説明

局所投与型化学療法用材料

【課題】優れた生体組織親和性および生体内分解吸収性と強固な組織接着性を兼備した局
所投与型化学療法用材料の開発。
【解決手段】液体又はゾル状態で低侵襲的に生体内の特定部位へ治療薬を投与しゲル化す
る局所投与型化学療法用材料であって、治療薬を混合した生体内分解性高分子の水溶液又
は塩緩衝溶液を有機酸誘導体にて架橋してなることを特徴とする局所投与型化学療法用材
料。優れた生体組織親和性および生体内分解吸収性と強固な組織接着性とを兼備しており
、さらにはシリンジによって容易に特定部位への投与が可能であることから、低侵襲な病
巣局所への薬剤投与や、治療薬を含有した医療用接着剤、止血剤、血管塞栓剤、シーラン
ト又は動脈瘤封止剤としての応用が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体における局所領域に治療薬を投薬するための材料であり、液体又はゾル
状態で低侵襲的に生体内の特定部位へ治療薬を投与しゲル化する局所投与型化学療法用材
料に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の局所投与型化学療法用材料の研究開発は行われているが、操作が簡便で、かつ優
れた生体組織親和性および生体内分解性と強固な生体組織接着性を兼備する材料に関する
発明は存在しない。
【0003】
局所化学療法への応用を目的に高分子材料に薬剤を含有させた例として、特開2002
−102331号公報に抗癌剤を含有する粒子と温度応答性高分子(N-イソプロピルアク
リルアミド)からなる複合体が開示されている。ここに開示された発明は、温度応答性高
分子として知られるN-イソプロピルアクリルアミドを基本物質として合成された温度およ
びpHの変化に応答する共重合体に抗癌剤を含有した粒子を複合させ、低温状態で局所に
注入した後、体温による温度の上昇とともに硬化、局所における薬物の徐放を目的とした
ものである。
【0004】
この発明においては、外部刺激による物性の制御が必要な上、担体が非生体内分解吸収
性であることが問題点である。また、この発明は、温度上昇に伴った疎水性相互作用によ
る凝集を用いて架橋構造を形成させるため、その架橋体は極めて柔らかく、投与後に広範
囲に広がることや薬剤の長期徐放が困難であるという問題点がある。さらには、基材は生
体組織接着性を有していないため、投与後に局部から移動する可能性もある(特許文献1
)。
【0005】
同じく、温度応答性高分子を用いた研究例として、M. L. Veyries(1999)らはPlu
ronic F-127(登録商標)に薬剤を複合させたハイドロゲルからの薬物放出に関する研究
を行なっている。ここに開示された発明は、局所癌化学療法への応用を目的としてPluron
ic F-127にバンコマイシンを複合させ、薬物放出挙動を検討したものである。ここで開示
された発明も、温度応答性合成高分子を用いていることから非生体内吸収性であり、架橋
体は柔らかく、長期薬物徐放が困難(数時間で薬剤を放出)であり、生体組織接着性を有
していないという問題がある(非特許文献1)。
【0006】
さらに、局所化学療法のための高分子材料のもう一つの例として、特表2004−52
8278号公報に局所投与用ヒドロゲルが開示されている。ここに開示された発明は、ポ
リアニオンを基材とし二価の塩を架橋剤とした担体中に薬物を含有させた複合体である。
ここに開示された発明は、担体はイオン結合により架橋構造を形成するため、投与後体内
において不安定であり、かつ使用できる薬物にも制限が生じる(特許文献2)。
【0007】
本発明者らは、生体内分解性高分子とジカルボン酸のカルボキシル基を2つ、及びトリ
カルボン酸のカルボキシル基を2つ又は3つが電子吸引性基により修飾された有機酸誘導
体よりなる、優れた生体組織親和性および生体内分解吸収性と強固な生体組織接着性を兼
備する二成分系の生体内分解吸収性粘着性医用材料を開発した(特許文献3〜9、非特許
文献2〜3)。
【0008】
【特許文献1】特開2002−102331号公報
【特許文献2】特表2004−528278号公報
【特許文献3】特開2004−99562号公報
【特許文献4】特開2004−261222号公報
【特許文献5】特開2005−168949号公報
【特許文献6】特開2005−187670号公報
【特許文献7】特開2006−52158号公報
【特許文献8】特開2006−52158号公報
【特許文献9】国際公開2006/016600 A1
【非特許文献1】Int. J. Pharm. 192(1999) 183-193.
