説明

小球供給装置

【課題】ストックしている多数の小球を能率的に供給し、小型化を図った小球供給装置を提供する。
【解決手段】装置本体2に、回転支持部2b、円弧形状のケーシング2aを設け、環状の回転体6を、回転支持部の外周に装着して水平軸回りに回転自在とし、且つ回転体の外周面が前記ケーシングの内周面に摺動するように配置する。前記ケーシングの上部に小球進入路16を設け、回転支持部に小球供給路18を設ける。回転体に、特定数の小球Bの直径を合計した通路長さを有して前記特定数の小球を一列に収納する計数路22を設ける。ケーシングの上部にカップ形状の小球ストック部4を固定する。そして、回転体を、小球進入路及び小球供給路の一方のみに計数路が連通するように手動で回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直径3mm程度の小球を多数ストックするとともに、それら小球の中から所定数を取り出す小球供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機には、トランスアクスル内に組み込んだ変速機構への作動油圧の供給量を調整するとともに、油圧回路を切換えるためのコントロールバルブが配設されている。
このコントロールバルブの内部には、蜂の巣のように複雑に入り組んだ油路が形成されており、油路の所定位置にバルブなどの複数の油圧部品が配置されている。ここで、直径3mm程度のスチールボール(以下、小球と称する)を構成部材としているボールチェックバルブも、コントロールバルブの内部に複数配置されている。
【0003】
これらボールチェックバルブをコントロールバルブ内に配置する際に、小球を油路の所定位置にセットする作業が行なわれている。この作業を行なうときには、通常、作業員が、多数の小球をストックしているストック皿の中から必要とする数を取り出している。しかし、多数の小球の中から所定数の小球を取り出す作業は大変面倒であり、多くの手間と時間が費やされているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、空圧や油圧モータ等の動力を用いて所定数の小球を自動的に供給する装置を開発すれば、小球の取り出し作業の能率を改善することができる。しかし、上記のように動力を用いた装置は大型になりやすく、コントロールバルブの組立てスペースが狭くなるおそれがある。したがって、コントロールバルブの組立てスペースに影響を及ぼさない小型の小球供給装置の開発が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡便な操作で所定数の小球を能率的に供給することができるとともに、小型化を図ることで汎用性に優れた小球供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る小球供給装置は、多数の小球をストックするとともに、これら多数の小球の中から特定数を取り出す装置であって、装置本体に、水平方向に円筒状に延在する回転支持部と、この回転支持部の少なくとも上部外周を囲むように離間している円弧形状のケーシングとを設け、環状の回転体を、前記回転支持部の外周に装着して水平軸回りに回転自在とし、且つ当該回転体の外周面が前記ケーシングの内周面に摺動するように配置し、前記ケーシングの上部に、外周面及び内周面で開口して上下方向に延在する小球進入路を設け、前記回転支持部に、一端が外周上部で開口し、他端が外周下部で開口して小球供給口となる小球供給路を受け、前記回転体に、外周面及び内周面で開口し、前記特定数の前記小球の直径を合計した通路長さを有して前記特定数の前記小球を一列に収納する計数路を設け、前記ケーシングの上部に、漏斗形状とした底面の最下部に小球払出し穴を設け、当該小球払出し穴が前記ケーシングの前記外周面に設けた開口に連通するようにカップ形状の小球ストック部を固定するとともに、前記回転体を回転させることにより、前記小球進入路及び前記小球供給路の一方のみに前記計数路が連通するようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る小球供給装置によると、ケーシングに設けた小球進入路と回転体に設けた計数路とを連通させることで、小球ストック部にストックされている小球の特定数を計数路内で収納しておき、回転体の回転により計数路と回転支持部に設けた小球供給路とを連通させることで、計数路内の小球を小球供給路を通過させて小球供給口から供給することができるので、簡便な操作で特定数の小球を能率的に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の小球供給装置の1実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の小球供給装置は、トランスアクスルのコントロールバルブを組み付ける際に、ボールチェックバルブ用の直径3mm程度のスチールボール(以下、小球Bと称する)を特定数供給する装置である。図1は、特定数の小球Bを供給する直前を示す要部断面図、図2は、図1の装置の一部を上方から見た図、図3は、特定数の小球Bを供給している状態を示す要部断面図、図4は、小球Bを供給した直後の状態を示す要部断面図、図5は、図4の装置の一部を上方から見た図である。
【0008】
本実施形態の小球供給装置は、図1に示すように、装置本体2と、装置本体2のケーシング2aの上部に固定した小球ストック部4と、装置本体2に回転自在に連結されている回転体6と、回転体6の下部に固定されている回転レバー8と、回転体6の回転とともに移動する攪拌バー10とを備えている。
