説明

導電膜の製造方法

【課題】各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電膜を製造するにあたって、導電膜の導電性を向上させることができる製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に導電性物質とバインダーとを含有する導電性金属部を形成する導電性金属部形成工程と、前記導電性金属部を蒸気に接触させる蒸気接触工程とを有する導電膜の製造方法において、前記蒸気接触工程は、前記導電性金属部を、過熱蒸気に接触させることを特徴とする。この場合、前記導電性金属部を平滑化処理する平滑化処理工程を有しるようにし、前記蒸気接触工程は、平滑化処理された前記導電性金属部を、前記過熱蒸気に接触させるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電膜として、金属等の導電層の細線を透明基板上にメッシュパターン状に形成したものが知られており、以下のような製造方法が知られている。透明基材表面に設けたハロゲン化銀感光層をパターン状に露光してパターン状に現像銀を形成し、これにめっきを施しパターン状の導電層を形成する方法(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような銀塩(特にハロゲン化銀)感光材料を用いた導電膜に、カレンダーロールによって平滑化処理を行うことで、導電膜の表面抵抗を十分に低減できる。しかも、所望のパターンで、均一な形状の金属銀部を形成することができ、導電膜の生産性をさらに向上させることができる、という効果もある(例えば特許文献2参照)。
【0004】
また、支持体上に形成された導電性金属部を蒸気に接触させて高い導電性を有する導電膜を得る方法が提案されている(特許文献3)。この特許文献3では、100℃以上140℃以下の蒸気を使用することが記載されている。
【0005】
ところで、蒸気として、飽和蒸気のほか、過熱蒸気が存在する。過熱蒸気を用いた例としては、例えば特許文献4〜6がある。
【0006】
特許文献4には、アルカリ可溶性基を有するアクリル樹脂と溶剤とを含有する下層液を塗布した後乾燥させて得られた下層と、ノボラック樹脂と赤外線吸収剤とを含有する画像記録層とが、支持体上に順次積層されたポジ型感光性平版印刷版の製造方法であって、塗布された前記下層液を乾燥させる下層乾燥処理工程に、90℃以上、200℃以下、かつ、5RH%以上、70RH%以下の水蒸気含有熱風を使用することが記載されている。
【0007】
特許文献5には、支持体上に感光層を形成する工程と、感光層上にオーバーコート層を塗布する工程と、オーバーコート層に熱風を供給する第1乾燥工程と、第1乾燥工程後前記オーバーコート層に熱風及び過熱蒸気を供給する第2乾燥工程とを含むことが記載されている。
【0008】
特許文献6には、乾燥包囲体内で湿った材料の少なくとも一部を過熱蒸気で乾燥させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−221564号公報
【特許文献2】特開2008−251417号公報
【特許文献3】特開2008−277249号公報
【特許文献4】特開2008−249817号公報
【特許文献5】特開2009−86343号公報
【特許文献6】特表平9−502252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した蒸気を用いた方法は、各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電膜を製造するにあたって、過熱蒸気を用いた例や加圧蒸気(加圧された飽和蒸気)を用いた例について記載がない。
【0011】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電膜を製造するにあたって、加圧蒸気(加圧された飽和蒸気)を用いることで、製造される導電膜の導電性を向上させることができる導電膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の他の目的は、各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電膜を製造するにあたって、過熱蒸気を用いることで、製造される導電膜の導電性を向上させることができる導電膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1] 第1の本発明に係る導電膜の製造方法は、支持体上に導電性物質とバインダーとを含有する導電性金属部を形成する工程と、前記導電性金属部を平滑化する平滑化処理工程と、平滑化処理された前記導電性金属部を蒸気に接触させる蒸気接触工程とを有する導電膜の製造方法において、前記蒸気接触工程は、平滑化処理された前記導電性金属部を、0.1MPaよりも高い圧力の飽和蒸気(加圧蒸気)に接触させ、前記飽和蒸気の圧力が絶対圧力で、101kPaA以上、361kPaA以下であることを特徴とする。
[2] 第1の本発明において、前記加圧蒸気に接触させる時間が5分以下であることを特徴とする。
[3] 第1の本発明において、前記加圧蒸気に接触させる時間が20秒〜120秒であることを特徴とする導電膜の製造方法。
[4] 第2の本発明に係る導電膜の製造方法は、支持体上に導電性物質とバインダーとを含有する導電性金属部を形成する導電性金属部形成工程と、前記導電性金属部を蒸気に接触させる蒸気接触工程とを有する導電膜の製造方法において、前記蒸気接触工程は、前記導電性金属部を、過熱蒸気に接触させることを特徴とする。
[5] 第2の本発明において、前記過熱蒸気の温度が1気圧で100℃以上、160℃以下であることを特徴とする。
[6] 第2の本発明において、前記支持体はポリエチレンテレフタレート(PET)にて構成されていることを特徴とする。
[7] 第2の本発明において、前記過熱蒸気の温度が1気圧で100℃以上、125℃以下であることを特徴とする。
[8] 第2の本発明において、前記過熱蒸気に接触させる時間が5分以下であることを特徴とする。
[9] 第2の本発明において、前記過熱蒸気に接触させる時間が4秒〜120秒であることを特徴とする。
[10] 第2の本発明において、前記過熱蒸気の供給量が500g/m3〜600g/m3であることを特徴とする。