【非特許文献2】T Taguchi et al.Materials Science and Engineering C24 (2004)775-780
【非特許文献3】H Saito et al. Materials Science and Engineering C24 (2004)787-790
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上述の問題点を解決するために、本発明者らが開発した生体内分解吸
収性粘着性医用材料を応用した、局所投与型化学療法用材料を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の問題点を解決するために、本発明では、本発明者らが開発した生体内分解吸収性
粘着性医用材料に治療薬を混合することにより、優れた生体組織親和性および生体内分解
吸収性と強固な組織接着性を兼備した局所投与型化学療法用材料を開発した。
【0011】
すなわち、本発明は、個体における局所領域に治療薬を投薬するための、生体内分解性
高分子を溶解した水溶液又は塩緩衝溶液を基材とし、該基材に混合した有機酸誘導体を架
橋剤とする担体中に薬剤が混合された複合体からなることを特徴とする局所投与型化学療
法用材料である。
【0012】
本発明における強固な組織接着性とは、生体組織またはそれに類似する試験片を用いた
接着試験において、30kPa以上の接着強度を意味する。
【0013】
本発明における生体内分解吸収性とは、生体内において注入後1年以内に分解、吸収、
代謝される性状を示す。
【0014】
本発明に用いられる薬剤には特に限定はないが、一例として抗癌剤が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の局所投与型化学療法用材料は、優れた生体組織親和性および生体内分解吸収性
と強固な組織接着性とを兼備しており、さらにはシリンジによって容易に特定部位への投
与が可能であることから、低侵襲な病巣局所への薬剤投与や、治療薬を含有した医療用接
着剤、止血剤、血管塞栓剤、シーラント又は動脈瘤封止剤としての応用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における局所投与型徐放性生体内分解吸収性医用材料とは、生体内分解性高分子
、有機酸誘導体及び生理活性薬剤を混合してなるものであり、ある一定時間後に硬化する
性質を有することを特徴とする。
【0017】
本発明における硬化とは、生体内分解性高分子と有機酸誘導体との化学反応により硬化
して流動性がなくなることを意味する。
【0018】
本発明における生体内分解性高分子としては、コラーゲン、ゼラチン、血清アルブミン
、エラスチン、アクチン、ケラチン、キチン、キトサン、ポリアミノ酸、デプシペプチド
等及びその誘導体、リコンビナントタンパク質からなる群より選ばれた少なくとも1種又
は2種以上が好ましい。
【0019】
前記生体内分解性高分子は、分子内にアミノ基を有しており、有機酸誘導体架橋剤との
反応に適した薬剤担体用の基材である。
【0020】
本発明の架橋剤として用いられる有機酸誘導体としては、ジ又はトリカルボン酸のカル
ボキシル基を電子吸引性基によって少なくとも1個以上修飾したものが挙げられる。
【0021】
また、これら生体内分解性高分子の重量平均分子量は、強固な組織接着性を損なわない
という観点から、500〜100000程度が好ましい。
【0022】
また、生体内分解性高分子を溶解する溶媒は、蒸留水又は塩緩衝溶液の1種又は2種以
上の組み合わせが挙げられる。生体内分解性高分子の溶液を調製する際の溶液中の生体内
分解性高分子の濃度は、強固な組織接着性を損なわないという観点から、0.1重量%以
上が好ましく、10〜50重量%がより好ましい。
【0023】
生体内分解性高分子の溶液を調製する際の塩緩衝溶液には特に限定はないが、リン酸塩
、ホウ酸塩、Tris塩酸塩、及びアミノエタンスルホン酸塩が挙げられる。塩緩衝液の濃度
は、0.01Mから10Mであり、0.1〜1.0Mがより好ましい。
【0024】
