説明

局所用口腔ケア組成物

【課題】口腔の組織表面上に存在するフリーラジカルを捕獲し、口腔組織に対して反応性酸素種が及ぼす作用を軽減又は排除できる口腔ケア組成物の提供。
【解決手段】口腔的に許容される担体、および下記の構造を有するアスコルビル−2−ホスフェート化合物又はそのナトリウム塩もしくはカリウム塩を含む口腔ケア組成物。


(式中、nは1〜10である)
該組成物中には、さらにカルシウムイオン源、歯肉への粘着性を有するポリマーなどを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2001年1月24日に提出された、米国仮特許出願第60/263,884号の優先権を主張し、この全体は参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、フリーラジカルを捕獲するフリーラジカル捕獲化合物を生成する化合物を含む、局所用口腔組成物に関する。本発明に記載の化合物は、口腔に入れるとアスコルビン酸を生成する、アスコルビン酸前駆化合物を含む。本発明はまた、フリーラジカルの存在に応答性である、種々の口腔の疾患過程または症状を予防または治癒するために、このような組成物を使用する方法に関する。本発明はまた、口腔ケア法に有用であるホスフェートを生成する、ホスフェート前駆化合物を含む口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
健康な歯および歯肉の維持は、長い間、現代歯科学の目標であった。約50年前にフッ化物が出現して以来、虫歯、すなわち、う蝕の発生率は、実質的に減少した。フッ化物は、現在、飲料水および多くの消費者向け歯科用製品に見出され、安全で効果的な成分として広く受け入れられ、多くの人々に莫大な健康上の利点をもたらした。過去20年間の革新により、局所用口腔ケア製品の治療潜在力はさらに拡大した。歯肉炎、歯周病、口臭、およびう蝕の問題を解決するために、トリクロサン、クロロヘキシジン塩、塩化セチルピリジニウム、および臭化ドミフェンなどの抗菌剤が、局所歯科用製品に添加されている。歯の感受性を低減させるための、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム、およびフッ化物塩などの歯減感剤の使用は成功している。歯表面上での歯石形成を予防するために、ピロリン酸塩、クエン酸亜鉛三水和物、ヘキサメタリン酸ナトリウム、およびトリポリリン酸ナトリウムなどの歯石抑制剤が、練り歯磨き粉およびうがい薬に一般的に使用されている。より近年になって、過酸化水素、過酸化カルバミド、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、二酸化塩素、およびトリポリリン酸ナトリウムなどの歯牙漂白剤が、補助成分として多くの歯科用製品に添加されており、これにより、消費者にとって、白い(だけでなく健康な)歯という認められている価値が追加されることになる。
【0004】
種々の癌の病因に関する探究を通じて、多くの疾患過程における反応性酸素種(ROS)の役割が明らかになってきた。ROSなる語は、フリーラジカル(例えばヒドロキシラジカルOH・)またはフリーラジカル前駆体(例えば過酸化水素H2O2)を包含する。口腔癌の罹患率は、喫煙および/または飲酒する個体においてはるかに高いことは明らかであり、このような口腔癌は、口腔の軟組織にかかった酸化的ストレスの直接的な結果であると決め込もうとしているが、問題を解決するために開発されたアプローチは依然として非常に僅かしかない。現在までの大半の努力は、治癒できる可能性の最も高い、初期段階の口腔癌を発見するのに必要な診断技術に集中している。口腔軟組織の酸化的ストレスを測定する多くの手段が開発された。一つまたは複数の抗酸化剤を含み、自然に発生し得るまたは環境ストレスから発生し得るフリーラジカルによる軟組織における作用を打ち消すとされている、多くの局所および口腔組成物が提案されている。
【0005】