[11] 第2の本発明において、前記導電性金属部を平滑化処理する平滑化処理工程を有し、前記蒸気接触工程は、平滑化処理された前記導電性金属部を、前記過熱蒸気に接触させることを特徴とする。
[12] 第1及び第2の本発明において、前記導電性金属部形成工程は、前記支持体上に銀塩を含有する乳剤層を形成して感光材料を作製し、その後、前記感光材料を露光し、現像処理することにより、前記支持体上に前記導電性金属部を形成することを特徴とする。
[13] 第1及び第2の本発明において、前記乳剤層は、銀/バインダの体積比率が1/1以上であることを特徴とする。
[14] 第1及び第2の本発明において、導電性金属部形成工程は、前記支持体上に導電性物質とバインダーとを含有するペーストを印刷することにより、前記支持体上に前記導電性金属部を形成することを特徴とする。
[15] 第1及び第2の本発明において、前記平滑化処理工程は、前記導電性金属部に対する平滑化処理を、線圧力1960N/cm(200kgf/cm)以上で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る導電膜の製造方法によれば、各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電膜を製造するにあたって、過熱蒸気又は加圧蒸気(加圧された飽和蒸気)を用いることで、製造される導電膜の導電性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】過熱蒸気を用いた第1方法に使用される第1乾燥装置の一例を示す構成図である。
【図2】加圧蒸気を用いた第2方法に使用される第2乾燥装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の導電膜の製造方法について説明する。なお、本発明の製造方法にて製造された導電膜は、車両のデフロスタ(霜取り装置)、窓ガラス等の一部として使用可能で、電流を流すことで発熱し発熱シートとしても機能し、また、タッチパネル用電極、無機EL素子、有機EL素子あるいは太陽電池の電極、又はプリント基板としても使用することができる。
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0017】
〈導電膜製造用感光材料〉
[支持体]
本発明の製造方法に用いられる感光材料の支持体としては、プラスチックフイルム、プラスチック板、及びガラス板等を用いることができる。上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料については、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0018】
[銀塩含有層]
本発明の製造方法に用いられる感光材料は、支持体上に、光センサとして銀塩を含む乳剤層(銀塩含有層)を有する。銀塩含有層は、銀塩のほか、バインダ、溶媒等を含有することができる。また、疑義がない場合には、銀塩を含む乳剤層(あるいは銀塩含有層)を単に「乳剤層」と呼ぶこともある。
【0019】
乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダ、溶媒等を含有することができる。以下、乳剤層に含まれる各成分について説明する。
【0020】
<染料>
感光材料には、少なくとも乳剤層に染料が含まれていてもよい。染料は、フィルタ染料としてもしくはイラジエーション防止その他種々の目的で乳剤層に含まれる。上記染料としては、固体分散染料を含有してよい。本発明に好ましく用いられる染料については、上述した特許文献7にその記載があるため、ここではその詳細説明を省略する。上記乳剤層中における染料の含有量は、イラジエーション防止等の効果と、添加量増加による感度低下の観点から、全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
【0021】
<銀塩>
本発明で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本発明においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0022】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
【0023】
本発明においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
【0024】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0025】
ハロゲン化銀は固体粒子状であり、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nm(1μm)であることが好ましく、0.1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0026】
本発明に用いられる乳剤層用塗布液であるハロゲン化銀乳剤は、P.Glafkides著 Chimieet Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Dufin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Forcal Press刊、1966年)、V.L.Zelikmanほか著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Forcal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0027】
<バインダ>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。本発明において上記バインダとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、後述の温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理により除去される水溶性バインダーの比率が多いことが好ましい。
【0028】
