説明

小型スライド装置

【課題】 スライド装置を小型化することである。
【解決手段】 基台1と、この基台1の取り付け面1aに固定したレール2と、このレールに沿って移動するスライドテーブル3と、このスライドテーブル3の位置を検出する位置検出手段と、上記スライドテーブル3を移動させる駆動機構とを備え、基台1の取り付け面1aに形成した組み付け凹部14には、ホール素子16aを実装したセンサ基板16を組み込む一方、上記スライドテーブル3であって上記取り付け面1aと対向する面には永久磁石19を設けた。そして、永久磁石19と上記ホール素子16aとで位置検出手段を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライドテーブルをレールに沿って移動させる小型のスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスライド装置として、例えば特許文献1に示すものが従来知られている。こうしたスライド装置は、基台に固定したレール上をスライドテーブルが移動するが、このとき、位置検出手段によってスライドテーブルの位置を検出するようにしている。そして、このスライド装置における位置検出手段は、例えば基台に固定した近接センサやフォトセンサと、このセンサを反応させるためにスライドテーブルに設けたドグとによって構成される。
【0003】
このような位置検出手段を備えたスライド装置によれば、ドグがセンサに近づくことによって、スライドテーブルの位置を検出することができるので、例えばスライドテーブルをストロークエンドに停止させたり、あるいは原点調整をしてスライドテーブルの位置合わせをしたりすることができる。
【特許文献1】特許第3927285号「図12」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなスライド装置は、さまざまな場面で用いられるが、超小型のワークを搬送する場合などには、スライド装置の小型化が要求される。
例えば、上記のスライド装置を半導体素子の搬送に用いる場合には、ワークが超小型で、しかも非常に軽いことから、スライドテーブルをかなり小型化することができる。
【0005】
しかし、従来のスライド装置においては、センサをスライドテーブルの幅方向外方(スライドテーブルの移動軌跡外)に位置させるとともに、このセンサに対向するように、ドグをスライドテーブルの幅方向に突出させている(特許文献1:図14参照)。
したがって、スライドテーブルを小型化する場合、位置検出手段を設けることによって、スライド装置全体の幅方向における小型化には、どうしても限度が生じるという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、幅方向における一層の小型化を実現したスライド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、基台と、この基台の取り付け面に固定したレールと、このレールに沿って移動するスライドテーブルと、このスライドテーブルの位置を検出する位置検出手段と、上記スライドテーブルを移動させる駆動機構を備えた小型スライド装置において、上記基台の取り付け面には組み付け凹部を設けるとともに、この組み付け凹部には、ホール素子を実装したセンサ基板を組み込む一方、上記スライドテーブルであって上記取り付け面と対向する面には永久磁石を設け、この永久磁石と上記ホール素子とで位置検出手段を構成した点に特徴を有する。
第2の発明は、上記第1の発明を前提とし、上記スライドテーブルには、上記レールと摺動可能なガイド部材を設けるとともに、上記スライドテーブルに設けた永久磁石が、上記ガイド部材であって上記基台と対向する基台対向面のレベルより基台側へ突出しない寸法関係を保つ点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、位置検出手段を構成する永久磁石およびホール素子の両者を、スライドテーブルと基台との対向面に設けたので、スライドテーブルの幅方向外方に位置検出手段を外付けしていた従来に比べて、スライド装置の幅方向におけるサイズを小型化することができる。
また、基台に形成した組み付け凹部に、ホール素子を実装したセンサ基板を組み込んだので、スライド装置の高さ方向サイズが大きくなることもない。