本発明の架橋剤として用いられる有機酸誘導体は、ジカルボン酸のカルボキシル基の2
つ、及びトリカルボン酸のカルボキシル基の2つ又は3つを電子吸引基で修飾したもので
ある。ジ又はトリカルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、オキサル酢酸、cis-アコニ
ット酸、コハク酸、フマル酸、α-ケトグルタル酸、酒石酸、又はこれらの誘導体が挙げ
られ、電子吸引性基にはスクシンイミジル、スルホスクシンイミジル、マレイミジル、イ
ミダゾールイル、ニトロフェニル、及びトレジル基のうち少なくとも1種類を用いる。
【0025】
有機酸誘導体は、ジカルボン酸及びトリカルボン酸0.001〜10重量%に対し、N-ヒドロ
キシスクシンイミドを0.001〜10重量%、カルボジイミド誘導体を0.001〜10重量%の割合
で用い、反応時間は1〜48時間、反応温度0〜100℃の適宜条件を選択して得られる。得ら
れた有機酸誘導体は、アルコールを用いた再結晶によって精製され、粉末として得られる

【0026】
なお、カルボジイミド誘導体としては、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カ
ルボジイミド・塩酸塩(EDC)、1-シクヘキシル-3-(2-モノホリノエチル)カルボジイミド
・メト-p-トルエンスルホン酸塩、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いること
ができる。また、反応溶媒には、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキ
シド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)を用いることができる。
【0027】
また、有機酸誘導体の再結晶による精製のために用いられるアルコールとしては、メチ
ルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、
1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール,tert−ブチルア
ルコールを用いることができる。
【0028】
硬化させるために用いる有機酸誘導体の水溶液、有機溶媒溶液又は粉末の濃度は、強固
な組織接着性を損なわないという観点から、生体内分解性高分子の溶液1gに対して0.01〜
1000mmolが好ましく、0.1〜100mmolがより好ましい。例えば、生体内分解性高分子溶液1
gに対し有機酸誘導体0.1mmolを添加した場合、硬化時間は約20〜180秒程度であり、硬化
前の混合溶液はシリンジによる注入に適した性状、すなわち流動性を有する液体又はゾル
状態である。
【0029】
本発明におけるシリンジによる局所投与に適した性状とは、17Gから27G注射針のい
ずれかを抵抗なく通過する液体又はゾル状態であることを意味する。
【0030】
本発明におけるシリンジによる注入の好ましい注入方法としては、皮下注入、腹腔内注
入、カテーテルによる局所注入が挙げられる。
【0031】
生体内分解性高分子の溶液と有機酸誘導体の水溶液又は有機溶媒溶液若しくは粉末の混
合方法は特に限定されないが、例えば使用直前に小型のミキサー等を用いることができる

【0032】
本発明に用いられる薬物には特に限定はないが、一例として抗癌剤が挙げられる。抗癌
剤としては、塩酸ドキソルビシン、塩酸ペプロマイシン、塩酸ナイトロジェンマスタード
−N−オキシド、シクロファスファミド、チオデパ、カルボコン、塩酸ニムスチン、塩酸
ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸アクラルビシン、塩酸
イダルビシン、塩酸エピルビシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ピラルビシン、ジノスタチ
ンスチマラマー、ネオカルチノスタチン、エトポシド、テニポシド、塩酸イリノテカン、
硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、硫酸ビンブラスチン、L−アスパラギナーゼ、塩
