小型超高開口率カタジオプトリック対物系
【課題】広いスペクトル域で標本を撮像できる対物系及び撮像方法を提供する。
【解決手段】標本撮像用の超高開口率対物系であって、
レンズ素子を1個又は複数個含み入射光を合焦させて中間像を生成する合焦レンズ素子群101と、中間像の近傍に配置された視野レンズ素子112を1個又は複数個含む視野レンズ素子群102と、前記視野レンズ素子群と標本との間に配置され中間像から採光し出射光をもたらすカタジオプトリック素子群103と、を備え、カタジオプトリック素子群が、球面状反射面、有意の反りを示さない反射面を有する1個又は複数個のマンジャン素子115、並びにメニスカスレンズ素子114を有し、そのメニスカスレンズ素子が、各マンジャン素子に直接接触せず、前記球面状反射面の球面曲率半径とは実質的に逆方向にメニスカス表面曲率半径を有するメニスカス表面を備えるよう配置される。
【解決手段】標本撮像用の超高開口率対物系であって、
レンズ素子を1個又は複数個含み入射光を合焦させて中間像を生成する合焦レンズ素子群101と、中間像の近傍に配置された視野レンズ素子112を1個又は複数個含む視野レンズ素子群102と、前記視野レンズ素子群と標本との間に配置され中間像から採光し出射光をもたらすカタジオプトリック素子群103と、を備え、カタジオプトリック素子群が、球面状反射面、有意の反りを示さない反射面を有する1個又は複数個のマンジャン素子115、並びにメニスカスレンズ素子114を有し、そのメニスカスレンズ素子が、各マンジャン素子に直接接触せず、前記球面状反射面の球面曲率半径とは実質的に逆方向にメニスカス表面曲率半径を有するメニスカス表面を備えるよう配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国暫定特許出願第60/449326号(原題:High Performance, Low Cost Catadioptric Imaging System、出願日:2003年2月21日)に基づく利益を享受する係属中の米国特許出願第10/434374号(原題:High Performance Catadioptric Imaging System、発明者:David G. Shafer, et al.、出願日:2003年5月7日)の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、大まかには光学撮像の分野に関し、より具体的には顕微鏡撮像、検査、リソグラフィ等に使用されるカタジオプトリック(catadioptric)光学系に関する。
【背景技術】
【0003】
標本の表面上にある特徴的構成を検査、撮像等する能力を有する光学系は色々ある。例えば半導体ウェハ上又はフォトマスク上の欠陥を検査する光学系や、スライド上の生物標本を精査する光学系である。また、撮像に顕微鏡が用いられることもある。例えば生物学的検査、寸法検査、半導体検査等、狭小範囲や微細特徴部分の高解像度画像を得たい複雑な検査では、顕微鏡が使用されることが多い。
【0004】
顕微鏡を用いた撮像系は現在数多く市販されている。例えば本願出願人による特許出願や本願出願人に付与された特許に記載のものである。その中でも米国特許出願第10/434374号(以下「先出願1」)に記載の対物系は、小型の割りに優れた光学特性を呈するカタジオプトリック対物系であり、特に深紫外域内の割合に広いスペクトル域に亘り高いNA(numerical aperture:開口率)で、全体として良好に動作させることができる。ただ、深紫外域内では色収差補正がかなり難しくなる場合がある。
【0005】
また、本願出願人に付与された特許に係る特許文献1に記載の対物系は、これよりはやや大きめだが幾つかの点で望ましい光学特性を呈するカタジオプトリック対物系であり、使用するスペクトル域が十分狭ければそのスペクトル域全体で好適に収差補正できるので、広い視野を有する超高NA撮像系として構成することができる。
【0006】
これら、特許文献1に記載の大型超高NA対物系及び先出願1に記載の小型広帯域対物系は、何れも一種類のガラス素材から形成できる等、共通した有益な特質を有しているが、最終目的が大きく違うため使用するレンズの配列や使用形態が違っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6064517号明細書
【特許文献2】米国特許第6842298号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここに、例えば前出の各種検査に使用する場合、総体としてNAが高く視野サイズが広い対物系が有利であろう。一般に、NAとはその対物系から標本への照光及びその標本からその対物系への集光が可能な角度範囲のことをいい、視野サイズとは要求される光学特性が全て充足される領域(視野)の標本位置における直径のことをいう。即ち、広いサイズの視野全体に亘り超高NA撮像を成功裡且つ効率的に実行できる対物系が、ここで述べているようなハイエンドな用途には相応しい。具体的には、76°にも及ぶ広い角度で照明及び撮像できる程の超高NA対物系が求められる。しかしながら、先出願1や特許文献1に記載の構造で達成できるのは、こうした要求水準に比し低NA或いは狭視野サイズのものだけである。それでいて、全体として個々の光学素子の直径がやや大きすぎ、しかもその製造公差が非常にタイトになる(即ちレンズ制作を精密に実行しなければならない)。即ち、光学性能、サイズ、コスト等の面で従来の構造には限界があった。
【0009】
また、顕微鏡を使用した深紫外域での標本検査(前出)用に望まれているのは、NAが非常に高く且つ視野サイズが広い、という特性を有する光学系である。例えば、その動作波長が例えば193nm、213nm、244nm、257nm、266nm、325nm、355nm或いは更に長く可視域に属するものにて、そうした光学特性を実現することが嘱望されている。加えて、従来より小型で従来よりルーズな公差で製造できるものが望ましい。
【0010】
即ち、標準的な顕微鏡を用いた顕微検査に使用でき、前述した従来の撮像系に見られたような難点がない対物系及び撮像系を実現することが、求められている。更に、本願にて指摘するような難点を呈さない優れた機能性を有する光学検査システムを実現することも、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここに、本発明の一実施形態に係る対物系は、標本撮像用の超高NA対物系であって、レンズ素子を1個又は複数個含み入射光を合焦させて中間像を生成する合焦レンズ素子群と、中間像の近傍に1個又は複数個配置された視野レンズ素子と、中間像から採光し出射光をもたらすカタジオプトリック素子群と、を備える。そのカタジオプトリック素子群としては、マンジャン(Mangin)素子及びメニスカス(meniscus)レンズ素子各々を1個又は複数個含む素子配列を用いる。
【0012】
また、本発明の他の実施形態に係る対物系は、標本撮像用の超高NA対物系であって、入射光から中間像を生成する複数個のレンズ素子と、その視野内にある中間像の近傍に1個又は複数個配置された視野レンズ素子と、視野レンズ素子の視野内の中間像から採光して標本向けに低収差出射光をもたらすカタジオプトリック素子群と、を備える。中間像とカタジオプトリック素子群の間には、月型の視野レンズ素子を1個又は複数個配する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、そのカタジオプトリック素子群内のメニスカスレンズ素子の反りが球面ミラー素子の反りと逆方向である12素子対物系を示す図である。
【図2】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、そのカタジオプトリック素子群内のメニスカスレンズ素子の反りが球面ミラー素子の反りと同方向である12素子対物系を示す図である。
【図3】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、そのカタジオプトリック素子群内に負レンズ素子がある12素子対物系を示す図である。
【図4】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、カタジオプトリック素子群を2個有する9素子対物系を示す図である。
【図5】そのNAが0.97、視野サイズが約0.4mmで、2個のカタジオプトリック素子群で2素子瞳リレーを形成した9素子対物系を示す図である。
【図6】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、その球面ミラー素子が専用のミラー素子である10素子対物系を示す図である。
【図7】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、その球面ミラー素子が鏡面付レンズ素子である10素子対物系を示す図である。
【図8】そのNAが0.97、視野サイズが約0.4mmで、固体カタジオプトリック素子を備え浸漬撮像を行う際に使用される14素子対物系を示す図である。
【図9】そのNAが0.97、視野サイズが約2.0mmで、そのカタジオプトリック素子群内に負レンズ素子がある12素子対物系を示す図である。
【図10】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mm、中心波長が213nmで、そのカタジオプトリック素子群内に負レンズ素子がある12素子対物系を示す図である。
【図11】そのNAが0.97、視野サイズが約1.0mmで、そのカタジオプトリック素子群内に負レンズ素子がある12素子対物系を示す図である。
【図12】そのNAが0.97、視野サイズが約1.0mmで、そのカタジオプトリック素子群内に負レンズ素子があり、全長が長くカタジオプトリック素子直径が小さな12素子対物系を示す図である。
【図13】一般的な構成を有する顕微鏡及び本発明に係る対物系のその顕微鏡における使用形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、別紙図面を参照しつつ本発明について詳細に説明する。本件技術分野において習熟を積んだ者(いわゆる当業者)であれば、この説明を参照することで、上述のものもそれ以外のものも含め、本発明の利点を好適に理解することができよう。
【0015】
なお、別紙図面は本発明の例示説明のためのものであり、要旨限定を旨とするものではない。
【0016】
まず、本発明に係る対物系は小型カタジオプトリック対物系であり、そのNAが非常に高く、視野サイズが割合に広く、小型で、製造公差もルーズでよく、顕微鏡を用いた半導体検査等の先進的用途に使用できるものである。更に、この小型超高NA対物系では各種暗視野方式及び明視野方式による撮像を実施できる。本対物系によれば、標本表面から引いた法線に対し76°もの広い角度範囲に亘り、照光及び集光することができる。
【0017】
本発明に係る対物系は様々な波長の(ビーム)光、例えば赤外域から深紫外域に至る様々な波長で使用でき、またその波長向けに最適化することができる。例えば、紫外域に属する波長である193nm、213nm、244nm、248nm、257nm、266nm等々のビーム光向けに、本発明に係る対物系を構成或いは最適化することができる。そのための調整はいわゆる当業者であれば容易に行える。使用波長が110〜200nmの帯域内である場合は、その帯域にて光透過特性が良好な弗化物ガラスを用いるとよい。
【0018】
本発明によれば、NAが0.97にも及ぶ程高く高品質画像が得られるカタジオプトリック光学系を、好適に実現することができる。NAがこのように高いということは、非常に広い入射角範囲で照明及び結像を行えるということである。次の式
【数1】
は、NAと標本への入射角との関係を表している。この式中のnは屈折率であり、空気の場合その値は1.000である。従って、空気中におけるNAと入射角の関係は、概略、次の表1の通りとなる。
【表1】
【0019】
また、本発明に係る対物系を構成するレンズ素子は互いに同一種類のガラス素材によって形成することができるが、別々の種類のガラス素材を用いて形成してもかまわない。紫外域〜深紫外域で使用するのであれば、光透過特性の点で有利な熔融シリカを用いるとよい。熔融シリカには、熱的安定性に優れ、研磨が割合に容易であるという利点もある。
【0020】
従来技術に対する本発明の相違点の一つは、カタジオプトリック素子群或いはその構成素子に改変を施した点にある。まず、先出願1に記載の小型広帯域対物系は、本発明に比べ低NA且つ狭視野サイズである。狭視野サイズということは、標本を許容範囲内の光学特性劣化で撮像できる面積が狭いということである。低NA及び狭視野サイズになるのは、合焦レンズ素子群にて生じる一次の軸上色収差(axial color)を補正するのにカタジオプトリック素子群全体での屈折力を負にしなければならないためである。これに対し、本発明では、狭帯域光を使用することとして軸上色収差を補正する必要をなくし、カタジオプトリック素子群内の屈折素子群全体での屈折力を0或いは正の値にすることができるようにしている。また、先出願1では、カタジオプトリック素子群を合焦レンズ素子群内に結像できるように視野レンズ素子群を構成することで、横色収差(lateral color)を補正している。本発明の視野レンズ素子群における結像動作もこれと類似した動作であるが、本発明では、視野レンズ素子における結像及び受光によって高次の球面収差(spherical aberration)やコマ収差(coma)等の単色収差(monochromatic aberration)を制御できるようにしている。
【0021】
また、特許文献1に記載の大型カタジオプトリック超高NA対物系は、光学素子の偏心に対する非常にタイトな製造公差を満たす必要があるため、製造自体が非常に困難である。即ち、特許文献1では急角度での入射を受け入れることによって高次球面収差及びコマ収差のレベルを許容水準以下に抑え、カタジオプトリック素子群内で生じる収差をそれによって補正するようにしているので、偏心公差をタイトに設定する必要がある。これに対し、本発明では、合焦レンズ素子群の偏心公差を小さくすることによってカタジオプトリック素子群内での高次収差を抑えるようにしているため、合焦レンズ素子群にて高次球面収差等を補正する必要がない。
【0022】
更に、高次収差を抑えるには、カタジオプトリック素子群としてそのマンジャン素子の個数が1個又は2個という単純な素子配列を用いるのでは不十分である。即ち、そうした単純な構成のカタジオプトリック素子群でも、高次の球面収差や高次のコマ収差のうち一方であれば十分に抑圧できるが、それらを同時に且つ十分に抑圧することはできない。
【0023】
本発明におけるカタジオプトリック素子群の基本思想は従来とは異なるものである。本願では幾つかの基本思想を提案するが、そのうちの一つは、球面ミラー素子、レンズ素子及びマンジャン素子を組み合わせた三素子型の構成を採り、そのレンズ素子が三重経路で使用されるように(即ちその素子を光が一往復半するように)カタジオプトリック素子群を構成し、カタジオプトリック素子群のマンジャン素子を標本例えばウェハ側に寄せた配置で使用する、というものである。
【0024】
図1に本発明の一実施形態に係る対物系を示す。本対物系は合焦レンズ素子群101、視野レンズ素子群102及びカタジオプトリック素子群103から構成されている。合焦レンズ素子群101はレンズ素子104〜111から構成されており、図中左側から光(light energy)が入射するとこの合焦レンズ素子群101によって中間像117が生成される。中間像117が生成される位置は、合焦レンズ素子群101の先にある視野レンズ素子112の視野内で、視野レンズ素子112の先にあるカタジオプトリック素子群103内の球面ミラー素子113の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群103は、この球面ミラー素子113とマンジャン素子115との間にメニスカスレンズ素子114を配置し、そのメニスカスレンズ素子114を三重経路で使用するよう構成されている。メニスカスレンズ素子114の反りは球面ミラー素子113の反りとは逆方向である。
【0025】
表2に、図1に示した対物系のレンズ処方を示す。
【表2】
【0026】
いわゆる当業者であれば理解できるように、表2の最左列に記されている数字は図1の左端から順に面を数えたもの即ち面番号を表している。例えばレンズ素子104の面のうち図1に向かって左側の面はこの表では面1として表されており、右側の面は面2として表されている。面1の曲率半径は25.245mm、レンズ素子104の厚みは1.25mm、面2の曲率半径は7.348mm、面2とその次の面との間隔は2.0mmである。また、レンズ素子104を形成しているガラス素材は熔融シリカである。
【0027】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群101は入射光を合焦させて視野レンズ素子群102の視野内に中間像117を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群103はその中間像117から採光した光を焦点116に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、カタジオプトリック素子群103は標本による反射光から中間像117を生成し、合焦レンズ素子群101は視野レンズ素子群102の視野内にある中間像117から採光して出射光を生成する。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0028】
