説明

小型モータ

【課題】小さな起動トルクにより円滑に起動させることのできる振動発生用の小型直流モータを提案すること。
【解決手段】振動発生用の小型直流モータ1は、6極に着磁された円環状の永久磁石2を備えたステータ3と、この内側に同軸状態に配置された偏心ロータ4とを有し、偏心ロータ4は、90度の角度間隔で形成した突極11、12を備えたプラスチック製のロータコア8と、各突極に巻き付けたU相コイル15、V相コイル18を備え、各突極頭部14、17は、略57度の角度を張る円弧形状をしており、突極胴部13、16の中心軸線13a、16aに対して、円周方向の一方の側に約33.6度、他方の側に約23.6度だけオフセットした状態に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、ページャーなどの携帯用通信端末に搭載される振動発生用の小型直流モータなどの小型モータに関し、特に、ロータコアおよび界磁用磁石のコアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などには、マナーモードなどにおいて着信を知らせるための振動を発生する扁平な振動モータが搭載されている。振動モータとしては、偏心ロータを備えた小型直流モータが一般的に採用されており、例えば、下記の特許文献1に開示されている。また、本願人は、特許文献2において、2極構成の偏心ロータを用いて効率良く振動を発生することのできる振動発生用の小型直流モータを提案している。ここで、小型直流モータなどの小型モータにおいては、そのロータのロータコアの材質として珪素鋼板が一般に用いられている。また、モータにおける界磁用磁石のコアの材質も一般に珪素鋼板が用いられている。
【特許文献1】特開平11−187610号公報
【特許文献2】特開2006−25561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
小型モータでは、その回転半径が小さいので、モータ起動時に永久磁石によるコギングトルクがブレーキの働きをする。このため、ロータの起動時には、起動電流によって巻き線コイルから発生する起動トルクを大きくしておく必要がある。起動トルクが小さいと、ロータを円滑に起動させることができない。
【0004】
特に、携帯電話機などに搭載されている振動発生用の小型直流モータでは、振動発生のために偏心ロータが用いられており、しかも、その回転半径が小さいので、モータ起動時に永久磁石によるコギングトルクがブレーキの働きをする。このため、偏心ロータの起動時には、起動電流によって巻き線コイルから発生する起動トルクを大きくしておく必要がある。起動トルクが小さいと、偏心ロータを円滑に起動させることができない。
【0005】
本発明の課題は、小型モータにおいて小さな起動トルクによりロータを円滑に起動できるようにすることにある。
【0006】
特に、本発明の課題は、偏心ロータを備えた振動発生用の小型直流モータにおいて、小さな起動トルクにより偏心ロータを円滑に起動できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の小型モータにおいては、ロータのロータコアが、プラスチック、ステンレススチールなどの非磁性体、または、プラスチックに磁性体粉末を混合させた構成の磁性プラスチックから形成されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の小型モータにおいては、界磁用磁石のコアが、プラスチック、ステンレススチールなどの非磁性体、または、プラスチックに磁性体粉末を混合させた構成の磁性プラスチックから形成されていることを特徴としている。
【0009】
次に、本発明は、偏心ロータを備えた振動発生用の小型直流モータにおいて、前記偏心ロータのロータコアが、プラスチック、ステンレススチールなどの非磁性体、または、プラスチックに磁性体粉末を混合させた構成の磁性プラスチックから形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の振動発生用の小型直流モータは、6極に着磁された円環状の永久磁石を備えたステータと、前記ステータの内側に同軸状態に配置された2極構成の偏心ロータとを有している。前記偏心ロータは、回転中心から90度の角度間隔で放射状に延びる2つの突極を備えたロータコアと、各突極に巻き付けられているU相コイルおよびV相コイルとを備えている。各突極は、前記回転中心から放射状に延びている突極胴部と、この突極胴部の先端において略60度の角度を張る円弧状外周面を備えている突極頭部とを備えており、各突極の前記突極頭部は、前記突極胴部の中心軸線に対して、円周方向の一方の側に所定の角度だけオフセットした状態に形成されている。また、前記ロータコアは、プラスチック、ステンレススチールなどの非磁性体、または、プラスチックに磁性体粉末を混合させた構成の磁性プラスチックから形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の小型モータでは、ロータの材質、あるいは界磁用磁石のコアの材質として、非磁性体、または、プラスチックに磁性体粉末を混合させた構成の磁性プラスチックを用いている。これらの材質からなるロータ、あるいは界磁用磁石のコアを用いると、モータ起動時のコギングトルクが抑制され、小さな起動トルクで円滑にモータを起動できるという効果が得られる。
【0012】
