説明

導電膜パターンおよび導電膜パターンの形成方法

【課題】本発明の目的は、微細な形状を有し、基材との密着性や形状精度、信頼性に優れ、複雑、高価な設備、工程を必要とせずに形成する導電膜パターン及びその形成方法を提供することにある。
【解決手段】シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤による膜が形成されている基材と、前記カップリング剤による膜が形成されている基材上に無電解めっきの触媒としての機能を発現する組成物を含有するインクをインクジェット装置を用いて所定のパターンに配置することによって形成された触媒層と、前記触媒層上に無電解めっき処理によって形成された金属層と、を有する導電膜パターン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法及び無電解めっきを利用した導電膜パターンの形成方法とそれにより形成された導電膜パターンに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法を用いて導電性インクを基材上に吐出することにより回路配線や電極を形成する技術が提案されている。従来行われてきたフォトリソグラフィー法では多数の工程(導電膜形成、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、などの複数回繰り返し)や材料(導電材料、フォトレジスト、現像液、洗浄液等)が必要であったのに対して、インクジェット法を用いると、工数が簡略であり、材料、エネルギーの使用量も少量で済むことから、低コストで微細な配線パターンの形成が可能な技術として注目を集めている。
【0003】
また、インクジェット法で形成した配線パターンに、さらに無電解めっきを施す方法も知られており、インクジェット法により得られた配線パターンが所望の膜厚や導電性を満たさない場合でも、めっきを施すことにより配線パターンの厚みを増して、所望の膜厚や導電性を得ることが出来る。
【0004】
近年の配線の超微細化や信頼性向上の要望にこたえるべく、種々の技術開発が行われてきている。例えば、金属ナノ粒子を含有するインクを基材上にインクジェット法により描画してめっき用シードパターンを形成するに際して、基材表面を予め粗面化しておくことによって、基材とめっき膜との密着性の向上を図る旨の記載がある(特許文献1参照)。しかし、所望するパターンが非常に微細である場合には、表面の粗面化により密着性が向上したとしてもパターン形状の精度に悪影響を及ぼしてしまうという懸念がある。
【0005】
また、表面の粗面化を行わずに基材とめっき膜との密着性を向上させる手段として、基材に予め各種のプライマー層を設けておくという方法が知られている。例えば、Ti,Siカップリング剤とコロイダルシリカ又は金属酸化物を併用したプライマー化合物をプライマー層として用いる旨の記載がある(特許文献2参照)。しかし、この公報に記載の技術は表面装飾などに用いるためのめっき技術に関するものであり、インクジェット法を用いて微細な形状の膜パターンを形成する点についての記載が無い。実際に、本発明者の検討によれば、この公報記載の技術では微細なめっき膜パターンを高精度に作製するには不十分である。また、金属コロイド粒子、熱硬化性組成物及び溶媒を含有したものをプライマー組成物として用いる旨の記載がある(特許文献3参照)。この公報記載の技術では、プライマー層自身がめっき触媒となりめっき膜の密着性を発現させるのであるが、一様なめっき膜面を形成させるものであり、めっき膜により微細なパターンを形成する点についての詳細な記載がない。すなわち、この公報の技術により微細なパターンのめっき膜を形成するためには、プライマー層自体の微細なパターンを形成しなければならないのであるが、その点に関する記載が無く、実際にこの公報記載のプライマー層自体で微細な形状のパターンを形成するのは困難である。
【0006】
以上のように、めっき膜の密着性を向上させるために従来知られているプライマー層では、インクジェット法により高精細なパターンを形成するために用いようとしても不十分な性能しか有していなかった。
【0007】
一方、インクジェット法を利用して形成される膜パターンの微細化の手段として、基材へのインクの濡れ性を適宜調整する技術が知られている。例えば、基材に予めシランカップリング剤により微細なパターン用のマスクの膜を形成し、親水性領域/疎水性領域を設けることで微細なパターンを形成可能な基材とする旨の記載がある(特許文献4参照)。しかしながら、この公報の技術により形成された微細なパターンは基材の親水性領域と疎水性領域の両方の領域に形成されているため、基材との密着性が必ずしも十分でない。すなわち、一方の領域に対して良好な密着性を示すとしても、他方の領域に対しては十分な密着性を示すわけではないのである。したがって、特に微細なパターンに対してさらに無電解めっき膜を形成する場合には、この公報記載の技術ではめっき処理に耐えうるほどの密着性を有する微細なパターンを形成することは困難であった。また、この技術では、親水性領域/撥水性領域を設けるためにパターンが形成されたマスクを用いて紫外線などのエネルギーを照射するという手段を用いており、マスク露光を必要とすることになってしまうので、この工程は多大な設備や工程を必要とするため、コストアップにつながってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−200288号公報
【特許文献2】特開2001−107256号公報
【特許文献3】特開2008−7849号公報
【特許文献4】特開2000−33698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、微細な形状を有し、基材との密着性や形状精度、信頼性に優れ、複雑、高価な設備、工程を必要とせずに形成する導電膜パターン及びその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0011】
1.シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤による膜が形成されている基材と、
前記カップリング剤による膜が形成されている基材上に無電解めっきの触媒としての機能を発現する組成物を含有するインクをインクジェット装置を用いて所定のパターンに配置することによって形成された触媒層と、
前記触媒層上に無電解めっき処理によって形成された金属層と、
を有することを特徴とする導電膜パターン。
【0012】
2.前記カップリング剤が、フッ素原子を含有しないシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤、であることを特徴とする前記1に記載の導電膜パターン。
【0013】
3.前記カップリング剤が、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤、であることを特徴とする前記2に記載の導電膜パターン。
【0014】
4.前記インクが、無電解めっきの触媒能を有する金属微粒子を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【0015】
5.前記インクジェット装置が、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、及び圧力発生素子に電圧を印加する駆動電圧印加手段、を具備する液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させる装置であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【0016】