更に、表2によれば、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカである。熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできるが、その素材は本対物系の使用波長域全体に亘り光吸収率が低い素材である必要がある。また、単一素材により形成された超高NA対物系には、その素材が優れた光透過特性を呈する波長域内ならどの波長にも、中心波長を合わせる(再最適化する)ことができるという利点がある。本対物系のように熔融シリカを用いた場合、190nm〜赤外域に至る波長域にて良好な光透過特性が得られるので、その波長域内で中心波長を再最適化できる。例えばレーザ光を使用する場合、193nm、198.5nm、213nm、244nm、248nm、257nm、266nm、308nm、325nm、351nm、355nm、364nm等といった波長に再最適化できる。また、レンズ素子を形成するガラス素材として弗化カルシウムを使用する場合は、157nmで動作するエキシマレーザを本対物系と組み合わせて使用すればよい。再最適化には各種構成部材の調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。
【0029】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、その視野サイズが約0.8mm、最大素子直径が30mmになる。この最大素子直径は同じ波長域で従来使用されていたほとんどの対物系に比べてかなり小さいので、本対物系は、そのフランジ対物距離が約45mmの標準的な顕微鏡タレットに装着することができる。図13に、一般的な顕微鏡の構成を示す。この図の顕微鏡は対物系1301、フランジ1302及び顕微鏡タレット1303から構成されている。同図には標本1304も示されている。なお、図中の部材寸法比は概略であり正確なものではない。
【0030】
このように、図1及び表2に示した対物系は、空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差(polychromatic wavefront error)を約0.045波長未満にすることができる。また、三素子型のカタジオプトリック素子群103を用いているため、本対物系では、所望特性の実現と公差のルーズ化を両立させることができる。例えば、波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度(その素子群を構成する何れかの素子が10μm偏心したときに生じる波面収差)は、合焦レンズ素子群101では最高約0.36波長、視野レンズ素子群102では約0.32波長、カタジオプトリック素子群103では最高約0.4波長と低レベルであり、どの素子が10μm偏心しても波面収差が波長/2未満、場合によっては波長/3未満にもなるので、偏心に対する製造公差をルーズにすることができる。
【0031】
また、これはあらゆる光学系にいえることであるが、トレードオフの関係を利用し、例えば帯域幅、視野サイズ、NA、対物系サイズ等の特性のうち何れかを犠牲にして他の特性を向上させることが可能である。そのうちどの特性を優先して高めるかは、その対物系乃至光学系の用途に応じて決めればよい。例えばNAを低め或いは高める代わりに他の特性を最適化する場合、NAを低くする代わりに、製造公差を緩め、対物系の外径を小さくし、視野サイズ及び帯域幅を拡げ、或いは光学部品点数を減らす(但し特性は同レベルを保つ)こと等が可能である。逆に、視野サイズや帯域幅を犠牲にし対物系素子直径を僅かばかり大きくするのと引替に、光学素子を最適化してNAを高めることもできる。
【0032】
更に、本対物系は自動収差補正型である。即ち、何も光学部品を付加しなくても収差が補正され検査装置としての仕様が充足されるように構成されている。言い換えれば、何も部品を追加しなくても収差がほとんどない像を得ることができ、またそのほぼ完全な像を得るのに別途収差補正を施す必要もない。自動収差補正能力があるので、光学的検査計測をより簡便に行うことができ、また他の自動収差補正型撮像用光学系につないで使用することもできる。更に、別の撮像用光学系を用いて残存収差を補正し、それを通じて帯域幅や視野サイズ等を向上させて光学仕様をより高水準にすることもできる。
【0033】
また、本発明に係る対物系においては、様々な照明モード及び撮像モードを超高NAで実行することができる。実行できる照明・撮像モードとしては、明視野モード、各種暗視野モード等のモードがある。その他のモード、例えば共焦点、微分干渉コントラスト、偏光コントラスト等のモードも、本発明に係る対物系により実行することができる。
【0034】
明視野モードは顕微鏡システムにて広く用いられている。明視野モードの優れたところは得られる画像が鮮明であることである。本発明に係る対物系では、明視野モード下で対象物を照明し、その対象物上にある特徴部分のサイズを画像上で求め、それに本対物系の倍率を乗ずることにより、その特徴部分のサイズをかなり正確に知ることができる。従って、画像比較処理アルゴリズムと、本発明に係る対物系乃至光学系とを併用し、コンピュータによる物体検知分類処理を実施することもできる。更に、明視野モードで照明に使用する光源は通常は広帯域非コヒーレント光源であるが、照明用レーザ光源も使用することができる。即ち、照明系構成部品に少々修正を施せば、それを本発明に係る対物系と好適に併用できる。
【0035】
共焦点モードは光学切断解析に際し対象物上の特徴部分間の高低差を分解検知するのに使用される。即ち、特徴部分間の高さの違いはどの撮像モードでもうまく検知することができないものであるが、共焦点モードならば同じ対象物上にありその高さが違う複数の注目特徴部分を別々に撮像でき、それらの像の比較によって特徴部分同士の相対的な高さを知ることができる。共焦点モードも本発明に係る対物系にて実施できる。
【0036】
暗視野モードは対象物上の特徴部分を検知するのに用いられる。このモードは、対象物の表面のうち平坦な部分では光がほとんど散乱せず反射光が鏡面反射光になるのに対して、対象物の表面に突出等している特徴部分による反射光が散乱反射光になることを利用したモードである。この散乱反射光を受光できるよう検知器を配置することによって、平坦な部分を表す暗い背景の中に特徴部分からの散乱反射光による明るい部分が表示される画像を、得ることができる。即ち、暗視野モードを用い半導体ウエハ等の対象物を検査した場合、暗い背景の上に粒子、形状不正等、様々な特徴部分が表示された画像を得ることができる。この暗視野モードも本発明に係る対物系にて実施できる。更に、暗視野モードで得られる信号は対象物上の特徴部分にぶつかり散乱反射された光を捉えた信号であり、特徴部分が小さい割りにその拡がりが大きな信号になる。拡がりが大きいということは、その特徴部分の実サイズの割りに画像上で占める画素数が多くなるということであり、従って対象物の検査を高速で行うことが可能になる。更に、対象物上の繰り返しパターンによる反射光をフーリエフィルタリングで抑圧することにより、暗視野検査時に得られる検知信号の信号対雑音比を高めることができる。
【0037】
暗視野モードには様々な種類があり、種類によって照明方式や集光方式が異なっている。即ち、その対象物から収集した散乱反射光や回折光による画像の信号対雑音比が許容水準以上になるよう、暗視野モードの種類毎に照明方式や集光方式が工夫されている。また、リング暗視野、レーザ方向暗視野、ダブル暗視野、中央暗背景暗視野等、複数種類の暗視野モードで撮像できる光学系もある。本発明に係る対物系でも、そうした複数種類の暗視野モードで撮像を行うことができる。
【0038】
図1に示した対物系では、上述した様々な照明・撮像モードを何れも効率的に実行することができる。その際、相応の構成部品に若干の改変を施すことで、特性パラメタのうち何れかを改善させることもできる。何れにせよ、本発明に係る対物系によれば、上掲のどのモードによる撮像・検査でも、広い波長域に亘りまた高NA且つ広視野サイズで行うことができる。更に、本対物系は標準的な顕微鏡タレットに装着して動作させることができ、従来知られていた水準よりも高い撮像性能を実現できる。
【0039】
図2に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も12素子構成であるが、図1に示した対物系とはカタジオプトリック素子群内素子に違いがある。即ち、本対物系におけるカタジオプトリック素子群203は、球面ミラー素子213とマンジャン素子215の間にメニスカスレンズ素子214を配置した構成であり、その屈折力はほぼ0である。このメニスカスレンズ素子214は球面ミラー素子213と同じ方向に反った形状であり、図示の例ではその厚みがほぼ均一な板によって実現されている。
【0040】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群201、視野レンズ素子群202及びカタジオプトリック素子群203から構成されている。合焦レンズ素子群201はレンズ素子204〜211から構成されており、この合焦レンズ素子群201によって中間像217が生成されている。中間像217が生成される位置は、合焦レンズ素子群201の先にある視野レンズ素子212の視野内で、更にその視野レンズ素子212の先にあるカタジオプトリック素子群203内の球面ミラー素子213の頂点付近である。カタジオプトリック素子群203は三素子配列であり、この球面ミラー素子213と、マンジャン素子215との間にメニスカスレンズ素子214を配置し、そのメニスカスレンズ素子214を三重経路で使用するよう構成されている。このメニスカスレンズ素子214の反りは、球面ミラー素子213の反りと同じ方向である。
【0041】
表3に、図2に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表3】
【0042】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群201は入射光を合焦させることによって視野レンズ素子群202の視野内に中間像217を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群203はその中間像217から採光した光を焦点216に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、例えば暗視野モードではこれとは逆の経路を辿る。即ち、カタジオプトリック素子群203は標本による反射光を受光して中間像217を生成し、合焦レンズ素子群201は視野レンズ素子群202の視野内にある中間像217から採光して出射光を生成する。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0043】
また、本対物系を例えば355nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は28mmになる。この最大素子直径は、同じ波長域で従来使用されていた大抵の対物系に比べかなり小さいサイズである。このように小型であることは対物系の特性としてはとりわけ有益なことであり、そのサイズならフランジ対物距離が約45mmの標準的な顕微鏡タレットに装着することができる。このように、本対物系は、空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその波面収差を約0.039波長未満にすることができる。
【0044】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群203を用いているため、本対物系では、所望特性の実現と公差のルーズ化を両立させることができる。例えば、波長が355nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群201では最高約0.287波長、視野レンズ素子群202では約0.267波長、カタジオプトリック素子群203では最高0.246波長であるので、製造公差をルーズにしてよい。
【0045】
更に、表3に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、本対物系に対しては特性上の要求に応じて再最適化を施すことができる。最適に動作する波長を変更する処理即ち再最適化を施す際には、各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0046】
図3に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も12素子構成であるが、前述の各実施形態とはそのカタジオプトリック素子群内素子に違いがある。即ち、本対物系におけるカタジオプトリック素子群303は、球面ミラー素子313とマンジャン素子315の間に負レンズ素子314を配置した構成である。
【0047】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群301、視野レンズ素子群302及びカタジオプトリック素子群303から構成されている。合焦レンズ素子群301はレンズ素子304〜310から構成されており、この合焦レンズ素子群301によって中間像317が生成されている。中間像317が生成される位置は、合焦レンズ素子群301の先にある視野レンズ素子311及び312の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群303内の球面ミラー素子313の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群303は三素子配列であり、この球面ミラー素子313とマンジャン素子315との間に負レンズ素子314を配置し、その負レンズ素子314を三重経路で使用するよう構成されている。
【0048】
表4に、図3に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表4】
【0049】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群301は入射光を合焦させて視野レンズ素子群302の視野内に中間像317を生成し、マンジャンミラー素子配列たるカタジオプトリック素子群303はその中間像317から採光した光を焦点316に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、カタジオプトリック素子群303は標本による反射光から中間像317を生成し、合焦レンズ素子群301は視野レンズ素子群302の視野内にある中間像317から採光して出射光を生成する。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0050】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は26mmになる。この最大素子直径は同じ波長域で従来使用されていた大抵の対物系に比べかなり小さいサイズである。小型であることは対物系の特性としてはとりわけ有益なことであり、本対物系ほど小さければ例えばそのフランジ対物距離が約45mmの標準的な顕微鏡タレットに装着することができる。本対物系は、このように空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもの波面収差を約0.039波長未満にすることができる。
【0051】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群303を用いているため、本対物系では、合焦レンズ素子群301及び視野レンズ素子群302に課する公差をかなりルーズにすることができる。例えば、波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群301では最高約0.26波長、視野レンズ素子群302では約0.33波長であり、従って製造公差をルーズにすることができる。但し、同じ場合におけるカタジオプトリック素子群303の10μm素子偏心感度は最高約0.72波長であるので、本対物系におけるカタジオプトリック素子群303の偏心公差はややタイトに設定せざるを得ない。
【0052】
更に、表4に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0053】
図4に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系は、前述の実施形態と異なり9素子構成であり、そのカタジオプトリック素子群内素子に違いがあり、しかも2個のカタジオプトリック素子群402及び404を配列したダブルカタジオプトリックキャビティ型の構成になっている。一方のキャビティは他方のキャビティにおける高次収差の補正に使用されている。そうすることによって、合焦レンズ素子群401及び視野レンズ素子403の公差をかなりルーズにすることができる。
【0054】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群401、1個の視野レンズ素子403からなる視野レンズ素子群、並びに2個のカタジオプトリック素子群402及び404から構成されている。合焦レンズ素子群401はレンズ素子406〜408から構成されており、この合焦レンズ素子群401によって第1中間像415が生成されている。第1カタジオプトリック素子群402は、球面ミラー素子409と実質的に平坦な素子411との間にレンズ素子410を配置した三素子配列型の構成であり、この第1カタジオプトリック素子群402によって第2中間像416が生成されている。第2中間像416が生成される位置は第1カタジオプトリック素子群402の先にある視野レンズ素子403の視野内で、更にその先にある第2カタジオプトリック素子群404内の球面ミラー素子412の頂点又はその近傍である。この第2カタジオプトリック素子群404は、球面ミラー素子412とマンジャン素子413から構成される2素子配列型の構成である。なお、前掲の平坦素子411と第2カタジオプトリック素子群404内の球面ミラー素子412は同一素子によって実現することもできる。その素子の一方の鏡面を平坦素子411の鏡面として、他方の鏡面を球面ミラー素子412の鏡面として、それぞれ使用すればよい。その場合、視野レンズ素子403は素子411及び412を兼ねる単体素子の中央に孔を形成し、そのほぼ中央に入れればよい。本対物系には更に外部瞳405を設けることもできる。
