説明

少なくとも1種類の水溶性N−ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーの水溶性非混濁性コポリマーを製造する方法

【課題】少なくとも1種類の水溶性のN-ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーを有機溶媒中でラジカル重合させることによる水溶性コポリマーを製造する方法を提供する。
【解決手段】有機溶媒中で開始剤の存在下に還流条件下で、少なくとも1種類の水溶性N-ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーをラジカル重合させることによりビニルラクタムコポリマーを製造する方法であって、該疎水性モノマーの少なくとも90mol%が完全に反応したとき、少なくとも10mol%の該N-ビニルラクタムを重合混合物に添加する、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種類の水溶性N-ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーを有機溶媒中でラジカル重合させることによるそれらモノマーの水溶性コポリマーを製造する方法並びにそのような方法で得ることができるコポリマー及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合によりN-ビニルラクタムと疎水性コモノマーからコポリマーを製造する方法は知られている。そのようなコポリマーの製造は、有機溶媒中で、例えば、アルコール中で、又は、水と高含有量の有機溶媒の混合物中で実施される。通常、その重合は、当該溶媒を還流させながら行う。N-ビニルラクタムに比較して容易に揮発する該疎水性モノマーは、上記のような方法により、気相及び凝縮液に変化する。
【0003】
多くの適用目的に対して、水に溶解して透明な溶液となるコポリマーが望まれている。即ち、5重量%の濃度の溶液のFNU値は、20未満であるべきである。しかしながら、モノマーが異なる反応性と異なる極性を有していると疎水性モノマーの濃度が増大して、疎水性モノマーから水不溶性のホモポリマーが生成され得るという問題がある。そのようなホモポリマーは、500〜1000ppmの範囲内にある少量であっても、結果として当該コポリマーの水溶液を濁らせてしまう。疎水性モノマーの濃度は、特に、気相中及び凝縮液中で上昇し得る。疎水性モノマーの濃度は、さらにまた、反応器の壁や重合媒体の表面においても上昇し得る。
【0004】
米国特許第5,395,904号明細書(特許文献1)には、フィード法(feed method)での制御重合によるビニルピロリドンと酢酸ビニルの重合について記載されている。最大で50重量%までの水を含有させ得るアルコール溶媒が使用されている。
【0005】
米国特許第5,319,041号明細書(特許文献2)には、重合温度を制御するフィード法での重合によるビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーの調製について記載されている。
【0006】
米国特許第5,502,136号明細書(特許文献3)には、フィード法によるビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーの製造方法について記載されており、ここで、当該フィードは、特定の数式で定義されたスキームにより制御されている。
【0007】
米国特許第4,520,179号明細書(特許文献4)及び米国特許第4,554,311号明細書(特許文献5)には、水中で、又は、水/アルコール混合物中で、開始剤としてペルオキシピバル酸t-ブチルを使用する、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの重合について記載されている。ここで使用されている開始剤により狭い分子量分布を有するコポリマーの製造が可能となるが、20未満のFNU値を有する水溶性生成物は得られない。
【0008】
欧州特許出願公開第161号明細書(特許文献6)には、ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーの製造方法について記載されており、該方法では、重合の後で、特定の開始剤を使用する後重合を行っている。しかしながら、そのポリマーは、酢酸ビニルの残留量が多く、十分な非混濁性が得られない。
【0009】
欧州特許出願公開第795567号明細書(特許文献7)には、水溶液状態で重合させることによる、ビニルラクタムと疎水性モノマーのコポリマーの製造について記載されている。
【0010】
EP-Aには、ビニルピロリドンとビニルエステルからなる、水に溶解して透明な溶液となるコポリマーの製造について開示されており、ここで、該コポリマーの製造においては、揮発性成分を除去するために、重合中の特定の時点で溶媒の交換を行う。この方法は、比較的複雑である。
【0011】
西独国特許出願公開第第2218935号明細書(特許文献8)には、N-ビニルピロリドンと水溶性及び水不溶性のさまざまなコモノマーとの共重合について記載されている。この共重合では、水不溶性の開始剤が用いられているが、該開始剤は、該コポリマー水溶液中の微粉砕懸濁液の形態で使用されている。しかしながら、水不溶性コモノマーの場合、同様に、FNU値が20未満の望ましい水溶性コポリマーは得られない。
【特許文献1】米国特許第5,395,904号明細書
【特許文献2】米国特許第5,319,041号明細書