6.前記インクジェット装置が、さらに静電電圧印加手段を有し、前記圧力変動に加えて静電力を利用して液滴を飛翔させる装置であることを特徴とする前記5に記載の導電膜パターン。
【0017】
7.無電解めっきの触媒としての機能を発現する組成物を含有するインクを、インクジェット法により基材上に配置することで所定のインクパターンを形成するパターニング工程と、前記インクパターンの形成された基材に無電解めっき処理を行うことで前記インクが触媒として作用し金属膜パターンが形成される導電膜形成工程とを少なくとも含む導電膜パターンの形成方法において、
前記基材上に、予め、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤による膜が形成されていることを特徴とする導電膜パターンの形成方法。
【0018】
8.前記カップリング剤が、フッ素原子を含有しないシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤、であることを特徴とする前記7に記載の導電膜パターンの形成方法。
【0019】
9.前記カップリング剤が、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤、であることを特徴とする前記8に記載の導電膜パターンの形成方法。
【0020】
10.前記インクが、無電解めっきの触媒能を有する金属微粒子を含有することを特徴とする前記7〜9のいずれか1項に記載の導電膜パターンの形成方法。
【0021】
11.前記インクジェット法が、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、及び圧力発生素子に電圧を印加する駆動電圧印加手段、を具備する液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させる方法であることを特徴とする前記7〜10のいずれか1項に記載の導電膜パターンの形成方法。
【0022】
12.前記インクジェット法が、さらに静電電圧印加手段を有し、前記圧力変動に加えて静電力を利用して液滴を飛翔させる方法であることを特徴とする前記11に記載の導電膜パターンの形成方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、微細な形状を有し、基材との密着性や形状精度、信頼性に優れ、複雑、高価な設備、工程を必要とせずに形成する導電膜パターン及びその形成方法を提供することができる。
【0024】
即ち、
本発明では、インクジェット法によって形成したパターンに無電解めっき処理を施して導電膜パターンを作製する際に、予め所定のカップリング剤によって表面処理を行った基材を用いることにより、めっきの析出状態や、膜パターンと基材との密着性を良好なものとすることが可能となる。
【0025】
また、インクジェット法によって形成されたパターンが微細である場合においても、めっきの析出状態や密着性に優れるだけでなく、めっき処理によるパターン形状の変動を抑制することができるので、微細形状を有する膜パターンの形成に対して好ましく用いられる。
【0026】
また、インクジェット法によって配置されるインクとして無電解めっきの触媒能を有する金属微粒子を含有するインクを用いることにより、無電解めっき処理においてめっき金属をインクパターン上に良好に析出させることが出来るので、好ましく用いられる。
【0027】
さらに、インクジェット法として静電力を利用する方法を用いることにより、微小な液滴を良好な位置精度で基材上に配置することが容易に可能となり、本発明の、微細形状を有する膜パターンの形成に対して好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構成の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に好ましく用いられる静電力を利用した液滴吐出装置(インクジェット装置)の全体構成を示す模式図である。
【図3】本発明に用いられる静電吸引方式のインクジェット装置のマルチノズルヘッドの概略構成の一例を示す分解斜視図である。
【図4】マルチノズルヘッド500の断面図の一例を図4に示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0030】
本発明は、インクジェット法によって形成したパターンに無電解めっき処理を施して導電膜パターンを作製する際に、予め所定のカップリング剤によって表面処理を行った基材を用いることにより、めっきの析出状態や、膜パターンと基材との密着性を良好なものとするものである。すなわち、基材表面との化学結合により形成されたカップリング剤の膜が有する官能基の作用により基材の表面物性を制御して、配置されたインク滴の形状を、微細なパターン形成が可能である程度以上には濡れ広がらせず、かつ、めっき処理後も析出不良の生じない程度の密着力を保つ程度に密着力を制御することが可能となるものである。
【0031】
(カップリング剤)
本発明で用いられるカップリング剤は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択されるものである。本発明においては、前記の群より選択した一種の化合物を用いる場合のみならず、二種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0032】
本発明で用いられるカップリング剤とは、中心元素(ケイ素、チタン、ジルコニウム及びアルミニウム)に各種の有機官能基と加水分解基が結合した構造を有するものであるが、この他に、中心元素にアルコキシル基が結合したアルコキシド化合物や、アシル基が結合したアシレート化合物、さらに官能基が配位結合したキレート化合物を用いても良い。また、これらの化合物が縮合したオリゴマー化合物を用いても良い。
【0033】
また、本発明で用いられるカップリング剤は、フッ素原子を含有しないものが好ましい。フッ素原子を含有したカップリング剤を用いることにより、後の工程において基材上に付与されるインクと基材との間の接触角は比較的高い値が得られる(すなわち、撥液性が比較的高くなる)が、めっき処理を行った際の基材とインクとの密着力の点、処理中におけるインクパターンの耐剥がれの点からフッ素原子を含有しないカップリング剤が好ましく用いられる。
【0034】
また、基材に対する膜自体の密着性、膜物性の安定性、膜形成時の取り扱いの容易性の観点から、本発明においてはチタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される化合物が好ましく用いられる。
【0035】
本発明で用いられるシランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、イミダゾリルアルキル−トリアルコキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、等が挙げられる。
【0036】
中でも、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0037】
