子100gを塗布した後、余分な金ナノ粒子乾燥粉末を除去した。乾燥粉末状の金ナノ粒子の散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、460μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerは、50μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層中に含有されている、金の体積比率は、38.5体積%である。
【0198】
乾燥粉末は、金80.2体積%、被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)19.8体積%を含有しており、「定着」される「金属ナノ粒子」の層中においても、金の体積比率38.5体積%に対して、被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)が体積比率9.5体積%で含有されていると見積もられる。
【0199】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層は、プライマーと乾燥粉末状の金ナノ粒子から形成されている。従って、乾燥粉末状の金ナノ粒子に由来する、金の体積比率38.5体積%、被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)の体積比率9.5体積%を除いた、50.2体積%をプライマーが占めていると見積もられる。すなわち、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の組成は、金の体積比率38.5体積%、被覆剤分子の体積比率9.5体積%、溶媒の体積比率41.6体積%、エポキシ樹脂の体積比率10.4体積%であると、見積もられる。なお、プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingと「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(30/50)≒0.6/1である。
【0200】
プライマー層を介して、ガラス基板表面に定着されている金ナノ粒子パターンに対して、220℃、20分、加熱処理を施すことにより、金ナノ粒子を焼成して、基板上に金膜パターンを形成させた。形成された金膜における平均層厚Wmetal-layerは、26μmであった。かかる金の導電体層の体積固有抵抗率は、6.3μΩ・cmであった。なお、金属金の抵抗率は、2.214μΩ・cmである。比(金の導電体層の体積固有抵抗率/金属金の抵抗率)は、2.85倍である。
【0201】
なお、形成された金膜における平均層厚Wmetal-layerと、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(26μm/50μm)=0.52である。
【0202】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、プライマーの塗布膜の最小線幅Wprimer-printing-minimumと実質的に同じであり、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)は、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(50μm:100μm)=1:2である。また、形成された金膜における、最小線幅Wminimum-linewidthも、Wminimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、形成された金膜における、最小線幅Wminimum-linewidthと、平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)は、(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)=(26μm:100μm)≒1:3.85である。
【0203】
形成された平均厚さWmetal-layerが26μmの金膜全体の見かけの体積(空隙部を含む)に対する、該金膜中に含有される、金の体積比率Vmetal-metal-layerは、70体積%である。
【0204】
なお、比(50μm×38.5体積%):26μm≒1:1.351であり、また、比(50μm×38.5体積%):(26μm×70体積%)≒1:0.945である。
【0205】
(製造例3)
銅ナノ粒子分散液(商品名:ナノペーストNPC、ハリマ化成(株)製)を使用している。この銅ナノ粒子分散液は、平均粒子径20nmの銅ナノ粒子を、分散溶媒のトルエン(沸点110.63℃(764mmHg)、比重d420=0.8669、キシダ化学製)中に分散させた分散液である。その際、銀ナノ粒子の表面は、被覆剤分子:2−エチルヘキシルアミン(沸点169℃、密度:0.791g/cm3、広栄化学工業製)により被覆された状態としている。
【0206】
銅ナノ粒子分散液から、下記の手順で乾燥粉末状の銅微粒子を調製した。
【0207】
銅ナノ粒子分散液380gを準備した。
【0208】
分散液の組成は、平均粒子径20nmの銅ナノ粒子180g、被覆剤分子:2−エチルヘキシルアミン46g、その他の成分(分散溶媒:トルエン)154gを含んでいる。
【0209】
分散液380gを1Lのビーカーに移し、極性溶媒メタノール500gを添加して、常温で3分間攪拌後、静置した。前記処理において、銅ナノ粒子は、メタノールを添加、攪拌し、静置する間に、ビーカー底部に沈降した。一方、上澄みには、混合物中に含有される、不要な有機成分が溶解し、茶褐色のメタノール溶液が得られた。この上澄み層を除去した後、再度、沈降物に、メタノール300gを添加、攪拌、静置後、銅ナノ粒子を沈降させた後、上澄みのメタノール層を除去した。同上澄みメタノール層の着色状態を観察しながら、さらに、沈降物に、メタノール300gを添加し、同様の操作を繰り返した。次いで、沈降物に、メタノール300gを添加し、攪拌、静置を行った時点で、上澄みメタノール層を目視した範囲では、着色は見出されなくなった。この上澄みメタノール層を除去した後、ビーカー底部に沈降した銅ナノ粒子中に残余するメタノール溶液を揮発させ、乾燥を行ったところ、黒色の微粉末が得られた。この乾燥粉末は、単一分子層程度の被覆層として、銅ナノ粒子表面に上記のアミン化合物が残留し、余剰のアミン化合物はメタノールを利用する洗浄によって除去されている。なお、乾燥粉末中には、銅ナノ粒子が98質量%、その表面の被覆剤分子層として、アミン化合物(2−エチルヘキシルアミン)の総和が2質量%の比率で存在していた。
