説明

導電性高分子溶液及び導電性塗膜

【課題】 導電性、熱安定性、膜強度、π共役系導電性高分子の溶媒溶解性のいずれもが優れた導電性高分子溶液を提供する。また、導電性、熱安定性、膜強度のいずれもが優れた導電性塗膜を提供する。
【解決手段】 本発明の導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、ヒドロキシ基を2つ以上有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物と、ビニル基含有化合物と、溶媒とを含有する導電性高分子溶液であって、ビニル基含有化合物が、ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物、ビニル基を2つ以上有する化合物のうちのいずれか一方又は両方である。本発明の導電性塗膜は、上述した導電性高分子溶液が塗布され、前記ビニル基含有化合物のビニル基が重合されて形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子溶液及び導電性塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリンなどのπ共役系導電性高分子に電子供与性化合物や電子受容性化合物(ドーパント)を添加(ドーピング)した導電性材料が開発され、その用途は広がっている。
前記π共役系導電性高分子を含む導電性材料は、通常、膜にされて使用される。導電性材料の膜を形成する方法としては、例えば、酸化剤と塩化ビニル系共重合体とπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーとを溶剤に溶解して基材に塗布し、溶剤により酸化電位を制御しながら、前駆体モノマーを重合する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法によれば、塩化ビニル系共重合体とπ共役系導電性高分子の複合体の膜を形成できる。
また、分子量が2,000〜500,000のポリスチレンスルホン酸(ポリアニオン)の存在下で、酸化剤を用いて、3,4−ジアルコキシチオフェンを化学酸化重合してポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)溶液を製造し、その溶液を塗布する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
ところで、導電性材料の膜としては、導電性が高いだけでなく、熱安定性及び膜強度が高いものが求められている。熱安定性を高める方法としては、酸化防止剤として使用可能なスルホン化された物質と類似の構造をもつ化合物をドーパント及び熱安定剤としてモノマーに混合して重合する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−186619号公報
【特許文献2】特許第2636968号公報
【特許文献3】特許第2546617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の方法では、基材の種類によって溶剤が限定されるために、モノマーが限定され、高い導電性を有するπ共役系導電性高分子が得られない。また、絶縁性樹脂である塩化ビニル系共重合体が含まれてしまうことも、高い導電性を確保できない原因である。
特許文献2に記載の方法では、π共役系導電性高分子を容易に水分散できる反面、ポリアニオンの添加量が多いため、高い導電性が得られにくいという問題があった。
特許文献3に記載の方法では、熱安定性に優れるものの、π共役系導電性高分子の溶媒溶解性が得られにくいという問題があった。
また、特許文献1〜3の方法では、膜強度を向上させることはできなかった。
すなわち、従来、導電性、熱安定性、膜強度、π共役系導電性高分子の溶媒溶解性のいずれもが優れた導電性高分子溶液は得られていなかった。
本発明は、導電性、熱安定性、膜強度、π共役系導電性高分子の溶媒溶解性のいずれもが優れた導電性高分子溶液を提供することを目的とする。また、導電性、熱安定性、膜強度のいずれもが優れた導電性塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、ヒドロキシ基を2つ以上有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物と、ビニル基含有化合物と、溶媒とを含有する導電性高分子溶液であって、
ビニル基含有化合物が、ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物、ビニル基を2つ以上有する化合物のうちのいずれか一方又は両方であることを特徴とする。
本発明の導電性塗膜は、上述した導電性高分子溶液が塗布され、前記ビニル基含有化合物のビニル基が重合されて形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の導電性高分子溶液は、導電性、熱安定性、膜強度、π共役系導電性高分子の溶媒溶解性のいずれもが優れている。
また、本発明の導電性塗膜は、導電性、熱安定性、膜強度のいずれもが優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<導電性高分子溶液>
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0008】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0009】
中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
また、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)のようなアルキル置換化合物は溶媒溶解性や、疎水性樹脂を添加した場合の相溶性及び分散性がより向上することからより好ましい。また、アルキル置換化合物のアルキル基の中では、導電性の低下を防ぐことから、メチル基が好ましい。
【0010】
上記π共役系導電性高分子は、溶媒中、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と後述のアニオン基を有する高分子の存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、N−メチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0011】
π共役系導電性高分子の製造で使用する溶媒としては特に制限されず、前記前駆体モノマーを溶解又は分散しうる溶媒であり、酸化剤の酸化力を維持させることができるものであればよい。例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0012】
酸化剤としては、前記前駆体モノマーを酸化させてπ共役系導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0013】
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0014】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0015】
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
【0016】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアニン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0017】
