説明

小型携帯電子機器

【課題】LEDの実装個数が少なく、かつ、積層フィルムやシートの枚数が少なく、薄肉化を図る。
【解決手段】ケーシング1の外壁面2に配設された操作用ボタン4と、ケーシング1内のプリント基板6上のドームスイッチ7との間に、熱可塑性透明エラストマーから成る導光シート10を介在させ、上記ボタン4の裏面と該導光シート10とを、接着又は粘着にて相互に取着し、かつ、上記導光シート10と上記ドームスイッチ7とを直接的に接触させ、さらに、該導光シート10の端縁14から入射するようにLED13を該端縁14に設けたことを特徴とする小型携帯電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、PDA、電子辞書等の小型携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小型携帯電子機器の操作用ボタン(キー)を内部からの光にて浮び上がらせるために、各ボタンに対応して夫々1個以上のLEDを配設し、多数のLEDを必要としていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第4043981号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
即ち、従来の小型携帯電子機器(携帯電話)に於ては、図4に示すように、ケーシング(外装)31の外壁面32の孔部33に、操作ボタン(キー)34を嵌込状に有し、各々のボタン(キー)34に対して、1個乃至2個のLED35が対応するように設けられ、そのLED35の数は多数を要していた。いわば、LED直下型であった。
なお、36はドームスイッチであり、各々のボタン(キー)34に対応する位置に、かつ、プリント(電子)基板37上に配設されている。
【0004】
ところが、ボタン34と、プリント基板37(ドームスイッチ36,LED35)との間には、接着や粘着のための接続層38、印刷部39を裏面に有するポリウレタンエラストマーフィルム40、及び、シリコンシート41が、順次積層状に有している複雑な構成であった。印刷部39はボタン34に対応した部分以外をマスキング(遮光)するために設けられ、上記シリコンシート41では印刷至難、接着至難であったため、必ず、ポリウレタンエラストマーフィルム40を介装する必要があり、しかも、このポリウレタンエラストマーはボタン押圧時のソフト感を操作者の指に与える役目をなす上でも必要であった。このように、図4に示した第1の従来例では、実装LEDの個数が多くなる欠点、及び、多数層のフィルム40やシート41及び印刷部39を要するという欠点があった。
図4に示したLED35の個数を減少するため、従来例2として図5に示すような導光フィルム42を有する構造のものも知られている。
【0005】
即ち、図5に於て、ケーシング31の外壁面32及びボタン34と、プリント基板37及びドームスイッチ36との間には、接着や粘着のための接続層38、印刷層39を裏面に有するポリウレタンエラストマーフィルム40、シリコンシート41、及び、導光フィルム42が、順次積層状に有する一層複雑な構成である。LED35は、導光フィルム42の端縁面43から光を入射するように、端縁面43に近く設けられ、光は点線のように進行し、ボタン34の周縁スリット44から出射して、ボタン34を明示する(又は、ボタン34を半透明材としてボタン34全体を明るく表示する)。なお、45は、パターニング部を示し、導光フィルム42の厚み内を進んだ光が、このパターニング部45にて、面と直交状方向に光を放射する。
このように、図5に示した第2の従来例では、LEDの個数は減少するけれども、さらに多数層のフィルム40, 41, 42、及び、印刷部39を、必要とする欠点があった。
【0006】
そこで、本発明は、必要なシートやフィルムの枚数を最小とすることで、コストダウンと構造の簡素化を図り、かつ、LEDの個数も減少することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明に係る小型携帯電子機器は、ケーシングの外壁面に配設された操作用ボタンと、ケーシング内のプリント基板上のドームスイッチとの間に、熱可塑性透明エラストマーから成る導光シートを介在させ、上記ボタンの裏面と該導光シートとを、接着又は粘着にて相互に取着し、かつ、上記導光シートと上記ドームスイッチとを直接的に接触させ、さらに、該導光シートの端縁から入射するようにLEDを該端縁に設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、LEDの個数を減少可能となり、しかも、必要なシートやフィルムは最小の1枚で済み、構造の簡素化、及び、薄肉化とコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1に示す要部拡大断面図に於て、1はケーシング(外装)であって、外壁面2にはボタン用孔部3が貫設され、この孔部3には操作用ボタン(キー)4が嵌込まれている。図例では、ボタン4の外周面と、孔部3の内周面との間に、スリット5が環状に形成されている。
6は、(薄盤状の)ケーシング1の内部に設けられたプリント基板であって、このプリント基板6の表て面には、ドームスイッチ7が、各ボタン4の直下に対応して配設される。ドームスイッチ7は、スイッチ本体7Aと、金属製のドームバネ7Bとを、有している。
【0010】
10は、熱可塑性透明エラストマーから成る導光シートであって、ボタン4の裏面と、この導光シート10とを、接着剤,粘着剤───好ましくは両面粘着テープ───等の接続層8を介して、相互に取着(一体化)する。
また、ケーシング1の外壁面2の裏面と、導光シート10とも、同様の接着層8を介して、相互に取着(一体化)する。
【0011】
そして、導光シート10とドームスイッチ7とを、直接的に接触させる。即ち、導光シート10の裏面11には、小突隆部12が、上記ボタン4及びスイッチ7の位置に対応して形成されており、この突隆部12がスイッチ7に直接的に接触している。