【0210】
すなわち、得られる乾燥粉末中では、銅(密度:8.96g/cm3)のナノ粒子の表面を、2−エチルヘキシルアミン(密度:0.791g/cm3)が被覆する粒子となっており、平均粒子径20nmの銅微粒子の表面に、平均厚さ0.1nmの2−エチルヘキシルアミン被覆剤分子層が形成されているものに相当する。
【0211】
平均粒子径20nmの銅ナノ粒子と、平均厚さ0.1nmの被覆剤分子層の体積比率は、(4π/3)・(10)3:{(4π/3)・(10+0.1)3−(4π/3)・(10)3}=1000:30.3≒100:3.03である。その際、(100×8.96):(3.03×0.791)≒100:0.27である。
【0212】
従って、乾燥粉末は、平均厚さ0.1nmの被覆剤分子層を有する銅ナノ粒子100.27質量部に対して、余剰の被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)1.77質量部を含んでいる。また、乾燥粉末中に含有される、銅と被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)の体積比率は、銅81.2体積%、被覆剤分子18.8体積%である。
【0213】
作製された乾燥粉末状の銅ナノ粒子自体の平均粒径ddry-powderは、9μmであった。
【0214】
(実施例3)
本実施例3で使用するプライマーは、下記の組成を有している。
【0215】
溶媒の2−(2−エトキシエトキシ)エタノールを、80体積%、エポキシ樹脂を、20体積%含有している。前記エポキシ樹脂は、少なくとも、室温(25℃)で液状である。利用しているエポキシ樹脂の平均分子量MWは、MW=2000である。
【0216】
該プライマーの粘度μprimerは、2000 mPa・s(25℃)である。
【0217】
プライマーをスクリーン印刷にてガラス基板上に所望の回路パターン状に塗布した。プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingは、30μmである。回路パターンの最小線幅Wminimum-line-widthは、100μmである。
【0218】
従って、プライマーは、スクリーン印刷によって、少なくとも、塗布膜厚さTprimer-printing30μmの際、最小線幅Wprimer-printing-minimum100μmのライン状の塗布が可能である。
【0219】
パターン形成された基板上に、製造例3の条件で作製される、乾燥粉末状の銅ナノ粒子100gを塗布した後、余分な銅ナノ粒子乾燥粉末を除去した。乾燥粉末状の銅ナノ粒子の散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、550μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerは、55μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層中に含有されている、銅の体積比率は、42.2体積%である。
【0220】
乾燥粉末は、銅81.2体積%、被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)18.8体積%を含有しており、「定着」される「金属ナノ粒子」の層中においても、銅の体積比率42.2体積%に対して、被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)が体積比率9.8体積%で含有されていると見積もられる。
【0221】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層は、プライマーと乾燥粉末状の銅ナノ粒子から形成されている。従って、乾燥粉末状の銅ナノ粒子に由来する、銅の体積比率42.2体積%、被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)の体積比率9.8体積%を除いた、48.0体積%をプライマーが占めていると見積もられる。すなわち、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の組成は、銅の体積比率42.2体積%、被覆剤分子の体積比率9.8体積%、溶媒の体積比率38.4体積%、エポキシ樹脂の体積比率9.6体積%であると、見積もられる。なお、プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingと「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(30/55)≒0.55/1である。
【0222】
プライマー層を介して、ガラス基板表面に定着されている銅ナノ粒子パターンに対して、還元性雰囲気下で焼成処理を施す。基板をチャンバーに入れ、チャンバー内全体を還元ガス雰囲気下にするため、アルゴン96%−水素4%混合ガスを200cc/minの流速で流す。前記還元ガスの気流下、チャンバー内の温度を200℃とし、60分、加熱処理を施す。前記加熱処理により、銅ナノ粒子を焼成して、基板上に銅膜パターンを形成する。
【0223】
形成された銅膜における平均層厚Wmetal-layerは、30μmであった。かかる銅の導電体層の体積固有抵抗率は、9.6μΩ・cmであった。なお、金属銅の抵抗率は、1.678μΩ・cmである。比(銅の導電体層の体積固有抵抗率/金属銅の抵抗率)は、5.72倍である。
【0224】
なお、形成された銅膜における平均層厚Wmetal-layerと、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(30μm/55μm)≒0.545である。
