説明

小動物用血圧呼吸測定装置

【課題】小動物用非観血式血圧計を使用するとき、覚醒動物の体を固定する器具に呼吸測定装置の歪みセンサーを取り付けられるようにすること。
【解決手段】動物の頭部・胸部・前肢を頭側と側面から固定する部分11と、動物の下腹部・腰部・後肢を側面から固定する部分12とを備え、呼吸測定装置の歪みセンサー24を動物の体が一部露出している胸部・腹部に取り付けることにより、覚醒動物の体が固定され血圧が測定されつつ同時に呼吸を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覚醒小動物の呼吸と血圧を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、覚醒時に被験動物(主にラット)の血圧を測定する簡便な方法は、非観血式血圧計を用い、尾にカフを巻きつけて測定する。そのとき、ストレスが少なく、安定して、連続的に血圧測定するために、被験動物の体と尾を何らかの方法で不動化することが必要である。そのために、図2の26に示すような被験動物の体を固定する器具を使う。
呼吸をモニターする簡便な方法は、例えば図2の24に示すような、麻酔下の被験動物の体に歪みセンサーを巻きつけ、その動きを検出する方法が知られているが、この方法はもっぱら麻酔下の動物で行われ、覚醒の動物では、センサーを取り付けられることによって生じる動物の呼吸以外の動きによって測定できなかった。
【0003】
図2において、22は21と接続されている。動物は、26の中に閉じ込められ、尾が外に出され、尾は25に固定された状態で22が装着され、血圧が測定される。呼吸測定においては、麻酔下の動物で、その胴体に24が巻きつけられ、24は23に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−529585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モデルとしての実験動物での生理現象を調べるとき、平常時の現象を観測できることが望ましい。しかしながら、生理現象の観測は、多くの場合、麻酔下の動物で行われるか、あるいは熟練の技術を要する外科手術で各種センサーを取り付け回復させたあとで観測するという手順が用いられていて、平常時の現象を簡便に観測することができなかった。しかし、例えば血圧測定などでは、動物の体を固定する器具を用いて平常時の血圧を測定する方法が知られていた。これは、比較的簡便に血圧を測定することができるが、この従来の方法では、前記固定器具のため、胸・腹部の動きで呼吸を測定することを併用できないという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、簡便に血圧と呼吸測定を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の小動物用血圧呼吸測定装置は、小動物の血圧と呼吸を同時に測定するための装置であって、頭部、胸部、前肢を固定する部分および下腹部、腰部、後肢を固定する部分を有し、前記ラットの呼吸数を測定するセンサーを露出している胸部・腹部に、および血圧を測定するセンサー/カフを尾に装着するということにより、覚醒状態のラットの呼吸と血圧を同時に測定する装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の小動物用血圧呼吸測定装置によれば、誰でもが簡便に、ラットの平常時の血圧と呼吸を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】小動物用血圧呼吸測定装置の概略図
【図2】従来の小動物の体を固定する器具、血圧測定装置、および呼吸測定装置の概略図
【図3】本発明の実施の形態における固定器具の小動物を固定するときの手順を示す図
【図4】本発明の実施の形態における非観血式血圧測定装置とひずみ検出式呼吸測定装置(エ)あるいは、変位計呼吸測定装置(オ)を装着した図
【図5】本発明の実施の形態における非観血式血圧測定装置と変位計呼吸測定装置を装着し、におい刺激に応答する脳信号検出電極を装着した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態における固定具の概略図である。図1において、11は動物の頭部・胸部・前肢を頭側と側面から固定する部分、12は動物の下腹部・腰部・後肢を側面から固定する部分である。14は台座、15は台座に固定されている脚である。11と12は、14の上に設置された15でねじにより可動式に固定される。側面の13は、15に挟まれるように使われ、11、12は、頭−尾軸の水平方向に移動できる。16は12へ、はめ込むことができ、16に開けられた穴には動物の尾が通る。16は12の上部からいつでも着脱可能である。12と16が動物の下腹部・腰部・後肢を側面と尾側から固定する機能を果たす構成要素である。
【0012】
図3において、動物を固定する方法を図示する。ここでは、図1に示した14、16を省略している。まず動物を11の中に誘い込み、頭部が11先端まで達したのを確認したら、その後すばやく尾を12の16の穴に通し(ア)、尾側より頭部のほうへ12を移動させて(イ)、動物にストレスを与えない程度でかつ安定して体が保持できるように11と12の距離を調節し、最後に12を15に止める(ウ)。
【0013】