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシ基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶媒への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。
上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基が好ましい。
【0018】
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
前記ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシ基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシ基がより好ましい。
前記アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアミノ基又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。アミノ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したフェノール基又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。フェノール基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基が挙げられる。
シアノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0019】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0020】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、π共役系導電性高分子の熱分解を緩和することができる。
【0021】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0022】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0023】
アニオン基含有重合性モノマーは、モノマーの一部が一置換硫酸エステル基、カルボキシ基、スルホ基等で置換されたものであり、例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のメタクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族スルホン酸化合物が挙げられる。
具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CHCH-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CHCHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C64-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C108-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C64-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C108-SO3H)及びその塩類、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
【0024】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸i−オクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
これらアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合することで溶媒溶解性をコントロールすることができる。
【0025】
ポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、π共役系導電性高分子の含有割合が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0026】
上記π共役系導電性高分子とポリアニオンとは化学的結合により複合体を形成することが多い。その複合体の中でも、ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)は、熱安定性が高く、重合度が低いために塗膜形成後の透明性を高くしやすい点で好ましい。
【0027】
(ヒドロキシ基含有芳香族性化合物)
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物は、芳香族環に、ヒドロキシ基が2個以上置換されているものである。例えば、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
【0028】
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の中でも、導電性の点からは、π共役系導電性高分子にドーピングしうる、アニオン基であるスルホ基及び/又はカルボキシ基を有する化合物が好ましい。また、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、スルホ基及び/又はカルボキシ基を有するものであれば、そのスルホ基及び/又はカルボキシ基に、ビニル基含有化合物のうちのビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物を反応させて固定化することができる。その結果、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の効果を確実に発揮させることができる。
【0029】
ヒドロキシ基置換芳香族性化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05〜10モルの範囲であることが好ましく、0.3〜5モルの範囲であることがより好ましい。ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して10モルより多くなると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0030】
(ビニル基含有化合物)
本発明におけるビニル基含有化合物は、ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物、ビニル基を2つ以上有する化合物のうちのいずれか一方又両方である。
【0031】
ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物としては、例えば、アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基のうちの少なくとも1種以上と、グリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物が挙げられる。
さらに具体的には、アクリル(メタクリル)基とグリシジル基とを有する化合物として、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