もし、基台に組み込むセンサ基板の厚みが厚ければ、組み付け凹部を深くしなければならず、装置の高さ方向のサイズが大きくなってしまうが、上記ホール素子は厚みが非常に薄いので、それを実装したセンサ基板も薄くすることができ、このセンサ基板を基台に組み込んでも、スライド装置の高さ方向のサイズが大きくなることがない。
特に、小型のスライド装置の場合、僅かな寸法変化でも、全体のサイズに対する影響が大きくなってしまうので、センサ基板の厚みが薄いことは、小型スライド装置にとって有用である。
【0009】
第2の発明によれば、スライドテーブル側に設けた永久磁石が、レールに摺動するガイド部材の基台側表面レベルから基台側へ突出することがないので、永久磁石を、スライドテーブルと基台との間に設けても、スライド装置の高さ方向のサイズに影響を与えることがない。したがって、全体としてスライド装置を小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜図5を用いて、この発明の実施形態に係るスライド装置について説明する。
図1,2に示すように、基台1の取り付け面1aには、一対のレール2,2を平行に敷設するとともに、このレール2,2に沿ってスライドテーブル3を移動するようにしている。つまり、上記スライドテーブル3であって、取り付け面1aと対向する面3aには、断面をコ字状にしたガイド部材4,4を設け、これらガイド部材4,4を上記レール2,2に摺動自在に跨がせている。
また、上記スライドテーブル3には、レール2の軸方向に貫通する孔5を形成するとともに、この孔5内にボールナット6を固定し、当該ボールナット6とスクリューシャフト7のねじ溝とをねじ結合させている。したがって、スクリューシャフト7を回転させたとき、この回転力によってボールナット6およびスライドテーブル3が一体となって、レール2に沿って移動することとなる。
【0011】
なお、図3に示すように、上記スクリューシャフト7の一端には、キャップ部材8を圧入固定している。このキャップ部材8は、長手方向の一端にフランジ8aを形成するとともに、このフランジ8aを形成した一端側から他端側に貫通孔8bを貫通させている。この貫通孔8bの直径は、その内径を上記スクリューシャフト7の直径よりもわずかに小さくし、当該スクリューシャフト7にキャップ部材8を圧入したとき両者が固定されるようにしている。なお、スクリューシャフト7を圧入する孔は貫通孔ではなく、その一端をふさいだ孔であってもよい。
【0012】
一方、基台1にはケーシング9を固定しているが、このケーシング9には、上記キャップ部材8が貫通するための孔が形成されている。そして、このケーシング9の上記孔内にアンギュラベアリング10を組み込むとともに、上記ケーシング9の上記孔の開口には、蓋部材11を固定して、ケーシング9からアンギュラベアリング10が抜け出さないようにしている。
【0013】
上記のようにしたアンギュラベアリング10の内輪10aには、キャップ部材8を挿入して、上記フランジ8aを内輪10aに当接させるとともに、キャップ部材8であってフランジ8aとは反対端を上記内輪10aの外方に突出させている。そして、この突出部分には、カップリング部材12をはめるとともに、このカップリング部材12とキャップ部材8とを止めネジN1で固定し、両者が一体回転するようにしている。
また、上記のようにしてカップリング部材12を固定することによって、アンギュラベアリング10が、このカップリング部材12とフランジ8aとの間に挟みこまれる。これにより、キャップ部材8およびこのキャップ部材8を固定したスクリューシャフト7が軸方向にがたつくのを規制している。
【0014】
そして、上記キャップ部材8とは反対側におけるカップリング部材12には、モーターMの回転軸13を挿入するとともに、この回転軸13を止めネジN2で固定し、カップリング部材12と回転軸13とが一体回転するようにしている。したがって、モーターMが駆動して回転軸13が回転すれば、それにともなって、カップリング部材12、キャップ部材8およびスクリューシャフト7が一体回転することになる。また、スクリューシャフト7が回転すれば、それにともなってスライドテーブル3もレール2に沿って移動することになる。
【0015】
