説明

少なくとも1つのタイミング配信プロトコルにより第1のデータおよび第2のデータを別々に伝送することによってクロックを同期するための方法、ならびに関連するシステムおよびモジュール

データパケット網においてクライアント通信ノードN2のクライアントクロックCCをマスタクロックMCと同期するための方法。この方法は、i)マスタクロックMCのタイミング情報を表す第1のデータを時刻配信プロトコルによってソース通信ノードN1からクライアント通信ノードN2へ伝送するステップと、ii)タイミング情報と相互に関連する周波数基準を表す第2のデータを時刻配信プロトコルによって選択された通信ノードN3からクライアント通信ノードN2へ伝送するステップと、iii)クライアント通信ノードN2に伝送された第1のデータおよび第2のデータを識別して、識別された第1のデータおよび第2のデータによって表されるタイミング情報および/または周波数基準によってクライアントクロックCCをマスタクロックMCと同期するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データパケット網(またはパケット交換網(PSN))に関し、より詳細には、データパケット網におけるクロックの同期に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には知られるように、クライアント通信ノードに入ってくる、(厳密な)クライアントアプリケーションの中には、正常に動作するために、正確なクロック基準を必要とするものがある。これは特に、いくつかの移動体網のアプリケーション(例えば、基地局の同期に使用される)の場合である。
【0003】
この正確なクロック基準は、対象としているクライアント通信ノードに備えつけた正確で、高度に安定したクライアントクロックによって提供されることが可能である。しかし、通常このようなクライアントクロックは、非常に高価である。
【0004】
別の解決法は、例えば、IETF NTPV4(ネットワーク時刻プロトコル)およびIEEE 1588V2を参照とするものなどの時刻配信プロトコルによって、ソース通信ノードから(データパケット網に接続された)クライアント通信ノードへ、非常に正確なマスタクロックのタイミング情報を表わすデータを伝送することにある。上述の時刻配信プロトコルは、(低コストの)クライアントクロックをサーバ(またはマスタ)クロックと同期するために、タイミング情報を含んだ情報メッセージ(またはパケット)を定期的な間隔でサーバ(またはソース通信ノード)から1つまたは複数のクライアント通信ノードへ伝送するためのものである。実際には、情報メッセージは、サーバとクライアント(通信ノード)との間で交換される双方向(または「往復」)メッセージである。一般にクライアントは、その(低コストの)クロックをサーバクロックと正確に同期させるために、所与の期間の間、サーバから最小数の(適正適切な)情報メッセージ(またはパケット)を受信する必要がある。
【0005】
本明細書では、「低コストクロック」は、クロック安定性が低い(すなわち、フリーランモード時の急速な周波数ドリフトがある)および/またはパケットジッタをフィルタリングする能力が低いクロックを意味する。
【0006】
時刻配信の観点から、低コストの態様は、高価/有効な時刻クライアントクロックに比べて、ロックモードでクライアントクロックの時刻の性能が(特に精度に関して)低下することを意味する。クライアントクロックは、(所与の時刻精度目標に向けた収束時間を減少させるために)双方向の情報メッセージを交換する間、十分に安定していなければならないからである。
【0007】
さらに、マスタとクライアントとの間の通信パス(またはリンク)に障害が発生する場合、クライアントクロックは、同期トポロジを再構成するまで、フリーランモード(または、ホールドオーバ(holdover))に入る。この場合、低価格のクライアントクロックが安定性に欠けると、同期トポロジの再構成時間/遅延の間、時間精度に好ましくない影響を有する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、データパケット網における低コストのクライアントクロックの周波数同期(または同調)を改善すること、特に、クライアントクロックがフリーランモードに入るのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、データパケット網においてクライアント通信ノードのクライアントクロックをマスタクロックと同期するための、以下のステップ:
