説明

導電膜及びその製造方法

【課題】従来に比べて更に十分な導電性を有する導電膜及び導電膜の製造方法の提供。
【解決手段】細線金属パターンを有する第2の導電層と、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層とを有する導電膜の製造方法であって、第1の導電層の3μm四方の領域内に、前記導電性ワイヤー同士が接触する交点が10点以上存在する接触部を有し、第1の導電層における導電性ワイヤーが第2の導電層における細線金属パターンに接触しており、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層塗布液を塗布スピードが40m/s〜60m/sで塗布して第1の導電層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等の導電性ワイヤーを含む導電膜及び導電膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明導電材料の素材として、金属ナノワイヤー又はカーボンナノチューブ(CNT)が注目を集めている。例えば、非特許文献1には、カーボンナノチューブ(CNT)の高い電気特性、機械的特性を活用した商品化が進められていることが報告されている。
従来、タッチパネル等の透明導電性フィルムとしては、ITOフィルムが一般的に用いられているが、このITOを金属ナノワイヤー又はCNTを用いて代替する検討が積極的になされている。例えば、特許文献1では、グリッド状の導電性構造の開口部に金属ナノワイヤー又はCNTを分散させることで、導電性の面内均一性を高める検討がなされている。この特許文献1には、導電性構造の開口部に金属ナノワイヤー又はCNTを分散させることが開示されているものの、金属ナノワイヤー又はCNTと導電性メッシュパターンでの接触が不十分であるため、導電膜全体での導電性が不十分となり、更なる開口部での導電性の向上が求められている。
【0003】
また、導電性構造を持たない態様、即ち、支持体上に金属ナノワイヤー又はCNTを塗布した導電膜についても、更なる導電性の向上が求められている。このため、金属ナノワイヤー又はCNTの凝集を抑制し、十分な接触を確保することが重要である。例えば、特許文献2には、基材と、細い導電繊維から構成されて基材の少なくとも片面に形成された透明な導電層とからなり、前記繊維はお互いが接触し、前記繊維が凝集することなく分散している導電性成形体について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−146747号公報
【特許文献2】特表2006−517485号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】月刊ディスプレイ 2009年5月号 p.37−44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等の導電性ワイヤー同士の接触を制御して十分な接触を担保でき、従来に比べて更に十分な導電性を有する導電膜及び該導電膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、従来の金属ナノワイヤー又はCNT等の導電性ワイヤーでは分散性が問題となっており、なるべく凝集が生じないようにすることが求められていた。しかし、導電性を向上させるためには、金属ナノワイヤー又はCNT等の導電性ワイヤー同士の接触を制御して十分な接触を担保することが必要である。また、導電性ワイヤー含有層を細線金属パターン上に設ける場合には、導電性ワイヤーと細線金属パターンとの接触が不十分となり、導電膜全体での導電性が低下することを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層とを有する導電膜であって、
前記導電性ワイヤーが、直径150nm以下であり、アスペクト比150以上であり、
前記第1の導電層における3μm四方の領域内に、前記導電性ワイヤー同士が接触する交点が10点以上存在する接触部を有することを特徴とする導電膜である。
<2> 第1の導電層における3μm四方の領域内に、導電性ワイヤー同士が接触する交点が、10点以上50点以下存在する接触部を有する前記<1>に記載の導電膜である。
<3> 第1の導電層における3μm四方の領域内に、導電性ワイヤー同士が接触する交点が、15点以上50点以下存在する接触部を有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の導電膜である。
<4> 第1の導電層における縦15μm×横20μmの領域内に、5つ以上の接触部を有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電膜である。
<5> 第1の導電層における縦15μm×横20μmの領域内に、5つ以上20つ以下の接触部を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の導電膜である。
<6> 支持体と、該支持体上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層と、細線金属パターンを有する第2の導電層とを有する導電膜であって、
前記導電性ワイヤーが、直径150nm以下であり、アスペクト比150以上であり、
前記第1の導電層の3μm四方の領域内に、前記導電性ワイヤー同士が接触する交点が10点以上存在する接触部を有し、
前記第1の導電層における導電性ワイヤーが、前記第2の導電層における細線金属パターンに接触していることを特徴とする導電膜である。
<7> 細線金属パターンが、ストライプパターン及びメッシュパターンのいずれかである前記<6>に記載の導電膜である。
<8> 第1の導電層における導電性ワイヤー同士が接触する交点が、第2の導電層における細線金属パターンに接触している前記<6>から<7>のいずれかに記載の導電膜である。
<9> 第1の導電層における接触部が、第2の導電層における細線金属パターンに接触している前記<6>から<7>のいずれかに記載の導電膜である。
<10> 支持体と、該支持体上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層と、細線金属パターンを有する第2の導電層とを有する導電膜であって、
前記細線金属パターンが、その表面に直径150nm以下であり、長軸方向長さ5μm以上の突起を有することを特徴とする導電膜である。
<11> 突起が、導電性ワイヤーである前記<10>に記載の導電膜である。
