説明

少なくとも1つの端末の移動ネットワークにおけるハンドオーバをハンドリングするための方法、並びに、ルーティングモジュール、ホームノードB、ホームネットワーク、及び移動ネットワーク

【課題】ハンドオーバの管理に関して、従来の移動ネットワークよりも、ソースホームノードBが格納するパケットを少なくすることにより、ホームノードBの設計を単純化することができ、コストを低減する。
【解決手段】コアネットワークは、ルーティングモジュールを通じてソースホームノードB及びターゲットホームノードBにリンクされる。ルーティングモジュールにおいて、通知メッセージ214が受信され、ハンドオーバがターゲットホームノードBによって受理されたことが知らされる。コアネットワークから受信したパケットは、メモリ内に格納される(217)。ソースホームノードBからの転送リンク215が作成され、転送リンクにおいて受信された少なくとも幾つかのパケットがメモリ219内に格納される。メモリ内のパケットは、後に端末とターゲットホームノードBとの間に無線リンクが確立した際に、端末に送信される(224)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的には移動ネットワークに関し、より詳細には、ハンドオーバの管理に関する。
【背景技術】
【0002】
LTE(「ロングタームエボリューション」を表す)アーキテクチャは、移動ネットワークアーキテクチャ(「第3世代パートナーシッププロジェクト」を表す3GPP、リリース9)を規定する。
【0003】
図1は、このタイプのアーキテクチャによるネットワークを示している。このネットワークでは、制御プレーンとデータプレーンは、別々にハンドリングされる。このネットワークは、コアネットワーク部105及びホームネットワーク部、すなわちHAN(「ホームエリアネットワーク」を表す)106を備える。コアネットワーク105は、移動管理エンティティ102(MME)、サービングゲートウェイ103(S−GW)、及びパケットデータネットワークゲートウェイ104(PDN−GW)を含む。PDN−GW104は、インターネットネットワーク110にリンクされることができる。
【0004】
ホームネットワーク106は、それぞれのカバレッジエリアを有する複数のホームノードB101を含むことができる。これらの状況において、端末100(すなわちユーザ機器を表す「UE」)が1つのホームノードBのカバレッジエリアから別のホームノードBのカバレッジエリアに進むとき、ハンドオーバがハンドリングされる。ハンドオーバの前とハンドオーバの開始時において、UEは初めソースホームノードBによってハンドリングされ、ハンドオーバの終了時において、UEはターゲットホームノードBによってハンドリングされる。移行時間期間中、ソースホームノードBは、ハンドオーバをトリガした後に、UEとターゲットホームノードBとの間の無線リンクを確立するのに先だって、コアネットワーク及びUEから受信したパケットをターゲットホームノードBに送信できるようにするために、それらのパケットをバッファリングするべきである。
【0005】
ダウンリンクにおいて、ソースホームノードBは、以下のパケットを格納するべきである。
− 肯定応答モードにおいて、
・ハンドオーバの開始前にコアネットワークから受信されたパケットであるが肯定応答されていないパケット(ハンドオーバの開始前に端末に未だ送信されていないパケット、及び端末に既に送信されたが未だ肯定応答されていないパケットを意味する)、及び
・新着パケット(ハンドオーバの開始後にコアネットワークから受信されたパケットを意味する)、
− 非肯定応答モードにおいて、
・ハンドオーバの開始前にコアネットワークから受信されたがハンドオーバの開始前に端末に送信されていないパケット、及び
・新着パケット(ハンドオーバの開始後にコアネットワークから受信されたパケットを意味する)。
【0006】
アップリンクにおいて、ソースホームノードBは、以下のパケットを格納するべきである。
− 肯定応答モードにおいて、
・シーケンスから外れたパケット、及び
・端末から受信されたがハンドオーバの開始前にコアネットワークに送信されていないパケット。
【0007】
さらに、一般的に、ソースホームノードBにおいてコアネットワークから受信されるパケットは、無線リンクにおいて送信されるように暗号化される。この暗号化は、ホームノードBに特有の鍵に基づいて、ホームノードBレベルにおいて実行される。別のホームノードBによって実行される暗号化は、同一の鍵には基づかない。
【0008】
これらの状況において、ソースホームノードBは、コアネットワークから受信される幾つかのパケットを暗号化されたフォーマットでバッファリングし、送信不良の場合には、それらのパケットを暗号化されたフォーマットで端末に再送信することが期待される。ソースホームノードBは、幾つかのパケットをクリアなフォーマットで格納し、最後のホームノードBの場合には、それらをターゲットホームノードBに送信できることが期待される。実際、ソースホームノードBは、バッファリングされたパケットをクリアなフォーマットでターゲットホームノードBに送信し、ターゲットホームノードBがそれらのパケットを端末に送信するために、ターゲットホームノードBの暗号化鍵を用いてそれらのパケットを暗号化できるようにするべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの状況において、全てのホームノードBのための関連メモリサイズを静的に供給することが非常に困難となり得ることに留意することが重要である。
【0010】
これらのストレージ制約は、各ホームノードBに対して大きなメモリエリアを提供することを暗に意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、少なくとも1つの端末の移動ネットワークにおけるハンドオーバをハンドリングするための方法を提案する。
移動ネットワークは、コアネットワーク及びホームネットワークを有し、ホームネットワークは、端末の通信をハンドリングするソースホームノードB及びターゲットホームノードBに少なくともリンクされるルーティングモジュールを備える。
コアネットワークは、ルーティングモジュールを通じてソースホームノードB及びターゲットホームノードBにリンクされ、
当該方法は、ルーティングモジュールにおける以下のステップ:
− ハンドオーバがターゲットホームノードBによって受理されたことを通知する通知メッセージを受信するステップと、
− コアネットワークから受信されたパケットをメモリ内に格納するステップと、
− ソースホームノードBからの転送リンクを作成するステップと、
− 転送リンクにおいて受信されたパケットをメモリ内に格納するステップと
を含む。
ここで、転送リンクにおいて受信されたパケットは、一方において、コアネットワーク宛のパケットであり、他方において、端末宛であるがソースホームノードBによって未だ完全に送信されていないパケットであり、
メモリ内のパケットは、後に端末とターゲットホームノードBとの間に無線リンクが確立された際に、端末に送信される。
【0012】
本発明の1つの実施の形態によれば、移動ネットワークは、自身のロケーションに依拠してホームネットワーク内の複数のホームノードBによってハンドリングされることができる端末を備える。ホームネットワークに含まれる全てのホームノードBが、ルーティングモジュールを通じてコアネットワーク部と通信することができる。換言すれば、ルーティングモジュールは、ホームネットワークの全てのホームノードBとコアネットワークとの間の接点である。