アリル基とグリシジル基とを有する化合物として、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、アリルフェノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシ基とを有する化合物として、1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
アリル基とグリシジル基とヒドロキシ基とを有する化合物として、3−アリル−1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
ビニルエーテル基とヒドロキシ基とを有する化合物として、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
アクリル(メタクリル)基とヒドロキシ基とを有する化合物として、2−ヒドロキシエチルアクリレート(メタクリレート)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(メタクリレート)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(メタクリレート)、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、ジペンタエリストリトールモノヒドロキシペンタアクリレート等が挙げられる。
アクリルアミド(メタクリルアミド)基とヒドロキシ基とを有する化合物として、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドが挙げられる。
ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物の中でも、溶剤溶解性の点からは、ビニル基含有化合物のうちアクリルアミド(メタクリルアミド)基とヒドロキシ基とを有する化合物がより好ましい。アクリルアミド(メタクリルアミド)基とヒドロキシ基とを有する化合物のアミド基とヒドロキシ基が、π共役系導電性高分子とポリアニオンの残存アニオン基およびヒドロキシ基含有芳香族性化合物のスルホ基及び/又はカルボキシ基によって溶媒和するため、アニオン基の極性を下げることができ、溶剤溶解性を向上させることができる。
【0032】
ビニル基を2つ以上有する化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマー、アリル系モノマー、ジアリルエステル系モノマー、ビニルエステル系モノマー、スチレン系モノマーなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ドデカプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等のポリオールなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド系化合物としては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミドのほか、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ペンタメチレンジアミン、ビス(2−アミノプロピル)アミン、ジエチレントリアミンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミン安息香酸などから誘導されるポリ(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
アリル系モノマーとしては、例えば、フタル酸ジアリル、マロン酸ジアリルなどが挙げられる。
ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、1,3,5−トリ−β−ビニルオキシエトキシベンゼンなどが挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、コハク酸ジビニル、アジピン酸ジビニルなどが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、p−アリルスチレンなどが挙げられる。
また、少なくとも2つの水酸基を有するポリオール化合物、やや過剰の少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する多官能ウレタン化合物が挙げられる。
これらのモノマーは光重合性を有するものであり、光重合性モノマーと呼ばれるものである。
【0033】
また、ビニル基を2つ以上有する化合物としては、オリゴマーの末端及び/又は側鎖にアクリレート、メタクリレート基を持った化合物が挙げられる。具体的には、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの脱水反応によって得られるポリエーテルアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、不飽和ポリエステル系オリゴマー類、イソシアネートとアクリル酸とから形成されるポリウレタンアクリレート類、エポキシ基を有する化合物とカルボキシ基を有する化合物との付加反応によって得られるエポキシアクリレート類、アリル基を有するオリゴマー類などが挙げられる。
上記ビニル基を2つ以上有する化合物を形成する原料である不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジフェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物としては、安息香酸ビニル、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。
エポキシ基を有する化合物としては、ジグリシジルフタレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、エポキシ化フェノール樹脂、エポキシ化ポリブタジエンなどが挙げられる。
また、アリル基を有するオリゴマー類を形成可能な化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルシトレートなどが挙げられる。
【0034】
ビニル基含有化合物は、ポリアニオンに対して、0.1モル当量から100モル当量含まれることが好ましく、2モル当量から50モル当量含まれることがより好ましい。ビニル基含有化合物の含有量がポリアニオンに対して100モル当量を超える場合には、ビニル基含有化合物が過剰になり、導電性を低下させるおそれがある。また、ポリアニオンに対して0.1モル当量未満では、熱安定性を向上させることが困難になる傾向にある。
【0035】
ビニル基含有化合物は、ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物とビニル基を2つ以上有する化合物とを両方含むことが好ましく、具体的には、ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物を0.1〜99.9質量%、ビニル基を2つ以上有する化合物を99.9質量%〜0.1質量%含むことが好ましい。ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物の含有量が0.1質量%未満であると、導電性が充分に向上しないことがあり、99.9質量%を超えると、熱安定性及び膜強度が充分に向上しないことがある。
