説明

少なくとも1つのプラスチック構成要素と接触接続を形成する少なくとも1つの金属部分を有する装置

本発明は少なくとも1つのプラスチック構成要素と接触接続を形成する少なくとも1つの金属部分を有する装置に関している。ここでは前記金属部分(2;23,24,32,37,45,47)が電気めっきされたアルミニウム表面層(13;30,31,34,40,43,46)を有するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのプラスチック構成要素と接触接続を形成する少なくとも1つの金属部分を有する装置に関している。
【0002】
従来技術
冒頭に述べたような形式の装置は公知である。特に自動車産業においてはこの種の装置は通常に用いられている。そこでは例えばパンチングスクラップが電気的なコンタクトのためにプラスチック構成要素内に埋め込まれるか、またはプラスチック構成要素上に固定され、そのような金属部分(パンチングスクラップ)とプラスチック構成要素の間で接触接続が生じる。プラスチック構成要素の成形加工によって金属部分の配置位置が一義的に確定されるかないしは設定され、それによって例えばプラスチック構成要素における金属部分の取り付けが簡単化される。接触接続の領域では金属部分の腐食が生じる可能性があり、この腐食は電解質作用のもとで接触接続領域においてプラスチック構成要素を攻撃し、腐食や外れないしは破壊を引き起こす。このことは接触接続機能に支障をきたし、金属部分をプラスチック構成要素から外れさせる。特にそれが別の構成部材との固定のために用いられている金属部分であるような場合、例えばプラスチック構成要素内で例えば被覆によって統合されているナットなどでは、この種のはがれは許容されない。
【0003】
DE 101 48 120 A1明細書からは、例えば金属性のシステム支持体に配設された半導体チップを有する電子光製部品が開示されており、ここでは金属性のシステム支持体並びに半導体チップが少なくとも部分的にプラスチック構成要素を形成しているプラスチックプレス質量体に埋め込まれている。
【0004】
発明の開示
本発明では、金属部分が電気めっきされたアルミニウム表面層を有している。ここでは金属部分とプラスチック構成要素の間で接触接続が生じ、それに応じてプラスチック構成要素とアルミニウム表面層の間で接触接続が形成される。金属部分ないしアルミニウム表面層の腐食の際に生じるアルカリ液は最大でpH値10に達し、それによってプラスチック構成要素における脱落現象は何も引き起こされない。それにより金属部分とプラスチック構成要素間の所望の接触接続が簡単な形式で湿気のもとでもあるいは電解質作用のもとでも永続的に保証される。金属部分の全表面に金属めっきされたアルミニウム表面層は有利にはドラムめっき(Trommelgalbanisierung)、フレームめっき(Gestellgalvanisierung)、又はバンドめっき(Bandgalvanisierung)によって被着されたアルミニウム表面層である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1a】本発明による装置の第1実施例を示した図
【図1b】本発明による装置の第1実施例を示した図
【図2】本発明による第2実施例を示した図
【図3】本発明による第3実施例を示した図
【0006】
発明を実施するための形態
有利には前記金属部分は純金属部分かまたは合金金属部分である。これらの金属部分は、電気的なコンタクト形成に用いられる要素か又は例えば冷却体若しくは機械的な固定手段を形成し得る。電気めっきによって被着されたアルミニウム表面層は自己不動態化表面を含み、これはさらに良好な接着、被着またはアルミニウムボンディング可能である。このことは特に導電部材としての金属部分の使用に関して有利となる。金属部分が冷却体を形成するならば、慣例的に用いられる接着層の熱抵抗に対するアルミニウム表面層の熱抵抗は通常は無視できる程度である。その上さらにアルミニウム表面層を備えた金属部分の良好な熱伝導は、チップ、特に半導体チップの直付けを許容する。アルミニウム表面層のめっき被着によって金属部分は種々異なる形態を有していてもよい。その際全表面は、前述したような電気めっき手法によって簡単な形式でアルミニウム表面層を備えることが可能になる。金属部分においてワイヤボンディング可能な、若しくはプロセス保護された接着可能な表面の形成のための高コストな圧延めっきは省略可能である。さらに有利には、金属部分ないしはその(接触)接続可能な表面は、めっき過程終了後の付加的な洗浄過程なしでもクリーンに保たれる。
【0007】
特に有利には前記金属部分は、プレス鋳造部分若しくはスチール部分である。アルミニウム表面層のめっき被着は、安価な基材の使用を可能にし、それによって製造コストのコストダウンが図られる。さらに電気めっきされたアルミニウム表面層はその他にも高い延性と打たれ強さを兼ね備え、それによってこの金属部分はプラスチック構成要素内で機械的な高い負荷にも耐え得る。
【0008】