【特許文献3】米国特許第5,502,136号明細書
【特許文献4】米国特許第4,520,179号明細書
【特許文献5】米国特許第4,554,311号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第161号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第795567号明細書
【特許文献8】西独国特許出願公開第第2218935号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、有機溶媒中でのラジカル共重合により少なくとも1種類の親水性N-ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーの水に透明に溶解するコポリマーを製造するための改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上記目的は、有機溶媒中で開始剤の存在下に還流条件下で、少なくとも1種類の水溶性N-ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーをラジカル重合させる際に、該疎水性モノマーの少なくとも90mol%が完全に反応したとき、少なくとも10mol%の該N-ビニルラクタムを重合混合物に添加することにより達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
適切な水溶性ビニルラクタムは、N-ビニルピロリドン、3-メチル-N-ビニルピロリドン、4-メチル-N-ビニルピロリドン、5-メチル-N-ビニルピロリドン、N-ビニルピリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムであり、好ましくは、N-ビニルピロリドンである。該ビニルラクタムは、30〜90重量%の量で、好ましくは、50〜90重量%の量で使用する。
【0015】
本発明の方法は、疎水性モノマーの含有量がモノマー混合物に基づいて10〜70重量%の範囲、好ましくは、10〜50重量%の範囲にあるモノマー混合物からなる水溶性ポリマーを製造するのに適している。適切な疎水性モノマーは、1〜100g/Lの範囲の水溶解度を有する疎水性モノマーである。適切な疎水性モノマーは、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルである。該疎水性モノマーは、特に、大気圧下での沸点が60℃〜130℃の重合温度の範囲内にあるものであり、それにより、該疎水性モノマーは、重合条件下で蒸発し得る。重合温度よりも僅かに低い沸点でさえ、該疎水性モノマーは、当該溶媒と充分な混和性を有する場合には、重合条件下で沸騰する溶媒と一緒に気相に変化することが可能である。疎水性モノマーは、溶媒との共沸混合物として、あるいは溶媒との物理的混合物として気相に変化することができる。好ましい疎水性モノマーは、酢酸ビニルである。
【0016】
ラジカル開始剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる:ジアルキルペルオキシド類又はジアリールペルオキシド類、例えば、ジ-t-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、t-ブチルクメンペルオキシド、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキセン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン又はジ-t-ブチルペルオキシド、脂肪族及び芳香族のペルオキシエステル類、例えば、ペルオキシネオデカン酸クミル、2-ペルオキシネオデカン酸2,4,4-トリメチルペンチル、ペルオキシネオデカン酸t-アミル、ペルオキシネオデカン酸t-ブチル、ペルオキシピバル酸t-アミル、ペルオキシピバル酸t-ブチル、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸t-アミル、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸t-ブチル、ペルオキシジエチル酢酸t-ブチル、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ペルオキシイソブタン酸t-ブチル、ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサン酸t-ブチル、ペルオキシ酢酸t-ブチル、ペルオキシ安息香酸t-アミル又はペルオキシ安息香酸t-ブチル、ジアルカノイルペルオキシド又はジベンゾイルペルオキシド、例えば、ジイソブタノイルペルオキシド、ビス(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン又はジベンゾイルペルオキシド、並びに、ペルオキシ炭酸エステル、例えば、ペルオキシ二炭酸ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)、ペルオキシ二炭酸ビス(2-エチルヘキシル)、ペルオキシ二炭酸ジ-t-ブチル、ペルオキシ二炭酸ジアセチル、ペルオキシ二炭酸ジミリスチル、ペルオキシイソプロピル炭酸t-ブチル又はペルオキシ-2-エチルヘキシル炭酸t-ブチル。油に容易に溶解するアゾ開始剤で使用されるのは、例えば、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)又は4,4'-アゾビス
