説明

導電性高強力繊維糸及びその製造方法

【課題】フィラメントの表面に均一な金属メッキ層が均一且つ密着性よく形成され、軽量で、高強度であり、導電性が優れ且つ均一である導電性高強力繊維糸を生産性よく製造することができる導電性高強力繊維糸の製造方法を提供する。
【解決手段】多数のフィラメントが集合されてなる高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成し、該平板状のフィラメント束をプラズマ処理又は電子線照射処理する第1工程と、プラズマ処理又は電子線照射処理されたフィラメント束を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させる第2工程と、フィラメント表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化する第3工程と、このフィラメントをメッキ液に浸漬して無電解メッキ処理を行い金属メッキ層を形成する第4工程を含むことを特徴とする導電性高強力繊維糸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維等の高強力繊維糸を構成するフィラメント表面に金属層が均一に積層された導電性高強力繊維糸及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性繊維により構成されたシート材は、携帯電話や電気・電子機器から発生する電磁波を遮蔽する電磁シールド材としての用途展開が図られており、今後益々の需要増大が期待されている。又、今日使用されている電線及び送電線等の導線としては、殆どの場合において銅等の金属線が用いられているが、金属線は一般的に重量が重く強度も弱いことから、軽量で強度に優れた導電性繊維で代替するための研究開発が進められている。
【0003】
特に、導電性繊維の基材として高分子繊維材料を用いると、軽量で高強度である等、用途に合わせて種々の機能を備えた導電性繊維を得られる可能性が大きいことから、高分子繊維材料に導電性を付与するための様々な技術開発が行われている。そのような高分子繊維材料等への導電性付与技術としては、(1)界面活性剤と帯電防止剤をプラスチックの内部に配合し、あるいは表面に塗布する技術(例えば、特許文献1参照)、(2)カーボン粉末や金属粉末等の導電性物質を混合した高分子組成物を用いる技術(例えば、特許文献2参照)、(3)プラスチック成形品表面にアルミニウム等の金属蒸着膜を真空蒸着法等により形成する技術(例えば、特許文献3参照)、(4)高分子繊維材料の表面に無電解メッキ処理により金属皮膜を形成する技術(例えば、特許文献4参照)、(5)高分子材料の化学構造を新規に設計して導電性高分子とするという根本的な方法による技術等が挙げられる。
【0004】
上記(4)高分子繊維材料の表面に無電解メッキ処理により金属皮膜を形成する技術においては、通常、金属皮膜の密着性を向上させる等の目的で高分子繊維材料にメッキ前処理が行われる。
【0005】
例えば、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエステル系繊維等の合成繊維に無電解メッキを行うための前処理として、次に例示するような一連の処理が行われる。即ち、アルカリ脱脂液等によるクリーニング処理又は当該合成繊維に適した精練・漂白処理を行い、次いで、例えば、強酸又は強アルカリのエッチング液等による化学的処理或いは低温プラズマ又は機械的な擦過等による物理的処理を行って繊維表面を粗面化ないし膨潤化し、更に、例えば、塩化第一スズの酸性液による増感処理の後に塩化パラジウムの酸性液による活性化処理を行う等の方法による触媒化処理が行われる。このような無電解メッキの前処理としての一連の処理のうち、繊維表面を粗面化する処理について更に補足すると、プラズマを利用して、プラス及びマイナスのイオンや遊離原子、ラジカルを発生させ、これによりエッチバックをするプラズマエッチングがあり、その他にも、コロナ放電処理、紫外線処理等による改質技術がある。一方、こうした粗面化処理を行わない方法として、メッキ触媒を含有する有機バインダや紫外線硬化樹脂の薄膜をプラスチック表面に形成する方法もある。
【0006】
上記メッキ前処理方法において、例えば、化学的なエッチング処理を行う場合には、クロム溶液やアルカリ金属水酸化物溶液等の薬品を用いるためその廃液処理が問題となる。又、化学的なエッチング処理以外の処理を行う場合でも、一連の前処理を行うための処理時間や設備コストが大きいという問題がある。
【0007】
さらに近年、上記メッキ前処理方法以外に、超臨界流体を用いたメッキ前処理方法が提案されており、プラスチックに超臨界流体を接触させて表面処理を行うこと及びプラスチックにメッキ用触媒を含有する超臨界流体を接触させて表面処理を行うと同時にメッキ用触媒を付着させることが開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
上記の超臨界流体を用いたメッキ前処理方法においては、メッキ用触媒として金属単体や金属化合物が挙げられているが、金属単体は超臨界流体に溶解しないためプラスチック表面に付着させることが困難である。一方、超臨界流体に可溶な金属化合物は、プラスチック表面に付着させやすいが、触媒活性が不十分であるために無電解メッキ処理により十分な量の金属皮膜を形成することが難しい。又、超臨界流体を流しながらメッキ前処理を行うため、メッキ用触媒の多くがプラスチックに付着することなく無駄になるおそれがある。
【0009】
そこで、超臨界流体又は亜臨界流体を用いることで、従来の材料表面を粗化するためのエッチング処理が不要になるとともに、簡略化された工程でメッキ用金属触媒を高分子材料に付与することができるメッキ前処理方法及びメッキ方法、並びに超臨界流体又は亜臨界流体を用いることで無電解メッキ処理を行うことなく高分子材料の表面に金属皮膜、金属酸化物皮膜又は金属硫化物皮膜を直接形成することができる皮膜形成方法(例えば、特許文献6参照)を開発したが、この方法においては、高分子繊維、特に、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維等の高強力繊維を構成するフィラメントに金属皮膜、金属酸化物皮膜又は金属硫化物皮膜を均一に且つ密着性よく積層して形成することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−253796号公報
【特許文献2】特開2000―212453号公報
【特許文献3】特開昭61−132652号公報
【特許文献4】特開2000―96431号公報
【特許文献5】特開2001−316832号公報
【特許文献6】特開2007−56287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、従来のエッチング処理を施すことなく、高強力繊維を構成するフィラメントの表面に均一な金属メッキ層を均一且つ密着性よく形成することができ、その結果、軽量で、高強度であり、導電性が優れ且つ均一である導電性高強力繊維糸を生産性よく製造することができる導電性高強力繊維糸の製造方法及び得られた導電性高強力繊維糸を提供することにある。
【0012】
又、異なる目的は、従来のエッチング処理を施すことなく、高強力繊維を構成するフィラメントの表面に均一な金属層を均一且つ密着性よく形成することができ、その結果、軽量で、高強度であり、導電性が優れ且つ均一である導電性高強力繊維糸を生産性よく製造することができる方法及び金属層に電解メッキ処理を行って、より導電性の優れた導電性高強力繊維糸を製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、
[1]多数のフィラメントが集合されてなり、油剤を含有しない高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成し、該平板状のフィラメント束をプラズマ処理又は電子線照射処理する第1工程と、プラズマ処理又は電子線照射処理されたフィラメント束を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させる第2工程と、フィラメント表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化する第3工程と、このフィラメントをメッキ液に浸漬して無電解メッキ処理を行い金属メッキ層を形成する第4工程を含むことを特徴とする導電性高強力繊維糸の製造方法、
[2]無電解メッキ処理を、大気圧下若しくは超臨界流体又は亜臨界流体の存在下に行うことを特徴とする上記[1]に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法、
[3]多数のフィラメントが集合されてなる高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成し、該平板状のフィラメント束をプラズマ処理又は電子線照射処理する第1工程と、プラズマ処理又は電子線照射処理されたフィラメント束を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させる第2工程と、フィラメント表面に付着した有機金属錯体を還元して金属層を形成する第3工程を含むことを特徴とする導電性高強力繊維糸の製造方法、
[4]第2工程及び第3工程を超臨界流体雰囲気中で行うことを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法、
[5]更に、電解メッキを行う工程を含むことを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法、
[6]フィラメントが、アラミド繊維、ポリアミド繊維又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法、
[7]平板状のフィラメント束における厚み方向のフィラメント数が7本以下であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法、
[8]プラズマ処理が、不活性ガス下における大気圧プラズマ処理であることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法、
[9]プラズマ処理が、窒素雰囲気下における大気圧プラズマ処理であることを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法、
[10]有機金属錯体が、ベータージケトネート類を配位子に持つもの、ジエン類を配位子に持つもの又はメタロセン類であることを特徴とする上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法、
[11]超臨界流体又は亜臨界流体は、二酸化炭素、一酸化二窒素、トリフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、メタン、エタン及びエチレンよりなる群から選ばれた1種以上の流体からなることを特徴とする上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法、及び
[12]上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法により製造される導電性高強力繊維糸
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の導電性高強力繊維糸の製造方法は、多数のフィラメントが集合されてなる高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成し、該平板状のフィラメント束をプラズマ処理又は電子線照射処理した後、プラズマ処理又は電子線照射処理されたフィラメント束を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬するので、有機金属錯体はフィラメント表面に効率良く均一に且つ密着性よく付着する。従って、高強力繊維糸のフィラメント表面に金属層、金属酸化物層又は金属硫化物層が密着性よく均一に形成され、軽量で導電性の優れた高強力繊維糸が生産性よく得られる。
【0015】
又、金属層が積層されたフィラメントは、金属層が密着性よく均一に形成されているので、更に、電解メッキ処理することにより、その表面に金属を密着性よく均一にメッキすることができ、より導電性が優れ、軽量な高強力繊維糸を生産性よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】高強力繊維糸の一例を示す断面図である。