また、本発明の振動発生用の小型直流モータでは、偏心ロータの2つの突極が円周方向に所定量だけ同一量だけオフセットしている。したがって、各回転位置において、常に、ロータに回転力が作用し、ロータがいずれの位置に停止していても当該ロータを回転駆動させることができる。また、各突極に巻いたU相、V相のコイルの中性点もコミュテータ端子として利用して各コイルへの通電切換を行っている。中性点をコミュテータ端子として利用しているので、2つのコイルへの通電状態に応じて抵抗が変動して、コギングが発生する。一般のモータではコギングを回避する必要があるが、振動を発生させるために用いる本発明の小型直流モータでは、ロータの偏心と、コギングの発生とによって、振動を効率良く発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した振動発生用の小型直流モータの実施例を説明する。
【0014】
図1は本例の振動発生用の小型直流モータを示し、(a)はそのステータおよび偏心ロータの概略構成図であり、(b)はそのコミュテータおよびブラシの概略構成図であり、(c)はそのモータ結線図である。図2はその偏心ロータの具体的な形状を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はそのA−O−A線で切断した部分の断面図であり、(c)はそのC−C線で切断した部分の断面図であり、(d)はそのD−D線で切断した部分の断面図である。
【0015】
振動発生用の小型直流モータ1は、図1に示すように、6極に着磁された円環状の永久磁石2を備えたステータ3と、この内側において同軸状態に配置された2極構成の偏心ロータ4とを有している。偏心ロータ4の回転軸(図示せず)にはコミュテータ5が取り付けられており、このコミュテータ5を挟み、駆動電流供給用の一対のブラシ6a、6bが固定した位置に配置されている。
【0016】
偏心ロータ4は、図1、2に示すように、ロータコア8と、このロータコア8に巻き付けられているU相コイル15およびV相コイル18とを有している。ロータコア8は、モータ回転軸(図示せず)が固定されている円筒状のボス9と、この外周面から90度の角度間隔で放射状(半径方向)に延びる2つの突極11、12とを備えている。本例では、偏心ロータ4のロータコア8がプラスチック素材から形成されている。例えば、MCナイロン(商品名)からなる成形品である。
【0017】
一方の突極11は、モータ回転中心10から半径方向に延びている突極胴部13と、この先端に形成された略60度(本例では略57度)の角度を張る円弧状の突極頭部14とを備えている。突極頭部14の円弧状外周面14aは円環状のステータ永久磁石2の磁極面(内周面)2aに一定のギャップで対峙している。突極胴部13にはU相コイル15が巻き付けられている。他方の突極12も同一構成であり、突極胴部16および突極頭部17を備え、突極胴部16にはV相コイル18が巻き付けられている。したがって、偏心ロータ4は、回転中心10に対して、その重心が2つの突極11、12が形成されている側にオフセットした偏心ロータである。
【0018】
突極11の突極頭部14は、突極胴部13の中心軸線13aを中心として、円周方向の一方の側(図においては反時計回りの方向)に約5度オフセットした状態に形成されている。すなわち、円周方向の一方の側に約33.6度の角度分だけ張り出しており、他方の側に約23.6度の角度分だけ張り出している。他方の突極12も同様であり、その突極頭部17は突極11の場合と同一の方向に中心軸線16aに対して約5度だけオフセットした状態に形成されている。この結果、偏心ロータ4のいずれの回転位置においても、偏心ロータ4とステータ3の間に、円周方向の一方に向かう磁力が発生するので、偏心ロータ4をいずれの回転位置からでも回転を開始させることができる。
【0019】
次に、コミュテータ5は、モータ回転中心10を中心とする同心円上に配置した9個のコミュテータ端子21を備えており、各コミュテータ端子は40度の角度を張る円弧板である。本例では、U相コイル15に結線されているU端子21Uと、V相コイル18に結線されているV端子21Vと、U相コイル15およびV相コイル18の共通接続点である中性点Cに結線されているC端子21Cとが、この順序で時計回り方向に3周期分繰り返された配列構造となっている。端子の順序は、V端子21V、U端子21UおよびC端子21Cとすることもできる。
【0020】
この構成のコミュテータ5のコミュテータ端子21には両側から一対のブラシ6a、6bが接触している。回転中心10を通る直径方向の一方の側に位置しているブラシ片6aは正側であり、他方の側に位置しているブラシ片6bが負側とされている。
【0021】
図3および図4は、本例の小型直流モータ1における通電切り換わり状態を示す説明図である。偏心ロータ4は2極構成であり、ステータ2は6極構成であり、したがって、12個の通電切換用のコミュテータ端子21が備わっているので、偏心ロータ4が30度回転する毎に、通電が切り換わる。図3、4から分かるように、いずれの回転角度位置においても、偏心ロータ4には矢印方向の回転力が作用する。したがって、偏心ロータ4がいずれの回転角度位置で停止している場合であっても、偏心ロータ4を回転させることができる。また、偏心ロータ4の偏心回転に伴って振動が発生する。
【0022】
さらには、U相およびV相コイル11、12の中性点Cもコミュテータ端子として利用されている。したがって、偏心ロータ4の回転角度位置に応じて、U相コイル15、V相コイル18が、直流電源に対して直列および並列状態に切り換わる。この結果、ライン抵抗が変動してコイルへの駆動電流が変動し、モータ回転力が変動する。このようなコギングトルクの発生は一般のモータにおいては好ましくない現象であるが、振動モータとして用いる場合には、コギングによって振動がより効果的に発生する。本例では、コイルのスター結線における中性点をコミュテータ端子の一つとして利用することにより、コギングを積極的に発生させているので、効率良く振動を発生させることができる。