【0013】
用語「ルーティングモジュール」は、本発明の1つの実施形態によるデータパケットルーティングを実行することができる、ホームネットワークとコアネットワークとの間に位置する任意のネットワークエンティティに対応する。このエンティティは、たとえばホームネットワークのホームノードBに位置することもできるし、ホームノードBの後方で且つコアネットワークの前方である任意の場所に位置することもできる。
【0014】
端末がホームノードBのカバレッジエリア内に位置しているとき、その端末はそのホームノードBによってハンドリングされることができる。端末をハンドリングするホームノードBは、ソースホームノードBと呼ばれる。端末のロケーションが変更されると、その端末をハンドリングするのに別のホームノードBがより適していると決定され得る。端末のロケーションの変更中に、その端末に提供されるサービスの連続性を保証するために、移動ネットワークはハンドオーバを管理する。ハンドオーバをトリガする事象にも、ハンドオーバ決定を行うネットワークエンティティにも何ら制限は加えられない。
【0015】
たとえば、ハンドオーバ決定は、ソースホームノードBと端末との間の無線リンクのサービス品質のレベルに基づいて、ソースホームノードBによって行うことができる。
【0016】
1つの実施の形態によれば、ハンドオーバをトリガするエンティティが何であれ、ルーティングモジュールは、ターゲットホームノードBが、ソースホームノードBによって以前にハンドリングされていた端末のハンドリングを受理することに同意したことを知らされる。このステップにおいて、ルーティングモジュールは、コアネットワークから受信されるパケット、及びソースホームノードBから受信されるパケットを、メモリへ格納する役割を担う。この目的のために、ルーティングモジュールは、ソースホームノードBからの転送リンクを作成し、ソースホームノードBが幾つかのパケットを送信することを可能にする。より正確には、これらの送信されるパケットは、ソースホームノードBによって端末に送信されることが期待されているが未だ完全に送信されていないパケットに対応する。「未だ完全に送信されていない」という用語は、ソースホームノードBがパケットを受信したがそれらを未だ送信していないか、或いは端末がそれらのパケットを正しく受信したか否かが定かでないことを意味する。
【0017】
たとえば、送信が肯定応答送信(パケットについて肯定応答が受信される場合に、そのパケットが正しいと見なされることを意味する)であり、ソースホームノードBが幾つかのパケットについて未だ肯定応答を受信していない場合、1つの実施の形態によれば、ソースホームノードBは、転送リンクが作成された際に、これらの肯定応答されていないパケットをルーティングモジュールに送信することができる。
【0018】
これらの特徴により、ルーティングモジュールは、ハンドオーバのトリガとハンドオーバの終了との間の移行時間期間(無線リンクがターゲットホームノードBと端末との間で正しく確立されていることを意味する)中に、幾つかのパケットを一時的にバッファリングすることができる。その結果、従来技術による移動ネットワークよりも、ソースホームノードBが格納するパケットを少なくすることができる。そして、ホームノードBの設計を単純化することができ、コストを低減することができる。
【0019】
たとえば、ルーティングモジュールは、ハンドオーバを知らされるとすぐに、コアネットワークから受信されたパケットをソースホームノードBに送信するのを停止する。ルーティングモジュールは、ターゲットホームノードBが最終的に暗号化されたフォーマットでそれらのパケットを端末に送信できるようになるまで、可能な限り迅速にそれらのパケットをバッファリングする。パケットはもはやソースホームノードBにおいては受信されないので、ソースホームノードBは、もはや新着パケットを格納することを期待されない。
【0020】
さらに、肯定応答モードに従って送信が行われる際には、ハンドオーバの場合であっても送信におけるパケット順を維持することが重要である。ハンドオーバが発生するとき、ターゲットホームノードBは、コアネットワークによってターゲットホームノードBに直接送信されたパケットよりも後に、ソースホームノードBによって送信された幾つかのパケットを受信する可能性があるが、コアネットワークから直接送信されたパケットは、ソースホームノードBから受信されたパケットの後に端末に送信される可能性がある。従来技術によれば、パケットシーケンス番号に従って正しい順序でパケットの送信を行うために、受信されたパケットの再順序付けをターゲットホームノードBが担当する。
【0021】
この機能は複雑になる可能性がある。本発明の特徴によって、そのような再順序付け機能をルーティングモジュールによって実行するのが容易になる。その結果、本発明の1つの実施形態に従って、ホームノードBのコストを低減することが可能になる。
【0022】
1つの実施の形態では、転送リンクの確立により、ソースホームノードBは、シーケンスから外れたパケットをアップリンクにおいてルーティングモジュールに送信することができる。その結果、ソースホームノードBは、この種のパケットを格納することをもはや期待されない。
【0023】
これらの特徴によれば、有利には、ルーティングモジュールレベルにおいて幾つかの機能が導入されていることに起因して、より安価なホームノードBを提供することが可能になる。複数のホームノードBをより安価にすることを可能にするために、そのようなルーティングモジュールをホームネットワークごとに提供することが非常に有意義である。
【0024】
そのようなメカニズムは、任意のタイプのネットワークデバイスにおいて容易に実装することができる。ルーティングモジュールは、ホームネットワーク内部の特定の装置としてもよいし、ホームネットワーク内部の1つのホームノードBと同じ場所に配置されてもよい。ルーティングモジュールは、1つのホームネットワークのためのパケットバッファ機能の集中化を担当する。この集中化によって、メモリの使用と、ハンドオーバ中の格納及び格納解除(de-storage)のトリガとを、相互的にすることが可能になる。これらの状況において、ルーティングモジュールレベルにおいて、ホームネットワークに適合するようなメモリサイズを供給することが可能である。
【0025】
そのようなルーティングモジュールは、ハンドオーバ中に、より良好なQoSを提供することができる。実際、そのような特徴によって、ソースホームノードBとターゲットホームノードBとの間で交換されるデータフローの数を低減することが可能になる。
【0026】
さらに、暗号化が行われる場合、ルーティングモジュール内部のこの集中化によって、復号/再暗号化プロセスの必要性を取り除くことが可能になる。これによってレイテンシが改善し、ハンドオーバ中のジッタが低減し、それによって、音声サービスのような高いQoS制約を有するサービスの場合に特にQoSが改善される。これは、それぞれが小さなカバレッジエリアを持つ複数のホームノードBを有するホームネットワークにおいて特に有意義となりえる。この種のトポロジでは、より多くの数のハンドオーバが発生する可能性があるため、ハンドオーバ中であってもQoSを維持することが重要である。
【0027】