<12> 第1の導電層における導電性ワイヤーが、直径150nm以下であり、アスペクト比150以上である前記<10>から<11>のいずれかに記載の導電膜である。
<13> 第1の導電層における導電性ワイヤーが、第2の導電層における細線金属パターンの突起に接触している前記<10>から<12>のいずれかに記載の導電膜である。
<14> 導電性ワイヤーが、金属ナノワイヤー及びカーボンナノチューブのいずれかである前記<1>から<13>のいずれかに記載の導電膜である。
<15> 金属ナノワイヤーが、銀ナノワイヤーである前記<14>に記載の導電膜である。
<16> ヘイズ値が3%以下である前記<1>から<15>のいずれかに記載の導電膜である。
<17> 前記<1>から<16>のいずれかに記載の導電膜の製造方法であって、
支持体上又は第2の導電層上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層塗布液を塗布スピードが40m/s〜60m/sで塗布して、第1の導電層を形成することを特徴とする導電膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の前記諸問題を解決することができ、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等の導電性ワイヤー同士の接触を制御して十分な接触を担保でき、従来に比べて更に十分な導電性を有する導電膜及び該導電膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、第1の形態では、支持体と、該支持体上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層とを有する導電膜であって、
前記導電性ワイヤーが、直径150nm以下であり、アスペクト比150以上であり、
前記第1の導電層における3μm四方の領域内に、前記導電性ワイヤー同士が接触する交点が10点以上存在する接触部を有する。
本発明は、第2の形態では、支持体と、該支持体上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層と、細線金属パターンを有する第2の導電層とを有する導電膜であって、
前記導電性ワイヤーが、直径150nm以下であり、アスペクト比150以上であり、
前記第1の導電層の3μm四方の領域内に、前記導電性ワイヤー同士が接触する交点が10点以上存在する接触部を有し、
前記第1の導電層における導電性ワイヤーが、前記第2の導電層における細線金属パターンに接している。
本発明は、第3の形態では、支持体と、該支持体上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層と、細線金属パターンを有する第2の導電層とを有する導電膜であって、
前記細線金属パターンが、その表面に直径150nm以下であり、長軸方向長さ5μm以上の突起を有する。
【0011】
本発明の導電膜は、前記第1の導電層における3μm四方の領域内に、前記導電性ワイヤー同士が接触する交点が10点以上存在する接触部を有し、交点が平均値で10点以上50点以下存在する接触部を有することが好ましく、交点が平均値で15点以上50点以下存在する接触部を有することがより好ましい。従来の導電膜では、導電性ワイヤーの接触する交点が少ないために導電性が不十分であったが、本発明では接触する交点を10点以上に制御することで導電性を向上させることができた。前記3μm四方の領域内の交点が、10点未満であると、導電性が不十分となることがあり、50点を超えると、視認性が悪くなることがある。
【0012】
また、前記第1の導電層における縦15μm×横20μmの領域内に、5つ以上の接触部を有することが好ましく、5つ以上20つ以下の接触部を有することがより好ましい。前記接触部が、5つ未満であると、導電性が不十分となることがあり、20つを超えると、視認性が悪くなることがある。
【0013】
ここで、前記第1の導電層における3μm四方の領域内の交点の数及び前記第1の導電層における縦15μm×横20μmの領域内の接触部の数は、例えば試料を、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX、以下、電子顕微鏡は同じものを使用する)で測定し、3μm四方の領域内に、導電性ワイヤー同士の接触する交点の数を測定し、10点以上存在する領域を接触部とする。また同様にして、第1の導電層における縦15μm×横20μmの領域内の接触部の数を求めることができる。
【0014】
本発明の前記第2の形態の導電膜は、前記第1の導電層における導電性ワイヤーが、前記第2の導電層における細線金属パターンに接触していればよいが、第1の導電層における導電性ワイヤー同士が接触する交点が、第2の導電層における細線金属パターンに接触していることが好ましく、第1の導電層における接触部が、第2の導電層における細線金属パターンに接触していることがより好ましい。これにより、2次元的あるいは3次元的な導電ネットワークを形成でき、導電性が更に向上する点で好ましい。また第1の導電層における導電性ワイヤー同士が接触する交点が、第2の導電層における細線金属パターン付近に分布していることが好ましい。このような場合には、第2の導電層に起因するモアレの問題を抑制できる。
また、本発明の前記第3の形態の導電膜は、前記第2の導電層の細線金属パターンが、その表面に直径150nm以下であり、長軸方向長さ5μm以上の突起を有することから第1の導電層の導電性ワイヤーと細線金属パターン表面の突起とが接触し易く、電気特性を更に向上させることができる。
【0015】
<支持体>
前記支持体としては、その形状、大きさ、構造、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、平板状、シート状などが挙げられる。前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記材質としては、例えばプラスチック、ガラスなどが挙げられる。これらの中でも、プラスチックが特に好ましい。
前記プラスチックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)(融点:258℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN)(融点:269℃)、ポリエチレン(PE)(融点:135℃)、ポリプロピレン(PP)(融点:163℃)、ポリスチレン(融点:230℃)、ポリ塩化ビニル(融点:180℃)、ポリ塩化ビニリデン(融点:212℃)、トリアセチルセルロース(TAC)(融点:290℃)等の融点が290℃以下であるプラスチックが好適に挙げられる。これらの中でも、光透過性及び加工性の観点から、PETが特に好ましい。