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0029】
上記バインダとして、好ましくはゼラチンが使用される。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチンの加水分解物、ゼラチン酵素分解物、その他(アミノ基、カルボキシル基を修飾したフタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン)を使用することができるが、銀塩調製工程において使用するゼラチンはアミノ基の正の電荷を無電荷あるいは負の電荷に変えたゼラチンを用いることが好ましいが、さらにフタル化ゼラチンを用いるのがより好ましい。
【0030】
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。乳剤層中のバインダの含有量は、銀/バインダ体積比率が1/1以上が好ましく、1.5/1以上がより好ましく、2/1以上がさらに好ましい。銀/バインダ体積比率の上限値は、20/1が好ましく、10/1がより好ましい。なお、銀/バインダ体積比は、原料のハロゲン化銀量/バインダ量(重量比)を銀量/バインダ量(重量比)に変換し、さらに銀量/バインダ量(重量比)を銀量/バインダ量(体積比)に変換することで求めることができる。
【0031】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等アルコール類、アセトン等、ケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0032】
[非感光性中間層]
ゼラチン又はゼラチン及びSBRを含む層であり、その他に架橋剤や界面活性剤等の添加剤を含有することができる。
[その他の層構成]
乳剤層の上に保護層を設けてもよい。本発明において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層上に形成される。その厚みは0.3μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
【0033】
〈導電膜の製造方法〉
上記の感光材料を用いて、導電膜を製造する方法について説明する。
本発明の導電膜の製造方法では、先ず、支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施す。その後、現像処理により形成された金属銀部を平滑化処理(例えば、カレンダー処理)する。なお、金属銀部を形成する際には、金属銀部と光透過性部又は金属銀部と絶縁性部を形成してもよく、全面露光することでフイルムの全面に金属銀部を形成することもできる。なお、本発明によって得られる導電膜は、パターン露光によって金属が支持体上に形成されたものであるが、パターン露光は走査露光方式であっても面露光方式であってもよい。また、金属銀部は露光部に形成される場合と、未露光部に形成される場合とがある。
パターンの例としては、電磁波シールド膜の製造用にはメッシュ状のパターンであり、プリント基板の製造には、配線パターンであり、パターンの形状の更なる詳細は目的に応じて適宜調整することができる。
【0034】
本発明の導電膜の製造方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
(1)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(2)物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(3)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理を行う態様も可能である)。
【0035】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、及び拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Prosess,第4版」等に解説されている。
【0036】
[露光]
本発明の製造方法では、支持体上に設けられた銀塩含有層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。照射光のパターン化の形態としては、電磁波シールド膜の製造用にはメッシュ状のパターンであり、プリント基板の製造には、配線パターンである。
【0037】
[現像処理]
本発明の製造方法では、銀塩含有層を露光した後、さらに現像処理が施される。上記現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもできる。市販品としては、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトールや、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、Dsd−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。リス現像液としては、KODAK社処方のD85等を用いることができる。
【0038】
本発明の製造方法では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部に金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。また、上記現像処理に続き、必要によりサンプルを水洗し、脱バインダ処理を行うことにより、さらに導電性の高いフイルムを得ることができる。なお、本発明では、現像温度、定着温度及び水洗温度は25℃以下で行うことが好ましい。
【0039】
本発明の製造方法における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明の製造方法において、定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0040】
現像処理で用いられる現像液には、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。上記画質向上剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合は、特にポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