ルーティングモジュールにおけるこのメカニズムの実施によって、ホームノードBをより安価にする事が可能になり、これは単一ホームネットワークにおけるホームノードBの大規模な配備に関して特に興味深い。
【0028】
1つの実施の形態では、転送リンクにおいて受信されたコアネットワーク宛のパケットは、メモリ内に格納されることなくコアネットワークに転送される。
【0029】
そのようなケースは、送信が肯定応答モードでない場合に有利に実行することができる。これらの状況において、コアネットワーク宛のパケットの種々の受信間で同期をハンドリングすることは要求されていない。
【0030】
1つの実施の形態では、転送リンクにおいて受信されたコアネットワーク宛のパケットは、メモリ内に格納され、
上記方法は、端末とターゲットホームノードBとの間に無線リンクが確立された後に、以下のステップ:
− 端末によってターゲットホームノードBを通じて送信されたコアネットワーク宛のパケットを受信するステップと、
− 転送リンクにおいて受信されたコアネットワーク宛のパケット、及び端末によってターゲットホームノードBを通じて送信されたコアネットワーク宛のパケットを、再順序付けするステップと、
− 再順序付けされたパケットをコアネットワークに送信するステップと
をさらに含む。
【0031】
これらの状況において、コアネットワークに向けたアップリンクの送信において同期を実行することができる。これらの特徴は、肯定応答モードのアップリンク送信の場合に有利に実行することができる。
【0032】
上記方法は、端末とターゲットホームノードBとの間に無線リンクが確立された後に、以下のステップ:、
− 転送リンクにおいて受信された端末宛のパケット、及びコアネットワークから受信されたパケットを、再順序付けするステップと、
− 再順序付けされたパケットを端末に送信するステップと
をさらに含むことができる。
【0033】
これらの状況において、端末に向けたダウンリンクの送信において同期を実行することができる。これらの特徴は、肯定応答モードのダウンリンク送信の場合に有利に実行することができる。
【0034】
上記方法は、端末とターゲットホームノードBとの間に無線リンクが確立された後に、以下のステップ:
− 一時ダウンリンクを作成するステップと、
− コアネットワークから受信された端末宛のパケットを当該端末に送信するステップと、
− ハンドオーバ完了を示すメッセージを受信するステップと、
− 一時ダウンリンクを解放するステップと
をさらに含むことができる。
【0035】
有利には、ルーティングモジュールレベルでバッファリングされたパケットを、端末との無線リンクが確立された直後、ネットワークレベルにおいてハンドオーバが完了する前に送信するために、一時リンクが作成される。ハンドオーバは、ターゲットホームノードBを通じてコアネットワークと端末との間でリンクが確立されたときに完了していると見なすことができる。次に、ルーティングモジュールとターゲットホームノードBとの間の一時リンクを解放することができる。
【0036】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の方法を実行するように構成されるルーティングモジュールを提案する。
【0037】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様によるルーティングモジュールを備えるホームノードBを提案する。
【0038】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様によるルーティングモジュールを備える移動ネットワークを提案する。
【0039】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の説明からより明らかになるであろう。この説明は、単に例示として与えられるものであり、添付の図面と共に読まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】上述したような従来技術による移動ネットワークのアーキテクチャを示す図である。
【図2A】本発明の1つの実施形態による、移動ネットワークを示す図である。
【図2B】本発明の1つの実施形態による、ハンドオーバをハンドリングするための方法によって実行される主要ステップを示す図である。
【図3】本発明の1つの実施形態を適用することができる移動ネットワークのアーキテクチャを詳細に示す図である。
【図4】複数のホーム発展型ノードB(HeNB)を含むホームネットワークを示す図である。
【図5】本発明の1つの実施形態に従って用いられる種々のタイプのベアラを示す図である。
【図6】本発明の1つの実施形態による、LTEアーキテクチャにおけるデータプレーンの様々なプロトコルスタックを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による、ホームノードBにおいて統合されるローカルデータルーティングのメカニズムを示す模式図である。
【図8】本発明の1つの実施形態による、ルーティングモジュールにおけるダウンリンクトンネルの使用を示す図である。
【図9】本発明の1つの実施形態による、ルーティングモジュールにおけるアップリンクトンネルの使用を示す図である。
【図10】本発明の1つの実施形態によるルーティングモジュールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下において、本発明をネットワークのLTEアーキテクチャへの一例示の適用において説明する。しかしながら、他のタイプのネットワークに同じ原理を適用することは容易である。
【0042】
図2Aは、本発明の1つの実施形態による移動ネットワークを示している。この移動ネットワークは、図1を参照して説明されたネットワークに対応する。しかし、それに加えて、1つの実施形態による本方法のステップを実行するために、ホームネットワーク106とコアネットワーク105との間にルーティングモジュール201が含まれている。このルーティングモジュール201は、アップリンクにおいてホームネットワーク106からIPパケットを受信することができ、また、ダウンリンクにおいてコアネットワークからIPパケットを受信することができる。本発明の1つの実施形態では、UEはソースホームノードBによってハンドリングされる。このソースホームノードBは、幾つかのルールに従って、このUEのハンドオーバのトリガを決定することができる。次に、ソースホームノードBは、この決定をターゲットホームノードBに知らせることができる。ターゲットホームノードBは、このハンドオーバを受理する場合、この受理をホームネットワークのルーティングモジュールに通知する。
【0043】
図2Bは、本発明の1つの実施形態による、移動ネットワークにおけるハンドオーバ方法によって実行される主要ステップを示している。
【0044】
はじめに、UE100は、コアネットワーク105を通じてデータフロー211で通信している。このデータフローは、UEからソースホームノードB101及びルーティングモジュール201を通じて確立される。
【0045】