本発明の導電膜は、透明性が要求されるため、前記支持体の透明性は高いことが好ましく、前記支持体の全可視光透過率は、70%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。なお、前記支持体として、本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0016】
<第1の導電層>
前記第1の導電層は、少なくとも導電性ワイヤーを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0017】
<<導電性ワイヤー>>
前記導電性ワイヤーとは、導電性を有し、かつ長軸方向長さが直径(短軸方向長さ)に比べて十分に長い形状を持つものであり、直径が150nm以下であり、長軸方向長さと直径の比(アスペクト比)が150以上のものである。
前記導電性ワイヤーは、透明性の観点から、直径が150nm以下であり、5nm〜45nmであることが好ましい。前記直径が150nmを超えると、上記交点数、接触部数の制御が困難となることがある。
前記導電性ワイヤー構造体の長軸方向長さは、3μm以上であることが好ましく、3μm〜600μmであることがより好ましい。
前記導電性ワイヤーのアスペクト比としては、150以上であり、300以上が好ましい。前記アスペクト比が、150未満であると、導電膜の生産性が低下することがある。
【0018】
ここで、前記導電性ワイヤーの長軸方向長さ、直径、アスペクト比(=長軸方向長さ/直径)の平均値については、十分な数の導電性ワイヤーについて電子顕微鏡写真を撮影し、個々の導電性ワイヤー像の計測値の算術平均から求めることができる。
前記導電性ワイヤーの長軸方向長さは、本来直線状に伸ばした状態で測定するべきであるが、現実には屈曲している場合もあるため、電子顕微鏡写真から画像解析装置を用いて導電性ワイヤーの投影直径及び投影面積を算出し、円柱体を仮定して算出してもよい(長さ=投影面積/投影直径)。また、長軸方向長さ及び直径の粒径分布は、測定粒径の標準偏差を平均粒径で除した値に100を乗じた値で表す。
粒径分布[%]=(粒径の標準偏差/平均粒径)×100
計測対象の導電性ワイヤー数は、30個以上が好ましく、100個以上であることがより好ましい。
【0019】
前記導電性ワイヤーの平均断面積は、導電性と透明性を両立する観点から1×10−6μm〜5×10−1μmであることが好ましい。
また、第1の導電層単独での表面抵抗率は、1,000Ω/□以下であることが好ましく、500Ω/□以下であることがより好ましく、100Ω/□以下であることが更に好ましい。
【0020】
前記導電性ワイヤーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば中空チューブ状、ワイヤー状、ファイバー状、などが挙げられる。
前記導電性ワイヤーとしては、例えば、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤー、炭素繊維、カーボンナノチューブ、などが挙げられる。これらの中でも、導電性を満足するため金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブが好ましく、金属ナノワイヤーが特に好ましい。
【0021】
−金属ナノワイヤー−
前記金属ナノワイヤーとは、一般的に、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体を意味する。本発明において、前記金属ナノワイヤーとは、原子スケールからnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
【0022】
前記金属ナノワイヤーの金属組成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば貴金属元素や卑金属元素の1種又は複数の金属から構成されることができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)、鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から銀を含むことがより好ましい。また、導電性と安定性(金属ナノワイヤーの硫化や酸化耐性、及びマグレーション耐性)を両立するために、銀と銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤーが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤーの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤー全体が同一の金属組成を有していてもよい。
【0023】
前記金属ナノワイヤーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、液相法、気相法などが挙げられる。例えば、Agナノワイヤーは、エチレングリコール、ポリビニルピロリドン等のポリオール中で、硝酸銀などの銀塩を還元する液相法により形状の揃ったAgナノワイヤーを大量に合成することができる。Agナノワイヤーの合成方法としては、例えばXia.Y,et.al.,Chem.Mater.誌14巻,2002,p.4736−4745などに記載されている。
【0024】
前記金属ナノワイヤーは、有機化合物によって表面処理することができ、具体的には、界面活性剤を使用して個々の金属ナノワイヤーの分散性を向上させることもできる。
【0025】
−カーボンナノチューブ−
前記カーボンナノチューブは、厚み数原子層のグラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が筒形に巻かれた形状からなる炭素系繊維材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWNT)と多層ナノチューブ(MWNT)とに大別され、また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、アームチェア型に分けられ、各種のものが知られている。
【0026】
前記カーボンナノチューブとしては、いずれのタイプのカーボンナノチューブも用いることができ、また、これらの種々のカーボンナノチューブを複数混合して用いてもよいが、導電性に優れた単層カーボンナノチューブであることが好ましく、更には金属性(アームチェア型)の単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。また、前記カーボンナノチューブは、有機化合物によって表面処理することができ、具体的には、界面活性剤を使用して個々のカーボンナノチューブの分散性を向上させることもできる。
