説明

尿中のウイルス特異的核酸を検出するための組成物および方法

本発明は、尿試料における腎臓通過性のウイルス核酸またはウイルス起源の核酸の存在を、尿試料からの核酸の単離を伴ってか、または伴わずに検出することによる、ウイルス感染の診断またはモニタリングのための方法に関する。上記核酸の解析は、特異的プローブとの上記核酸のハイブリダイゼーションによるか、または特異的プライマーを用いた連鎖増幅反応により行われる。上記方法は、全てのウイルス性病原因子(RNAウイルス、DNAウイルス、エピソーム性ウイルスまたは組込み型ウイルスを含む)に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
現在、病原体の検出のために広く用いられる3種類のインビトロの診断システムが、存在する。これらは、生物学的試料からの病原性因子の直接的培養;感染性因子の産物または抗原の検出に基づく免疫学的アッセイ;および感染中に感染性因子に対して産生される抗体を検出し得る間接的免疫学的アッセイである。
【0002】
1番目のシステムでは、主な欠点は、生物学的試料は、病原性因子を伝染させる危険性があると考えねばならない。2番目のシステムおよび3番目のシステムでは、欠点は、収集される場合に、しばしば侵襲性であり、かつ、潜在的に感染性である試料の回収を含む。3番目のシステムでは、1つの主な欠点は、現在の感染と過去の感染とを識別する可能性がしばしばほとんどないことである。
【0003】
より最近では、患者から得られた血液試料もしくは血漿試料または細胞培養物における病原性因子の核酸の検出に基づく分子的診断方法が開発されている。これらのアッセイは、一般的に、上記免疫学的アッセイよりはるかに感度がよい。しかしながら、上記分子的診断方法は、特別な装置および有能なスタッフの存在を必要とし得る。さらに、生物学的試料(血漿、血液、または細胞培養物の場合)は、制御された温度条件下でなければ、不変の状態で保存することが困難であり、そして、この生物学的試料を取り扱うスタッフにとって生物災害の危険性があると考えられる。
【0004】
最近、腎臓通過性DNA(transrenal DNA;Tr−DNA)に基づく分子的診断方法は、同種異系移植の進行をモニタリングすること、胎児の性別を診断すること、および腫瘍マーカーの存在を検出することについて記載されている(非特許文献1;非特許文献2)。例えば、特許文献1は、妊婦の尿中の男性胎児DNAを検出するための分析方法を記載する。特許文献2は、腫瘍の(特に、結腸および膵臓の腺癌の)診断を目的とするシステムを記載する。特許文献3は、Tr−DNA核酸解析方法が、同種異系移植の進行をモニタリングするために用いられ得ることを教示する。尿中の腎臓通過性DNAの(1000塩基対未満の核酸フラグメントの形態での)存在はまた、非特許文献3;および非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7に記載された。
【0005】
腎臓通過性DNAの存在は、アポトーシスの現象の結果であるとして説明されている。アポトーシスまたはプログラムされた細胞死のプロセスでは、核DNAは、切断されてヌクレオソームおよびオリゴマーになり、これらのヌクレオソームおよびオリゴマーは、その後、アポトーシスプロセスの一部分としてファゴサイトーシスを受け、生物体から除去される(非特許文献8)。しかし、この分解されたDNAの一部分は、ファゴサイトーシスを免れ、血流中に現れ(非特許文献9)、上記特許において確認されているように尿中にも現れる。
【0006】
尿中の、尿路外部の供給源に由来するウイルスDNAの存在は、本出願より前には記載されていなかった。血漿におけるトランスフェクションされた細胞のゲノムから放出されたウイルスDNAの循環が、示されている。例えば、エプスタイン−バーウイルスDNAのフラグメントは、鼻咽腔癌を有する患者の血漿中に検出された(非特許文献10)。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)のウイルスDNAは、子宮頸癌を有する患者の血漿中に検出されている(非特許文献11)。しかしながら、これらのウイルスDNAは、これらの患者の尿中に検出されなかった。
【特許文献1】米国特許第6,251,638号明細書
【特許文献2】米国特許第6,287,820号明細書
【特許文献3】米国特許第6,492,144号明細書
【非特許文献1】Botezatuら著,Clinical Chemistry,2000年,第46巻,第8号,p.1078−84
【非特許文献2】Suら著,Ann.NY Acad.Sci.2004年,1022,p.81−89
【非特許文献3】Al−Yatamaら著,Prenat Diagn,2001年,21,p.399−402
【非特許文献4】Utting,M.ら著,Clin Cancer Res,2002年,8,p.35−40
【非特許文献5】Keiko Koideら著,Prenat Diagn,2005年,25,p.604−607
【非特許文献6】Mengjun Wangら著,Clinical Chemistry,2004年,50,p.211−213
【非特許文献7】Y.−H.Suら著,J.Mol.Diagn.,2004年,6,p.101−107
【非特許文献8】Umansky,S.R.ら著,Biochim.Biophys.Acta,1982年,655,p.9−17
【非特許文献9】Lichtenstein,A.V.ら著,Ann NY Acad Sci,2001年,945,p.239−249
【非特許文献10】Chan,K.C.ら著,Cancer Res,2002年,63,p.2028−2032
【非特許文献11】Pornthanakasem,W.ら著,BMC Cancer,2001年,1,p.2
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被験体の尿中のウイルス性病原体由来のDNA配列の検出により、被験体におけるそれらの病原体の存在を検出する方法を説明する。
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、被験体由来の尿における腎臓通過性ウイルス核酸特異的配列を検出および定量することによる、被験体におけるウイルス感染の診断およびモニタリングのための方法に関する。一実施形態では、上記核酸は、単離または精製される。この精製は、化学的方法または物理的方法を用いて行われ得る。これらの方法は、有機溶媒での抽出、濾過、沈殿、上記核酸に対するアフィニティを有する固体マトリックス上での吸収、およびクロマトグラフィーを含む。これらの方法において用いられる固体マトリックスは、シリカに基づく樹脂、イオン交換樹脂、またはヒドロキシアパタイトから構築され得る。別の実施形態では、上記固体マトリックスはシリカに基づく樹脂であり、上記単離または精製はカオトロピック因子存在下で行われる。別の実施形態では、上記核酸の分解を阻害する1つ以上の物質は、尿試料に添加される。これらの物質は、イオンキレート剤、変性剤、およびイオン性洗浄剤を含む。本発明の方法において用いられるイオンキレート剤の例は、EDTAである。本発明の方法において用いられる変性剤の例は、グアニジンHClまたはグアニジンイソチオシアネートである。本発明の方法において用いられるイオン性洗浄剤の例は、N−ラウリルサルコシンまたはドデシル硫酸ナトリウムである。一実施形態では、単離または精製された核酸は、ウイルス核酸の検出のために用いられる。
【0009】
他の実施形態では、上記方法はまた、(例えば、遠心分離または濾過による、細胞体に結合した画分からの無細胞画分の分離を用いた)上記尿試料の分画をも含む。
【0010】
上記核酸の解析は、以下の技術のうちの1つを用いて行われる:上記核酸のハイブリダイゼーション、サイクリングプローブ反応、ポリメラーゼ連鎖反応、ネステッドポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、セミネステッドPCR、1本鎖コンフォメーション多型、リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅、および制限酵素断片長多型。別の実施形態では、PCRは、HIV−1のGAG遺伝子またはPOL遺伝子に特異的な1つ以上のプライマーを用いて行われる。これらのプライマーの例は、本明細書中に配列番号1〜11として記載されている。
【0011】
別の実施形態では、上記ウイルス核酸のサイズは、約1000bpより短い。好ましい実施形態では、上記ウイルス核酸のサイズは、約100bpと約200bpとの間である。
【0012】