(4-シアノペンタン酸)である。
【0017】
使用されるラジカル開始剤は、好ましくは、以下のものを含む群から選択される化合物である:ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) 21;Akzo Nobel製のTrigonox(登録商標)グレード)、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸t-アミル(Trigonox(登録商標) 121)、ペルオキシ安息香酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) C)、ペルオキシ安息香酸t-アミル、ペルオキシ酢酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) F)、ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサン酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) 42 S)、ペルオキシイソブタン酸t-ブチル、ペルオキシジエチル酢酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) 27)、ペルオキシピバル酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) 25)、ペルオキシイソプロピル炭酸t-ブチル、(Trigonox(登録商標) BPIC)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(Trigonox(登録商標) 101)、ジ-t-ブチルペルオキシド(Trigonox(登録商標) B)、クミルヒドロペルオキシド(Trigonox(登録商標) K)及びペルオキシ-2-エチルヘキシル炭酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) 117)。もちろん、上記で挙げたラジカル開始剤の混合物を使用することも可能である。
【0018】
使用する開始剤の量は、当該モノマーに基づいて、0.02〜15mol%の範囲、好ましくは、0.05〜3mol%の範囲である。本発明の方法においては、開始剤は、その溶解度に応じて、C1-C4-アルコール中の溶液として使用する。そのような溶液では、開始剤の濃度は、該溶媒に基づいて、0.02〜2mol%の範囲、好ましくは、0.1〜2mol%の範囲である。
【0019】
適切な重合媒体は、極性有機溶媒である。該溶媒は、どのような混合比のビニルラクタムとも混和性であり得るように充分な親水性を有していなければならない。さらに、該溶媒は、還流が形成可能となるように、重合条件下で沸騰しなければならない。適切なものは、例えば、脂肪族又は芳香族のハロゲン化炭化水素、例えば、クロロホルム、四塩化炭素、ヘキサクロロエタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン及び液状のC1-又はC2-クロロフルオロ炭化水素、脂肪族C2-C5-ニトリル、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル又はバレロニトリル、直鎖又は環状の脂肪族C3-C7-ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-又は3-ヘキサノン、2-、3-又は4-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、直鎖又は環状の脂肪族エーテル、例えば、ジイソプロピルエーテル、1,3-又は1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン又はエチレングリコールジメチルエーテル、炭酸エステル、例えば、炭酸ジエチル、並びに、ラクトン、例えば、ブチロラクトン、バレロラクトン又はカプロラクトンである。適切な一価、二価又は多価アルコールは、特に、C1-C8-アルコール、C2-C8-アルカンジオール及びC3-C10-トリオール又はポリオールである。それらの例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、及び、エチレングリコール、プロピレングリコール又は1,3-プロパンジオールである。
【0020】
使用するモノアルコキシアルコールは、特に、C1-C6-アルコキシ基で置換されている上記C1-C8-アルコール及びC2-C8-アルカンジオール及びC3-C10-トリオールである。その例は、メトキシメタノール、2-メトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、3-メトキシプロパノール、2-メトキシブタノール、3-メトキシブタノール、4-メトキシブタノール、2-エトキシエタノール、2-エトキシプロパノール、3-エトキシプロパノール、2-エトキシブタノール、3-エトキシブタノール、4-エトキシブタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-イソプロポキシプロパノール、3-イソプロポキシプロパノール、2-イソプロポキシブタノール、3-イソプロポキシブタノール、4-イソプロポキシブタノール、2-(n-プロポキシ)エタノール、2-(n-プロポキシ)プロパノール、3-(n-プロポキシ)プロパノール、2-(n-プロポキシ)ブタノール、3-(n-プロポキシ)ブタノール、4-(n-プロポキシ)ブタノール、2-(n-ブトキシ)エタノール、2-(n-ブトキシ)プロパノール、3-(n-ブトキシ)プロパノール、2-(n-ブトキシ)ブタノール、3-(n-ブトキシ)ブタノール、4-(n-ブトキシ)ブタノール、2-(s-ブトキシ)エタノール、2-(s-ブトキシ)プロパノール、3-(s-ブトキシ)プロパノール、2-(s-ブトキシ)ブタノール、3-(s-ブトキシ)ブタノール、4-(s-ブトキシ)ブタノール、2-(t-ブトキシ)エタノール、2-(t-ブトキシ)プロパノール、3-(t-ブトキシ)プロパノール、2-(t-ブトキシ)ブタノール、3-(t-ブトキシ)ブタノール、4-(t-ブトキシ)ブタノールである。
