説明

導電性PTFEテープ

本発明は、導電性表面を有するフッ素重合体テープを対象とする。より詳細には、本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)テープ、およびPTFEと気相成長炭素繊維またはカーボンナノチューブまたは両者の組み合わせを混合することにより導電性テープを製造する方法を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年4月29日に出願された「Conductive PTFE tape by blending single−wall nanotube」という題目の仮出願第60/566,632号明細書、および2004年4月29日に出願された「Conductive PTFE tape by blending vapor−grown carbon fiber or multi−wall carbon nanotube」という題目の仮出願第60/566,633号明細書に関連する。
【0002】
本発明は、導電性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)テープの製造を対象とする。
【背景技術】
【0003】
米国特許第6,384,128号明細書は、混合物を溶融し、混練し、押し出しする単軸または2軸スクリュー押出成形機内で様々な熱可塑性樹脂を導電性繊維および炭素粉末と混合した組成物を開示している。
【0004】
米国特許第6,528,572号明細書は、種々様々の熱可塑性樹脂中に含まれた帯電防止剤を有する炭素繊維またはカーボンブラックなどの導電性フィラーを開示している。
【0005】
米国特許第6,689,835号明細書は、重合体樹脂と、小炭素繊維および炭素粉末または繊維状非導電性フィラーまたは両者の組み合わせを含む導電性フィラー系と、を含む導電性重合体組成物を開示している。
【0006】
米国特許出願公開第2003/0068550号明細書は、炭素材料/導電性高分子複合材料から構成される電極が、導電性高分子で被覆されていることを開示している。
【0007】
米国特許出願公開第2003/0158323号明細書は、高分子に単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ(CNT)を有効に分散させる方法を開示している。
【0008】
米国特許出願公開第2003/0181568号明細書は、米国特許第6,689,835号明細書に類似する組成物を開示している。
【0009】
米国特許出願公開第2004/0028859号明細書は、水エマルジョン高分子バインダーを有する導電性および/または電磁放射吸収性コーティング組成物を開示している。
【0010】
米国特許出願公開第2004/0029706号明細書は、セラミックホストおよびナノ構造炭素材料を含むセラミックナノ複合材料を開示している。
【0011】
米国特許出願公開第2004/0077771号明細書は、米国特許第6,384,128号明細書に類似する組成物を開示している。
【0012】
米国特許出願公開第2004/0262581号明細書は、重合体樹脂、カーボンナノチューブ、および任意の可塑剤を含む組成物を製造する方法を開示している。
【0013】
米国特許出願公開第2005/0038225号明細書は、高分子前駆体の重合工程の前またはその工程の間に、高分子前駆体にSWNTを添加することにより製造される、有機高分子および単層カーボンナノチューブ(SWNT)組成物を含む組成物を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、導電性表面を有するフッ素重合体テープを対象とする。より詳細には、本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)テープ、およびPTFEと気相成長炭素繊維またはカーボンナノチューブまたは両者の組み合わせを混合することにより導電性テープを製造する方法を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の好ましい実施形態は、導電性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)テープおよびその製造方法に関する。PTFEは、導電性テープを製造するために使用することができるパーフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)(PCTFE)、フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、アモルファスフッ素重合体(AF)、およびエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)を含むフッ素重合体の特有の製品の1つである。