【0036】
(ドーパント)
導電性高分子溶液において、ポリアニオンはπ共役系導電性高分子のドーパントとして機能するが、導電性高分子溶液にはポリアニオン以外のドーパント(以下、他のドーパントという。)が含まれていてもよい。
他のドーパントとしては、π共役系導電性高分子を酸化還元させることができればドナー性のものであってもよく、アクセプタ性のものであってもよい。
【0037】
[ドナー性ドーパント]
ドナー性ドーパントとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
【0038】
[アクセプタ性ドーパント]
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等を使用できる。
さらに、ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br2)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0039】
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。さらに、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0040】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
【0041】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むもの、又は、スルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を一つ含むものとして、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキチルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、メタアミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0042】
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、メタベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオ−シアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0043】
(溶媒)
溶媒としては、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを溶解するものであれば特に制限されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、クレゾール、フェノール、キシレノール、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、ジメチルイミダゾリン、酢酸エチル、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホン等が挙げられる。これら溶媒は必要に応じて、1種類もしくは2種類以上の混合溶媒で用いることができる。
なお、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの水溶液中の水を有機溶剤に置換することができる。その置換方法としては、限外ろ過法、エバポレーション法、凍結乾燥法などを適用することができる。本発明では、π共役系導電性高分子とポリアニオンの残存アニオン基およびヒドロキシ基含有芳香族性化合物のスルホ基及び/又はカルボキシ基が、ビニル基含有化合物のアミノ基、グリシジル基、ヒドロキシ基によって溶媒和するため、アニオン基の極性を下げることにより、濃縮されたπ共役系導電性高分子及びポリアニオンの複合体を有機溶剤に容易に溶解することができる。
【0044】
(導電性高分子溶液の製造方法)
次に、導電性高分子溶液の製造方法の一例について説明する。
この例の導電性高分子溶液の製造方法では、まず、溶媒中、ポリアニオンの存在下、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを化学酸化重合して、π共役系導電性高分子とポリアニオンとが複合した複合体を形成する。その複合体の形成の際には、π共役系導電性高分子の主鎖の成長と共にポリアニオンのアニオン基がπ共役系導電性高分子と塩を形成するため、π共役系導電性高分子の主鎖はポリアニオンに沿って成長する。よって、得られたπ共役系導電性高分子とポリアニオンは無数に塩を形成した複合体になる。この複合体においては、π共役系導電性高分子のモノマー3ユニットに対して1ユニットのアニオン基が塩を形成し、短く成長したπ共役系導電性高分子の数本が長いポリアニオンに沿って塩を形成しているものと推定されている。
次いで、複合体を含む溶液にヒドロキシ基含有芳香族性化合物及びビニル基含有化合物を添加して導電性高分子溶液を得る。
【0045】
上述した導電性高分子溶液において、ビニル基含有化合物が、ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物である場合には、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体の形成に使用されなかったポリアニオンの残存アニオン基(例えば、スルホ基、カルボキシ基など)の一部、及びヒドロキシ基含有芳香族性化合物のドープしうるスルホ基及び/又はカルボキシ基とπ共役系導電性高分子との複合体の形成に使用されなかった残存アニオン基に、ビニル基含有化合物のグリシジル基又はヒドロキシ基が反応してエステル(例えば、スルホン酸エステル、カルボン酸エステルなど)を形成する。そのエステル形成反応は、塩基性触媒、酸性触媒、加圧、加熱によって促進させてもよい。このようにして、ポリアニオンにビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物を反応させることにより、ポリアニオンにビニル基を導入することができる。そして、このビニル基を架橋点として利用して、塗膜形成時にて、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体同士を架橋することにより、分子密度を高めることができ、導電性、熱安定性及び膜強度を向上させることができる。
また、ビニル基含有化合物が、ビニル基を2つ以上有する化合物である場合には、これを重合して重合体を形成することにより、膜強度を向上させることができる。
【0046】
さらに、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体を架橋することにより分子間距離が縮まり集束するため、π共役系導電性高分子間の電子移動におけるホッピングにかかる活性化エネルギーが小さくてすみ、導電性が高くなる(具体的には、電気伝導度で100S/cm以上を実現し得る。)と考えられる。したがって、π共役系導電性高分子を可溶化させるポリアニオン量を多くしても高い導電性を維持できるため、溶媒溶解性を高くできる。
【0047】
また、導電性高分子溶液にヒドロキシ基含有芳香族性化合物が含まれることによりπ共役系導電性高分子の酸化劣化を防ぐことができる。特に、ビニル基含有化合物をラジカル重合する際には、ラジカルの存在によりπ共役系導電性高分子が酸化劣化しやすい環境になるが、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含むことにより、π共役系導電性高分子の酸化劣化を防ぐことができる。π共役系導電性高分子の劣化を防止することにより、導電性及び熱安定性を向上させることができる。