【0021】
特に適しているのは、C1-C4-アルコール、好ましくは、エタノール又はイソプロパノールである。イソプロパノールを溶媒として使用するのが特に好ましい。
【0022】
該重合は、通常、5〜9の範囲の中性pHで実施する。必要な場合、そのpHは、塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム溶液)又は酸(例えば、塩酸、乳酸、シュウ酸、酢酸又はギ酸)を加えることにより、調節及び/又は維持する。
【0023】
比較的低分子量であることが望ましい場合、それらは、重合混合物に調節剤を添加することにより、確立することができる。適切な調節剤は、例えば、アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド及びイソブチルアルデヒド、ギ酸、ギ酸アンモニウム、硫酸ヒドロキシルアンモニウム及びリン酸ヒドロキシルアンモニウムである。さらに、有機的に結合した形態の硫黄を含んでいる調節剤を使用することもできる。そのような調節剤は、例えば、ジ-n-ブチルスルフィド、ジ-n-オクチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジ-n-ブチルジスルフィド、ジ-n-ヘキシルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド及びジ-t-ブチルトリスルフィドである。好ましくは、該調節剤は、SH基の形態の硫黄を含んでいる。そのような調節剤の例は、n-ブチルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン又はn-ドデシルメルカプタンである。特に好ましいのは、水溶性の硫黄含有重合調節剤、例えば、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩、並びに、例えば、チオグリコール酸エチル、システイン、2-メルカプトエタノール、1,3-メルカプトプロパノール、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオール、1,4-メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオグリセロール、ジエタノールスルフィド、チオジグリコール、エチルチオエタノール、チオ尿素及びジメチルスルホキシドなどの化合物である。適切なさらなる調節剤は、アリル化合物、例えば、アリルアルコール若しくは臭化アリル、ベンジル化合物、例えば、塩化ベンジル、又は、ハロゲン化アルキル、例えば、クロロホルム若しくはテトラクロロメタンである。好ましい実施形態では、調節剤は、計量して、適切な場合には、C1-C4-アルコール中の溶液として、反応混合物中に供給される。
【0024】
本発明の方法は、該疎水性モノマーの少なくとも90mol%が完全に反応したとき、少なくとも10mol%の該N-ビニルラクタムを重合混合物に添加するように実施される。
【0025】
本発明の方法においては、該モノマー(適切な場合には、C1-C4-アルコール中の溶液として)は、計量して反応混合物中に供給される(フィード法)。本発明の一実施形態では、水溶性N-ビニルラクタムIの(N-ビニルラクタムIの総量に基づいて)20mol%まで、好ましくは、15mol%まで、特に、10mol%までと、少量の開始剤溶液と、溶媒(好ましくは、エタノール又はイソプロパノール)を最初に導入する。次いで、その混合物を反応温度とし、残りの量のモノマーを、連続的に又は数回に分けて、開始剤溶液の残余と同時に、また、適切な場合には調節剤と同時に、計量して供給する。一般に、この計量供給添加は、(使用するバッチの寸法、及び、濃度に応じて)2〜14時間にわたり、好ましくは、3〜12時間にわたり、理想的には、4〜11時間にわたり、行われる。該反応混合物中のモノマーの濃度は、反応混合物に基づいて、10〜80重量%の範囲、好ましくは、20〜75重量%の範囲、特に、25〜70重量%の範囲である。この場合、反応混合物を望ましい反応温度とした後、開始剤溶液を、連続的に又は数回に分けて、特に、2.5〜16時間にわたり、好ましくは、3.5〜14時間にわたり、特に、5〜12.5時間にわたり流す。
【0026】