本発明で用いられるチタンカップリング剤としては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、ブチルチタネートダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクタンジオレート、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタントリエタノールアミネート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、ポリヒドロキシチタンステアレート、KR38S(味の素ファインテクノ社製)、KR44(味の素ファインテクノ社製)、KR46B(味の素ファインテクノ社製)、KR55(味の素ファインテクノ社製)、KR9SA(味の素ファインテクノ社製)、KRTTS(味の素ファインテクノ社製)、KR41B(味の素ファインテクノ社製)、KR138S(味の素ファインテクノ社製)、KR238S(味の素ファインテクノ社製)、KR338X(味の素ファインテクノ社製)、などが挙げられる。
【0038】
中でも、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、ポリヒドロキシチタンステアレート、KR44(味の素ファインテクノ製)、KR46B(味の素ファインテクノ製)、KR55(味の素ファインテクノ製)、KR9SA(味の素ファインテクノ製)、KR41B(味の素ファインテクノ製)、等が好ましい。
【0039】
本発明で用いられるジルコニアカップリング剤としては、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコウニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート、塩化ジルコニウム化合物アミノカルボン酸、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、等が挙げられる。
【0040】
中でも、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート等が好ましい。
【0041】
本発明で用いられるアルミニウムカップリング剤としては、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノオレイルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドオクチレート、環状アルミニウムオキサイドステアレート、等が挙げられる。
【0042】
中でも、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が好ましい。
【0043】
(基材)
本発明で用いられる基材は、用途に応じて適宜選択して使用すればよいが、例としては、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、ガラス−エポキシ基材、シリコン基材、セラミックス基材、ガラス基材等が挙げられる。
【0044】
本発明で用いられる樹脂フィルムの材質としては、特に限定はないが、例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製))、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアクリレート系フィルム、ポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。これらの素材を主成分とする異なる材質のフィルムを積層したフィルムであってもよい。
【0045】
(基材へのカップリング処理方法)
基材上にカップリング剤の膜を形成する膜形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、カップリング剤を溶媒に希釈した溶液を基材表面に対してスプレーコート、スピンコート、ディップコート、ロールコート、インクジェットなどの方法で付与する方法を挙げることが出来る。この場合、溶媒は用いるカップリング剤の種類に応じて適当なものを選択して用いることが出来るが、例えば、イソプロパノールや1−ブタノールを使用することが出来る。
【0046】
また、希釈液中のカップリング剤濃度は任意の値にすることが出来るが、濃度が高すぎると取り扱いが困難になり基材上へ均一に付与することが難しく、逆に濃度が低すぎると形成された膜が所望の物性を発現しない場合があるため、例えば0.01〜20質量%の範囲の中で任意の値に設定すればよい。
【0047】
また、カップリング剤を付与された基材は、熱風循環炉(オーブン)やホットプレートなどを用いて加熱乾燥される。加熱乾燥されることにより、基材に付与されたカップリング剤が基材表面において所望の物性、機能を発現することになる。
【0048】
また、基材上にカップリング剤を付与するのに先立って、基材とカップリング剤層との密着性を高めると言う観点から、基材に予め表面処理を行うことが好ましい。表面処理の例として、プラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、化学薬品処理を挙げることができる。
【0049】
(インクジェット方法、装置)
本発明で用いられるインクジェット装置について説明する。
【0050】
インクジェット法として静電力を利用する方法のインクジェット装置を用いることにより、微小な液滴を良好な位置精度で基材上に配置することが容易に可能となり、本発明の、微細形状を有する膜パターンの形成に対して好ましく用いることができる。
【0051】
(インクジェット記録装置の概要)
以下、本発明に係るインクジェット記録装置の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
【0052】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構成を示す斜視図である。本実施形態におけるインクジェット記録装置100は、底板1と、水平ガイドレール2を下方から所定高さ位置で支持するガイドレール支持台3を備えている。水平ガイドレール2は、垂直ガイドレール6を介してキャリッジ7を支持しており、垂直ガイドレール6とキャリッジ7は、一体となって、図示しない移動機構により所定の搬送方向である水平な主走査方向Xに、水平ガイドレール2に沿って往復移動するようになっている。また、キャリッジ7は、図示しない移動機構により垂直方向Zに、垂直ガイドレール6に沿って往復移動するようになっている。
【0053】
底板1には、図示しない基材を非記録面側から支持する支持台4と、インクジェット記録ヘッド8のメンテナンスを行うメンテナンス装置5とが、水平ガイドレール2の長手方向に並んで配設されている。支持台4は、図示しない搬送機構により主走査方向Xと直交する副走査方向Yに、記録媒体を搬送するものである。
【0054】
また、支持台4は、静電吸引力を利用してインクを吐出させる場合には、静電電圧印加手段の電極としての機能も具備する。
【0055】
キャリッジ7には、本発明に係るインクを基材に対して吐出するインクジェット記録ヘッド8が搭載されている。インクジェット記録ヘッドについては後に詳述する。
【0056】
本発明において上記のインクジェット記録装置を使用する際には、支持台上に配置された基材上に、インクジェット記録ヘッドから吐出されたインクによって任意のパターンを描画するように、キャリッジと支持台を任意に移動できるように制御するとともに、記録ヘッドからのインクの吐出制御を行う。
【0057】
(静電力を利用した液滴吐出手段)
図2は、本発明に好ましく用いられる、静電力を利用した液滴吐出装置(インクジェット装置)の全体構成を示す模式図である。なお、本発明で用いられるインクジェット記録ヘッド402は、いわゆるシリアル方式あるいはライン方式等の各種の液体吐出装置に適用可能である。
【0058】