【0055】
表5に、図4に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表5】
【0056】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群401は入射光を合焦させて第1中間像415を生成し、第1カタジオプトリック素子群402は第1中間像415から採光して視野レンズ素子403の視野内に第2中間像416を生成し、そして第2カタジオプトリック素子群404は第2中間像416から採光した光を焦点414に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たる第2カタジオプトリック素子群404は標本による反射光から第2中間像416を生成し、第1カタジオプトリック素子群402は視野レンズ素子403の視野内にある第2中間像416から採光して第1中間像415を生成し、そして合焦レンズ素子群401はその第1中間像415から採光して出射光を生成する。また、外部瞳405即ち開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0057】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は40mmになる。本対物系は、このように空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、またその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0058】
更に、ダブルカタジオプトリックキャビティ型の構成即ち2個のカタジオプトリック素子群402及び404を配列した構成を採っているため、公差を更にルーズにすることができる。例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群401では最高約0.61波長、第1カタジオプトリック素子群402では採光約0.54波長、視野レンズ素子403では約0.54波長、第2カタジオプトリック素子群404では最高約0.77波長となるので、製造公差をルーズにしてもかまわない。
【0059】
更に、表5に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0060】
図5に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も2個のカタジオプトリック素子群504及び505を配列したダブルカタジオプトリックキャビティ型の9素子構成であるが、前述の実施形態とは各カタジオプトリック素子群内における素子配列及びカタジオプトリック素子群同士の配列が異なる他、2素子瞳リレー型の構成である点で異なっている。即ち、一方のキャビティが他方のキャビティにおける高次収差の補正に使用されており、従って合焦レンズ素子群502及び視野レンズ素子群503の公差をかなりルーズにすることができる点で、図4に示した対物系と共通しているが、図4では2個のカタジオプトリック素子群の間に配置されていた視野レンズ素子を別の場所に動かし、より簡単に製造できるようにしている点で、図4に示した対物系とは相違している。
【0061】
具体的には、本対物系は瞳リレー素子群501、合焦レンズ素子群502、視野レンズ素子群503、並びに2個のカタジオプトリック素子群504及び505から構成されている。瞳リレー素子群501は外部瞳506をうまく形成できるようレンズ素子507及び509から構成されており、その内部ではレンズ素子507とレンズ素子509の間に第1中間像508が生成されている。その次段の合焦レンズ素子群502はレンズ素子510〜512から構成されており、この合焦レンズ素子群502によって第2中間像521が生成されている。第2中間像521が生成される位置は、合焦レンズ素子群502の先にある視野レンズ素子513の付近である。更にその先にある第1カタジオプトリック素子群504は、球面ミラー素子514と実質的に平坦なミラー素子516との間にレンズ素子515を配置した三素子配列型の構成であり、第2カタジオプトリック素子群505内の球面ミラー素子517の頂点付近に第3中間像520を生成する。第2カタジオプトリック素子群505は球面ミラー素子517とマンジャン素子518からなる2素子配列型の構成である。更に、球面ミラー素子517は前掲の平坦素子516と一体化することができる。即ち、その表裏に鏡面がある単一の素子として製造することができる。
【0062】
表6に、図5に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表6】
【0063】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、瞳リレー素子群501は外部瞳506の位置から入射し第1中間像508を生成した光を合焦レンズ素子群502にリレーし、合焦レンズ素子群502はその光を合焦させて視野レンズ素子513の近傍に第2中間像521を生成し、第1カタジオプトリック素子群504は第2中間像521から採光して第3中間像520を生成し、そして第2カタジオプトリック素子群505は第3中間像520から採光した光を標本519向けに出射する。また、標本519に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たる第2カタジオプトリック素子群505は標本519による反射光から第3中間像520を生成し、第1カタジオプトリック素子群504はこの第3中間像520から採光して視野レンズ素子群503内の視野レンズ素子513の近傍に第2中間像521を生成し、合焦レンズ素子群502はその第2中間像521から採光して瞳リレー素子群501への入射光を生成し、瞳リレー素子群501はその光から外部瞳506を生成する。また、外部瞳506即ち開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0064】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.4mm、最大素子直径は44mmになる。この最大素子直径は同じ波長域で従来使用されていた大抵の対物系に比べかなり小さい大きさである。小型であることは、対物系の特性としてはかなり有益なことである。本対物系は、このように空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0065】
また、こうしたダブルカタジオプトリック素子群配列を採ることで、公差を更にルーズにすることができる。例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、瞳リレー素子群501内素子や合焦レンズ素子群502内素子では最高約1.32波長、視野レンズ素子群503では最高約1.2波長、第1カタジオプトリック素子群504では最高約0.34波長、第2カタジオプトリック素子群505では最高約0.76波長であるので、製造公差をルーズにしても差し支えない。
【0066】
更に、表6に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0067】
図6に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系は10素子構成である。そのカタジオプトリック素子群603は、従来の超高NA対物系と同様2素子型の構成であるが、それを構成しているのは半球面ミラー素子612及びほぼ平坦なマンジャン素子613である。
【0068】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群601、視野レンズ素子群602及びカタジオプトリック素子群603から構成されている。合焦レンズ素子群601はレンズ素子604〜610から構成されており、この合焦レンズ素子群601によって中間像615が生成されている。中間像615が生成される位置はその先にある視野レンズ素子611の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群603内の球面ミラー素子612の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群603はこの球面ミラー素子612とマンジャン素子613からなる2素子配列型の構成である。
【0069】
表7に、図6に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表7】
【0070】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群601は入射光を合焦させて視野レンズ素子群602の視野内に中間像615を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群603はその中間像615から採光した光を標本614向けに出射する。また、標本614に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群603は標本614による反射光から中間像615を生成し、合焦レンズ素子群601は視野レンズ素子群602の視野にある中間像615から採光して出射光をもたらす。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0071】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は30mmになる。従って、本対物系は、約45mmのフランジ対物距離を有する標準的な顕微鏡タレット内に装着することができる。本対物系は、このように空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0072】
また、例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群601では最高約1.19波長、視野レンズ素子群602では約0.56波長、カタジオプトリック素子群603では最高約0.60波長となる。従って図1や図2に示した対物系に比べ幾点かの公差をタイトにせざるを得ないが、対物系自体の大きさは従来の超高NA対物系に比べ小型になっている。
【0073】
更に、表7に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0074】
図7に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系は10素子構成であり、そのカタジオプトリック素子群703は従来の超高NA対物系と同様2素子型の構成であるが、それを構成しているのは半球面マンジャン素子712及びほぼ平坦なマンジャン素子713である。
【0075】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群701、視野レンズ素子群702及びカタジオプトリック素子群703から構成されている。合焦レンズ素子群701はレンズ素子704〜710から構成されており、この合焦レンズ素子群701によって中間像715が生成されている。中間像715が生成される位置はその先にある視野レンズ素子711の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群703内の半球面マンジャン素子712の鏡面の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群703はこの半球面マンジャン素子712と平坦マンジャン素子713からなる2素子配列型の構成である。
【0076】
表8に、図7に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表8】
【0077】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群701は入射光を合焦させて視野レンズ素子群702の視野内に中間像715を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群703はその中間像715から採光した光を焦点714に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群703は標本による反射光から中間像715を生成し、合焦レンズ素子群701は視野レンズ素子群702の視野にある中間像715から採光して出射光をもたらす。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0078】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は32mmになる。従って、本対物系は、約45mmのフランジ対物距離を有する標準的な顕微鏡タレット内に装着することができる。本対物系は、このように空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.04波長未満にすることができる。
【0079】
また、例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群701では最高約1.2波長、視野レンズ素子群702では約0.55波長、カタジオプトリック素子群703では最高約0.52波長となる。従って図1や図2に示した対物系に比べ幾点かで公差をタイトにせざるを得ないが、対物系自体の大きさは従来の超高NA対物系に比べ小型になっている。
【0080】
更に、表8に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、図7に示した対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0081】
図8に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系は14素子構成であり、浸漬撮像方式にて0.97という超高NAを実現し、また浸漬型としては大きめな視野サイズが得られるように構成されている。
【0082】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群801、視野レンズ素子群802及びカタジオプトリック素子群803から構成されている。合焦レンズ素子群801はレンズ素子805〜815から構成されており、この合焦レンズ素子群801によって中間像821が生成されている。中間像821が生成される位置はその先にある視野レンズ素子816及び817の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群803内のマンジャン素子818の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群803内のマンジャン素子818は、単体のガラス片の表裏両面上に又はそのすぐそばに反射面を形成した単体型の素子である。即ち、マンジャン素子818は単一ガラス片の表面に沿うように2個のマンジャン反射面を形成した構造の固体マンジャン素子である。こうした固体マンジャン素子818をカタジオプトリック素子群803として使用しているため、好ましいことに、浸漬方式による超高NA撮像を行うことができる。
【0083】
表9に、図8に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表9】
【0084】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群801は入射光を合焦させて視野レンズ素子群802の視野内に中間像821を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群803はその中間像821から採光した光を標本819向けに出射する。また、標本819に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群803は標本819による反射光から中間像821を生成し、合焦レンズ素子群801は視野レンズ素子群802の視野にある中間像821から採光して出射光をもたらす。また、開口絞り804の位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0085】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.4mm、最大素子直径は30mmになる。小型であることは、対物系の特性としてはとりわけ有益なことである。そして、本対物系は、水中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.035波長未満にすることができる。
【0086】
また、例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群801では最高約0.215波長、視野レンズ素子群802では約0.25波長、カタジオプトリック素子群803では最高約0.30波長となる。従ってこれらについての公差を割合にルーズにすることができる。また、本対物系には外部瞳804があるので、そこに開口を配置してNAを制御することや、そこにフィルタを配置してフーリエフィルタリングを行うことや、それを利用して暗視野モードを実施することができる。
【0087】