i)マスタクロックのタイミング情報を表す第1のデータを、時刻配信プロトコルによりソース通信ノードからクライアント通信ノードへ伝送するステップ、
ii)タイミング情報と相互に関連する周波数基準を表す第2のデータを、時刻配信プロトコルにより選択された通信ノードからクライアント通信ノードへ伝送するステップ、
iii)クライアント通信ノードへ伝送された第1のデータおよび/または第2のデータを識別して、これらの識別された第1のデータおよび第2のデータで表されるタイミング情報および/または周波数基準によってクライアントクロックをマスタクロックと同期するステップ、を含む方法を提供する。
【0010】
本発明による方法は、個々に検討される、または組み合わされるさらなる特徴を含むことができ、特に以下を含むことができる:
− ステップii)において、選択された通信ノード(第2のデータを伝送するために使用される)は、ソース通信ノードとは異なる場合がある。
− 変形形態では、ステップii)において、第2のデータを伝送するために選択した通信ノードとして、ソース通信(タイミング)ノードを使用することができる。
ステップi)およびii)では、ソース通信ノードが、データパケット網の2つの異なる通信パス(またはリンク)を介してそれぞれ第1のデータおよび第2のデータを伝送することができる。
ステップi)およびii)では、ソース通信ノードが、第1のデータに第1の識別子を、第2のデータに第2の識別子を付加することができ、ステップiii)では、クライアント通信ノードが、伝送された第1のデータおよび第2のデータをそれぞれの第1の識別子および第2の識別子から識別することができる。
変形形態では、ステップi)において、ソース通信ノードが、ソース通信ノードを示す第1の識別子、および第1のデータを伝送するために使用される通信パス(またはリンク)を示す第2の識別子を、これらの第1のデータに付加することができ、ステップii)では、ソース通信ノードが、ソース通信ノードを示す第1の識別子、および第2のデータを伝送するために使用される他の通信パス(またはリンク)を示す第3の識別子を、これらの第2のデータに付加することができ、ステップiii)では、クライアント通信ノードが、送信された第1のデータおよび第2のデータを、それらのそれぞれの第1の識別子、第2の識別子、および第3の識別子から識別することができる。
− ステップi)およびii)では、同じ時刻配信プロトコルによって、第1のデータおよび第2のデータを伝送することができる。
【0011】
また本発明は、データパケット網において、クライアント通信ノードのクライアントクロックをマスタクロックと同期するために:
− ソース通信ノードと関連付けられ、ソース通信ノードによって時刻配信プロトコルによりクライアント通信ノードに伝送されることになるマスタクロックのタイミング情報を表す第1のデータを生成するように定められた、第1のモジュール、
− 選択された通信ノードと関連付けられ、選択された通信ノードによって時刻配信プロトコルによりクライアント通信ノードに伝送されることになるタイミング情報と相互に関連する周波数基準を表す第2のデータを生成するように定められた、第2のモジュール、
− クライアント通信ノードと関連付けられ、伝送された第1のデータおよび第2のデータを識別して、これらが表すタイミング情報および周波数基準を提供し、このタイミング情報および/またはこの周波数基準によってクライアントクロックがマスタクロックと同期できるように定められた、第3のモジュールを含むシステムを提供する。
【0012】
本発明によるシステムは、個々に検討される、または組み合わされるさらなる特徴を含むことができ、特に以下を含むことができる:
− 第2のデータを伝送するために使用される選択された通信ノードは、ソース通信ノードとは異なる場合がある。
− 変形形態では、(第2のデータを伝送するために使用される)選択された通信ノードは、ソース通信ノードである場合がある。
ソース通信ノードは、第1のデータと第2のデータを、それぞれデータパケット網の2つの異なる通信パス(またはリンク)を介して送信するように定められることが可能である。
第1のモジュールは、第1の識別子を第1のデータに、第2の識別子を第2のデータに付加するように定められることが可能である。この場合、第3のモジュールは、送信された第1のデータおよび第2のデータを、そのそれぞれの第1の識別子および第2の識別子から識別するように定められることが可能である。