そして、図4,5に示すように、上記基台1の取り付け面1aには、深さ約1.5mmの組み付け凹部14,15を形成するとともに、この組み付け凹部14,15のそれぞれに基板16,17を組み付けている。上記基板16には、1つのホール素子16aを実装する一方、上記基板17には、3つのホール素子17a〜17cを、レール2の長手方向に沿って順に実装している。なお、上記基板16,17を組み付け凹部14,15に組み付けたとき、ホール素子16aおよび17a〜17cの上面すなわちスライドテーブル3との対向面が上記凹部14,15から突出しない寸法関係を維持している。具体的には、基板16,17の厚さとホール素子16aおよび17a〜17cとの厚さ合計は、約1.4mmであり、組み付け凹部14,15の深さは1.5mmである。
なお、上記図2,4,5における符号21は、基板16,17に、ホール素子16aおよび17a〜17cを実装するために設けたはんだエリアである。
【0016】
上記基板16,17には図示しない電源に接続する複数の配線が接続されている。また、ホール素子16aおよび17a〜17cに電流が流れた状態で、これら各素子に磁界を加えると起電力(ホール電圧)が生じるが、この起電力を、配線を介して制御機構に導くようにしている。なお、ここでいう制御機構は、上記ホール素子16aおよび17a〜17cからの検出信号に基づいて、モーターMの駆動を制御する機構であり、これら各素子に接続する配線は、取り付け面1aに形成した配線用凹部20に組み込まれている(図4参照)。したがって、各配線が基台1の取り付け面1a上に露出してしまい、スライドテーブル3の移動が阻害されるといった不都合を生じることもない。
【0017】
一方、図2に示すように、上記スライドテーブル3の面3aには、基台1の取り付け面1a側に突出する突部18を形成するとともに、この突部18に永久磁石19を固定している。この永久磁石19は、スライドテーブル3がレール2,2に沿って移動する過程で、上記基板16,17の各ホール素子16aおよび17a〜17cに対向する位置に設けている。
したがって、上記ホール素子16aおよび17a〜17cに電流を流した状態で、当該ホール素子16aおよび17a〜17cに永久磁石19が近づけば、上記ホール素子16aおよび17a〜17cに起電力が生じることとなる。つまり、各ホール素子16aおよび17a〜17cと永久磁石19とによって、スライドテーブル3の位置を検出する位置検出手段を構成することとなる。
【0018】
なお、上記永久磁石19がホール素子16aおよび17a〜17cに対向したとき、これら両者の対向間隔は約0.5mmである。
また、図2に示すように、突部18に設けた永久磁石19は、両ガイド部材4,4の対向部間に設けられるとともに、ガイド部材4の、基台1に対向する基台対向面4aのレベルより、基台1側に突出しない寸法関係を保っている。言い換えると、突部18および永久磁石19を設けたとしても、スライドテーブル3の高さ方向の寸法を大きくしなくてもよい。
【0019】
一方、上記した制御機構は、ホール素子16aおよび17a〜17cに生じる起電力を信号として、モーターMの駆動を制御するが、この実施形態においては、ホール素子16aおよび17cはリミットセンサとして機能する。また、ホール素子17aは原点前センサとして機能するとともに、ホール素子17bは原点センサとして機能する。
【0020】
スライドテーブル3は、本来、ホール素子16aおよび17cが起電力を生じない範囲内(信号を検出しない範囲内)で移動するが、何らかの理由でスライドテーブル3がオーバーランしてしまうことがある。このように、スライドテーブル3がオーバーランしてしまうと、当該スライドテーブル3上のワークが他の機器や装置に衝突して、ワークが破損したり故障したりするおそれがある。
そこで、ホール素子16aおよび17cをリミットセンサとして設け、これら両素子から信号が検出されたときに、制御機構がモーターMの駆動を停止して、スライドテーブル3を停止させるようにしたのである。
【0021】
例えば、モーターMが正転してスライドテーブル3がレール2,2に沿って図1中左方向に移動している際に、当該スライドテーブル3がオーバーランして、永久磁石19がホール素子16aの近傍に到達したとする。すると、ホール素子16aに起電力が生じるとともに、制御機構が、この起電力を信号として検出し、モーターMの駆動を停止してスライドテーブル3を停止させる。
一方、スライドテーブル3が、図面右方向に移動している際にオーバーランしたときには、ホール素子17cが上記と同様に、リミットセンサとして機能することとなる。
【0022】