【0048】
<導電性塗膜>
本発明の導電性塗膜は、上述した導電性高分子溶液が塗布され、前記ビニル基含有化合物のビニル基が重合されて形成されたものである。
導電性高分子溶液の塗布方法としては、例えば、コーティング、浸漬、スプレーなどの公知の手法が挙げられる。
導電性高分子溶液が塗布される基材としては、例えば、ガラス板、プラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0049】
重合では、ラジカル重合法、熱重合法、光ラジカル重合法、プラズマ重合、カチオン重合法などの各種重合法を採ることができる。
重合においてラジカル重合法を適用した場合には、重合開始剤として、例えばアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシエステル類、ヒドロペルオキシド類等の過酸化物などを用いる。これら重合開始剤はあらかじめ導電性高分子溶液に含有させておくことが好ましい。
【0050】
光ラジカル重合法を適用した場合には、光重合開始剤として、カルボニル化合物、イオウ化合物、有機過酸化物、アゾ化合物などを用いる。具体的には、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、アクドリン、ミヒラーズケトン、キサントン、チオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、テトラメチルチウラム、ジチオカーバメート、過酸化ベンゾイル、N−ラウリルピリジウムアジド、ポリメチルフェニルシランなどが挙げられる。これら光重合開始剤はあらかじめ導電性高分子溶液に含有させておくことが好ましい。
【0051】
また、光ラジカル重合法を適用した場合には、光感度を向上させるための増感剤を添加することが好ましい。増感剤としては、例えば、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフチアゾール、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)などが挙げられる。これら増感剤は1種又は2種以上使用することができる。
なお、増感剤の中には、光重合開始剤として作用するものもある。
【0052】
プラズマ重合法とは、プラズマを短時間照射し、プラズマの電子衝撃によるエネルギーを受けて、フラグメンテーションとリアレンジメントをしたのち、ラジカルの再結合により重合体を生成する方法である。
【0053】
また、ビニル基含有化合物がビニルエーテル基を含む場合には、カチオン重合法が好適である。カチオン重合法においては、反応促進のため、ハロゲン化金属、有機金属化合物等のルイス酸、その他、四塩化炭素、フェニルトリブロモメチルフェニルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトン、ハロゲン、強酸塩、カルボニウムイオン塩等の光又は熱でカチオンを生成する求電子試薬などを使用してもよい。
【0054】
導電性高分子溶液にヒドロキシ基含有芳香族性化合物、ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物が含まれていた場合、その導電性高分子溶液から形成される導電性塗膜においては、π共役系導電性高分子にドープしたポリアニオン及びヒドロキシ基含有芳香族性化合物にエステル結合したビニル基含有化合物のビニル基を架橋点として、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体が架橋している。また、導電性高分子溶液にビニル基を2つ以上有する化合物が含まれていた場合には、ビニル基を2つ以上有する化合物が重合して重合体を形成する。このような架橋又は重合体の形成により、塗膜の強度及び熱安定性を向上させることができる。
また、この導電性塗膜においては、π共役系導電性高分子とポリアニオンの複合体の分子間距離が短く、電子移動におけるホッピングエネルギーが低くため、導電性が高い。
【実施例】
【0055】
[π共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体の調製]
(調製例1)ポリ(エチレンジオキシチオフェン)とポリアリルスルホン酸との複合体溶液(複合体溶液1)の調製
1000mlのイオン交換水に145g(1mol)のアリルスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14g(0.005mol)の過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、さらに12時間攪拌を継続した。
得られた溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml加え、限外ろ過法を用いて約1000ml溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形分を得た。
続いて、14.2g(0.1mol)のエチレンジオキシチオフェンと21.8g(0.15mol)のポリアリルスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶解した溶液とを混合させた。
この混合液を20℃に保ち、掻き混ぜながら200mlのイオン交換水に溶解した29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムを8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液をゆっくり加え、5時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、エバポレーションと凍結乾燥により水分を約1質量%以下まで除去した。そして、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解させて、約1.5質量%の青色ポリアリルスルホン酸ドープポリ(エチレンジオキシチオフェン)溶液を得た。これを複合体溶液1とした。
【0056】
(調製例2)ポリ(3−メトキシチオフェン)とポリアリルカルボン酸との複合体溶液(複合体溶液2)の調製
1000mlのイオン交換水に108g(1mol)のアリルカルボン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14g(0.005mol)の過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られた溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml加え、限外ろ過法を用いて約1000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形分を得た。
続いて、11.4g(0.1mol)の3−メトキシチオフェンと16.2g(0.15mol)のポリアリルカルボン酸を2000mlのイオン交換水に溶解した溶液とを混合させた。
この混合液を20℃に保ち、掻き混ぜながら200mlのイオン交換水に溶解した29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムを8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液をゆっくり加え、12時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色ポリアリルカルボン酸ドープポリ(3−メトキシチオフェン)溶液を得た。これを複合体溶液2とした。
