説明

小型撮像レンズ系

【課題】 主光線の射出角を一定の範囲に制御し、低コスト化及び量産化を実現しつつ、広角での結像画質を高め、百万画素以上の高解像度の製品に応用される小型撮像レンズ系を提供する。
【解決手段】 物体側から順に、開口絞りと、両凸の第1レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス第2レンズとから構成され、該第1レンズと第2レンズでは共に少なくとも1面が非球面を有し、さらに、そのうち少なくとも一枚のレンズがガラスレンズであり、条件式
1<T/f<1.6 ...(1)
d/R2>1.6 ...(2)
を満足する。
但し、T:開口絞りから像面までの距離、f:全系の焦点距離、R2:第1レンズの結像面に近い面の表面曲率半径の絶対値、d:第1レンズの厚みと定義する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型撮像レンズ系に係り、特に携帯電話、PCカメラ等の小型撮像素子に好適な小型撮像レンズ系に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学材料と固体撮像素子、例えばCCD(Charged Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の生産技術の進歩に伴い、小型化と低コスト化が可能なレンズ系が携帯電話、パソコン等によく応用されている。この携帯電話のデジタルカメラに搭載されている大部分の撮像素子は11万又は30万画素のCMOSであるが、写真の画質が低くて、デジタルカメラとは全然比較できない。
【0003】
一方、百万画素以上の固体撮像素子のサイズが小さくなるに伴って、各画素のサイズが次第に小さくなり(例えば、30万画素の際の典型的な5μmから百万画素以上の際の3μmになる)、全体的な小型化と共に撮像レンズの解像度に対する要求が高くなって、デジタルカメラの代わりに携帯電話のデジタルカメラが使われることもある。このため、小型化と低コスト化を図りつつ、優れた光学性能及び高画質を有する小型撮像レンズ系が今後の小型撮像素子の開発方針として次第に行われている。
【0004】
なお、ここでレンズ系の小型化とは、レンズの第1面から結像面までの距離(レンズ系の全長)が短いということである。
【0005】
また、低コストとは、全体に含まれているレンズの枚数が少なく、且つレンズの量産加工と組立が容易であることである。
【0006】
更に、レンズ系の優れた性能と高画質とは、以下のものに該当する場合である。
1.明るさ(小さなFナンバー、一般的には2.8以下)
2.大きな画角(半画角が30度以上)
3.小さな主光線の射出角(主光線の射出角が大きすぎると像面周辺の照度に影響を与えるからである)
4.均一な像面照度(ケラレを少なくして、像面周辺の照度を高める)
5.高解像度(各種の単色の収差が適切に補正され、色収差が少ない)
【0007】
単純に、低コストのためには、プラスチックレンズを一枚(単レンズ)だけ用いることが好ましい。しかし、単レンズは両面を非球面にしても、高画質及び優れた光学特性(例えば画角が70度)が得られないので、大部分は低解像度の製品(例えば11万画素CMOS等)に適用される。一方、単レンズは、収差の補正のために、ほとんどが厚いレンズを採用しているので、その全長と焦点距離の比(L/f)が2程度になって、レンズ系の全長を短縮することができない。このような構成のレンズ系は、例えば特許文献1、2に開示されているが、全長と焦点距離の比が2程度である光学特性を有し、主に低画素数(例えば11万画素)製品に適用されているが、高画素数(例えば30万画素)製品に対しては、その光学特性や携帯利便性の要求を満たすことができない。
【0008】
単純に、画質のためには、携帯電話やカメラ等の小型撮像レンズ系において、三枚レンズを採用した構成が周知であり、さらに、四枚レンズを採用した構成により、高画質の結像を実現する。しかし、これらのような小型撮像レンズ系は、レンズ数の増加が原因となって、コスト増加につながる。このような構成のレンズ系は、例えば特許文献3、4に開示されている。
【0009】
以上述べてきたことを背景として、コスト及び画質を考慮したのが二枚レンズの構成を利用する設計である。二枚レンズの構成によれば、自由度の高い設計が可能となり、単レンズの構成に比べて画質が優れ、三枚レンズの構成に比べてコストが低く、且つレンズ系の全長も短くなる。
【0010】
従来の二枚レンズ構成は、虚焦点タイプのものが多く、特許文献5のように、前記レンズ系は物体側から像側に向かって順に負パワーのメニスカスレンズ、開口絞り、正パワーのメニスカスレンズを備えている。このような構成は広角での収差を補正するのに有利である。また、シャッターを配置するのに好適な長いバックフォーカス(結像のためのレンズの最後面から像面までの距離)を持っているが、バックフォーカスが長くなると、全長を短縮し難く、全系の小型化が困難になる。