更に、表9に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0088】
図9に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系は12素子構成であり、そのカタジオプトリック素子群903内の素子配列に違いがある。本対物系におけるカタジオプトリック素子群903内素子配列は、球面ミラー素子913とマンジャン素子915の間に屈折力が0になるようレンズ素子914を配置する、というものであり、またそのレンズ素子914は球面ミラー素子913とは逆方向に反る形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。この構成によって超高NAを実現する点は図1に示した実施形態と共通しているが、但し、各素子直径を大きくすることで視野サイズを拡げている点が異なっている。また、図示例におけるメニスカスレンズ素子914はその厚みがほぼ均一な板として形成されている。
【0089】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群901、視野レンズ素子群902及びカタジオプトリック素子群903から構成されている。合焦レンズ素子群901はレンズ素子904〜911から構成されており、この合焦レンズ素子群901によって中間像917が生成されている。中間像917が生成される位置はその先にある視野レンズ素子912の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群903内の球面ミラー素子913の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群903はこの球面ミラー素子913とマンジャン素子915の間にメニスカスレンズ素子914を配置した三素子配列型の構成であり、そのメニスカスレンズ素子914は三重経路で使用されるように配置されている。更に、そのレンズ素子914は、球面ミラー素子913とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。
【0090】
表10に、図9に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表10】
【0091】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群901は入射光を合焦させて視野レンズ素子群902の視野内に中間像917を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群903はその中間像917から採光した光を焦点916に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群903は標本による反射光から中間像917を生成し、合焦レンズ素子群901は視野レンズ素子群902の視野内にある中間像917から採光して出射光をもたらす。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0092】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約2.0mm、最大素子直径は104mmになる。本対物系は空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.055波長未満にすることができる。
【0093】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群903を用いているため、上掲の性能を実現できるだけでなくその公差を非常にルーズにすることができる。例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群901では最高0.40波長、視野レンズ素子群902では0.269波長、カタジオプトリック素子群903では最高0.34波長であるので、製造公差をルーズにしても差し支えない。
【0094】
更に、表10に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0095】
図10に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も12素子構成であり、またそのカタジオプトリック素子群1003内の素子配列も図1に示したそれと同様である。即ち、球面ミラー素子1013とマンジャン素子1015の間には屈折力がほぼ0になるようにレンズ素子1014が配置されており、またそのレンズ素子1014が球面ミラー素子1013とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。図示例におけるメニスカスレンズ素子1014は、ここでもその厚みがほぼ均一な板とされている。
【0096】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群1001、視野レンズ素子群1002及びカタジオプトリック素子群1003から構成されている。合焦レンズ素子群1001はレンズ素子1004〜1011から構成されており、この合焦レンズ素子群1001によって中間像1017が生成されている。中間像1017が生成される位置はその先にある視野レンズ素子1012の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群1003内の球面ミラー素子1013の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群1003はこの球面ミラー素子1013とマンジャン素子1015の間にレンズ素子1014を配置した三素子配列型の構成であり、レンズ素子1014は三重経路で使用されるように配置されている。更に、そのレンズ素子1014は球面ミラー素子1013とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。
【0097】
表11に、図10に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表11】
【0098】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群1001は入射光を合焦させて視野レンズ素子群1002の視野内に中間像1017を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1003はその中間像1017から採光した光を焦点1016に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1003は標本による反射光から中間像1017を生成し、合焦レンズ素子群1001は視野レンズ素子群1002の視野内にある中間像1017から採光して出射光をもたらす。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0099】
また、本対物系を例えば213nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は31.5mmとなる。そのため、本対物系は、そのフランジ対物距離が約45mmである標準的な顕微鏡タレットに装着することができる。そして、本対物系は空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0100】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群1003を用いているため、その公差を全般的にルーズにすることができる。例えば波長が213nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群1001では最高約0.4469波長、視野レンズ素子群1002では約0.4387波長、カタジオプトリック素子群1003では最高約0.463波長となるので、製造公差をルーズにすることができる。
【0101】
更に、表11に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0102】
図11に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も12素子構成であり、またそのカタジオプトリック素子群1103内の素子配列も図1に示したそれと同様である。即ち、球面ミラー素子1113とマンジャン素子1115の間には屈折力がほぼ0になるようレンズ素子1114が配置されており、またそのレンズ素子1114が球面ミラー素子1113とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。図示例におけるメニスカスレンズ素子1114は、ここでもその厚みがほぼ均一な板とされている。
【0103】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群1101、視野レンズ素子群1102及びカタジオプトリック素子群1103から構成されている。合焦レンズ素子群1101はレンズ素子1104〜1111から構成されており、この合焦レンズ素子群1101によって中間像1117が生成されている。中間像1117が生成される位置はその先にある視野レンズ素子1112の視野内で、更にその先にあるそのカタジオプトリック素子群1103内の球面ミラー素子1113の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群1103はこの球面ミラー素子1113とマンジャン素子1115の間にレンズ素子1114を配置した三素子配列型の構成であり、レンズ素子1114は三重経路で使用されるように配置されている。更に、そのレンズ素子1114は球面ミラー素子1113とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。
【0104】
表12に、図11に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表12】
【0105】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群1101は入射光を合焦させて視野レンズ素子群1102の視野内に中間像1117を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1103はその中間像1117から採光した光を焦点1116に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1103は標本による反射光から中間像1117を生成し、合焦レンズ素子群1101は視野レンズ素子群1102の視野内にある中間像1117から採光して出射光をもたらす。また、開口絞り1118の位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0106】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約1.0mm、最大素子直径は37mmとなる。本対物系は空気中で約0.97という高いNAを実施できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0107】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群1103を用いているため、その公差を割合にルーズにすることができる。例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群1101では最高約0.38波長、視野レンズ素子群1102では約0.32波長、カタジオプトリック素子群1103では最高約0.41波長となるので、製造公差をルーズにすることができる。
【0108】
更に、表12に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0109】
図12に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も12素子構成であり、またそのカタジオプトリック素子群1203内の素子配列も図1に示したそれと同様である。即ち、球面ミラー素子1213とマンジャン素子1215の間には屈折力がほぼ0になるようにレンズ素子1214が配置されており、またそのレンズ素子1214が球面ミラー素子1213とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。図示例におけるメニスカスレンズ素子1214は、ここでもその厚みがほぼ均一な板とされている。更に、図11に示した対物系に比べると、本対物系では、その合焦レンズ素子群1201が長く、カタジオプトリック素子群1203が細くなっている。
【0110】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群1201、視野レンズ素子群1202及びカタジオプトリック素子群1203から構成されている。合焦レンズ素子群1201はレンズ素子1204〜1211から構成されており、この合焦レンズ素子群1201によって中間像1217が生成されている。中間像1217が生成される位置はその先にある視野レンズ素子1212の視野内で、カタジオプトリック素子群1203内の球面ミラー素子1213の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群1203はこの球面ミラー素子1213とマンジャン素子1215の間にレンズ素子1214を配置した三素子配列型の構成であり、そのレンズ素子1214は三重経路で使用されるように配置されている。更に、そのレンズ素子1214は球面ミラー素子1214とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。
【0111】
表13に、図12に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表13】
【0112】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群1201は入射光を合焦させて視野レンズ素子群1202の視野内に中間像1217を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1203はその中間像1217から採光した光を焦点1216に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1203は標本による反射光から中間像1217を生成し、合焦レンズ素子群1201は視野レンズ素子群1202の視野内にある中間像1217から採光して出射光をもたらす。また、開口絞り1218の位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0113】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約1.0mm、最大素子直径は28mmとなる。このように図11に示した対物系に比べ素子直径が細いのは、一つには合焦レンズ素子群1201が合焦レンズ素子群1101より長いからである。また、このように小型であることは、対物系の特性としてはひときわ有益なことである。そして、本対物系は空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0114】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群1203を用いているため、その公差を割合ルーズにすることができる。例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群1201では最高約0.40波長、視野レンズ素子群1202では約0.31波長、カタジオプトリック素子群1203では最高約0.47波長となるので、製造公差をルーズにすることができる。
【0115】
更に、表13に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0116】
以上説明した本発明の対物系は、様々な用途乃至環境で使用することができる。例えばリソグラフィ、顕微鏡、生物学的検査、医学研究等である。
【0117】
更に、本発明についてその特定の実施形態に基づき説明を行ったが、これは本発明の技術的範囲に何か要旨限定を加えることを目的とした説明ではなく、むしろ、本発明の実施形態を様々に記すことによって標本撮像用の超高NA対物系としての本発明の構成及び効果に関する記載を補強することを目的としたものである。従って、本発明を説明するのに使用した種々の実施形態に対し、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で様々に修正を施すこともできるものと解されたい。本願は、本発明の原理におおよそ従う種々の変形、用途、応用等をくまなく包含することを狙った出願であり、例えば本発明が属する技術範囲にて既に知られている或いは常用されている種類の変形を本願記載の構成に施したものも、本発明の技術的範囲に属するものとする。
【技術分野】
【0001】
本願は、米国暫定特許出願第60/449326号(原題:High Performance, Low Cost Catadioptric Imaging System、出願日:2003年2月21日)に基づく利益を享受する係属中の米国特許出願第10/434374号(原題:High Performance Catadioptric Imaging System、発明者:David G. Shafer, et al.、出願日:2003年5月7日)の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、大まかには光学撮像の分野に関し、より具体的には顕微鏡撮像、検査、リソグラフィ等に使用されるカタジオプトリック(catadioptric)光学系に関する。