変形形態では、第1のモジュールは、ソース通信ノードを示す第1の識別子、および第1のデータを伝送するために使用される通信パス(またはリンク)を示す第2の識別子を、これらの第1のデータに付加するように定められることが可能であり、第2のモジュールは、選択された通信ノードを示すこの前述の第1の識別子、および第2のデータを伝送するために使用される他の通信パス(またはリンク)を示す第3の識別子を、これらの第2のデータに付加するように定められることが可能である。この場合、第3のモジュールは、送信された第1のデータおよび第2のデータをそのそれぞれの第1、第2、および第3の識別子から識別するように定められることが可能である。
【0013】
また本発明は、データパケット網に接続されたクライアント通信ノードに関連付けられるための、このクライアント通信ノードが、ソース通信ノードから時刻配信プロトコルによって、(マスタクロックのタイミング情報を表す)第1のデータを、および/または、選択された通信ノードから時刻配信プロトコルによって、(これらのタイミング情報に相互に関連する周波数基準を表す)第2のデータを受信するとき、これらの受信した第1のデータおよび第2のデータを識別して、これらが表すタイミング情報および周波数基準を提供し、クライアント通信ノードのクライアントクロックが、このタイミング情報および/またはこの周波数基準によってマスタクロックと同期できるように定められた、第3のモジュールを提供する。
【0014】
さらにこの第3のモジュールは、伝送された第1のデータおよび第2のデータを、これらにそれぞれ付加された第1の識別子および第2の識別子から識別するように、あるいは伝送された第1のデータおよび第2のデータを、第1のデータに付加されて、それぞれ第1のデータを伝送するために使用される第1の通信パス(またはリンク)に関連付けられたソース通信ノードを示す、第1の識別子および第2の識別子から、また第2のデータに付加されて、それぞれ選択された通信ノード、および第1のパス(またはリンク)とは異なり、第2のデータを伝送するために使用される第2の通信パス(またはリンク)を示す、第1の識別子および第3の識別子から識別するように、定められることが可能である。
【0015】
本発明は特に、少なくともIEEE 1588V2/UDP/IPおよびNTP/UDP/IPを含む群から選択される、「over IP」(Internet Protocol、インターネットプロトコル)時刻配信プロトコルによる第1のデータおよび/または第2のデータの伝送によく適合するが、これに限らない。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、および添付の図面を調べると明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】中間通信ノードを介して接続され、それぞれ本発明によるシステムの第1の実施形態例の相補的部分を装備された、ソース通信ノードおよびクライアント通信ノードを含むデータパケット網の一部を概略的に示す図である。
【図2】中間通信ノードを介して接続され、本発明によるシステムの第2の実施形態例の相補的部分を装備された、ソース通信ノード、補助通信ノード、およびクライアント通信ノードを含む、データパケット網の一部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面は、本発明を完全なものにするだけでなく、必要な場合はその定義に寄与する役目も果たすことができる。
【0019】
本発明は、データパケット網においてクライアント通信ノード(N2)のクライアントクロック(CC)をマスタクロック(MC)と同期するための方法および関連するシステム(S)を提供することを目的とする。
【0020】
次の説明では、単に例として、データパケット網(またはPSN)は、同期される基地局のような通信ノードを含む移動体網であると考える。しかし、本発明はこのタイプのデータパケット網に限定されない。実際には、本発明は、いかなるタイプのパケット網またはパケット交換網(PSN)にも関係する。
【0021】
上述のように、本発明は、通信ノードを含むデータパケット網において、クライアント通信ノード(N2)のクライアントクロックCCをマスタクロック(MC)と同期するための方法を提案する。
【0022】
ソース通信ノードN1と、クライアント通信ノードN2と、5つの中間通信ノードINi(i=1から5)とを含むデータパケット網の一部が、図1に示してある。例えば、クライアント通信ノードN2は、無線アクセス網の基地局である。
【0023】
クライアント通信ノードN2は、マスタクロックMCと(時刻)同期されなければならない(低コストの)クライアントクロックCCを備えている。
【0024】