【0011】
上記課題を解決するために、VGA(30万画素)光学モジュールに対して、特許文献6、7のように、プラスチックのレンズを二枚用い、且つ四つの非球面を有した構成が普及してきている。このような構成は小型化及び低コスト化の要求を満たし、30万画素の製品にも適用される。しかし、このような構成をより一層小型化しようとする場合、やはり制限があり、また、色収差が原因となるため、解像度を高めてより高い画素の要求に適用されるのが困難になる。この二枚のプラスチックレンズからなるレンズ系に対して、コストを低減するため、レンズ二枚を同じ材料で製造することもできるが、そうすると色収差を補正することができない。一方、例えば、低屈折率、低分散の材料であるポリメチルメタクリレート(PMM)と、高屈折率で低分散のポリカーボネート(PC)等の異なるプラスッチク材料で製造しても、好適なプラスチック材料の種類が少ないため、例えば1.49〜1.59の範囲内の光線の屈折率、及び30〜55の範囲内のアッベ数等の光学特性の変化範囲がかなり狭く、色収差の補正が容易に実現できない。さらに、光学プラスチック材料と光学ガラス材料とを比べてみると、プラスチック材料は、光透過率、透過される光の波長の範囲、耐高温性、耐湿性等の光学特性がガラス材料より非常に劣っている。このため、該光学モジュールは100万画素以上の高解像度の製品に適用できない。
【0012】
しかし、レンズ二枚を全部ガラス材料で製造すると、全体のコストが騰がるようになる。
【0013】
これらの問題点に鑑みて、低コスト化、小型化が可能で、且つ高画質を有し、百万画素以上の製品に応用できる小型撮像レンズ系を提供することが必要となる。
【特許文献1】米国特許第6297915号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開1271215号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開2003−0193605号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開2004−0012861号明細書
【特許文献5】米国特許第6449105号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開2003−0193605号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開1357414号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、小型撮像レンズ系において、より一層小型化するのが難しい問題、及び大きな色収差のため結像画質が不良になる問題などを克服して、低コスト化、及び一層の小型化、ないし良好な画質が実現できる小型撮像レンズ系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は次の条件を満足する小型撮像レンズ系を提供する。
【0016】
即ち、本発明に係る小型撮像レンズ系は、物体側から順に、開口絞りと、両凸の第1レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカスの第2レンズから構成され、該第1レンズと第2レンズでは共に少なくとも1面が非球面を有し、且つ前記二枚レンズのうち少なくとも一枚のレンズがガラスレンズであり、開口絞りから像面までの距離をT、全系の焦点距離をfとした時、条件式
1<T/f<1.62 ...(1)
を満足する。
【0017】
また、該小型撮像レンズ系は、主光線の射出角を低減させ、照度を高めるため、上記第1レンズは、両面が非球面であり、第1レンズの結像面に近い面の表面曲率半径の絶対値をR2、第1レンズの厚みをdとした時、条件式
d/R2>1.6 ...(2)
を満足する。
【0018】
また、該小型撮像レンズ系は、単色の収差を補正し、全長を小さくするため、第1レンズの焦点距離をf1、第1レンズの物体側に近い面の表面曲率半径の絶対値をR1とした時、条件式
0.6<f1/f<0.8 ...(3)
0.1<R2/R1<0.8 ...(4)
を満足する。
【0019】
また、該小型撮像レンズ系は、像面湾曲を補正するため、上記第2レンズは、両面が非球面であり、第2レンズの物体側に近い凹面の表面曲率半径の絶対値R3、第2レンズの結像面に近い面の表面曲率半径の絶対値をR4とした時、条件式
0.7<(1/R3)/(1/R1+1/R2+1/R4)<0.9 ...(5)
を満足する。
【0020】