【0041】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得やすいため好ましい。
【0042】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀部は銀及び非導電性の高分子からなり、銀/非導電性高分子の体積比率が1/1以上が好ましく、1.5/1以上がより好ましく、2/1以上さらに好ましく、3/1以上が特に好ましい。銀/非導電性高分子の体積比率の上限値は、20/1が好ましく、10/1がより好ましい。このような銀/非導電性高分子の体積比率は、金属銀部の断面を観察し、その銀部と非導電性高分子の断面積比から求めることもできる。
【0043】
本発明における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0044】
[酸化処理]
本発明の製造方法では、現像処理後の金属銀部は、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0045】
上記酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理等、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、銀塩含有層の露光及び現像処理後に行うことができる。
【0046】
本発明では、さらに露光及び現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により金属銀部の黒色が経時変化することを抑制できる。
【0047】
なお、本発明の製造方法においては、線幅、開口率、銀含有量を特定したメッシュ状の金属銀部を、露光・現像処理によって直接支持体上に形成するため、十分な表面抵抗率を有することから、さらに金属銀部に物理現象及び/又はメッキ処理を施してあらためて導電性を付与する必要がない。このため、簡易な工程で透光性の導電膜を製造することができる。
【0048】
上述の通り、本発明の透光性の導電膜は、車両のデフロスタ(霜取り装置)、窓ガラス等の一部として使用可能で、電流を流すことで発熱し発熱シートとしても機能し、また、タッチパネル用電極、無機EL素子、有機EL素子あるいは太陽電池の電極、又はプリント基板としても使用することができる。
【0049】
[還元処理]
現像処理後に還元水溶液に浸漬することで、好ましい導電性の高いフイルムを得ることができる。還元水溶液としては、亜硫酸ナトリム水溶液、ハイドロキノン水溶液、パラフェニレンジアミン水溶液、シュウ酸水溶液等を用いることができ、水溶液pHは10以上とすることがさらに好ましい。
【0050】
[導電性金属部のその他の形成方法]
上述の例では、支持体上に銀塩を含有する乳剤層を形成して感光材料を作製し、その後、前記感光材料を露光し、現像処理することにより、支持体上に前記導電性金属部を形成するようにしたが、その他、以下の方法で、支持体上に導電性金属部を形成するようにしてもよい。
【0051】
すなわち、支持体上に導電性物質(例えば銀)とバインダーとを含有するペーストを印刷することにより、支持体上に導電性金属部を形成する。あるいは、支持体上に導電性金属部(金属薄膜)をスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷して形成するようにしてもよい。
【0052】
[平滑化処理]
本発明の製造方法では、現像処理済みの金属銀部(全面金属銀部、金属メッシュ状パターン部又は金属配線パターン部)に平滑化処理を施す。これによって金属銀部の導電性が顕著に増大する。さらに、金属銀部と光透過性部の面積を好適に設計することで、高い電磁波シールド性と高い透光性とを同時に有し、且つ、メッシュ部が黒色の透光性電磁波シールド膜や、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電膜が得られる。
【0053】
平滑化処理は、例えばカレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは、通常、一対のロールからなる。以下、カレンダーロールを用いた平滑化処理をカレンダー処理と記す。
【0054】
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の上限値は1960N/cm(200kgf/cm)、面圧に換算すると699.4kgf/cm)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm2)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
【0055】
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダー種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0056】
〔蒸気に接触させる処理〕
そして、本発明の方法では、平滑化処理された導電性金属部を蒸気に接触させるようにしている(蒸気接触工程)。この蒸気接触工程は、平滑化処理された導電性金属部を、過熱蒸気に接触させる方法(第1方法)と、平滑化処理された導電性金属部を、加圧蒸気(加圧された飽和蒸気)に接触させる方法とがある。これにより短時間で簡便に導電性及び透明性を向上させることができる。水溶性バインダの一部が除去されて金属(導電性物質)同士の結合部位が増加しているものと考えられる。
【0057】
<第1方法:過熱蒸気による方法>
ここで、過熱蒸気を用いた第1方法について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に適用される第1乾燥装置10Aの構成の一例を説明する図である。この第1乾燥装置10Aは、平滑化処理済みの導電膜前駆体12の搬送方向に沿って形成された乾燥ボックス14を備え、その両端には導電膜前駆体12が出入りするためのスリット状の開口16a及び16bが形成されている。乾燥ボックス14の内部には、導電膜前駆体12を搬送する複数のパスローラ18が設けられている。
【0058】