図1および2に示す例では、マスタクロックMCは、ソース通信ノードN1の中に配置されている。しかし、これは必須ではない。実際には、マスタクロックMCは、ソース通信ノードN1に結合されたネットワーク機器に配置されている場合がある。
【0025】
例えば、ソース通信ノードN1は、同期情報のサーバである。
【0026】
本発明による方法は、3つの主要ステップを含む。
【0027】
第1の主要ステップ(i)は、マスタクロックMCのタイミング情報を表す第1のデータを、時刻配信プロトコルによってソース通信ノードN1から少なくとも1つのクライアント通信ノードN2へ伝送することにある。
【0028】
こうした第1のデータは、第1のパケット(またはメッセージ)MI1の中に伝送される。例えば、こうした第1のデータは、補助通信ノードN3によって提供される周波数基準と相互に関連するサーバクロックの基準フレームの中に、第1のデータが生成された時を示すタイムスタンプを含む。この周波数基準は、いかなるタイプであることも可能である。したがってこの周波数基準は、例えば、高い安定性を有するローカル発振器によって、または無線ナビゲーションシステム(GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)など)によって、作られることが可能である。
【0029】
次の説明では、単に例として、第1のパケット(またはメッセージ)MI1は、例えばIEEE 1588V2/UDP/IPまたはNTP/UDP/IPなど、IP時刻配信プロトコルによって伝送されると考える。しかし、本発明はこのタイプの時刻配信プロトコルに限定されない。実際には、本発明は、第1のパケット(またはメッセージ)MI1を伝送する(または配信する)ためのいかなるタイプの時刻配信プロトコルにも関係する。
【0030】
第1の主要ステップ(i)は、本発明によるシステムSの第1のモジュールM1によって実施されることが可能である。図1および2に示すように、この第1のモジュールM1は、ソース通信ノードN1の中に配置されることが可能である。しかし、これは必須ではない。実際には、第1のモジュールM1は、ソース通信ノードN1に連結または接続することができる。さらに一般的には、第1のモジュールM1は、ソース通信ノードN1に関連付けられる。
【0031】
この第1のモジュールM1は、選択された時刻配信プロトコルにより関連するソース通信ノードN1による1つまたは複数のクライアント通信ノードN2への第1のメッセージMI1に伝送される第1のデータを生成するように定められている。
【0032】
第1のモジュールM1がソース通信ノードN1の中に配置されている場合、これは少なくとも部分的に、ソフトウェアモジュールで作成されることが好ましい。しかし、第1のモジュールM1は、(1つもしくは複数の)電子回路またはハードウェアモジュール、あるいはハードウェアモジュールとソフトウェアモジュールの組合せで作成されることも可能である。ソフトウェアモジュールで作成される場合、メモリに格納されることが可能である。
【0033】
本発明による方法の第2の主要ステップ(ii)は、(本明細書では、補助通信ノードN3によって提供され、第1のデータによって表されるタイミング情報と相互に関連する)周波数基準を表す第2のデータを、時刻配信プロトコルにより選択された通信ノードからクライアント通信ノードN2へ伝送することにある。
【0034】
第1の主要ステップ(i)および第2の主要ステップ(ii)は、並行して、または連続して、実行されることが可能であるということに注意することが重要である。
【0035】
図1に示す実施形態の第1の例では、周波数基準を配信する選択された通信ノード(「同調ソース」とも呼ばれる)は、ソース通信ノードN1であり、図2に示す実施形態の第2の例では、周波数基準を配信するために選択された通信ノードは、補助通信ノードN3である。
【0036】
第2のデータは、第2のパケット(またはメッセージ)MI2の中に伝送される。例えば、こうした第2のデータは、関連する前述の識別子を埋め込んだ1588V2メッセージである。
【0037】
次の説明では、単に例として、第2のパケット(またはメッセージ)MI2は、第1のパケット(またはメッセージ)MI1を伝送するために使用されるものと同じIP時刻配信プロトコルによって伝送されると考える。しかし、これは必須ではない。実際には、第1のパケット(またはメッセージ)MI1および第2のパケット(またはメッセージ)MI2をそれぞれ伝送する(または配信する)ために、2つの異なる時刻配信プロトコルを使用することができる。
【0038】