高分子であるPTFEは、極めて不活性なテープを形成する。460kj/molの解離エネルギーを有する炭素−フッ素結合は、有機化学において知られている最も強い結合の1つであり、極端な条件(例えば、1000°Fを超える熱)下でのみ溶融することができる。この不活性な特性によって、PTFEは、バッテリー構造、燃料電池等など、強酸を扱う場合に選択する高分子となされていた。PTFEテープは、本明細書に定義するように、2つの表面を有し、約0.001インチ〜約0.100インチの厚みを有するシートである。
【0016】
導電性フッ素重合体テープを製造する好ましい方法は、ペースト押し出しによる。しかし、テープは、フィルムキャスティングによって作製されてもよい。両方の工程では、炭素は、フッ素重合体、好ましくはPTFEで分散されなければならない。カーボンブラックを使用して導電性テープを製造することを試みる場合、現実的な導電性を達成するために必要な約20%のカーボンブラックをPTFEに添加することによっては、混合物の粘性が高すぎ、正常なペースト押し出し方法によってテープを製造することができないことがわかった。さらに、PTFEテープの物理的性質(例えば、張力および伸長)が著しく低下される。
【0017】
PTFE樹脂は、凝固分散高分子(微細で均一な粉末)、本発明で使用される好ましい樹脂、または粒状粉として商業的に製造される。
【0018】
本発明のための好ましい炭素は、気相成長繊維(VGCF)である。カーボンナノチューブも使用されてもよい。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)または多層カーボンナノチューブ(MWNT)、またはそれらの混合物であってもよい。ナノチューブは、超音波法を使用して最初に処理されることなく、PTFEで容易に分散されないことがわかった。ナノチューブの製造では、SWNTまたはMWNTは、ファンデルワールス力によって互いに付着する、または集束されると考えられる。この集束は、つまり、均一なナノメーター(nm)サイズの炭素よりはむしろ非均一な炭素を引き起こし、集束された炭素は、かなり大きなサイズの炭素として、PTFEとの分散物中で作用し、カーボンブラックにおけるかなり大きなサイズの炭素の特性を有する。分散性で均一な炭素を製造するために使用される超音波法は、ナノチューブ、SWNTまたはMWNTを、ペースト押し出し工程で使用される滑剤、好ましくは、イソパラフィン系溶剤に入れることである。ガラス容器内のナノチューブおよび滑剤混合物は、しばらくの間、40kHz〜70kHzの水浴ソニケーター内に、典型的に10分〜48時間入れられる。超音波処理工程後、ナノチューブは、PTFE樹脂で分散され、混合物は、ペースト押し出し工程で押し出される。
【0019】
いくつかのVGCFのための製造工程は、ナノチューブの集束特性を有することがわかった。同様に、VGCFは、水浴ソニケーター内で処理されて、PTFE樹脂で分散性炭素を製造してもよい。
【0020】
炭素、VGCFまたは超音波処理されたSWNT、MWNTまたはVGCFをPTFEで分散させる好ましい方法は、ペースト押し出し工程の間、ペーストを製造するための調製において、Gemco、Turbulaシェーカーミキサーなどのタンブリング装置内である。炭素およびPTFEは、滑剤を添加して所望の濃度でタンブリングされる。滑剤は、イソパラフィン系溶剤であることが好ましい。しかし、N,Nジメチルホルムアミド(DMF)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、12−アミノドデカン酸、テトラヒドロフラン(THF)、または、O−ジクロロベンゼン(ODCB)が使用されてもよい。炭素は、超音波処理工程によって分散されると、炭素と共に使用される滑剤は、タンブリング装置に直接添加されてもよい。必要ならば、タンブリング後、混合物は、さらに、高せん断装置で混合される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1を参照すると、押出成形機1は、プリフォーム2を、金型3を通して押し進める。金型3は、円錐金型、フィッシュテール金型、コートハンガー金型、または特別独自仕様の金型であってもよく、各金型は、カレンダ−4内で2つのローラー間に導入されるシートを直接または間接的に形成する。シートは、次いで、一連のローラー、蒸発オーブン内に説明される4つのローラーに、ローラーによって運ばれる。オーブン内には、図示せぬバッフルがあってもよく、バッフルは、各ローラーのまわりの温度が調節されることを可能にし、蒸発された滑剤が、有効で安全な環境でオーブンから取り除かれることを可能にする。シートは、オーブン5から取り除かれ、完成したテープとして、巻き取り機6に巻回される。オーブン5を通り抜けて、所望の厚みの完成したテープを得るとき、蒸発オーブン5中のローラーは、独立した速度で作動してシートの厚みを伸長、低減してもよい。図1で説明されるものは、従来の商業用ペースト押し出し工程である。