【0057】
(調製例3)ポリピロールとポリスチレンスルホン酸との複合体溶液(複合体溶液3)の調製
1000mlのイオン交換水に185g(1mol)のスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14g(0.005mol)の過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られた溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml加え、限外ろ過法を用いて約1000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形分を得た。
続いて、6.6g(0.1mol)のピロールと18.5g(0.15mol)のポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶解した溶液とを混合させた。
この混合液を20℃に保ち、掻き混ぜながら200mlのイオン交換水に溶解した29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムを8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液をゆっくり加え、2時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色ポリスチレンスルホン酸ドープポリピロール溶液を得た。これを複合体溶液3とした。
【0058】
(実施例1)
100mlの複合体溶液1に、4.4g(ポリアリルスルホン酸に対して3モル当量)の2,3−ジヒドロキシ安息香酸と、5.5g(ポリアリルスルホン酸に対して5モル当量)のヒドロキシエチルアクリレートと、117.1g(ポリアリルスルホン酸に対して50モル当量)のジエチレングリコールジアクリレートと、3.7g(ビニル基含有化合物に対して3%)の4,4’−ジメトキシベンゾフェノンを添加し、均一に分散させて導電性高分子溶液を得た。得られた導電性高分子溶液をガラス上に塗布し、100℃のオーブン中で乾燥させ、UV露光機によって積算光量500mJ/cmの照射をして導電性塗膜を形成した。その塗膜の電気特性を以下のように評価した。その結果を表1に示す。
【0059】
電気伝導度(S/cm):ローレスタ(ダイアインスツルメンツ製)を用いて塗膜の電気伝導度を測定した。
電気伝導度熱維持率(%):温度25℃における塗布膜の電気伝導度R25Bを測定し、測定後の塗膜を温度125℃の環境下に300時間放置した後、該塗膜を温度25℃に戻し、電気伝導度R25Aを測定した。そして、下記式より算出した。なお、この電気伝導度熱維持率により熱安定性を評価できる。
電気伝導度熱維持率(%)=100×R25A/R25B
【0060】
【表1】

【0061】
(実施例2)
100mlの複合体溶液2に、7.9g(ポリアリルカルボン酸に対して3モル当量)の4−ヒドロキノンスルホン酸塩酸塩と、113.9g(ポリアリルカルボン酸に対して50モル当量)のアリルフェノールグリシジルエーテルと、197.2g(ポリアリルカルボン酸に対して50モル当量)のペンタエリスリトールトリアクリレートと、9.3g(ビニル基含有化合物に対して3%)の4,4’−ジメトキシベンゾフェノンを添加し、均一に分散させて導電性高分子溶液を得た。そして、この導電性高分子溶液を用いて実施例1と同様にして導電性塗膜を形成して、電気特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0062】
(実施例3)
100mlの複合体溶液3に、5.0g(ポリスチレンスルホン酸に対して3モル当量)の1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸塩酸塩と、18.6g(ポリスチレンスルホン酸に対して30モル当量)の2−ヒドロキシエチルアクリルアミドと、52.4g(ポリスチレンスルホン酸に対して30モル当量)のペンタエリスリトールヘキサアクリレートと、2.2g(ビニル基含有化合物に対して3%)の4,4’−ジメトキシベンゾフェノンを添加し、均一に分散させて導電性高分子溶液を得た。そして、この導電性高分子溶液を用いて実施例1と同様にして塗膜を形成して、電気特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
実施例1において2,3−ジヒドロキシ安息香酸とヒドロキシエチルアクリレートを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子溶液を得た。そして、この導電性高分子溶液を用いて実施例1と同様にして塗膜を形成して、電気特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
実施例2において2−ヒドロキシエチルアクリルアミドとペンタエリスリトールヘキサアクリレートを添加しなかったこと以外は実施例3と同様にして導電性高分子溶液を得た。そして、この導電性高分子溶液を用いて実施例1と同様にして塗膜を形成して、電気特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0065】
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物とビニル基含有化合物とを含有する導電性高分子溶液から形成された実施例1〜3の導電性塗膜は、電気伝導性が高く、電気伝導度熱維持率の低下が防止されていた。
これに対し、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物及びグリシジル基及び/又はヒドロキシ基を含むビニル基含有化合物を含まない導電性高分子溶液から形成された比較例1は、ビニル基含有化合物により膜強度が確保され、電気伝導度熱維持率の低下が防止されたが、電気伝導性は高くなっていなかった。また、グリシジル基及び/又はヒドロキシ基を含むビニル基含有化合物及びビニル基含有化合物を含まない導電性高分子溶液から形成される比較例2の導電性塗膜は、ヒドロキシ基含有芳香族化合物により電気伝導性が高くなっていたが、電気伝導度熱維持率が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、ヒドロキシ基を2つ以上有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物と、ビニル基含有化合物と、溶媒とを含有する導電性高分子溶液であって、
ビニル基含有化合物が、ビニル基とグリシジル基及び/又はヒドロキシ基とを有する化合物、ビニル基を2つ以上有する化合物のうちのいずれか一方又は両方であることを特徴とする導電性高分子溶液。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性高分子溶液が塗布され、前記ビニル基含有化合物のビニル基が重合されて形成されたことを特徴とする導電性塗膜。


【公開番号】特開2006−265297(P2006−265297A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81852(P2005−81852)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】