本実施形態の液滴吐出装置401は、帯電可能なインクLの液滴Dを吐出するノズル410が形成された液体吐出ヘッド402と、液体吐出ヘッド402のノズル410に対向する対向面を有すると共にその対向面で液滴Dの着弾を受ける基材Kを支持する対向電極403とを備えている。
【0059】
インクジェット記録ヘッド(以下、液体吐出ヘッドともいう)402の対向電極403に対向する側には、複数のノズル410を有する樹脂製のノズルプレート411が設けられている。液体吐出ヘッド402は、ノズルプレート411の対向電極403に対向する吐出面412からノズル410が突出していないフラットな吐出面を有するヘッドとして構成されている。
【0060】
各ノズル410は、ノズルプレート411に穿孔されて形成されており、各ノズル410には、それぞれノズルプレート411の吐出面412に吐出孔413を有する小径部414とその背後に形成されたより大径の大径部415との2段構造とされている。本実施形態では、ノズル410の小径部414および大径部415は、それぞれ断面円形で対向電極側がより小径とされたテーパ状に形成されており、小径部414の吐出孔413の内部直径(以下、ノズル径という。)が例えば10μm、大径部415の小径部414から最も離れた側の開口端の内部直径が、例えば75μmとなるように構成されている。
【0061】
ノズルプレート411の吐出面412と反対側の面には、例えばニッケル等の導電性部材よりなりノズル410内の液体Lを帯電させるための帯電用電極416が設けられている。本実施形態では、帯電用電極416は、ノズル410の大径部415の内周面417まで延設されており、ノズル内のインクLに接するようになっている。
【0062】
また、帯電用電極416は、静電吸引力を生じさせる静電電圧を印加する静電電圧印加手段としての帯電電圧電源418に接続されており、単一の帯電用電極416が全てのノズル410内の液体Lに接触しているため、帯電電圧電源418から帯電用電極416に静電電圧が印加されると、全ノズル410内の液体Lが同時に帯電され、液体吐出ヘッド402と対向電極403との間、特に液体Lと基材Kとの間に静電吸引力が発生されるようになっている。
【0063】
帯電用電極416の背後には、ボディ層419が設けられている。ボディ層419の各ノズル410の大径部415の開口端に面する部分には、それぞれ開口端にほぼ等しい内径を有する略円筒状の空間が形成されており、各空間は、吐出される液体Lと連通したキャビティ420になっている。
【0064】
ボディ層419の背後には、可撓性を有する金属薄板やシリコン等よりなる可撓層421が設けられており、可撓層421により液体吐出ヘッド402が外界と画されている。
【0065】
なお、ボディ層419には、キャビティ420に液体Lを供給するための図示しない流路が形成されている。具体的には、ボディ層419としてのシリコンプレートをエッチング加工してキャビティ420、共通流路、および共通流路とキャビティ420とを結ぶ流路が設けられており、共通流路には、外部の図示しない液体タンクから液体Lを供給する図示しない供給管が連絡されており、供給管に設けられた図示しない供給ポンプにより或いは液体タンクの配置位置による差圧により流路やキャビティ420、ノズル410等の液体Lに所定の供給圧力が付与されるようになっている。
【0066】
可撓層421の外面の各キャビティ420に対応する部分には、それぞれ圧力発生手段としての圧電素子アクチュエータであるピエゾ素子422が設けられており、ピエゾ素子422には、素子に駆動電圧を印加して素子を変形させるための駆動電圧電源423が接続されている。ピエゾ素子422は、駆動電圧電源423からの駆動電圧の印加により変形して、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせてノズル410の吐出孔413に液体Lのメニスカスを形成させるようになっている。なお、圧力発生手段は、本実施形態のような圧電素子アクチュエータのほかに、例えば、静電アクチュエータや発熱素子等を採用することも可能である。
【0067】
駆動電圧電源423および帯電用電極416に静電電圧を印加する前記帯電電圧電源418は、それぞれ動作制御手段424に接続されており、それぞれ動作制御手段424による制御を受けるようになっている。
【0068】
動作制御手段424は、本実施形態では、CPU425やROM426、RAM427等が図示しないBUSにより接続されて構成されたコンピュータからなっており、CPU425は、ROM426に格納された電源制御プログラムに基づいて帯電電圧電源418および各駆動電圧電源423を駆動させてノズル410の吐出孔413からインクである液体Lを吐出させるようになっている。
【0069】
なお、本実施形態では、液体吐出ヘッド402のノズルプレート411の吐出面412には、吐出孔413からの液体Lの滲み出しを抑制するための撥液層428が吐出孔413以外の吐出面412全面に設けられている。撥液層428は、例えば、液体Lが水性であれば撥水性を有する材料が用いられ、液体Lが油性であれば撥油性を有する材料が用いられるが、一般に、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、フッ素シロキサン、フルオロアルキルシラン、アモルファスパーフルオロ樹脂等のフッ素樹脂等が用いられることが多く、塗布や蒸着等の方法で吐出面412に成膜されている。なお、撥液層428は、ノズルプレート411の吐出面412に直接成膜してもよいし、撥液層428の密着性を向上させるために中間層を介して成膜することも可能である。
【0070】
液体吐出ヘッド402の下方には、基材Kを支持する平板状の対向電極403が液体吐出ヘッド402の吐出面412に平行に所定距離離間されて配置されている。対向電極403と液体吐出ヘッド402との離間距離は、0.1mm〜3mm程度の範囲内で適宜設定される。
【0071】
本実施形態では、対向電極403は接地されており、常時接地電位に維持されている。そのため、前記帯電電圧電源418から帯電用電極416に静電電圧が印加されると、ノズル410の吐出孔413の液体Lと対向電極403の液体吐出ヘッド402に対向する対向面との間に電界が生じるようになっている。また、帯電した液滴Dが基材Kに着弾すると、対向電極403はその電荷を接地により逃がすようになっている。また、これとは逆に、基材側の電極403に静電電圧を印加し、液体Lに接している電極416を接地ささせるような構成にしても良い。
【0072】
なお、対向電極403または液体吐出ヘッド402には、液体吐出ヘッド402と基材Kとを相対的に移動させて位置決めするための図示しない位置決め手段が取り付けられており、これにより液体吐出ヘッド402の各ノズル410から吐出された液滴Dは、基材Kの表面に任意の位置に着弾させることが可能とされている。
【0073】
次に、以下、図面を参照しながら本発明に好ましく用いられるインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)の好ましい一態様について説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0074】
本発明に用いられるインクジェットヘッドの一例として、マルチノズルヘッド500が図3に示されている。マルチノズルヘッド500はノズルプレート531、ボディプレート532および圧電素子533を有している。ノズルプレート531は150μm〜300μm程度の厚みを有したシリコン基材また酸化シリコン基材である。ノズルプレート531には複数のノズル501が形成されており、これら複数のノズル501が1列に配列されている。