本発明の方法は、全てのウイルス性病原因子(RNAウイルス、DNAウイルス、エピソーム性ウイルスまたは組込み型ウイルスを含む)に適用可能である。それらの方法はまた、組込み型ウイルス(例えば、遺伝子治療において利用されるアデノウイルスまたはレンチウイルス)にも適用される。特に、上記方法は、以下のウイルスに適用される:レトロウイルス(組換え型および天然の、HIV−1、HIV−2、痘瘡ウイルス、ポリオウイルス、単純疱疹ウイルス(HSV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)およびアデノウイルス(AAV)を含む)。いくつかの実施形態では、上記ウイルス性因子は、エプスタイン−バーウイルス(EBV)およびHIV−1である。一実施形態では、本発明の方法は、インビトロで行われる。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、被験体におけるウイルス感染をモニタリングするための方法に関する。上記方法は、被験体由来の第一の尿試料における腎臓通過性核酸の量を定量する工程;被験体由来の第二の尿試料における上記腎臓通過性ウイルス核酸の量を定量する工程;および被験体由来の上記第一の尿試料における上記腎臓通過性ウイルス核酸の量と、上記第二の尿試料における上記腎臓通過性ウイルス核酸の量とを比較し、それによって、被験体における上記ウイルス感染をモニタリングする工程を包含する。この実施形態の別の局面では、上記方法はさらに、被験体に、上記ウイルス感染を減少させるか、または阻害する化合物を投与する工程を包含する。必要に応じて、上記ウイルス感染はHIV感染であり、上記化合物は抗ウイルス性因子である。この実施形態の別の局面では、上記定量は、それらの病原因子に特異的な分子プローブとの対の生成、ハイブリダイゼーション、PCR、ネステッドPCR、セミネステッドPCR、SSCP、LCRおよびSDAから選択される手段により行われる。この実施形態の別の局面では、上記方法はさらに、上記尿試料を分離して、上記腎臓通過性核酸を含む無細胞画分にする工程を包含する。この分離は、遠心分離を用いて行われ得る。この実施形態の核酸は、100bpと200bpとの間であり得る。この実施形態の別の局面では、被験体は、再発性ウイルス感染を発症する危険に瀕している。
【0014】
別のその実施形態では、本発明は、尿中のウイルス核酸の検出のための、以下を含むキットに関する:尿からの腎臓通過性ウイルス核酸の分画および/または抽出のための試薬および/または材料、DNAプローブ、または少なくとも1つのウイルス性因子に対して特異的なオリゴヌクレオチド(プライマー)の対。この実施形態の一局面では、上記プローブは、HIV−1のGAG遺伝子またはPOL遺伝子に対して特異的なPCR反応のためのプライマーである。これらのプライマーの例は、本明細書中に配列番号1〜11として記載されている。
【0015】
そうでないと定義されない限り、本明細書中に用いられる全ての専門用語および科学的用語は、本発明が関係する分野における当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと類似または均等の方法および材料が、本発明の実施または試験において用いられ得るが、適切な方法および材料は以下に記載される。本明細書中に言及されている全ての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参考として全体が援用されている。矛盾する場合、本明細書(定義を含む)が支配する。さらに、材料、方法および例は、ただ説明のためであり、制限することを意図されていない。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本定義は、本発明の目的のために提供されている:
アンプリコン:(例えば、PCRにより)複製される任意の比較的小さいDNAフラグメントに対する用語。
【0018】
増幅:特定のDNAフラグメントのコピー数の増加が、インビボまたはインビトロで生じ得る。
【0019】
アポトーシス:細胞の齢、または細胞の健康状態および条件が指示した場合の、正常に機能するヒト細胞および動物細胞におけるプログラムされた細胞死。DNAの切断により、ヌクレオソームサイズのDNAフラグメントおよびそのオリゴマーのいわゆるラダーパターンを与えるフラグメントになることにより特徴づけられる、死にかかっている細胞による代謝活性を必要とする活性プロセス。
【0020】
カオトロピック:水の熱力学的構造を乱す化学物質(例えば、イオン(例えば、SCN、ClO4−およびグアニジン))の性質。この性質は、より低極性、かつ、より疎水性の物質が、水中でより可溶性となることを可能にする。生物学的レベルでの影響は、タンパク質の変性である。
【0021】
エピソーム:その環状DNA分子は細胞染色体と独立して複製してもよく、または、染色体に組み込まれて染色体の一部分として複製してもよい。
【0022】
遺伝子:mRNAをコードするために必要な配列およびこれらの配列の発現を制御するために必要な配列を含むDNAフラグメント。
【0023】
ゲノム:(真核生物の中の)染色体構造体に含まれる生物体の遺伝子のセット全体。
【0024】
サイクリックプローブ反応:CPT反応は、キメラプローブとその相補的1本鎖標的DNAとのハイブリダイゼーションを可能にする、一定の特定温度で行われる。生じた標的−プローブ二重鎖内で、RNase Hは、DNA−RNAハイブリッドを認識し、このプローブのRNA部分を特異的に切断する。切断されたフラグメントは、反応温度で安定でなく、上記標的から解離する。次いで、上記標的は別のプローブ分子と自由にハイブリダイゼーションし、このサイクルがくり返される。上記プローブフラグメントは蓄積し、標的の検出のための基礎として働く。時間がたつと、切断されたプローブフラグメントの蓄積は線形動態に従い、その結果、標的の量は、定量され得る。
【0025】
ハイブリダイゼーション:1本鎖DNAまたは1本鎖RNAにおける相補配列がお互いに対となる能力を利用して二重らせんを形成する、広く用いられる技術。ハイブリダイゼーションは、2つの相補DNA配列の間、1本鎖DNAと相補RNAとの間、または2つのRNA配列の間で起こり得る。この技術は、特異的配列を検出および単離するためか、相同性を測定するためか、または1本鎖もしくは両鎖の他の特徴を規定するために用いられる。
【0026】
感染:体組織における微生物の侵入および増幅。この微生物の侵入および増幅は、臨床的に不明確であり得るか、または競合的代謝、毒素、細胞内複製もしくは抗原抗体応答に起因して、局所的細胞傷害を生じ得る。
【0027】
リガーゼ連鎖反応:PCRに類似するDNA増幅の方法。LCRは、ヌクレオチドの重合によりアンプリコンを生成するのではなく、プローブ分子を増幅するので、LCRはPCRと異なる。各DNA鎖毎に2つのプローブが用いられ、一緒にライゲーションされて単一プローブを形成する。LCRは、この反応を駆動するためにDNAポリメラーゼ酵素とDNAリガーゼ酵素との両方を用いる。PCRと同様に、LCRは、この反応を駆動するためのサーマルサイクラーを必要とし、各サイクルは、標的核酸分子の倍加を生じる。LCRは、PCRよりも高い特異性を有し得る。
【0028】
ネステッドPCR:元のものよりも内側のプライマーを用いて先のPCRの産物に対して行われる第二のPCR。これは、PCRの感度および特異性を顕著に向上させる。
【0029】
ネステッドプライマー:第一のPCRサイクルで得られたアンプリコンに対して内側の選択されたプライマー。第一サイクルの非特異的産物は、第二サイクルにおいて増幅されないので、少なくとも1つのネステッドプライマーを用いるこの増幅プロセスは、特異性を向上させる。
【0030】
核酸:3’,5’ホスホジエステル結合により結合された、ヌクレオチドの線状ポリマー。DNA(デオキシリボ核酸)では、糖基はデオキシリボースであり、ヌクレオチドの塩基はアデニン、グアニン、チミンおよびシトシンである。RNA(リボ核酸)は、糖としてリボースを有し、ウラシルはチミンに取って代わる。DNAは、塩基配列の形態の、遺伝的情報の安定な保管場所として機能する。RNAは、いくつかのウイルスに類似の機能を有するが、より通常には、構造的能力では、情報中間体(mRNA)、アミノ酸の輸送体(tRNA)として働くか、または、いくつかの新しく発見された例では、酵素として働く。
【0031】
オリゴヌクレオチド/ポリヌクレオチド:ホスホジエステル結合により結合された2つ以上のヌクレオチドの直鎖状配列。約20ヌクレオチドの長さを超えると、用語「ポリヌクレオチド」が、一般的に用いられる。