【0027】
前記カーボンナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法などが挙げられる。また、副生成物や触媒金属等の残留物を除去するために、洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されたカーボンナノチューブの方が、各種機能を十分に発現することから好ましい。
【0028】
前記導電性ワイヤーの前記第1の導電層における塗布量は、0.01g/m〜5g/mが好ましく、0.05g/m〜2g/mがより好ましい。
【0029】
前記第1の導電層は、後述するように、導電性ワイヤー、溶媒、及びバインダーを含む導電性ワイヤー含有層塗布液を支持体又は第2の導電層上に塗布することにより形成することができる。
【0030】
<第2の導電層>
前記第2の導電層は、細線金属パターンを有し、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。
前記細線金属パターンとしては、ストライプパターン及びメッシュパターンのいずれかであることが好ましい。
【0031】
<<導電膜形成用感光材料>>
前記細線金属パターンは、導電膜形成用感光材料を用いて形成することが好ましい。
前記導電膜形成用感光材料としては、支持体と、該支持体上に銀塩含有乳剤層を有し、銀塩含有乳剤層、又は銀塩含有乳剤層側のいずれかの層が導電性ワイヤーを含有する層を有するものが好ましい。
【0032】
前記導電性ワイヤーを含有する層が、銀塩含有乳剤層側のいずれかの層である場合、その層は導電性材料を製造後、その導電層と電気伝導性を有すればその位置は特に制限されない。銀塩含有剤層側のいずれかの層としては、銀塩含有乳剤層に隣接する層が好ましい。隣接する層でも、乳剤層の上層(例えば、保護層)又は下層(例えば、支持体側の下引層)があるが、導電性ワイヤーは上層(例えば、後述する保護層)に含有させる方が、電極などとして用いると導電性が有利となる。
【0033】
前記導電膜形成用感光材料において、前記銀塩含有乳剤層は実質的に最上層に配置されている。ここで、前記「銀塩含有乳剤層が実質的に最上層である」とは、銀塩含有乳剤層が実際に最上層に配置されている場合のみならず、銀塩含有乳剤層の上に設けられる層の総層厚が0.5μm以下であることを意味する。銀塩含有乳剤層の上に設けられる層の総層厚は、好ましくは0.2μm以下である。
前記導電膜形成用感光材料の各層の構成について、以下に詳細に説明する。
【0034】
−銀塩含有乳剤層−
前記銀塩含有乳剤層は、銀塩と、バインダーとを含有し、溶媒、更に必要に応じてその他の添加剤を含有してなる。
【0035】
前記銀塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばハロゲン化銀等の無機銀塩、酢酸銀等の有機銀塩などが挙げられる。これらの中でも、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀が特に好ましい。
前記ハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、高コントラスト及び低カブリを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物等を含有することが好ましい。これら化合物は、各種の配位子を有する化合物であってよい。
前記銀塩含有乳剤層における銀塩の塗布量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、銀に換算して5g/m以上が好ましく、10g/m〜30g/mがより好ましい。前記銀塩の塗布量が、少なすぎると十分な導電性が得られないことがある。
【0036】
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記バインダーの含有量としては、特に制限はなく、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜選定することができ、銀塩含有乳剤層における銀及びバインダーの含有量は、Ag/バインダー体積比で1/4以上が好ましく、1/2以上が更に好ましく、1/1以上が特に好ましい。
また、銀及びバインダーの含有量は、Ag/バインダー体積比で10/1以下であることが好ましく、5/1以下であることがより好ましい。
前記バインダー量が多い場合には、導電性が低下する要因となるのでバインダー量は少ないほうが好ましい。なお、Ag/バインダー体積比は、原料のハロゲン化銀量/バインダー量(質量比)を銀量/バインダー量(質量比)に変換し、更に銀量/バインダー量(質量比)を銀量/バインダー量(体積比)に変換することで求めることができる。前記銀塩含有乳剤層は銀塩含有量が同一又は異なる2層以上から構成されてもよい。
【0037】
−溶媒−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。
前記銀塩含有乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30質量%〜90質量%が好ましく、50質量%〜80質量%がより好ましい。
【0038】
前記銀塩含有乳剤層の厚みは、0.1μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜5μmがより好ましい。
【0039】
−その他の添加剤−
前記その他の添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、増粘剤、酸化防止剤、マット剤、滑剤、帯電防止剤、造核促進剤、分光増感色素、界面活性剤、カブリ防止剤、硬膜剤、黒ポツ防止剤などが挙げられる。また、誘電率の高い物質を添加したり、表面を疎水性にするためにバインダーに疎水性基の導入・疎水性化合物を添加剤として添加したりしてもよい。
【0040】
−その他の層−
本発明の導電膜は、上述したように、銀塩含有乳剤層の上に保護層を設けてもよい。また、銀塩含有乳剤層よりも下に、例えば下引層を設けることもできる。
前記保護層とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層上に形成される。
前記保護層の厚みは、0.2μm以下が好ましく、0.05μm〜0.1μmがより好ましい。