図4において、固定した動物に血圧測定装置と呼吸測定装置を取り付けた状態を示す。ここでは図1に示した13、14、15、16を省略している。血圧測定装置は、非観血式のもので尾にカフとセンサーを装着するものが望ましい。(エ)では、呼吸測定装置は、接触式の装置で、動物の胸部・腹部にわたる部分に対して24を巻きつけ装着する。当然11、12から露出している胸部・腹部の動きを妨げない。(オ)では、呼吸測定装置は、非接触式の装置で、光あるいは音を利用した変位計で、動物の呼吸に伴う胸部・腹部の動きを計測する。最も感度のよい部分を測定するため14には一部穴が開けられ41のはたらきを妨げない。
【0014】
かかる構成要素によれば、動物の体を頭側・尾側の両方から挟みこみ固定し、さらに、図4に示すように、尾は25に固定し、胸部・腹部・尾の一部を露出することで、胸部・腹部の一部には呼吸センサーを、尾の一部には血圧センサーを装着でき、誰もが、覚醒状態の動物でも呼吸と血圧が同時に測定できる。
なお、11は14に固定されてもよい。
なお、11、12の15への固定は、ねじ止めのほかに、ピン止め、万力による固定でもよい。
【0015】
なお、尾を12の16の穴に通し、尾側より頭部のほうへ12を移動させるとしたが、最初に16を抜いた状態の12と11を隣接するように配置し、動物を頭部から12、11の順に進入させた後に、12の位置を調節し、その後12に16を取り付けて、前記のように体を固定するのもよい。
【0016】
なお、尾を12の16の穴に通し、尾側より頭部のほうへ12を移動させるとしたが、最初に16を装着した12に動物の尾と下半身をはめ込んで、その後に頭部・上半身を11へ進入させ、11と12の距離を調節し、前記のように体を固定するのもよい。
【0017】
なお、動物はラット、マウス、モルモット、ハムスター、スナネズミなど齧歯類の小形動物でもよい。
【0018】
なお、14には一部穴が開けられとしたが、14と11、12との間に距離を作り、そこに41を設置するのもよい。
【0019】
なお、15一箇所につきねじ止めは1本または2本以上のねじでもよい。
【0020】
図5において、11の代わりに51、52、53、で頭部・胸部・前肢を固定した状態を示す。ここでは図1に示した13、14、15、16を省略している。51と52は14に固定されていて、53は52と可逆的に固定されている。53と52を介して頭部は14に固定され、さらに51を介して胸部・前肢は14に固定され、その結果11で固定するのと同じ効果を示す。55は動物の鼻を覆うように装着され、任意の気体を提示することができる。これによって、覚醒下の動物で、頭部を固定したまま、55を介して嗅覚刺激が提示され、それに対する脳の応答が54を介して測定される。54から伸びる矢印は、測定される脳活動の信号の流れを示し、その先は記録装置へとつながる。また、同時に21、22を介して血圧と、41、42を介して呼吸が測定される。
【0021】
なお53の52への固定は、ねじ止めのほかに、ピン止め、万力による固定でもいいものとする。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の小形動物用呼吸血圧測定装置によれば、覚醒下の動物の血圧と呼吸を同時に計測することによって、誰でもが簡便に、動物の生理状態をとらえることができるので、実験動物に刺激や操作を加えたときの生理反応を調べることができる。また血圧と呼吸だけでなく、そのほかの生理応答、例えば脳活動も同時に計測する応用もできる。
【符号の説明】
【0023】
11 頭部・胸部・前肢固定具
12 腰部・下腹部・後肢固定具
13 ガイドレール
14 台座
15 脚
16 腰板
21 血圧測定装置本体
22 カフ・センサー部
23 呼吸測定装置本体
24 センサー部
25 尾固定用アンカー
26 体固定器具
41 変位計センサー部
41 変位計本体
51 胸部・前肢固定具
52 脚
53 頭部固定補助具
54 脳活動記録プローブ
55 刺激用マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小動物の呼吸と血圧を測定するための装置であって、
頭部、胸部、前肢を固定する部分、
下腹部、腰部、後肢を固定する部分を有し、
前記装置は、覚醒状態の動物の体を安静に固定でき
前記小動物の呼吸と血圧を測定するため、胸部・腹部、尾部の一部分を露出し、
前記小動物の胸部・腹部の動きから呼吸を測定し、
前記小動物の尾部から非観血式に血圧を測定する
ことを特徴とする覚醒状態の小動物の血圧と呼吸を測定する装置。
【請求項2】
小動物の呼吸と血圧を測定するための装置であって、
胸部、前肢を固定する部分、
頭部を固定する補助具を有し、
下腹部、腰部、後肢を固定する部分を有し、
前記装置は、覚醒状態の動物の体を安静に固定でき
頭部、胸部・腹部、尾部の一部分を露出し、
前記小動物に感覚刺激を提示し、
前記小動物の頭部から脳活動を測定し、
前記小動物の胸部・腹部の動きから呼吸を測定し、
前記小動物の尾部から非観血式に血圧を測定する
ことを特徴とする覚醒状態の小動物の血圧と呼吸を測定する装置。
【請求項3】
前記感覚刺激は、視覚、聴覚、洞毛を含む触覚、嗅覚、味覚、温度、痛み刺激である
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記呼吸の測定は、歪みセンサーを利用する接触式、レーザー光、音を利用する非接触式の測定装置である、
請求項2に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−177331(P2011−177331A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43910(P2010−43910)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】