【0225】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、プライマーの塗布膜の最小線幅Wprimer-printing-minimumと実質的に同じであり、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)は、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(55μm:100μm)≒1:1.82である。また、形成された銅膜における、最小線幅Wminimum-linewidthも、Wminimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、形成された銅膜における、最小線幅Wminimum-linewidthと、平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer:Wminimum-linewidth)は、(Wmetal-layer:Wminimum-linewidth)=(30μm:100μm)≒1:3.33である。
【0226】
形成された平均厚さWmetal-layerが10μmの銅膜全体の見かけの体積(空隙部を含む)に対する、該銅膜中に含有される、銅の体積比率Vmetal-metal-layerは、71体積%である。
【0227】
なお、比(55μm×42.2体積%):30μm≒1:1.422であり、また、比(55μm×42.2体積%):(30μm×71体積%)≒1:0.918である。
【0228】
(実施例4)
本実施例4で使用するプライマーには、グリセリンを用いている。従って、該プライマーの粘度μprimerは、グリセリンの粘度1.412Pa・s(25℃)である。
【0229】
プライマーをスクリーン印刷にてガラス基板上に所望の回路パターン状に塗布した。プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingは、30μmである。回路パターンの最小線幅Wminimum-line-widthは、100μmである。
【0230】
従って、プライマーは、スクリーン印刷によって、少なくとも、塗布膜厚さTprimer-printing30μmの際、最小線幅Wprimer-printing-minimum100μmのライン状の塗布が可能である。
【0231】
パターン形成された基板上に、製造例3の条件で作製される、乾燥粉末状の銅ナノ粒子100gを塗布した後、余分な銅ナノ粒子乾燥粉末を除去した。乾燥粉末状の銅ナノ粒子の散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、530μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerは、54μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層中に含有されている、銅の体積比率は、42.2体積%である。
【0232】
乾燥粉末は、銅81.2体積%、被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)18.8体積%を含有しており、「定着」される「金属ナノ粒子」の層中においても、銅の体積比率42.2体積%に対して、被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)が体積比率9.8体積%で含有されていると見積もられる。
【0233】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層は、プライマーと乾燥粉末状の銅ナノ粒子から形成されている。従って、「定着」される「金属ナノ粒子」の層中では、乾燥粉末状の銅ナノ粒子に由来する、銅の体積比率42.2体積%、被覆剤分子(2−エチルヘキシルアミン)の体積比率9.8体積%を除いた、48.0体積%をプライマー(グリセリン)が占めていると見積もられる。なお、プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingと「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(30/54)≒0.56/1である。
【0234】
プライマー層を介して、ガラス基板表面に定着されている銅ナノ粒子パターンに対して、200℃、20分、加熱処理を施すことにより、銅ナノ粒子がグリセリンの働きにより表面の酸化被膜が除去され、同時に焼成を行い、基板上に銅膜パターンを形成させた。形成された銅膜における平均層厚Wmetal-layerは、28μmであった。かかる銅の導電体層の体積固有抵抗率は、9.3μΩ・cmであった。なお、金属銅の抵抗率は、1.678μΩ・cmである。比(銅の導電体層の体積固有抵抗率/金属銅の抵抗率)は、5.54倍である。
【0235】
なお、形成された銅膜における平均層厚Wmetal-layerと、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(28μm/54μm)≒0.519である。
【0236】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、プライマーの塗布膜の最小線幅Wprimer-printing-minimumと実質的に同じであり、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)は、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(54μm:100μm)≒1:1.85である。また、形成された銅膜における、最小線幅Wminimum-linewidthも、Wminimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、形成された銅膜における、最小線幅Wminimum-linewidthと、平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)は、(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)=(28μm:100μm)≒1:3.57である。
【0237】
形成された平均厚さWmetal-layerが28μmの銅膜全体の見かけの体積(空隙部を含む)に対する、該銅膜中に含有される、銅の体積比率Vmetal-metal-layerは、79体積%である。