小球ストック部4は、漏斗形状に形成した底面4aの最下部に小球Bが通過する小球払出し穴12が形成されているカップ形状の部材であり、小球払出し穴12の下部に連通路14が連続して設けられている。この連通路14の内径は、小球Bの直径より僅かに大きな内径である。
【0009】
装置本体2の上部には円弧形状のケーシング2aが設けられており、このケーシング2aに、小球進入路16が上下方向に延在して設けられている。この小球進入路16の上端開口が前記連通路14の下端開口と連通している。小球進入路16の内径は、小球Bの直径より僅かに大きな内径である。
また、装置本体2には、ケーシング2aの内周面で囲まれた内側の領域に、水平方向に円筒状に延在する回転支持部2bが設けられている。この回転支持部2bには、小球供給路18が設けられている。小球供給路18は、上下方向に延在して上端が開口している第1供給路18aと、第1供給路18aの下端から斜め下方に延在して下端が開口している第2供給路18bとで構成されており、第2供給路18bの下端が小球供給口20である。
【0010】
回転体6は環状の部材であり、回転支持部2bの外周に装着されて水平軸P回りに回転し、ケーシング2aの内周面に摺動するように配置されている。この回転体6には、水平軸Pに直交する径方向に、両端が開口した計数路22を設けている。
この計数路22は、その内径が小球Bの直径より僅かに大きな内径に設定されているとともに、その計数路22の路長さは、一回の操作で小球供給口20から供給される予定の小球Bの数(例えば五個)に小球Bの直径を乗じた長さに設定されている。
【0011】
ここで、回転体6の重心位置は、計数路22を鉛直方向に延在させても、計数路22が小球進入路16側に傾いていくように回転体6が自動的に回転していく位置に設定されている。
そして、上記のように重心位置が設定されている回転体6が、図1のように初期位置で停止しているときには、固定体6の上部に固定した後退回転ストッパ24が、装置本体2の上部に当接して回転体6の後退回転を規制し、計数路22の上端開口と小球進入路16の下端開口とが連通するようになっている。
【0012】
また、回転体6の下部には前進回転ストッパ26が固定されており、図3に示すように、前進回転ストッパ26が装置本体2の下部に当接して回転体6の前進回転を規制するときには、計数路22の下端開口と小球供給路18の上端開口とが連通するようになっている。
回転レバー8は、前進回転ストッパ26と連結して小球供給路18の先端の小球供給口20の下方まで延在しており、この回転レバー8を下方に移動させることで回転体6が前進回転するようになっている。
【0013】
攪拌バー10は、一端が前進回転ストッパ26と連結し、他端が小球ストック部4の内部まで延在している長尺な棒状部材である。この攪拌バー10の先端部10aは、回転体6が初期位置で停止しているとき、或いは初期位置に戻ったときには、図2に示すように、小球ストック部4の底面4aに設けた小球払出し穴12の中心からオフセットした位置で停止している。また、回転体6が前進回転するときには、図5に示すように、小球払出し穴12の近くを前進移動し、小球払出し穴12の近くでストックされている小球Bを攪拌する。なお、図示していないが、回転体6が後退回転するときには、小球払出し穴12の近くを後退移動し、小球払出し穴12の近くでストックされている小球Bを攪拌する。
【0014】
次に、本実施形態の小球供給装置の使用手順について図1から図5を参照しながら説明する。
図1に示すように、計数路22内に特定数(例えば五個)の小球Bが収容されているとともに、計数路22に連通している小球進入路16にも小球Bが収容されている。そして、小球供給口20の下方に作業員の手が差し出されることで、その手の甲に回転レバー8が接触して回転レバー8が下側に押されていく。
【0015】
回転レバー8が下側に押されていくと、図3に示すように、前進回転ストッパ26が装置本体2の下部に当接するまで回転体6が前進回転していく。このとき、五個の小球Bを収容している計数路22の下端開口と小球供給路18の上端開口とが連通するので、計数路22内に収容されている五個の小球Bが、小球供給路18を通過して小球供給口20から外部から出て、作業員の手のひらに供給される。この際、前進回転ストッパ26に連結している攪拌バー10は、その先端部10aが小球払出し穴12から離れた位置まで移動する。
【0016】
次に、図4に示すように、作業員の手が回転レバー8から離れると、回転体6は自動的に後退回転していく。そして、後退回転ストッパ24が装置本体2の上部に当接するまで回転体6が後退回転していくと、計数路22の上端開口と小球進入路16の下端開口とが連通する。このとき、前進回転ストッパ26に連結している攪拌バー10は、その先端部10aが小球払出し穴12の近くまで移動し、小球払出し穴12の近くでストックされている小球Bを攪拌する。この攪拌バー10の先端部10aが小球Bを攪拌することで、小球払出し穴12の回りで互いに係合していた小球Bが小球払出し穴12内にスムーズに流れ落ちていく。そして、小球払出し穴12内に流れ落ちた小球Bは、小球進入路16を通過して計数路22内に少なくとも特定数(例えば五個)の小球Bが収容されていく。なお、図4では示していないが、計数路22に連通している小球進入路16にも小球Bが収容される。
このように、前述した図1から図4の動作を繰り返し行なうことで、小球ストック部4にストックされている多数の小球Bの中から特定数(五個)の小球Bを、何度も供給することができる。
【0017】