本発明の別の実施例によれば、前記プラスチック要素はプラスチックケーシングである。特に有利には前記プラスチックケーシングは、車両、特に自動車の制御機器やセンサのためのケーシングである。この種のプラスチックケーシングは、しばしば統合されたプラグコネクター装置を有し、この装置がケーシング内に存在する電子部品とのコンタクトを許可ないしは可能にしている。その場合にケーシング壁部を貫通する金属部分の電気的なコンタクトは、パンチングスクラップの形態で形成されてもよい。プラスチックケーシング内への湿気の浸入を回避するために、複数の金属部分ないしコンタクトがプラスチックケーシングのプレスマッチングによって維持される。本発明による、電気めっきされたアルミニウム表面層を備えた金属部分の構成は、既に前述したように、接触接続領域におけるプラスチックケーシングからのはがれが回避され、それによって密閉性が永続的に保証される。
【0009】
本発明別の有利な実施例によれば、前記金属部分は、プラスチック構成要素、特にプラスチックケーシングの挿入部分、接着部分、取り付け部分及び/又は被覆部分であり得る。例えば前記金属部分は、プラスチックケーシング内へ挿入若しくは接着される前述したような冷却体であってもよい。それに対してプラスチックケーシングないしプラスチック構成要素は有利には相応の収容凹部及び/又は収容突起部を有している。パンチングスクラップを形成する金属部分は、取り付けの際に例えばプラスチックによって被覆され、それによって固定的に結合される。接触接続面における腐食に基づくはがれは前述したように回避される。前記金属部分は、別個に若しくはパンチングスクラップの構成要素として前述した接続装置(これはケーシング壁部を通ってケーシングから引き出される)とのコンタクトが形可能である。また金属性の導体路構造部が接着部分として設けられていてもよい。さらにプラスチック構成要素のための被覆部材として設けられ得るさらなる金属部分が例えばねじ山を備えた差し込みナット若しくは固定用ボルトであってもよい。これらは特に有利には形状結合的にプラスチック構成要素ないしプラスチックケーシングにおける被覆によって得られる。本発明の有利な構成例によれば、接触接続領域のプラスチックのはがれ、及びプラスチック構成要素ないしプラスチックケーシングからの被覆部材のはがれが回避され、それによって被覆部材の機能、特にその機械的な機能が永続的に保証される。
【0010】
本発明のさらに有利な実施例によれば、複数の金属部分が設けられ、それらは電気めっきされたアルミニウム表面層を有している。有利にはプラスチックケーシング内に配設される全ての金属部分がその(全)表面においてそれぞれ電気めっきされたアルミニウム表面層を有している。それにより、2つの金属部分(これらは例えば相互に電気的コンタクトを形成し得る)の間の金属性接続箇所ないしコンタクト形成箇所において金属結合箇所の電気化学的腐食が回避される。それにより各金属部分の全表面が電気めっきされたアルミニウム表面層を有し、その上さらに、金属部分の表面における別の箇所での腐食の発生も回避される。
【0011】
本発明のさらに別の有利な実施例によれば、金属部分が異なる基材及び/又は同じ基材を有する。すなわち有利な装置においては、それぞれが1つの異なる材料を有する複数の金属部分、全てが同じ材料を有する複数の金属部分、一方が異なる基材を有し他方が同じ基材を有する複数の金属部分が設けられる。それにより例えばそれらのうちの一部が第1の基材を有し別の部分が第2の基材を有する金属部分を設けることも可能である。電気めっきされたアルミニウム表面層はによって腐食、特に金属結合箇所における腐食が避けられる。
【0012】
特に有利にはプラスチックケーシングがポリブチレンテレフタレート(PBT)若しくはポリエチレンテレフタラート(PET)として構成されている。金属部分の有利な構成によれば、いずれにせよこの種のものに頻繁に用いられるプラスチックケーシング用ないしはプラスチック構成要素用の材料が利用可能である。前述した熱可塑性プラスチックはアルミニウム表面層に基づいて湿気や電解質作用のもとでも攻撃されない。有利な実施形態によれば、プラスチックケーシングはグラスファイバーで強化されたプラスチックケーシング、特にグラスファイバーで強化されたPBTないしPETからなるプラスチックケーシングである。
【実施例】
【0013】
以下では本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1a及び図1bには金属部分2を備えた有利な装置1が示されている。この金属部分2は、被覆部分3としてプラスチック構成要素4内に組み込まれている。図1aにはこの装置1が透視図で描写されており、それに対して図1bには当該装置が断面図で示されている。金属部分2ない被覆部分3は、例えばはめ込み加工、鍛造加工、及び/又は深絞り加工されたブッシュないしねじ込みソケット5として構成されており、これは実質的に円筒状に形成されており、その内側面6にはねじ山7が設けられ、このねじ山に固定用のねじをねじ込むことが可能である。プラスチック構成要素4は、有利にはポリブチレンテレフタレート(PBT)若しくはポリエチレンテレフタラート(PET)からなり、同じく円筒状の突起部8を有し、該突起部8は前記ねじ込みソケット5の金属面9を取り囲んでいる。前記突起部8の自由端面10においては当該の突起部8がねじ込みソケット5と面一に終端しており、これによってねじ込みソケット5のねじ込み孔部11に自由にアクセスできる。