【0075】
ボディプレート532は、200μm〜500μm程度の厚みを有したシリコン基材である。ボディプレート532にはインク供給口601、インク貯留室602、複数のインク供給路603および複数の圧力室604が形成されている。
【0076】
インク供給口601は直径が400μm〜1500μm程度の円形状の貫通孔である。
【0077】
インク貯留室602は幅が400μm〜1000μm程度で深さが50μm〜200μm程度の溝である。
【0078】
インク供給路603は幅が50μm〜150μm程度で深さが30μm〜150μm程度の溝である。圧力室604は幅が150μm〜350μm程度で深さが50μm〜200μm程度の溝である。
【0079】
ノズルプレート531とボディプレート532とは互いに接合されるようになっており、接合した状態ではノズルプレート531のノズル501とボディプレート532の圧力室604とが1対1で対応するようになっている。
【0080】
ノズルプレート531とボディプレート532とが接合された状態でインク供給口601にインクが供給されると、当該インクはインク貯留室602に一時的に貯留され、その後にインク貯留室602から各インク供給路603を通じて各圧力室604に供給されるようになっている。
【0081】
圧電素子533はボディプレート532の圧力室604に対応した位置に接着されるようになっている。圧電素子533はPZTと電極からなるアクチュエータであり、電圧の印加を受けると変形して圧力室604の内部のインクをノズル501から吐出させるようになっている。
【0082】
次に、マルチノズルヘッド500の断面図の一例を図4に示す。図3では図示しないが、ノズルプレート531とボディプレート532と間には硼珪酸ガラスプレート534(図4参照)が介在している。また、ノズル内部の液体に静電電圧を印加するための図示しない帯電用電極が設けられている。
【0083】
図4に示す通り、1つの圧電素子に対応してノズル501と圧力室604とが1つずつ構成されている。
【0084】
ノズルプレート531においてノズル501には段が形成されており、ノズル501は下段部501aと上段部501bとで構成されている。下段部501aと上段部501bとは共に円筒形状を呈しており、下段部501aの直径D1(図4中左右方向の距離)が上段部501bの直径D2(図3中左右方向の距離)より小さくなっている。
【0085】
ノズル501の下段部501aは上段部501bから流通してきたインクを直接的に吐出する部位である。下段部501aは直径D1が1μm〜10μmで、長さL(図4中上下方向の距離)が1.0μm〜5.0μmとなっている。下段部501aの長さLを1.0μm〜5.0μmの範囲に限定するのは、インクの着弾精度を飛躍的に向上させることができるからである。
【0086】
他方、ノズル501の上段部501bは圧力室604から流通してきたインクを下段部501aに流通させる部位であり、その直径D2が10μm〜60μmとなっている。
【0087】
上段部501bの直径D2の下限を10μm以上に限定するのは、10μmを下回ると、ノズル501全体(下段部501aと上段部501b)の流路抵抗に対し上段部501bの流路抵抗が無視できない値となり、インクの吐出効率が低下しやすいからである。
【0088】
逆に、上段部501bの直径D2の上限を60μm以下に限定するのは、上段部501bの直径D2が大きくなるほど、インクの吐出部位としての下段部501aが薄弱化して(下段部501aが面積増大して機械的強度が小さくなる。)、インクの吐出時に変形し易くなり、その結果インクの着弾精度が低下するからである。すなわち、上段部501bの直径D2の上限が60μmを上回ると、接着剤液の吐出に伴い下段部501aの変形が非常に大きくなり、着弾精度を規定値(=0.5°)以内に抑えることができなくなる可能性があるからである。
【0089】
ノズルプレート531とボディプレート532との間には数百μm程度の厚みを有した硼珪酸ガラスプレート534が設けられており、硼珪酸ガラスプレート534にはノズル501と圧力室604とを連通させる開口部534aが形成されている。開口部534aは、圧力室604とノズル501の上段部501bとに通じる貫通孔であり、圧力室604からノズル501に向けてインクを流通させる流路として機能する部位である。圧力室604は、圧電素子533の変形を受けて当該圧力室604の内部のインクに圧力を与える部位である。
【0090】
以上の構成を具備するマルチノズルヘッド500では、圧電素子533が変形すると、圧力室604の内部のインクに圧力を与え、当該インクは圧力室604から硼珪酸ガラスプレート534の開口部534aを流通してノズル501に至り、最終的にノズル501の下段部501aから吐出されるようになっている。
【0091】
なお、本発明に係るインクジェット記録装置の一態様としては、マルチノズルヘッド500のノズルプレート531に対向する位置に基材電極が設けられており(図示略)、ノズル501と当該基材電極との間に静電電圧を印加できるようになっている。
【0092】
従って、圧電素子による液体への圧力付与と帯電用電極による液体への静電吸引力との相乗効果により効率的に液滴を吐出できる液滴吐出ヘッドとすることが出来る。換言すると、静電吸引力が働かない場合には飛翔中の空気抵抗の影響により飛翔速度が低下して正規の着弾位置まで到達できないような微小な液滴を吐出する場合においても、静電吸引力の作用により正規の着弾位置に高い精度で着弾させることができ、良好な形状のパターンを形成することができる。
【0093】
(インク)
本発明で用いられるインクは、無電解めっきの触媒としての機能を有する組成物を含有するものである。この場合の「無電解めっきの触媒としての機能」とは、触媒が付与された基材に対して無電解めっき処理を施すと触媒が付与された位置にめっき金属が析出する機能のことである。
【0094】
前記組成物の形態は特に限定されるものではないが、好ましい形態として、触媒能を有する組成物として金属微粒子を含有する形態が挙げられる。
【0095】
本発明に用いられる金属微粒子としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等が挙げられるが、その中でも特に、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Cu又はこれらを含む合金は、触媒能が高く良好なめっきパターンを形成することができるので好ましく用いられる。これらの金属微粒子は、平均粒子径が100nm以下の金属ナノコロイドであることが好ましい。
【0096】
本発明で用いられる金属微粒子含有インクには、金属微粒子の保護コロイドとして重合体または界面活性剤を用いることができ、特に、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリウレタンとアルカノールアミンとのブロック共重合体が好ましい。
【0097】
本発明で用いられる金属微粒子含有インクは、水系インクと油系インクとが挙げられる。金属微粒子を、水を主体とする分散媒に分散して構成される水系導電性インクは、例えば、以下に示す方法に従って調製することができる。
【0098】
塩化金酸や硝酸銀のような金属イオンソース水溶液中に水溶性の重合体を溶解させ、撹拌しながら、ジメチルアミノエタノールのようなアルカノールアミンを添加する。数10秒〜数分で金属イオンが還元され、平均粒子径が100nm以下の金属微粒子が析出する。その後、塩素イオンや硝酸イオンを限外濾過などの濾過方法で除去した後、濃縮・乾燥することにより、高濃度に金属微粒子を含有した水系インクが得られる。この水系インクは、水やアルコール系溶媒、テトラエトキシシランやトリエトキシシランのようなゾルゲルプロセス用バインダーに安定に溶解、混合することが可能である。