酸ミトキサントロン、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ペントスタチン、
ジゾフィラン、ポルフィマーナトリウム、イファスファミド、カタルバジン、メルカプト
プリン、チオイノシン、シタラビン、エノシタビン、フルオロウラシル、テガフール、塩
酸アンシタビン、メトトレキサート、カルモフール、マイトマイシンC、アクチノマイシ
ン、塩酸ブレオマイシン、タキソールが挙げられる。
【0033】
このように本発明は、生体内分解性高分子を溶解した塩緩衝溶液と、有機酸誘導体の水
溶液又は有機溶媒溶液若しくは粉末を混合した溶液又はゾルとして用い、これに薬剤を含
有させて、個体における局所領域にシリンジを用いて注入することにより、有機酸誘導体
が架橋剤として働き、生体内分解性高分子が硬化するとともに局所領域の組織に接着する
ことになる。
【0034】
本発明の硬化反応は、基材と架橋剤の共有結合的な架橋反応によるものであるため、幅
広い薬剤を用いることができる。たとえば、蛋白質、遺伝子治療薬、放射性核種などが挙
げられ、薬剤の特性も親水性、疎水性どちらの場合にも用いることができる。
【0035】
さらに、本発明は当該用途に適用後は生体内で分解し、6ヶ月以内に吸収、消失する特
性があり、体内に異物として残存することがない。
【0036】
以下、実施例を挙げることにより、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はかかる
実施例に何ら限定されるものではない。 本発明の材料について、予め下記の試験例1に
ついて接着強度を測定した。
【0037】
生体内分解性高分子としてヒト血清アルブミン(HSA)を用い、架橋剤として電子吸
引基により修飾された有機酸誘導体としてN-ヒドロキシスクシンイミドによってカルボキ
シル基を修飾された酒石酸誘導体(TAD)を用いた。
【0038】
[試験例1]
33重量%のHSAの0.1M−リン酸緩衝溶液(pH7.4)0.19gに塩酸ドキ
ソルビシン0.25mgを加えて、さらにTAD0.1mmol(0.01g)を添加して
、5秒間攪拌し、混合溶液を調製した。
【0039】
対照例1を下記の条件で作製した。
[対照例1]
温度応答性高分子材料(Pluronic F-127、AnaSpec, Inc)の25w%水溶液0.2g
に塩酸ドキソルビシン0.25mgを加えた。
【0040】
試験例1および対照例1を被験物質として、引張せん断接着強度の測定を行った。すな
わち、1.0cm×4.0cm、厚さ1.0mmのPETフィルムの片端に1.0cm×1.0
cmのコラーゲンケーシングを接着させたものを試験片として用い、そのコラーゲンケー
シング部を接着面として試験例1および対照例1を用いて接着させた後、引張せん断接着
強度の測定は引張試験機(TA-XT2i、英弘精機株式会社)を用いて行った。
【0041】
接着強度測定の結果を表1に示す。
【表1】

【0042】
表1の結果より、試験例1は対照例1と比較してはるかに強い接着強度を有することが
明らかとなった。つまり、本発明で用いた局所投与型化学療法用材料は温度応答性合成高
分子であるPluronic F-127と比較して、明らかに強い接着強度を有しているということ
が示された。
【実施例1】
【0043】
室温において、33重量%のHSAの0.1M−リン酸緩衝溶液(pH7.4)0.3
8gに塩酸ドキソルビシン0.5mgを加えて、さらにTAD0.2mmol(0.02g
)を添加して、5秒間攪拌し、混合溶液を調製した。ここで得られた混合溶液は、流動性
のある液体であり、その硬化時間は37℃において67.5秒であった。
調製した混合溶液0.2gを腫瘍底部に24G注射針を装着した注射器を用いて投与し、
腫瘍体積の変化を測定した。
【0044】
[比較例1]
温度応答性高分子材料(Pluronic F-127、AnaSpec, Inc)の25w%水溶液0.4g
に塩酸ドキソルビシン0.5mgを加えて混合溶液を調製した。調製した混合溶液0.2
gを腫瘍底部に投与し、腫瘍体積の変化を測定した。