【0032】
病原性因子:病原体は、その宿主に疾患を引き起こし得る生物学的因子である。病原体の類義語は、「感染性因子」である。用語「病原体」は、多細胞生物体の正常生理を破壊する因子に関して最も頻繁に用いられる。
【0033】
ペレット:細胞が存在する場合、通常、細胞画分を含む沈殿物、または生物学的試料を遠心分離することにより得られ得る沈殿物。
【0034】
ポリメラーゼ:核酸の増幅に利用される酵素。この用語は、DNAポリメラーゼの全ての改変体を含む。
【0035】
プライマー:新しいデオキシリボヌクレオチドがDNAポリメラーゼにより添加され得る、短い予め存在するポリヌクレオチド鎖。
【0036】
PCR:増幅されるべき標的DNAのうちの2つの領域(各鎖について1つ)に相補的であり、過剰のデオキシリボヌクレオチドおよびTaqポリメラーゼという熱安定性DNAポリメラーゼの存在下で標的DNA(純粋である必要はない)に添加される、2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーを含む、ポリメラーゼ連鎖反応。一連の(典型的には、30回)の温度サイクルでは、標的DNAは、変性され(90℃付近)、プライマーに対してアニーリングされ(典型的には、50〜60℃)、そして、娘鎖はプライマーから伸長される(72℃)、これがくり返される。この娘鎖自身は次のサイクルの鋳型として作用するので、両プライマーにマッチングするDNAフラグメントは、線形にではなく、指数関数的に増幅される。
【0037】
プローブ:放射性に、またはいくつかの他の検出可能な分子(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニンまたはフルオレセイン)によるかのいずれかで標識されている目的の遺伝子または配列に対応する、DNAまたはRNAのフラグメントに対する一般用語。
【0038】
精製/除染/滅菌:結果として、精製手順が向けられる物質を60%、好ましくは75%、およびなお一層好ましくは90%含む試料となるように、試料から不純物を除去するプロセスを指す。
【0039】
制限酵素断片長多型(RFLP):ゲノムDNAの特定領域が(典型的には、PCRにより)増幅され、特定の制限酵素で切断される場合に得られる特徴的多型パターンを比較することにより遺伝的相関が確立されるのを可能にする方法。そのようなパターンにおける変化は、これらの酵素の認識部位を作製または破壊する変異により生成される。
【0040】
試料:この用語は広く解釈され、溶液状かまたは固体基体に結合した核酸(DNAまたはRNA)を含む任意の形態を含む。ここで、「核酸」の定義は、(例えば、固体基体に結合される(例えば、サザンブロットの場合)か、または溶液中の)ゲノムDNA、cDNA、および他の形態を含む。
【0041】
ハイブリダイゼーションによる2つの核酸配列の組み合わせは、G塩基とC塩基との間、またはA塩基とT塩基との間、塩基またはこれらの塩基のアナログの間の水素結合に起因して形成される。これらの組み合わせは相補的であり、DNAらせんは逆平行である。このハイブリダイゼーションの組み合わせは、一方の配列(またはらせん)が溶液中にあり、他方が(例えば、FISH[蛍光インサイチュハイブリダイゼーション]方法によって)固相に結合された状態か、または代わりに両者の配列が溶液状である状態で作製され得る。
【0042】
1本鎖コンフォメーション多型(SSCP):SSCPは、異なる二次構造およびゲルを通じた移動度の測定可能な差を生じる、配列におけるわずかな差(しばしば、一塩基対)に基づく1本鎖核酸の電気泳動分離である。
【0043】
鎖置換増幅(STA):STAは、HincIIがその認識部位のヘミホスホロチオエート形態の改変されていない鎖にニックを入れる能力、およびDNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼクレノウフラグメント欠損(エキソ−クレノウ)がニックの3’末端を伸長して下流DNA鎖を置換する能力に基づく、等温の、インビトロの核酸増幅技術である。指数関数的増幅は、センス反応により置換された鎖がアンチセンス反応に対する標的として働き、およびその逆も同様である、センス反応とアンチセンス反応とのカップリングに起因する。
【0044】
標的配列:ハイブリダイゼーション、増幅、または他の方法または方法の組み合わせにより解析されるべき核酸配列。
【0045】
Tm(融解温度):特定の二重らせんDNA集団が解離して1本鎖ポリマーとなる温度。ポリヌクレオチドフラグメントについてのこの温度を算出するための式は、当該分野において周知である:Tm=81.5+0.41(% G+C)(AndersonおよびYoung,「Quantitative Filter Hybridization」,Nucleic Acid Hybridization[1985])。40塩基対未満のオリゴヌクレオチドについて、単純化された式が用いられ得る:
Tm=3℃×(G+C)+2×(A+T)。
【0046】
Tr−DNA/RNA:腎臓通過性DNA/RNA、すなわち、腎臓障壁を通過した後の尿中に存在するDNA/RNA。
【0047】
尿路:身体からの尿の除去に関わる器官および管を含む。
【0048】
(ウイルス病原体感染に関する尿の核酸)
本発明は、ウイルス感染の後、ウイルス核酸またはウイルス起源の核酸は切断されて、尿中に見出される比較的短いフラグメントになるという知見に基づいている。これら病原体特異的核酸の多くは腎臓通過性障壁を通過し(これらの核酸は、一般的に、TrNAまたはTrDNAまたはTrRNAと呼ばれる)、分子的方法により、尿中に無細胞低分子量フラグメント(この長さは、1000ヌクレオチド未満であるが、好ましくは、500bp未満の長さであり、より好ましくは、250〜300bp未満の長さであるかまたは250bp未満の長さである)として検出され得る。これらの腎臓通過性核酸は、被験体の尿路外部に位置するウイルスに由来する。本明細書中で用いられる場合、用語「ウイルス核酸」は、ウイルス起源の核酸を含む。他のウイルス特異的核酸は、腎臓内にあるウイルスまたは細胞からはく落し得、従って、尿中で検出されるために腎臓通過性障壁を通過する必要がない。さらに、いくつかのウイルス特異的核酸は、腎臓通過性障壁を通過すること、または腎臓においてウイルスにより産生されることの他に、他の機構により尿中で見出され得る。
【0049】
尿中の腎臓通過性核酸(Tr−NA)の存在は、異種組織または器官の移植を受けた宿主の場合、男性胎児を有する妊婦の場合、および特定のマーカー遺伝子により特徴付けられる腫瘍の場合にのみ、以前に検出された。本発明に従ったウイルス感染の場合における、ウイルス起源の腎臓通過性核酸の存在はまた、そして、好ましくは、血尿または腎臓障壁の破裂をもたらすかもしくは腎臓の正常な完全性を変える病理のいずれもが存在しない非尿管感染の場合にも検出される。
【0050】
ウイルス起源の腎臓通過性核酸(Tr−NA)は、尿路において喪失または放出され、かつ尿中に見い出されるウイルスのゲノムと関連もしないし、由来もしない。代わりに、腎臓通過性核酸は、糸球体−腎臓濾過機構により濾過される。従って、腎臓通過性核酸フラグメントの大きさは、一般的に、DNAが通常高分子量、および1000塩基または1000塩基対を超える長さを有する、他の状態とは対照的に、約1000塩基対よりも小さい(例えば、約500塩基対よりも小さい、約300塩基対よりも小さい、約250塩基対よりも小さい、または約100塩基対と約200塩基対との間である)。
【0051】
従って、本発明では、極微量のTrNAが遠心分離中に細胞と共に沈殿し得るとはいえ、ウイルス起源の腎臓通過性核酸(TrDNA)は、一般的に、尿沈殿物中に見出されないが、その可溶性画分中に見出される。
【0052】
この知見は、尿中の病原性ウイルスに由来する尿性核酸または腎臓通過性核酸の存在を確証し、従って、ウイルス性病原体により引き起こされる全ての感染性疾患の診断に適用可能である。
【0053】
従って、実施形態では、本発明は、尿試料におけるウイルス核酸(好ましくは、ウイルスDNAまたはウイルス起源のRNA)の存在を決定することによる、ウイルス感染の診断またはモニタリングのための方法に関する。この方法は、検査室実施において一般的に用いられる方法(例えば、ハイブリダイゼーション、PCR、ネステッドPCR、セミネステッドPCR、SSCP、LCRおよびSDA)を用いて、腎臓通過性ウイルス核酸の存在を決定する工程を包含する。
【0054】