第2の主要ステップ(ii)は、本発明によるシステムSの第2のモジュールM2によって実施されることが可能である。図1に示すように、この第2のモジュールM2は、ソース通信ノードN1の中に配置されることが可能である。しかし、これは必須ではない。実際には、図2に示すように、この第2のモジュールM2は、補助通信ノードN3の中に配置されることが可能である。
【0039】
この第2のモジュールM2は、選択された時刻配信プロトコルにより、1つまたは複数のクライアント通信ノードN2への第2のメッセージMI2の中に同調ソース(すなわち、ソース通信ノードN1または補助通信ノードN3)によって伝送される第2のデータを生成するように定められる。
【0040】
この第2のモジュールM2は、少なくとも部分的にソフトウェアモジュールで作成されることが好ましい。しかし、第2のモジュールは、(特にハードウェアの時刻スタンピングが必要とされるとき)、(1つもしくは複数の)電子回路またはハードウェアモジュール、あるいはハードウェアとソフトウェアモジュールの組合せで作成されることも可能である。ソフトウェアモジュールで作成される場合、メモリに格納されることが可能である。
【0041】
第1のモジュールM1および第2のモジュールM2がソース通信ノードN1に配置されているとき、これらは同じモジュール(または装置)の2つの部分である可能性があることに注意することが重要である。
【0042】
図1に示すように、ソース通信ノードN1が第1のメッセージMI1と第2のメッセージMI2の両方の伝送を担っているとき、ソース通信ノードN1が、第1の通信パス(またはリンク)P1で第1のデータを、第2の通信パス(またはリンク)P2で第2のデータを伝送することが有利である。
【0043】
本明細書では、「第1の通信パスP1および第2の通信パスP2」とは、少なくとも1つの中間ノードが異なる中間ノードINiの第1の群および第2の群からそれぞれ定義される2つの通信パス(またはリンク)を意味する。
【0044】
第1の(通信)パスP1と第2の(通信)パスP2は、できるだけ異なることが好ましく、最も好ましくはこれらが完全に異なるということに注意することが重要である。
【0045】
図2に示す第2の実施形態では、補助通信ノードN3およびソース通信ノードN1が空間的に離れており、したがってそれぞれ異なる中間ノードIN1およびIN4に接続されているので、第1の(通信)パスP1および第2の(通信)パスP2は異なる。
【0046】
本発明による方法の第3の主要ステップ(iii)は、クライアント通信ノードN2の中に伝送された第1のデータおよび/または第2のデータを識別し、これらの識別された第1のデータおよび第2のデータによって表されるタイミング情報および/または周波数基準によって、そのクライアントクロックCCをマスタクロックMCと同期することにある。
【0047】
そこで、第1のメッセージMI1および第2のメッセージMI2が、図1および2に示すように、それぞれ第1のパスP1および第2のパスP2をたどる場合、第1のパスP1または第2のパスP2で障害が発生しても、クライアント通信ノードN2は依然として第2のメッセージMI2または第1のメッセージMI1を受信する。第1のメッセージMI1の中に含まれている第1のデータは、第2のメッセージの中にMI2に含まれている第2のデータによって表される周波数基準と相互に関連するタイミング情報を表しており、障害が発生するパスがあっても、クライアント通信ノードN2は、そのクライアントクロックCCを同期するために必要とされるタイミング情報または周波数基準を自由に得ることができる。
【0048】
例えば、第1のパスP1に障害が発生する場合、タイミング情報を損失するにもかかわらず、クライアントクロックCCの安定性は保証される。この安定性は、同期トポロジの再構成のための(遅延)マージンをより大きくする。
【0049】
第2のパスP2に障害が発生する場合、同調ソースN1(図1)またはN3(図2)から来る周波数基準が失われる。それにもかかわらず、クライアントクロックCCは依然として時刻情報を取得し、したがってこの時刻情報からこの周波数基準の推定値を導き出すことができる。
【0050】
第3の主要ステップ(iii)は、本発明によるシステムSの第3のモジュールM3によって実施されることが可能である。図1および2に示すように、この第3のモジュールM3は、ソース通信ノードN1の中に配置されることが可能である。しかし、これは必須ではない。実際には、クライアント通信ノードN2に連結または接続することができる。さらに一般的には第3のモジュールM3は、クライアント通信ノードN2と関連付けられる。
【0051】
