説明

導電性高分子溶液およびその製造方法

【課題】有機溶剤の選択幅が広く、π共役系導電性高分子およびポリアニオンを含む複合体を有機溶剤中に簡便に溶解させることができ、得られる導電性高分子溶液の水分量を少なくできる導電性高分子溶液の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の導電性高分子溶液の製造方法は、π共役系導電性高分子およびポリアニオンからなる複合体を含む導電性高分子水溶液を凍結乾燥して複合体固形物を得る凍結乾燥工程と、前記複合体固形物に水分量4質量%以下の有機溶剤およびアミン化合物を添加し、分散処理する分散工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含有する非水系の導電性高分子溶液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性の塗膜を形成するための塗料として、ポリチオフェン等のπ共役系導電性高分子を水に溶解させた導電性高分子水溶液を使用することがある。
特許文献1には、導電性高分子水溶液の製造方法として、ポリスチレンスルホン酸の存在下、酸化剤を用いて、3,4−ジアルコキシチオフェンを化学酸化重合してポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)水溶液を得る方法が提案されている。
ところで、上記のような導電性高分子水溶液では、塗布により導電性塗膜を形成する際に乾燥時間が長くなるため、導電性塗膜の生産性が低くなるという問題を有していた。
乾燥時間を短くするためには、導電性高分子水溶液の溶媒である水を有機溶剤に置換した導電性高分子溶液を用いればよい。
導電性高分子溶液の製造方法としては、特許文献2に、導電性高分子水溶液に有機溶剤を添加し、エバポレータによって水を揮発させて除去する方法が開示されている。
また、特許文献3には、導電性高分子水溶液に相間移動触媒を添加して、π共役系導電性高分子と可溶化高分子と相間移動触媒とを含む混合物を沈殿させ、この混合物に有機溶剤を添加する方法が開示されている。
特許文献4には、導電性高分子水溶液にアミン化合物を添加した後に、限外ろ過により導電性高分子水溶液を濃縮し、有機溶剤を添加する方法が開示されている。
特許文献5には、導電性高分子溶液を噴霧乾燥し、得られた固形物に有機溶剤とアミン化合物とノニオン界面活性剤を添加する方法、導電性高分子水溶液に沈殿剤および有機溶剤を添加し、水を除去した後に、アミン化合物およびノニオン界面活性剤を添加する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2636968号公報
【特許文献2】特表2004−532292号公報
【特許文献3】特開2006−249303号公報
【特許文献4】特開2008−115215号公報
【特許文献5】特開2008−45116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、有機溶剤としては、沸点が水よりも大幅に高く、水と混合し得るものを使用しなければならず、有機溶剤の選択の幅が狭いという問題を有していた。
特許文献3に記載の方法では、抽出作業が必要になるため、工程が煩雑になる傾向にあった。
特許文献4に記載の方法では、π共役系導電性高分子およびポリアニオンを含む複合体を有機溶剤中に均一に含有させることが困難であった。また、ろ過を繰り返すと、限外ろ過膜の閉塞が生じるため、定期的に限外ろ過膜のメンテナンス作業を必要とした。そのため、作業が煩雑になりがちであった。
特許文献5に記載の噴霧乾燥する方法では、噴霧条件または乾燥条件によっては有機溶剤への再溶解が困難になることがあった。また、沈殿剤により沈殿させる方法では、水分が多く残るため、導電性高分子溶液中に残留する水分量が多く、バインダ樹脂が混ざりにくかった。
そこで、本発明は、有機溶剤の選択幅が広く、π共役系導電性高分子およびポリアニオンを含む複合体を有機溶剤中に簡便に溶解させることができ、得られる導電性高分子溶液の水分量を少なくできる導電性高分子溶液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1] π共役系導電性高分子およびポリアニオンからなる複合体を含む導電性高分子水溶液を凍結乾燥して複合体固形物を得る凍結乾燥工程と、
前記複合体固形物に水分量4質量%以下の有機溶剤およびアミン化合物を添加し、分散処理する分散工程とを有することを特徴とする導電性高分子溶液の製造方法。
[2]水100gに対する溶解量が1g以下のバインダ樹脂を混合することを特徴とする[1]に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
[3]前記凍結乾燥工程では、複合体固形物の水分量を3〜50質量%にすることを特徴とする[1]または[2]に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
[4]前記凍結乾燥工程では、複合体固形物の比表面積を5〜200m/gにすることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の導電性高分子溶液の製造方法。
[5]分散工程では、複合体のキュムラント平均粒子径が2000nm以下になるように分散処理することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の導電性高分子溶液の製造方法。
[6] 導電性高分子水溶液が、下記(a)〜(h)の化合物から選ばれる1種以上の導電性向上剤を含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の導電性高分子溶液の製造方法。
(a)窒素含有芳香族性環式化合物
(b)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
(c)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
(d)1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物
(e)アミド基を有する化合物
(f)イミド基を有する化合物
(g)ラクタム化合物
(h)グリシジル基を有する化合物
【発明の効果】
【0006】
本発明の導電性高分子溶液の製造方法では、有機溶剤の選択幅が広く、π共役系導電性高分子およびポリアニオンを含む複合体を有機溶剤中に簡便に溶解させることができ、得られる導電性高分子溶液の水分量を少なくできる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<導電性高分子溶液の製造方法>
本発明の導電性高分子溶液の製造方法は、導電性高分子水溶液から導電性高分子の有機溶剤溶液を得る方法であって、凍結乾燥工程と分散工程とを有して、π共役系導電性高分子とポリアニオンとアミン化合物と有機溶剤とを含有する導電性高分子溶液を得る方法である。
【0008】
(導電性高分子水溶液)
本発明の製造方法で使用する導電性高分子水溶液は、π共役系導電性高分子およびポリアニオンからなる複合体と水とを含有する。
【0009】