【0022】
以下、図2を参照して、プリフォーム2を製造するための装置が説明される。特定の装置は、自動化および量によるものであり、または、手動制御される装置であってもよい。操作は、プレス7を満たすために、所望のペーストの濃度で、PTFE、炭素および滑剤の混合された混合物の所望の量を入れることである。プレス7と実質的に同じ寸法のヘッド9を有するピストン8は、プリフォーム2中にペーストを詰める。詰められたプリフォーム2として、プリフォーム2は、単一構造として処理され、金型3に導入されてもよい。
【0023】
本発明を説明するために、以下の実施例が挙げられる。
【0024】
(実施例1)
本実施例は、好ましい炭素がVGCFである好ましい実施形態の1つを示す。
【0025】
タンブリング装置では、VGCFの5重量%〜7重量%およびPTFEの65重量%〜75重量%が、30分間〜60分間、タンブリングされる。タンブリングする間、滑剤の15重量%〜25重量%が、混合物に吹き付けられる。あるいは、滑剤は、タンブリング前に、VGCFとPTFEとの混合物に吹き付けられてもよい。タンブリング後、予混合された混合物は、2.00ミリメートル(mm)の口径サイズの10番ふるいでふるいにかけられて、より大きな塊を取り除く。次いで、予混合された混合物は、ペースト押し出し工程を続ける前に、少なくとも24時間〜48時間、周囲条件下でプラスチック袋に入れられる。
【0026】
次いで、予混合された混合物は、400psi〜900psi下でプレスに入れられ、プリフォームを作製し、次いで、900psi〜1800psi下で押し出される。押し出されたシートは、調整され、4つの加熱帯蒸発オーブンに導入される。調整速度は、約11フィート/分であり、加熱帯は、それぞれ425°F、465°F、525°Fおよび530°Fである。4ミリメートル〜8ミリメートルの厚みを有するテープが作製される。
【0027】
テープの表面抵抗率は、10Ω/□〜10Ω/□の範囲にある。軸強度は、1000psi〜3000psiであり、軸伸長は、100%〜300%である、横張力は、600psi〜1000psiであり、横伸長は、500%〜800%である。より強いテープを得るために、製造されるようなテープは焼結(sinter)させることができる。焼結処理中に、テープは、PTFEがゲル状態を過ぎるために、327℃の融点を超えて、十分に長い間、加熱される。焼結後、テープの表面抵抗率は、10Ω/□まで低下する。軸張力は、4000psi〜7000psiであり、軸伸長は、100%〜250%であり、横張力は、3000psi〜5000psiであり、横伸長は、200%〜400%である。
【0028】
(実施例2)
本実施例は、炭素が、ナノチューブである好ましい実施形態の1つを説明する。
【0029】
カーボンナノチューブの1重量%〜2重量%、イソパラフィン系溶剤の20重量%〜30重量%、および低沸騰脂肪族アルコールの0.1重量%〜0.5重量%が、容器に入れられる。混合物は、1時間、40kHz〜70kHzの水浴ソニケーターに入れられる。次いで、PTFEの60重量%〜75重量%を含む混合物は、タンブリング装置内でタンブリングされる。タンブリング後、混合物は、さらに、高せん断速度装置で混合される。混合物は、少なくとも24時間、周囲条件でふるいにかけられ、密閉され、保存される。
【0030】
テープペースト押し出し手順は、押出圧力がより低く、900psi〜1200psiの範囲内にあるということを除いて、実施例1に記載されたものと同様である。
【0031】
テープの表面抵抗率は、10Ω/□〜10Ω/□の範囲内にある。軸強度は、500psi〜2000psiであり、軸伸長は、100%〜300%である、横張力は、300psi〜1000psiであり、横伸長は、500%〜800%である。焼結後、テープの表面抵抗率は、10Ω/□まで増加する。軸張力は、3000psi〜7000psiであり、軸伸長は、50%〜250%である、横張力は、800psi〜5000psiであり、横伸長は、100%〜400%である。
【0032】
(実施例3)
本実施例は、炭素が、VGCFとナノチューブとの混合物である好ましい実施形態の1つを説明する。
【0033】
