説明

小口径用二重管削孔装置

【課題】二重管を構成するインナーロッドとしての十分な強度と剛性を確保しながら、インナーロッドの外周面と外管の内周面との間に形成される排出路の断面積を拡大することにより、掘削によって生じる繰り粉の排出に支障のない小口径用の二重管削孔装置を提供する。
【解決手段】外管2の内部にインナーロッド3を配設し、外管2の先端部にアウタービット4、インナーロッド3の先端部にインナービット5をそれぞれ備え、それらの外管2の内周面とインナーロッド3の外周面との間の間隙部を経由して掘削によって生じる繰り粉を排出するように構成した二重管削孔装置において、インナーロッド3の外周面を例えば六角形に形成することにより、軸方向に連続した円周面より凹んだ欠円部を形成して、インナーロッド3の外周面と外管2の内周面との間に形成される繰り粉の排出路の断面積を拡大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削によって生じる掘削石や掘削片等からなる繰り粉を外管とインナーロッドとの間の間隙部を経由して外部へ排出する二重管削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の二重管削孔装置は、削孔径が120mm程度以上の比較的大きな口径用の削孔手段として使用されるのが一般的であった(特許文献1)。このように、比較的大きな口径用の削孔手段として使用される場合には、外管の直径が大きく、インナーロッドとの間の間隙部を比較的容易に大きくとれることから、掘削によって生じる繰り粉をそれらの外管とインナーロッドとの間隙部を経由して外部へ排出することに然したる支障はなかった。しかしながら、法面安定化施工などにおいて一般的に使用されている削孔径が65mm程度以下の小口径用の場合になると、外管の内径も自ずと小さくなり、しかもインナービットに対する回転力や打撃力を的確に伝達するため、インナーロッドの外径はあまり小さくできないことから、外管とインナーロッドとの間隙を充分大きくとることができず、繰り粉のスムーズな排出に支障を来たし、作業効率が低下するといった技術的問題があった。特に、この種の削孔装置では、インナーロッドが細く剛性が不足する場合には、中間が撓んで軸心の振れを生じるという厄介な問題も絡んだ。
【特許文献1】特開2001−115766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑みて研究開発したもので、インナーロッドとしての十分な強度と剛性を確保しながら、インナーロッドの外周面と外管の内周面との間に形成される排出路の断面積を拡大することにより、掘削によって生じる繰り粉の排出に支障のない小口径用の二重管削孔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、請求項1の本発明では、外管の内部にインナーロッドを配設し、前記外管の先端部にアウタービット、前記インナーロッドの先端部にインナービットをそれぞれ備え、それらの外管の内周面とインナーロッドの外周面との間の間隙部を経由して掘削によって生じる繰り粉を排出するように構成した小口径用の二重管削孔装置において、前記インナーロッドの外周面に軸方向に連続した、円周面より凹んだ欠円部を形成して、インナーロッドの外周面と外管の内周面との間に形成される繰り粉の排出路の断面積を拡大するという技術手段を採用した。因みに、ここで欠円部とは、インナーロッドの外形を円形とした場合に比べて、その円周面より凹んだ部分をいう。また、請求項2の発明では、前記インナービットの外周面に軸方向に沿った繰り粉の排出溝を形成するとともに、その排出溝と前記アウタービットの内周面との間に形成される繰り粉の排出路における最大幅寸法を、前記インナーロッドの外周面に形成した欠円部と外管の内周面との間に形成される繰り粉の排出路における最大幅寸法以下に設定するという技術手段を採用した。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、インナーロッドの外周面に軸方向に連続した、円周面より凹んだ欠円部を形成して、インナーロッドの外周面と外管の内周面との間に形成される繰り粉の排出路の断面積を拡大するという技術手段を採用したので、小口径用の二重管削孔装置でありながら、インナーロッドとしての十分な強度と剛性を確保し、しかもそのインナーロッドの外周面と外管の内周面との間に形成される排出路の断面積を繰り粉の排出に支障のない大きさに拡大することが可能である。