【0238】
なお、比(54μm×42.2体積%):28μm≒1:1.229であり、また、比(55μm×42.2体積%):(28μm×79体積%)≒1:0.953である。
【0239】
(実施例5)
本実施例5で使用するプライマーは、下記の組成を有している。
【0240】
溶媒の2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(ジエチレングリコールエチルエーテル:CH3CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-OH、沸点196−202℃)を、80体積%、エポキシ樹脂を、20体積%含有している。前記エポキシ樹脂は、少なくとも、室温(25℃)で液状である。利用しているエポキシ樹脂の平均分子量MWは、MW=2000である。
【0241】
該プライマーの粘度μprimerは、2000 mPa・s(25℃)である。
【0242】
プライマーをスクリーン印刷にてポリイミド基板上に所望の回路パターン状に塗布した。プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingは、33μmである。回路パターンの最小線幅Wminimum-line-widthは、100μmである。
【0243】
従って、プライマーは、スクリーン印刷によって、少なくとも、塗布膜厚さTprimer-printing33μmの際、最小線幅Wprimer-printing-minimum100μmのライン状の塗布が可能である。
【0244】
パターン形成された基板上に、製造例1の条件で作製される、乾燥粉末状の銀ナノ粒子100gを散布した後、余分な銀ナノ粒子乾燥粉末を除去した。乾燥粉末状の銀ナノ粒子の散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、520μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerは、58μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層中に含有されている、銀の体積比率は、44.3体積%である。
【0245】
乾燥粉末は、銀88.2体積%、被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)11.8体積%を含有しており、「定着」される「金属ナノ粒子」の層中においても、銀の体積比率44.3体積%に対して、被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)が体積比率5.7体積%で含有されていると見積もられる。
【0246】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層は、プライマーと乾燥粉末状の銀ナノ粒子から形成されている。従って、乾燥粉末状の銀ナノ粒子に由来する、銀の体積比率44.3体積%、被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)の体積比率5.7体積%を除いた、50.0体積%をプライマーが占めていると見積もられる。すなわち、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の組成は、銀の体積比率44.3体積%、被覆剤分子の体積比率5.7体積%、溶媒の体積比率40.0体積%、エポキシ樹脂の体積比率10.0体積%であると、見積もられる。なお、プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingと「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(33/58)≒0.57/1である。
【0247】
プライマー層を介して、ポリイミド基板表面に定着されている銀ナノ粒子パターンに対して、200℃、20分、加熱処理を施すことにより、銀ナノ粒子を焼成して、基板上に銀膜パターンを形成させた。形成された銀膜における平均層厚Wmetal-layerは、30μmであった。かかる銀の導電体層の体積固有抵抗率は、3.9μΩ・cmであった。なお、金属銀の抵抗率は、1.587μΩ・cmである。比(銀の導電体層の体積固有抵抗率/金属銀の抵抗率)は、2.46倍である。
【0248】
なお、形成された銀膜における平均層厚Wmetal-layerと、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(30μm/58μm)≒0.517である。
【0249】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、プライマーの塗布膜の最小線幅Wprimer-printing-minimumと実質的に同じであり、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)は、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(58μm:100μm)≒1:1.72である。また、形成された銀膜における、最小線幅Wminimum-linewidthも、Wminimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、形成された銀膜における、最小線幅Wminimum-linewidthと、平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)は、(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)=(30μm:100μm)≒1:3.33である。
【0250】
形成された平均厚さWmetal-layerが30μmの銀膜全体の見かけの体積(空隙部を含む)に対する、該銀膜中に含有される、銀の体積比率Vmetal-metal-layerは、78体積%である。
【0251】
なお、比(58μm×44.3体積%):30μm≒1:1.168であり、また、比(58μm×44.3体積%):(30μm×78体積%)≒1:0.911である。
【0252】