前記保護層の塗布方法及び形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
本発明においては、導電性ワイヤーとバインダーを、銀塩含有乳剤層以外の層を設けて含有させることもでき、その場合、前記銀塩含有乳剤層より上層でも下層でもよい。また、前記銀塩含有乳剤層と隣接する層に導電性ワイヤーとバインダーを含有させることも好ましい。
【0042】
前記導電性ワイヤー含有層を保護層や下引層とは別に独立して設けた場合の導電膜形成用感光材料の層構成としては、支持体側から、(1)下引層/乳剤層/導電性ワイヤー含有層/保護層又はシリカを含有する密着性付与層、(2)下引層/乳剤層/導電性ワイヤー含有層、(3)導電性ワイヤー含有層/乳剤層/保護層、(4)下引層/第一乳剤層/第二乳剤層/導電性ワイヤー含有層/保護層(乳剤層の銀塩含有量が異なる)などが挙げられる。なお、前記(2)のように、保護層がなく導電性ワイヤー含有層が最上層となる形態でもよい。
【0043】
前記導電膜形成用感光材料は、支持体上に乳剤層形成用塗布液、導電性ワイヤー含有層形成用塗布液などの各層を形成しうる塗布液を逐次塗布すること、同時重層塗布することにより形成することができる。このように重層塗布して後述する露光現像処理を施すことで導電膜が製造でき、これにより製造工程を簡略化して歩留まりを向上させることもできる。またメッシュ形状の導電膜に導電性ワイヤー含有層形成用塗布液を塗布する場合には、導電性ワイヤーが均一に分散せずに、メッシュ上に凝集するなどの問題が生じることがあるが、同時重層塗布によれば、そのような問題が生じず、導電性ワイヤーの分散性が高い導電膜を得ることができる。
【0044】
前記第2の導電層は、前記導電膜形成用感光材料を、パターン露光し、現像処理して得られる。
【0045】
以下、導電性ワイヤーを含有する導電膜形成用感光材料を用いて第2の導電層を製造する方法について説明する。
パターン露光・現像処理によって形成する形状は、メッシュ状で、直線が直交している格子状、接触部間が少なくとも1つの湾曲を有する波線形状などがあるが、例えば格子状メッシュでは、ライン/スペースが20μm〜1,000μmが好ましく、20μm〜300μmがより好ましい。このときピッチは200μm〜1,000μmが好ましく、200μm〜600μmがより好ましい。
本発明では、導電性が確保される範囲内で導電性ポリマーを塗布することにより、更に導電層を形成してもよい。
【0046】
−露光−
前記銀塩含有乳剤層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
【0047】
−現像処理−
前記導電膜形成用感光材料の現像処理は、銀塩含有乳剤層を露光した後、更に現像処理が施される。前記現像処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
本発明では、前記の露光及び現像処理を行うことにより露光部にパターン状の金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。
前記導電膜形成用感光材料の現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。前記導電膜形成用感光材料に対する定着処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
得られた導電膜形成用感光材料は、銀塩含有乳剤層に導電性ワイヤーが入っている場合には、銀塩が抜けた光透過部に導電性ワイヤーが分散し、金属銀部よりも高抵抗の導電層が形成される。銀塩含有乳剤層以外の層に導電性ワイヤーが入っている場合にも、同様に光透過部に導電性ワイヤーが分散した第2の導電層が形成される。
作製された細線金属パターンは、その表面に直径150nm以下であり、長軸方向長さ5μm以上の突起を有する。前記第1の導電層における導電性ワイヤーが、前記第2の導電層における細線金属パターンに接触する。
【0048】
本発明では、前記導電性ワイヤーを含有する導電膜形成用感光材料を用いて得られた第2の導電層上に、導電性ワイヤーを含む分散液を用いて第1の導電層としての導電性ワイヤー含有層を形成する。
【0049】
前記導電性ワイヤーとしては、上述したものを使用できる。
前記導電性ワイヤーを含む分散液には、導電性ワイヤー以外に、溶媒、バインダー、添加剤を含んでいてもよい。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらは、少なくとも導電性ワイヤーを含有する塗布液に含有させて用いることもできるし、別の塗布液として準備して導電性ワイヤー含有層にオーバーコートして浸透させてもよい。
【0050】
前記添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤、硫化防止剤等の安定剤;界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料、顔料等の着色剤、などが挙げられる。更に、塗布性などの作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0051】
前記「塗布」としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば塗布法、印刷法、インクジェット法などの一般的な液相成膜法の全てを含むものである
前記塗布法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
前記印刷法としては、例えば凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、などが挙げられる。
【0052】
前記導電性ワイヤー含有分散液の塗布は、塗布スピード40m/s〜60m/sで行うことが好ましく、45m/s〜55m/sで行うことがより好ましい。このような塗布スピードによれば、導電性ワイヤー同士の接触点を本発明の好適な範囲に制御することができ、導電性を向上させることができる。
前記塗布スピードが、前記下限値未満であると、導電性ワイヤーの凝集が発生し易くなるために、ヘイズが増加して商品価値が低下する。前記上限値を超えると、接触点が少なくなりすぎるために、導電性ワイヤー含有層の導電性が不十分となる。
【0053】
本発明の導電膜のヘイズ値は、3%以下であることが好ましく、0.01%〜3%であることがより好ましい。
本発明の導電膜の表面抵抗は、例えば低抵抗率計ロレスタ―GP(商品名、三菱化学社製)、NON−CONTACT CONDUCTANCE MONITOR MODEL 717B(商品名、DELCOM社製)などにより測定できる。
【0054】