【背景技術】
【0003】
標本の表面上にある特徴的構成を検査、撮像等する能力を有する光学系は色々ある。例えば半導体ウェハ上又はフォトマスク上の欠陥を検査する光学系や、スライド上の生物標本を精査する光学系である。また、撮像に顕微鏡が用いられることもある。例えば生物学的検査、寸法検査、半導体検査等、狭小範囲や微細特徴部分の高解像度画像を得たい複雑な検査では、顕微鏡が使用されることが多い。
【0004】
顕微鏡を用いた撮像系は現在数多く市販されている。例えば本願出願人による特許出願や本願出願人に付与された特許に記載のものである。その中でも米国特許出願第10/434374号(以下「先出願1」)に記載の対物系は、小型の割りに優れた光学特性を呈するカタジオプトリック対物系であり、特に深紫外域内の割合に広いスペクトル域に亘り高いNA(numerical aperture:開口率)で、全体として良好に動作させることができる。ただ、深紫外域内では色収差補正がかなり難しくなる場合がある。
【0005】
また、本願出願人に付与された特許に係る特許文献1に記載の対物系は、これよりはやや大きめだが幾つかの点で望ましい光学特性を呈するカタジオプトリック対物系であり、使用するスペクトル域が十分狭ければそのスペクトル域全体で好適に収差補正できるので、広い視野を有する超高NA撮像系として構成することができる。
【0006】
これら、特許文献1に記載の大型超高NA対物系及び先出願1に記載の小型広帯域対物系は、何れも一種類のガラス素材から形成できる等、共通した有益な特質を有しているが、最終目的が大きく違うため使用するレンズの配列や使用形態が違っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6064517号明細書
【特許文献2】米国特許第6842298号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここに、例えば前出の各種検査に使用する場合、総体としてNAが高く視野サイズが広い対物系が有利であろう。一般に、NAとはその対物系から標本への照光及びその標本からその対物系への集光が可能な角度範囲のことをいい、視野サイズとは要求される光学特性が全て充足される領域(視野)の標本位置における直径のことをいう。即ち、広いサイズの視野全体に亘り超高NA撮像を成功裡且つ効率的に実行できる対物系が、ここで述べているようなハイエンドな用途には相応しい。具体的には、76°にも及ぶ広い角度で照明及び撮像できる程の超高NA対物系が求められる。しかしながら、先出願1や特許文献1に記載の構造で達成できるのは、こうした要求水準に比し低NA或いは狭視野サイズのものだけである。それでいて、全体として個々の光学素子の直径がやや大きすぎ、しかもその製造公差が非常にタイトになる(即ちレンズ制作を精密に実行しなければならない)。即ち、光学性能、サイズ、コスト等の面で従来の構造には限界があった。
【0009】
また、顕微鏡を使用した深紫外域での標本検査(前出)用に望まれているのは、NAが非常に高く且つ視野サイズが広い、という特性を有する光学系である。例えば、その動作波長が例えば193nm、213nm、244nm、257nm、266nm、325nm、355nm或いは更に長く可視域に属するものにて、そうした光学特性を実現することが嘱望されている。加えて、従来より小型で従来よりルーズな公差で製造できるものが望ましい。
【0010】
即ち、標準的な顕微鏡を用いた顕微検査に使用でき、前述した従来の撮像系に見られたような難点がない対物系及び撮像系を実現することが、求められている。更に、本願にて指摘するような難点を呈さない優れた機能性を有する光学検査システムを実現することも、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここに、本発明の一実施形態に係る対物系は、標本撮像用の超高NA対物系であって、レンズ素子を1個又は複数個含み入射光を合焦させて中間像を生成する合焦レンズ素子群と、中間像の近傍に1個又は複数個配置された視野レンズ素子と、中間像から採光し出射光をもたらすカタジオプトリック素子群と、を備える。そのカタジオプトリック素子群としては、マンジャン(Mangin)素子及びメニスカス(meniscus)レンズ素子各々を1個又は複数個含む素子配列を用いる。
【0012】
また、本発明の他の実施形態に係る対物系は、標本撮像用の超高NA対物系であって、入射光から中間像を生成する複数個のレンズ素子と、その視野内にある中間像の近傍に1個又は複数個配置された視野レンズ素子と、視野レンズ素子の視野内の中間像から採光して標本向けに低収差出射光をもたらすカタジオプトリック素子群と、を備える。中間像とカタジオプトリック素子群の間には、月型の視野レンズ素子を1個又は複数個配する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、そのカタジオプトリック素子群内のメニスカスレンズ素子の反りが球面ミラー素子の反りと逆方向である12素子対物系を示す図である。
【図2】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、そのカタジオプトリック素子群内のメニスカスレンズ素子の反りが球面ミラー素子の反りと同方向である12素子対物系を示す図である。
【図3】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、そのカタジオプトリック素子群内に負レンズ素子がある12素子対物系を示す図である。
【図4】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、カタジオプトリック素子群を2個有する9素子対物系を示す図である。
【図5】そのNAが0.97、視野サイズが約0.4mmで、2個のカタジオプトリック素子群で2素子瞳リレーを形成した9素子対物系を示す図である。
【図6】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、その球面ミラー素子が専用のミラー素子である10素子対物系を示す図である。
【図7】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mmで、その球面ミラー素子が鏡面付レンズ素子である10素子対物系を示す図である。
【図8】そのNAが0.97、視野サイズが約0.4mmで、固体カタジオプトリック素子を備え浸漬撮像を行う際に使用される14素子対物系を示す図である。
【図9】そのNAが0.97、視野サイズが約2.0mmで、そのカタジオプトリック素子群内に負レンズ素子がある12素子対物系を示す図である。
【図10】そのNAが0.97、視野サイズが約0.8mm、中心波長が213nmで、そのカタジオプトリック素子群内に負レンズ素子がある12素子対物系を示す図である。
【図11】そのNAが0.97、視野サイズが約1.0mmで、そのカタジオプトリック素子群内に負レンズ素子がある12素子対物系を示す図である。
【図12】そのNAが0.97、視野サイズが約1.0mmで、そのカタジオプトリック素子群内に負レンズ素子があり、全長が長くカタジオプトリック素子直径が小さな12素子対物系を示す図である。
【図13】一般的な構成を有する顕微鏡及び本発明に係る対物系のその顕微鏡における使用形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、別紙図面を参照しつつ本発明について詳細に説明する。本件技術分野において習熟を積んだ者(いわゆる当業者)であれば、この説明を参照することで、上述のものもそれ以外のものも含め、本発明の利点を好適に理解することができよう。
【0015】
なお、別紙図面は本発明の例示説明のためのものであり、要旨限定を旨とするものではない。
【0016】
まず、本発明に係る対物系は小型カタジオプトリック対物系であり、そのNAが非常に高く、視野サイズが割合に広く、小型で、製造公差もルーズでよく、顕微鏡を用いた半導体検査等の先進的用途に使用できるものである。更に、この小型超高NA対物系では各種暗視野方式及び明視野方式による撮像を実施できる。本対物系によれば、標本表面から引いた法線に対し76°もの広い角度範囲に亘り、照光及び集光することができる。
【0017】
本発明に係る対物系は様々な波長の(ビーム)光、例えば赤外域から深紫外域に至る様々な波長で使用でき、またその波長向けに最適化することができる。例えば、紫外域に属する波長である193nm、213nm、244nm、248nm、257nm、266nm等々のビーム光向けに、本発明に係る対物系を構成或いは最適化することができる。そのための調整はいわゆる当業者であれば容易に行える。使用波長が110〜200nmの帯域内である場合は、その帯域にて光透過特性が良好な弗化物ガラスを用いるとよい。
【0018】
本発明によれば、NAが0.97にも及ぶ程高く高品質画像が得られるカタジオプトリック光学系を、好適に実現することができる。NAがこのように高いということは、非常に広い入射角範囲で照明及び結像を行えるということである。次の式
【数1】
は、NAと標本への入射角との関係を表している。この式中のnは屈折率であり、空気の場合その値は1.000である。従って、空気中におけるNAと入射角の関係は、概略、次の表1の通りとなる。
【表1】
【0019】
また、本発明に係る対物系を構成するレンズ素子は互いに同一種類のガラス素材によって形成することができるが、別々の種類のガラス素材を用いて形成してもかまわない。紫外域〜深紫外域で使用するのであれば、光透過特性の点で有利な熔融シリカを用いるとよい。熔融シリカには、熱的安定性に優れ、研磨が割合に容易であるという利点もある。
【0020】
従来技術に対する本発明の相違点の一つは、カタジオプトリック素子群或いはその構成素子に改変を施した点にある。まず、先出願1に記載の小型広帯域対物系は、本発明に比べ低NA且つ狭視野サイズである。狭視野サイズということは、標本を許容範囲内の光学特性劣化で撮像できる面積が狭いということである。低NA及び狭視野サイズになるのは、合焦レンズ素子群にて生じる一次の軸上色収差(axial color)を補正するのにカタジオプトリック素子群全体での屈折力を負にしなければならないためである。これに対し、本発明では、狭帯域光を使用することとして軸上色収差を補正する必要をなくし、カタジオプトリック素子群内の屈折素子群全体での屈折力を0或いは正の値にすることができるようにしている。また、先出願1では、カタジオプトリック素子群を合焦レンズ素子群内に結像できるように視野レンズ素子群を構成することで、横色収差(lateral color)を補正している。本発明の視野レンズ素子群における結像動作もこれと類似した動作であるが、本発明では、視野レンズ素子における結像及び受光によって高次の球面収差(spherical aberration)やコマ収差(coma)等の単色収差(monochromatic aberration)を制御できるようにしている。
【0021】
また、特許文献1に記載の大型カタジオプトリック超高NA対物系は、光学素子の偏心に対する非常にタイトな製造公差を満たす必要があるため、製造自体が非常に困難である。即ち、特許文献1では急角度での入射を受け入れることによって高次球面収差及びコマ収差のレベルを許容水準以下に抑え、カタジオプトリック素子群内で生じる収差をそれによって補正するようにしているので、偏心公差をタイトに設定する必要がある。これに対し、本発明では、合焦レンズ素子群の偏心公差を小さくすることによってカタジオプトリック素子群内での高次収差を抑えるようにしているため、合焦レンズ素子群にて高次球面収差等を補正する必要がない。
【0022】
更に、高次収差を抑えるには、カタジオプトリック素子群としてそのマンジャン素子の個数が1個又は2個という単純な素子配列を用いるのでは不十分である。即ち、そうした単純な構成のカタジオプトリック素子群でも、高次の球面収差や高次のコマ収差のうち一方であれば十分に抑圧できるが、それらを同時に且つ十分に抑圧することはできない。
【0023】
本発明におけるカタジオプトリック素子群の基本思想は従来とは異なるものである。本願では幾つかの基本思想を提案するが、そのうちの一つは、球面ミラー素子、レンズ素子及びマンジャン素子を組み合わせた三素子型の構成を採り、そのレンズ素子が三重経路で使用されるように(即ちその素子を光が一往復半するように)カタジオプトリック素子群を構成し、カタジオプトリック素子群のマンジャン素子を標本例えばウェハ側に寄せた配置で使用する、というものである。
【0024】
図1に本発明の一実施形態に係る対物系を示す。本対物系は合焦レンズ素子群101、視野レンズ素子群102及びカタジオプトリック素子群103から構成されている。合焦レンズ素子群101はレンズ素子104〜111から構成されており、図中左側から光(light energy)が入射するとこの合焦レンズ素子群101によって中間像117が生成される。中間像117が生成される位置は、合焦レンズ素子群101の先にある視野レンズ素子112の視野内で、視野レンズ素子112の先にあるカタジオプトリック素子群103内の球面ミラー素子113の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群103は、この球面ミラー素子113とマンジャン素子115との間にメニスカスレンズ素子114を配置し、そのメニスカスレンズ素子114を三重経路で使用するよう構成されている。メニスカスレンズ素子114の反りは球面ミラー素子113の反りとは逆方向である。
【0025】
表2に、図1に示した対物系のレンズ処方を示す。
【表2】
【0026】
いわゆる当業者であれば理解できるように、表2の最左列に記されている数字は図1の左端から順に面を数えたもの即ち面番号を表している。例えばレンズ素子104の面のうち図1に向かって左側の面はこの表では面1として表されており、右側の面は面2として表されている。面1の曲率半径は25.245mm、レンズ素子104の厚みは1.25mm、面2の曲率半径は7.348mm、面2とその次の面との間隔は2.0mmである。また、レンズ素子104を形成しているガラス素材は熔融シリカである。
【0027】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群101は入射光を合焦させて視野レンズ素子群102の視野内に中間像117を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群103はその中間像117から採光した光を焦点116に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、カタジオプトリック素子群103は標本による反射光から中間像117を生成し、合焦レンズ素子群101は視野レンズ素子群102の視野内にある中間像117から採光して出射光を生成する。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0028】
更に、表2によれば、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカである。熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできるが、その素材は本対物系の使用波長域全体に亘り光吸収率が低い素材である必要がある。また、単一素材により形成された超高NA対物系には、その素材が優れた光透過特性を呈する波長域内ならどの波長にも、中心波長を合わせる(再最適化する)ことができるという利点がある。本対物系のように熔融シリカを用いた場合、190nm〜赤外域に至る波長域にて良好な光透過特性が得られるので、その波長域内で中心波長を再最適化できる。例えばレーザ光を使用する場合、193nm、198.5nm、213nm、244nm、248nm、257nm、266nm、308nm、325nm、351nm、355nm、364nm等といった波長に再最適化できる。また、レンズ素子を形成するガラス素材として弗化カルシウムを使用する場合は、157nmで動作するエキシマレーザを本対物系と組み合わせて使用すればよい。再最適化には各種構成部材の調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。
【0029】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、その視野サイズが約0.8mm、最大素子直径が30mmになる。この最大素子直径は同じ波長域で従来使用されていたほとんどの対物系に比べてかなり小さいので、本対物系は、そのフランジ対物距離が約45mmの標準的な顕微鏡タレットに装着することができる。図13に、一般的な顕微鏡の構成を示す。この図の顕微鏡は対物系1301、フランジ1302及び顕微鏡タレット1303から構成されている。同図には標本1304も示されている。なお、図中の部材寸法比は概略であり正確なものではない。
【0030】
このように、図1及び表2に示した対物系は、空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差(polychromatic wavefront error)を約0.045波長未満にすることができる。また、三素子型のカタジオプトリック素子群103を用いているため、本対物系では、所望特性の実現と公差のルーズ化を両立させることができる。例えば、波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度(その素子群を構成する何れかの素子が10μm偏心したときに生じる波面収差)は、合焦レンズ素子群101では最高約0.36波長、視野レンズ素子群102では約0.32波長、カタジオプトリック素子群103では最高約0.4波長と低レベルであり、どの素子が10μm偏心しても波面収差が波長/2未満、場合によっては波長/3未満にもなるので、偏心に対する製造公差をルーズにすることができる。