当該重合に対して使用される疎水性モノマーの総量の少なくとも90mol%が重合された後、当該重合に対して使用されるビニルラクタムの総量の5〜25mol%のさらなる量Iを、材料物質の直線状の若しくは変動可能な流れで連続的に添加する方法又は数回に分けたバッチ式で添加する方法で、添加するが、ここで、この量Iは、該量Iのビニルラクタムの添加が該疎水性モノマーの総添加時間の110%〜150%後に完了するように添加する。材料物質の変動可能な流れで連続的に添加する場合、この量Iの少なくとも60%は、該量Iの添加時間の50%以内で反応混合物に添加する。該量Iを数回に分けたバッチ式で添加する場合、上記と同様に、この量Iの少なくとも60%を該量Iの添加時間の50%以内で反応混合物に添加することができるように、その量を絶対的な添加時間(時間)に応じて3〜7の幾つかの等しいサイズの部分に分割するが、ここで、第1の部分は、該量Iの添加時間の時間ゼロにおいて反応混合物に添加する。材料物質の直線状の流れで連続的に添加する場合、連続的な計量供給添加を開始する前に、該量Iの総量の5〜10%を該量Iの添加時間の時間ゼロにおいて上記と同様にバッチ式で反応混合物に添加することも可能である。
【0027】
本発明のこの方法の他に、本発明のポリマー溶液の濁度を最小限度に抑える既知のさらなる方法も、それらが本明細書に記載した本発明の方法と相反するものでなければ、本発明の方法と組み合わせることが可能である。
【0028】
該重合反応は、還流条件下で行う。これに関連して、「還流条件」は、液体重合混合物が沸騰し、容易に揮発する成分(例えば、当該溶媒及び/又は疎水性モノマー)が蒸発し、冷却された結果として再度凝縮することを意味する。還流条件は、温度と圧力を制御することにより維持する。
【0029】
反応温度は、通常、60〜90℃の範囲であるが、130℃までの温度とすることも可能である。該反応は、大気圧にて、自己圧下(under autogenous pressure)で又は保護ガスゲージ圧力下で行うことができる。保護ガスゲージ圧力の場合、常に沸騰しているように圧力を調節する。当業者は、相対蒸気圧を用いて、適切な圧力範囲を決定することができる。通常、該圧力は、本発明においては、2MPaを超えない。当該重合は、0.05〜2MPaの圧力で、好ましくは、0.08〜1.2MPaの圧力で、特に、0.1〜0.8MPaの圧力で行うことができる。
【0030】
該重合は、撹拌装置を備えたボイラー内で行う。適切な撹拌装置は、アンカー型撹拌機、プロペラ撹拌機、クロスブレード撹拌機、Mik撹拌機、又は、当業者には既知の溶液重合に適した他の撹拌機である。さらに、モノマー、開始剤溶液及び適切な場合には調節剤(溶液)を計量して供給するための1以上の供給装置も存在している。
【0031】
さらに、液体重合混合物は存在していなくて気相が存在している反応器上部にあるボイラーには、冷却器が備え付けてある。
【0032】
当該重合条件下において、溶媒及び/又は疎水性モノマーは、沸点が低いという理由により、その一部が気相に変化するが、それに対して、沸点が高いN-ビニルラクタムは液体重合相のままである。溶媒の選択に応じて、該気相は、疎水性モノマーのみからなることも可能である。冷却器内では、溶媒及び/又は疎水性モノマーの気相が凝縮し、その結果、いわゆる還流を形成する。
【0033】
重合反応後、重合を完結させるために、必要に応じて、1種類以上の重合開始剤を添加し、ポリマー溶液を、例えば重合温度又は重合温度を超える温度まで、加熱する。上記で示したアゾ開始剤が適しているが、アルコール溶液中でのラジカル重合に適している他の慣用されている全ての開始剤(例えば、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキソ二硫酸塩、ペルカルボネート、ペルオキソエステル及び過酸化水素)も適している。これにより、重合反応は、99.9%の転化率まで行われる。重合中に形成される溶液は、通常、10〜70重量%のポリマー、好ましくは、15〜60重量%のポリマーを含んでいる。重合後、得られた溶液は、物理的な後処理、例えば、水蒸気蒸留又は窒素によるストリッピングなどに付すことも可能であり、水蒸気で揮発する不純物又は溶媒は、当該溶液から除去される。さらに、該溶液は、過酸化水素及び亜硫酸ナトリウム/t-ブチルヒドロペルオキシドなどを用いる漂白又は化学的後処理に付すことも可能である。
【0034】
水蒸気蒸留により得られたコポリマーの水溶液は、適切な場合には、従来技術に相当する乾燥プロセスにより、固体粉末に変換することができる。適切な乾燥プロセスは、水溶液状態から乾燥させるのに適している乾燥プロセスである。好ましいプロセスは、例えば、噴霧乾燥、噴霧流動床乾燥(spray fluidized-bed drying)、ドラム乾燥及びベルト乾燥などである。凍結乾燥及び凍結濃縮も用いることが可能である。
【0035】
本発明の方法により、両方のコモノマーの均一な濃度が常に維持され得ること及びモノマーの一方のみの濃縮が起こらないことが保証され、その結果、上述したような水不溶性ホモポリマーの形成が防止される。
【0036】
得られたポリマーのK値(1重量%濃度の水溶液又はエタノール溶液中で25℃で測定)は、一般に、10〜100の範囲、特に、15〜90の範囲、特に好ましくは、20〜80の範囲である。K値の測定については、以下の文献に記載されている: H.Fikentscher "Systematik der Cellulosen auf Grund ihrer Viskositat in Losung" [systematics of the celluloses based on their viscosity in solution], Cellulose-Chemie 13 (1932), 58-64 and 71-74, 及び Encyclopedia of Chemical Technology, Vol. 21, 2nd edition, 427-428 (1970)。
【0037】