また、該小型撮像レンズ系の第1レンズと第2レンズは、軸上色収差と倍率色収差を含む収差の良好な補正のため、第1レンズのアッベ数をυ1、第2レンズのアッベ数をυ2とした時、条件式
υ1−υ2>35 ...(6)
を満足する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る小型撮像レンズ系は、従来の技術と比べ、開口絞りに隣接した第1レンズの少なくとも一面を非球面とすることにより、レンズ系の球面収差とコマ収差を効率的に補正できる。第2レンズは、開口絞りから遠く離れているため、異なる画角での主光線に対して第2レンズでの投影寸法の差が大きくなるが、第2レンズの少なくとも一面を非球面とすることにより、非点収差、像面湾曲、歪曲収差等のフィールドにおける諸収差を良好に補正することができる。そして、第2レンズの結像面に近い第二面は、光の光軸から周辺部に向かって屈折現象が次第に緩やかになる構成であって、この面の中心部では光線を発散させるが、周辺部では光線を集めるので、サジタル像面とメリジオナル像面が容易に重ね合わせられると共に、周辺部の結像位置が後へ移動し、その結果、広角での画質が高まる。なお、第1レンズと第2レンズとのうち、少なくとも一枚がガラス材料製であるから、低コストと量産を考慮しつつ、結像の画質を高めて、100万画素以上の高解像度の製品に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の小型撮像レンズ系の構成模式図である。光は物体側から入射して、物体側に置いた開口絞り10、両凸の第1レンズ20、及びメニスカスの第2レンズ30を透過する。前記メニスカスの第2レンズ30は、物体側に凹面を備え、光を結像装置CCD又はCMOSの結像面40に集める。前記第1レンズ20及び第2レンズ30では共に少なくとも一面が非球面を有し、且つ該第1レンズ20と第2レンズ30のうち少なくとも一枚がガラスレンズである。
【0023】
まず、結像面40への主光線による入射角及び全系の長さを短くするために、開口絞り10を全系の物体側に最も近い位置に設置する。
【0024】
次に、コストを低減させるため、本発明の撮像レンズ系は、開口絞り10を直接第1レンズ20の物体側に近い面(以下、第一面という、但し図示せず)に配置し、また、全体の組立素子を減少するために、第1レンズ20の第一面における所定の部分を黒くして開口絞りとして利用することができる。
【0025】
全系の小型化及び良好な画質を実現するために、前記レンズ系の第1レンズ20及び第2レンズ30は以下の条件式(1)を満足する。
1<T/f<1.6 ...(1)
但し、T:開口絞りから像面までの距離、f:全系の焦点距離と定義される。条件式(1)は全体の長さを制限するためのものである。レンズ系において、全長は焦点距離比及び画質と関係があり、特に、主光線の射出角の制御により、像面が無限遠に位置する現象の近似状態になった時、小型化を満足すると共に画質を高めることができる。
【0026】
第1レンズ20の両面を非球面とすると共に、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
d/R2>1.6 ...(2)
但し、d:第1レンズの厚み、R2:第1レンズの結像面40に近い面(以下、第2表面という、但し図示せず)の表面曲率半径の絶対値と定義される。条件式(2)は主光線の射出角を減少させるために満たさなければならない構成の制限である。主光線の射出角が大きすぎると、像面周辺部の照度に影響を与え、またその角が小さくなると、d/R2値が大きくなって、従って、第1レンズ20が厚くなり、全系の長さが増える。そのため、大きい画角(例えば30°)の場合、主光線の射出角を例えば20°程度に確保するために第1レンズ20は条件式(2)を満足することがより好ましい。
【0027】
第1レンズ20は条件式(3)及び(4)を満足することもより好ましい。
0.6<f1/f<0.8 ...(3)
0.1<R2/R1<0.8 ...(4)
但し、f1:第1レンズの焦点距離、R1:第1レンズの物体側に第一表面の表面曲率半径の絶対値と定義される。条件式(3)は、単色収差を補正し、且つ全長を小さくする要求を満たすため、即ち条件式(1)によって求められた光学パワーの分配のために条件範囲を規定したものであり、f1/f値が下限である0.6より大きければ、系の総パワーに対する要求を満たして、高次球面収差、コマ収差及び倍率色収差が制限範囲に存在するようになる。逆にf1/f値が上限である0.8より小さければ、系の総パワーが確保できると共に、全長が短縮される。条件式(4)は収差を補正するによって求められた第1レンズ20の光学パワーの分配を満足するために条件範囲を規定したものである。
【0028】