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類およびポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性、バインダへの相溶性を得ることができるが、導電性およびバインダへの分散性または溶解性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0010】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0011】
中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種または2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
【0012】
[ポリアニオン]
ポリアニオンとしては、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルであって、アニオン基を有する構成単位のみからなるポリマー、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるポリマーが挙げられる。
【0013】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和二重結合(ビニル基)が1個含まれる構成単位からなる高分子である。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドを例示できる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等を例示できる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を例示できる。
【0014】
上記ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。有機溶剤への溶解性、耐熱性および樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
【0015】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。
ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接または他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。ヒドロキシ基は、これらの官能基の末端または中に置換されている。
アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接または他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。アミノ基は、これらの官能基の末端または中に置換されている。
フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接または他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。フェノール基は、これらの官能基の末端または中に置換されている。
【0016】
置換基を有するポリアルキレンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等を例示できる。
ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる一種以上の構成単位を含む重合体を例示できる。
【0017】
ポリアニオンのアニオン基としては、−O−SO、−SO、−COO(各式においてXは水素イオン、アルカリ金属イオンを表す。)が挙げられる。
すなわち、ポリアニオンは、スルホ基および/またはカルボキシ基を含有する高分子酸である。これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング効果の点から、−SO、−COOが好ましい。
また、このアニオン基は、隣接してまたは一定間隔をあけてポリアニオンの主鎖に配置されていることが好ましい。
【0018】
上記ポリアニオンの中でも、溶媒溶解性および導電性の点から、ポリイソプレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホメタクリル酸エチル、ポリスルホメタクリル酸エチルを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体等が好ましい。
【0019】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性および導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0020】
ポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性および溶解性が低くなり、均一な分散液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0021】
ポリアニオンは、π共役系導電性高分子に配位している。そのため、π共役系導電性高分子とポリアニオンとは複合体を形成している。
π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量は、全固形分を100質量%とした際の0.05〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜4.0質量%であることがより好ましい。π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量が0.05質量%未満であると、充分な導電性が得られないことがあり、5.0質量%を超えると、均一な導電性塗膜が得られないことがある。
【0022】
[導電性向上剤]
導電性高分子水溶液には、得られる導電性塗膜の導電性を向上させる下記(a)〜(h)の化合物から選ばれる1種以上の導電性向上剤が含まれていることが好ましい。
(a)窒素含有芳香族性環式化合物
(b)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
(c)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
(d)1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物
(e)アミド基を有する化合物
(f)イミド基を有する化合物
(g)ラクタム化合物
(h)グリシジル基を有する化合物
【0023】
(a)窒素含有芳香族性環式化合物
窒素含有芳香族性環式化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
【0024】
ピリジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、N−ビニルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、4−ピリジンメタノール、2,6−ジヒドロキシピリジン、2,6−ピリジンジメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0025】
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール(N−ヒドロキシエチルイミダゾール)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0026】