特定の実施形態では、本発明に従った方法は、腎臓通過性ウイルス核酸の存在の決定の前の、尿試料の最初の処理を含む。一実施形態では、本発明は、DNAまたはRNAの分解を阻害する物質での尿試料の前処理を含む。これらの物質としては、好ましくは、EDTA、グアニジンHCl、グアニジンイソチオシアネート、N−ラウリルサルコシン、およびドデシル硫酸ナトリウムからなる群から選択される酵素阻害剤(例えば、キレート剤、洗浄剤、または変性剤)、DNase阻害剤またはRNase阻害剤が挙げられる。
【0055】
別の実施形態では、腎臓通過性ウイルス核酸の存在の決定の前には、無細胞低分子量核酸(DNA/RNA)から尿の細胞画分を分離する目的で、必要に応じて、尿試料の遠心分離または濾過が行われる。しかしながら、尿試料はまた、分画なしで利用され得る。遠心分離は、好ましくは、2500gと4500gとの間の速さで、より好ましくは、3000gと4000gとの間の速さで行われる。濾過は、0.1μmと5.0μmとの間の孔サイズ(より好ましくは、0.2μmと1.0μmとの間、なお一層好ましくは、0.45μmと0.8μmとの間の孔サイズ)を有するフィルターを通して実行されることが好ましい。細胞画分から可溶性画分を分離するための、均等な方法も、用いられ得る。
【0056】
腎臓通過性核酸に対する、必要に応じた単離または精製および定量は、当該分野において既知の化学的方法または物理的方法の使用により達成される。それは、有機溶媒での抽出、濾過、沈殿、(例えば、イオン交換を介する)固体マトリックス上での吸収、アフィニティクロマトグラフィーもしくは他の分子排除クロマトグラフィーまたはこれらの方法の組み合わせから選択される方法を用いた、少なくとも1つの精製工程を包含する。
【0057】
しかしながら、上記精製方法は、平均分子量として、1ヌクレオチドの分子量が330ダルトンの値を有するのを想定して、対応する分子量を有する、長さが1000ヌクレオチド未満であるDNA(一重らせんまたは二重らせん)の単離にとって適切でなければならない。いくつかの実施形態では、精製は、対応する分子量を有する、長さが500ヌクレオチド(nt)より小さいフラグメント(例えば、長さが300nt未満であるフラグメント、長さが250nt未満であるフラグメント、または長さが100塩基対と200塩基対との間の核酸(nt)であるフラグメント)に特異的である。
【0058】
腎臓通過性核酸の単離および/または精製は、当該分野において既知の化学的方法または物理的方法の使用により達成される。それは、有機溶媒での抽出、濾過、沈殿、固体マトリックス(例えば、シリカ樹脂、ヒドロキシアパタイト、またはイオン交換)上での吸収、(例えば、配列特異的捕捉または核酸特異的リガンドを介する)アフィニティクロマトグラフィーまたは他の分子排除クロマトグラフィーから選択される方法を用いた、1つ以上の精製工程を包含する。しかしながら、上記精製方法は、大きさが1000ヌクレオチド対より小さいDNA(一重らせんまたは二重らせん)の単離に適切でなければならない。なお一層好ましくは、上記精製は、500ヌクレオチドより小さいフラグメント、およびなお一層好ましくは、長さが、300塩基対未満または250塩基対未満であるか、または100個と200個の間の塩基もしくは塩基対であるフラグメントに特異的である。上記精製は、好ましくは、シリカ樹脂からなるがこれに限定されないマトリックス上で起こる。
【0059】
1つの好ましい実施形態では、上記DNA単離方法は、上記のような変性剤(例えば、尿素、グアニジンHCl、またはグアニジンイソチオシアネート)を用いて、室温で、尿試料を前処理することにより実行される。好ましくは、グアニジンイソチオシアネートが、利用される。次いで、この試料は、カオトロピック塩(グアニジンイソチオシアネート)の存在下、核酸と結合する固相(好ましくは、シリカ樹脂からなるマトリックス)に通される。次いで、この試料は、緩衝液(例えば、Tris−EDTA(Tris 10mM,EDTA 1mM))中または水中にて、収集または溶出される。
【0060】
別の好ましい実施形態では、腎臓通過性ウイルスNAの存在の特徴づけおよび決定は、以下からなる群から選択される技術により行われる:核酸のハイブリダイゼーション、サイクリングプローブ反応(F.Bekkaouiら,BioTechniques 20:240−248[1996])、ポリメラーゼ連鎖反応(M.Innisらによる、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications;Elsevier Publications,1990)、ネステッドポリメラーゼ連鎖反応、1本鎖コンフォメーション多型、リガーゼ連鎖反応(LCR)(F.Barany,PNAS USA,88:189−93[1991])、鎖置換増幅(SDA)(G.K.Terrance Walkerら,Nucleic Acid Res,22:2670−77[1994]および制限酵素断片長多型(RFLP)。当業者はまた、これらの方法の組み合わせ(例えば、PCR−制限酵素長多型、ここで、核酸は増幅され、次いで、アリコートに分割され、制限酵素で切断され、次いで、電気泳動によって分離される)を用い得る。
【0061】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、核酸の検出および/または定量的解析のための好ましい方法である。さらにより好ましいものは、上に定義された通りのネステッドPCR方法、または、2つのプライマーのうちの1つのみがアンプリコンに対して内側である、セミネステッドPCR方法である。
【0062】
上記方法の利点は、主に、生物学的試料を収集することの容易さ;腎臓通過性核酸が感染性でないという事実;および、核酸に適用され得る(フラグメントの形態でさえ適用され得る)分子診断方法の感度に関連づけられる。
【0063】
上記診断方法は、全てのウイルス性病原因子(RNAウイルス、DNAウイルス、エピソーム性ウイルス、または組込み型ウイルスを含む)に適用可能である。上記診断方法はまた、組換えウイルス(例えば、遺伝子治療において利用される、アデノウイルスまたはレンチウイルス)にも適用される。特に、上記方法は、好ましくは、以下のウイルスに適用される:組換え型および天然の、HIV−1、HIV−2、痘瘡ウイルス、ポリオウイルス、単純疱疹ウイルス(HSV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、およびアデノウイルス(AAV)。
【0064】
上記方法は、好ましくは、検出のためのGAG領域、POL領域、またはTAT領域におけるプローブまたはプライマーオリゴヌクレオチドを選択して、HIV−1ウイルスに対して適用される。検出が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行われる場合、特に、ネステッド(GAG)PCRまたはセミネステッド(POL)PCRにより行われる場合、特に好ましいプライマー対は、HIVのGAG領域に特異的な配列からなるプライマー対であり、そして、好ましくはIDN 1−4配列に対応するプライマー対およびHIV−1のPOL領域に特異的なプライマー対であり、好ましくはIDN 5−7領域に対応するプライマー対である。
【0065】
別のその実施形態では、本発明は、尿中の腎臓通過性ウイルスNAの検出およびモニタリングのための、以下を含むキットに関する:尿試料からの腎臓通過性DNAの分離および/または精製のための試薬および/または材料、DNAプローブ、または少なくとも1つのウイルス性因子に対する特異的オリゴヌクレオチド(プライマー)の対。反応チューブ、試料の前処理のための物質、プローブを標識するための酵素、およびDNAの増幅のための酵素は、必要に応じて存在し得る。
【0066】
好ましい実施形態では、上記キットは、組換え型および天然の、HIV−1、HIV−2、痘瘡ウイルス、ポリオウイルス、単純疱疹ウイルス(HSV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、アデノウイルス(AAV)に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーの対;または、さらにより好ましくは、以下に挙げられる配列からなる群から選択されるプライマー、および(好ましくは、ネステッド型またはセミネステッド型の)重合連鎖反応のための特異的試薬を含む。
【0067】
(尿の核酸の増幅および検出のための方法)