【図2】平板状のフィラメント束の一例を示す断面模式図である。
【図3】平板状のフィラメント束の異なる例を示す断面模式図である。
【図4】フィラメント束を有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬するために使用できる装置の一例の概略を示す模式図である。
【図5】フィラメント束の多孔性管ロールを、有機金属錯体を含む流体に浸漬するために使用できる装置の一例の概略を示す模式図である。
【図6】プラズマ処理装置の一例を示す模式図である。
【図7】プラズマ処理前後のぬれ広がりの様子を示す写真である。(a)はプラズマ処理前のサンプルを用いた液体(水)着滴後1秒後の結果を示し、(b)はプラズマ処理後のサンプルを用いた液体(水)着滴後1秒後の結果を示す。
【図8】プラズマ処理前及びプラズマ処理後の接触角の経時的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の態様の導電性高強力繊維糸の製造方法は、多数のフィラメントが集合されてなる高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成し、該平板状のフィラメント束をプラズマ処理又は電子線照射処理する第1工程と、プラズマ処理又は電子線照射処理されたフィラメント束を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させる第2工程と、フィラメント表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化する第3工程と、このフィラメントをメッキ液に浸漬して無電解メッキ処理を行い金属メッキ層を形成する第4工程を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明で用いられるフィラメントの強度は、特に限定されるものではないが、7cN/dTex以上が好ましく、13cN/dTex〜45cN/dTexがより好ましく、17cN/dTex〜40cN/dTexが更に好ましい。かかる強度は、JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法8.5.1に従って測定することにより求められる。
【0019】
本発明で用いられるフィラメントとしては、例えば、全芳香族ポリアミド繊維;全芳香族ポリエステル繊維;ヘテロ環芳香族繊維;ナイロン(例えば、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66等);ポリアクリル系繊維;ポリエステル系繊維;ポリウレタン系繊維;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維;ポリ塩化ビニル系繊維;ポリ塩化ビニリデン系繊維;ビニロン等のポリアルコール繊維;フッ素系繊維(例えば、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ四フッ化エチレンエチレン(ETFE)、ポリフッ化アルキルビニルエーテル(PFA)等)等の有機繊維が挙げられる。
【0020】
上記全芳香族ポリアミド繊維は、通常置換されていてもよい二価の芳香族基を少なくとも一個有する繊維であって、アミド結合を少なくとも一個有する繊維であればどのようなものでもよく、全芳香族ポリアミド繊維と称される公知のものであってよい。上記において、置換されていてもよい二価の芳香族基とは、同一又は異なる1以上の置換基を有していてもよい二価の芳香族基を意味し、かかる「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホ基、スルフィノ基、メルカプト基、ホスホノ基、直鎖状又は分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等)、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシイソプロピル基、1−ヒドロキシ−n−プロピル基、2−ヒドロキシ−n−ブチル基、1−ヒドロキシ−イソブチル基等)、ハロゲノアルキル基(例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−ブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、6,6,6−トリフルオロヘキシル等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等)、アルケニル基(例えば、ビニル、クロチル、2−ペンテニル、3−ヘキセニル等)、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテニル、2−シクロヘキセニル、2−シクロペンテニルメチル、2−シクロヘキセニルメチル等)、アルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ペンチニル、3−ヘキシニル等)、オキソ基、チオキソ基、アミジノ基、イミノ基、アルキレンジオキシ基(例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ等)、フェニル、ビフェニル等の単環式或いは縮合環式炭化水素基、1−アダマンチル基、2−ノルボルナニル等の架橋環式炭化水素基等の炭化水素基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ等)、カルボキシル基、アルカノイル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル等)、アルカノイルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ等のアルキル−カルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル等)、チオカルバモイル基、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル又はエチルスルフィニル等)、アルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル等)、スルファモイル基、モノ−アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、エチルスルファモイル等)、ジ−アルキルスルファモイル基(例えば、ジメチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、ナフチルスルファモイル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル、ナフチルスルフィニル等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル、ナフトイル等)、アリールカルボニルオキシ基(例えば、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ等)、ハロゲン化されていてもよいアルキルカルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、トリフルオロアセチルアミノ等)、置換基を有していてもよいカルバモイル基(例えば、式−CONR(式中、R及びRはそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい複素環基を示すか、又はRとRは隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。)で表される基)、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、アミノ、アルキルアミノ、テトラヒドロピロール、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピロール、イミダゾール等)、置換基を有していてもよいウレイド基(例えば、式−NHCONR(式中、R及びRは前記と同意義を示す)で表される基等)、置換基を有していてもよいカルボキサミド基(例えば、式−NRCOR(式中、R及びRは前記と同意義を示す)で表される基)、置換基を有していてもよいスルホナミド基(例えば、式−NRSO(式中、R及びRは前記と同意義を示す。)で表される基等)、置換基を有していてもよい水酸基若しくはメルカプト基、置換基を有していてもよい複素環基(例えば、環系を構成する原子(環原子)として、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子等から選ばれたヘテロ原子1〜3種を少なくとも1個含む芳香族複素環基(例えば、ピリジル、フリル、チアゾリル等)、又は飽和或いは不飽和の脂肪族複素環基等)、又はこれら置換基を化学的に許容される限り置換させた置換基等が挙げられる。又、かかる「二価の芳香族基」としては、例えばp−フェニレン基、m−フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。
【0021】
又、全芳香族ポリアミド繊維は、別名アラミド繊維とも呼ばれており、パラ系アラミド繊維又はメタ系アラミド繊維に大別でき、どちらも本発明において好ましく用いられる。本発明において用いられるパラ系アラミド繊維は、例えば、上記置換されていてもよい二価の芳香族基が置換されていてもよいp−フェニレン基である上記全芳香族ポリアミド繊維であればどのようなものでもよく、パラ系アラミド繊維と称される公知のものであってよい。上記した置換されていてもよいp−フェニレン基とは、同一又は異なる1以上の置換基を有していてもよいp−フェニレン基を意味し、かかる「置換基」は、前記と同意義である。又、上記パラ系アラミド繊維として、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン株式会社、東レ・デュポン株式会社製、商品名KEVLAR(デュポン株式会社登録商標))、又はパラフェニレンテレフタルアミドと3,4’−オキシジフェニルテレフタルアミドとの共重合体繊維(帝人株式会社製、商品名テクノーラ(帝人株式会社登録商標))等の市販品を用いることができる。本発明において用いられるメタ系アラミド繊維は、例えば分子鎖における上記置換されていてもよいベンゼン環の結合がメタ位での結合である上記した芳香族ポリアミド繊維であればどのようなものでもよく、メタ系アラミド繊維と称される公知のものであってよい。上記メタ系アラミド繊維として、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(米国デュポン株式会社製、商品名NOMEX(デュポン株式会社登録商標))等の市販品を用いることができる。本発明においては、上記したアラミド繊維を、公知の方法又はそれに準ずる方法で製造して用いてもよい。
【0022】
上記全芳香族ポリエステル繊維は、通常置換されていてもよい二価の芳香族基を少なくとも一個有する繊維であって、エステル結合を少なくとも一個有する繊維であればどのようなものでもよく、本発明において、特に限定されない。上記した「置換されていてもよい二価の芳香族基」は前記と同意義である。又、上記全芳香族ポリエステル繊維は、全芳香族ポリエステル繊維と称される公知の繊維であってよく、例えば、パラヒドロキシ安息香酸の自己縮合ポリマー、テレフタル酸とハイドロキノンからなるポリエステル、又は、パラヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸からなるポリエステル繊維等であってよい。本発明において、このような全芳香族ポリエステル繊維を、公知の方法又はそれに準ずる方法で製造して用いることができる。また、本発明において、上記全芳香族ポリエステル繊維として、例えば商品名ベクトラン(クラレ株式会社製)等の市販品を用いることもできる。
【0023】