【0099】
また、金属微粒子を油性分散媒に分散した油系インクは、例えば、以下に示す方法に従って調製することができる。
【0100】
油溶性ポリマーをアセトンのような水混和性有機溶媒に溶解させ、このポリマー溶液を金属イオンソース水溶液と混合する。混合物は不均一系であるが、これを撹拌しながらアルカノールアミンを添加すると、金属微粒子が重合体中に分散した形で油相側に析出してくる。これを洗浄、濃縮、乾燥させることにより、水系インクと同様の濃厚な金属微粒子を含有する油系インクが得られる。この油系導電性インクは、芳香族系、ケトン系、エステル系などの溶媒やポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等に安定に溶解、混合することが可能である。
【0101】
インクの分散媒中における金属微粒子の濃度は、最大80質量%程度にすることが可能であるが、用途に応じて適宜希釈して使用することができる。通常は、インクにおける金属微粒子の含有量は2〜50質量%、界面活性剤および樹脂成分の含有量は0.3〜30質量%、粘度は3〜30mPa・sとすることが好ましい。
【0102】
また、金属微粒子を含有するインクのほかに、前記の金属をイオンとして含有する液状組成物をインクとする形態も好ましく用いることができる。この場合、インクが基材上に配置された後、無電解めっき処理を行う前に還元処理を行うことにより基材上に配置されたインク中の金属イオンが還元されてめっき触媒能が発現され、無電解めっき処理を行うことによりめっき金属が析出して所望のパターンを得ることができる。
【0103】
さらに、無電解めっきの触媒としての機能を有する組成物として、特開2008−163371号公報に記載の、導電性ポリピロールなどの導電性高分子微粒子を用いることも出来る。
【0104】
また、本発明で用いられるインクは、インクジェットヘッドから良好に吐出でき、かつ基材上に配置した際に適度な濡れ広がり性を示すという観点から、表面張力を20mN/m以上50mN/m以下の値に調整することが好ましい。さらに、25mN/m以上45mN/m以下とすることがより好ましい。
【0105】
また、本発明で用いられるインクは、電気伝導度を0.1μS/cm以上、1000μS/cm以下とすることが好ましい。より好ましくは、1μS/cm以上、100μS/cm以下の値とする。このことにより、インクジェット方式として静電力を用いる場合に、インクの吐出が安定となり、インクの基材上への着弾位置のばらつきが低減され、好ましく用いることが出来る。
【0106】
本発明において、インクとして金属微粒子を含有するインクを用いた場合、カップリング剤による膜が形成されている基材上にインクジェット装置により所定の形状の膜パターンを形成された後に、熱風循環炉(オーブン)やホットプレートなどを用いて加熱、焼成を行うことが好ましい。このことにより、インク中に含有される分散剤などの有機物質や溶媒が蒸発し、形成されたパターンのめっきの触媒としての機能を発現する作用が強固なものになるため、焼成を行うことが好ましい。焼成時の温度は特に制限はないが、基材として樹脂基材を用いる場合は基材の軟化点や融点以下で行う必要がある。
【0107】
本発明において、インクジェット装置により線状のパターンを形成する際には、いわゆる間引き描画(まず、互いに接触しない間隔で液滴を配置し、その後に間隔を埋めることにより線状パターンを形成する方法)を行わず、液滴を連続的に配置することにより線状パターンを形成する方法が好ましく用いられる。この方法を用いると、線状パターンを形成する際に断線や、パターンからのインクの溢れなどがしばしば発生するといわれているが、本発明の如く基材の表面物性を所望の物性になるよう制御し、さらに使用するインク物性に応じた表面物性にするための適切なカップリング剤を選択することにより前記のような問題の発生を解消できる。
【0108】
(無電解めっき処理)
本発明で用いられる無電解めっき処理は、基材(カップリング剤による膜が形成されている基材)上に配置された触媒を核としてめっき液中に含有される金属イオンを析出させることにより、金属の配線パターンを形成するものである。めっき処理で使用できるめっき液は、めっき材料として析出させる金属イオンが溶解された溶液が用いられ、金属塩とともに還元剤が含有されるものであり、公知の無電解めっき液を用途に応じて特に制限無く使用することができる。
【0109】
めっき液に含有される金属塩の例としては、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Feから選択される少なくとも1種の金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などが挙げられる。
【0110】
還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン塩、ボロハライド塩、次亜燐酸塩、次亜硫酸塩、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸塩などが適用可能である。これらの還元剤に含有されるボロン、燐、窒素などの元素が、金属とともに析出して含有されていてもよい。或いは2種類以上の金属塩を含有するめっき液を用いて、合金が析出するような形態を取っても良い。
【0111】
めっき液には、必要に応じて、pH調整のための緩衝剤、界面活性剤などの添加物を含有させることができる。また、溶媒として、水以外にアルコール、ケトン、エステルなどの有機溶剤を添加するようにしてもよい。
【0112】
めっき液の組成は、析出させる金属の金属塩、還元剤、および必要に応じて添加物、有機溶媒を添加した組成で構成されるが、析出速度に応じて濃度や組成を調整することができる。また、めっき液の温度を調節して析出速度を調整することもできる。この温度調整の方法としては、めっき液の温度を調整する方法、また例えばめっき液中に浸漬する場合、浸漬前に基材(カップリング剤による膜が形成されている基材)を加熱、冷却して温度調節する方法などが挙げられる。さらに、めっき液に浸漬する時間で析出する金属の膜厚を調整することもできる。
【0113】
また、触媒が配置された基材をめっき液で処理するに先立って、基材に前処理を行うことが好ましい。前処理の例として、基材の加熱乾燥処理、洗浄処理、触媒活性化処理などが挙げられ、公知の処理方法を必要に応じて選択して処理を行えばよい。特に、インクパターンに対して選択的に触媒能を付与する処理工程を行うことが好ましい。
【0114】
また、無電解めっき処理を行って配線パターンを形成した後に、さらに電気めっきを行って配線の厚みを増すようにしてもよい。この場合は、電気めっきを行う際の通電に使用するための電極として使用するためのパターンを、配線パターンと同様にインクによって形成しておくことが好ましい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「部」あるいは「%」の表示は、「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0116】
実施例1
《カップリング剤溶液の作製》
カップリング剤を溶媒で希釈した溶液を準備した。下表に、カップリング剤溶液のカップリング剤の種類と、溶媒種を示す(カップリング剤濃度は、全て0.5質量%とした)。
【0117】
【表1】