本実施形態では、以下の効果を奏する。
(a)ケーシング2aに設けた小球進入路16と回転体6に設けた計数路22とを連通させることで、小球ストック部4にストックされている小球Bの特定数を計数路22内で収容しておき、回転体6の回転により計数路22と小球供給路18とを連通させることで、小球供給口20から特定数の小球Bを供給することができるので、簡便な操作で特定数の小球を能率的に供給することができる(請求項1に対応)。
【0018】
(b)回転体6は、動力を必要とせずに手動で回転させるようにしているので、小型の小球供給装置となり、コントロールバルブの組立てスペースに影響を及ぼすおそれがない(請求項1に対応)。
(c)回転体6は、最初に静止した位置まで自動的に戻るような重心位置に設定されているので、さらに簡便な操作とすることができる(請求項2に対応)。
(d)作業員が回転レバー8を押すことにより回転体6を所定角度まで回転させることができるので、簡便な操作で作業員が特定数の小球Bを取り出すことができる(請求項3に対応)。
【0019】
(e)回転体6の回転とともに攪拌バー10の先端部10aが移動し、小球払出し穴12の近くでストックされている小球Bを攪拌するようにしているので、小球ストック部4内にストックされている小球Bを滞留させない(請求項4に対応)。
(f)攪拌バー10の先端部10aは、小球払出し穴12の中心位置に対してオフセットした位置に配置されているので、先端部10aが小球払出し穴12の近くを移動しても、小球払出し穴12に向かう小球Bの流れを妨げず、スムーズに小球払出し穴12に導いていくことができる(請求項5に対応)。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る小球供給装置の計数路に特定数の小球が収容されている状態を示す図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】移動体の移動により計数路と小球供給路とを連通させ、小球供給口から特定数の小球を供給している状態を示す図である。
【図4】移動体が自動的に元の位置に戻った状態を示す図である。
【図5】図4のV−V線矢視図である。
【符号の説明】
【0021】
2 装置本体
2a ケーシング
2b 回転支持部
4 小球ストック部
4a 小径ストック部の底面
6 回転体
8 回転レバー
10 攪拌バー
10a 攪拌バーの先端部
12 小球払出し穴
16 小球進入路
18 小球供給路
20 小球供給口
22 計数路
24 後退回転ストッパ
26 前進回転ストッパ
B 小球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の小球をストックするとともに、これら多数の小球の中から特定数を取り出す装置であって、
装置本体に、水平方向に円筒状に延在する回転支持部と、この回転支持部の少なくとも上部外周を囲むように離間している円弧形状のケーシングとを設け、
環状の回転体を、前記回転支持部の外周に装着して水平軸回りに回転自在とし、且つ当該回転体の外周面が前記ケーシングの内周面に摺動するように配置し、
前記ケーシングの上部に、外周面及び内周面で開口して上下方向に延在する小球進入路を設け、
前記回転支持部に、一端が外周上部で開口し、他端が外周下部で開口して小球供給口となる小球供給路を受け、
前記回転体に、外周面及び内周面で開口し、前記特定数の前記小球の直径を合計した通路長さを有して前記特定数の前記小球を一列に収納する計数路を設け、
前記ケーシングの上部に、漏斗形状とした底面の最下部に小球払出し穴を設け、当該小球払出し穴が前記ケーシングの前記外周面に設けた開口に連通するようにカップ形状の小球ストック部を固定するとともに、
前記回転体を回転させることにより、前記小球進入路及び前記小球供給路の一方のみに前記計数路が連通するようにしたことを特徴とする小球供給装置。
【請求項2】
前記回転体は、当該回転体が静止しているときには、前記計数路の上部位置となる外周面の開口と前記小球進入路の下部位置となる内周面の開口とが連通し、前記回転体を所定角度まで回転させると、前記計数路の下部位置となる内周面の開口と前記小球供給路の上部位置となる上部外周の開口とが連通するとともに、前記回転体の回転動作を解除すると、前記回転体が静止していた位置まで自動的に戻るように前記回転体の重心位置を設定したことを特徴とする請求項1記載の小球供給装置。
【請求項3】
前記回転体の下部に回転レバーを連結し、当該回転レバーを押すことにより前記回転体を所定角度まで回転させることを特徴とする請求項1又は2記載の小球供給装置。
【請求項4】
基端部が前記回転体に連結し、先端部が前記小球ストック部の前記小球払出し穴の近くまで延在している攪拌バーを設け、この攪拌バーの先端部は、前記回転体の回転とともに前記小球払出し穴の近くを移動し、前記小球払出し穴の近くでストックされている前記小球を攪拌することを特徴とする請求項1から3の何れかに1項に記載の小球供給装置。
【請求項5】
前記攪拌バーの先端部は、前記小球払出し穴の中心位置からオフセットした位置に延在していることを特徴とする請求項4記載の小球供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−131384(P2007−131384A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324778(P2005−324778)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】