更に、第2レンズ30の両面も非球面とされ、且つ第1レンズ20及び第2レンズ30は条件式(5)を満足することがより好ましい。
0.7<(1/R3)/(1/R1+1/R2+1/R4)<0.9 ...(5)
但し、R3:第2レンズ30の物体側に近い凹面(以下、第三面という、但し図示せず)の表面曲率半径の絶対値、R4:第2レンズ30の結像面40に近い面(以下、第四面という、但し図示せず)の表曲率半径の絶対値と定義される。条件式(5)は像面湾曲を補正するために求められたフラットフィールドのための条件を規定している。R3値に関して(1/R3)/(1/R1+1/R2+1/R4)値が最大値である0.9より小さければ、第1レンズ20による正のコマ収差は、第2レンズ30の第三面の負のパワーによって効率的に補正され、同時に、R3値も小さすぎないので、全系の高次収差が減少される。逆にR3値に関して(1/R3)/(1/R1+1/R2+1/R4)値が最小値である0.7より大きければ、第1レンズ20の第一、第二表面と第2レンズ30の第四表面によるペッツバール像面湾曲和は、該第2レンズ30の第三表面による負のペッツバール像面湾曲和(ペッツバール湾曲和)によって補正され、像面湾曲の補正が容易になる。また、条件式(5)が満足されている場合、第1レンズ20による倍率色収差は、第2レンズ30の第三面による負の光学パワーによって有効に補正される。第三表面は全系における最小曲率半径の湾曲面であり、全系において像面湾曲を補正すると共に高次収差を制限するためには、曲率半径の小さい面の曲率半径が開口絞りの位置と同じになるよう、第2レンズ30の第三面は開口絞り側に凹に曲がっていなければならない。
【0029】
また、色収差、特に、倍率色収差をより有効に除去するために、第1レンズ20に採用される材料のアッベ数υ1と第2レンズ30に採用される材料のアッベ数υ2は以下の条件式(6)を満足することが好ましい。
υ1−υ2>35 ...(6)
【0030】
本発明において、第1レンズ20はガラス材料から製造され、第2レンズ30はプラスチック材料から製造されているが、ガラス材料のプラスチック材料より優れた光学特性を利用して、低コスト化及び量産化と共に、高い結像品質が容易に実現される。
【0031】
次に、具体な実施例によって本発明の撮像レンズ系を、図2〜図26を参照しつつ説明する。
【0032】
以下の各実施例において、第1レンズ20の第一表面と第2表面、第2レンズ30の第三表面及び第四表面は共に非球面を採用している。この第2から第5実施例のうち、第2レンズ30と結像面40との間には保護用ガラスが設置している。
【0033】
非球面形状の計算式は
【0034】
【数1】

を参照する。
【0035】
但し、χ:表面の一点から該表面頂点のタンジェンシャル(tangential)平面(=接平面)までの距離、c:非球面頂点の曲率、h:光軸レンズ表面上の各点の接平面までの垂直距離、k:二次元曲面係数、A:第i階の非球面形状の係数と定義される。
【0036】
以下の説明で、Tは開口絞りから像面までの距離、fは全系の焦点距離、FNoはFナンバー、ωは半画角、2ωは画角、Rはレンズ表面の曲率半径、dはレンズ表面から光軸までの距離、Ndは材料の屈折率、υは材料のアッベ数を示す。
【0037】
[第1実施例]
図2は本発明の小型撮像レンズ系の第1実施例を示す構成模式図である。
【0038】
前記小型撮像レンズ系は以下の表1と表2の条件を満足する。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
図3乃至図6は、この第1実施例の表1及び表2を満足する小型撮像レンズ系における横収差(図3)、像面湾曲及び歪曲収差(図4)、球面収差(図5)、倍率色収差(図6)を示す。ここで、図3(A)、図3(B)、図3(C)、図3(D)はそれぞれ方位が0°、10°、21°、30°になる像面位置のメリジオナル像面とサジタル像面における横収差を示し、図4(A)と図4(B)はそれぞれ像面湾曲曲線と歪曲収差曲線を示す。これらの図に示すように、前記横収差、像面湾曲、歪曲収差、色収差等は良好に補正することができる。
【0042】
[第2実施例]
図7は本発明の小型撮像レンズ系の第2実施例を示す構成模式図である。
【0043】
前記小型撮像レンズ系は以下の表3と表4の条件を満足する。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
図8乃至図11は、この第2実施例の表3及び表4を満足する小型撮像レンズ系における横収差(図8)、像面湾曲及び歪曲収差(図9)、球面収差(図10)、倍率色収差(図11)を示す。ここで、図8(A)、図8(B)、図8(C)、図8(D)はそれぞれ方位が0°、10°、21°、30°になる像面位置のメリジオナル像面とサジタル像面における横収差を示し、図9(A)と図9(B)はそれぞれ像面湾曲曲線と歪曲収差曲線を示す。これらの図に示すように、前記横収差、像面湾曲、歪曲収差、色収差等は良好に補正することができる。