なお、本発明に於て、「直接的に接触」しているとは、他のフィルム層やシート層を、介在させていないことを意味する。
なお、導光シート10の厚さ寸法T0 は、 0.2mm〜 0.3mmが好ましく、小突隆部12の部位の厚さ寸法T12は、 0.5mm〜 0.7mmが好ましい。そして、T12がこのように、厚く設定されているので、スイッチ7と常に接触していて、スイッチ7の作動が確実である。
【0012】
13はLEDを示し、図1及び図2に示す如く、導光シート10の端縁(面)14から光が入射するように、この端縁(面)14に対応して、配設される。つまり、図2は、簡略平面図であり、同図(A)では、一辺を成す端縁14にLED13を配設している。また、同図(B)では隣り合う2辺を成す2端縁14, 14にLED13を配設している。また、同図(C)のように、対辺を成す2端縁14, 14にLED13を配設することも可能である。
【0013】
ところで、導光シート10の材質の上記熱可塑性透明エラストマーとは、熱可塑性アクリル系エラストマー,熱可塑性ナイロン系エラストマー,熱可塑性ポリエステル系エラストマー,熱可塑性オレフィン系エラストマー,熱可塑性ウレタン系エラストマー等が好適である。また、その製造方法としては、図3に示すように、キャスティングティーダイ押出し法が望ましく、その方法とは、長尺のセパレータ(剥離フィルム)15を矢印A方向に送りつつ、幅方向に開口する狭い吐出口16を有するティーダイ17をセパレータ15の上方から接近させて、溶融した上記エラストマーを押出して、単に上面に載せることで、延伸力を与えずに、薄いフィルム状に形成できる。従って、このような製造方法にて製造された導光シート10は、図2(B)のように2方向から光を入射させた場合にも、方向性が無く、差が生じないので好都合であり、図2(A)(C)に於ては、LED13をいずれの辺に放置しても、同じ明るさでボタン4へ出射する。また、図1に示した小突隆部12を形成するには、上述のキャスティングティーダイ押出しの後に、プレス成型によって形成し、あるいは、ペレットから射出成型によって、小突隆部12(及び後述のパターニング部20)を含む導光シート10全体を一度に成型する。
【0014】
ところで、図1に於て、多数の小凹部を描いた部位は、パターニング部20であって、LED13から導光シート10の表て面と平行方向に矢印Bのように進んだ光が、このパターニング部20にて矢印Cのように、上方向───ボタン4の存在する方向───へ進路を変える。このパターニング部20は、公知の方法が適用できて、表面を引掻きやロール型で粗面加工したり、微小孔を多数形成したり、ドット印刷等をして形成する。このパターニング部20は、図1のように、ボタン4に対応する部位に、形成する。
【0015】
なお、図1に於て、2点鎖線で示すように、遮光のための印刷部19を積層するのが望ましい。また、導光シート10については、図3で述べたキャスティングティーダイ押出し法以外の方法にて形成するも自由であり、インジェクション成形やプレス成形にて、パターニング部20も同時に形成しても良い。
なお、図1では、矢印Cにて示す光は、スリット5から出射して、ボタン4の周囲を包囲枠状に光線にて表示している。これ以外には、ボタン4を透明又は半透明とし、かつ、接続層8を透明材質とすることで、ボタン4全体を明るく表示するも、好ましい。
【0016】
以上述べたように、本願発明は、ケーシング1の外壁面2に配設された操作用ボタン4と、ケーシング1内のプリント基板6上のドームスイッチ7との間に、熱可塑性透明エラストマーから成る導光シート10を介在させ、上記ボタン4の裏面と該導光シート10とを、接着又は粘着にて相互に取着し、かつ、上記導光シート10と上記ドームスイッチ7とを直接的に接触させ、さらに、該導光シート10の端縁14から入射するようにLED13を該端縁14に設けた構成であるので、所期目的を達成でき、必要なフィルムやシートの枚数を減少できて、構造の簡素化と薄肉化を図ることが可能であり、LEDの個数も少なくて済む。また、熱可塑性エラストマーから成る導光シート10は適度の柔らかさを有し、ボタン4を指で押圧した際の感触も優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態を示す要部拡大断面正面図である。
【図2】要部説明用平面図である。
【図3】導光シートの製造方法の一例を示す説明図である。
【図4】第1の従来例を示す要部拡大断面図である。
【図5】第2の従来例を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ケーシング
2 外壁面
4 操作用ボタン(キー)
6 プリント基板
7 ドームスイッチ
10 導光シート
13 LED
14 端縁(面)
20 パターニング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(1)の外壁面(2)に配設された操作用ボタン(4)と、ケーシング(1)内のプリント基板(6)上のドームスイッチ(7)との間に、熱可塑性透明エラストマーから成る導光シート(10)を介在させ、上記ボタン(4)の裏面と該導光シート(10)とを、接着又は粘着にて相互に取着し、かつ、上記導光シート(10)と上記ドームスイッチ(7)とを直接的に接触させ、さらに、該導光シート(10)の端縁(14)から入射するようにLED(13)を該端縁(14)に設けたことを特徴とする小型携帯電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−50033(P2010−50033A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215333(P2008−215333)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(591264072)三井物産プラスチックトレード株式会社 (4)
【Fターム(参考)】