上記ヘテロ環芳香族繊維は、通常置換されていてもよい二価の芳香族複素環基を少なくとも一個有する繊維であればどのようなものでもよく、本発明において、特に限定されない。上記において、「置換されていてもよい二価の芳香族複素環基」とは、同一又は異なる1以上の置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基を意味し、かかる「置換基」は、前記と同意義である。又、かかる「二価の芳香族複素環基」としては、例えば環系を構成する原子(環原子)として、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び弗素原子等から選ばれる同一又は異なるヘテロ原子1ないし4種を少なくとも1個有する芳香族複素環基等が挙げられる。二価の芳香族複素環基における芳香族複素環としては、例えば、芳香族単環式複素環(例えばフラン、チオフェン、ピロリン、オキサゾリン、イソオキサゾリン、チアゾリン、イソチアゾリン、イミダゾリン、ピラゾリン、1,2,3−オキサジアゾリン、1,2,4−オキサジアゾリン、1,3,4−オキサジアゾリン、フラザニン、1,2,3−チアジアゾリン、1,2,4−チアジアゾリン、1,3,4−チアジアゾリン、1,2,3−トリアゾリン、1,2,4−トリアゾリン、テトラゾリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等)、又は、芳香族縮合複素環(例えば、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾ〔b〕チオフェン、インドリン、イソインドリン、1H−インダゾリン、ベンズインダゾリン、ベンゾオキサゾリン、1,2−ベンゾイソオキサゾリン、ベンゾチアゾリン、ベンゾピラジン、1,2−ベンゾイソチアゾリン、1H−ベンゾトリアゾリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ナフチリジン、プリン、ブテリジン、カルバゾリン、α−カルボリン、β−カルボリン、γ−カルボリン、アクリジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン、フェノキサチン、チアントレン、フェナトレン、フェナトロリン、インドリジン、ピロロ〔1,2−b〕ピリダジン、ピラゾロ〔1,5−a〕ピリジン、イミダゾ〔1,2−a〕ピリジン、イミダゾ〔1,5−a〕ピリジン、イミダゾ〔1,2−b〕ピリダジン、イミダゾ〔1,2−a〕ピリミジン、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−a〕ピリジン、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−b〕ピリダジン等)等が挙げられる。又、ヘテロ環芳香族繊維と称される公知のものであってよく、例えば、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(以下、PBOと略称する)又はポリベンズイミダゾール繊維等であってよい。又、上記ヘテロ環芳香族繊維は、公知の方法又はそれに準ずる方法で製造され得る。また、本発明において、上記ヘテロ環芳香族繊維として、例えば市販のPBO繊維(東洋紡績株式会社製の製品名ザイロン)等を用いることができる。
【0024】
上記フィラメントは、最終製品の用途、要求性能、繊維の製造コスト又は製品の加工コスト等に応じて、適宜選択される。本発明においては、上記フィラメントを組み合わせた混合繊維等を用いることもできる。又、本発明においては、引っ張り弾性率が高く、しなやかであり、耐熱性や燃え難さの指標である限界酸素指数が高いアラミド繊維、ポリアミド繊維又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を上記フィラメントとして用いることが好まく、より好ましくは、パラ系アラミド繊維であり、更に好ましくはポリパラフェニレンテレフタルアミド(以下、PPTAと略称する)である。
【0025】
本発明で使用される高強力繊維糸は、多数の上記フィラメントが集合されてなる高強力繊維糸である。一般に高強力繊維糸は、上記フィラメントを製造し、その多数のフィラメントを図1に示したように集合して製造される。図1は高強力繊維糸の一例を示す断面図であり、多数のフィラメントb、b・・・が集合して高強力繊維糸aが形成されている。
【0026】
高強力繊維糸の製造方法の一例をPPTAで説明すると以下の通りである。
通常の重合方法で得られたPPTAを99.9質量%の濃硫酸に溶かし、ポリマー濃度19.0質量%、温度80℃の紡糸ドープとし、孔径0.06mmの細孔数200〜2000個を有する口金から押し出し、口金から水面まで約6mmの空気間隔を通した後、約4℃の水中に導いて凝固させ、ネルソンローラーに導き、約500m/分の速度で前進させ、約10質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和処理し、水洗後、表面処理温度約110℃のホットローラーでわずかに乾燥してフィラメントを得、得られたフィラメントを耐水性のボビンに巻き取ることにより、フィラメントを集合してフィラメント数200〜2000からなる、水分込み繊度約64tex(絶乾換算44tex、絶乾換算単糸繊度0.167tex)のPPTA繊維糸が得られ、この繊維の結晶サイズ(110方向)は約36Åである。
【0027】
フィラメントを集合して高強力繊維糸を製造する際に、フィラメントが切断することなく均一な高強力繊維糸になるように、一般に植物油系等の油剤がフィラメントに被覆又は高強力繊維糸に含有させるが、油剤が存在すると、後工程でフィラメントに有機金属錯体を付着させにくくなるので、高強力繊維糸は油剤を含有しないほうが良い。油剤を含有しない高強力繊維糸を得るには、油剤が付着した高強力繊維糸を湯、溶剤等で脱油処理するか、油剤をつけない状態で巻き取る方法等があるが、フィラメント糸が絡みにくく、傷がつきにくいので、油剤をつけない状態で巻き取る方法が好ましい。
【0028】
本発明の第1工程は、多数のフィラメントが集合されてなる高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成し、該平板状のフィラメント束をプラズマ処理又は電子線照射処理する工程である。また、第1工程では、あらかじめ高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成したものを用意して、それにプラズマ処理又は電子線照射処理をしても良い。
【0029】
先ず、多数のフィラメントが集合されてなる高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成する。高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成する方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されてよく、例えば、
(1)ボビンに巻回された上記高強力繊維糸を、ボビンから送り出す一方、こうして送り出されてくる高強力繊維糸を、複数の流体通流部が高強力繊維糸の移動進路に沿って数珠繋ぎに連接されて成る流体通流開繊機構の前記流体通流部の各々に架線状態を成して渡る如く移動させ、これら各流体通流部を移動する際に高強力繊維糸が流体との接触抵抗で流体通過方向へ撓曲され、且つ、この流体接触抵抗を受けて高強力繊維糸のフィラメント結束が弛められて形成された当該フィラメント束の間隙に前記流体を通過させることによってフィラメント同士の間隔を幅方向に広げて開繊を進行せしめ、こうして開繊作用を受ける当該フィラメント束を、上流側に位置する流体通流部から下流側に位置する流体通流部へと順々に連続通過せしめることにより流体とフィラメント束との接触面積を次第に拡大させ、当該フィラメント束を累進的に拡幅開繊せしめる方法、
(2)ボビンから送り出されてくる高強力繊維糸を、その移動方向とは交差する方向へ局部的に屈伸させることにより、移動過程にある高強力繊維糸のフィラメント束の張力を緊張・弛緩・緊張・…と交互に反復的に変化させ、こうして張力変化を伴いながら移動するフィラメント束を、複数の流体通流部が当該フィラメント束の移動進路に沿って数珠繋ぎに連接されて成る流体通流開繊機構の前記流体通流部の各々に架線状態を成して渡る如く移動させ、これら各流体通流部を移動する際に当該フィラメント束が流体との接触抵抗で流体通過方向へ撓曲され、且つ、この流体接触抵抗を受けてフィラメント結束が弛められて形成された当該フィラメント束の間隙に前記流体を通過させることによってフィラメント同士の間隔を幅方向に広げて開繊を進行せしめ、こうして開繊作用を受ける当該フィラメント束を、上流側に位置する流体通流部から下流側に位置する流体通流部へと順々に連続通過せしめることによって流体とフィラメント束との接触面積を次第に拡大させ、当該フィラメント束を累進的に拡幅開繊せしめる方法、
(3)ボビンに巻回された上記高強力繊維糸を、ボビンから送り出す一方、こうして送り出されてくる前記高強力繊維糸を、その移動方向とは交差する方向へ局部的に屈伸させることによって、移動過程にある当該高強力繊維糸のフィラメント束の張力を緊張・弛緩・緊張・と交互に反復的に張力変化させる一方、こうして張力変化を伴いながら移動するフィラメント束を、複数の流体通流部が当該繊維束の移動進路に沿って数珠繋ぎに連接されて成る流体通流開繊機構の流体通流部に架線状態で移動させ、この流体通流部において張力に緊張・弛緩・緊張・と反復的変化が与えられフィラメント間に流体が通流して開繊の進行する当該フィラメント束に対して、幅方向への直線的な進退摩擦を付与することにより開繊せしめる方法等が挙げられる(例えば、特表2007−518890号公報参照)。高強力繊維糸を開繊して得られる平板状のフィラメント束は、ボビンに保持されていることが好ましい。
【0030】
平板状のフィラメント束の厚さ及び幅は特に限定されるものではないが、後工程において各フィラメントが均一にプラズマ処理又は電子線照射処理されるためには、厚み方向のフィラメント数が7本以下、好ましくは5本以下、更に好ましくは3本以下になされているのが好ましい。図2及び図3は平板状のフィラメント束cの一例を示す断面模式図であり、図2においては3本のフィラメントb、b・・が平行に重なり合っている。図3においては、隣り合うフィラメントbとフィラメントbの凹部に上層又は下層のフィラメントbが嵌合するように4本のフィラメントb、b・・が重なり合っている。
【0031】
同一幅の平板状のフィラメント束を作製すると、略同一のフィラメントが重なり合う平板状のフィラメント束を得ることができる。従って、高強力繊維糸を開繊し、開繊されたフィラメントを平板状のフィラメント束として、該フィラメント束の幅以上の収納幅(巻取り幅)を有するリールで巻き取るのが好ましい。この際に、フィラメント束をリールの巻取り幅より若干広く拡げた後に、再度リールの巻取り幅まで狭くしてリールで巻き取ることにより、より均一幅のフィラメント束を得ることができる。
【0032】
次に、フィラメント表面に有機金属錯体が好ましくは均一に付着し、有機金属錯体を還元した金属層がフィラメント表面に密着性よく積層形成されるように、得られた平板状のフィラメント束をプラズマ処理又は電子線照射処理する。
【0033】
放電プラズマ処理は、従来公知の任意の処理が採用されればよいが、常圧又は大気圧近傍の圧力で行うグロー放電による常圧プラズマ処理が好ましい。大気圧付近で行うことで、真空設備や真空操作といった大掛かりな設備や煩雑な操作がいらないという利点がある。上記常圧又は大気圧近傍の圧力とは、1.333×10〜10.664×10Paを意味し、圧力調整が容易で、簡単な装置で放電可能な9.331×10〜10.397×10Paが好ましい。プラズマ処理の方法は、任意の放電処理方法が採用されてよく、例えば、プラズマ処理すべきフィラメント束を放電空間に配置してプラズマ処理するダイレクト方式、プラズマ処理すべきフィラメント束を放電空間外に配置し、放電空間からプラズマをフィラメント束に吹付けるリモート方式等が挙げられる。
【0034】
プラズマ処理は、一対の放電電極からなる対向電極に電界を印加することにより、プラズマを発生させるプラズマ処理装置を使用するのが好ましい。対向電極間に印加する電界としては、高周波、パルス波、サイン波、マイクロ波等の電界が挙げられ、パルス波電界が好ましい。パルス波電界の立ち上がり時間又は立下り時間は、10μsを超えると放電状態がアーク放電状態に移行しやすく不安定なものになり、パルス波電界による高密度プラズマ状態を保持しにくくなる。又、パルス波電界の立ち上がり時間又は立下り時間は、短いほどプラズマ発生の際のガスの電離が効率よく行われるが、40ns未満の立ち上がり時間のパルス波電界を実現することは実際には困難である。従って、パルス波電界の立ち上がり時間又は立下り時間は、40ns〜10μsであり、好ましくは50ns〜5μsである。なお、立ち上がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して増加する時間を指し、又は立下り時間とは、電圧(絶対値)が連続して減少する時間を指す。パルス波電界の電界強度は、小さくなると放電処理時間が長く必要になり、大きくなるとアーク放電が発生しやすくなるので、1〜1000kV/cmが好ましく、より好ましくは15〜300kV/cmである。パルス波電界の周波数は、小さくなると放電処理時間が長く必要になり、大きくなると負荷との整合性がとりにくくなり、取扱いが困難になるので、0.5kHz〜500MHzが好ましい。パルス波電界の1つのパルスの継続時間は、長くなりすぎるとアーク放電に移行しやすくなるので、200μs以下が好ましく、より好ましくは3〜150μsである。なお、1つのパルスの継続時間とは、ON/OFFの繰り返しからなるパルス電界における、ひとつのパルスの連続するON時間を意味する。