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0027】
ピラジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0028】
トリアジン類及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0029】
窒素含有芳香族性環式化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1〜100モルの範囲であることが好ましく、0.5〜30モルの範囲であることがより好ましく、導電性の観点からは、1〜10モルの範囲が特に好ましい。窒素含有芳香族性環式化合物の含有率が0.1モルより少なくなると、窒素含有芳香族性環式化合物とポリアニオン及び共役系導電性高分子との相互作用が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。また、窒素含有芳香族性環式化合物が100モルを超えて含まれると共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0030】
(b)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、チオジエタノール、グルコース、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類;
セルロース、多糖、糖アルコール等の高分子アルコール;
1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)等の芳香族化合物、ヒドロキノンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0031】
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05〜50モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して50モルより多くなると、得られる導電性塗膜中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0032】
(c)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
2個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マロン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸類化合物;
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の、芳香族性環に少なくとも一つ以上のカルボキシ基が結合している芳香族カルボン酸類化合物;ジグリコール酸、オキシ二酪酸、チオ二酢酸(チオジ酢酸)、チオ二酪酸、イミノ二酢酸、イミノ酪酸等が挙げられる。
【0033】
2個以上のカルボキシ基を有する化合物は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1〜30モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また2個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して30モルより多くなると、導電性塗膜中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0034】
(d)1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物
1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、酒石酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
【0035】
1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量は、ポリアニオンとπ共役系導電性高分子の合計100質量部に対して1〜5,000質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が1質量部より少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が5,000質量部より多くなると、導電性塗膜中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得ることが難しい。
【0036】
(e)アミド化合物
アミド基を有する化合物は、−CO−NH−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する単分子化合物である。すなわち、アミド化合物としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素及び尿素誘導体などが挙げられる。
アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、ピルボアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0037】
また、アミド化合物として、アクリルアミドを使用することもできる。アクリルアミドとしては、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0038】
アミド化合物の分子量は46〜10,000であることが好ましく、46〜5,000であることがより好ましく、46〜1,000であることが特に好ましい。
【0039】
アミド化合物の含有量は、ポリアニオンとπ共役系導電性高分子の合計100質量部に対して1〜5,000質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。アミド化合物の含有量が1質量部より少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、アミド化合物の含有量が5,000質量部より多くなると、導電性塗膜中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得ることが難しい。
【0040】
(f)イミド化合物
アミド化合物としては、導電性がより高くなることから、イミド結合を有する単分子化合物(以下、イミド化合物という。)が好ましい。イミド化合物としては、その骨格より、フタルイミド及びフタルイミド誘導体、スクシンイミド及びスクシンイミド誘導体、ベンズイミド及びベンズイミド誘導体、マレイミド及びマレイミド誘導体、ナフタルイミド及びナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
【0041】
また、イミド化合物は両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等に分類されるが、溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。
さらに、脂肪族イミド化合物は、分子内の炭素間に不飽和結合を有する飽和脂肪族イミド化合物と、分子内の炭素間に不飽和結合を有する不飽和脂肪族イミド化合物とに分類される。
飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの両方が飽和炭化水素である化合物である。具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミドなどが挙げられる。
不飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの一方又は両方が1つ以上の不飽和結合である化合物である。具体例は、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
【0042】
イミド化合物の分子量は60〜5,000であることが好ましく、70〜1,000であることがより好ましく、80〜500であることが特に好ましい。
【0043】
イミド化合物の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量部に対して10〜10,000質量部であることが好ましく、50〜5,000質量部であることがより好ましい。アミド化合物及びイミド化合物の添加量が前記下限値未満であると、アミド化合物及びイミド化合物添加による効果が低くなるため好ましくない。また、前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下が起こるため好ましくない。
【0044】
(g)ラクタム化合物
ラクタム化合物とは、アミノカルボン酸の分子内環状アミドであり、環の一部が−CO−NR−(Rは水素又は任意の置換基)である化合物である。ただし、環の一個以上の炭素原子が不飽和やヘテロ原子に置き換わっていてもよい。
ラクタム化合物としては、例えば、ペンタノ−4−ラクタム、4−ペンタンラクタム−5−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリジノン、ヘキサノ−6−ラクタム、6−ヘキサンラクタム等が挙げられる。
【0045】
ラクタム化合物の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量部に対して10〜10000質量部であることが好ましく、50〜5000質量部であることがより好ましい。ラクタム化合物の添加量が前記下限値未満であると、ラクタム化合物添加による効果が低くなるため好ましくない。また、前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下が起こるため好ましくない。
【0046】
(h)グリシジル基を有する化合物
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル等のグリシジル化合物などが挙げられる。
【0047】
グリシジル基を有する化合物の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量部に対して10〜10000質量部であることが好ましく、50〜5000質量部であることがより好ましい。グリシジル基を有する化合物の添加量が前記下限値未満であると、グリシジル基を有する化合物添加による効果が低くなるため好ましくない。また、前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下が起こるため好ましくない。
【0048】
[導電性高分子水溶液の調製方法]
導電性高分子水溶液は、例えば、以下の方法により調製される。
すなわち、まず、ポリアニオンを水に分散または溶解させ、これにより得た溶液に、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを添加してモノマー分散液を得る。次いで、モノマー分散液に酸化剤を添加して前駆体モノマーを重合させ、その後、余剰の酸化剤や未反応モノマーを除去し、精製し、必要に応じて、導電性向上剤を添加して、導電性高分子水溶液を得る。
【0049】
(凍結乾燥工程)
凍結乾燥工程では、導電性高分子水溶液を凍結乾燥して複合体固形物を得る。凍結乾燥では、水分を凍結させ、真空乾燥する。このような乾燥方法によれば、得られる固形物が多孔質になりやすい上に、収縮が起こりにくい。
凍結乾燥に際しては公知の凍結乾燥機を用いればよい。
【0050】
また、凍結乾燥工程では、複合体固形物の水分量を3〜50質量%にすることが好ましく、5〜40質量%にすることがより好ましい。複合体固形物の水分量を3質量%以上にすれば、ポリアニオンの分極が起こりにくく、アミン化合物を容易に配位させることができ、50質量%以下であれば、導電性高分子溶液の水分量をより少なくでき、バインダ樹脂をより混合しやすくなる。
水分量を上記の範囲にするためには、例えば、凍結乾燥時間、凍結乾燥温度、真空度等を調整すればよい。例えば、凍結乾燥時間を短くする程、凍結乾燥温度を低くする程、真空度を高くする程、水分量が多くなる。
【0051】
また、凍結乾燥工程では、複合体固形物のBET比表面積を5〜200m/gにすることが好ましく、10〜100m/gにすることがより好ましい。複合体固形物のBET比表面積を5m/g以上にすれば、分散工程にてアミン化合物が複合体に配位しやすく、有機溶剤に対する分散性がより高くなり、200m/g以下であれば、複合体固形物の水分量を容易に少なくできる。
BET比表面積を上記の範囲にするためには、例えば、凍結乾燥時間、凍結乾燥温度、真空度等を調整すればよい。例えば、凍結乾燥時間を短くする程、BET比表面積が大きくなる。
【0052】
[分散工程]
分散工程では、上記複合体固形物に有機溶剤およびアミン化合物を添加して複合体溶液を調製し、該複合体溶液を分散処理する。
有機溶剤を添加する際には、有機溶剤およびアミン化合物の一方を先に添加してもよいし、両方を同時に添加してもよい。
【0053】
有機溶剤としては、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼンなどの芳香族系溶媒、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アリルアルコールなどのアルコール系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられるが、上記に限定されるものではない。これら有機溶剤は単独で使用してもよいし、混合しても使用してもよい。
【0054】
有機溶剤は水分量が4質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下のものである。有機溶剤の水分量が4質量%を超えると、得られる導電性高分子溶液の残存水分量が多くなる。
【0055】
有機溶剤の添加量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの固形分濃度が好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%になるように調整する。
π共役系導電性高分子とポリアニオンの固形分濃度が0.1質量%以上であれば、導電性高分子溶液から得られる導電性塗膜の導電性が高くなり、10質量%以下であれば、ゲル化が生じにくく、適度な粘度で調整が可能である。
【0056】
[アミン化合物]
分散工程で添加するアミン化合物としては、ポリアニオンのアニオン基に配位あるいは結合するものであれば限定されない。ここで、配位あるいは結合とは、ポリアニオンとアミン化合物とが電子を互いに供与/受容することにより、それらの分子間距離が短くなる結合形態のことである。
アミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、芳香族アミン等が挙げられる。
1級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、モノヘキシルアミン、モノヘプチルアミン、モノオクチルアミン、モノデシルアミン、モノウンデシルアミン、モノドデシルアミン、モノステアリルアミン等が挙げられる。
2級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン等が挙げられる。
3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリパーフルオロプロピルアミン、トリパーフルオロブチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、イミダゾール、N−メチル−イミダゾール、N−エチル−イミダゾール、N−プロピル−イミダゾール、N−ブチル−イミダゾール、N−ペンチル−イミダゾール、N−ヘキシル−イミダゾール、N−ヘプチル−イミダゾール、N−オクチル−イミダゾール、N−デシル−イミダゾール、N−ウンデシル−イミダゾール、N−ドデシル−イミダゾール、2−ヘプチル−イミダゾール、ピリジン等が挙げられる。
上記のうちでも、π共役系導電性高分子の導電性への影響(アルカリ性による脱ドープ)が小さいことから、3級アミンが好ましい。
アミン化合物の分子量は、有機溶剤への溶解性を考慮すると、50〜2000であることが好ましい。
【0057】
アミン化合物の量は、ポリアニオンに対して0.1〜10モル当量であることが好ましく、0.5〜2.0モル当量であることがより好ましく、0.85〜1.25モル当量であることが特に好ましい。
アミン化合物の量が前記下限値以上であれば、アミン化合物がポリアニオンのアニオン基のほぼ全部に配位するため、π共役系導電性高分子の有機溶剤への溶解性がより高くなる。また、前記上限値以下であれば、余剰なアミン化合物が導電性高分子溶液中に含まれないから、得られる導電性塗膜の導電性や機械的物性の低下を防止できる。
【0058】
分散工程での添加・分散では、高い剪断力を付与できる混合分散機を用いることが好ましい。混合分散機としては、例えば、ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ、ビーズミル等が挙げられ、中でも、高圧ホモジナイザが好ましい。
高圧ホモジナイザの具体例としては、吉田機械興業製の商品名ナノマイザー、マイクロフルイディスク製の商品名マイクロフルイダイザー、スギノマシン製のアルティマイザーなどが挙げられる。
高圧ホモジナイザを用いた分散処理としては、例えば、分散処理を施す前の複合体溶液を高圧で対向衝突させる処理、オリフィスやスリットに高圧で通す処理等が挙げられる。
【0059】
混合分散機により分散処理を施すと、原理上、処理により得られる導電性高分子溶液の温度が高くなる。そのため、分散処理前の複合体溶液の温度を−20〜60℃にすることが好ましく、−10〜40℃にすることがより好ましく、−5〜30℃にすることが特に好ましい。複合体溶液の温度を−20以上にすれば、凍結を防止でき、60℃以下にすれば、π共役系導電性高分子またはポリアニオンの変質を防止できる。
また、分散処理後の導電性高分子溶液を、例えば、冷媒温度−30〜20℃の熱交換器に通して冷却しても構わない。
【0060】
分散工程では、複合体のキュムラント平均粒子径が好ましくは2000nm以下、より好ましくは500nm以下、特に好ましくは200nm以下になるように分散処理する。
複合体のキュムラント平均粒子径が2000nm以下になるように分散処理すれば、得られる導電性高分子溶液の安定性が高くなり、複合体の沈殿を防止できる。
キュムラント平均粒子径は、動的光散乱法による粒径分布の測定から求められる。
キュムラント平均粒子径は、分散工程での混合条件(例えば、圧力等)により調整される。具体的には、圧力が高い程、平均粒子径は小さくなる。
【0061】
[バインダ樹脂]
分散処理後、水100gに対する溶解量が1g以下のバインダ樹脂を混合することができる。
バインダ樹脂としては、帯電防止塗料と相溶又は混合分散可能であれば熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド;ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;エポキシ樹脂;オキセタン樹脂;キシレン樹脂;アラミド樹脂;ポリイミドシリコーン;ポリウレタン;ポリウレア;メラミン樹脂;フェノール樹脂;ポリエーテル;アクリル樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
また、バインダ樹脂には、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶媒、粘度調整剤等を加えて使用することができる。
【0062】
バインダ樹脂の中でも、容易に混合できることから、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーンのいずれか1種以上が好ましい。また、アクリル樹脂は、硬度が硬いとともに透明性に優れるため、光学フィルタのような用途には適している。
【0063】
また、バインダ樹脂は、熱エネルギー及び/又は光エネルギーによって硬化する液状重合体を含むことが好ましい。
ここで、熱エネルギーにより硬化する液状重合体としては、反応型重合体及び自己架橋型重合体が挙げられる。
反応型重合体は、置換基を有する単量体が重合した重合体であり、置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物、オキセタン系、グリシジル基、アミノ基などが挙げられる。具体的な単量体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多官能アルコール、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、ピメリン酸、アスコルビン酸、フタル酸、アセチルサルチル酸、アジピン酸、イソフタル酸、安息香酸、m−トルイル酸等のカルボン酸化合物、無水マレイン酸、無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸、ジクロル無水マレイン酸、テトラクロル無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピメリット酸等の酸無水物、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、アジドメチルメチルオキセタン等のオキセタン化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−p−アミノフェノールグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(すなわち、2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン)等のグリシジルエーテル化合物、N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N,N−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N−ジグリシジル−5,5−ジアルキルヒダントイン等のグリシジルアミン化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、DHP30−トリ(2−エチルヘクソエート)、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素、モノエチルアミン、メタンジアミン、キシレンジアミン、エチルメチルイミダゾール等のアミン化合物、1分子中に2個以上のオキシラン環を含む化合物のうち、ビスフェノールAのエピクロロヒドリンによるグリシジル化合物、あるいはその類似物が挙げられる。