【0047】
[第3実施例]
図12は本発明の小型撮像レンズ系の第3実施例を示す構成模式図である。
【0048】
前記小型撮像レンズ系は以下の表5と表6の条件を満足する。
【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
図13乃至図16は、この第3実施例の表5及び表6を満足する小型撮像レンズ系における横収差(図13)、像面湾曲及び歪曲収差(図14)、球面収差(図15)、倍率色収差(図16)を示す。ここで、図13(A)、図13(B)、図13(C)、図13(D)はそれぞれ方位が0°、10°、21°、30°になる像面位置のメリジオナル像面とサジタル像面における横収差を示し、図14(A)と図14(B)はそれぞれ像面湾曲曲線と歪曲収差曲線を示す。これらの図に示すように、前記横収差、像面湾曲、歪曲収差、色収差等は良好に補正することができる。
【0052】
[第4実施例]
図17は本発明の小型撮像レンズ系の第4実施例を示す構成模式図である。
【0053】
前記小型撮像レンズ系は以下の表7と表8の条件を満足する。
【0054】
【表7】

【0055】
【表8】

【0056】
図18乃至図21は、この第4実施例の表7及び表8を満足する小型撮像レンズ系における横収差(図18)、像面湾曲及び歪曲収差(図19)、球面収差(図20)、倍率色収差(図21)を示す。ここで、図18(A)、図18(B)、図18(C)、図18(D)はそれぞれ方位が0°、10°、21°、30°になる像面位置のメリジオナル像面とサジタル像面における横収差を示し、図19(A)と図19(B)はそれぞれ像面湾曲曲線と歪曲収差曲線を示す。これらの図に示すように、前記横収差、像面湾曲、歪曲収差、色収差等は良好に補正することができる。
【0057】
[第5実施例]
図22は本発明の小型撮像レンズ系の第5実施例を示す構成模式図である。
【0058】
前記小型撮像レンズ系は以下の表9と表10の条件を満足する。
【0059】
【表9】

【0060】
【表10】

【0061】
図23乃至図26は、この第4実施例の表9及び表10を満足する小型撮像レンズ系における横収差(図23)、像面湾曲及び歪曲収差(図24)、球面収差(図25)、倍率色収差(図26)を示す。ここで、図23(A)、図23(B)、図23(C)、図23(D)はそれぞれ方位が0°、10°、21°、30°になる像面位置のメリジオナル像面とサジタル像面における横収差を示し、図24(A)と図24(B)はそれぞれ像面湾曲曲線と歪曲収差曲線を示す。これらの図に示すように、前記横収差、像面湾曲、歪曲収差、色収差等は良好に補正することができる。
【0062】
表11はこれら五つの実施例に対応する、例えば、穴径、画角、焦点距離等を含む光学特性の、前記の各条件式に対応する数値示す。
【0063】
ここで、第1実施例において、第1レンズ20と第2レンズ30の材料はそれぞれ中国製ガラス(フッ素クラウンガラス材料の一種)であるFK2と、米国General Electric社製ポリカーボネートであるLexan−HFであり、第2実施例と第5実施例において、第1レンズ20と第2レンズ30の材料はそれぞれHOYA社製のダイカストガラスであるFCD1(中国製のフッ素クラウンガラス材料と対応する)と、米国General Electric社製ポリカーボネートであるLexan−HFであり、第3実施例と第4実施例において、第1レンズ20と第2レンズ30の材料はそれぞれHOYA社製のダイカストガラスであるFCD1と、ポリカーボネート(PC)である。
【0064】
【表11】

【0065】
以上見てきたように、本発明に係る小型撮像レンズ系は、二枚レンズの構成であり、物体側から順に、開口絞り、両凸の第1レンズ、及び物体側に凹面を向けたメニスカス第2レンズから構成され、該第1レンズと第2レンズでは共に少なくとも1面が非球面を有し、且つ所定の条件式を満足する時に、二枚型のレンズ系の全長を有効に短縮できる。さらに、該レンズ系は視角が大きい(画角が60度以上)場合、歪曲収差が2%以内となり、第1レンズと第2レンズのうち少なくとも一枚がガラス材料製であることにより、低コスト化と量産化を実現しつつ、各種の収差や色収差を有効に補正するので、広角での画質を高め、百万画素以上の高解像度の製品に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の小型撮像レンズ系の構成模式図。
【図2】本発明の小型撮像レンズ系の第1実施例の構成模式図。
【図3】本発明の小型撮像レンズ系の第1実施例の横収差を示す図。