ソースホームノードBは、UE100のためのハンドオーバを決定する。ソースホームノードBは、ターゲットホームノードB101にメッセージ212を発することによって、この決定をターゲットホームノードBに知らせる。ターゲットホームノードBは、このメッセージ212を受信すると、このハンドオーバを受理することができるか否かを判断するためのアドミッション制御213を実行する。このアドミッション制御のステップは、範囲外であるためここでは詳述しない。ターゲットホームノードBは、このハンドオーバを受理する場合、この変更をルーティングモジュール201に知らせるために、通知メッセージ214をルーティングモジュールに送信する。
【0046】
ルーティングモジュールは、この通知メッセージを受信すると、ステップ217において、コアネットワーク105から受信される、当初はUE100に宛てられている全てのパケットをメモリ内に格納し始める。その結果、データフロー211はダウンリンクにおいてルーティングモジュールレベルで遮断される。この新たなダウンリンクデータフロー216は、「新着パケット」を意味する受信パケットの記憶を担当するルーティングモジュールにおいて止められる。
【0047】
さらに、ルーティングモジュールは、ハンドオーバの開始時においてUEに向けて完全に送信されていない全てのパケットをソースホームノードBに送信させるために、ソースホームノードBからの転送リンクの確立をトリガする。このために、ルーティングモジュールは、通知応答メッセージ215をソースホームノードBに送信する。このメッセージは、この転送リンクを確立するための一時パラメータを提供することができる。この転送リンクが確立されると、ソースホームノードBによって送信されるパケットに対応するデータフロー218がルーティングモジュール201によって受信される。このパケットは、端末に宛てられているがソースホームノードBによって未だ完全に送信されていないパケットである。これらの受信パケットは、ステップ219において、ルーティングモジュールレベルで格納される。
【0048】
コアネットワークから受信されたパケット及び転送リンクにおいて受信されたパケットは、端末とターゲットホームノードBとの間の無線リンクが確立されるまで、ルーティングモジュールのメモリ内に格納される。実際に、無線リンクが確立されると、ターゲットホームノードBがこれらのパケットをUEに送信することができるので、ルーティングモジュールは、有利にはこれらのパケットをターゲットホームノードBに送信することができる。
【0049】
1つの実施形態では、ルーティングモジュールは、無線準備完了メッセージ220の受信によって、ターゲットホームノードBとUEとの間の無線リンクの確立を知らされる。ルーティングモジュール201は、このメッセージを受信すると、データフロー223及び224を通じて、UEに関して記憶されたパケットを送信する。
【0050】
以下のセクションでは、既存のアーキテクチャLTEへの本発明の適用を詳細に説明する。
【0051】
図3は、本発明の1つの実施形態を適用することができる移動ネットワークのアーキテクチャを詳細に説明している。
【0052】
移動端末、すなわち「ユーザ機器」を表すUEは、ホームネットワーク106を介してコアネットワーク105にアクセスすることができる。ホームネットワーク106は、ネットワークのアクセス部である「発展型ユニバーサル地上無線アクセスネットワーク(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)」を表すE−UTRANに対応する。
【0053】
このタイプのアーキテクチャは、データ交換をハンドリングするためのデータプレーンとシグナリング交換をハンドリングするための制御プレーンとに基づいている。
【0054】
コアネットワーク105は、移動管理エンティティMME102を備える。MME102は、移動端末(UE)の移動及びセキュリティのハンドリングを担当する制御ノードである。MME102は、UEの制御プレーンの接点である。本発明の1つの実施形態では、UE100の移動性は、MMEを変更することなく、1つのホームネットワークの内部でハンドリングされる。
【0055】
コアネットワークは、サービングゲートウェイ(S−GW)103も備える。サービングゲートウェイ103は、UEのデータプレーンの接点である。サービングゲートウェイは、UEがアクセスネットワークにおいて移動している場合であっても同じままである。
【0056】
コアネットワーク105は、PDNゲートウェイ104を備える。PDNゲートウェイ104は、移動ネットワーク、LTEネットワーク、及びインターネットネットワーク110の間の接点である。一般に、PDN GW104は、IPアドレスのハンドリングを担当する。
【0057】
コアネットワークはホーム加入者サーバ(HSS)201及びサービングGPRSサポートノード(SGGN)202をさらに備えることができる。ホーム加入者サーバは、UEのための加入情報及びパラメータ情報を主に含む中央ノードである。サービングGPRSサポートノードは、3Gネットワーク及びGSMネットワークとのデータ交換のハンドリングを担当する。このコアネットワークは、このネットワークにおいてハンドリングされるセッションの課金を担当するポリシー及び課金ルール機能203(PCRF(Policy and Charging Rules Function))も備えることができる。
【0058】
LTE標準規格によれば、
− アクセスネットワーク(又はホームネットワーク)106とMME102との間のインターフェースは、S1−MMEインターフェースと呼ばれる。
− MME102とSGSN202との間のインターフェースは、S3と呼ばれる。
− MME102とサービングGW103との間のインターフェースは、S11と呼ばれる。
− MME102とHSS201との間のインターフェースは、S6aと呼ばれる。
− SGW103とPDN GW104との間のインターフェースは、S5と呼ばれる。
− PDN GW104とインターネットネットワーク110との間のインターフェースは、SGiと呼ばれる。
− PDN GW104とPCRF203との間のインターフェースは、Gxと呼ばれる。
− PCRF203とインターネットネットワーク110との間のインターフェースは、Rxと呼ばれる。
【0059】
本発明の1つの実施形態によれば、ルーティングモジュール201は、一方の側でS1ベアラインターフェースへのインターフェースとなり、他方の側でホームネットワークにおける少なくとも1つのホームノードBへのインターフェースとなるように構成される。この方式において、ノードB S1インターフェースは変更されないままである。
【0060】
ホームネットワーク部は、幾つかのホームノードBを含む。
【0061】
図4は、3つのホームノードB101−A、101−B、及び101−Cを備えるE−UTRANネットワーク106を示している。ホームノードB101−A及び101−Bは、MME102にリンクされる。
【0062】
図5は、本発明の1つの実施形態に従って用いることができる種々のベアラを詳細に示している。2つの離れた移動端末間のエンドツーエンドサービスは、UE100とP−GW104との間ではEPS(「発展型パケットシステム」)ベアラ41に基づき、P−GW104と他方の移動端末UE100との間では外部ベアラ42に基づく。
【0063】
EPSベアラ41は、UE100とS−GW202との間ではベアラE−RAB(「発展型無線アクセスベアラ」を表す)43からなり、S−GW202とP−GW104との間ではベアラS5/S8ベアラ44からなる。
【0064】