【0031】
また、これはあらゆる光学系にいえることであるが、トレードオフの関係を利用し、例えば帯域幅、視野サイズ、NA、対物系サイズ等の特性のうち何れかを犠牲にして他の特性を向上させることが可能である。そのうちどの特性を優先して高めるかは、その対物系乃至光学系の用途に応じて決めればよい。例えばNAを低め或いは高める代わりに他の特性を最適化する場合、NAを低くする代わりに、製造公差を緩め、対物系の外径を小さくし、視野サイズ及び帯域幅を拡げ、或いは光学部品点数を減らす(但し特性は同レベルを保つ)こと等が可能である。逆に、視野サイズや帯域幅を犠牲にし対物系素子直径を僅かばかり大きくするのと引替に、光学素子を最適化してNAを高めることもできる。
【0032】
更に、本対物系は自動収差補正型である。即ち、何も光学部品を付加しなくても収差が補正され検査装置としての仕様が充足されるように構成されている。言い換えれば、何も部品を追加しなくても収差がほとんどない像を得ることができ、またそのほぼ完全な像を得るのに別途収差補正を施す必要もない。自動収差補正能力があるので、光学的検査計測をより簡便に行うことができ、また他の自動収差補正型撮像用光学系につないで使用することもできる。更に、別の撮像用光学系を用いて残存収差を補正し、それを通じて帯域幅や視野サイズ等を向上させて光学仕様をより高水準にすることもできる。
【0033】
また、本発明に係る対物系においては、様々な照明モード及び撮像モードを超高NAで実行することができる。実行できる照明・撮像モードとしては、明視野モード、各種暗視野モード等のモードがある。その他のモード、例えば共焦点、微分干渉コントラスト、偏光コントラスト等のモードも、本発明に係る対物系により実行することができる。
【0034】
明視野モードは顕微鏡システムにて広く用いられている。明視野モードの優れたところは得られる画像が鮮明であることである。本発明に係る対物系では、明視野モード下で対象物を照明し、その対象物上にある特徴部分のサイズを画像上で求め、それに本対物系の倍率を乗ずることにより、その特徴部分のサイズをかなり正確に知ることができる。従って、画像比較処理アルゴリズムと、本発明に係る対物系乃至光学系とを併用し、コンピュータによる物体検知分類処理を実施することもできる。更に、明視野モードで照明に使用する光源は通常は広帯域非コヒーレント光源であるが、照明用レーザ光源も使用することができる。即ち、照明系構成部品に少々修正を施せば、それを本発明に係る対物系と好適に併用できる。
【0035】
共焦点モードは光学切断解析に際し対象物上の特徴部分間の高低差を分解検知するのに使用される。即ち、特徴部分間の高さの違いはどの撮像モードでもうまく検知することができないものであるが、共焦点モードならば同じ対象物上にありその高さが違う複数の注目特徴部分を別々に撮像でき、それらの像の比較によって特徴部分同士の相対的な高さを知ることができる。共焦点モードも本発明に係る対物系にて実施できる。
【0036】
暗視野モードは対象物上の特徴部分を検知するのに用いられる。このモードは、対象物の表面のうち平坦な部分では光がほとんど散乱せず反射光が鏡面反射光になるのに対して、対象物の表面に突出等している特徴部分による反射光が散乱反射光になることを利用したモードである。この散乱反射光を受光できるよう検知器を配置することによって、平坦な部分を表す暗い背景の中に特徴部分からの散乱反射光による明るい部分が表示される画像を、得ることができる。即ち、暗視野モードを用い半導体ウエハ等の対象物を検査した場合、暗い背景の上に粒子、形状不正等、様々な特徴部分が表示された画像を得ることができる。この暗視野モードも本発明に係る対物系にて実施できる。更に、暗視野モードで得られる信号は対象物上の特徴部分にぶつかり散乱反射された光を捉えた信号であり、特徴部分が小さい割りにその拡がりが大きな信号になる。拡がりが大きいということは、その特徴部分の実サイズの割りに画像上で占める画素数が多くなるということであり、従って対象物の検査を高速で行うことが可能になる。更に、対象物上の繰り返しパターンによる反射光をフーリエフィルタリングで抑圧することにより、暗視野検査時に得られる検知信号の信号対雑音比を高めることができる。
【0037】
暗視野モードには様々な種類があり、種類によって照明方式や集光方式が異なっている。即ち、その対象物から収集した散乱反射光や回折光による画像の信号対雑音比が許容水準以上になるよう、暗視野モードの種類毎に照明方式や集光方式が工夫されている。また、リング暗視野、レーザ方向暗視野、ダブル暗視野、中央暗背景暗視野等、複数種類の暗視野モードで撮像できる光学系もある。本発明に係る対物系でも、そうした複数種類の暗視野モードで撮像を行うことができる。
【0038】
図1に示した対物系では、上述した様々な照明・撮像モードを何れも効率的に実行することができる。その際、相応の構成部品に若干の改変を施すことで、特性パラメタのうち何れかを改善させることもできる。何れにせよ、本発明に係る対物系によれば、上掲のどのモードによる撮像・検査でも、広い波長域に亘りまた高NA且つ広視野サイズで行うことができる。更に、本対物系は標準的な顕微鏡タレットに装着して動作させることができ、従来知られていた水準よりも高い撮像性能を実現できる。
【0039】
図2に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も12素子構成であるが、図1に示した対物系とはカタジオプトリック素子群内素子に違いがある。即ち、本対物系におけるカタジオプトリック素子群203は、球面ミラー素子213とマンジャン素子215の間にメニスカスレンズ素子214を配置した構成であり、その屈折力はほぼ0である。このメニスカスレンズ素子214は球面ミラー素子213と同じ方向に反った形状であり、図示の例ではその厚みがほぼ均一な板によって実現されている。
【0040】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群201、視野レンズ素子群202及びカタジオプトリック素子群203から構成されている。合焦レンズ素子群201はレンズ素子204〜211から構成されており、この合焦レンズ素子群201によって中間像217が生成されている。中間像217が生成される位置は、合焦レンズ素子群201の先にある視野レンズ素子212の視野内で、更にその視野レンズ素子212の先にあるカタジオプトリック素子群203内の球面ミラー素子213の頂点付近である。カタジオプトリック素子群203は三素子配列であり、この球面ミラー素子213と、マンジャン素子215との間にメニスカスレンズ素子214を配置し、そのメニスカスレンズ素子214を三重経路で使用するよう構成されている。このメニスカスレンズ素子214の反りは、球面ミラー素子213の反りと同じ方向である。
【0041】
表3に、図2に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表3】
【0042】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群201は入射光を合焦させることによって視野レンズ素子群202の視野内に中間像217を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群203はその中間像217から採光した光を焦点216に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、例えば暗視野モードではこれとは逆の経路を辿る。即ち、カタジオプトリック素子群203は標本による反射光を受光して中間像217を生成し、合焦レンズ素子群201は視野レンズ素子群202の視野内にある中間像217から採光して出射光を生成する。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0043】
また、本対物系を例えば355nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は28mmになる。この最大素子直径は、同じ波長域で従来使用されていた大抵の対物系に比べかなり小さいサイズである。このように小型であることは対物系の特性としてはとりわけ有益なことであり、そのサイズならフランジ対物距離が約45mmの標準的な顕微鏡タレットに装着することができる。このように、本対物系は、空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその波面収差を約0.039波長未満にすることができる。
【0044】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群203を用いているため、本対物系では、所望特性の実現と公差のルーズ化を両立させることができる。例えば、波長が355nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群201では最高約0.287波長、視野レンズ素子群202では約0.267波長、カタジオプトリック素子群203では最高0.246波長であるので、製造公差をルーズにしてよい。
【0045】
更に、表3に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、本対物系に対しては特性上の要求に応じて再最適化を施すことができる。最適に動作する波長を変更する処理即ち再最適化を施す際には、各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0046】
図3に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も12素子構成であるが、前述の各実施形態とはそのカタジオプトリック素子群内素子に違いがある。即ち、本対物系におけるカタジオプトリック素子群303は、球面ミラー素子313とマンジャン素子315の間に負レンズ素子314を配置した構成である。
【0047】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群301、視野レンズ素子群302及びカタジオプトリック素子群303から構成されている。合焦レンズ素子群301はレンズ素子304〜310から構成されており、この合焦レンズ素子群301によって中間像317が生成されている。中間像317が生成される位置は、合焦レンズ素子群301の先にある視野レンズ素子311及び312の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群303内の球面ミラー素子313の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群303は三素子配列であり、この球面ミラー素子313とマンジャン素子315との間に負レンズ素子314を配置し、その負レンズ素子314を三重経路で使用するよう構成されている。
【0048】
表4に、図3に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表4】
【0049】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群301は入射光を合焦させて視野レンズ素子群302の視野内に中間像317を生成し、マンジャンミラー素子配列たるカタジオプトリック素子群303はその中間像317から採光した光を焦点316に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、カタジオプトリック素子群303は標本による反射光から中間像317を生成し、合焦レンズ素子群301は視野レンズ素子群302の視野内にある中間像317から採光して出射光を生成する。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0050】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は26mmになる。この最大素子直径は同じ波長域で従来使用されていた大抵の対物系に比べかなり小さいサイズである。小型であることは対物系の特性としてはとりわけ有益なことであり、本対物系ほど小さければ例えばそのフランジ対物距離が約45mmの標準的な顕微鏡タレットに装着することができる。本対物系は、このように空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもの波面収差を約0.039波長未満にすることができる。
【0051】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群303を用いているため、本対物系では、合焦レンズ素子群301及び視野レンズ素子群302に課する公差をかなりルーズにすることができる。例えば、波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群301では最高約0.26波長、視野レンズ素子群302では約0.33波長であり、従って製造公差をルーズにすることができる。但し、同じ場合におけるカタジオプトリック素子群303の10μm素子偏心感度は最高約0.72波長であるので、本対物系におけるカタジオプトリック素子群303の偏心公差はややタイトに設定せざるを得ない。
【0052】
更に、表4に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0053】
図4に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系は、前述の実施形態と異なり9素子構成であり、そのカタジオプトリック素子群内素子に違いがあり、しかも2個のカタジオプトリック素子群402及び404を配列したダブルカタジオプトリックキャビティ型の構成になっている。一方のキャビティは他方のキャビティにおける高次収差の補正に使用されている。そうすることによって、合焦レンズ素子群401及び視野レンズ素子403の公差をかなりルーズにすることができる。
【0054】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群401、1個の視野レンズ素子403からなる視野レンズ素子群、並びに2個のカタジオプトリック素子群402及び404から構成されている。合焦レンズ素子群401はレンズ素子406〜408から構成されており、この合焦レンズ素子群401によって第1中間像415が生成されている。第1カタジオプトリック素子群402は、球面ミラー素子409と実質的に平坦な素子411との間にレンズ素子410を配置した三素子配列型の構成であり、この第1カタジオプトリック素子群402によって第2中間像416が生成されている。第2中間像416が生成される位置は第1カタジオプトリック素子群402の先にある視野レンズ素子403の視野内で、更にその先にある第2カタジオプトリック素子群404内の球面ミラー素子412の頂点又はその近傍である。この第2カタジオプトリック素子群404は、球面ミラー素子412とマンジャン素子413から構成される2素子配列型の構成である。なお、前掲の平坦素子411と第2カタジオプトリック素子群404内の球面ミラー素子412は同一素子によって実現することもできる。その素子の一方の鏡面を平坦素子411の鏡面として、他方の鏡面を球面ミラー素子412の鏡面として、それぞれ使用すればよい。その場合、視野レンズ素子403は素子411及び412を兼ねる単体素子の中央に孔を形成し、そのほぼ中央に入れればよい。本対物系には更に外部瞳405を設けることもできる。
【0055】
表5に、図4に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表5】
【0056】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群401は入射光を合焦させて第1中間像415を生成し、第1カタジオプトリック素子群402は第1中間像415から採光して視野レンズ素子403の視野内に第2中間像416を生成し、そして第2カタジオプトリック素子群404は第2中間像416から採光した光を焦点414に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たる第2カタジオプトリック素子群404は標本による反射光から第2中間像416を生成し、第1カタジオプトリック素子群402は視野レンズ素子403の視野内にある第2中間像416から採光して第1中間像415を生成し、そして合焦レンズ素子群401はその第1中間像415から採光して出射光を生成する。また、外部瞳405即ち開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0057】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は40mmになる。本対物系は、このように空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、またその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0058】
更に、ダブルカタジオプトリックキャビティ型の構成即ち2個のカタジオプトリック素子群402及び404を配列した構成を採っているため、公差を更にルーズにすることができる。例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群401では最高約0.61波長、第1カタジオプトリック素子群402では採光約0.54波長、視野レンズ素子403では約0.54波長、第2カタジオプトリック素子群404では最高約0.77波長となるので、製造公差をルーズにしてもかまわない。