【0064】
反応型重合体においては、少なくとも2官能以上の架橋剤を使用する。その架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物としては、塩基性金属化合物のAl(OH)、Al(OOC・CH(OOCH)、Al(OOC・CH、ZrO(OCH)、Mg(OOC・CH、Ca(OH)、Ba(OH)等を適宜使用できる。
【0065】
自己架橋型重合体は、加熱により官能基同士で自己架橋するものであり、例えば、グリシジル基とカルボキシ基を含むもの、あるいは、N−メチロールとカルボキシ基の両方を含むものなどが挙げられる。
【0066】
光エネルギーによって硬化する液状重合体としては、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドシリコーン等のオリゴマー又はプレポリマーが挙げられる。
光エネルギーによって硬化する液状重合体を構成する単量体単位としては、例えば、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート類、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アルキルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート類、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーデル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリル(メタクリル)アミド類、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類、酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類の単官能モノマー並びに多官能モノマーが挙げられる。
【0067】
光エネルギーによって硬化する液状重合体は、光重合開始剤によって硬化する。その光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などが挙げられる。さらに、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合できる。
また、カチオン重合開始剤としては、アリールジアゾニウム塩類、ジアリールハロニウム塩類、トリフェニルスルホニウム塩類、シラノール/アルミニウムキレート、α−スルホニルオキシケトン類等が挙げられる。
【0068】
本発明の導電性高分子溶液の製造方法では、導電性高分子水溶液から凍結乾燥により得た複合体固形物に有機溶剤を添加する。凍結乾燥した複合体固形物は多孔質であるため、有機溶剤が浸透しやすい。また、複合体固形物にアミン化合物を添加することにより、有機溶剤への溶解性を向上させることができる。
したがって、本発明の導電性高分子溶液の製造方法では、有機溶剤の選択幅が広く、π共役系導電性高分子およびポリアニオンを含む複合体を有機溶剤中に簡便に溶解させることができる。
また、本発明の導電性高分子溶液の製造方法によれば、得られる導電性高分子溶液の水分量を少なくできる。
【0069】
<導電性高分子溶液の使用方法>
導電性高分子溶液は、基材に塗布することにより使用される。ここで、基材としては、例えば、樹脂フィルム、ガラス板などが用いられるが、透明性及び可撓性が高いことから、樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらの樹脂材料の中でも、強度等の点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
塗布方法としては、例えば、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、マイクログラビアコーティング等が適用される
【0070】
熱硬化性または光硬化性のバインダ樹脂を含有する場合には、導電性高分子溶液塗布後に硬化処理を施すことが好ましい。
硬化方法としては、加熱または光照射が適用される。加熱方法としては、例えば、熱風加熱や赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。また、光照射により硬化する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外線を照射する方法を採用できる。
【実施例】
【0071】
以下の例において、比表面積は、窒素吸着によって測定したBET比表面積である。水分量は、カールフィッシャー法により測定した値である。キュムラント平均粒子径は、大塚電子製FPR1000を用いて測定した値である。表面抵抗は、三菱化学社製ハイレスタを用いて測定した値である。全光線光透過率およびヘイズは、日本電色工業社製ヘイズメータ測定器(NDH5000)を用い、JIS K7136に準じて測定した値である。
【0072】
(製造例1)
14.2g(0.1mol)の3,4−エチレンジオキシチオフェンと、2000mlのイオン交換水に27.5g(0.15mol)のポリスチレンスルホン酸(質量平均分子量:約150,000)を溶かした溶液とを20℃で混合して、モノマー分散液を得た。
これにより得られたモノマー分散液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムと8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とを添加し、12時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を透析し、未反応モノマー、酸化剤、酸化触媒を除去して、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水溶液(以下、PEDOT−PSS水溶液という。)を得た。
【0073】
(製造例2)
6.7g(0.1mol)のピロールと、2000mlのイオン交換水に18.3g(0.1mol)のポリスチレンスルホン酸(質量平均分子量:約400,000)を溶かした溶液とを20℃で混合して、モノマー分散液を得た。
これにより得られたモノマー分散液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムと8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とを添加し、12時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を透析し、未反応モノマー、酸化剤、酸化触媒を除去して、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリピロール水溶液を得た。