【0035】
放電処理に用いる放電電極の材質は、特に限定されず、例えば、銅、鉄、アルミニウム、ステンレススチール、真鍮、金属間化合物等が挙げられる。放電電極の構造も、特に限定されるものではなく、例えば、平行平板型、ロール−平板型、ロール−ロール型等が挙げられる。放電電極の配置は、電界集中によるアーク放電を避けるために、電極間距離(放電ギャップ)が一定になるように配置するのが好ましい。又、放電処理に用いる一対の放電電極のうち、少なくとも一方の放電電極の電極対向面に固体誘電体が配置されていることが必要であり、固体誘電体は放電電極に密着し、放電電極の他方の放電電極に対向する面を完全に被覆しているのが好ましい。これは、固体誘電体によって被覆されていない放電電極面が他の放電電極に対向していると、その部分からアーク放電が発生しやすくなるからである。
【0036】
上記固体誘電体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂、石英、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物等が挙げられる。高密度の放電プラズマを安定して発生させるには、上記固体誘電体の25℃における比誘電率が高いほど好ましく、2以上が好ましく、より好ましくは10以上である。25℃における比誘電率が2以上の固体誘電体としては、上記ポリテトラフルオロエチレン及び金属酸化物が挙げられる。又、比誘電率が10以上の固体誘電体としては、例えば、二酸化チタン5〜50重量%と酸化アルミニウム95〜50重量%からなる金属酸化物組成物、二酸化ジルコニウムを主体とする、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等を含有する金属酸化物組成物等が挙げられる。上記固体誘電体は、薄くなりすぎると電圧を印加時に絶縁破壊がおこり、アーク放電が発生しやすくなり、逆に厚くなりすぎると放電プラズマを発生するのに高電圧が必要になるので、厚さ0.01〜4mmのシート状であるのが好ましい。
【0037】
対向する放電電極間の距離は、固体誘電体の厚さ、印加電圧等により適宜決定されればよいが、近すぎると放電処理しにくくなったり、繊維を放電空間に通す事が難しくなり、遠すぎると均一な放電プラズマが発生しにくくなるので、0.1〜5mmが好ましく、より好ましくは0.5〜3mmである。放電電極には冷却装置を設置し、放電する際に冷却するのが好ましい。冷却装置としては、従来公知の任意の冷却装置が使用可能であり、例えば、放電電極に冷媒を通す通路を設置した装置、放電電極の放電面とは反対側の面の放冷フィンを設置した装置等が挙げられる。
【0038】
プラズマ処理する際の雰囲気(処理ガス)は、電界を印加することでプラズマを発生するガスであれば、特に限定されず、例えば、空気、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、一酸化炭素、4−フッ化炭素等の不活性ガス、アルコール等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよいし、2種以上が混合されて使用されてもよい。但し、酸素を含むプラズマで長時間繊維を処理した場合、繊維表面が脆弱になり、後の無電解メッキ処理した際にメッキの密着性が弱くなる可能性がある。これはプラズマ処理の際に副次的に発生するオゾン等の影響によるものと考えられる。従って、処理ガスとしては特に窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素が特に好ましく、更には、高パワーでプラズマ処理が出来る点や安全面、ガス単体の価格が安いことから窒素を使用することが好ましい。
【0039】
プラズマ処理する際の圧力は大気圧が好ましい。このとき、雰囲気(処理ガス)は、不活性ガスが好ましく、特に窒素が好ましい。
【0040】
プラズマ処理する際の平板状のフィラメント束は、均一に処理されるように同一幅に保たれているのが好ましいので、平板状のフィラメント束が巻回されたリール(送り出しリール)から、平板状のフィラメント束を送り出し、該リールと略同一の巻取り幅を有する巻取りリールで巻取りながらプラズマ処理するのが好ましい。又、開繊とプラズマ処理を連続して行う際には、巻取りリールの巻取り幅と略同一の巻取り幅を有する1つ又は複数のリールに開繊されたフィラメント束を通過させることで幅を規定し、巻取りリールで巻取りながらプラズマ処理するのが好ましい。又、プラズマ処理が均一に行われるように、フィラメントは弛緩することなく、引き伸ばされた状態でプラズマ処理されるのが好ましく、巻取りリールに若干の負荷をかけて巻取りながらプラズマ処理するのが好ましい。
【0041】
プラズマ処理により、処理基材の表面をほとんど粗すことなく表面に各種官能基を付与することができる。例えば、窒素プラズマ処理後はブランクに比べ窒素の構成比率が大きくなる。ピーク分離によりこれらの表面には−C−N、−C−O、−C=O、−CON、−COO等の官能基が形成されていると想定される。
【0042】
本発明の第2工程は、プラズマ処理又は電子線照射処理されたフィラメント束を有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させる工程である。
【0043】
上記超臨界流体又は亜臨界流体は、特に限定されず、従来公知の超臨界流体又は亜臨界流体の1種又は2種以上を混用して使用することができる。超臨界流体又は亜臨界流体としては、二酸化炭素、一酸化二窒素、トリフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、メタン、エタン及びエチレンからなる群より選択される1種以上から主としてなる超臨界流体又は亜臨界流体が好ましい。より好ましい超臨界流体又は亜臨界流体は、二酸化炭素の超臨界流体又は亜臨界流体である。二酸化炭素の超臨界流体又は亜臨界流体は、繊維材料への吸着性に優れ、引火性や爆発性がなく安全であり、入手も容易である。超臨界流体又は亜臨界流体の温度範囲は、特に限定されないが、50℃〜200℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃であり、更に好ましくは80℃〜100℃である。
【0044】
超臨界流体は、物質ごとに超臨界条件が異なり、例えば、COは臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPaで超臨界流体となり、HOは臨界温度374℃、22.1MPaで超臨界状態となる。亜臨界流体も、物質ごとに亜臨界条件は異なっているが、一般に超臨界流体よりも約10℃程度低い温度、臨界圧力程度の圧力で亜臨界状態となる。従って、フィラメント束を有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬する際の圧力及び温度条件は、超臨界状態又は亜臨界状態が実現される温度及び圧力条件の範囲内で適宜設定すればよい。好ましい条件は、フィラメントの種類や、超臨界流体又は亜臨界流体の種類によっても異なるが、一般には温度を超臨界温度以上377℃以下、圧力を超臨界圧力以上35MPa以下とすることが好ましい。又、浸漬時間としては、5〜120分間程度が好ましい。二酸化炭素を用いる場合、浸漬温度は150℃以下が好ましく、圧力は5.0〜35.0MPaが好ましく、浸漬時間は5〜60分間が好ましい。
【0045】
フィラメント束の浸漬温度は、超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬された状態での耐熱性に乏しい有機繊維を処理する場合でも、繊維の特性を損なわないことが挙げられ、一般に50℃〜200℃で行われるが、好ましい温度は70℃〜150℃であり、更に好ましくは80℃〜100℃である。但し、有機繊維に有機金属錯体を浸漬すると同時に超臨界流体又は亜臨界流体中で熱分解にて金属を還元させる場合は、高温での処理の方が好ましく、100℃〜200℃が好ましく、更に好ましくは120℃〜180℃である。
【0046】
上記有機金属錯体としては、例えば、M(OR)、M(OCOR)、M(OSOR)もしくはM(RCOCHCOR)の化学式で示される錯体、あるいは下記(1)の化学式で示されるジエン類の錯体、下記(2)の化学式で示されるメタロセン類の錯体が挙げられる。なお、それらいずれの化学式においても、Mは金属を表わし、Rは水素、炭化水素基又はCFを表わす。
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
上記化学式中のRで表わされる炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは1〜50である。かかる炭化水素基としては、例えば不飽和脂肪族炭化水素基、飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式−脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族−脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0050】
飽和脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−へキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルへキシル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルへキシル、3−メチルへプチル、n−ノニル、イソノニル、1−メチルオクチル、エチルへプチル、n−デシル、1−メチルノニル、n−ウンデシル、1,1−ジメチルノニル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘプタデシル及びn−オクタデシル基、並びにエチレンやプロピレン、ブチレンの重合物あるいはそれらの共重合物よりなる基等の炭化水素基が挙げられる。
【0051】
不飽和脂肪族炭化水素基の具体例としては、ビニル、アリル、イソプロペニル、2−ブテニル、2−メチルアリル、1,1−ジメチルアリル、3−メチル−2−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、2−フェニルビニル、オクテニル、ノネニル及びデセニル基、並びにアセチレンやブタジエン、イソプロピレンの重合物あるいはそれらの共重合物よりなる基等の炭化水素基が挙げられる。
【0052】
脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、3−メチルシクロへキシル、4−メチルシクロへキシル、4−エチルシクロへキシル、2−メチルシクロオクチル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、4−メチルシクロへキセニル、4−エチルシクロへキセニル及びシクロペンタジエニル基等の炭化水素基が挙げられる。
【0053】
脂環式−脂肪族炭化水素基の具体例としては、シクロプロピルエチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、シクロへキシルメチル、シクロへキシルエチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルエチル、3−メチルシクロへキシルプロピル、4−メチルシクロへキシルエチル、4−エチルシクロへキシルエチル、2−メチルシクロオクチルエチル、シクロプロペニルブチル、シクロブテニルエチル、シクロペンテニルエチル、シクロヘキセニルメチル、シクロヘプテニルメチル、シクロオクテニルエチル、4−メチルシクロへキセニルプロピル及び4−エチルシクロへキセニルペンチル基等の炭化水素基が挙げられる。
【0054】
芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル、ナフチル、4−メチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,4,5−トリメチルフェニル、2−エチルフェニル、n−ブチルフェニル、t−ブチルフェニル、アミルフェニル、へキシルフェニル、ノニルフェニル、2−tert−ブチル−5−メチルフェニル、シクロへキシルフェニル、クレジル、オキシエチルクレジル、2−メトキシ−4−tert−ブチルフェニル及びドデシルフェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0055】
芳香族−脂肪族炭化水素基の具体例としては、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル、1−(4−メチルフェニル)エチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−メチルベンジル及び1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基等が挙げられる。
【0056】
超臨界流体又は亜臨界流体には、有機金属錯体の溶解性を高める、超臨界流体又は亜臨界流体とフィラメントとの親和性を高める、メッキ金属膜密着性を向上させる等の目的で、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジベンジルエーテル、トリアジンチオール類、アミン類及びシランカップリング剤類からなる群より選択される1種以上の添加剤(以下、「エントレーナ」という。)が添加されることが好ましい。エントレーナの添加量は、特に限定されないが、一般に、超臨界流体又は亜臨界流体の物質量に対して1〜25モル%が好ましい。
【0057】
上記トリアジンチオール類としては、例えば、トリアジンチオール誘導体の6−位の置換基が−SH、−N(C、−NHC及びこれらの金属塩からなる群より選ばれる基であるトリアジンチオール誘導体等が挙げられる。又、アミン類としては、例えば、n−ブチルアブチルアミン、3−アミノ−5−メチルイソオキサゾール等が挙げられる。又、シランカップリング剤類としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
上記有機金属錯体は、後の第3工程において還元して活性化され金属粒又は金属層を形成し、第4工程において、更に、金属粒又は金属層は無電解メッキされて金属メッキ層が形成されるので、有機金属錯体を構成する金属(M)としては、例えば、金、白金、パラジウム、ニッケル、銀、銅、鉄、チタン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルト、インジウム、イットリウム、バリウム、ガリウム、スカンジウム、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、ルビジウム、セシウム、バナジウム、鉛、ニオブ、クロム、リチウム、カリウム、ランタノイド族57番〜71番の元素からなる群より選択される1種以上の金属が挙げられる。ランタノイド族57番〜71番の元素の中では、ネオジム、サマリウム及びジスプロシウムが好ましい。
【0059】
二酸化炭素の超臨界流体又は亜臨界流体を用いる場合の好ましい有機金属錯体としては、例えば、ベータージケトネート類(例えば、フッ素系パラジウム錯体)、ジエン類(例えば、ジメチルシクロオクタジエン白金)、メタロセン類(例えば、ニッケロセン)が好ましい。中でも、二酸化炭素の超臨界流体又は亜臨界流体に対する溶解度が高いこと、無電解メッキ処理の際に金属層が均一に成長すること、酸化による触媒活性低下が小さいこと及びフィラメントに吸着しやすいこと等の理由で、フッ素系パラジウム錯体が好ましい。
【0060】
フィラメント束を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬する際の有機金属錯体の使用量としては、有機金属錯体の種類によっても変わるが、一般的にフィラメント束の質量に対して0.1〜50質量%が好ましい。有機金属錯体の使用量が少なすぎると、フィラメント表面への有機金属錯体の付着が不均一になる場合があり、多すぎると、フィラメント表面に付着するだけでなくフィラメント内部にまで大量に染み込み、必要以上の有機金属錯体がフィラメント表面に付着することになるので、コスト的に好ましくない。又、有機金属錯体は後の第3工程において還元して活性化され第4工程における無電解メッキの際の核又は下地層として作用するので有機金属錯体の使用量は少なくてよく、フィラメント束の質量に対して、0.2〜3.0質量%がより好ましい。
【0061】
本発明においては、上記フィラメント束を有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させるのであるが、超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬する際のフィラメント束の形状は特に限定されず、例えば、フィラメント束を枷を用いて又は用いずに幾重にも折畳んだもの、フィラメント束を無芯で又は多孔性管を芯としてロール状に捲き回したもの(無芯ロール又は多孔性管ロール)等が挙げられる。
【0062】
上記無芯ロールは、例えば、フィラメント束を適当な芯の周りに捲き回してロールを形成した後、その芯をロールから抜くことによって作製することができる。具体的には、例えば、芯となる円筒の両端に取り外し可能な円盤を装着したボビンを用意し、このボビンにワインダーを利用してフィラメント束を捲きつけて所望のロールとなした後、円盤を取り外して芯の円筒を抜くことにより無芯ロールを作製することができる。このとき、上記円盤はその一方のみが取り外し可能であれば足りる。なお、芯が抜きやすいように、例えば、テフロン(登録商標)のような滑りやすい材料で形成された芯を用いるか、芯の回りに滑りやすいシートを巻いてからフィラメント束を捲きつける方法が採用できる。なお、プラズマ処理する際に、フィラメント束をリールで引取ってリールに巻きつけた場合には、リールの芯からそのままの形状で取り外せばよい。
【0063】
上記多孔性管ロールとしては、フィラメント束が多孔性管の周りにロール状に捲き回されてなるものが挙げられる。多孔性管としては、例えば、孔径1〜1000μm程度の孔を多数有する多孔質セラミックスからなる管を用いることができ、又、金属管(例えば、ステンレス管等)、プラスチック管、無孔質セラミックス管等の管肉に多数の貫通孔を穿設して用いることができる。上記の管肉に穿設される貫通孔の形状や数は特に限定されず、超臨界流体又は亜臨界流体の流通を考慮して適宜定めればよい。例えば、孔径を0.1〜5mm程度、隣接する孔との間隔を0.2〜10mm程度とすることが好ましい。更に、超臨界流体又は亜臨界流体を均一に分散させるために、上記の多数の貫通孔を穿設してなる多孔性管の外周に目の細かいネット状材等を巻いてからフィラメント束を捲き回すようにして使用することもできる。
【0064】
フィラメント束を無芯ロール又は多孔性管ロールとして、超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬すると、各フィラメントの間を超臨界流体又は亜臨界流体が容易に流通することができ、それら流体とフィラメント表面との接触が良くなる。即ち、フィラメント束が無芯ロールである場合にはその無芯の空間に上記超臨界流体又は亜臨界流体が満たされ、無芯ロールの内周部から外周部へ向かう方向に、或いは、その逆方向に上記超臨界流体又は亜臨界流体が移動できることが好ましい。多孔性管ロールの場合には、多孔性管の内側から孔を経由してロールの外周へ向かう方向に、或いはその逆方向に上記超臨界流体又は亜臨界流体が移動できることが好ましい。無芯ロールの内径や、多孔性管の内径の大きさは、かかる超臨界流体又は亜臨界流体の移動が確保される範囲内で適宜設定すればよい。又、ロールの外径、高さ等は、上記超臨界流体又は亜臨界流体の流通や装置の大きさを考慮して適宜設定すればよい。枷を用いて折畳む際の寸法(例えば枷の直径等)もまた、目的に応じて適宜設定すればよく、枷はさらに、装置の都合に合わせて適宜に束ねられたり、折畳まれたり、ねじられたりして処理に供されてもよい。
【0065】
上記フィラメント間の超臨界流体又は亜臨界流体の流通を良くするために、上記フィラメント束を折畳んだもの、無芯ロール又は多孔性管ロールの密度はあまり高くないほうが好ましい。具体的には、フィラメント束内の空隙率を、5〜95%とすることが好ましく、10〜80%とすることがより好ましい。但し、高機能の循環ポンプを使用する等して上記超臨界流体又は亜臨界流体の流速を高めることで、空隙率が低くても流通を改善することができる場合がある。
【0066】
なお、上記の空隙率は、次のようにして測定される。先ず、無芯ロール又は多孔性管ロール等の寸法を測定して、その見かけ体積Vaを算出する。例えば、外径R、内径r、高さhの円筒形であれば、V=π×(R−r)/4×h と算出される。次に、当該無芯ロール又は多孔性管ロール等の質量Wを測定し、この測定値と当該無芯ロール又は多孔性管ロール等を構成するフィラメントの真密度ρとから、真の体積Vを、V=W/ρ として算出する。そして、空隙率Pは、
P=[(V−V)/V]×100(%) という式により求められる。
【0067】
フィラメント束を有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させるには、例えば、耐圧容器からなる反応槽内にフィラメント束を配置し、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体、好ましくは有機金属錯体が溶解した超臨界流体又は亜臨界流体を導入することにより、該超臨界流体又は亜臨界流体にフィラメント束を浸漬すればよい。フィラメント表面に有機金属錯体を付着させる場合において、有機金属錯体の一部がフィラメント表面の下に存在していてもよい。
【0068】
有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体(以下、単に「流体」という。)にフィラメント束を浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させる方法を図面を参照して説明する。図4はフィラメント束を有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬するために使用できる装置の一例の概略を示す模式図である。
【0069】
図中10は反応槽であり、反応槽10内の下部に設けられたフィラメント束用置き台12上に、例えば、フィラメント束の無芯ロール11を供給しておく。9は、反応槽10内の上部に設けられた有機金属錯体置き台であり、所定量の例えば粉末状の有機金属錯体を供給しておく。有機金属錯体置き台9は、目の細かいメッシュ状の素材で構成されており、ここを通過した流体が反応槽10内を自由に流通できるようになされている。バルブ4を開いて所定量のエントレーナを反応槽10に予め仕込んだ後、バルブ4を閉鎖し、バルブ3を開いて、流体導入口7より流体を反応槽10内の有機金属錯体置き台9上に導入する。流体は有機金属錯体置き台9を通過する際に有機金属錯体を含み(好ましくは、有機金属錯体が流体に溶解された状態で、流体が有機金属錯体を含み)、反応槽10内は有機金属錯体を含む流体で満たされ、フィラメント束用置き台12上に供給されていた無芯ロール11のフィラメントは有機金属錯体を含む流体に浸漬される。
【0070】
反応槽10の下部及び側方の器壁14にはヒーターが内蔵されており、反応槽内温度を所定の温度に保つようになされている。又、反応槽10の下部には攪拌子13が回転可能に設置されており、攪拌子13を回転することにより、反応槽10内の流体を攪拌して有機金属錯体の溶解の促進、反応槽10内の温度の均一化及び有機金属錯体を含む流体のフィラメントへの接触量を増加することができる。攪拌子13で流体を攪拌する代わりに、無芯ロール11を反応槽10内で移動させる、例えば、回転台に無芯ロール11を取り付けて回転させる等の措置を講ずることにより、同様の効果を得ることもできる。必要に応じて、流体を攪拌しつつ、反応槽10内の圧力及び温度を所定の範囲に保った状態で、所望の時間、浸漬処理を行う。
【0071】
なお、バルブ3の上流側には、供給する流体の圧力を測定する圧力計2が設置され、圧力計2の更に上流側には常用の超臨界流体供給装置としての加圧ポンプ1やボンベ(図示せず)等が接続されている。又、バルブ4の上流には供給するエントレーナやメッキ液等の圧力を測定する圧力計6が設置されており、圧力計6の更に上流にはエントレーナやメッキ液等の供給装置としての加圧ポンプ5やボンベ(図示せず)等が接続されている。