用語核酸は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそのフラグメント/部分を指し、および天然(例えば、ゲノムの)起源または合成起源のDNAまたはRNAを指す。核酸は、二重らせんまたは一重らせんを有し得、配列のセンス方向またはアンチセンス方向、平行らせん(5’→3’);逆平行らせん(3’→5’)も表し得る。用語オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよび核酸ポリマーは、均等であり、2個より多いデオキシリボ核酸塩基またはリボ核酸塩基からなる分子を指すと理解される。ヌクレオチド(塩基)の数およびオリゴヌクレオチドフラグメントの長さは、変化し得る。これらは、異なる方法で合成され得る。それらの配列は、慣習的に、5’で開始し、3’で終止すると定義される。これらの数は、配列の方向を示す。
【0068】
被験体の尿から単離されたDNAは、次いで、検出される目的で増幅され得る。増幅方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ネステッドPCR、セミネステッドPCR、1本鎖コンフォメーション多型解析(SSCP)、リガーゼ連鎖反応(LCR)および鎖置換増幅(SDA)が挙げられる。腎臓通過性DNAの検出はまた、少なくとも1つの標識されたプライマーのハイブリダイゼーションにより行われる。
【0069】
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が互いに相補的であると認識して、一緒に結合する(アニーリング)ことを可能にする方法である。相補性/相補的配列は、塩基間の相互作用に依存して、互いに相互作用するポリヌクレオチドの配列である。例えば、AGTC配列は、標準的ワトソン・クリック型塩基対合成に従って、TCAGと相補的である。しかしながら、他の組み合わせ(例えば、フーグスティーン型塩基対合成)は、当業者に周知である。完全相補配列または部分的相補配列を有することは、可能であり、このことは、効率または2つの配列の間の引力を決定するものである。平均相補性は、強い相補性が、それが結合された状態でいることを許容する条件下で、ハイブリダイゼーションすることを防ぐ。
【0070】
核酸配列がハイブリダイゼーションする能力は、周知の現象である。最初のハイブリダイゼーション方法は、MarmurおよびLane,PNAS USA,46:453(1960)ならびに461(1960)に記載されたが、それ以来、分子生物学における技術として完成されている。今日、用語「ハイブリダイゼーション」は、とりわけ、スロット/ドットハイブリダイゼーションおよびブロットハイブリダイゼーションを含む。ヌクレオチド配列が互いに認識する(ハイブリダイゼーション)ことを可能にする条件は、完全なハイブリダイゼーション(高い特異性を有する相補性)または部分的ハイブリダイゼーション(平均的な特異性を有する相補性)を生成するような方法で改変され得る。本出願では、用語「ハイブリダイゼーション」が用いられる時はいつでも、その条件は、平均的相補性または高い相補性を許容する条件を指すと理解すべきである。当業者は、逆平行会合として公知の、反対方向における2つの相補的配列の間のハイブリダイゼーションを促進するために、いくつの人工的配列が必要であるかを算出し得る。
【0071】
プローブは、人工的にまたは天然に生成され得、別の核酸配列との組み合わせを形成するオリゴヌクレオチドである。このプローブは、未知のDNAを含む試料における特異的配列を見い出す点で有用である。本特許では、全てのプローブは、シグナル分子(またはレポーター)に結合され得る。このレポーター分子は、プローブを(例えば、酵素反応(例えば、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ))、放射能、蛍光、または他のシステムにより)検出することを可能にする。
【0072】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、相補的プライマーおよび熱感受性ポリメラーゼを用いた、DNA配列の増幅の方法である。特異的な核酸の増幅において利用される酵素のうちの1種類は、Taq(Thermus aquaticus)ポリメラーゼと呼ばれるDNAポリメラーゼである。プライマーは、適切な条件下でポリヌクレオチド配列の合成がそこから開始され得るオリゴヌクレオチドである。プライマーは天然に(例えば、ポリヌクレオチドの酵素的切断により)存在しても、化学合成により得られてもよい。PCRで増幅された産物はしばしば、アンプリコンと呼ばれる。
【0073】
ネステッドPCRは、第一のプライマーセットよりも内側の第二のプライマーセット(ネステッドプライマーと呼ばれる)を用いて先のPCR産物に対して行われる、第二のPCRである。これは、PCRの感度および特異性を顕著に向上させる。ネステッドプライマーは、第一のPCRサイクルで得られたアンプリコンに対して内側のプライマーである。第一サイクルの非特異的産物は、ネステッドプライマーに対応する配列を欠くために、第二サイクルにおいて増幅されないので、少なくとも1つのネステッドプライマーを用いるこの増幅プロセスは、特異性を向上させる。セミネステッドPCRは、1つの新しいプライマーと元のプライマーのうちの1つとを用いる、第二のPCRである。このプロセスも、特異性を向上させる。
【0074】
リガーゼ連鎖反応(LCR)は、PCRに類似するDNA増幅の方法である。LCRは、ヌクレオチドの重合によりアンプリコンを生成するのではなく、プローブ分子を増幅するので、LCRはPCRと異なる。各DNA鎖毎に2つのプローブが用いられ、一緒にライゲーションされて単一プローブを形成する。LCRは、この反応を駆動するためにDNAポリメラーゼ酵素とDNAリガーゼ酵素との両方を用いる。PCRと同様に、LCRは、この反応を駆動するためのサーマルサイクラーを必要とし、各サイクルは、標的核酸分子の倍加を生じる。LCRは、PCRよりも高い特異性を有し得る。
【0075】
1本鎖コンフォメーション多型(SSCP)解析では、小さいPCR産物(アンプリコン)は変性されて、非変性ポリアクリルアミドゲルを通して電気泳動される。従って、このPCR産物がゲルの中に移動し、ゲルを通過する(そして変性剤から離れる)につれて、このPCR産物は配列依存性の(RNA二次構造と類似する)二次構造を回復する。1本鎖PCR産物の移動性は、それらの二次構造に依存する。従って、置換による配列の違いならびに挿入および欠失を含むPCR産物は、異なる移動性を有する。
【0076】
鎖置換増幅(SDA)は、制限酵素のプライマー指向性ニック形成活性およびエキソヌクレアーゼ欠損ポリメラーゼの鎖置換活性に基づく、等温の核酸増幅方法である。
【0077】
用語精製または単離は、結果として、精製手順が向けられる物質を50%、60%、75%、90%または90%を超えて含む試料となるように、試料から不純物を除去するためのプロセスを指す。
【0078】
核酸のハイブリダイゼーションの場合のストリンジェントな温度条件について、これらの用語は通常、核酸については最大値(Tm−5℃により表わされる)と、最小値(Tm−25℃により表わされる)との間の可変温度を指す。当該分野において用いられる技術は、準完全相同性により配列を識別するために、他のパラメーター(例えば、塩濃度)と組み合わせて、ストリンジェントな温度条件を利用する。
【0079】
ストリンジェントな条件は、当業者に公知であり、Ausubelら編集,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6において見出され得る。好ましくは、上記条件は、互いに少なくとも約65%、70%、75%、85%、90%、95%、98%または99%相同である配列が、互いにハイブリダイゼーションしたままであるようなものである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、6× SSC、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.02% BSAおよび500mg/mlの変性サケ精子DNAを含む高塩緩衝液における65℃でのハイブリダイゼーション、次いで、0.2× SSC、0.01% BSAにおける50℃での1回以上の洗浄である。
【0080】