【0059】
更に、表5に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0060】
図5に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も2個のカタジオプトリック素子群504及び505を配列したダブルカタジオプトリックキャビティ型の9素子構成であるが、前述の実施形態とは各カタジオプトリック素子群内における素子配列及びカタジオプトリック素子群同士の配列が異なる他、2素子瞳リレー型の構成である点で異なっている。即ち、一方のキャビティが他方のキャビティにおける高次収差の補正に使用されており、従って合焦レンズ素子群502及び視野レンズ素子群503の公差をかなりルーズにすることができる点で、図4に示した対物系と共通しているが、図4では2個のカタジオプトリック素子群の間に配置されていた視野レンズ素子を別の場所に動かし、より簡単に製造できるようにしている点で、図4に示した対物系とは相違している。
【0061】
具体的には、本対物系は瞳リレー素子群501、合焦レンズ素子群502、視野レンズ素子群503、並びに2個のカタジオプトリック素子群504及び505から構成されている。瞳リレー素子群501は外部瞳506をうまく形成できるようレンズ素子507及び509から構成されており、その内部ではレンズ素子507とレンズ素子509の間に第1中間像508が生成されている。その次段の合焦レンズ素子群502はレンズ素子510〜512から構成されており、この合焦レンズ素子群502によって第2中間像521が生成されている。第2中間像521が生成される位置は、合焦レンズ素子群502の先にある視野レンズ素子513の付近である。更にその先にある第1カタジオプトリック素子群504は、球面ミラー素子514と実質的に平坦なミラー素子516との間にレンズ素子515を配置した三素子配列型の構成であり、第2カタジオプトリック素子群505内の球面ミラー素子517の頂点付近に第3中間像520を生成する。第2カタジオプトリック素子群505は球面ミラー素子517とマンジャン素子518からなる2素子配列型の構成である。更に、球面ミラー素子517は前掲の平坦素子516と一体化することができる。即ち、その表裏に鏡面がある単一の素子として製造することができる。
【0062】
表6に、図5に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表6】
【0063】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、瞳リレー素子群501は外部瞳506の位置から入射し第1中間像508を生成した光を合焦レンズ素子群502にリレーし、合焦レンズ素子群502はその光を合焦させて視野レンズ素子513の近傍に第2中間像521を生成し、第1カタジオプトリック素子群504は第2中間像521から採光して第3中間像520を生成し、そして第2カタジオプトリック素子群505は第3中間像520から採光した光を標本519向けに出射する。また、標本519に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たる第2カタジオプトリック素子群505は標本519による反射光から第3中間像520を生成し、第1カタジオプトリック素子群504はこの第3中間像520から採光して視野レンズ素子群503内の視野レンズ素子513の近傍に第2中間像521を生成し、合焦レンズ素子群502はその第2中間像521から採光して瞳リレー素子群501への入射光を生成し、瞳リレー素子群501はその光から外部瞳506を生成する。また、外部瞳506即ち開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0064】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.4mm、最大素子直径は44mmになる。この最大素子直径は同じ波長域で従来使用されていた大抵の対物系に比べかなり小さい大きさである。小型であることは、対物系の特性としてはかなり有益なことである。本対物系は、このように空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0065】
また、こうしたダブルカタジオプトリック素子群配列を採ることで、公差を更にルーズにすることができる。例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、瞳リレー素子群501内素子や合焦レンズ素子群502内素子では最高約1.32波長、視野レンズ素子群503では最高約1.2波長、第1カタジオプトリック素子群504では最高約0.34波長、第2カタジオプトリック素子群505では最高約0.76波長であるので、製造公差をルーズにしても差し支えない。
【0066】
更に、表6に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0067】
図6に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系は10素子構成である。そのカタジオプトリック素子群603は、従来の超高NA対物系と同様2素子型の構成であるが、それを構成しているのは半球面ミラー素子612及びほぼ平坦なマンジャン素子613である。
【0068】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群601、視野レンズ素子群602及びカタジオプトリック素子群603から構成されている。合焦レンズ素子群601はレンズ素子604〜610から構成されており、この合焦レンズ素子群601によって中間像615が生成されている。中間像615が生成される位置はその先にある視野レンズ素子611の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群603内の球面ミラー素子612の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群603はこの球面ミラー素子612とマンジャン素子613からなる2素子配列型の構成である。
【0069】
表7に、図6に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表7】
【0070】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群601は入射光を合焦させて視野レンズ素子群602の視野内に中間像615を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群603はその中間像615から採光した光を標本614向けに出射する。また、標本614に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群603は標本614による反射光から中間像615を生成し、合焦レンズ素子群601は視野レンズ素子群602の視野にある中間像615から採光して出射光をもたらす。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0071】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は30mmになる。従って、本対物系は、約45mmのフランジ対物距離を有する標準的な顕微鏡タレット内に装着することができる。本対物系は、このように空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0072】
また、例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群601では最高約1.19波長、視野レンズ素子群602では約0.56波長、カタジオプトリック素子群603では最高約0.60波長となる。従って図1や図2に示した対物系に比べ幾点かの公差をタイトにせざるを得ないが、対物系自体の大きさは従来の超高NA対物系に比べ小型になっている。
【0073】
更に、表7に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0074】
図7に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系は10素子構成であり、そのカタジオプトリック素子群703は従来の超高NA対物系と同様2素子型の構成であるが、それを構成しているのは半球面マンジャン素子712及びほぼ平坦なマンジャン素子713である。
【0075】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群701、視野レンズ素子群702及びカタジオプトリック素子群703から構成されている。合焦レンズ素子群701はレンズ素子704〜710から構成されており、この合焦レンズ素子群701によって中間像715が生成されている。中間像715が生成される位置はその先にある視野レンズ素子711の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群703内の半球面マンジャン素子712の鏡面の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群703はこの半球面マンジャン素子712と平坦マンジャン素子713からなる2素子配列型の構成である。
【0076】
表8に、図7に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表8】
【0077】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群701は入射光を合焦させて視野レンズ素子群702の視野内に中間像715を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群703はその中間像715から採光した光を焦点714に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群703は標本による反射光から中間像715を生成し、合焦レンズ素子群701は視野レンズ素子群702の視野にある中間像715から採光して出射光をもたらす。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0078】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は32mmになる。従って、本対物系は、約45mmのフランジ対物距離を有する標準的な顕微鏡タレット内に装着することができる。本対物系は、このように空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.04波長未満にすることができる。
【0079】
また、例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群701では最高約1.2波長、視野レンズ素子群702では約0.55波長、カタジオプトリック素子群703では最高約0.52波長となる。従って図1や図2に示した対物系に比べ幾点かで公差をタイトにせざるを得ないが、対物系自体の大きさは従来の超高NA対物系に比べ小型になっている。
【0080】
更に、表8に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、図7に示した対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0081】
図8に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系は14素子構成であり、浸漬撮像方式にて0.97という超高NAを実現し、また浸漬型としては大きめな視野サイズが得られるように構成されている。
【0082】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群801、視野レンズ素子群802及びカタジオプトリック素子群803から構成されている。合焦レンズ素子群801はレンズ素子805〜815から構成されており、この合焦レンズ素子群801によって中間像821が生成されている。中間像821が生成される位置はその先にある視野レンズ素子816及び817の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群803内のマンジャン素子818の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群803内のマンジャン素子818は、単体のガラス片の表裏両面上に又はそのすぐそばに反射面を形成した単体型の素子である。即ち、マンジャン素子818は単一ガラス片の表面に沿うように2個のマンジャン反射面を形成した構造の固体マンジャン素子である。こうした固体マンジャン素子818をカタジオプトリック素子群803として使用しているため、好ましいことに、浸漬方式による超高NA撮像を行うことができる。
【0083】
表9に、図8に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表9】
【0084】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群801は入射光を合焦させて視野レンズ素子群802の視野内に中間像821を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群803はその中間像821から採光した光を標本819向けに出射する。また、標本819に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群803は標本819による反射光から中間像821を生成し、合焦レンズ素子群801は視野レンズ素子群802の視野にある中間像821から採光して出射光をもたらす。また、開口絞り804の位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0085】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.4mm、最大素子直径は30mmになる。小型であることは、対物系の特性としてはとりわけ有益なことである。そして、本対物系は、水中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.035波長未満にすることができる。
【0086】
また、例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群801では最高約0.215波長、視野レンズ素子群802では約0.25波長、カタジオプトリック素子群803では最高約0.30波長となる。従ってこれらについての公差を割合にルーズにすることができる。また、本対物系には外部瞳804があるので、そこに開口を配置してNAを制御することや、そこにフィルタを配置してフーリエフィルタリングを行うことや、それを利用して暗視野モードを実施することができる。
【0087】
更に、表9に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0088】
図9に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系は12素子構成であり、そのカタジオプトリック素子群903内の素子配列に違いがある。本対物系におけるカタジオプトリック素子群903内素子配列は、球面ミラー素子913とマンジャン素子915の間に屈折力が0になるようレンズ素子914を配置する、というものであり、またそのレンズ素子914は球面ミラー素子913とは逆方向に反る形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。この構成によって超高NAを実現する点は図1に示した実施形態と共通しているが、但し、各素子直径を大きくすることで視野サイズを拡げている点が異なっている。また、図示例におけるメニスカスレンズ素子914はその厚みがほぼ均一な板として形成されている。
【0089】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群901、視野レンズ素子群902及びカタジオプトリック素子群903から構成されている。合焦レンズ素子群901はレンズ素子904〜911から構成されており、この合焦レンズ素子群901によって中間像917が生成されている。中間像917が生成される位置はその先にある視野レンズ素子912の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群903内の球面ミラー素子913の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群903はこの球面ミラー素子913とマンジャン素子915の間にメニスカスレンズ素子914を配置した三素子配列型の構成であり、そのメニスカスレンズ素子914は三重経路で使用されるように配置されている。更に、そのレンズ素子914は、球面ミラー素子913とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。
【0090】
表10に、図9に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表10】