【図4】本発明の小型撮像レンズ系の第1実施例の像面湾曲収差及び歪曲収差を示す図。
【図5】本発明の小型撮像レンズ系の第1実施例の球面収差を示す図。
【図6】本発明の小型撮像レンズ系の第1実施例の倍率色収差を示す図。
【図7】本発明の小型撮像レンズ系の第2実施例の構成模式図。
【図8】本発明の小型撮像レンズ系の第2実施例の横収差を示す図。
【図9】本発明の小型撮像レンズ系の第2実施例の像面湾曲収差及び歪曲収差を示す図。
【図10】本発明の小型撮像レンズ系の第2実施例の球面収差を示す図。
【図11】本発明の小型撮像レンズ系の第2実施例の倍率色収差を示す図。
【図12】本発明の小型撮像レンズ系の第3実施例の構成模式図。
【図13】本発明の小型撮像レンズ系の第3実施例の横収差を示す図。
【図14】本発明の小型撮像レンズ系の第3実施例の像面湾曲収差及び歪曲収差を示す図。
【図15】本発明の小型撮像レンズ系の第3実施例の球面収差を示す図。
【図16】本発明の小型撮像レンズ系の第3実施例の倍率色収差を示す図。
【図17】本発明の小型撮像レンズ系の第4実施例の構成模式図。
【図18】本発明の小型撮像レンズ系の第4実施例の横収差を示す図。
【図19】本発明の小型撮像レンズ系の第4実施例の像面湾曲収差及び歪曲収差を示す図。
【図20】本発明の小型撮像レンズ系の第4実施例の球面収差を示す図。
【図21】本発明の小型撮像レンズ系の第4実施例の倍率色収差を示す図。
【図22】本発明の小型撮像レンズ系の第5実施例の構成模式図。
【図23】本発明の小型撮像レンズ系の第5実施例の横収差を示す図。
【図24】本発明の小型撮像レンズ系の第5実施例の像面湾曲収差及び歪曲収差を示す図。
【図25】本発明の小型撮像レンズ系の第5実施例の球面収差を示す図。
【図26】本発明の小型撮像レンズ系の第5実施例の倍率色収差を示す図。
【符号の説明】
【0067】
10 開口絞り
20 第1レンズ
30 第2レンズ
40 結像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、開口絞りと、両凸の第1レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス第2レンズから構成され、該第1レンズと第2レンズでは共に少なくとも1面が非球面を有し、さらに、前記二枚レンズのうち少なくとも一枚のレンズがガラスレンズであり、開口絞りから像面までの距離をT、全系の焦点距離をfとした時、条件式
1<T/f<1.62 ...(1)
を満足することを特徴とする小型撮像レンズ系。
【請求項2】
上記第1レンズは、両面が非球面であり、第1レンズの結像面に近い面の表面曲率半径の絶対値をR2、第1レンズの厚みをdとした時、条件式
d/R2>1.6 ...(2)
を満足することを特徴とする請求項1に記載の小型撮像レンズ系。
【請求項3】
上記第1レンズは、該第1レンズの焦点距離をf1、第1レンズの物体側に近い面の表面曲率半径の絶対値をR1とした時、条件式
0.6<f1/f<0.8 ...(3)
0.1<R2/R1<0.8 ...(4)
を満足することを特徴とする請求項2に記載の小型撮像レンズ系。
【請求項4】
上記第2レンズは、両面が非球面であり、該第2レンズの物体側に近い凹面の表面曲率半径の絶対値R3、該第2レンズの結像面に近い面の表面曲率半径の絶対値をR4とした時、条件式
0.7<(1/R3)/(1/R1+1/R2+1/R4)<0.9 ...(5)
を満足することを特徴とする請求項3に記載の撮像レンズ系。
【請求項5】
上記第1レンズはガラス材料よりなり、上記第2レンズはプラスチック材料よりなることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ系。
【請求項6】
上記第1レンズと第2レンズは、第1レンズのアッベ数をυ1、第2レンズのアッベ数をυ2とした時、条件式
υ1−υ2>35 ...(6)
を満足することを特徴とする請求項5に記載の撮像レンズ系。
【請求項7】
上記プラスチック材料はポリカーボネートを含むことを特徴とする請求項5に記載の撮像レンズ系。
【請求項8】
上記開口絞りは第1レンズの物体側の表面に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2006−3900(P2006−3900A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175749(P2005−175749)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(503023069)鴻富錦精密工業(深▲セン▼)有限公司 (399)
【出願人】(598098331)清華大学 (534)
【Fターム(参考)】