第二の実施形態では、中程度のストリンジェンシーの条件下で、ヌクレオチド配列、またはそのフラグメント、アナログ、もしくは誘導体を含む核酸分子とハイブリダイゼーションし得る核酸配列が、提供されている。中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、6× SSC、5× Reinhardt溶液、0.5% SDSおよび100mg/mlの変性サケ精子DNAにおける55℃でのハイブリダイゼーション、次いで、1× SSC、0.1% SDSにおける37℃での1回以上の洗浄である。用いられ得る中程度のストリンジェンシーの他の条件は、当該分野において周知である。例えば、Ausubelら編集,1993,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,NYおよびKrieger,1990;GENE TRANSFER AND EXPRESSION,A LABORATORY MANUAL,Stockton Press,NYを参照のこと。
【0081】
第三の実施形態では、低いストリンジェンシーの条件下で、核酸分子、またはそのフラグメント、アナログ、もしくは誘導体とハイブリダイゼーションし得る核酸が、提供されている。低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、35% ホルムアミド、5× SSC、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、5mM EDTA、0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.2% BSA、100mg/mlの変性サケ精子DNA、10%(重量/容量)のデキストラン硫酸における40℃でのハイブリダイゼーション、次いで、2× SSC、25mM Tris−HCl(pH 7.4)、5mM EDTA、および0.1% SDSにおける50℃での1回以上の洗浄である。用いられ得る低いストリンジェンシーの他の条件は、当該分野において周知である(例えば、種間(cross−species)ハイブリダイゼーションに用いられるように)。例えば、Ausubelら編集,1993,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,NYおよびKriegler,1990,GENE TRANSFER AND EXPRESSION,A LABORATORY MANUAL,Stockton Press,NY;ShiloおよびWeinberg,1981.Proc Natl Acad Sci USA 78:6789−6792を参照のこと。
【0082】
本発明はまた、その必要のある被験体由来の尿試料におけるウイルス核酸を検出する、および/またはそのウイルス核酸の遺伝子型を決定するためのキットも提供する。上記キットは、配列番号1、3、5、9および11から選択される少なくとも1つのフォワードプライマーと、配列番号2、4、6、7、8および10から選択される少なくとも1つのリバースプライマーとを同一の包装または別々の包装のいずれかに含み、その使用のための説明書を含む。一実施形態では、このウイルス核酸は、HIVに由来する。
【0083】
本発明は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を制限しない以下の実施例に、さらに記載される。
【実施例】
【0084】
当業者は、本明細書中に記載される全ての方法論を、基本の原理的概念を変化させることなく改変し得る。
【0085】
(実施例1.試料の安定化および調製)
尿試料の調製および腎臓通過性DNAの解析についての全工程を、室温で行った。簡単に言うと、約50〜60mlの尿試料を、本研究に参加する各患者から収集した。尿試料中に存在し得るヌクレアーゼを阻害する目的で、収集後30分以内に、0.5M EDTAおよび0.5M Tris−HClからなる、8.0〜8.5の範囲にわたるpHの溶液を、10mMの終濃度で添加した。少なくとも3つの核分解酵素であるDNase I、DNase IIおよびホスホジエステラーゼが、尿において同定された。EDTAは、DNase Iおよびホスホジエステラーゼの活性を、二価の金属(例えば、Mg2+、Ca2+)および/またはそれらの活性に必要な他のものをキレート化することによって阻害する。DNase IIは、酸性環境において、最大限に活性である。尿にTris−HCl pH8.0緩衝液を補うことは、尿のpHを上昇させ、それによってDNase IIの活性を阻害する。
【0086】
より多くの量(例えば、100〜1000ml)の尿を、各被験体毎に採取し得る。これらのより多量の試料を濃縮し得、そして尿中に見出される非常に希薄なウイルス核酸のよい高濃度を与えるために用い得る。
【0087】
この安定化された尿試料を5mlのアリコートとして、−80℃で保存し得る。必要に応じて、25mlの食塩水を、対照として作用させる目的で凍結する。
【0088】
尿試料の調製、およびDNAの抽出のための他の方法は、参考として全体が援用されているPCT特許第WO 98/54364号に記載されている。
【0089】
(実施例2.尿の分画)
定量的Tr−DNA解析を含むTr−DNAに基づく適用には、尿の分画がしばしば必要となる。尿の分画は、Tr−DNA/タンパク質複合体、Tr−DNA全体、または特異的遺伝子マーカーの正確な定量に対する、尿中に存在する細胞由来の核タンパク質の影響を減少させる。我々の実験において、我々は、尿の分画、遠心分離および濾過についての2つの手順を用いた。両方の手順を、尿の収集の直後、検体にEDTA−Tris安定化混合物を補う前に実行した。尿の細胞が無傷であり、それらの成分が尿中に漏れ出ず、細胞性DNAをTr−DNAに混入させない限り、この条件で、尿を維持し得る。
【0090】
濾過のために、0.1〜5μmの範囲にわたる孔サイズを有し、減少された核酸結合能およびタンパク質結合能を有するフィルターを用い得る。フィルターの選択は、解析される標的に依存する。我々の実験において、我々は、両方Millipore製の、luer−lock 0.45μm Filter Units(カタログ番号SLHV033RS)または0.45μm 150ml Filter Unit STERICAP(カタログ番号SCHVU01RE)を用いた。濾過後、これらの試料に、EDTA−Tris保存溶液を補い、DNA抽出の下流のプロセスを開始するか、または等分して−80℃で凍結保存した。細胞を溶解することが公知の溶液(高濃度の塩またはカオトロピック因子)を適用することによって尿細胞画分をフィルターから抽出することにより、尿細胞画分を採取し得る。
【0091】
我々の実験における、遠心分離による尿の分画を、試料収集の直後、保存混合物の添加前に実行した。遠心分離を、室温で、3500×gと4000×gとの間の範囲にわたるRCFで、約15分間行った。上澄みを、注意深く回収し、上記の手順に従って尿の濾過のために操作した。主に細胞および細胞破片からなるペレットを、生理的溶液中に再懸濁し、−80℃で保存した。
【0092】
(実施例3.尿からの核酸の抽出および精製)
我々の実験において、我々は、2つの異なるフォーマットのシリカに基づくDNA抽出プロトコールを用いた。1つ目は真空駆動式であって、2つ目は遠心分離駆動式であった。
【0093】
(真空に基づく手順)
尿試料に、6M グアニジンチオシアネート(GITC)(AMRESCO,カタログ番号0380)を、終濃度3M以上になるまで添加した。この溶液を激しく混合し、10mlの開始尿容量につき0.25mlのWizardシリカ懸濁液(PROMEGA,カタログ番号A7141)を補った。DNAを捕捉するために、この混合物を連続的に1時間室温で回転させた。真空ラインにとり付けたミニカラム(PROMEGA,カタログ番号A7211)シリンジアセンブリにこの混合物を充填することにより、DNAを捕捉した樹脂を回収した。真空を適用することにより樹脂を回収し、5mlの3M GITC溶液で2回洗浄した。この樹脂を、さらに2回、80%エタノールおよび50mM NaClからなる溶液で洗浄した。次いで、上記ミニカラムを取り外し、上記樹脂を、1.5mlチューブにおいてベンチトップマイクロ遠心分離機により、さらに2回、96%エタノールで洗浄した。DNAを、尿開始容量1/20以下の容量のお湯を用いた短時間の遠心分離により溶出させた。
【0094】
(遠心分離に基づく手順)
尿試料に、6M グアニジンチオシアネート(GITC)(AMRESCO,カタログ番号0380)を、終濃度3M以上になるまで添加した。この溶液を激しく混合し、10mlの開始尿容量につき0.25mlのWizardシリカ懸濁液(PROMEGA,カタログ番号A7141)を補った。DNAを捕捉するために、この混合物を連続的に1時間室温で回転させた。約4000×gでの約5分間の室温での遠心分離により、DNAを捕捉した樹脂を回収した。ペレットにした樹脂を、GITC溶液で1回、洗浄緩衝液で1回洗浄し、次いで、ミニカラムに移し、さらに1回、96%エタノールで洗浄した。DNAを、お湯を用いた短時間の遠心分離により、マイクロ遠心分離チューブに溶出させた。DNAを、尿開始容量1/20以下の容量のお湯を用いた短時間の遠心分離により溶出させた。