【0074】
(製造例3)
9.3g(0.1mol)のアニリンと、2000mlのイオン交換水に27.5gのポリスチレンスルホン酸(質量平均分子量:約150,000)を溶かした溶液とを20℃で混合して、モノマー分散液を得た。
これにより得られたモノマー分散液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムと8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とを添加し、12時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を透析し、未反応モノマー、酸化剤、酸化触媒を除去して、約1.5質量%の緑色のポリスチレンスルホン酸ドープポリアニリン水溶液を得た。
【0075】
(製造例4)
製造例1で得たPEDOT−PSS水溶液を、凍結乾燥機(東京理化製、商品名:FDU1200)により、6時間凍結乾燥させて、複合体固形物を得た。得られた複合体固形物の比表面積は22.5m/g、水分量は10.2質量%であった。
【0076】
(製造例5)
製造例1で得たPEDOT−PSS水溶液を、凍結乾燥機により、10時間凍結乾燥させて、複合体固形物を得た。得られた複合体固形物の比表面積は15.5m/g、水分量は5.0質量%であった。
【0077】
(製造例6)
製造例2で得たポリスチレンスルホン酸ドープポリピロール水溶液を、凍結乾燥機により、24時間凍結乾燥させて、複合体固形物を得た。得られた複合体固形物の比表面積は5.8m/g、水分量は6.5質量%であった。
【0078】
(製造例7)
製造例3で得たポリスチレンスルホン酸ドープポリアニリン溶液を、凍結乾燥機により12時間乾燥し、複合体固体を得た。得られた複合体固体の比表面積は6.9m/g、水分量は15.1質量%であった。
【0079】
(実施例1)
製造例4で得た複合体固形物0.6g、トリオクチルアミン0.6g、イソプロピルアルコール(水分量0.9質量%)99gを容器に採り、スリーワンモータにより2時間攪拌した。その後、ホモジナイザを用いて回転数8000rpmで10分間攪拌し。さらに、高圧ホモジナイザ(吉田機械興業社製ナノマイザー)を用いて、圧力100MPaで分散処理して、導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液における複合体のキュムラント平均粒子径を測定したところ、456nmであった。
得られた導電性高分子溶液10gに、ペンタエリスリトールトリアクリレート3g、チオ二酢酸0.1gおよびイルガキュア127(チバ・スパシャルティ・ケミカルズ社製)0.01gを添加し、混合して均一な溶液を調製した。この溶液を#8のバーコータによりポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製ルミラーT60、全光線透過率88.5%、ヘイズ3.8%)上に塗布し、紫外線を照射して導電性塗膜を形成した。この導電性塗膜の表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムと導電性塗膜とからなる積層体の全光線透過率およびヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0080】
(実施例2)
製造例5で得た複合体固形物0.5g、トリドデシルアミン0.8g、メチルエチルケトン(水分量0.3質量%)99gを容器に採り、スリーワンモータにより2時間攪拌した。その後、ホモジナイザを用いて回転数8000rpmで10分間攪拌し。さらに、高圧ホモジナイザを用いて、圧力100MPaで分散処理して、導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液における複合体のキュムラント平均粒子径を測定したところ、583nmであった。
得られた導電性高分子溶液10gに、ペンタエリスリトールトリアクリレート3g、ヒドロキシエチルアクリルアミド0.1gおよびイルガキュア127(チバ・スパシャルティ・ケミカルズ社製)0.01gを添加し、混合して均一な溶液を調製した。この溶液を#8のバーコータによりポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製ルミラーT60、全光線透過率88.5%、ヘイズ3.8%)上に塗布し、紫外線を照射して導電性塗膜を形成した。この導電性塗膜の表面抵抗値を測定した。
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムと導電性塗膜とからなる積層体の全光線透過率およびヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0081】
(実施例3)
製造例4で得た複合体固形物0.3g、トリドデシルアミン0.5g、酢酸エチル99g(水分量0.3質量%)99gを容器に採り、スリーワンモータにより2時間攪拌した。その後、ホモジナイザを用いて回転数8000rpmで10分間攪拌し。さらに、高圧ホモジナイザを用いて、圧力150MPaで分散処理して、導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液における複合体のキュムラント平均粒子径を測定したところ、1201nmであった。
得られた導電性高分子溶液10gに、ペンタエリスリトールトリアクリレート3g、チオ二酢酸0.1gおよびイルガキュア127(チバ・スパシャルティ・ケミカルズ社製)0.01gを添加し、混合して均一な溶液を調製した。この溶液を#8のバーコータによりポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製ルミラーT60、全光線透過率88.5%、ヘイズ3.8%)上に塗布し、紫外線を照射して導電性塗膜を形成した。この導電性塗膜の表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムと導電性塗膜とからなる積層体の全光線透過率およびヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0082】
(実施例4)
製造例5で得た複合体固形物0.3g、トリドデシルアミン0.5g、トルエン(水分量0.03質量%)99gを容器に採り、スリーワンモータにより2時間攪拌した。その後、ホモジナイザを用いて回転数8000rpmで10分間攪拌し。さらに、高圧ホモジナイザを用いて、圧力150MPaで分散処理して、導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液における複合体のキュムラント平均粒子径を測定したところ、435nmであった。
得られた導電性高分子溶液10gに、ペンタエリスリトールトリアクリレート3g、チオ二酢酸0.1gおよびイルガキュア127(チバ・スパシャルティ・ケミカルズ社製)0.01gを添加し、混合して均一な溶液を調製した。この溶液を#8のバーコータによりポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製ルミラーT60、全光線透過率88.5%、ヘイズ3.8%)上に塗布し、紫外線を照射して導電性塗膜を形成した。この導電性塗膜の表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムと導電性塗膜とからなる積層体の全光線透過率およびヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0083】