【0015】
ねじ込みソケット5ないし金属部分2の全表面12は、有利には電気めっきされたアルミニウム表面層13を有しているか又は電気メッキされたアルミニウム表面層13から形成されている。この金属部分2は前述したように被覆部材3として形成されているので、その外套面9がプラスチック構成要素4と接触接続している。そのため当該金属部分2の被覆によってそれらはプラスチック構成要素4内で保持されるようになる。一方では電気めっきされたアルミニウム表面層13によって金属部分2ないしはねじ込みソケット5の耐蝕性が向上すると共に、他方ではこの電気めっきされたアルミニウム表面層13によって、腐食の際の金属部分2のプラスチック構成要素4からのはがれやこのプラスチック自体の損傷も回避されるようになる。このアルミニウム表面層13に基づいて腐食時に生じるあくは、最大でもpH値10に達する。これによりプラスチック構成要素4においてプラスチック構成要素4からの金属部分のはがれを引き起こす接触接続領域の溶解現象は発生しない。有利には前記金属部分2は純金属部分か若しくは合金金属部分として形成される。別の有利な実施例によれば、前記金属部分2は良好なプレッシャーダイカスト金属部分15として形成される。
【0016】
図2には本発明による装置16の別のさらなる実施例が断面図で示されている。この装置16は第1のプラスチック構成要素17を有しており、該第1のプラスチック構成要素17は、プラスチックケーシング19のケーシング壁部18として形成されている。前記ケーシング壁部18はプラグソケット装置20を有しており、このプラグソケット装置20はケーシング壁部18に統合されている。前記プラグソケット装置20は実質的にケーシング壁部18から垂直方向に突出した突起部21を有しており、この突起部21内にプラグ収容部22が形成されている。前記突起部21は有利にはケーシング壁部18と一体的に構成されている。プラグソケット装置20の領域内には2つの金属部分23及び24が設けられており、これらはパンチングスクラップ25の部分として形成され、次のようにケーシング壁部18を貫通して差し込まれている。すなわちそれらがプラグソケット装置20のプラグ収容部22内に突出するように差し込まれている。それにより、このプラグソケット装置20ないしソケット収容部22内に差し込まれるプラグが当該のパンチングスクラップ25ないし金属部分23,24と接触接続し、プラスチックケーシング19内に存在している電子部品が電気的に接続可能となる。この場合これらのパンチングスクラップ25の金属部分23,24はケーシングへ基部18とのプレスフィッティングに基づいて広範な接触コンタクトを形成する。前述のねじ込みソケット5において説明したように、当該金属部分23,24の表面28,29も(これらは当該実施例のケースでは取り付け部材26,27として構成されている)電気めっきされたアルミニウム表面層30ないし31からなり、それらはここでもプラスチック構成要素17との接触接続を形成している。このアルミニウム表面層30,31によれば、プラスチック構成要素17が腐食によって脆弱となりそれによってプレス接続部分の密閉性がもはや保証できなくなるようなことが未然に回避される。
【0017】
さらにこの装置16はさらなる金属部分32を有しており、それの全表面33も電気めっきされたアルミニウム表面層34によって形成されている。この金属部分32で使用される基本材料に依存することなく、金属部分23と金属部分32の間ではアルミニウムボンディングワイや36を用いて簡単な手法でアルミニウムボンディング接続部分35を形成することが可能である。
【0018】
さらに前記装置16は、プラスチック構成要素41内に少なくともその一部が埋め込まれている冷却体42を有しており、この冷却体42も電気めっきされたアルミニウム表面層43を有し、さらにアルミニウムボンディングワイヤ44を用いて金属部分24ないしはパンチングスクラップ25と接続されている。アルミニウムボンディングワイヤ44を介して、当該冷却体42を形成している金属部分45に依存することなく熱が簡単に冷却体42に伝導するようになる。この場合、アルミニウム表面層43なしで冷却体42の永続的で確実な接触接続のために必要とされる通常用いられる接着層の熱抵抗に対するアルミニウム表面層43の熱抵抗は、既に前述したように無視できる程度である。
【0019】
図3には図1a及び図1bで説明した装置1のさらなる実施例が示されている。ここでは、プラスチック構成要素4(これは前記プラスチックケーシング19の構成要素でもあってもよい)に金属部分47を付加的に固定させるために、金属性の固定用ねじ37が、電気めっきされたアルミニウム表面層13を備えている金属部分47の孔部38を通ってねじ込みソケット5内にねじ込まれている。有利には固定用ねじ37の表面39も電気めっきされたアルミニウム表面層40を有している。ここにおいても相互に接触接続を形成する金属部分47,2,37の表面がそれぞれアルミニウム表面層46,13,40によって形成されるかないしはアルミニウム表面層を有しているため、金属の接触接続部分における腐食が効果的に回避される。