【0023】
これに加えて、本例の偏心ロータ4のロータコア8はプラスチック成形品である。一般的に用いられている珪素鋼板を用いた振動発生用の小型直流モータでは、振動発生のために用いられている偏心ロータの回転半径が小さいので、モータ起動時に永久磁石によるコギングトルクがブレーキの働きをする。このため、偏心ロータの起動時には、起動電流によって巻き線コイルから発生する起動トルクを大きくしておく必要がある。これに対して、本例ではロータコア8をプラスチック製としてあるので、モータ始動時に、小さな起動トルクで偏心ロータ4を円滑に起動できるという利点がある。
【0024】
次に、図5(a)および(b)は、偏心ロータ4のロータコアの別の例を示す平面図および断面図である。これらの図に示すロータコア8Aは、一定厚さの非磁性金属、例えば、ステンレススチール板からなる同一形状のロータ片80を厚さ方向に複数枚積層した構成となっている。このように、偏心ロータを一体物ではなく積層構造のものとしてもよい。また、偏心ロータの素材としてプラスチックの代わりに非磁性金属を用いてもよい。
【0025】
さらには、偏心ロータの素材としては、プラスチックに鉄、コバルト、ニッケルなどの磁性体粉末を混ぜ込んだものを用いることもできる。
【0026】
(その他の実施の形態)
なお、上記の実施例以外の構成の偏心ロータを備えた振動発生用の小型直流モータについても、その偏心ロータを、非磁性体、あるいは、プラスチックに磁性体粉末を混合させた構成の磁性プラスチックから形成すれば、その起動トルクの低減および円滑な起動を実現できる。
【0027】
また、本発明は、振動発生用の小型直流モータ以外の小型モータに対しても同様に適用可能である。さらに、本発明を、小型モータの界磁用磁石のコアに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用した振動発生用の小型直流モータを示す図であり、(a)はそのステータおよび偏心ロータの概略構成図、(b)はそのコミュテータおよびブラシの概略構成図、および、(c)はそのモータ結線図である。
【図2】図1の偏心ロータの具体的な形状を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はそのA−O−A線で切断した部分の断面図であり、(c)はそのC−C線で切断した部分の断面図であり、(d)はそのD−D線で切断した部分の断面図である。
【図3】図1の小型直流モータにおけるロータの30度毎の回転角度位置と、コミュテータ端子の極性と、コミュテータ端子およびブラシの位置関係とを示す説明図である。
【図4】図1の小型直流モータにおけるロータの30度毎の回転角度位置と、コミュテータ端子の極性と、コミュテータ端子およびブラシの位置関係とを示す説明図である。
【図5】図5(a)および(b)は、図1、2の偏心ロータの別の例を示す平面図および断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 振動発生用の小型直流モータ
2 永久磁石
3 ステータ
4 偏心ロータ
5 コミュテータ
6a、6b ブラシ
8、8A ロータコア
9 ボス
10 モータ回転中心
11、12 ロータの突極
13、16 突極胴部
13a、16a 中心軸線
14、17 突極頭部
15、18 コイル
21、21U、21V、21C コミュテータ端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータのロータコアが、プラスチック、ステンレススチールなどの非磁性体、または、プラスチックに磁性体粉末を混合させた構成の磁性プラスチックから形成されていることを特徴とする小型モータ。
【請求項2】
界磁用磁石のコアが、プラスチック、ステンレススチールなどの非磁性体、または、プラスチックに磁性体粉末を混合させた構成の磁性プラスチックから形成されていることを特徴とする小型モータ。
【請求項3】
偏心ロータを備えた振動発生用の小型直流モータにおいて、
前記偏心ロータのロータコアが、プラスチック、ステンレススチールなどの非磁性体、または、プラスチックに磁性体粉末を混合させた構成の磁性プラスチックから形成されていることを特徴とする振動発生用の小型直流モータ。
【請求項4】
6極に着磁された円環状の永久磁石を備えたステータと、
前記ステータの内側に同軸状態に配置された2極の偏心ロータとを有し、
前記ロータは、回転中心から90度の角度間隔で放射状に延びる2つの突極を備えたロータコアと、各突極に巻き付けられているU相コイルおよびV相コイルとを備え、
各突極は、前記回転中心から放射状に延びている突極胴部と、この突極胴部の先端において略60度の角度を張る円弧状外周面を備えている突極頭部とを備え、
各突極の前記突極頭部は、前記突極胴部の中心軸線に対して、円周方向の一方の側に所定角度だけオフセットした状態に形成されており、
前記ロータコアは、プラスチック、ステンレススチールなどの非磁性体、または、プラスチックに磁性体粉末を混合させた構成の磁性プラスチックから形成されていることを特徴とする振動発生用の小型直流モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−252171(P2007−252171A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77947(P2006−77947)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(591236172)株式会社ハタ研削 (20)
【出願人】(506118456)株式会社日誠イーティーシー (3)
【Fターム(参考)】