乾燥ボックス14は、導電膜前駆体12上の導電性金属部に過熱蒸気を吹きつけて乾燥させる乾燥部20を有する。
【0059】
乾燥部20には、過熱蒸気22を導電膜前駆体12上の導電性金属部に吹きつけるための複数のノズル24が乾燥ボックス14の上方に配置されている。ノズル24は配管26を介して過熱蒸気発生装置28に接続されている。これにより、乾燥部20では、導電膜前駆体12上の導電性金属部に過熱蒸気22を吹き付けることができる。なお、ノズル24の個数や設置場所については、図1の例に限定されない。過熱蒸気22としては、過熱水蒸気でよいし、過熱水蒸気に他のガスを混合させたものでもよい。
【0060】
ここで、過熱蒸気22は、供給時間4秒以上120秒以下の範囲でノズル24から導電膜前駆体12上の導電性金属部に吹き付けられる。供給時間が4秒よりも短いと、導電率の向上の効果がそれほど期待できない。その意味で4秒以上であることが好ましい。また、120秒あたりから導電性の向上が飽和状態となるため、120秒よりの長い時間の設定は無駄になる。
【0061】
過熱蒸気22は、供給量が500g/m3〜600g/m3の範囲でノズル24から導電膜前駆体12上の導電性金属部に吹き付けられる。また、過熱蒸気22の温度は、1気圧で100℃以上160℃以下に制御される。このように、平滑化処理済みの導電性金属部に過熱蒸気22を吹き付けて乾燥することにより、平滑化処理後の導電膜前駆体12の表面抵抗をさらに68%〜77%程度低下させることができ、導電性を大幅に向上させることができる。なお、平滑化処理を行わなかった導電膜前駆体12については、表面抵抗を56%〜82%程度低下させることができる。
【0062】
また、この第1方法においては、過熱蒸気22の供給時間を4秒〜120秒、好ましくは10秒〜70秒という短時間でよいため、過熱蒸気22を接触させるための空間を小さくすることができ、設備の小型化、スループットの向上を図ることができる。
【0063】
<第2方法:加圧蒸気による方法>
次に、加圧蒸気を用いた第2方法について、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明に適用される第2乾燥装置10Bの構成の一例を説明する図である。第2乾燥装置10Bは、特開昭60−202049号公報に記載された液体噴流式シール装置と同様の構成を有し、液体50(例えば水)が貯留された液槽52と、液槽52上に設置された高圧ガス処理室54と、液槽52と高圧ガス処理室54との間に設置された第1液体噴流部56a及び第2液体噴流部56bと、液槽52内の液体50を第1液体噴流部56a及び第2液体噴流部56bに還流させる還流部58とを有する。
【0064】
第1液体噴流部56a及び第2液体噴流部56bは、各上部スリット孔60が高圧ガス処理室54の底部開口と連通し、且つ、各下部スリット孔62が液槽52内の液体50内に浸るようにして設置されている。還流部58は、液槽52に設けられた排出口64と、該排出口64から第1配管66aを通じて輸送された液体50を第1液体噴流部56a及び第2液体噴流部56bに向けて送り込む加圧ポンプ68と、加圧ポンプ68により送出された液体50を第1液体噴流部56a及び第2液体噴流部56bに導く第2配管66bとを有する。
【0065】
そして、液槽52、第1液体噴流部56a、高圧ガス処理室54、第2液体噴流部56b、液槽52という経路で1つの搬送経路が形成されることから、この搬送経路に沿って導電膜前駆体12を搬送するための例えば第1パスローラ70a〜第8パスローラ70hが設置される。
【0066】
高圧ガスは、図示しないブロアーにより、給気バルブ72、給気管74を経て高圧ガス処理室54内に導入される。高圧ガス処理室54内に導入された高圧ガスは、一部液化するが、その液体は排出管76、排出バルブ78を経て排出されるようになっている。また、高圧ガス処理室54内への高圧ガスの供給圧力と、液体50を還流させる加圧ポンプ68の圧力を制御して、第1液体噴流部56a内及び第2液体噴流部56b内の液面の位置を適宜調整することで、シールの気密性を高めることができるようになっている。
【0067】
高圧ガスとしては、この例では、加圧された飽和水蒸気を用いている。従って、高圧ガス処理室54内には加圧された飽和水蒸気が充満し、平滑化処理済みの導電膜前駆体12を第1パスローラ70a〜第8パスローラ70hによって搬送することによって、導電膜前駆体12上の導電性金属部に対して、加圧された飽和水蒸気が接触することになる。その結果、平滑化処理後の導電膜前駆体12の表面抵抗をさらに77%〜85%程度低下させることができ、導電性を大幅に向上させることができる。飽和水蒸気の圧力は、絶対圧力で、101kPaA以上、361kPaA以下であることが好ましい。また、導電膜前駆体12上の導電性金属部を加圧された飽和水蒸気に接触させる時間は20秒〜120秒であることが好ましい。
【0068】
図2の第2乾燥装置10Bでは、長尺の導電膜前駆体12に対応した例を示したが、その他、例えば縦60mm×横1m等の長方形状(枚葉式)の導電膜前駆体に対しては、例えばオートクレーブを使用することができる。一般的なオートクレーブは、例えば円筒状の容器と該容器の上面開口を開閉する蓋とを有し、蓋には排気口、温度計、圧力計が設置され、容器の底部には排水バルブが設置されている。そして、このオートクレーブを使用するときは、先ず、排水バルブを閉めた状態で、容器内に水を入れ、さらに、容器内の水の上方に導電膜前駆体を設置し、蓋を閉める。その後、排気口を開け、容器を加熱していくと、当初は排気口から容器内の空気が出てくるが、次第に湯気が噴き出すようになる。容器内に水蒸気が充満した段階で、排気口を閉じ、その後、温度と圧力を調整しながら加熱を続ける。所定時間が経過した段階で、加熱を止め、冷却後、容器内の導電膜前駆体を取り出す。加熱は、例えばガスバーナー等が用いられる。オートクレーブとしては、上述した一般的なもののほか、例えば特開平6−134283号公報に記載のオートクレーブも好ましく使用することができる。
【0069】
[水洗処理]
本発明の方法では、導電性金属部を過熱蒸気又は加圧蒸気に接触させた後に水洗処理することが好ましい。蒸気接触処理後に水洗することで、過熱蒸気又は加圧蒸気で溶解又は脆くなったバインダーを洗い流すことができ、これにより、導電性を向上させることができる。