第3のモジュールM3は、その関連するクライアント通信ノードN2によって受信される第1のデータおよび第2のデータを識別し、これらが表すタイミング情報および周波数基準をクライアント通信ノードN2に提供するように定められる。
【0052】
この第3のモジュールM3は、少なくとも部分的に、ソフトウェアモジュールで作成されることが好ましい。しかしこれはまた、(1つもしくは複数の)電子回路またはハードウェアモジュール、あるいは(特にハードウェア操作が要求されるとき)ハードウェアモジュールとソフトウェアモジュールの組合せで作成されることも可能である。ソフトウェアモジュールで作成される場合、メモリに格納されることが可能である。
【0053】
クライアント通信ノードN2に受信された第1のデータおよび第2のデータの識別を容易にするために、識別子を利用することが有利であるということに注意することが重要である。
【0054】
たとえば、第1のステップ(i)では、(第1のモジュールM1は)第1のデータに特定の第1の識別子を付加することができ、第2のステップ(ii)では、(第2のモジュールM2は)第2のデータに特定の第2の識別子を付加することができる。この場合、クライアント通信ノードN2(より正確にはその関連する第3のモジュールM3)は、受信した第1のデータおよび第2のデータをそのそれぞれの第1の識別子および第2の識別子から識別する。
【0055】
クライアント通信ノードN2がいくつかのソース通信ノードN1から第1のメッセージMI1を、および/またはいくつかの同調ノードN1またはN3から第2のメッセージMI2を受信するとき、受信された第1のデータおよび第2のデータの識別を容易にするために、第1のステップ(i)では、(第1のモジュールM1が)やはり第1のデータにソース識別子を付加することができ、第2のステップ(ii)では、(第2のモジュールM2が)やはり第2のデータに(同調)ソース識別子を付加することができる。この場合、クライアント通信ノードN2(より正確にはその関連する第3のモジュールM3)は、受信した第1のデータおよび第2のデータを、そのそれぞれの第1および第2の識別子から、さらにそのそれぞれのソース識別子から識別する。ソース識別子は、例えばIPアドレスであることが可能である。
【0056】
変形形態では、(第1のモジュールM1は)その関連するソース通信ノードN1を示す第1の識別子、および第1のデータを伝送するためにこのソース通信ノードN1によって使用される第1のパスP1を示す第2の識別子を、これらの第1のデータに付加することができ、ステップii)では、(第2のモジュールM2は)同調ソース(または選択された通信ノード)N1またはN3を示す第1の識別子、および前記第2のデータを伝送するために使用される他のパスを示す第3の識別子を、前記第2のデータに同様に付加することができる。
【0057】
この場合、クライアント通信ノードN2(より正確にはその関連する第3のモジュールM3)は、受信した第1のデータおよび第2のデータを、そのそれぞれの第1、第2、および第3の識別子から識別する。第1の識別子(またはソース識別子)は、例えばIPアドレスであることが可能である。
【0058】
第1のメッセージMI1および第2のメッセージMI2は共に、ソースノードN1またはN3と少なくとも1つのクライアント通信ノードN2との間で交換される双方向メッセージである可能性があることに注意することも重要である。しかし変形形態では、第1のメッセージMI1は、ソース通信ノードN1とクライアント通信ノードN2との間で交換される双方向メッセージである可能性があるが、第2のメッセージMI2は、同調ソースN1またはN3から少なくとも1つのクライアント通信ノードN2へ伝送される1方向メッセージである可能性がある。
【0059】
クライアント通信ノードN2が、異なる同調ソースN1またはN3から発する第2のメッセージMI2を受信することができることに注意することも重要である。この場合、クライアントクロックCCまたは第3のモジュールM3は、例えばNTPメッセージ内の「Stratum」フィールドのような、少なくとも1つのソース品質基準により最良の同調ソースを選択するように定められることが可能である。
【0060】