【0118】
T1770:トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン(東京化成工業社製)
【0119】
【化1】

【0120】
KBM−7103:トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
CFCHCHSi(OCH
KBM−202SS:ジフェニルジメトキシシラン(信越シリコーン社製)
【0121】
【化2】

【0122】
KBM−3063:ヘキシルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
CH(CHSi(OCH
KBM−602:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越シリコーン社製)
【0123】
【化3】

【0124】
KBM−573:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
【0125】
【化4】

【0126】
KBM−803:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
(CHOSiCSH
KBM−3103:デシルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
CH(CHSi(OCH
KR 44:イソプロピル−トリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート(味の素ファインテクノ社製)
i−CO−Ti[−O−(CH−NH−(CH−NH
KR 41B:(味の素ファインテクノ社製)
(i−CO−)Ti[(P(OC17OH)
KR 46B:(味の素ファインテクノ社製)
(C17O−)Ti[(P(OC1327OH)
KR 55:(味の素ファインテクノ社製)
【0127】
【化5】

【0128】
KR 9SA:(味の素ファインテクノ社製)
【0129】
【化6】

【0130】
KR TTS:(味の素ファインテクノ社製)
【0131】
【化7】

【0132】
PC−605:チタンオリゴマー化合物(オルガチックスPC−605)(マツモトファインケミカル社製)
TC−750:チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル社製)
(i−CO)Ti(C
TC−200:チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)(マツモトファインケミカル社製)
(C17O)Ti(O17
TPHS:ポリヒドロキシチタンステアレート(マツモトファインケミカル社製)
【0133】
【化8】

【0134】
ZC−580:ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル社製)、
Zr(O−n−C(C
ZB−320:ジルコニウムトリブトキシモノステアレート(マツモトファインケミカル社製)
Zr(O−n−C(OCOC1735
AL−M:アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(味の素ファインテクノ社製)
【0135】
【化9】

【0136】
《基材上へのカップリング剤による膜の形成》
また、ガラス基材(松浪硝子工業(株)製スライドグラス)に対して、酸素プラズマ処理を施し表面洗浄したものを準備した。
【0137】
このガラス基材をカップリング剤溶液に浸漬させた後、100℃に設定した恒温槽内で20分間乾燥させることにより、基材上に各種カップリング剤による膜を形成した。
《無電解めっき触媒インクによるパターンの形成》
次に、銀ナノ粒子含有インク(住友電工製 AGIN−W4A)に純水及びエチレングリコールを添加して25℃における粘度が3mPa・s、表面張力が30mN/mとなるように調製したものをインクジェット用インクとして準備した。このインクを、図1〜図4(静電・圧電によるインクジェット装置)に記載したインクジェット装置を用いて、ヘッド(ノズル径10μm)から吐出することにより、基材上に銀インクのパターンを形成した。パターン形状が線幅50μm、長さ1mmの線状パターンを50μm間隔で20本並ぶ形状になるように、装置の射出周波数や吐出電圧、ヘッドと基材の相対移動速度を適宜調整した。
【0138】
なお、上記カップリング剤による膜を形成した基材の他に、比較としてカップリング剤の膜を形成しない(表面洗浄のみを行った)基材に対してもインクを吐出したが、基材上で濡れ広がりすぎて上記のパターン形状は形成できなかった(ただし、その後の処理は他の水準とともに継続して行った。)。
【0139】
パターンを形成した基材は、150℃の恒温槽内で30分間乾燥させた。
《無電解めっき処理》
次に、下記工程による無電解銅めっき処理を行って導電膜パターン試料を作製した。
【0140】
〈めっき工程〉
脱脂:浸漬脱脂用脱脂剤(エースクリーンA−220、奥野製薬工業(株)製)50g/L水溶液に50℃で3分間浸漬。
【0141】
エッチング:無水クロム酸400g/L及び98%硫酸400g/Lを含有する水溶液に70℃で10分間浸漬。
【0142】
中和:CRPニュートライザー300(奥野製薬工業(株)製)10ml/L水溶液に室温で3分間浸漬。
【0143】
プリディップ:35%塩酸50ml/L水溶液に室温で1分間浸漬。
【0144】
触媒化:パラジウム−錫コロイド(CRPキャタリストK、奥野製薬工業(株)製)30ml/L及び35%塩酸250ml/Lを含有する水溶液に30℃で6分間浸漬。
【0145】
導体化(無電解銅めっき):Cuを含有する導電性皮膜形成水溶液(無電解銅めっき液)(CRPセレクターA 150ml/L、CRPセレクターB 200ml/L、奥野製薬工業(株)製)に45℃で3分間浸漬。
《評価》
めっき処理を行って得られた導電膜パターン試料について、下記の評価を行った。
(めっき析出性)
めっき処理後の基材を顕微鏡(倍率:100倍)で観察し、めっき析出状態や形状を観察し、めっき析出性を、下記評価基準に則り、○△×の三段階で評価した。
○:めっき析出状態は良好で、断線や領域間の短絡は見られなかった。
△:一部にめっきの欠落が見られるが、形成した本数の90%以上は断線が見られなかった。
×:めっきが析出していないか、パターンが剥がれてしまった場所が多く、形成した線の10%を越える本数の線に断線が見られた。または、パターン形状が所望の形状から乱れていた。
(密着性)
日本工業規格JIS K 5600−5−6に示されるクロスカット法に準じたテープ剥離試験により密着性を評価し、結果を下記評価基準に則り、○△×の三段階で示した。
○:密着性は良好(クロスカット法の試験結果分類0に相当する)
△:密着性は中程度(クロスカット法の試験結果分類1〜2に相当する)
×:密着性は悪い(クロスカット法の試験結果分類3に相当するか、さらに悪い)
結果を表2に示す。
【0146】
【表2】

【0147】
表2に示した結果から明らかなように、本発明のカップリング剤による膜を基材に形成することにより、めっきによる金属膜パターンの形成が可能となり、基材と金属膜パターンとの密着性も優れていることが分かる。
【0148】
実施例2
《基材上へのカップリング剤による膜の形成》
シリコン基材((株)SUMCO製シリコンウェハー)に酸素プラズマ処理を施して表面洗浄を行ったものを準備した。この基材を用いて、実施例1と同様のカップリング剤溶液の浸漬処理及び乾燥を行うことにより、シリコン基材上に各種カップリング剤の膜を形成した。
《無電解めっき触媒インクによるパターンの形成》
次に、実施例1と同様にインクジェット装置を用いて基材上に銀インクのパターンを形成し、乾燥させた。
《無電解めっき処理》
次に、下記に示す工程による無電解ニッケルめっき処理を行った。
表面洗浄:奥野製薬NNPクリーナー液(25℃)に3分間浸漬させた
純水洗浄(1分間)
触媒付与:奥野製薬NNPアクセラ液(25℃)に3分間浸漬させた
純水洗浄(1分間)
ポストディップ:奥野製薬NNPポストディップ液(25℃)に1分間浸漬させた
純水洗浄(1分間)
無電解めっき:奥野製薬NNPニコロン液(75℃)に3分間浸漬させた
純水洗浄後、乾燥させた。
《評価》
めっき処理を行って得られた導電膜パターン試料について、実施例1と同様にめっき析出性と密着性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0149】
【表3】