【0020】
前述した金属部分2,23,24,37,47へのアルミニウム表面層の被着は種々のめっき手法、例えばフレームめっき(Gestellgalvanisierung)、バンドめっき(Bandgalvanisierung)、ドラムめっき(Trommelgalvanisierung)を用いて簡単な形式で行なわれてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプラスチック構成要素と接触接続を形成する少なくとも1つの金属部分を有する装置において、
前記金属部分(2;23,24,32,37,45,47)が電気めっきされたアルミニウム表面層(13;30,31,34,40,43,46)を有していることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記金属部分(2;23,24,32,37,45,47)は、純金属部分かまたは合金金属部分である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記金属部分(2;23,24,32,37,45,47)は、プレス鋳造部分である、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記プラスチック構成要素(4;17)は、プラスチックケーシング(19)である、請求項1から3いずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記金属部分(2;23,24,32,37,45,47)は、プラスチック構成要素(4;17)、特にプラスチックケーシング(19)のための挿入、接着、取付け及び/又は被覆部材(3)である、
【請求項6】
前記金属部分(23,24,32,37,45,47)は、複数の、アルミニウム表面層(30,31,34,40,43,46)を備えている、請求項1から5いずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記金属部分(23,24,32,37,45,47)は、異なる基材及び/又は同じ基材を有している、請求項1から6いずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記金属部分(2;23,24,32,37,45,47)のアルミニウム表面層(13;30,31,34,40,43,46)は、フレームめっき層、バンドめっき層またはドラムめっき層である、請求項1から7いずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記プラスチックケーシング(19)は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)若しくはポリエチレンテレフタラート(PET)からなるケーシングである、請求項1から8いずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記プラスチックケーシング(19)は、グラスファイバーで強化されたプラスチックケーシングである、請求項1から9いずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記金属部分(2)は、ブッシュである、請求項1から10いずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記金属部分(2)は、ねじ込みソケット(5)である、請求項1から11いずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記金属部分(45)は、冷却体(42)である、請求項1から12いずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記金属部分(23,24)は、パンチングスクラップ(25)である、請求項1から13いずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記金属部分(2)は、はめ込み加工される、鍛造加工、及び/又は深絞り加工されたブッシュないしねじ込みソケット(5)である、請求項1から14いずれか1項記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−522853(P2010−522853A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500161(P2010−500161)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051335
【国際公開番号】WO2008/119578
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】