したがって、掘削によって生じる繰り粉のスムーズな排出が可能であり、しかもインナービットに対する回転力や打撃力を的確に伝達でき、インナーロッドの軸心振れの問題もない実用的な小口径用二重管削孔装置を提供することができる。また、インナービットの外周面に軸方向に沿って形成する繰り粉の排出溝とアウタービットの内周面との間に形成される繰り粉の排出路における最大幅寸法を、インナーロッドの外周面の欠円部と外管の内周面との間に形成される繰り粉の排出路における最大幅寸法以下に設定すれば、後者のインナーロッドの外周面の欠円部と外管の内周面との間に形成される繰り粉の排出路の通過に支障のある大きさの繰り粉は、前者の排出溝部分で排除され、更に粉砕されて粒径が縮小された後に流入が可能となることから、前記排出路における繰り粉の詰りを的確に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、掘削によって生じる掘削石や掘削片等を含んだ繰り粉が外管とインナーロッドとの間の間隙を経由して排出する小口径用の二重管削孔装置であれば適用が可能であり、繰り粉の一部を外管の周囲の削孔の内壁面との間の間隙部を経由して排出するものであってもよい。本発明は、削孔径が65mm程度以下の小口径用として特に有効である。インナーロッドの断面形状に関しては、六角形等の多角形状のほか、星形や円弧状に凹んだ多面形状でもよい。その円周面から凹んだ欠円部は、インナーロッドの軸方向に沿って直線的に形成したものであってもよいし、螺旋状に形成したものであってもよい。また、インナーロッドの材質等によって強度や剛性が十分な場合には、円周面の一部を平坦状あるいは円弧状に凹ませたものでもよい。因みに、インナーロッドの内部の供給路を介してインナービットの部分に水などを供給することにより、繰り粉をスライム状にて排出することができる。なお、以下の実施例においては外管を後部から打込む後打ち方式の場合について説明するが、インナービットとアウタービットとを連係し、アウタービットを介して外管を引込む前引き方式にも適用が可能である。
【実施例】
【0007】
図1は本発明の一実施例を示した全体構成図で、図2はその部分拡大図、図3はビットの先から見た拡大正面図である。図示のように、本実施例に係る小口径用二重管削孔装置1は、中空円筒状の外管2の内部にインナーロッド3を配設してなり、外管2の先端部にアウタービット4、インナーロッド3の先端部にインナービット5をそれぞれ備えるとともに、それらの外管2とインナーロッド3の後端部をアダプタ6に固着し、該アダプタ6を介して駆動機構7により回転力や打撃力を付加しながら掘削するように構成している。図3に示したように、本実施例では、アウタービット4は6個の掘削刃8、インナービット5は4個の掘削刃9を備えている。また、インナービット5の外周面の各掘削刃9の中間位置には、略V字状の縦溝からなる繰り粉の排出溝10を形成している。図4に示した図3のA−A断面図のように、排出溝10の中間部には、インナーロッド3の内部に形成した空気や水の供給路11に接続した連通路12が開口し、排出溝10に空気や水を供給して繰り粉の排出を促進するように構成している。因みに、本実施例では、アウタービット4と外管2、インナービット5とインナーロッド3、外管2及びインナーロッド3の後端部とアダプタ6は、それぞれ螺合手段により固着している。
【0008】
図5は図1のB−B拡大断面図である。図示のように、本実施例におけるインナーロッド3の断面形状は六角形からなり、外周面は6個の平坦面13から構成される。これらの6個の平坦面13は、それぞれ円周面14より凹んだ6個の欠円部15を形成し、その分インナーロッド3の外周面と外管2の内周面との間に形成される繰り粉の排出路の断面積が拡大される。なお、インナービット5の外周面に軸方向に沿って形成する略V字状の排出溝10とアウタービット4の内周面との間に形成される繰り粉の排出路における最大幅寸法Saは、インナーロッド3の平坦面13と外管2の内周面との間の最大幅寸法Sb以下に設定する。これにより、インナーロッド3の平坦面13と外管2の内周面との間の通過に支障のある大きさの繰り粉は、排出溝10の部分で排除され、更に粉砕されて粒径が縮小された後に通過されることから、繰り粉の詰りを的確に防止することができる。
【0009】