【0150】
表3に示す結果から明らかなように、基材にシリコン基材を用いた場合においても、本発明のカップリング剤を使用することにより、めっきによる金属膜パターンの形成が可能になることが分かる。
【0151】
さらに、カップリング剤がフッ素原子を含有する場合(即ち、試料No.202、No.203の場合)に比べて、カップリング剤がフッ素原子を含有しない場合は、形成された金属膜パターンと基材との密着性が良好であり、特に好ましいことが分かる。
【0152】
実施例3
《基板上にカップリング剤による膜の形成》
ポリイミド基材(宇部興産株式会社製ポリイミドフィルム:製品名「ユーピレックス」)に酸素プラズマ処理を施して表面洗浄を行ったものを準備した。この基材を用いて、実施例1と同様のカップリング剤溶液の浸漬処理及び乾燥を行うことにより、ポリイミド基材上に各種カップリング剤の膜を形成した。
《無電解めっき触媒インクによるパターンの形成》
次に、実施例1と同様のインクジェット装置(ただし、ノズル径は5μmのヘッドに変更した)を用いて基材上に銀インクのパターンを形成し、乾燥させた。
【0153】
ここでは、形成したインクのパターン形状が線幅20μm、長さ1mmの線状パターンを50μm間隔で20本並ぶ形状になるように、装置の射出周波数や吐出電圧、ヘッドと基材の相対移動速度を適宜調整したが、調整したにもかかわらず、パターンが途切れて断線したり、濡れ広がりすぎて隣接するパターンとつながって短絡したりする現象を完全に防ぐことの出来ない水準があった。この水準は表4の中(細線描画性の項目)で示すが、以後の処理は他の水準と同様継続した。
《評価》
(細線描画性の評価)
細線描画性は、目視観察により、下記評価基準に則り評価した。
○:短絡や断線なく所望の線状パターンを形成することが出来た。
△:一部のパターンで短絡や断線が発生し、完全になくすことが出来なかった。
×:インク滴の濡れ広がりが著しく、線状パターンを形成することが出来なかった。
【0154】
この時点で、顕微鏡観察によりインクパターンの形状を測定し、平均線幅を求めた。
《無電解めっき処理》
続いて、実施例1及び2に記載の方法で無電解銅めっき処理及び無電解ニッケルめっき処理を行い、金属膜パターンを形成して導電膜パターン試料を作製した。
《評価》
この時点で再び顕微鏡観察を行い、平均線幅を求めた。めっき前後での線幅の差を算出し、下記評価基準に則り○△×の三段階で評価を行った(線幅変動)。
○:めっき前後での線幅の差は2%未満と小さく、形状についても、大きな凹凸などは見られず良好であった。
△:めっき前後での線幅の差は2%以上10%未満であった。めっき表面や輪郭線にやや凹凸が見られた。
×:めっき前後での線幅の差が10%以上であるか、あるいはめっき後のパターンに断線や隣接線との短絡が見られた。
【0155】
この他、実施例1や2と同様のめっき析出性、密着性の評価も行った。結果を表4に示す。
【0156】
【表4】

【0157】
(Cu:銅めっき、Ni:ニッケルめっきの評価結果を示す。)
表4の結果から明らかなように、基材にポリイミド基材を用いた場合においても、本発明のカップリング剤を使用することにより、めっきによる金属膜パターンの形成が可能になることが分かる。また、カップリング剤がフッ素原子を含有しない場合、形成された金属膜パターンと基材との密着性が良好であり、好ましいことが分かる。さらに、チタン系、ジルコニウム系、又はアルミニウム系のカップリング剤を用いることにより、めっき処理の前後での線幅変動が少なく、非常に微細なパターンを形成する場合には特に好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0158】
1 底板
2 水平ガイドレール
3 ガイドレール支持台
4 基材を支持する支持台
5 メンテナンス装置
6 垂直ガイドレール
7 キャリッジ
8、11、402 インクジェット記録ヘッド
401 液滴吐出装置
403 対向電極
410、501 ノズル
416 帯電用電極
500 マルチノズルヘッド
533 圧電素子
604 圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤による膜が形成されている基材と、
前記カップリング剤による膜が形成されている基材上に無電解めっきの触媒としての機能を発現する組成物を含有するインクをインクジェット装置を用いて所定のパターンに配置することによって形成された触媒層と、
前記触媒層上に無電解めっき処理によって形成された金属層と、
を有することを特徴とする導電膜パターン。
【請求項2】
前記カップリング剤が、フッ素原子を含有しないシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤、であることを特徴とする請求項1に記載の導電膜パターン。
【請求項3】
前記カップリング剤が、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤、であることを特徴とする請求項2に記載の導電膜パターン。
【請求項4】
前記インクが、無電解めっきの触媒能を有する金属微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【請求項5】
前記インクジェット装置が、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、及び圧力発生素子に電圧を印加する駆動電圧印加手段、を具備する液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させる装置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【請求項6】
前記インクジェット装置が、さらに静電電圧印加手段を有し、前記圧力変動に加えて静電力を利用して液滴を飛翔させる装置であることを特徴とする請求項5に記載の導電膜パターン。
【請求項7】
無電解めっきの触媒としての機能を発現する組成物を含有するインクを、インクジェット法により基材上に配置することで所定のインクパターンを形成するパターニング工程と、前記インクパターンの形成された基材に無電解めっき処理を行うことで前記インクが触媒として作用し金属膜パターンが形成される導電膜形成工程とを少なくとも含む導電膜パターンの形成方法において、
前記基材上に、予め、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤による膜が形成されていることを特徴とする導電膜パターンの形成方法。
【請求項8】
前記カップリング剤が、フッ素原子を含有しないシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤、であることを特徴とする請求項7に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項9】
前記カップリング剤が、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種のカップリング剤、であることを特徴とする請求項8に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項10】
前記インクが、無電解めっきの触媒能を有する金属微粒子を含有することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項11】
前記インクジェット法が、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、及び圧力発生素子に電圧を印加する駆動電圧印加手段、を具備する液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させる方法であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項12】
前記インクジェット法が、さらに静電電圧印加手段を有し、前記圧力変動に加えて静電力を利用して液滴を飛翔させる方法であることを特徴とする請求項11に記載の導電膜パターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−182775(P2010−182775A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23484(P2009−23484)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】