説明

小口径推進工法

【課題】 発進からの直線区間に続いて次に曲線区間を有する線形を有する現場を、より簡便に安価な工事費で良好な施工性をもって小口径推進を実現可能とする新しい技術手段を提供する。
【解決手段】 発進立坑からの直線区間に続いて次に曲線区間を有する線形での小口径推進工法であって、到達点から曲線開始位置までの長さ分には掘進機、ポンプ筒、強制管および誘導機が配置され、曲線開始位置から発進立坑までの直線長さ分には推進管(ヒューム管)が配置されるように、直線区間でのレーザーによる測量と直線区間並びに曲線区間での測量ロボットの走行による測量とを組み合わせて測量して掘進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発進立坑からの直線区間に続いて曲線で到達する線形を有する現場での小口径推進工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小口径推進工事における測量は、坑内に人が入り作業ができない。このため、直線線形の施工は、発進立坑から立坑に向けてレーザ光を発射させる方法が一般的である。レーザ光を使った通常の測量は、たとえば図4に示したように、発進立坑にレーザの発信源を設置し、掘進機に向けてレーザを発射する。掘進機側にはレーザターゲットを配置し、ターゲット盤に照射されたレーザスポット位置を地上のカメラで監視している。この画像から掘進機の水平面、鉛直面における設計路線からの乖離を把握し、掘進機を制御する。このようにシステムとしてはシンプルで、レーザ光を利用するだけで非常に安価である。ただし、レーザ光は直進しかしないため、曲線区間では利用することができない。このため、曲線線形を含む施工では、レーザを利用できないため、測量ロボットやセンサを駆使した測量が主流になっている。たとえば、電磁波、あるいはジャイロを使った測量方法である。
【0003】
電磁波による掘進機位置計測を示したものが図5である。
【0004】
だが、電磁波で掘進機位置を測定する方法では、測定精度に悪影響を及ぼす埋設管の問題や測定可能距離、障害物(河川等)により施工条件に制限が生じる。さらに、測定位置の交通量の条件により、測定時間が長くなったり、測定を断念する場合がある。従って、電磁波による測量は、精度、施工条件に制約があり、レーザ方式と比べて測量、解析時間等に時間がかかるため、施工費が高くなる。
【0005】
一方、ジャイロを使った測量は、図6に示すように測量ロボットにジャイロを搭載し掘進機位置を計測する方法である。このシステムは、発信立坑で測量ロボットの位置姿勢を測量し、それを初期値にしてジャイロ方位角と走行距離を積分して、切り羽側測量ロボット停止位置までを測定し、掘進機の位置を計測する。
【0006】
測量ロボットは、誘導機内に設置した線路上、すなわち発進立坑から強制管まで測量毎に走行する。このため、到達立坑までの掘削は、推進管を使わず誘導機を使って施工する。この作業を一工程と呼ぶ。一工程完了後、誘導機を推進管と置き換える施工を実施する。この作業を二工程と呼ぶ。しかしながら、この方式の場合には、測量精度や施工条件の制約が少ないものの、二工程方式で施工が行われるため施工費が高くなる。レーザを用いる方法は、システムが単純で安価であるのに対し、曲線を含む線形の測量は、システムが複雑となり、工事費が高価なものとなる。
【0007】
そして、発進立坑から直線区間があり、その後曲線区間を有する線形を持つ現場を施工する場合、曲線区間ではレーザを用いることができないことになる。このため、全スパンを高価なシステムで施工しなければならなくなり、工事費も高いものになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のとおりの背景から、従来の問題点を解消して、発進立坑からの直線区間に続いて次に曲線をもつ線形を有する現場を、より簡便に安価な工事費で良好な施工性をもって小口径推進を実現可能とする新しい技術手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴とする小口径推進工法を提供する。
【0010】
第1:発進立坑からの直線区間に続いて次に曲線区間を有する線形での小口径推進工法であって、到達点から曲線開始位置までの長さ分には掘進機、ポンプ筒、強制管および誘導機が配置され、曲線開始位置から発進立坑までの直線長さ分には推進管(ヒューム管)が配置されるように、直線区間でのレーザーによる測量と直線区間並びに曲線区間での測量ロボットの走行による測量とを組み合わせて測量して掘進することを特徴とする小口径推進工法。
【0011】
第2:発進立坑から掘進機、ポンプ筒、強制管、曲線区間のための誘導機と測量ロボットを順次投入し、誘導機の次にレーザターゲットを備えたターゲット筒と、その後に、推進管(ヒューム管)を投入するに際し、発進立坑からターゲット筒まではレーザー測量し、誘導機より前方は測量ロボットでの測量、もしくは測量ロボットでの測量とストロークデータでの演算とによって測量し、到達後には掘進機からターゲット筒までを回収して推進管(ヒューム管)と置換することを特徴とする上記の小口径推進工法。