しかして、前記インナービット5及びアウタービット4による掘削により生じた繰り粉は、アウタービット4の外周部から掘削により形成される削孔の内壁面と外管2との間の間隙部を経由する経路と、インナービット5の外周面の排出溝10からインナーロッド3の外周面と外管2の内周面との間の間隙部を経由する経路とに分れて外部へ排出される。この場合、地質との関係で、地山の表層部や法面のようにれきや土砂が入混じっている地質の場合には、掘削により形成される削孔の内壁面が崩れやすく、外管2の外周部の排出路が詰りやすいため、繰り粉は主として後者のインナービット5の外周面の排出溝10からインナーロッド3の外周面と外管2の内周面との間の間隙部を経由して排出されることになる。なお、インナーロッド3の外周面と外管2の内周面との間の間隙部を経由した繰り粉は、アダプタ6に形成された排出路16から外部へ排出される。そして、本実施例の場合には、インナーロッド3の断面形状を六角形とし、6個の欠円部15によって排出路の断面積が拡大され、小口径用の削孔装置でありながら、繰り粉の排出に十分な通路断面積を確保することができる。しかも、インナーロッド3の外周面において出っ張った部分の軸中心からの高さを大きくとることが可能なことから、撓みに対する十分な剛性を確保して軸心の振れを抑制するためにも有効である。
【0010】
図6はインナーロッドの断面形状に関する他の実施例を例示した断面図である。図示のように、本実施例に係るインナーロッド17では、その断面形状として星形を採用し、欠円部18を形成する凹面部を円弧状に形成した場合を示したものである。本実施例の場合も、インナーロッド17の外周面と外管2の内周面との間の排出路の断面積を拡大するとともに、十分な剛性を確保して軸心の振れを抑制することが可能である。因みに、図5の前記実施例の場合でも図6の本実施例の場合でも、角数の増減は可能である。また、各角部をつなぐ部分は平坦面であってもよいし曲面であってもよい。さらに、撓みに対する剛性を充分確保できる場合には、インナーロッドの断面形状として、楕円状のものや、外周面の一部に欠円部を形成したものの採用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例を示した全体構成図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】同実施例をビットの先から見た拡大正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図1のB−B拡大断面図である。
【図6】インナーロッドの断面形状に関する他の実施例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0012】
1…小口径用二重管削孔装置、2…外管、3…インナーロッド、4…アウタービット、5…インナービット、6…アダプタ、7…駆動機構、8,9…掘削刃、10…排出溝、11…供給路、12…連通路、13…平坦面、14…円周面、15…欠円部、16…排出路、17…インナーロッド、18…欠円部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管の内部にインナーロッドを配設し、前記外管の先端部にアウタービット、前記インナーロッドの先端部にインナービットをそれぞれ備え、それらの外管の内周面とインナーロッドの外周面との間の間隙部を経由して掘削によって生じる繰り粉を排出するように構成した二重管削孔装置において、前記インナーロッドの外周面に軸方向に連続した、円周面より凹んだ欠円部を形成して、インナーロッドの外周面と外管の内周面との間に形成される繰り粉の排出路の断面積を拡大したことを特徴とする小口径用二重管削孔装置。
【請求項2】
前記インナービットの外周面に軸方向に沿った繰り粉の排出溝を形成するとともに、その排出溝と前記アウタービットの内周面との間に形成される繰り粉の排出路における最大幅寸法を、前記インナーロッドの外周面に形成した欠円部と外管の内周面との間に形成される繰り粉の排出路における最大幅寸法以下に設定したことを特徴とする請求項1に記載の小口径用二重管削孔装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−169901(P2006−169901A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366927(P2004−366927)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【出願人】(000006839)日鐵建材工業株式会社 (371)
【Fターム(参考)】