【0072】
又、上記では予め所定量のエントレーナを反応槽10に仕込んでおいた場合を説明したが、エントレーナはそれ以外の方法によって添加されてもよい。例えば、圧力計2、6に表示される圧力を制御しつつ、流体にエントレーナを所望の比率で混合した混合流体を反応槽10に導入してもよいし、或いは流体が反応槽10に導入された後からエントレーナを追加してもよい。更に、エントレーナを予めフィラメントに浸漬する等の方法で付着させ、必要に応じて所望の処理を施してから当該フィラメントを反応槽内に設置してもよい。
【0073】
所定時間浸漬処理してフィラメント表面に有機金属錯体を付着させた後、流体排出口8を解放して反応槽10内から流体を排出し、徐々に減圧して、無芯ロール11を取りだすことにより、フィラメント表面に有機金属錯体が付着されたフィラメント束が得られる。なお、流体排出口8から排出された流体を回収して繰り返し使用することもできる。
【0074】
図5はフィラメント束の多孔性管ロールを有機金属錯体を含む流体に浸漬するために使用できる装置の一例の概略を示す模式図である。図中110は反応槽であり、循環ポンプ114により、反応槽110内の流体を循環させることができる。この循環によって有機金属錯体の流体への溶解を促進することができる。循環ポンプ114の上流はバルブ115を介して、反応槽110の下部に開口された流体循環用出口116に接続されており、下流側は圧力計117を介して、反応槽110の上部に開口された流体導入口107に接続されている。
【0075】
111は、ステンレス製多孔性管112を芯としてその周囲にフィラメント束が捲き回された多孔性管ロールであり、ステンレス製多孔性管112が上方を向くように、反応槽110内に設置する。多孔性管112の上部には、その上に有機金属錯体を供給した有機金属錯体置き台109を設置する。金属錯体置き台109の側面は流体不通過性材料で形成され、下面は目の細かいメッシュ状の素材で構成されており、且つその下面形状は多孔性管112の断面形状と略同一になされており、導入された流体は全て多孔性管112内に供給されるようになされている。
【0076】
バルブ106を開いて所定量のエントレーナを予め反応槽110に仕込んだ後、バルブ106を閉鎖し、次いで、バルブ103を開き、流体導入口107より多孔性管112を経由させて、流体を反応槽110に導入する。即ち、この装置例では、流体が流体導入口107から有機金属錯体置き台109を経由して多孔性管112の内側の空間に入り、多孔性管112の小孔から出た流体(有機金属錯体を含有する)が、フィラメントと接触しつつ反応槽110内に導入される。反応槽110内に満たされた流体は、流体循環用出口116から出て循環ポンプ114により再び流体導入口107に送られ、装置内を循環する。反応槽110の下部及び側方の器壁113にはヒーターが内蔵されており、反応槽内の温度を所定の温度に保つようになされている。
【0077】
なお、バルブ103の上流側には、供給する流体の圧力を測定しる圧力計102が設置され、圧力計102の更に上流側には常用の超臨界流体供給装置としての加圧ポンプ101やボンベ(図示せず)等が接続されている。又、バルブ106の上流には供給するエントレーナやメッキ液等の圧力を測定する圧力計105が設置されており、圧力計105の更に上流にはエントレーナやメッキ液等の供給装置としての加圧ポンプ104やボンベ(図示せず)等が接続されている。
【0078】
所定時間浸漬処理してフィラメント表面に有機金属錯体を付着させた後、流体排出口108を解放して反応槽110内から流体を排出し、徐々に減圧して、多孔性管ロール111を取りだすことにより、フィラメント表面に有機金属錯体が付着されたフィラメント束が得られる。なお、流体排出口108から排出された流体を回収して繰り返し使用することもできる。
【0079】
本発明の第3工程は、フィラメント表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化する工程である。
【0080】
有機金属錯体を還元して活性化する方法は、特に限定されないが、熱還元法が好ましい。具体的には、有機金属錯体を付着させたフィラメント束を、該有機金属錯体の熱還元温度以上に設定された温度雰囲気下に置くことで熱還元させることができる。かかる熱還元処理は、浸漬処理装置から取り出したフィラメント束をオーブン等に投入して行うことができるが、浸漬処理装置に適宜加熱装置を備えさせれば、流体を排出する前(有機金属錯体をフィラメント表面に付着させると同時又は付着後)又は排出した後に浸漬処理装置内で熱還元処理を行うこともできる。即ち、浸漬処理装置と熱還元処理装置を兼ねることのできる装置を用いることができる。
【0081】
又、フィラメント束が熱に弱く、熱還元処理温度まで上昇させることが適当でない場合には、還元剤を用いるとよい。該還元剤としては、例えば、水素、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、ヒドロキノン等が挙げられ、これらのうちから1種を選択して用いることができ、2種以上を選択して混用することもできる。
【0082】
上記還元剤を使用する場合には、例えば、0.1〜15M程度の濃度のテトラヒドロホウ酸ナトリウム等の還元剤を使用して、2〜15分間処理すればよい。還元処理によって有機金属錯体構造内のリガンドが外され、金属になる。
【0083】
又、水素等の気体還元剤として用いる場合には、浸漬処理後のフィラメント束を気密性の容器内に設置してから気体還元剤を導入し、該容器内の空間に気体還元剤を満たすという方法が好ましく採用される。或いは、浸漬処理に引き続いて、超臨界流体又は亜臨界流体を排出する前に、即ち、該流体中にフィラメント束が浸漬されている状態で、該流体中に気体還元剤、例えば、0.01〜15%の濃度の水素気体を吹き込むことで有機金属錯体を還元させてもよい。
【0084】
本発明の第4工程は、第3工程により有機金属錯体が還元され活性化されたフィラメントをメッキ液に浸漬して無電解メッキ処理を行い、金属メッキ層を形成する工程である。
【0085】
上記フィラメントは、フィラメント表面が超臨界流体又は亜臨界流体に接触することによって、フィラメントが膨潤し、超臨界流体又は亜臨界流体に含まれる有機金属錯体が膨潤で生じた隙間に埋め込まれるようになると考えられ、その後還元、活性化されると、フィラメント表面に活性化された触媒活性点が露出するので、フィラメント表面にアンカー効果のある活性化された金属が形成される。従って、その後に無電解メッキ処理を施すことでフィラメント表面に密着した金属メッキ層を形成することが可能となる。
【0086】
上記無電解メッキ処理は、大気圧下で行ってもよいし、超臨界流体又は亜臨界流体の存在下で行ってもよい。無電解メッキ処理により繊維表面に形成されるメッキ層としては、金属単体からなる層、合金からなる層或いはそれらの混合物からなる層であれば特に限定されない。
【0087】
上記無電解メッキ処理のためのメッキ液としては、特に限定されず、一般的に常用されるメッキ液を使用することができ、例えば、銅、銀、金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルト又はインジウムの中から選択される少なくとも一種の金属を含有するメッキ液が好ましい。
【0088】
メッキ層の厚さは、通常0.02μm以上であり、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.07μm以上であり、特に好ましくは0.1〜5.0μmである。厚さが0.02μm未満では、導電性が十分に発現できない場合がある。又、5.0μmより厚くしても、メッキ層厚さの増加率に対する導電性の向上率は小さくなってくるので導電性向上のメリットは少なく、その一方でメッキ層の柔軟性が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0089】
無電解メッキ処理の方法は、特に限定されず、例えば、大気圧下で行う場合は、前述の還元、活性化されたフィラメント束(導電性高強力繊維糸)を上記メッキ液が貯蔵されたに無電解メッキ槽に供給し浸漬して無電解メッキ処理すればよい。又、超臨界流体又は亜臨界流体の存在下で無電解メッキ処理を行う場合は、上記反応槽内でフィラメント束に有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体により有機金属錯体を付着させ、次いで、有機金属錯体を還元した後、反応槽内に無電解メッキ液を供給して無電解メッキ処理すればよい。
【0090】
又、無電解メッキ処理をする際には、フィラメント束(高分子繊維糸)全体にメッキ液が十分に浸透するよう、無電解メッキ槽の底面に超音波振動子を固定する等して、メッキ液に振動を与えながら処理することが好ましい。振動を与えて処理することにより、処理対象であるフィラメント束(高分子繊維糸)の内部にメッキ液を迅速に浸透させることができ、又、無電解メッキ処理において発生する気泡がフィラメント束(高分子繊維糸)に付着してもメッキ液の振動によりただちに除去できるので、フィラメント束(高分子繊維糸)表面にメッキ液が万遍なく作用して均一な金属メッキ層が形成されるようになるので好ましい。
【0091】
上記振動の振動周波数としては、10〜50kHzが好ましい。かかる振動周波数でメッキ液を振動させることにより、金属の析出速度が大きくなり、所定の厚さの金属層が得られるまでの時間が短縮され、又、析出反応に伴って発生する気泡が除去され、均一な金属層をより速く、安定して析出させることができる。振動周波数が10kHz未満では、メッキ液を振動させることによる効果が不十分となる傾向にあり、一方、50kHzを超えると、メッキ液が不安定になり濁りが生じたりする場合があるので好ましくない。
【0092】
本発明の第2の態様の導電性高強力繊維糸の製造方法は、多数のフィラメントが集合されてなる高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成し、該平板状のフィラメント束をプラズマ処理又は電子線照射処理する第1工程と、プラズマ処理又は電子線照射処理されたフィラメント束を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させる第2工程と、フィラメント表面に付着した有機金属錯体を還元して金属層を形成する第3工程を含むことを特徴とする。
【0093】
上記第1工程、第2工程及び第3工程は、上記第1の態様における第1工程、第2工程及び第3工程とそれぞれ同一であるが、第2工程でフィラメント表面に付着した有機金属錯体を第3工程において還元することにより金属層を形成するのであるから、有機金属錯体はフィラメント表面に有機金属錯体の皮膜が形成されるように添加されるのが好ましく、有機金属錯体の使用量は高強力繊維糸の質量に対して5〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜35質量%である。
【0094】
上記第3工程においてフィラメント表面に付着した有機金属錯体を還元して金属層を形成するが、金属層の厚さは、通常0.02μm以上であり、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.07μm以上であり、特に好ましくは0.1〜5.0μmである。厚さが0.02μm未満では、導電性が十分に発現できない場合がある。また、5.0μmより厚くしても、金属層厚さの増加率に対する導電性の向上率は小さくなってくるので導電性向上のメリットは少なく、その一方で金属層の柔軟性が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0095】
上記フィラメント表面に金属メッキ層(金属層)が形成された導電性高強力繊維糸は軽量で導電性が優れているが、更に導電性を向上させるために得られた導電性高強力繊維糸をメッキ液に浸漬して電解メッキ処理を行ってもよい。
【0096】
電解メッキ処理は無電解メッキ処理と比べて金属メッキ層(金属層)の厚さをコントロールしやすいので、かかる電解メッキ処理を行うことにより、使用目的に応じて金属メッキ層(金属層)の厚さを適宜調整し、ひいてはメッキフィラメントの機械的特性(硬さ等)や電気的特性(導電性、導電安定性、耐電圧性等)等を調整することができるので、更に電解メッキ処理を行うのが好ましい。なお、電解メッキ処理をする場合には得られる金属メッキ層の厚さが前述の範囲内になるように調整するのが好ましい。