【0091】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群901は入射光を合焦させて視野レンズ素子群902の視野内に中間像917を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群903はその中間像917から採光した光を焦点916に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群903は標本による反射光から中間像917を生成し、合焦レンズ素子群901は視野レンズ素子群902の視野内にある中間像917から採光して出射光をもたらす。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0092】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約2.0mm、最大素子直径は104mmになる。本対物系は空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.055波長未満にすることができる。
【0093】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群903を用いているため、上掲の性能を実現できるだけでなくその公差を非常にルーズにすることができる。例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群901では最高0.40波長、視野レンズ素子群902では0.269波長、カタジオプトリック素子群903では最高0.34波長であるので、製造公差をルーズにしても差し支えない。
【0094】
更に、表10に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0095】
図10に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も12素子構成であり、またそのカタジオプトリック素子群1003内の素子配列も図1に示したそれと同様である。即ち、球面ミラー素子1013とマンジャン素子1015の間には屈折力がほぼ0になるようにレンズ素子1014が配置されており、またそのレンズ素子1014が球面ミラー素子1013とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。図示例におけるメニスカスレンズ素子1014は、ここでもその厚みがほぼ均一な板とされている。
【0096】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群1001、視野レンズ素子群1002及びカタジオプトリック素子群1003から構成されている。合焦レンズ素子群1001はレンズ素子1004〜1011から構成されており、この合焦レンズ素子群1001によって中間像1017が生成されている。中間像1017が生成される位置はその先にある視野レンズ素子1012の視野内で、更にその先にあるカタジオプトリック素子群1003内の球面ミラー素子1013の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群1003はこの球面ミラー素子1013とマンジャン素子1015の間にレンズ素子1014を配置した三素子配列型の構成であり、レンズ素子1014は三重経路で使用されるように配置されている。更に、そのレンズ素子1014は球面ミラー素子1013とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。
【0097】
表11に、図10に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表11】
【0098】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群1001は入射光を合焦させて視野レンズ素子群1002の視野内に中間像1017を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1003はその中間像1017から採光した光を焦点1016に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1003は標本による反射光から中間像1017を生成し、合焦レンズ素子群1001は視野レンズ素子群1002の視野内にある中間像1017から採光して出射光をもたらす。また、図示しない開口絞りの位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0099】
また、本対物系を例えば213nmの波長で使用した場合、視野サイズは約0.8mm、最大素子直径は31.5mmとなる。そのため、本対物系は、そのフランジ対物距離が約45mmである標準的な顕微鏡タレットに装着することができる。そして、本対物系は空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0100】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群1003を用いているため、その公差を全般的にルーズにすることができる。例えば波長が213nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群1001では最高約0.4469波長、視野レンズ素子群1002では約0.4387波長、カタジオプトリック素子群1003では最高約0.463波長となるので、製造公差をルーズにすることができる。
【0101】
更に、表11に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0102】
図11に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も12素子構成であり、またそのカタジオプトリック素子群1103内の素子配列も図1に示したそれと同様である。即ち、球面ミラー素子1113とマンジャン素子1115の間には屈折力がほぼ0になるようレンズ素子1114が配置されており、またそのレンズ素子1114が球面ミラー素子1113とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。図示例におけるメニスカスレンズ素子1114は、ここでもその厚みがほぼ均一な板とされている。
【0103】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群1101、視野レンズ素子群1102及びカタジオプトリック素子群1103から構成されている。合焦レンズ素子群1101はレンズ素子1104〜1111から構成されており、この合焦レンズ素子群1101によって中間像1117が生成されている。中間像1117が生成される位置はその先にある視野レンズ素子1112の視野内で、更にその先にあるそのカタジオプトリック素子群1103内の球面ミラー素子1113の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群1103はこの球面ミラー素子1113とマンジャン素子1115の間にレンズ素子1114を配置した三素子配列型の構成であり、レンズ素子1114は三重経路で使用されるように配置されている。更に、そのレンズ素子1114は球面ミラー素子1113とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。
【0104】
表12に、図11に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表12】
【0105】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群1101は入射光を合焦させて視野レンズ素子群1102の視野内に中間像1117を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1103はその中間像1117から採光した光を焦点1116に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1103は標本による反射光から中間像1117を生成し、合焦レンズ素子群1101は視野レンズ素子群1102の視野内にある中間像1117から採光して出射光をもたらす。また、開口絞り1118の位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0106】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約1.0mm、最大素子直径は37mmとなる。本対物系は空気中で約0.97という高いNAを実施できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0107】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群1103を用いているため、その公差を割合にルーズにすることができる。例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群1101では最高約0.38波長、視野レンズ素子群1102では約0.32波長、カタジオプトリック素子群1103では最高約0.41波長となるので、製造公差をルーズにすることができる。
【0108】
更に、表12に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0109】
図12に本発明の他の実施形態に係る対物系を示す。本対物系も12素子構成であり、またそのカタジオプトリック素子群1203内の素子配列も図1に示したそれと同様である。即ち、球面ミラー素子1213とマンジャン素子1215の間には屈折力がほぼ0になるようにレンズ素子1214が配置されており、またそのレンズ素子1214が球面ミラー素子1213とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。図示例におけるメニスカスレンズ素子1214は、ここでもその厚みがほぼ均一な板とされている。更に、図11に示した対物系に比べると、本対物系では、その合焦レンズ素子群1201が長く、カタジオプトリック素子群1203が細くなっている。
【0110】
具体的には、本発明は合焦レンズ素子群1201、視野レンズ素子群1202及びカタジオプトリック素子群1203から構成されている。合焦レンズ素子群1201はレンズ素子1204〜1211から構成されており、この合焦レンズ素子群1201によって中間像1217が生成されている。中間像1217が生成される位置はその先にある視野レンズ素子1212の視野内で、カタジオプトリック素子群1203内の球面ミラー素子1213の頂点又はその近傍である。カタジオプトリック素子群1203はこの球面ミラー素子1213とマンジャン素子1215の間にレンズ素子1214を配置した三素子配列型の構成であり、そのレンズ素子1214は三重経路で使用されるように配置されている。更に、そのレンズ素子1214は球面ミラー素子1214とは逆方向に反った形状のメニスカスレンズ素子として形成されている。
【0111】
表13に、図12に示した対物系についてのレンズ処方を示す。
【表13】
【0112】
本対物系の空気中におけるNAは、図示されている仕組みにより、約0.97近くに達し或いは更にそれを上回る値にもなる。即ち、合焦レンズ素子群1201は入射光を合焦させて視野レンズ素子群1202の視野内に中間像1217を生成し、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1203はその中間像1217から採光した光を焦点1216に置かれた図示しない標本に向け出射する。また、標本に発する逆方向の光路においては、マンジャンミラー配列たるカタジオプトリック素子群1203は標本による反射光から中間像1217を生成し、合焦レンズ素子群1201は視野レンズ素子群1202の視野内にある中間像1217から採光して出射光をもたらす。また、開口絞り1218の位置に開口かマスクを配置することで本対物系のNAを制限乃至修正することもできる。
【0113】
また、本対物系を例えば266nmの波長で使用した場合、視野サイズは約1.0mm、最大素子直径は28mmとなる。このように図11に示した対物系に比べ素子直径が細いのは、一つには合焦レンズ素子群1201が合焦レンズ素子群1101より長いからである。また、このように小型であることは、対物系の特性としてはひときわ有益なことである。そして、本対物系は空気中で約0.97という高いNAを実現できる超高NA対物系であり、しかもその多色波面収差を約0.05波長未満にすることができる。
【0114】
また、三素子型のカタジオプトリック素子群1203を用いているため、その公差を割合ルーズにすることができる。例えば波長が266nmで別途収差補正手段なしの場合の10μm素子偏心感度は、合焦レンズ素子群1201では最高約0.40波長、視野レンズ素子群1202では約0.31波長、カタジオプトリック素子群1203では最高約0.47波長となるので、製造公差をルーズにすることができる。
【0115】
更に、表13に示されているように、本対物系内のガラス部分に使用されている素材は一種類即ち熔融シリカであるが、図1の対物系に関する説明がここにも当てはまり、熔融シリカ以外の素材を使用して本対物系を形成することもできる。また、動作波長の再最適化の際には各種構成部材の微調整や交換等が必要になるが、いわゆる当業者であればこれは大概行えることである。更に、本対物系は図1に示した対物系と同様にして自動収差補正型とされている。そして、本対物系においても、図1に示した対物系と同じく超高NAで種々の照明モード及び撮像モードを使用することができる。
【0116】
以上説明した本発明の対物系は、様々な用途乃至環境で使用することができる。例えばリソグラフィ、顕微鏡、生物学的検査、医学研究等である。
【0117】
更に、本発明についてその特定の実施形態に基づき説明を行ったが、これは本発明の技術的範囲に何か要旨限定を加えることを目的とした説明ではなく、むしろ、本発明の実施形態を様々に記すことによって標本撮像用の超高NA対物系としての本発明の構成及び効果に関する記載を補強することを目的としたものである。従って、本発明を説明するのに使用した種々の実施形態に対し、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で様々に修正を施すこともできるものと解されたい。本願は、本発明の原理におおよそ従う種々の変形、用途、応用等をくまなく包含することを狙った出願であり、例えば本発明が属する技術範囲にて既に知られている或いは常用されている種類の変形を本願記載の構成に施したものも、本発明の技術的範囲に属するものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本撮像用の超高開口率対物系であって、
レンズ素子を1個又は複数個含み入射光を合焦させて中間像を生成する合焦レンズ素子群と、
中間像の近傍に配置された視野レンズ素子を1個又は複数個含む視野レンズ素子群と、
前記視野レンズ素子群と標本との間に配置され中間像から採光し出射光をもたらすカタジオプトリック素子群と、
を備え、カタジオプトリック素子群が、球面状反射面、有意の反りを示さない反射面を有する1個又は複数個のマンジャン素子、並びにメニスカスレンズ素子を有し、
そのメニスカスレンズ素子が、各マンジャン素子に直接接触せず、前記球面状反射面の球面曲率半径とは実質的に逆方向にメニスカス表面曲率半径を有するメニスカス表面を備えるよう配置されている、超高開口率対物系。
【請求項1】
標本撮像用の超高開口率対物系であって、
レンズ素子を1個又は複数個含み入射光を合焦させて中間像を生成する合焦レンズ素子群と、
中間像の近傍に配置された視野レンズ素子を1個又は複数個含む視野レンズ素子群と、
前記視野レンズ素子群と標本との間に配置され中間像から採光し出射光をもたらすカタジオプトリック素子群と、
を備え、カタジオプトリック素子群が、球面状反射面、有意の反りを示さない反射面を有する1個又は複数個のマンジャン素子、並びにメニスカスレンズ素子を有し、
そのメニスカスレンズ素子が、各マンジャン素子に直接接触せず、前記球面状反射面の球面曲率半径とは実質的に逆方向にメニスカス表面曲率半径を有するメニスカス表面を備えるよう配置されている、超高開口率対物系。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−198560(P2012−198560A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−123183(P2012−123183)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【分割の表示】特願2008−504264(P2008−504264)の分割
【原出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(500049141)ケーエルエー−テンカー コーポレイション (126)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【分割の表示】特願2008−504264(P2008−504264)の分割
【原出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(500049141)ケーエルエー−テンカー コーポレイション (126)
【Fターム(参考)】
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