これに対して、上記ホール素子17a,17bは、例えば、装置に電源を入れたときの、スライドテーブル3の原点合わせに用いる。つまり、装置の電源を入れると、制御機構がモーターMを駆動してスライドテーブル3を移動させる。そして、スライドテーブル3の永久磁石19が、ホール素子17aの近傍に到達したとき、制御機構はモーターMを減速させて、スライドテーブル3をゆっくりと図面右方向に移動させる。
スライドテーブル3がゆっくりと移動して永久磁石19がホール素子17bの近傍に到達したところで、制御機構がモーターMの駆動を停止する。
このように、ホール素子17aを原点前センサとして用い、ホール素子17bを原点センサとして用いることによって、装置に電源を入れたときに、スライドテーブル3を常に一定の場所に位置させることができる。
【0023】
上記実施形態のスライド装置によれば、基台1の取り付け面1aとスライドテーブル3の面3aとに位置検出手段を設けたので、スライドテーブル3の幅方向外方に位置検出手段を設けていた従来の構成に比べて、装置を小型化することができる。
また、取り付け面1aに組み付け凹部14,15を形成するとともに、これら組み付け凹部14,15内に基板16,17を組み付けたので、装置の高さ方向の小型化も図ることができる。
【0024】
なお、上記実施形態においては、取り付け面1aに一対のレール2,2を固定したが、例えばレール2を取り付け面1aの中央に1つだけ設けても構わない。この場合にも、レール2を避けた位置において、永久磁石19とホール素子とが対向すればよい。そして、この場合にも、上記レール2に摺動可能なガイド部材4を設け、永久磁石19が、ガイド部材4の基台対向面4aのレベルよりも基台1側に突出しない寸法関係を保てば、永久磁石19を設けても、スライド装置の高さ方向のサイズに影響を与えることがないことは、上記実施形態と同様である。
【0025】
また、上記実施形態においては、基台1に2つの基板16,17を設けたが、位置検出手段を構成する基板はいくつ設けても構わないし、さらには基板に設けるホール素子の数や、制御機構の制御についても必要に応じて適宜決定することができる。
さらに、上記実施形態においては、基板16,17を組み付け凹部14,15に組み付けたとき、ホール素子16aおよび17a〜17cの上面が凹部14,15から突出しない寸法関係にした。ただし、上記素子の上面は、取り付け面1aと面一になるようにしてもよいし、あるいは永久磁石19と接触しない範囲内で、組み付け凹部14,15から僅かに突出してもよいこと当然である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この実施形態に係るスライド装置の概念図である。
【図2】スライド装置をモーター側から見た断面図である。
【図3】この実施形態に係るスライド装置の部分拡大図である。
【図4】基台の上面図である。
【図5】基台の側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 基台
1a 取り付け面
2 レール
3 スライドテーブル
3a 面
4 ガイド部材
4a 基台対向面
14,15 組み付け凹部
16a,17a,17b,17c ホール素子
19 永久磁石
M モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、この基台の取り付け面に固定したレールと、このレールに沿って移動するスライドテーブルと、このスライドテーブルの位置を検出する位置検出手段と、上記スライドテーブルを移動させる駆動機構とを備えた小型スライド装置において、上記基台の取り付け面には組み付け凹部を設けるとともに、この組み付け凹部には、ホール素子を実装したセンサ基板を組み込む一方、上記スライドテーブルであって上記取り付け面と対向する面には永久磁石を設け、この永久磁石と上記ホール素子とで位置検出手段を構成した小型スライド装置。
【請求項2】
上記スライドテーブルには、上記レールと摺動可能なガイド部材を設けるとともに、上記スライドテーブルに設けた永久磁石が、上記ガイド部材であって上記基台と対向する基台対向面のレベルより基台側へ突出しない寸法関係を保つことを特徴とする請求項1に記載の小型スライド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−168721(P2009−168721A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9223(P2008−9223)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】