本発明の導電膜は、その全光線透過率は81%以上が好ましく、82%以上がより好ましく、83%以上が更に好ましく、84%以上がより更に好ましく、85%以上が特に好ましく、90%以上が最も好ましい。
本発明の導電膜では、細線金属パターンを含まない開口部の透過率は81%以上が好ましく、82%以上がより好ましく、83%以上が更に好ましく、84%以上がより更に好ましく、85%以上が特に好ましく、90%以上が最も好ましい。
前記導電性ワイヤーとして、銀粒子や銅粒子などの金属粒子を使用した場合には開口部の透過率が低下するため透明性が実用的に不十分となる場合がある。本発明の導電膜では、透明性の観点から上述した金属酸化物又はこれらの複合酸化物の導電性ワイヤーを使用することが好ましい。
また、透明性の観点から第2の導電層開口部分の開口率(第1の導電層が無い部分の面積が、第2の導電層開口部の面積に占める割合)を大きくすることが好ましい。したがって第1の導電層を含んだ状態での第2の導電層開口部分の開口率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
【0055】
−用途−
本発明の導電膜は、透明性を有し、従来に比べて更に十分な導電性を有するので、例えばタッチパネル用の透明導電膜、太陽電池、無機EL素子、有機EL素子、液晶表示素子、透明ヒータ、プラズマディスプレイ用の電磁波シールドフィルム、各種回路パターンなどに好適に用いられる。
なお、本発明の導電膜は、下記表1及び表2に記載の公開公報及び表2に記載の国際公開パンフレットの技術と適宜組合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【実施例】
【0058】
以下に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
(製造例1)
<銀ナノワイヤーのエタノール分散液の調製>
「Adv.Mater.2002,14,833〜837」に記載の方法を参照し、還元剤としてエチレングリコール(EG)を、形態制御剤兼保護コロイド剤としてポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10,000)を使用し、かつ下記の核形成工程と粒子成長工程とにより、銀ナノワイヤーのエタノール分散液を調製した。
【0060】
−核形成工程−
反応容器内で160℃に保持したエチレングリコール(EG)液100mLを攪拌しながら、硝酸銀のエチレングリコール(EG)溶液(硝酸銀濃度:1.5×10−4モル/L)10mlを、一定の流量で10秒間かけて添加した。その後、160℃で5分間保持しながら銀イオンを還元して銀の核粒子を形成した。反応液は、ナノサイズの銀微粒子の表面プラズモン吸収に由来する黄色を呈しており、銀イオンが還元されて銀の微粒子(核粒子)が形成されたことを確認した。
【0061】
−粒子成長工程−
前記核形成工程を終了した後の核粒子を含む反応液を、攪拌しながら170℃に保持し、硝酸銀のエチレングリコール(EG)溶液(硝酸銀濃度:1.0×10−1モル/L)200mLと、PVPのEG溶液(ビニルピロリドン濃度換算:3.0×10−1モル/L)200mLを、ダブルジェット法を用いて一定流量で210分間かけて添加した。この粒子成長工程において、30分間毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、前記核形成工程で形成された核粒子が時間経過に伴ってワイヤー状の形態に成長しており、粒子成長工程における新たな微粒子の生成は認められなかった。最終的に、得られた銀ナノワイヤーについて、電子顕微鏡写真を撮影し、300個の銀ナノワイヤー粒子像の長軸方向長さ及び直径(短軸方向長さ)を測定して算術平均を求めた。
得られた銀ナノワイヤーの平均直径(短軸方向長さ)は約100nm、長軸方向長さの平均値は約21μm、アスペクト比は約210であった。
【0062】
−脱塩水洗工程−
前記粒子成長工程を終了した反応液を室温まで冷却した後、分画分子量0.2μmの限外濾過膜を用いて脱塩水洗処理を施すと共に、溶媒をエタノールに置換した。最後に液量を100mLまで濃縮して銀ナノワイヤーのエタノール分散液を調製した。
【0063】
(実施例1)
−試料101の作製−
製造例1の銀ナノワイヤーのエタノール分散液に、水、及びゼラチンを添加した。ゼラチンは3質量%となるように添加し、銀ナノワイヤー含有層塗布液を調製した。厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、塗布装置としてスロットダイを有するスロットダイコーターを使用して、銀ナノワイヤーの目付け量が0.4g/mとなるように、塗布スピード40m/sで塗布して、銀ナノワイヤー含有層を形成した。試料101を作製した。
【0064】
−試料102の作製−
試料101の作製において、塗布スピード40m/sを50m/sに変更した以外は、試料101と同様にして、試料102を作製した。
【0065】
−試料103の作製−
試料101の作製において、塗布スピード40m/sを60m/sに変更した以外は、試料101と同様にして、試料103を作製した。
【0066】
−試料104の作製−
試料101の作製において、形態制御剤兼保護コロイド剤としてポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量40,000)を使用し、PVPのEG溶液(ビニルピロリドン濃度換算:6.0×10−1モル/L)とした以外は、試料101と同様にして、試料104を作製した。
【0067】
−試料105の作製−
試料101の作製において、塗布スピード40m/sを70m/sに変更した以外は、試料101と同様にして、試料105を作製した。
【0068】
(実施例2)
<試料201の作製>
−乳剤の調製−
〔1液〕
・水・・・750mL
・ゼラチン(フタル化処理ゼラチン)・・・8g
・塩化ナトリウム・・・3g
・1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン・・・20mg
・ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム・・・10mg
・クエン酸・・・0.7g
【0069】
〔2液〕
・水・・・300mL
・硝酸銀・・・150g
【0070】
〔3液〕
・水・・・300mL
・塩化ナトリウム・・・38g
・臭化カリウム・・・32g
・ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005質量%KCl、20質量%水溶液)・・・5ml
・ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001質量%NaCl、20質量%水溶液)・・・7ml
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005質量%KCl、20質量%水溶液)、及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001質量%NaCl、20質量%水溶液)は、それぞれの錯体粉末を、それぞれKCl 20質量%水溶液、NaCl 20質量%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0071】
38℃、pH4.5に保たれた前記〔1液〕に、前記〔2液〕と前記〔3液〕の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて、下記〔4液〕、及び〔5液〕を8分間にわたって加え、更に、前記〔2液〕と前記〔3液〕の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。更に、ヨウ化カリウム0.15gを加え、5分間熟成し、粒子形成を終了した。
【0072】
〔4液〕
・水・・・100mL
・硝酸銀・・・50g
【0073】
〔5液〕
・水・・・100mL
・塩化ナトリウム・・・13g
・臭化カリウム・・・11g
・黄血塩・・・5mg
【0074】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。
次に、上澄み液を3リットル除去した(第一水洗)。更に、3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作を更に1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。
【0075】
水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mg、及び塩化金酸10mgを加え、55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、及び防腐剤としてプロキセル(商品名,ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ素塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に、乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=40μS/m、密度=1.2×10kg/m、粘度=60mPa・sとなった。
【0076】
−塗布液の調製−
作製した乳剤に、下記構造式で表される増感色素(SD−1)5.7×10−4モル/モルAgを加えて分光増感を施した。更にKBr 3.4×10−4モル/モルAg、下記構造式で表される化合物(Cpd−3)8.0×10−4モル/モルAgを加え、よく混合した。
【化1】

【0077】
次いで、1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10−4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10−2モル/モルAg、クエン酸3.0×10−4モル/モルAg、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩を90mg/m、ゼラチンに対して15質量%の粒径10μmのコロイダルシリカ、上記構造式で表される水性ラテックス(aqL−6)を50mg/m、ポリエチルアクリレートラテックスを100mg/m、メチルアクリレートと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩と2−アセトキシエチルメタクリレートのラテックス共重合体(質量比88:5:7)を100mg/m、コアシェル型ラテックスコア:スチレン/ブタジエン共重合体(質量比37/63)、シェル:スチレン/2−アセトキシエチルアクリレート(質量比84/16、コア/シェル比=50/50)を100mg/m、及びゼラチンに対し4質量%の上記構造式で表される化合物(Cpd−7)を添加し、クエン酸を用いて塗布液のpHを5.6に調整した。
【0078】
−下引層の形成−
以下のようにして支持体上にゼラチン下引層を設けた。支持体としては、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。このPETフィルムには、予め表面親水化処理が施されている。
【0079】
−ハロゲン化銀乳剤層の形成−
前記乳剤を用いて、前記のようにして調製した乳剤層塗布液を下引層上にAgを4.5g/m、ゼラチンを0.25g/mになるように塗布し、ハロゲン化銀乳剤層を形成した。その後、露光現像処理を行い、銀からなるメッシュパターンの導電層を形成した。露光及び現像処理については後で詳述する。
【0080】
−銀ナノワイヤー含有層の形成−
製造例1の銀ナノワイヤーのエタノール分散液に、水及びゼラチンを添加した。ゼラチンは3質量%となるように添加し、銀ナノワイヤー含有層塗布液を調製した。その塗布液を銀ナノワイヤーの目付け量が0.4g/mとなるように、ハロゲン化銀乳剤層上に、試料101と同じ塗布装置を使用して、塗布スピード50m/sで塗布して、試料201を作製した。
なお、試料201では、ハロゲン化銀乳剤層に銀ナノワイヤーが添加されていないが、ハロゲン化銀乳剤層に隣接する銀ナノワイヤー含有層に銀ナノワイヤーが添加されており、それが露光、現像後の銀メッシュパターンに密着していることから、本発明ではこの実施態様も細線金属パターンの表面に突起が形成されている範囲に入るとする。
【0081】
<試料202の作製>
製造例1の銀ナノワイヤーのエタノール分散液を前記乳剤に添加した以外は、試料201と同様にして、試料202を作製した。なお、試料202の銀ナノワイヤーの目付け量は0.4g/mとした。
【0082】
<試料203の作製>
前記乳剤に、製造例1の銀ナノワイヤーのエタノール分散液を添加せず、かつ銀ナノワイヤー含有層を設けない以外は、試料201と同様にして、試料203を作製した。
【0083】
−露光及び現像処理−
試料201、試料202、及び試料203では、フォトマスクライン/スペース=5μm/295μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=295μm/5μm(ピッチ300μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、下記の現像液で現像した。更に、定着液(商品名:CN16X用N3X−R、富士フイルム株式会社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスし、細線金属パターンを形成した試料201、試料202、及び試料203を作製した。