より正確には、E−RABベアラ43は、UE100とホームノードB101との間では無線ベアラ46で構成され、ホームノードBとS−GW202との間ではS1ベアラ45で構成される。
【0065】
本発明の1つの実施形態では、UEが移動ネットワークに入るとき、デフォルトベアラが作成される。このステップにおいて、幾つかの追加の専用ベアラを生成することも可能である。
【0066】
図6は、LTEアーキテクチャにおける種々のプロトコルスタックを示している。
【0067】
UEレベルにおけるプロトコルスタックは、
− アプリケーション層601、
− IP層602、
− PDCP層603、
− RLC層604、
− MAC層605、
− L1層606、
を含む。
【0068】
ホームノードBにおけるプロトコルスタックは、
− GTP−U層611(GPRSトンネリングプロトコルを表す)にマッピングされるPDCP層607、
− UDP/IP層612にマッピングされるRLC層608、
− L2層613にマッピングされるMAC層609、
− L1層614にマッピングされるL1層610、
を含む。
【0069】
サービングゲートウェイにおけるプロトコルスタックは、層614、613、612、及び611に対応する。PDN GWにおけるプロトコルスタックは、これらの層に対応すると共に、より上位のIP層も有する。
【0070】
UEとホームノードBとの間の無線インターフェースにおいて、適用可能なIPパケットは、PDCP層を介してトランスポートされ、UTRAN標準規格に従うPDCP−SDUと見なされる。データ無線ベアラ(すなわちDRB)は、MAC論理チャネルにマッピングされる(1つのDCCH(専用制御チャネル)論理チャネルに対して1つのDRB)。DRBは、シグナリングメッセージにおいてDRB識別フィールド(すなわちRB−ID)を用いて識別される。IPソースアドレスは、PDNゲートウェイによって割り当てられて各DRBに付属しているアドレスで埋められる。そして、(H)eNBは、各無線ベアラのトラフィックから、対応するコアネットワーク側のS1ベアラへのマッピングを担当する。
【0071】
コアネットワーク側では、IPパケットは標準インターネットプロトコルを用いてトランスポートされる。ホームノードBとS−GWとの間でS1ベアラと呼ばれる論理接続が規定され、DRBとS1ベアラとの間に全単射が存在する。S1ベアラは、S1−TEID(トンネル端識別子)を用いて識別される。S1−TEIDは、1つはホームノードB用であり、2つ目は発展型パケットコア(EPC)用である。トンネリングは、UDP/IPに基づくGTP−Uプロトコルを用いて実装される。トンネルは、アップリンクではEPC S1−TEID(S−GWにおけるTEID)によって分離され、ダウンリンクではホームノードB S1−TEIDで埋められたGTP−Uヘッダ内のTEIDフィールドによって分離される。S1データトランスポートはTS36.414において説明されており、GTP−UはTS29.281において説明されている。適用可能なIPパケットは、GTP−UペイロードであるGTP−Uパケット内でカプセル化される。
【0072】
TS33.401(セクション12)において推奨されるように、データトラフィックをIPSecトンネル内に保護することが必要である場合がある。データプレーンに関して、GTP−Uパケットを搬送するIPパケットを、IPSecカプセル化セキュリティペイロード(ESP)パケット内に埋め込むことができる。
【0073】
図7は、本発明の1つの実施形態によるハンドオーバを詳細に示す模式図である。
【0074】
以下において、同じホームネットワークに属しておりルーティングモジュールを通じてコアネットワークに接続される2つのホームノードB間で、本発明の1つの実施形態によるハンドオーバが実行される。その結果として、このハンドオーバの間にS−GWは再配置されない。これらの条件において、コアネットワーク側においては、S1ベアラのみが変更され、E−RABベアラ及びEPSベアラは、UE IPアドレスと同様に同一に保たれる。
【0075】
1つの実施形態では、トラフィック暗号化に起因して、ルーティングモジュールは、MMEとソースホームノードBとターゲットホームノードBとの間で交換されるシグナリングメッセージにアクセスすることができない。しかし、ルーティングモジュールは、データプレーン内のGTP−Uヘッダにアクセスすることができる。
【0076】
ソースホームノードBは、ステップ701においてハンドオーバのトリガを決定する場合、HO要求メッセージ212(「ハンドオーバ」を表す)をターゲットホームノードBに送信する。
【0077】
ターゲットホームノードBは、メッセージ212を受信すると、アドミッション制御ステップ213を実行する。ここで、1つの実施形態によれば、ターゲットホームノードBは、後にバッファリングされるトラフィックをルーティングモジュールから自身に転送できるようにするために、UEに関連付けられているS1ベアラごとに1つの一時ダウンリンクトンネルを作成することができる。これらの一時ダウンリンクトンネルは、GTPダウンリンクトンネルに対応し、DL TEIDとして参照される。1つの実施形態では、UL TEIDは変更されないままとすることができる。
【0078】
その後、ターゲットホームノードBは、ルーティングモジュールにHO通知メッセージ214を送信する。このメッセージ214は、ハンドオーバ手順が開始されてターゲットホームノードBによって受理されたことをルーティングモジュールに知らせる。
【0079】
本発明の1つの実施形態では、このメッセージ214は、MME S1レベルにおけるソースホームノードBの識別子、MME S1レベルにおけるターゲットホームノードBの識別子、MME S1レベルにおけるUEの識別子、及びハンドオーバによって影響を受けるベアラのリストを含むことができる。このベアラのリストは、一方において、ハンドオーバによって影響を受けるS1ベアラに対応するE−RABの識別子のリストを示し、また、ハンドオーバ時間期間のために一時的に割り当てられるDL TEIDのリストを示す。
【0080】
また、ターゲットホームノードBは、HO要求肯定応答メッセージ702をソースホームノードBに送信する。その後、ソースホームノードBは、RRC接続再構成メッセージ704を送信することによってUEに対する無線再構成をトリガするが、端末の切離しが有効になるまでデータフロー713を通じてアップリンクパケットをコアネットワークに送信し続ける。結果として、UEはソースホームノードBからの切離し手順を実行し、ターゲットホームノードBとの同期を行う。
【0081】
さらに、ソースホームノードBは、SNステータス転送メッセージ705を送信することによって、肯定応答されていないパケットのシーケンス番号のリストをターゲットホームノードBに送信する。
【0082】
ルーティングモジュールレベルにおいては、このメッセージ214を受信すると、ステップ217において、HO通知メッセージ214内に含まれるベアラに関するダウンリンクトラフィックの送信を停止し、これらのダウンリンクベアラから受信するコアネットワークからのダウンリンクパケットのバッファリングを開始することが決定される。S−GWから受信されるこれら全てのダウンリンクパケット(新着パケットである)をルーティングモジュールのダウンリンクキューに付加することができる。
【0083】