【0097】
上記[12]に記載の導電性高強力繊維糸は、上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法により製造される導電性高強力繊維糸である。従って、上記導電性高強力繊維糸は、フィラメント表面に金属メッキ層(金属層)が密着性よく強固に被覆されており、軽量で導電性が優れている。
【実施例】
【0098】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されない。
【0099】
(実施例1)
開繊処理
直径約12μmのフィラメント1000本よりなるアラミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名「KEVLAR(登録商標)」)無油剤糸を開繊処理して、幅約7mmの平板状の開繊されたフィラメント束を得た。厚み方向のフィラメント数は3本であった。これを幅2cmの鍔付きリールに2m巻き取り、プラズマ処理を行った。
【0100】
ダイレクト方式のグロー放電プラズマ処理装置
図6はダイレクト方式のグロー放電プラズマ処理装置の一例を示す模式図である。図中21は、上部電極22と下部電極23よりなる対向電極である。上部電極22はSUS304製(材質:ステンレススチール)であり、長さ15cm、幅3cm、高さ2cmであり、下部電極23側の前面に石英プレートよりなる固体誘電体24が積層されている。
【0101】
下部電極23はSUS304製であり、長さ15cm、幅3cm、高さ2cmであり、上部電極22側の前面に石英プレートよりなる固体誘電体25が積層されている。固体誘電体24と固体誘電体25の間隔は2mmであり、放電空間30が形成されている。上部電極22及び下部電極23には、それぞれ内部に冷媒の流路(図示せず)が設置され、水冷されている。又、上部電極22には電源26が接続されており、下部電極23は接地極29に接続されている。開繊されたアラミド繊維は、放電空間30を幅3cmの方向に搬送可能になされている。
【0102】
上部電極22の両端部には、それぞれガス導入部27とガス排出部28が設置されている。ガス導入部27とガス排出部28にはそれぞれガス供給装置と排気装置(共に、図示せず。)が接続されている。ガス導入部27とガス排出部28は平板状のフィラメント束cの搬送方向dとは逆方向にガス流が形成されるように設置されている。
【0103】
グロー放電プラズマ処理
開繊されたフィラメント束を上記グロー放電プラズマ処理装置に供給し、大気圧下において、下記の通りグロー放電プラズマ処理(電源波形:パルス、電圧:15kV、周波数:30kHz)を行った。プラズマを処理するチャンバーは外気と遮蔽し、中には窒素ガスを25L/minずつパージして窒素雰囲気下で処理を行った。巻き出し側と巻き取り側のリールにはテンションをかけ、フィラメント束を0.1m/minの速度にて搬送した(処理時間18秒)。フィラメントはプラズマ照射部の誘電体には触れず、確実に両面がプラズマ処理されていた。処理後のフィラメント束は幅2cmのリールに再度巻き取った。プラズマ処理後のフィラメントを、ESCAにて表面の状態を確認したところ、窒素原子が67%増加していた。又、水接触角もプラズマ処理後は39°から0°に低下しており、表面に極性基が導入されたものと推定できる。なお、接触角の測定方法は全自動接触角測定装置OCA15EC(データフィジックス社製)を用いて行った。具体的には、プラズマ処理後のフィラメントをポリエチレン製のプラスチック板に5回巻きつけたサンプルと、プラズマ処理前のフィラメントをポリエチレン製のプラスチック板に5回巻きつけたサンプルとを比較した。液体(水)を注入したシリンジのニードル(外径0.21mm)から液体を2μl出し、ニードルを固体サンプルに近づけて液体を該サンプルのフィラメント上に滴下し、着滴後の固体サンプル表面へのぬれ広がりの様子を測定した(液滴供給スピード:0.5μl/秒、滴下量:2μl、接触角近似法:楕円近似)。結果を図7及び図8に示す。図8に示されるように、プラズマ処理をしていないサンプルでは、接触角の低下は400秒で飽和し、40°から接触角は低下しなかった。一方、プラズマ処理をしたサンプルでは、20秒程度で接触角は0°になった。
【0104】
超臨界流体による浸漬処理
有機金属錯体の超臨界流体による浸漬処理と金属の活性化は以下のように行い、プラズマ処理と有機金属錯体の超臨界流体による浸漬処理は同じ日に行った。先ず、上記条件でプラズマ処理したフィラメント束からなる直径10cmのカセ状繊維材料を作製した。次いで、図1に示した装置にて、以下に記載する操作により、カセ状繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体に浸漬させる浸漬処理を行った。超臨界流体としては二酸化炭素を用い、エントレーナとしてエタノールを添加し、有機金属錯体としてはPd錯体であるパラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートを用いた。内容積50mlの反応槽10内に、エントレーナであるエタノール2.5mlを事前に添加すると同時に、上記無芯ロール状繊維材料に対して1重量%のパラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートを添加した。上記の無芯ロール状繊維材料をフィラメント束の置き台12に載せた後、超臨界二酸化炭素流体を、バルブ3にて、流体導入口7より反応槽10に導入した。超臨界流体の注入圧力を示す圧力計2の圧力は15MPa、反応槽10の内部温度を80℃に保ち、攪拌子13の回転数は500〜1200rpmに維持した。
【0105】
超臨界二酸化炭素流体注入後から30分間の浸漬処理を行った後、超臨界二酸化炭素流体を流体排出口8から大気圧になるまで放出し、カセ状繊維材料を反応槽10から取り出した。この浸漬処理後のアラミド繊維を蛍光X線分析装置で分析したところ、Pd元素ピークが検出され、有機金属錯体の付着が確認できた。
【0106】
有機金属錯体の還元、活性化処理
次いで、上記の反応槽10から取り出したカセ状繊維材料を、140℃に温度設定したオーブン内に10分間置くことにより、フィラメント表面に付着した有機金属錯体の還元、活性化処理を行った。
【0107】
無電解メッキ処理
無電解メッキ液の処方は以下のようにして行った。430mlの純水に、「ATS−ADDCOPPER IW−A(奥野製薬工業株式会社製)」25mlを添加し、更に「ATS−ADDCOPPER IW−M(奥野製薬工業株式会社製)」40ml及び「ATS−ADDCOPPER C(奥野製薬工業株式会社製)」5mlを添加して、無電解銅メッキ液を調製した。この無電解メッキ液に、上記活性化処理後のカセ状繊維材料を吊り状に20分間浸漬することにより、銅メッキされたアラミド繊維を得た。このとき、無電解メッキ液には42kHzの超音波振動を付与し、無電解メッキ液の温度は42±2℃に設定して処理を行った。
【0108】
物性測定
得られた銅メッキされたアラミド繊維のフィラメント断面をSEMにて測定した結果、銅メッキ層の厚さは0.8μmであった。メッキ密着性は、得られたメッキされたアラミド繊維を試料として、粘着テープを用いて剥離試験(JIS H 8504−15.1 テープ試験法に準拠)を行うことにより測定した。粘着テープは強力タイプのもの(ニチバン株式会社製、商品名「ナイスタック(登録商標)NW−K15SF」)を用いた。メッキ密着性の結果を表1に示した。
【0109】
(実施例2)
直径約12μmのフィラメント1000本よりなるアラミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名「KEVLAR(登録商標)」)無油剤糸を開繊処理して、幅約7mmの平板状の開繊されたフィラメント束を得た。厚み方向のフィラメント数は3本であった。フィラメント束の搬送速度を0.6m/minにした以外は実施例1と同様にプラズマ処理を行った。
【0110】
上記条件でプラズマ処理したフィラメント束からなる直径10cmのカセ状繊維材料を作製した。次いで、図1に示した装置にて、以下に記載する操作により、カセ状繊維材料に、有機金属錯体を含む超臨界流体に浸漬させる浸漬処理を行った。内容積50mlの反応槽10内に、エントレーナであるエタノール2.5mlを事前に添加すると同時に、上記無芯ロール状繊維材料に対して25重量%のパラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートを添加した。上記の無芯ロール状繊維材料をフィラメント束の置き台12に載せた後、超臨界二酸化炭素流体を、バルブ3にて、流体導入口7より反応槽10に導入した。超臨界流体の注入圧力を示す圧力計2の圧力は15MPa、反応槽10の内部温度を80℃に保ち、攪拌子13の回転数は500〜1200rpmに維持した。
【0111】
超臨界二酸化炭素流体注入後30分間の浸漬処理を行った後、超臨界二酸化炭素流体を流体排出口8から大気圧になるまで放出した。カセ状繊維材料をそのまま反応槽10から取り出さずに、150℃に昇温し2時間熱処理し、フィラメント表面に付着した有機金属錯体の還元処理を行ったところ、直接Pdがメッキされた光沢を有する金属層を有するアラミド繊維が得られた。金属層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0112】
(実施例3)
直径約12μmのフィラメント1000本よりなるアラミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名「KEVLAR(登録商標)」)無油剤糸を開繊処理して、幅約6mmの平板状の開繊されたフィラメント束を得た。厚み方向のフィラメント数は5本であった。フィラメント束の搬送速度を0.8m/minにした以外は実施例1と同様にプラズマ処理を行った。
【0113】
上記条件でプラズマ処理したフィラメント束からなる直径10cmのカセ状繊維材料を作製した。次いで、図1に示した装置にて、以下に記載する操作により、カセ状繊維材料に、有機金属錯体を含む超臨界流体に浸漬させる浸漬処理を行った。内容積50mlの反応槽10内に、エントレーナであるエタノール2.5mlを事前に添加すると同時に、上記無芯ロール状繊維材料に対して1重量%のパラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートを添加した。上記の無芯ロール状繊維材料をフィラメント束の置き台12に載せた後、超臨界二酸化炭素流体を、バルブ3にて、流体導入口7より反応槽10に導入した。超臨界流体の注入圧力を示す圧力計2の圧力は15MPa、反応槽10の内部温度を80℃に保ち、攪拌子13の回転数は500〜1200rpmに維持した。
【0114】
超臨界二酸化炭素流体注入後30分間の浸漬処理を行った後、カセ状繊維材料をそのまま反応槽10から取り出さずに、15MPaを維持したまま150℃に昇温し2時間熱処理し、Pd金属を還元活性化した。続いてバルブ4から実施例1で使ったものと同じ組成の無電解メッキ液を反応槽10内に流し込み、超臨界二酸化炭素雰囲気中で30分間無電解銅メッキをいった。得られた銅メッキされたフィラメントを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、フィラメント表面の銅メッキ層の厚さは0.7μmであり、メッキされたアラミド繊維の導体抵抗率は0.03Ω/cmであった。又、銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0115】
(実施例4)
開繊した厚み方向のフィラメント数が4本のフィラメント束の搬送速度を1.0m/minにしてプラズマ処理を行った以外は実施例1と同様の処理を行って、フィラメント表面に銅メッキ層が形成されたアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0116】
(実施例5)
プラズマ処理を行ってから有機金属錯体の超臨界流体による浸漬処理を行うまで8日間サンプルを保管した以外は実施例1と同様の処理を行って、フィラメント表面に銅メッキ層が形成されたアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0117】
(実施例6)
窒素流量を10L/minにしてプラズマ処理を行った以外は実施例1と同様の処理を行って、フィラメント表面に銅メッキ層が形成されたアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0118】
(実施例7)