【発明の効果】
【0012】
上記のとおりの本発明の工法によれば、発進立坑からの直線区間に続いて次に曲線区間をもって到達する線形を有する現場を、より少ない作業工数で簡便に、しかも安価な工事費で良好な施工性をもって小口径推進が可能とされる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の工法は、小口径曲線推進工事を対象としており、主として、発進立坑からの直線区間に続いて次に曲線区間を有する線形をターゲットとしている。この場合、曲線数は複数であってもよい。
【0014】
測量は、レーザとジャイロを搭載した測量ロボットを組み合わせて行うことができる。レーザターゲットで計測した位置姿勢情報を測量ロボットが引き継ぎ、この情報を初期値として、レーザターゲット先端から強制管後部まで測量ロボットが走行して、軌跡データとして計測する。以降、強制管、ポンプ筒、掘進機に取り付けたストローク計データを演算し、最終的に掘進機の先端位置姿勢を求める。
【0015】
従来の方法だと、発進立坑から測量ロボットを走行させて掘進機の位置姿勢を計測するため、走行時間が必要となり、測量に時間がかかる。さらに、測量ロボット走行部分は、到達後全て推進管に置き換える二工程の作業が必要となるため、施工費が高くなる。
【0016】
これに対して、本発明の工法では、測量ロボットの走行距離を最小限にすることで測量時間が短縮できる。しかもこれにより、二工程の作業は到達から曲線始点の部分だけを推進管と置き換えればいいため、施工工数の削減につながり、全体の工事費が大幅に安価になる。経済性を優先する場合は、全スパン量の直線が占める比率が大きいほうが有効的である。
【0017】
以下、図面に沿ってさらに詳しく説明する。
【0018】
図1は、直線区間を施工する際の概略図である。
【0019】
たとえば初期掘進時は、まず最初に掘進機、ポンプ筒、強制管、曲線区間を施工するのに必要な誘導機と測量ロボットを順次投入する。誘導機の次にターゲット筒を配置し、その後推進管を投入していく。この直線区間においては、誘導機もしくはその前方においては測量ロボットの走行によって、測量し、またターゲット筒と発進立坑の間はレーザー測量する。
【0020】
図2は、曲線区間に入り、掘進機が到達立坑に達するまでの概略図であり、図3(A)(B)は、各々、ターゲット部断面と測量ロボット走行断面を例示したものである。
【0021】
レーザ測量方式と測量ロボットの走行方式を組合わせて測量する。
【0022】
測量ロボットが走行するのはレーザターゲット前部の誘導機から強制管後部までの区間だけで、全線測量ロボットを走行させる従来方法より、かなり走行距離が短くなる。また、到達後の機械の回収も、掘進機からターゲット筒までの区間だけで、全区間を推進管と置き換える従来工法より、作業工数がかなり削減できる。
【0023】
このように、本工法は測量時間、二工程での機械回収工数を大幅に削減することで、従来より相当安価な施工が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明において直線区間を施工する際の概略図である。
【図2】曲線区間に入り、掘進機が到達立坑に到るまでの概略図である。
【図3】A、Bは、各々、図2におけるターゲット部を例示した断面図と、測量ロボット走行部を例示した断面図である。
【図4】従来のレーザ測量について示した概要図である。
【図5】従来の電磁波による掘進機位置の測定を示した概要図である。
【図6】従来の測量ロボットによる測量を示した概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進立坑からの直線区間に続いて次に曲線区間を有する線形での小口径推進工法であって、到達点から曲線開始位置までの長さ分には掘進機、ポンプ筒、強制管および誘導機が配置され、曲線開始位置から発進立坑までの直線長さ分には推進管(ヒューム管)が配置されるように、直線区間でのレーザーによる測量と直線区間並びに曲線区間での測量ロボットの走行による測量とを組み合わせて測量して掘進することを特徴とする小口径推進工法。
【請求項2】
発進立坑から掘進機、ポンプ筒、強制管、曲線区間のための誘導機と測量ロボットを順次投入し、誘導機の次にレーザターゲットを備えたターゲット筒とし、その後に、推進管(ヒューム管)を投入するに際し、発進立坑からターゲット筒まではレーザー測量し、誘導機より前方は測量ロボットでの測量、もしくは測量ロボットでの測量とストロークデータでの演算とによって測量し、到達後には掘進機からターゲット筒までを回収して推進管(ヒューム管)と置換することを特徴とする請求項1の小口径推進工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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