作製した試料201、202、及び203について、電子顕微鏡で確認したところ、試料202は、細線金属パターンに直径150nm、長軸方向長さ7μmの突起が形成されていた。
【0084】
[現像液の組成]
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
・ハイドロキノン・・・0.037mol/L
・N−メチルアミノフェノール・・・0.016mol/L
・メタホウ酸ナトリウム・・・0.140mol/L
・水酸化ナトリウム・・・0.360mol/L
・臭化ナトリウム・・・0.031mol/L
・メタ重亜硫酸カリウム・・・0.187mol/L
【0085】
次に、作製した各試料について、以下のようにして、第1の導電層における3μm四方の領域内に導電性ワイヤー同士が接触する交点の数、第1の導電層における縦15μm×横20μmの領域における接触部の数、ヘイズ値、及び表面抵抗を測定した。結果を表3に示す。
【0086】
<第1の導電層における3μm四方の領域内に導電性ワイヤー同士が接触する交点の数、及び第1の導電層における縦15μm×横20μmの領域における接触部の数>
各試料を、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)で測定し、3μm四方の領域内に、導電性ワイヤー同士の接触する交点の数を測定し、10点以上存在する領域を接触部とした。また同様にして、第1の導電層における縦15μm×横20μmの領域内の接触部の数を求めた。
【0087】
<ヘイズ値の測定>
ガードナー社製ヘイズガードプラスを使用して、得られた各試料のヘイズ値を測定した。
【0088】
<表面抵抗の測定>
各試料の表面抵抗を、表面抵抗計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)を用いて測定した。
【0089】
【表3−1】

【表3−2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の導電膜は、透明性を有し、従来に比べて更に十分な導電性を有するので、例えばタッチパネル用の透明導電膜、太陽電池、無機EL素子、有機EL素子、液晶表示素子、透明ヒータ、プラズマディスプレイ用の電磁波シールドフィルム、各種回路パターンなどに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層とを有する導電膜であって、
前記導電性ワイヤーが、直径150nm以下であり、アスペクト比150以上であり、
前記第1の導電層における3μm四方の領域内に、前記導電性ワイヤー同士が接触する交点が10点以上存在する接触部を有することを特徴とする導電膜。
【請求項2】
第1の導電層における3μm四方の領域内に、導電性ワイヤー同士が接触する交点が、10点以上50点以下存在する接触部を有する請求項1に記載の導電膜。
【請求項3】
第1の導電層における3μm四方の領域内に、導電性ワイヤー同士が接触する交点が、15点以上50点以下存在する接触部を有する請求項1から2のいずれかに記載の導電膜。
【請求項4】
第1の導電層における縦15μm×横20μmの領域内に、5つ以上の接触部を有する請求項1から3のいずれかに記載の導電膜。
【請求項5】
第1の導電層における縦15μm×横20μmの領域内に、5つ以上20つ以下の接触部を有する請求項1から4のいずれかに記載の導電膜。
【請求項6】
支持体と、該支持体上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層と、細線金属パターンを有する第2の導電層とを有する導電膜であって、
前記導電性ワイヤーが、直径150nm以下であり、アスペクト比150以上であり、
前記第1の導電層の3μm四方の領域内に、前記導電性ワイヤー同士が接触する交点が10点以上存在する接触部を有し、
前記第1の導電層における導電性ワイヤーが、前記第2の導電層における細線金属パターンに接触していることを特徴とする導電膜。
【請求項7】
細線金属パターンが、ストライプパターン及びメッシュパターンのいずれかである請求項6に記載の導電膜。
【請求項8】
第1の導電層における導電性ワイヤー同士が接触する交点が、第2の導電層における細線金属パターンに接触している請求項6から7のいずれかに記載の導電膜。
【請求項9】
第1の導電層における接触部が、第2の導電層における細線金属パターンに接触している請求項6から7のいずれかに記載の導電膜。
【請求項10】
支持体と、該支持体上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層と、細線金属パターンを有する第2の導電層とを有する導電膜であって、
前記細線金属パターンが、その表面に直径150nm以下であり、長軸方向長さ5μm以上の突起を有することを特徴とする導電膜。
【請求項11】
突起が、導電性ワイヤーである請求項10に記載の導電膜。
【請求項12】
第1の導電層における導電性ワイヤーが、直径150nm以下であり、アスペクト比150以上である請求項10から11のいずれかに記載の導電膜。
【請求項13】
第1の導電層における導電性ワイヤーが、第2の導電層における細線金属パターンの突起に接触している請求項10から12のいずれかに記載の導電膜。
【請求項14】
導電性ワイヤーが、金属ナノワイヤー及びカーボンナノチューブのいずれかである請求項1から13のいずれかに記載の導電膜。
【請求項15】
金属ナノワイヤーが、銀ナノワイヤーである請求項14に記載の導電膜。
【請求項16】
ヘイズ値が3%以下である請求項1から15のいずれかに記載の導電膜。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の導電膜の製造方法であって、
支持体上又は第2の導電層上に、導電性ワイヤーを含有する第1の導電層塗布液を塗布スピードが40m/s〜60m/sで塗布して、第1の導電層を形成することを特徴とする導電膜の製造方法。

【公開番号】特開2011−134679(P2011−134679A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295299(P2009−295299)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】