【0045】
[比較例2]
33重量%のHSAの0.1M−リン酸緩衝溶液(pH7.4)0.38gにTAD0.2
mmol(0.02g)を添加して、数秒攪拌し、混合溶液を調製した。調製した混合溶
液0.2gを腫瘍底部に投与し、腫瘍体積の変化を測定した。
【0046】
[比較例3]
滅菌水0.2mLにドキソルビシン0.25mgを溶解させた水溶液を調製した。調製
した水溶液0.2mLを腫瘍底部に投与し、腫瘍体積の変化を測定した。
【0047】
[比較例4]
担体、薬剤等を投与せずに腫瘍体積の変化を測定した。
【0048】
実施例1および比較例1〜4を被験物質として、抗腫瘍効果の検討を行った。まず、5
週齢の免疫不全マウス(BALB/cAnNCrj-nu/nu、日本チャールズリバー株式会社)の背部皮
下にヒト由来結腸癌細胞株(WiDr)を1×10個移植し、担癌マウスを作製した。作製
した担癌マウスの腫瘍の径が1cm程度まで生着した後、実施例1、比較例1〜4を所定量
、24G針が装着された注射シリンジを用いて腫瘍底部に注入した。その後、経時的に腫
瘍の長径および短径をノギズを用いて測定し、換算腫瘍体積を算出し、実施例1および比
較例1〜4投与前の換算腫瘍体積からの変化率として抗腫瘍効果の評価を行なった。換算
腫瘍体積は、1/2×長径×短径より算出した。
【0049】
投与24時間後の換算腫瘍体積の変化率を表2に示す。
【表2】

【0050】
表2の結果より、実施例1は比較例1に比べて優れた抗腫瘍効果が認められた。比較例
1は非共有結合的な柔らかい架橋体を形成するために数時間で薬剤を放出してしまうが、
実施例1は共有結合的な架橋体を形成するために長期間に渡る薬剤の徐放が可能であるた
め、優れた抗腫瘍効果が得られた。また、実施例1は比較例2〜4と比較しても、明らか
に優れた抗腫瘍効果を示した。これらの結果より、実施例1は生体組織接着性と抗癌剤の
徐放性との相乗的な効果によって優れた抗腫瘍効果を示したと言える。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、局所領域に低侵襲的に治療薬を投薬することができる、優れた生体組織適合
性および生体内分解吸収性と強固な組織接着性を兼備した、局所投与型化学療法用材料で
あり、低侵襲局所投与型化学療法、止血、血管塞栓、シーラント又は動脈瘤封止を行なう
際も用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又はゾル状態で低侵襲的に生体内の特定部位へ治療薬を投与しゲル化する局所投与型
化学療法用材料であって、治療薬を混合した生体内分解性高分子の水溶液又は塩緩衝溶液
を有機酸誘導体にて架橋してなることを特徴とする局所投与型化学療法用材料。
【請求項2】
請求項1記載の有機酸誘導体が、ジカルボン酸又はトリカルボン酸のカルボキシル基の2
つ又は3つが電子吸引基により修飾されたものであることを特徴とする局所投与型化学療
法用材料。
【請求項3】
請求項1記載の生体内分解性高分子の溶液1gに対して、前記有機酸誘導体の水溶液又は
有機溶媒溶液若しくは粉末の濃度を0.01〜1000mmolとすることを特徴とする
局所投与型化学療法用材料。
【請求項4】
請求項1記載の局所投与型化学療法用材料が生体組織接着性を有することを特徴とする局
所投与型化学療法用材料。
【請求項5】
請求項1記載の治療薬が、薬剤、抗がん剤、蛋白質、遺伝子治療薬、放射性核種、親水性
薬剤、疎水性薬剤の1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする局所投与型化
学療法用材料。
【請求項6】
請求項5記載の抗がん剤が、ドキソルビシンであることを特徴とする局所投与型化学療法
用材料。

【公開番号】特開2007−325824(P2007−325824A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160776(P2006−160776)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】