直径約12μmのフィラメントを267本有するアラミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名「KEVLAR(登録商標)」)無油剤糸を開繊処理して、幅約4mmの平板状の開繊されたフィラメント束を得た。厚み方向のフィラメント数は2本であった。これを幅2cmの鍔付きリールに2m巻き取り、実施例1と同じ条件でプラズマ処理を行った。
【0119】
有機金属錯体の超臨界流体による浸漬処理と金属の活性化は以下のように行い、プラズマ処理と有機金属錯体の超臨界流体による浸漬処理は同じ日に行った。まず、上記プラズマ処理したフィラメント束からなる直径10cmのカセ状繊維材料を作製した。次いで、図1に示す装置にて、以下に記載する操作により、カセ状繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体に浸漬させる浸漬処理を行った。超臨界流体としては二酸化炭素を用い、エントレーナとしてエタノールを添加し、有機金属錯体としてはPd錯体であるパラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートを用いた。内容積50mlの反応槽10内に、エントレーナであるエタノール2.5mlを事前に添加すると同時に、上記無芯ロール状繊維材料に対して1重量%のパラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートを添加した。上記の無芯ロール状繊維材料をフィラメント束置き台12に載せた後、超臨界二酸化炭素流体を、バルブ3にて、液体導入口7より反応槽10に導入した。超臨界流体の注入圧力を示す圧力計2の圧力は15MPa、反応槽10の内部温度を150℃に保ち、攪拌子13の回転数は500〜1200rpmに維持した。
【0120】
超臨界二酸化炭素流体注入後から30分間の浸漬処理を行った後、超臨界二酸化炭素流体を液体排出口8から大気圧になるまで放出し、カセ状繊維材料を反応槽10から取り出した。次いで、こうして有機金属錯体の付着及び還元、活性化されたカセ状繊維材料に以下のようにして無電解メッキを行った。
【0121】
無電解メッキ液の処方は以下のようにして行った。430mlの純水に、「ATS−ADDCOPPER IW−A(奥野製薬工業株式会社製)」25mlを添加し、更に「ATS−ADDCOPPER IW−M(奥野製薬工業株式会社製)」40ml及び「ATS−ADDCOPPER C(奥野製薬工業株式会社製)」5mlを添加して、無電解銅メッキ液を調製した。この無電解メッキ液に、上記活性化されたカセ状繊維材料を吊り状に無電解メッキ液に20分間浸漬することにより、銅メッキされたアラミド繊維を得た。このとき、無電解メッキ液には24kHzの超音波振動を付与し、無電解メッキ液の温度は42±2℃に設定して処理を行った。得られたアラミド繊維の銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0122】
(実施例8)
直径約12μmのフィラメントを267本有するアラミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名「KEVLAR」(登録商標))無油剤糸を開繊処理して、幅約4mmの平板状の開繊されたフィラメント束を得た。厚み方向のフィラメント数は2本であった。これを幅2cmの鍔付きリールに2m巻き取り、実施例1と同じ条件でプラズマ処理を行った。
【0123】
プラズマ処理の二日後に、プラズマ処理したフィラメント束からなる直径10cmのカセ状繊維材料を作製した。このカセ状繊維材料を、実施例7と同様にして有機金属錯体の超臨界流体による浸漬処理と金属の活性化処理を行った。次いで、圧力を15MPaに保持し、槽温度を50℃まで下げ、活性化処理したカセ状繊維材料を反応槽10に配置した状態で(反応槽10から取り出さず)、バルブ4から実施例1で使ったものと同じ組成の無電解メッキ液を反応槽10内に流し込み、超臨界二酸化炭素雰囲気中で30分間無電解銅メッキを行った。
【0124】
得られた銅メッキされたフィラメントを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、フィラメント表面に綺麗な銅メッキ層が形成されていることを確認できた。この銅メッキ層の厚さは0.7μmであり、メッキされたアラミド繊維の導体抵抗率は0.03Ω/cmであった。又、銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0125】
(実施例9)
直径約12μmのフィラメントを267本有するアラミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名「KEVLAR(登録商標)」)無油剤糸を開繊処理して、幅約3mmの平板状の開繊されたフィラメント束を得た。厚み方向のフィラメント数は3本であった。これを幅2cmの鍔付きリールに2m巻き取り、実施例1と同じ条件でプラズマ処理を行った。
プラズマ処理の二日後に、プラズマ処理したフィラメント束からなる直径10cmのカセ状繊維材料を作製した。このカセ状繊維材料を、図1に示す装置にて、実施例1と同様にして有機金属錯体の超臨界流体による浸漬処理及び金属の活性化処理を行い、次いで、活性化処理後のカセ状繊維材料に実施例1と同じ条件で無電解メッキ処理を行った。得られた無電解銅メッキアラミド繊維を電解銅メッキ液中に走行させ、電流2Aで5分間電解メッキ処理を行った。
【0126】
上記で得られた電解メッキされたアラミド繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ繊維表面に綺麗な銅メッキ層が形成されていることを確認できた。この銅メッキ層の厚さは1.5μm、メッキされたアラミド繊維の導体抵抗率は0.006Ω/cmであった。又、銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0127】
(比較例1)
油剤を含有するアラミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名「KEVLAR(登録商標)」)を用いた以外は実施例1と同様の処理を行って、銅メッキされたアラミド繊維を得た。銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0128】
(比較例2)
開繊処理を行わない以外は実施例1と同様の処理を行って、銅メッキされたアラミド繊維を得た。銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0129】
(比較例3)
プロセスガスとして酸素を用いてプラズマ処理を行ったこと及び開繊を行わないこと以外は実施例1と同様の処理を行って、銅メッキされたアラミド繊維を得た。銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0130】
(比較例4)
プロセスガスとして窒素と酸素を混合したものを用いてプラズマ処理を行ったこと及び開繊を行わないこと以外は実施例1と同様の処理を行って、銅メッキされたアラミド繊維を得た。各ガスの流量は窒素:20L/min、酸素5L/minとした。銅メッキ層のメッキ密着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0131】
【表1】

表1(密着性:全くテープにメッキが残らないものを◎:非常に良い、テープにわずかにメッキが残ったものを○:良い、テープにメッキの一部が付着しているものを△:悪い、全てのメッキがテープに残っているものを×:非常に悪い、と目視により判定した。)
【符号の説明】
【0132】
a 高強力繊維糸
b フィラメント
c 平板状のフィラメント束
2 圧力計
3 バルブ
4 バルブ
6 圧力計
7 流体導入口
8 流体排出口
9 有機金属錯体置き台
10 反応槽
11 フィラメント束の無芯ロール
12 フィラメント束の置き台
13 攪拌子
14 器壁
102 圧力計
103 バルブ
106 バルブ
107 流体導入口
108 流体排出口
109 有機金属錯体置き台
110 反応槽
111 多孔性管ロール
112 多孔性管
113 器壁
114 循環ポンプ
115 バルブ
116 流体循環用出口
117 圧力計
21 対向電極
22 上部電極
23 下部電極
24 固体誘電体
25 固体誘電体
27 ガス導入部
28 ガス排出部
30 放電空間
40 ニードル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のフィラメントが集合されてなり、油剤を含有しない高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成し、該平板状のフィラメント束をプラズマ処理又は電子線照射処理する第1工程と、プラズマ処理又は電子線照射処理されたフィラメント束を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させる第2工程と、フィラメント表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化する第3工程と、このフィラメントをメッキ液に浸漬して無電解メッキ処理を行い金属メッキ層を形成する第4工程を含むことを特徴とする導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項2】
無電解メッキ処理を、大気圧下若しくは超臨界流体又は亜臨界流体の存在下に行うことを特徴とする請求項1に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項3】
多数のフィラメントが集合されてなる高強力繊維糸を開繊して平板状のフィラメント束を形成し、該平板状のフィラメント束をプラズマ処理又は電子線照射処理する第1工程と、プラズマ処理又は電子線照射処理されたフィラメント束を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することによりフィラメント表面に有機金属錯体を付着させる第2工程と、フィラメント表面に付着した有機金属錯体を還元して金属層を形成する第3工程を含むことを特徴とする導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項4】
第2工程及び第3工程を超臨界流体雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項5】
更に、電解メッキを行う工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項6】
フィラメントが、アラミド繊維、ポリアミド繊維又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項7】
平板状のフィラメント束における厚み方向のフィラメント数が7本以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項8】
プラズマ処理が、不活性ガス下における大気圧プラズマ処理であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項9】
プラズマ処理が、窒素雰囲気下における大気圧プラズマ処理であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項10】
有機金属錯体が、ベータージケトネート類を配位子に持つもの、ジエン類を配位子に持つもの又はメタロセン類であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項11】
超臨界流体又は亜臨界流体は、二酸化炭素、一酸化二窒素、トリフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、メタン、エタン及びエチレンよりなる群から選ばれた1種以上の流体からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性高強力繊維糸の製造方法により製造される導電性高強力繊維糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−100934(P2010−100934A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214937(P2009−214937)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】