(実施例6)
本実施例6で使用するプライマーは、下記の条件で調製されている。
【0253】
フラスコに2−エチルヘキサン酸(沸点:227℃)0.1モルと2−エチルヘキシルアミン(沸点:169℃)0.1モルを混合し、50℃浴中で湯浴しながら30分間攪拌した後、室温まで冷却する。
【0254】
上記の過程では、アルカン酸(R−COOH)とアルキルアミン(R−NH2)から、アルカン酸アルキルアミン錯体(R−NH2:HOOC−R)(あるいは、アルカン酸アンモニウム塩R−N+3-OOC−R)が生成される。その際、アルカン酸アルキルアミン錯体(R−NH2:HOOC−R)(あるいは、アルカン酸アンモニウム塩R−N+3-OOC−R)は、アルカン酸(R−COOH)とアルキルアミン(R−NH2)との間で下記のような解離平衡状態となっている。
【0255】
【化1】

【0256】
従って、調製されるプライマーは、アルカン酸アルキルアミン錯体(R−NH2:HOOC−R)(あるいは、アルカン酸アンモニウム塩R−N+3-OOC−R)、アルカン酸(R−COOH)、アルキルアミン(R−NH2)とからなる混合物の状態となっている。換言すると、アルカン酸(R−COOH)、アルキルアミン(R−NH2)とからなる混合液中に、アルカン酸アルキルアミン錯体(R−NH2:HOOC−R)(あるいは、アルカン酸アンモニウム塩R−N+3-OOC−R)が均一の溶解した溶液を形成しおり、流動性を示す。なお、該プライマーの粘度μprimerは、10000 mPa・s(25℃)である。
【0257】
プライマーをスクリーン印刷にてポリイミド基板上に所望の回路パターン状に塗布した。プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingは、33μmである。回路パターンの最小線幅Wminimum-line-widthは、100μmである。
【0258】
従って、プライマーは、スクリーン印刷によって、少なくとも、塗布膜厚さTprimer-printing33μmの際、最小線幅Wprimer-printing-minimum100μmのライン状の塗布が可能である。
【0259】
パターン形成された基板上に、製造例1の条件で作製される、乾燥粉末状の銀ナノ粒子100gを散布した後、余分な銀ナノ粒子乾燥粉末を除去した。乾燥粉末状の銀ナノ粒子の散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerは、520μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerは、58μmである。「定着」される「金属ナノ粒子」の層中に含有されている、銀の体積比率は、44.3体積%である。
【0260】
乾燥粉末は、銀88.2体積%、被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)11.8体積%を含有しており、「定着」される「金属ナノ粒子」の層中においても、銀の体積比率44.3体積%に対して、被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)が体積比率5.7体積%で含有されていると見積もられる。
【0261】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層は、プライマーと乾燥粉末状の銀ナノ粒子から形成されている。従って、「定着」される「金属ナノ粒子」の層中では、乾燥粉末状の銀ナノ粒子に由来する、銀の体積比率44.3体積%、被覆剤分子(ジブチルアミノプロピルアミン)の体積比率5.7体積%を除いた、50.0体積%をプライマーが占めていると見積もられる。なお、プライマーの塗布膜厚さTprimer-printingと「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Tprimer-printing/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(33/58)≒0.57/1である。
【0262】
プライマー層を介して、ポリイミド基板表面に定着されている銀ナノ粒子パターンに対して、200℃、20分、加熱処理を施すことにより、銀ナノ粒子を焼成して、基板上に銀膜パターンを形成させた。形成された銀膜における平均層厚Wmetal-layerは、31μmであった。かかる銀の導電体層の体積固有抵抗率は、3.9μΩ・cmであった。なお、金属銀の抵抗率は、1.587μΩ・cmである。比(銀の導電体層の体積固有抵抗率/金属銀の抵抗率)は、2.46倍である。
【0263】
なお、形成された銀膜における平均層厚Wmetal-layerと、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerとの比(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)は、(Wmetal-layer/Wmetal-nano-particle-fixed-layer)=(31μm/58μm)≒0.534である。
【0264】
「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthは、プライマーの塗布膜の最小線幅Wprimer-printing-minimumと実質的に同じであり、Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、「定着」される「金属ナノ粒子」の層の最小線幅Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidthと、平均厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの比(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)は、(Wmetal-nano-particle-fixed-layer:Wmetal-nano-particle-spread-layer-minimum-linewidth)=(58μm:100μm)≒1:1.72である。また、形成された銀膜における、最小線幅Wminimum-linewidthも、Wminimum-linewidth≒100μmとなっている。従って、形成された銀膜における、最小線幅Wminimum-linewidthと、平均厚さWmetal-layerの比(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)は、(Wmetal-layer/Wminimum-linewidth)=(31μm:100μm)≒1:3.26である。