VGCFおよびナノチューブの両方は、容器内に混合物を入れ、1時間、40kHz〜70kHzの水浴ソニケーターに入れることにより前処理される。テープペースト押し出し手順は、実施例2に記載されたものと同様である。
【0034】
以下、図3A、図3Bを参照すると、プレス7の断面は、通常、図3Aに示され、PTFE、炭素および滑剤の単一ペーストが、プレス7に導入される。PTFEテープは、シートの両面で同じ導電性を有することとなる。しかし、バッフルが、図3Bで説明されるようなプレス7で使用される場合、修正テープが作製される。修正テープは、シートの各面または導電性を有する一方の面および導電性を有さない他方の面で導電性が異なっていてもよい。
【0035】
(実施例4)
本実施例は、修正PTFEテープを説明する。
【0036】
図3Bで説明されるような2つの予混合された混合物を分離するためのバッフルを有するプレス7では、実施例1の組成物を有する一方の混合物は、Xを満たし、炭素(ここで使用されるようなPTFEの商業用混合物)を有さないPTFEの他方の混合物は、Yを満たす。バッフルは、ピストンが、プリフォームを形成するためにプレスに入るために取り除かれる。押し出し工程において、金型は、一方が、生成されたシート上にあり、他方が、底にあるように、2つの混合物の方向を維持するために使用される。作製されたテープは、導電性を有する一方の表面、およびかなり異なる導電性を有する他の表面を有する。修正テープの変形は可能である。
【0037】
本発明のテープは、バッテリーおよび燃料電池産業、医療産業、航空宇宙産業、自動車産業、パイプライン、ケーブル、ポンプ、バルブ、コンプレッサおよび工業シールにおいて重要な潜在的用途を有する。テープは、電磁遮蔽、静電気消散または帯電防止のために使用されてもよい。テープは、未焼結の回転棒に巻回されてチューブを形成してもよく、焼結時に液体を運ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】PTFEテープを製造する典型的なペースト押し出し工程の概略図である。
【図2】ペースト押し出し工程で使用されるPTFEプリフォームを製造するための概略図である。
【図3】ペースト押し出し工程で使用するためのPTFEプリフォームを製造するための装置の変形例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性表面を有する、フッ素重合体テープ。
【請求項2】
導電性表面を有する、PTFEテープ。
【請求項3】
前記導電性表面が、前記テープの両面にある、請求項2に記載のPTFEテープ。
【請求項4】
前記テープの一方の面が、前記テープの他方の面よりも導電性が高い、請求項2に記載のPTFEテープ。
【請求項5】
分散性炭素をPTFE樹脂と混合して、プリフォームを形成するステップと、
前記プリフォームを押し出してテープを形成するステップと、
を含む、導電性PTFEテープを製造する方法。
【請求項6】
前記分散性炭素が、気相成長炭素繊維である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分散性炭素が、カーボンナノチューブである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記分散性炭素が、気相成長炭素繊維およびカーボンナノチューブを含む炭素混合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
集束された炭素から分散性炭素を製造する方法であって、
前記集束された炭素およびイソパラフィン系溶剤を水浴ソニケーター内に入れるステップと、
前記集束された炭素およびイソパラフィン系溶剤の混合物を、所定の時間、超音波周波数にさらすステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記集束された炭素が、ナノチューブである、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−539539(P2008−539539A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508345(P2008−508345)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001396
【国際公開番号】WO2006/117679
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(504037391)コンパニ・プラステイツク・オムニウム (11)
【Fターム(参考)】