次に、ルーティングモジュールは、HO通知応答メッセージ215をソースホームノードBに送信する。このメッセージ215は、影響を受けるベアラのリスト(E−RAB IDを意味する)、及び当該影響を受けるベアラごとのダウンリンク転送TEIDを含むことができる。ダウンリンク転送TEIDは、本発明の1つの実施形態に従って、ソースホームノードBからルーティングモジュールにダウンリンクパケットを転送するのに用いられる。
【0084】
ソースホームノードBは、このメッセージ215を受信すると、肯定応答されていないダウンリンクパケット706(PDCP−SDUを意味する)をルーティングモジュールに転送することができる。
【0085】
送信に関して肯定応答モードである場合、ソースホームノードBは、既にオープンされたULトンネルを用いることによって、シーケンスから外れたUL PDCP SDUも転送することができる。これらのSDUは、それらの初期PDCP SN(シーケンス番号を表す)を保持するために、ターゲットホームノードBのキューに入れられる。
【0086】
ソースホームノードBによってトリガされた無線再構成がターゲットホームノードBとUEとの間で行われると、ターゲットホームノードBは、RRC接続再構成完了メッセージ709を受信する。ターゲットホームノードBは、このメッセージ709を受信すると、ターゲットホームノードとUEとの無線リンクが確立されたことをルーティングモジュールに知らせるために、ルーティングモジュールにHO無線準備完了メッセージ710を送信する。ターゲットホームノードBは、このメッセージ710が受信された後、無線リンク711を通じてUEから新たなパケットを受信する。次に、ルーティングモジュールは、データフロー712においてターゲットホームノードBからのデータアップリンクパケットの受信を開始する。肯定応答モードでの送信の場合、ステップ713において、ルーティングモジュールは、データフロー714を介してアップリンクPDCP SDUパケットをS−GWに送信するのに先だって、そのパケットの再順序付けを担当する。当然ながら、送信が非肯定応答モードで行われる場合、再順序付けステップは有用でない。ルーティングモジュールは、このデータフロー714を介してダウンリンクPCDP SDUパケットを受信し、当該パケットはフローデータ716を通じてターゲットホームノードBに送信される。次に、データフロー717を通じて、UEとターゲットホームノードBとの間にデータ通信リンクが確立される。
【0087】
ルーティングモジュールは、バッファリングされたパケットをデータフロー716及び717を通じてUEに送信することによって自身のキューを空にする。
【0088】
次に、ターゲットホームノードBは、パス切替え要求メッセージ718をMMEに送信することによってパス切替えをトリガする。ここで、その目的は、本発明によるハンドオーバの移行時間期間中に行われているように、UE宛てに送信されたダウンリンクフローデータがルーティングモジュールレベルで正しいTEIDにマッピングされることを回避するために、S−GWからターゲットホームノードBへのダウンリンクパケットのための新たなトンネルを作成することである。
【0089】
MMEレベルにおいてパス切替え要求メッセージ718を受信すると、ステップ720において、MMEとS−GWとの間に新たなダウンリンクパスが確立される。このステップ720の終了時に、MMEは、ルーティングモジュールに「エンドマーカ」メッセージ721を送信し、ターゲットホームノードBにパス切替えAckメッセージ722を送信する。ターゲットホームノードBは、このメッセージ722を受信すると、HO完了メッセージ723をルーティングモジュールに送信する。このメッセージ723は、影響を受けるベアラ(E−RAB ID)のリスト、及び新たに割り当てられたUL TEIDのリストを含む。ルーティングモジュールは、新たなアップリンクTEIDによって識別されるGTP−Uトンネルにおいて、アップリンクデータをS−GWに送信する。さらに、ターゲットホームノードBは、UEコンテキスト解放メッセージ725をソースホームノードBに送信する。このステップにおいて、ハンドオーバは完了し、UEはターゲットホームノードBによってハンドリングされる。
【0090】
そのようなパス切替え手順中、ターゲットホームノードBは、このハンドオーバによって影響を受ける全てのE−RABのダウンリンクTEIDの変更をルーティングモジュールに知らせるために、HO−TEID変更メッセージ719をルーティングモジュールに送信する。1つの実施形態では、ルーティングモジュールは、初期ダウンリンクTEIDにおいてパケットを受信し、古いダウンリンクTEIDトンネルを介してトランスポートされるデータフローにおいてエンドマーカーメッセージ721が受信されるまで、それらのパケットをターゲットホームノードBに転送する。S−GWは、新たなダウンリンクTEIDによって識別されるGTP−Uトンネルにおいて、ダウンリンクデータをターゲットホームノードBに送信する。
【0091】
パケットバッファリングの機能をホームノードBにおいて実装する代わりにデータルーティングモジュールに実装すれば、ホームノードBは、ハンドオーバ移行時間期間にコアネットワークから受信されるパケットをバッファリングすることをもはや期待されない。ホームネットワークの内部の1つのロケーション(ルーティングモジュールを意味する)にバッファリングを集中させることによって、有利には、メモリリソースをホームネットワークの全てのホームノードBのために相互に用いることができる。これは、グローバルメモリ利得に対応する。
【0092】
さらに、肯定応答モードにおける送信の場合、再順序付け機能をルーティングモジュールレベルにおいて実装することができ、単純なホームノードBを提供することが可能になる。
【0093】
本発明の1つの実施形態によれば、新着データトラフィックの管理は、もはやソースホームノードBではなくルーティングモジュールレベルでハンドリングすることができる。これらの特徴によって、ハンドオーバ手順を以前よりも高速に実行することが可能になる。
【0094】
結果として、ホームノードB間で直接通信を管理することはもはや要求されない。この態様によって、特にホームノードBの数が多い場合に、ホームエリアネットワークの内部での管理を単純にすることが可能になる。
【0095】
図8は、肯定応答モードの場合における、本発明の1つの実施形態によるルーティングモジュールによるダウンリンクトンネルの使用を示している。
【0096】
本発明の1つの実施形態によるルーティングモジュールでは、ダウンリンクにおいて、ランダムアクセスキュー81が用いられ、1つの実施形態に従って受信したSDUのバッファリング及び再順序付けが行われる。
【0097】
このキュー81を用いて、転送リンク84を通じてソースホームノードBから受信したSDUパケット、及びコアネットワークからの初期ダウンリンク82から受信したSDUパケットをバッファリングする。ソースホームノードBから受信されるパケットは、DL転送TEIDによって識別されるS1ベアラ内にトランスポートされる肯定応答されていないSDUに対応することができる。コアネットワークから(ここではS−GWからを意味する)受信されるパケットは、ハンドオーバが発生する前にコアネットワークとソースホームノードBとの間で用いられる初期TEIDによって識別されるS1ベアラ内にトランスポートされる新着データに対応することができる。
【0098】