【0095】
(実施例4.PCRプライマーの設計)
PCRの使用に基づいたTr−DNAの解析のためのプライマーを、2つの異なるサイズの標的フラグメント(すなわち、一方は60〜120bpの範囲内であり、他方は250〜400bpの範囲内である)のために選択した。また、全ての上記プライマーを、完全ヒトゲノム配列に対して比較した。上記プライマーを、FastPCRソフトウェアパッケージ(biocenter.helsinki.fi/bi/bare−1_html/oligos)を用いて設計した。ネステッドPCR解析のためのプライマーを、frodo.wi.mit.edu/cg−i−bin/primer3/primer3_www.cgiサイトで入手可能であるPrimer 3パッケージを用いて、内部のネステッドプライマーの融解温度が外部のプライマーの融解温度以上であるように、選択した。
【0096】
HIVのプライマーを、全9個のM型HIVサブタイプの認識のために選択した。最近改訂された命名法(すなわち、the 1999 Nomenclature Proposal:[hiv.lan1.gov/content/hiv−db/HTML/reviews/nomenclature/Nomen])に従って、HIV−1 M群サブタイプを、系統発生的に関連した群のHIV−1配列によって表す。これらを、A1、A2、B、C、D、F1、F2、G、H、JおよびKと称する。M群は、欧州におけるHIVの全症例のうちの約95%に相当するウイルスを含む。HIV−1 M群サブタイプの完全ゲノム配列を、Los Alamos National Laboratory(New Mexico,hiv.lan1.gov)のデータベースから得た。様々なサブタイプのマルチプルアラインメントおよびコンセンサス配列の作製を、BioEditパッケージ(mbio.ncsu.edu/BioEdit/bioedit.html)に含まれるClustalXアルゴリズムの使用により行った。
【0097】
以下のプライマーを、選択した:
【0098】
【化1】

(実施例5.TrDNAに基づいたHIV−1感染の診断)
DNAを、上記の実施例に記載されている通り、HIVに感染した10人の患者の尿試料から単離した。HIVウイルスに特異的な抗体の存在を検出するための標準臨床分子的試験の使用により、これらの患者を、HIVに感染していると臨床的に診断した。
【0099】
図1は、本発明に記載される方法に従って、上記の2対のGAG特異的プライマーを用いたネステッドPCRにより増幅される通りの、HIV−1のDNAフラグメントの電気泳動を示す。ネステッドPCR増幅の(初回の増幅では468/602のプライマー対、次いで、518/596の対(79bp)を使用して行われた場合の)結果として予期された大きさに対応する大きさのバンドは、10人の患者のうちの8人の尿および陽性対照において観察されたが、陰性対照においては観察されなかった。
【0100】
表1は、解析した各患者のウイルス量を示す。表1から、増幅について陰性であった試料(2番および3番)の場合、ウイルス量が1mlの血漿あたりウイルスが50コピー未満であったと推定され得る。
【0101】
【表1】

上記ウイルス量を、血漿におけるRT−PCRにより、HIV特異的RNAの量を測定することにより決定した。
【0102】
ネステッドPCRの見かけの感度を、同一のプライマー対を用いて、HIVゲノムの単一の組込み型コピーを有する8E5 LAV細胞株ゲノムDNAを増幅することにより評価した。この感度は、5ゲノム相当であると決定された。
【0103】
(配列のまとめの表)
【0104】
【化2】

星印()により示されているヌクレオチドは、当業者に公知の縮重ヌクレオチドを示す。
【0105】
(均等物)
特定の実施形態が本明細書中に詳細に開示されているが、これは、説明の目的のみのための例として行われており、開示された発明の明確な形態、または上記の添付された特許請求の範囲についての範囲に関して制限することを意図されていない。特に、発明者によって、本発明に対する様々な置換、変更および改変が、特許請求の範囲に規定されている発明の精神および範囲を逸脱することなく行われ得ることは、意図されている。本発明に対する様々な変化および改変は、本明細書中に記載される実施形態の知識を有する当業者にとって、慣用の事柄であると考えられる。他の局面、利点および改変は、上記の特許請求の範囲についての範囲内であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、HIV−1に感染した患者の分画されていない尿試料における腎臓通過性DNAについてのネステッドPCR(468/602プライマー対[134bp]を用いて20サイクル、次いで、518/596[79bp]を用いて35サイクル)により得られた増幅産物についてのゲル電気泳動の結果を示す写真画像である。上記プライマーは、HIV−1のGAG領域に特異的である。
【図2】図2は、8E5 LAV細胞から抽出されたゲノムDNAについてのネステッドPCR(468/602プライマー対[134bp]を用いて20サイクル、次いで、518/596[79bp]を用いて35サイクル)により得られた増幅産物についてのゲル電気泳動の結果を示す写真画像である。上記プライマーは、HIV−1のGAG領域に特異的である。
【図3A】図3Aは、HIV−1に感染した患者の尿試料における腎臓通過性DNAについてのネステッドPCRにより得られた増幅産物についてのゲル電気泳動の結果を示す写真画像である(CP:全体;SN:上澄み;PT:ペレット)。A−102bp/60bp(HIV−1のPOL領域に対する特異的プライマー);NI:非感染;IN1〜IN3:HIVに感染した患者。
【図3B】図3Bは、HIV−1に感染した患者の尿試料における腎臓通過性DNAについてのネステッドPCRにより得られた増幅産物についてのゲル電気泳動の結果を示す写真画像である(CP:全体;SN:上澄み;PT:ペレット)。B−317bp/60bp(POLに対して特異的);NI:非感染;IN1〜IN3:HIVに感染した患者。
【図3C】図3Cは、HIV−1に感染した患者の尿試料における腎臓通過性DNAについてのネステッドPCRにより得られた増幅産物についてのゲル電気泳動の結果を示す写真画像である(CP:全体;SN:上澄み;PT:ペレット)。C−569bp/132bp(TATに対して特異的);NI:非感染;IN1〜IN3:HIVに感染した患者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体におけるウイルス感染の診断のための方法であって、該方法は、該被験体由来の尿試料における1つ以上の腎臓通過性ウイルス核酸の存在を検出し、それによって、該被験体におけるウイルス感染を診断する工程を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記腎臓通過性ウイルス核酸は、DNAである、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記腎臓通過性ウイルス核酸を定量する工程を包含する、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、ここで、前記定量は、それらの病原因子に特異的な分子プローブとの対の生成、ハイブリダイゼーション、PCR、ネステッドPCR、セミネステッドPCR、SSCP、LCRおよびSDAからなる群から選択される手段により行われる、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記尿試料を分離して、前記腎臓通過性ウイルス核酸を含む無細胞画分にする工程を包含する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、ここで、前記分離は、前記尿試料の濾過および遠心分離からなる群から選択される、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、ここで、前記腎臓通過性ウイルス核酸の長さは、約1000ヌクレオチドより短い、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、ここで、前記腎臓通過性ウイルス核酸は、DNAフラグメントを含み、該フラグメントの長さは、約100bpと約200bpとの間である、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記腎臓通過性ウイルス核酸の