【0070】
[めっき処理]
本発明においては、上記平滑化処理を行えばよいが、金属銀部に対してめっき処理を行ってもよい。めっき処理により、さらに表面抵抗を低減でき、導電性を高めることができる。平滑化処理は、めっき処理の前段又は後段のいずれで行ってもよいが、めっき処理の前段で行うことで、めっき処理が効率化され均一なめっき層が形成される。めっき処理としては、電解めっきでも無電解めっきでもよい。まためっき層の構成材料は十分な導電性を有する金属が好ましく、銅が好ましい。
【0071】
なお、本発明は、下記表1及び表2に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【実施例1】
【0074】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0075】
〔第1実施例〕
<実施例1〜15、参考例1〜4>
[乳剤の調製]
・1液:
水 750ml
フタル化処理ゼラチン 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
【0076】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKCl20%水溶液、NaCl20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0077】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0078】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0079】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=4000μS/cm、密度=1.4×103kg/m3、粘度=20mPa・sとなった。
【0080】
[塗布試料の作製]
上記乳剤に下記化合物(Cpd−1)8.0×10-4モル/モルAg、1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAgを添加しよく混合した。次いで、膨潤率調製のため必要により、下記化合物(Cpd−2)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0081】
【化1】

【0082】
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)上に下塗り層を形成した後、乳剤を用いて上記のように調製した乳剤層塗布液を、下塗り層上にAg5g/m2、ゼラチン0.4g/m2になるように塗布し、その後、乾燥させたものを塗布試料とした。
【0083】
得られた塗布試料は、乳剤層の銀/バインダ体積比率(銀/GEL比(vol))が1/1である。
【0084】
[露光、現像処理]
次いで、乾燥させた塗布膜にライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、引き続き現像、定着、水洗、乾燥という工程を含む処理を行った。
【0085】
(現像液の組成)
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 15g/L
亜硫酸ナトリウム 30g/L
炭酸カリウム 40g/L
エチレンジアミン・四酢酸 2g/L
臭化カリウム 3g/L
ポリエチレングリコール2000 1g/L
水酸化カリウム 4g/L
pH 10.5に調整
【0086】
(定着液の組成)
定着液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
チオ硫酸アンモニウム(75%) 300ml
亜硫酸アンモニウム・一水塩 25g/L
1,3-ジアミノプロパン・四酢酸 8g/L
酢酸 5g/L
アンモニア水(27%) 1g/L
ヨウ化カリウム 2g/L
pH 6.2に調整
【0087】
[還元処理]
上記のように現像処理したサンプルを40℃に保温した亜硫酸ナトリウム(10wt%)水溶液に10分浸漬した。
【0088】
[カレンダー処理]
上記のように現像処理したサンプル(導電膜前駆体)に対してカレンダー処理を行った。カレンダーロールは一対の金属ロールからなり、線圧4900N/cm(500kgf/cm)をかけて一対の金属ロール間にサンプルを通してカレンダー処理を行った。カレンダー処理後の表面抵抗を測定した。この場合、ダイアインスツルメンツ社製ロレスターGP(型番MCP−T610)直列4探針プローブ(ASP)にて任意の10箇所測定した値の平均値を表面抵抗値とした。このときの表面抵抗値は2.5オーム/sq.であった。
【0089】
(実施例1)
カレンダー処理を終えたサンプル(導電膜前駆体)に対して、図1に示す第1乾燥装置10Aを用いて、過熱蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。過熱蒸気は、温度105℃、供給量590g/m3とし、処理時間(過熱蒸気に接触させる時間)は10秒とした。
【0090】
(実施例2〜5)
実施例2、3、4及び5については、処理時間を20秒、40秒、60秒及び70秒とした点以外は、実施例1と同様にして過熱蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。
【0091】
(実施例6)
過熱蒸気の温度を121℃、過熱蒸気の供給量を540g/m3にしたこと以外は、実施例1と同様にして、過熱蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。
【0092】
(実施例7〜10)
実施例7、8、9及び10については、処理時間を20秒、40秒、60秒及び70秒とした点以外は、実施例6と同様にして過熱蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。
【0093】
(実施例11)
過熱蒸気の温度を150℃、過熱蒸気の供給量を506g/m3にしたこと以外は、実施例1と同様にして、過熱蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。
【0094】
(実施例12〜15)