1つの実施形態では、このキュー81は、HO無線準備完了メッセージの受信時に空にされる。ルーティングモジュールに格納されるSDUは、ルーティングモジュールからターゲットホームノードBへの一時リンク85に送信される。この一時リンク85は、一時DL TEIDによって識別されるS1ベアラに対応する。この一時DL TEIDは、キュー81が空になるまで用いられる。ルーティングモジュールにおいて、DL TEID84(転送リンクを表す)及び一時DL TEID85(一時リンクを表す)を転送することによって識別されるS1ベアラは、HO完了メッセージの受信時に解放することができる。ハンドオーバに割り当てられるリソースも解放することができ、コアネットワークからターゲットホームノードBに向かう新たなDL TEID83を用いることができる。
【0099】
図9は、肯定応答モードの場合における、本発明の1つの実施形態によるルーティングモジュールによるアップリンクトンネルの使用を示している。
【0100】
アップリンクにおいて、パケットSDUが、単一のUL初期TEID93及び94によって識別されるベアラを介してトランスポートされる。ターゲットホームノードBは、HO完了メッセージを受信すると、新たなUL TEID91によって識別されるトランスポートベアラ内にUL SDUを放出する。再順序付けが要求されていないので、ハンドオーバに割り当てられるリソースは解放されない。
【0101】
そのようなキュー81は、ARQ受信において通常行われているように、たとえば既に受信したSDUに対する参照保持テーブル(table keeping reference)を用いて実装することができる。パケットは、テーブルの底部に位置するパケットが受信され、かつリモードデバイス(ダウンリンクにおけるターゲットHeNB又はアップリンクにおけるS−GWを意味する)がそれらのパケットを受信する準備ができている場合に配信される。
【0102】
図10は、本発明の1つの実施形態によるルーティングモジュールを示している。
【0103】
本発明の1つの実施形態によるルーティングモジュール201は、
− ハンドオーバがターゲットホームノードBによって受理されたことを通知する通知メッセージ214を受信するように構成される受信ユニット1001と、
− ソースホームノードBからの転送リンク215を作成するように構成されるリンク管理ユニット1002と、
− コアネットワークから受信されたパケットを格納すると共に、転送リンクにおいて受信された少なくとも幾つかのパケットを格納するように構成されるメモリ1003と、
− 後に端末とターゲットホームノードBとの間に無線リンクが確立した際に、メモリ内のパケットを端末に送信するように構成される送信ユニット1004と
を備えている。
ここで、転送リンクにおいて受信されたパケットは、一方においては、コアネットワーク宛のパケットであり、他方においては、端末宛であるがソースホームノードBによって未だ完全に送信されていないパケットである。
【0104】
1つの実施形態では、送信ユニット1004は、転送リンク84において受信されたコアネットワーク105宛のパケットを、メモリ内に格納することなくコアネットワークに転送するようにさらに構成される。
【0105】
メモリ1003は、転送リンクにおいて受信されたコアネットワーク宛のパケットを格納するように構成することができ、
受信ユニットは、端末によってターゲットホームノードBを通じて送信されたコアネットワーク宛のパケットを受信するように構成され、
ルーティングモジュールは、
− 転送リンクにおいて受信されたコアネットワーク宛のパケット、及び端末によってターゲットホームノードBを通じて送信されたコアネットワーク宛のパケットを、再順序付けするように構成される再順序付けユニット1005をさらに備える。
ここで、送信ユニット1004は、再順序付けされたパケットをコアネットワークに送信するように構成される。
【0106】
このルーティングモジュール201は、
− 転送リンクにおいて受信された端末宛のパケット、及びコアネットワークから受信されたパケットを、再順序付けするように構成される再順序付けユニット1005をさらに備えることができる。
ここで、送信ユニット1004は、再順序付けされたパケットを端末に送信するように構成される。
【0107】
ルーティングモジュール201は、一時ダウンリンク85を作成するように構成されたリンク管理ユニット1002をさらに備えることができる。送信ユニット1004は、コアネットワーク105から受信された端末宛のパケットを当該端末に送信するように構成され、
受信ユニット1001は、ハンドオーバ完了を示すメッセージを受信するように構成され、
ルーティングモジュールは、メッセージの受信時に一時ダウンリンクを解放するように構成される解放ユニットをさらに備える。
【0108】
ホームノードB101は、少なくとも1つの端末100のハンドオーバをハンドリングする移動ネットワークのホームネットワーク106内に位置し、当該ホームネットワークは、少なくともさらにもう1つのホームノードBと、本発明の1つの実施形態によるルーティングモジュール201とを備える。コアネットワークは、ルーティングモジュールを通じてホームノードBとリンクされ、
ホームノードBは、ルーティングモジュールを備える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの端末(100)の移動ネットワークにおけるハンドオーバをハンドリングするための方法であって、
前記移動ネットワークは、コアネットワーク(105)及びホームネットワーク(106)を有し、該ホームネットワークは、前記端末の通信をハンドリングするソースホームノードB及びターゲットホームノードB(101)に少なくともリンクされるルーティングモジュール(201)を備え、
前記コアネットワークは、前記ルーティングモジュールを通じて前記ソースホームノードB及び前記ターゲットホームノードBにリンクされ、
該方法は、前記ルーティングモジュールにおける以下のステップ:
− ハンドオーバが前記ターゲットホームノードBによって受理されたことを通知する通知メッセージ(214)を受信するステップと、
− 前記コアネットワークから受信されたパケットをメモリ内に格納するステップ(217)と、
− 前記ソースホームノードBからの転送リンク(215)を作成するステップと、
− 前記転送リンクにおいて受信された少なくとも幾つかのパケットをメモリ内に格納するステップ(219)と
を含み、
前記転送リンクにおいて受信されたパケットは、一方において、前記コアネットワーク宛のパケットであり、他方において、前記端末宛であるが前記ソースホームノードBによって未だ完全に送信されていないパケットであり、
前記メモリ内の前記パケットは、後に前記端末と前記ターゲットホームノードBとの間に無線リンクが確立された際に、前記端末に送信される(224)、
少なくとも1つの端末(100)の移動ネットワークにおけるハンドオーバをハンドリングするための方法。
【請求項2】
前記転送リンクにおいて受信された前記コアネットワーク宛のパケットは、前記メモリ内に格納されることなく前記コアネットワークに転送される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記転送リンクにおいて受信された前記コアネットワーク宛のパケットは、前記メモリ内に格納され、
前記方法は、前記端末と前記ターゲットホームノードBとの間に前記無線リンクが確立された後に、以下のステップ:
− 前記端末によって前記ターゲットホームノードBを通じて送信された前記コアネットワーク宛のパケットを受信するステップと、
− 前記転送リンクにおいて受信された前記コアネットワーク宛のパケット、及び前記端末によって前記ターゲットホームノードBを通じて送信された前記コアネットワーク宛のパケットを、再順序付けするステップと、
− 前記再順序付けされたパケットを前記コアネットワークに送信するステップと
をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記端末と前記ターゲットホームノードBとの間に前記無線リンクが確立された後に、以下のステップ:
− 前記転送リンクにおいて受信された前記端末宛のパケット、及び前記コアネットワークから受信されたパケットを、再順序付けするステップと、
− 前記再順序付けされたパケットを前記端末に送信するステップと
をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記端末と前記ターゲットホームノードBとの間に前記無線リンクが確立された後に、以下のステップ:
− 一時ダウンリンク(85)を作成するステップと、
− 前記コアネットワークから受信された前記端末宛のパケットを該端末に送信するステップと、
− ハンドオーバ完了を示すメッセージを受信するステップと、
− 前記一時ダウンリンクを解放するステップと
をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの端末(100)の移動ネットワークにおけるハンドオーバをハンドリングするように構成されるルーティングモジュール(201)であって、
前記移動ネットワークは、コアネットワーク(105)及びホームネットワーク(106)を有し、該ホームネットワークは、前記端末の通信をハンドリングするソースホームノードB及びターゲットホームノードB(101)に少なくともリンクされるルーティングモジュール(201)を備え、
前記コアネットワークは、前記ルーティングモジュールを通じて前記ソースホームノードB及び前記ターゲットホームノードBにリンクされ、
該ルーティングモジュールは、
− ハンドオーバが前記ターゲットホームノードBによって受理されたことを通知する通知メッセージ(214)を受信するように構成される受信ユニット(1001)と、
− 前記ソースホームノードBからの転送リンク(215)を作成するように構成されるリンク管理ユニット(1002)と、
− 前記コアネットワークから受信されたパケットを格納すると共に、前記転送リンクにおいて受信された少なくとも幾つかのパケットを格納するように構成されるメモリ(1003)と、
− 前記メモリ内の前記パケットを、後に前記端末と前記ターゲットホームノードBとの間に無線リンクが確立された際に、前記端末に送信するように構成される送信ユニット(1004)と
を備え、
前記転送リンクにおいて受信されたパケットは、一方において、前記コアネットワーク宛のパケットであり、他方において、前記端末宛であるが前記ソースホームノードBによって未だ完全に送信されていないパケットである、ルーティングモジュール。
【請求項7】
前記送信ユニット(1004)は、前記転送リンク(84)において受信された前記コアネットワーク(105)宛のパケットを、前記メモリ内に格納することなく前記コアネットワークに転送するようにさらに構成される、請求項6に記載のルーティングモジュール。
【請求項8】
前記メモリ(1003)は、前記転送リンクにおいて受信された前記コアネットワーク宛のパケットを格納するように構成され、
前記受信ユニットは、前記端末によって前記ターゲットホームノードBを通じて送信された前記コアネットワーク宛のパケットを受信するように構成され、
前記ルーティングモジュールは、
− 前記転送リンクにおいて受信された前記コアネットワーク宛のパケット、及び前記端末によって前記ターゲットホームノードBを通じて送信された前記コアネットワーク宛のパケットを、再順序付けするように構成される再順序付けユニット(1005)をさらに備え、
前記送信ユニット(1004)は、前記再順序付けされたパケットを前記コアネットワークに送信するように構成される、請求項6又は7に記載のルーティングモジュール。
【請求項9】
− 前記転送リンクにおいて受信された前記端末宛のパケット、及び前記コアネットワークから受信されたパケットを、再順序付けするように構成される再順序付けユニット(1005)をさらに備え、
前記送信ユニット(1004)は、前記再順序付けされたパケットを前記端末に送信するように構成される、請求項6〜8のいずれか一項に記載のルーティングモジュール。
【請求項10】
前記リンク管理ユニット(1002)は、一時ダウンリンク(85)を作成するように構成され、
前記送信ユニット(1004)は、前記コアネットワーク(105)から受信された前記端末宛のパケットを該端末に送信するように構成され、
前記受信ユニット(1001)は、ハンドオーバ完了を示すメッセージを受信するように構成され、
前記ルーティングモジュールは、前記メッセージの受信時に前記一時ダウンリンクを解放するように構成される解放ユニットをさらに備える、請求項6〜9のいずれか一項に記載のルーティングモジュール。
【請求項11】
少なくとも1つの端末(100)のハンドオーバをハンドリングするための移動ネットワークのホームネットワーク(106)内のホームノードB(101)であって、
前記ホームネットワークは、少なくともさらにもう1つのホームノードBと、請求項6〜10のいずれか一項に記載のルーティングモジュール(201)とを備え、
前記コアネットワークは、前記ルーティングモジュールを通じて前記ホームノードBにリンクされ、
前記ホームノードBは前記ルーティングモジュールを備える、ホームノードB。
【請求項12】
少なくとも1つの端末(100)のハンドオーバをハンドリングするための移動ネットワーク内のホームネットワーク(106)であって、
前記移動ネットワークは、コアネットワーク(105)及び該ホームネットワーク(106)を有し、該ホームネットワークは、少なくとも2つのホームノードB(101)にリンクされる請求項6〜10のいずれか一項に記載のルーティングモジュール(201)を備え、
前記コアネットワークは、前記ルーティングモジュールを通じて前記ホームノードBにリンクされる、ホームネットワーク。
【請求項13】
少なくとも1つの端末(100)のハンドオーバをハンドリングするための移動ネットワークであって、該移動ネットワークは、コアネットワーク(105)及び請求項12に記載のホームネットワーク(106)を有する、移動ネットワーク。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−234350(P2011−234350A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−67745(P2011−67745)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(503163527)ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (175)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
【Fターム(参考)】