本発明は、単に例として上述した方法、システム、および第3のモジュールの実施形態に限定されず、当業者により添付の特許請求の範囲の範囲内とみなされることが可能であるすべての代替的実施形態を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データパケット網においてクライアント通信ノード(N2)のクライアントクロック(CC)をマスタクロック(MC)と同期する方法であって、i)前記マスタクロック(MC)のタイミング情報を表す第1のデータを時刻配信プロトコルによってソース通信ノード(N1)から前記クライアント通信ノード(N2)へ伝送するステップと、ii)前記タイミング情報と相互に関連する周波数基準を表す第2のデータを時刻配信プロトコルによって選択された通信ノード(N1;N3)から前記クライアント通信ノード(N2)へ伝送するステップと、iii)前記クライアント通信ノード(N2)に前記伝送された第1のデータおよび/または第2のデータを識別して、前記識別された第1のデータおよび第2のデータによって表されるタイミング情報および/または周波数基準によって前記クライアントクロック(CC)を前記マスタクロック(MC)と同期するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
ステップii)において、前記第2のデータを伝送するために使用される前記選択された通信ノード(N3)が、前記ソース通信ノード(N1)とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップii)において、前記第2のデータを伝送するために前記選択された通信ノード(N1;N3)として前記ソース通信ノード(N1)を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップi)およびii)において、前記ソース通信ノード(N1)が、前記データパケット網の2つの異なる通信パスを介してそれぞれ前記第1のデータおよび前記第2のデータを伝送する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップi)およびii)において、前記ソース通信ノード(N1)が、前記第1のデータに第1の識別子を、前記第2のデータに第2に識別子を付加し、ステップiii)において、前記クライアント通信ノード(N2)が、前記伝送された第1のデータおよび第2のデータをこれらのそれぞれの第1の識別子および第2の識別子から識別する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップi)において、前記ソース通信ノード(N1)が前記ソース通信ノード(N1)を示す第1の識別子、および前記第1のデータを伝送するために使用される通信パスを示す第2の識別子を、前記第1のデータに付加し、ステップii)において、前記選択された通信ノード(N1;N3)が、前記選択された通信ノード(N1;N3)を示す第1の識別子、および前記第2のデータを伝送するために使用される他の通信パスを示す第3の識別子を、前記第2のデータに付加し、ステップiii)において、前記クライアント通信ノード(N2)が、前記伝送された第1のデータおよび第2のデータをこれらのそれぞれの第1、第2、および第3の識別子から識別する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ステップi)およびii)において、同じ時刻配信プロトコルによって第1のデータおよび第2のデータを伝送する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
データパケット網においてクライアント通信ノード(N2)のクライアントクロック(CC)をマスタクロック(MC)と同期するためのシステム(S)であって、i)ソース通信ノード(N1)と関連付けられ、前記ソース通信ノード(N1)によって時刻配信プロトコルにより前記クライアント通信ノード(N2)へ伝送されることになる前記マスタクロック(MC)のタイミング情報を表わす第1のデータを生成するように定められた、第1のモジュール(M1)と、ii)選択された通信ノード(N1;N3)に関連付けられ、前記選択された通信ノード(N1;N3)によって時刻配信プロトコルにより前記クライアント通信ノード(N2)へ伝送されることになる前記タイミング情報と相互に関連する周波数基準を表す第2のデータを生成するように定められた、第2のモジュール(M2)と、iii)前記クライアント通信ノード(N2)に関連付けられ、前記伝送された第1のデータおよび第2のデータを識別して、これらが表すタイミング情報および周波数基準を提供し、このタイミング情報および/またはこの周波数基準によって前記クライアントクロック(CC)が前記マスタクロック(MC)と同期できるように定められた、第3のモジュール(M3)とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