実施例12、13、14及び15については、処理時間を20秒、40秒、60秒及び70秒とした点以外は、実施例11と同様にして過熱蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。
【0095】
(参考例1)
カレンダー処理を終えたサンプル(導電膜前駆体)に対して、飽和水蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。飽和水蒸気は、温度97℃とし、処理時間(飽和水蒸気に接触させる時間)は20秒とした。
【0096】
(参考例2〜4)
参考例2、3及4については、処理時間を40秒、60秒及び70秒とした点以外は、参考例1と同様にして過熱蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。
【0097】
[評価]
実施例1〜15並びに参考例1〜4について、それぞれの表面抵抗をダイアインスツルメンツ社製ロレスターGP(型番MCP−T610)直列4探針プローブ(ASP)にて任意の10箇所測定した値の平均値を表面抵抗値とした。実施例1〜15並びに参考例1〜4の測定結果を内訳と共に表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
先ず、カレンダー処理後のサンプル(導電膜前駆体)の表面抵抗はほぼ2.5オーム/sq.であったが、実施例1、6及び11からもわかるように、サンプルに過熱蒸気を10秒間という短い時間接触させただけで、0.82オーム/sq.、0.79オーム/sq.0.80オーム/sq.というように、ほぼ68%程度、表面抵抗が低下している。また、実施例2、7及び12からもわかるように、サンプルに過熱蒸気を20秒間という短い時間接触させただけで、10秒の場合よりも、さらに、0.13オーム/sq.、0.15オーム/sq.0.18オーム/sq.低下しており、カレンダー処理後の表面抵抗に対して、ほぼ75%程度、表面抵抗が低下している。このように、サンプル(導電膜前駆体)に過熱蒸気を10秒間、20秒間という短い時間接触させただけで、表面抵抗が大幅に低下し、導電性が向上していることがわかる。なお、実施例4、5、9、10、14及び15からもわかるように、サンプルに過熱蒸気を60秒間又は70秒間接触させただけで、カレンダー処理後の表面抵抗に対し、ほぼ76%〜77%程度、表面抵抗が低下している。また、実施例1〜15について、乳剤層の銀/バインダ体積比率を1.5/1、2/1、3/1とそれぞれ変更した場合においても、上述と同様に、導電性の向上が確認された。
【0100】
参考例1〜4として97℃の飽和水蒸気を接触させた場合を示したが、処理時間10秒〜40秒での表面抵抗の低下度合いは、過熱蒸気よりも幾分劣っていることがわかる。
【0101】
[第2実施例]
<実施例21〜25、参考例11〜14>
上述した実施例1と同様の方法で作製した導電膜前駆体(カレンダー処理を行っていない)に対して、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値は35オーム/sq.であった。
【0102】
(実施例21)
カレンダー処理を行っていないサンプル(導電膜前駆体)に対して、図1に示す第1乾燥装置10Aを用いて、過熱蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。過熱蒸気は、温度121℃、供給量540g/m3とし、処理時間(過熱蒸気に接触させる時間)は10秒とした。
【0103】
(実施例22〜25)
実施例22、23、24及び25については、処理時間を20秒、40秒、60秒及び70秒とした点以外は、実施例21と同様にして過熱蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。
【0104】
(参考例11)
カレンダー処理を行っていないサンプル(導電膜前駆体)に対して、飽和水蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。飽和水蒸気は、温度97℃とし、処理時間(飽和水蒸気に接触させる時間)は20秒とした。
【0105】
(参考例12〜14)
参考例12、13及14については、処理時間を40秒、60秒及び70秒とした点以外は、参考例11と同様にして過熱蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。
【0106】
[評価]
実施例21〜25並びに参考例11〜14について、それぞれの表面抵抗値を測定した。その測定結果を内訳と共に表4に示す。
【0107】
【表4】

【0108】
先ず、カレンダー処理を行っていない導電膜前駆体の表面抵抗はほぼ35オーム/sq.であったが、実施例21からもわかるように、サンプルに過熱蒸気を10秒間という短い時間接触させただけで、2.20オーム/sq.というように、ほぼ94%程度、表面抵抗が低下している。また、実施例22からもわかるように、サンプルに過熱蒸気を20秒間という短い時間接触させただけで、10秒の場合よりも、さらに、0.95オーム/sq.低下しており、カレンダー処理を行っていない導電膜前駆体の表面抵抗に対して、ほぼ96%程度、表面抵抗が低下している。このように、サンプル(導電膜前駆体)に過熱蒸気を10秒間、20秒間という短い時間接触させただけで、表面抵抗が大幅に低下し、導電性が向上していることがわかる。なお、実施例24及び25からもわかるように、サンプルに過熱蒸気を60秒間又は70秒間接触させただけで、カレンダー処理を行っていないサンプルの表面抵抗に対し、ほぼ97%程度、表面抵抗が低下している。また、実施例21〜25について、乳剤層の銀/バインダ体積比率を1.5/1、2/1、3/1とそれぞれ変更した場合においても、上述と同様に、導電性の向上が確認された。
【0109】
参考例11〜14として97℃の飽和水蒸気を接触させた場合を示したが、処理時間10秒〜40秒での表面抵抗の低下度合いは、過熱蒸気よりも幾分劣っていることがわかる。
【0110】
[第3実施例]
<実施例31〜34>
上述した実施例1と同様の方法で作製した導電膜前駆体(カレンダー処理後)に対して、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値は2.5オーム/sq.であった。