(実施例5)
製造例6で得た複合体固形物0.6g、トリドデシルアミン0.8g、メチルエチルケトン(水分量0.3質量%)99gを容器に採り、スリーワンモータにより2時間攪拌した。その後、ホモジナイザを用いて回転数8000rpmで10分間攪拌し。さらに、高圧ホモジナイザを用いて、圧力120MPaで分散処理して、導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液における複合体のキュムラント平均粒子径を測定したところ、1315nmであった。
得られた導電性高分子溶液10gに、ペンタエリスリトールトリアクリレート3g、チオ二酢酸0.1gおよびイルガキュア127(チバ・スパシャルティ・ケミカルズ社製)0.01gを添加し、混合して均一な溶液を調製した。この溶液を#8のバーコータによりポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製ルミラーT60、全光線透過率88.5%、ヘイズ3.8%)上に塗布し、紫外線を照射して導電性塗膜を形成した。この導電性塗膜の表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムと導電性塗膜とからなる積層体の全光線透過率およびヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0084】
(実施例6)
製造例7で得た複合体固形物0.6g、トリ(2−エチルヘキシル)アミン0.8g、トルエン(水分量0.03質量%)99gを容器に採り、スリーワンモータにより2時間攪拌した。その後、ホモジナイザを用いて回転数8000rpmで10分間攪拌し。さらに、高圧ホモジナイザを用いて、圧力120MPaで分散処理して、導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液における複合体のキュムラント平均粒子径を測定したところ、985nmであった。
得られた導電性高分子溶液10gに、ペンタエリスリトールトリアクリレート3g、チオ二酢酸0.1gおよびイルガキュア127(チバ・スパシャルティ・ケミカルズ社製)0.01gを添加し、混合して均一な溶液を調製した。この溶液を#8のバーコータによりポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製ルミラーT60、全光線透過率88.5%、ヘイズ3.8%)上に塗布し、紫外線を照射して導電性塗膜を形成した。この導電性塗膜の表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムと導電性塗膜とからなる積層体の全光線透過率およびヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
(比較例1)
製造例4で得た複合体固体0.6g、イソプロピルアルコール(水分量0.9質量%)99gを容器に採り、スリーワンモータにより2時間攪拌した。その後、ホモジナイザを用いて回転数8000rpmで10分間攪拌したが、溶解せず、その後、続けて1時間、ホモジナイザで攪拌を続けたが、複合体固体は溶解しなかった。高圧ホモジナイザが閉塞するおそれがあったため、その後の分散処理は断念した。
【0086】
(比較例2)
製造例1で得たPEDOT−PSS水溶液を、噴霧乾燥機(ヤマト科学社製、ADL311)を用いて、噴霧圧力0.1MPa、乾燥温度180℃(入口温度)で処理して複合体固体を得た。得られた複合体固体の比表面積は56.5m/g、水分量1.2質量%であった。
この複合体固体0.3g、トリドデシルアミン0.5g、トルエン(水分量0.03質量%)99gを容器に取り、スリーワンモータにて2時間攪拌した後、ホモジナイザを用いて回転数8000rpmで10分間攪拌したが、均一に溶解せず、その後、続けて1時間、ホモジナイザで攪拌を続けたが、複合体固体は溶解しなかった。高圧ホモジナイザが閉塞するおそれがあったため、その後の分散処理は断念した。
した。その結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
凍結乾燥して得た複合体固形物に水分量4質量%以下の有機溶剤およびアミン化合物を添加して得た実施例1〜6では、導電性高分子溶液中に、π共役系導電性高分子およびポリアニオンを含む複合体を均一に含有させることができた。そのため、導電性塗膜の表面抵抗が充分に低かった。
これに対し、凍結乾燥して得た複合体固形物に有機溶剤を添加し、アミン化合物を添加しなかった比較例1では、導電性高分子溶液が得られなかった。
PEDOT−PSS水溶液を噴霧乾燥して得た複合体固形物に有機溶剤を添加した比較例2でも、導電性高分子溶液が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子およびポリアニオンからなる複合体を含む導電性高分子水溶液を凍結乾燥して複合体固形物を得る凍結乾燥工程と、
前記複合体固形物に水分量4質量%以下の有機溶剤およびアミン化合物を混合し、分散処理する分散工程とを有することを特徴とする導電性高分子溶液の製造方法。
【請求項2】
水100gに対する溶解量が1g以下のバインダ樹脂を混合することを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
【請求項3】
前記凍結乾燥工程では、複合体固形物の水分量を3〜50質量%にすることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性高分子溶液の製造方法。
【請求項4】
前記凍結乾燥工程では、複合体固形物の比表面積を5〜200m/gにすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性高分子溶液の製造方法。
【請求項5】
分散工程では、複合体のキュムラント平均粒子径が2000nm以下になるように分散処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性高分子溶液の製造方法。
【請求項6】
導電性高分子水溶液が、下記(a)〜(h)の化合物から選ばれる1種以上の導電性向上剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性高分子溶液の製造方法。
(a)窒素含有芳香族性環式化合物
(b)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
(c)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
(d)1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物
(e)アミド基を有する化合物
(f)イミド基を有する化合物
(g)ラクタム化合物
(h)グリシジル基を有する化合物

【公開番号】特開2011−32382(P2011−32382A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180581(P2009−180581)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】