【0265】
形成された平均厚さWmetal-layerが31μmの銀膜全体の見かけの体積(空隙部を含む)に対する、該銀膜中に含有される、銀の体積比率Vmetal-metal-layerは、77体積%である。
【0266】
なお、比(58μm×44.3体積%):31μm≒1:1.207であり、また、比(58μm×44.3体積%):(31μm×77体積%)≒1:0.929である。
【産業上の利用可能性】
【0267】
本発明にかかる導電性金属膜の形成方法は、基板上に導電性回路パターンを作製する際、好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に導電性金属膜を形成する方法であって、
基板上に目的とする回路パターンの形状にプライマーを塗布し、所定厚さTprimer-printingのプライマー塗布膜を予め形成し;
基板上に乾燥粉末状の金属ナノ粒子を所定の散布厚さWmetal-nano-particle-spread-layerで散布し;
プライマー塗布膜を介して、散布された乾燥粉末状の金属ナノ粒子が選択的に定着され、定着されていない乾燥粉末状の金属ナノ粒子を除去することにより、目的とする回路パターンの形状に、所定厚さWmetal-nano-particle-fixed-layerの金属ナノ粒子定着膜を形成し;
金属ナノ粒子定着膜に対して、所定の加熱温度Theatingで、所定の加熱時間theat-treatment、加熱処理を施すことにより、該金属ナノ粒子定着膜中に含有される金属ナノ粒子から、平均層厚Wmetal-layerの導電性金属膜を形成する
ことを特徴とする、導電性金属膜の形成方法。
【請求項2】
前記乾燥粉末状の金属ナノ粒子中に含有される金属ナノ粒子の平均粒子径dmetal-nano-particleは、1〜100nmの範囲に選択されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項3】
前記乾燥粉末状の金属ナノ粒子中に含有される金属ナノ粒子は、
金、銀、銅、白金、パラジウム、スズ、ニッケル、アルミニウム、ジルコニウム、マンガン、チタン、鉄、コバルト、ビスマスからなる金属種の群から選択される一種の金属からなる金属ナノ粒子、または、前記金属種の群から選択される二種以上の金属からなる金属ナノ粒子混合物、ならびに、前記金属種の群から選択される二種以上の金属からなる合金金属ナノ粒子からなる群から選択される
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項4】
前記乾燥粉末状の金属ナノ粒子中に含有される金属ナノ粒子は、
該金属ナノ粒子の表面に、平均厚さtcoating-molecule-layerの被覆剤分子層が形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項5】
前記被覆剤分子層の平均厚さtcoating-molecule-layerは、0.1〜5nmの範囲に選択されている
ことを特徴とする、請求項4に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項6】
前記被覆剤分子層を構成する被覆剤分子は、
金属ナノ粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物、あるいは、金属ナノ粒子に含まれる金属と金属塩を形成可能なカルボン酸である
ことを特徴とする、請求項4または5に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項7】
前記乾燥粉末状の金属ナノ粒子の平均粒径ddry-powderは、0.1μm〜100μmの範囲に選択されている
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項8】
前記プライマーは、溶媒中に、有機高分子化合物、高沸点の溶媒、または、有機酸塩を配合してなる組成物である
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項9】
前記プライマーは、高沸点の溶媒である
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項10】
前記プライマーは、高沸点のアルコールである
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項11】
前記基板の材質は、
ガラス、セラミック、銅張り積層板、融点350℃以上の金属、ポリイミド、ポリカーボネート、PET、ポリスチレン、ポリエステル、紙からなる群から選択される材質である
ことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項12】
前記加熱温度Theatingは、100℃〜300℃の範囲に選択され;
前記加熱時間theat-treatmentは、5分間〜120分間の範囲に選択される
ことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の導電性金属膜の形成方法。
【請求項13】
前記加熱処理は、還元性雰囲気下で実施される
ことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の導電性金属膜の形成方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−55193(P2013−55193A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191711(P2011−191711)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000233860)ハリマ化成グループ株式会社 (167)
【Fターム(参考)】