前記第2のデータを伝送するために使用される前記選択された通信ノード(N3)が、前記ソース通信ノード(N1)とは異なる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2のデータを伝送するために使用される前記選択された通信ノード(N1;N3)が、前記ソース通信ノード(N1)である、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記ソース通信ノード(N1)が、前記データパケット網の2つの異なる通信パスを介してそれぞれ前記第1のデータおよび前記第2のデータを伝送するように定められた、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のモジュール(M1)が、前記第1のデータに第1の識別子を、前記第2のデータに第2の識別子を付加するように定められ、前記第3のモジュール(M3)が、前記伝送された第1のデータおよび第2のデータをこれらのそれぞれの第1第2の識別子から識別するように定められた、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
i)前記第1のモジュール(M1)が、前記ソース通信ノード(N1)を示す第1の識別子、および前記第1のデータを伝送するために使用される通信パスを示す第2の識別子を、前記第1のデータに付加するように定められ、ii)前記第2のモジュール(M2)が、前記選択された通信ノード(N1;N3)を示す第1の識別子、および前記第2のデータを伝送するために使用される他の通信パスを示す第3の識別子を、前記第2のデータに付加するように定められ、iii)前記第3のモジュール(M3)が、前記伝送された第1のデータおよび第2のデータをそのそれぞれの第1、第2、および第3の識別子から識別するように定められた、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
データパケット網のクライアント通信ノード(N2)に関連付けられるよう意図された第3のモジュール(M3)であって、前記クライアント通信ノード(N2)が、ソース通信ノード(N1)から、時刻配信プロトコルによって、マスタクロック(MC)のタイミング情報を表す第1のデータを、および/または選択された通信ノード(N1;N3)から、時刻配信プロトコルによって、前記タイミング情報と相互に関連する、周波数基準を表す第2のデータを受信したとき、前記受信した第1のデータおよび第2のデータを識別してこれらが表すタイミング情報および周波数基準を提供して、前記クライアント通信ノード(N2)のクライアントクロック(CC)がこのタイミング情報および/またはこの周波数基準によって前記マスタクロック(MC)と同期できるように定められることを特徴とする、第3のモジュール。
【請求項15】
前記伝送された第1のデータおよび第2のデータをこれらにそれぞれ付加された第1の識別子および第2の識別子から識別するように定められた、請求項14に記載の第3のモジュール。
【請求項16】
前記第1のデータに付加され、前記第1のデータを伝送するために使用される第1の通信パスと関連付けられた前記ソース通信ノード(N1)をそれぞれ示す、第1の識別子および第2の識別子から、ならびに前記第2のデータに付加され、前記選択された通信ノード(N1;N3)および第1の通信パスとは異なり、前記第2のデータを伝送するために使用される第2の通信パスをそれぞれ示す第1の識別子および第3の識別子から、前記伝送された第1のデータおよび第2のデータを識別するように定められた、請求項14に記載の第3のモジュール。
【請求項17】
少なくともIEEE 1588V2/UDP/IPおよびNTP/UDP/IPを含む群から選択された「over IP」時刻配信プロトコルにより第1のデータおよび/または第2のデータを伝送するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法および請求項8から13のいずれか一項に記載のシステム(S)の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−520591(P2012−520591A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553457(P2011−553457)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053118
【国際公開番号】WO2010/103073
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)
【Fターム(参考)】