それらの透明な溶解性(clear solubility)の尺度は、比濁計濁度単位FNU(又は、NTU)である。この比濁計濁度単位は、当該ポリマーの5重量%濃度水溶液中で25℃で測定し、人工的な乳白剤としてホルマジンを用いた校正により確定させる。厳密な方法については、下記実施例に記載してある。本発明により得られたポリマーは、20未満のFNU値、特に、10未満のFNU値、好ましくは、7未満のFNU値、特に好ましくは、5未満のFNU値を有する。
【0038】
本発明の方法で得られたポリマーは、特に、化粧品又は医薬調製物において、例えば、ヘアラッカー添加剤、ヘアセット添加剤若しくはヘアスプレー添加剤中の増粘剤若しくは皮膜形成剤として、皮膚用化粧品調製物若しくは免疫化学薬品中の増粘剤若しくは皮膜形成剤として、又は、医薬調製物中の活性成分放出剤として使用される。さらに、本発明により製造されたポリマーは、農業化学についての補助剤として、例えば、種子コーティングのための補助剤として、又は、徐放性肥料製剤のための補助剤として使用することもできる。さらに、該ポリマーは、工業的用途でのコーティングとして、例えば紙又はプラスチックのコーティング、またはホットメルト接着剤に適している。さらに、これらのポリマーは、転写捺染用の結合剤として、潤滑添加剤として、錆止め剤又は金属表面からの錆取り剤として、スケール防止剤又はスケール除去剤として、含油水からの石油の回収における補助剤として、石油及び天然ガスの生産や石油及び天然ガスの輸送における補助剤として、汚水の清浄剤として、接着剤の原料として、洗浄剤添加物として、及び、写真工業における補助剤としても適している。
【実施例】
【0039】
以下に記載されている実施例は、本発明を例証するためのものであるが、本発明を限定するものではない。
【0040】
実施例
比濁法による濁度測定(DIN 38404による改変法)で水性コポリマー溶液の濁度について測定した。この方法では、測定溶液により散乱された光を測光器で測定する。ここで、光散乱は、光線と溶液中の粒子又は液滴の間の相互作用に起因し、その数と大きさにより濁度の程度が決まる。ここで測定される量は、比濁計濁度単位FNU(又は、NTU)である。この比濁計濁度単位は、当該ポリマーの5重量%濃度水溶液中で25℃で測定し、人工的な乳白剤としてホルマジンを用いた校正により確定させる。FNU値が高いほど、その溶液はより濁っている。
【0041】
一般的な手順 実施例1〜実施例5
【表1】

【0042】
2L容量の撹拌反応器内で重合を行った。初期仕込物に窒素を10分間流した後、重合温度T℃(初期温度)まで加熱した。Tマイナス10%(℃)で、フィード1及びフィード2を開始した。フィード1は、v時間かけて計量供給し、フィード2は、x時間かけて計量供給した。フィード3は、示されているようにして、y時間かけて計量供給した。次いで、その混合物を後重合にa時間付した。フィード2が完了したとき、その混合物を、内部温度がTプラス10〜15%(℃)となるまで加熱した。次いで、フィード4を、80℃でz時間かけて計量供給した。フィード4が完了した時、該混合物をTプラス10〜15%(℃)で後重合にさらにb時間付した。次いで、溶媒を、初めに、熱蒸留で除去し、その後、水蒸気蒸留で除去した。水を添加して、示されている固体含有量とした。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中で開始剤の存在下に還流条件下で、少なくとも1種類の水溶性N-ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーをラジカル重合させることによりビニルラクタムコポリマーを製造する方法であって、該疎水性モノマーの少なくとも90mol%が完全に反応したとき、少なくとも10mol%の該N-ビニルラクタムを重合混合物に添加することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
使用する前記疎水性コモノマーが、1〜100g/Lの水溶解度を有するモノマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用する前記疎水性コモノマーが、大気圧下で60〜150℃の範囲の沸点を有するモノマーである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用する前記疎水性コモノマーが、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選択されるモノマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
使用する前記疎水性コモノマーが酢酸ビニルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
使用する前記N-ビニルラクタムがN-ビニルピロリドンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記重合を60〜150℃の温度で実施する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
使用する前記有機溶媒がアルコールである、請求項1〜7のいずれか1項に記載に方法。

【公開番号】特開2007−169651(P2007−169651A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−345255(P2006−345255)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】