【0111】
(実施例31)
カレンダー処理を終えたサンプル(導電膜前駆体)に対して、図2に示す第2乾燥装置10Bを用いて、加圧水蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。加圧水蒸気は、圧力101.4180kPaAとし、処理時間(加圧水蒸気に接触させる時間)は60秒とした。
【0112】
(実施例32〜34)
実施例32、33及び34については、圧力を143.3760kPaA、169.1770kPaA及び205.0389kPaAとした点以外は、実施例31と同様にして加圧水蒸気を接触させ、その後、水洗処理を行った。
【0113】
[評価]
実施例31〜34について、それぞれの表面抵抗値を測定した。その測定結果を内訳と共に表5に示す。
【0114】
【表5】

【0115】
カレンダー処理後のサンプル(導電膜前駆体)の表面抵抗はほぼ2.5オーム/sq.であったが、0.1MPa以上の高い圧力を有する加圧水蒸気を60秒間接触させただけで、0.58オーム/sq.(実施例31)、0.52オーム/sq.(実施例32)、0.45オーム/sq.(実施例33)、0.39オーム/sq.(実施例34)というように、ほぼ77%〜85%程度、表面抵抗が低下している。このように、サンプル(導電膜前駆体)に加圧蒸気を60秒間接触させただけで、表面抵抗が大幅に低下し、導電性が向上していることがわかる。また、実施例31〜34について、乳剤層の銀/バインダ体積比率を1.5/1、2/1、3/1とそれぞれ変更した場合においても、上述と同様に、導電性の向上が確認された。
【0116】
なお、本発明に係る導電膜の製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に導電性物質とバインダーとを含有する導電性金属部を形成する工程と、前記導電性金属部を平滑化する平滑化処理工程と、平滑化処理された前記導電性金属部を蒸気に接触させる蒸気接触工程とを有する導電膜の製造方法において、
前記蒸気接触工程は、平滑化処理された前記導電性金属部を、0.1MPaよりも高い圧力の飽和蒸気(加圧蒸気)に接触させ、
前記飽和蒸気の圧力が絶対圧力で、101kPaA以上、361kPaA以下であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記加圧蒸気に接触させる時間が5分以下であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記加圧蒸気に接触させる時間が20秒〜120秒であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項4】
支持体上に導電性物質とバインダーとを含有する導電性金属部を形成する導電性金属部形成工程と、前記導電性金属部を蒸気に接触させる蒸気接触工程とを有する導電膜の製造方法において、
前記蒸気接触工程は、前記導電性金属部を、過熱蒸気に接触させることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の導電膜の製造方法において、
前記過熱蒸気の温度が1気圧で100℃以上、160℃以下であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の導電膜の製造方法において、
前記支持体はポリエチレンテレフタレート(PET)にて構成されていることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の導電膜の製造方法において、
前記過熱蒸気の温度が1気圧で100℃以上、125℃以下であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記過熱蒸気に接触させる時間が5分以下であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項9】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記過熱蒸気に接触させる時間が4秒〜120秒であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項10】
請求項4記載の導電膜の製造方法において、
前記過熱蒸気の供給量が500g/m3〜600g/m3であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項11】
請求項4記載の導電膜の製造方法において、
前記導電性金属部を平滑化処理する平滑化処理工程を有し、
前記蒸気接触工程は、平滑化処理された前記導電性金属部を、前記過熱蒸気に接触させることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記導電性金属部形成工程は、前記支持体上に銀塩を含有する乳剤層を形成して感光材料を作製し、その後、前記感光材料を露光し、現像処理することにより、前記支持体上に前記導電性金属部を形成することを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の導電膜の製造方法において、
前記乳剤層は、銀/バインダの体積比率が1/1以上であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
導電性金属部形成工程は、前記支持体上に導電性物質とバインダーとを含有するペーストを印刷することにより、前記支持体上に前記導電性金属部を形成することを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項15】
請求項1又は11記載の導電膜の製造方法において、
前記平滑化処理工程は、前記導電性金属部に対する平滑化処理を、線圧力1960N/cm(200kgf/cm)以上で行うことを特徴とする導電膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−76789(P2011−76789A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225202(P2009−225202)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】