単離または精製の工程を包含する、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、ここで、前記精製は、化学的方法または物理的方法により行われる、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、ここで、前記単離または精製は、有機溶媒での抽出、濾過、沈殿、前記核酸に対するアフィニティを有する固体マトリックス上での吸収、およびクロマトグラフィーからなる群から選択される方法を用いて行われる、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、ここで、前記固体マトリックスは、シリカに基づく樹脂、イオン交換樹脂またはヒドロキシアパタイトからなる、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、ここで、前記固体マトリックスは、シリカに基づく樹脂であり、前記単離または精製は、カオトロピック因子の存在下で行われる、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記核酸の分解を阻害する1つ以上の物質での、前記尿試料の前処理を包含する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、ここで、前記物質は、イオンキレート剤、変性剤、およびイオン性洗浄剤からなる群から選択される、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、ここで、前記イオンキレート剤は、EDTAであり;前記変性剤は、グアニジンHClまたはグアニジンイソチオシアネートであり;そして、前記イオン性洗浄剤は、N−ラウリルサルコシンまたはドデシル硫酸ナトリウムである、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記腎臓通過性ウイルス核酸の存在の検出は、前記核酸のハイブリダイゼーション、サイクリングプローブ反応、PCR、SSCP、LCRおよびSDAからなる群から選択される技術により行われる、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、ここで、前記PCRは、ネステッドPCRまたはセミネステッドPCRである、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記腎臓通過性ウイルス核酸は、RNAウイルスまたはDNAウイルスに由来する、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、ここで、前記ウイルスは、組込み型またはエピソーム性である、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、ここで、前記ウイルスは、組換え型および天然の、HIV−1、HIV−2、痘瘡ウイルス、ポリオウイルス、単純疱疹ウイルス(HSV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)およびアデノウイルス(AAV)からなる群から選択される、方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法であって、ここで、前記ウイルスは、EBVおよびHIV−1からなる群から選択される、方法。
【請求項23】
請求項19に記載の方法であって、ここで、前記ウイルスは、HIV−1である、方法。
【請求項24】
請求項9に記載の方法であって、ここで、前記単離または精製された核酸は、前記腎臓通過性ウイルス核酸の検出のために用いられる、方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法であって、ここで、該方法は、インビトロで行われ、前記ウイルス核酸は、HIV核酸である、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、ここで、前記腎臓通過性ウイルス核酸の前記検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行われる、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、ここで、前記PCRは、ネステッドPCRまたはセミネステッドPCRである、方法。
【請求項28】
請求項24に記載の方法であって、ここで、前記ポリメラーゼ連鎖反応は、HIV−1のGAG遺伝子またはPOL遺伝子に特異的な1つ以上のプライマーを用いて行われる、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、ここで、前記1つ以上のプライマーは、配列番号1〜11からなる群から選択される、方法。
【請求項30】
被験体におけるウイルス感染をモニタリングするための方法であって、該方法は、以下の工程:
a)該被験体由来の第一の尿試料における腎臓通過性ウイルス核酸の量を定量する工程;
b)該被験体由来の第二の尿試料における該腎臓通過性ウイルス核酸の量を定量する工程;および
c)該被験体由来の該第一の尿試料における該腎臓通過性ウイルス核酸の量と、該第二の尿試料における該腎臓通過性ウイルス核酸の量とを比較し、それによって、該被験体における該ウイルス感染をモニタリングする工程を包含する、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、さらに、前記被験体に、前記ウイルス感染を減少させるか、または阻害する化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、ここで、前記ウイルス感染は、HIV感染であり、前記化合物は、抗ウイルス性因子である、方法。
【請求項33】
請求項30に記載の方法であって、ここで、前記定量は、それらの病原因子に特異的な分子プローブとの対生成、ハイブリダイゼーション、PCR、ネステッドPCR、SSCP、LCRおよびSDAからなる群から選択される手段により行われる、方法。
【請求項34】
請求項30に記載の方法であって、さらに、前記尿試料を分離して、前記腎臓通過性ウイルス核酸を含む無細胞画分にする工程を包含する、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、ここで、前記分離は、前記尿試料の遠心分離を含む、方法。
【請求項36】
請求項30に記載の方法であって、ここで、前記腎臓通過性ウイルス核酸は、DNAフラグメントを含み、該フラグメントの長さは、約100bpと約200bpとの間である、方法。
【請求項37】
請求項30に記載の方法であって、ここで、前記被験体は、再発性ウイルス感染の発症の危険に瀕している、方法。
【請求項38】
尿試料における腎臓通過性ウイルス核酸の存在の決定のためのキットであって、該尿試料からの該腎臓通過性ウイルス核酸の単離または精製のための手段、および、少なくとも1つのウイルス特異的プローブとのハイブリダイゼーションによる該腎臓通過性ウイルス核酸の存在の決定のための手段を含む、キット。
【請求項39】
請求項38に記載のキットであって、ここで、前記ウイルス特異的プローブは、前記重合連鎖反応のためのプライマーを含む、キット。
【請求項40】
請求項39に記載のキットであって、ここで、前記プライマーは、HIV−1のGAG遺伝子またはPOL遺伝子に特異的である、キット。
【請求項41】
請求項38に記載のキットであって、ここで、前記プローブは、配列番号1〜11からなる群から選択される、キット。
【請求項42】
HIVの検出における使用のための組成物であって、配列番号1〜11からなる群から選択される配列を含む核酸配列を含む、組成物。
【請求項43】
請求項42に記載の組成物であって、ここで、該組成物は、配列番号1〜11からなる群から選択される配列からなる核酸配列を含む、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2008−536481(P2008−536481A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556358(P2007−556358)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/005792
【国際公開番号】WO2006/089203
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507276346)
【Fターム(参考)】