また、近年、あるタイプの着色歯はメイラード(すなわち非酵素的に褐変した)反応生成物が形成された結果であることが判明した。一般に、メイラード反応生成物は、多くの共役二重結合構造を有するフルフラール誘導体を基本とし、これは電磁スペクトルの可視領域(範囲400〜550nm)の光を吸収する。このような吸収スペクトルのために、これらの反応生成物は、肉眼で、オフホワイトから黄色がかった赤色に見える。メイラード反応生成物が歯の表面上に形成されると、歯は着色したように見える。メイラード反応は、水溶液中に、還元糖(グルコースなど)が、アミノ官能基を有する化合物(アミノ酸またはタンパク質のアミノ側鎖など)と共に存在する場合に生じ得る。口腔、特に、歯垢で覆われた歯の表面は、メイラード反応生成物の形成を進めるのに理想的な環境である(1つの場所に、湿気、グルコース、タンパク質、および体熱が一緒に存在)。メイラード反応は、反応性酸素種により触媒され得る、フリーラジカルで誘発される反応である。
【0006】
アスコルビン酸は、既知のROS捕獲剤であり、生物系において比較的遍在しているが、アスコルビン酸は、酸素および湿気の存在下では直ちに酸化してしまう傾向があるため、美容品および化粧品への調合は、幾分問題がある。従って、多くの研究が、誘導体化親化合物から遊離アスコルビン酸を遊離できる酵素活性を有する生物学的表面と接触するまで、安定であり続けるアスコルビン酸誘導体の同定に集中している。
【0007】
アスコルビルホスフェート、具体的にはC-2位がオルトホスフェート基、ピロホスフェート基、トリポリホスフェート基、またはポリホスフェート基で誘導体化されているアスコルビン酸が、保存しても安定な、生物学的に活性なアスコルビン酸源として同定された。ホスファターゼ酵素活性(親アスコルビン酸分子のC-2位の炭素-酸素結合を切断できる)を有する生物学的組織表面と接触すると、アスコルビルホスフェートは、遊離アスコルビン酸、並びにホスフェートイオン(または、場合に応じて、ピロホスフェート、トリポリホスフェート、またはポリホスフェートイオン)に変換される。
【0008】
興味深いことに、近年、腹腔内投与した1用量のアスコルビン酸によって、人工的に歯周病を誘発させたウィスターラットにおいて、血清中アルカリホスファターゼ酵素の上昇が引き起こされたことが判明した。この研究によりさらに、歯周病組織修復における誘発シグナルとしての、アスコルビン酸の役割が示唆される。しかしながら、この研究により、アスコルビルホスフェートの局所適用が、生物学的な重要性をもつことは示唆されない。
【0009】
アスコルビルホスフェートおよびその塩の製造法が、米国特許第4,999,437号(特許文献1)(Doblerら)、第5,110,950号(特許文献2)(Seibら)、第5,149,829号(特許文献3)(Seibら)、第5,420,302号(特許文献4)(Kaiserら)、第6,063,937号(特許文献5)(Dlubalaら)、および第6,121,464号(特許文献6)(Bottcherら)に詳述されており、この各々の全体は、参照として本明細書に組み込まれる。これらの多くの参考文献で、特に魚のための、食品添加物における、アスコルビン酸源としての、アスコルビルホスフェートの使用が示唆されている。このような適用は、定義では、口腔への局所的適用ではなくて摂取によって、生物または対象に、アスコルビン酸を投与する手段である(摂取前に遊離アスコルビン酸へと変換され、よって、1箇所以上の口腔組織表面に対して治療効果を奏功する)。口腔残留時間、すなわち組成物が口腔と接触する時間の概念は、接触(接触時間は比較的短い)により投与することを意図した組成物および方法と、本発明の組成物および方法とを区別する上で重要である。
【0010】
口腔内でのROS形成により直接的または間接的に生じる、口腔疾患または口腔容態の数を考えれば、口腔環境における酸化的ストレスを減弱する試みは殆どなされていない。口腔以外のスキンケアについては同じことは言えず、皮膚老化に対するROSの作用は何年も前から認識されていた。米国特許第6,184,247号(特許文献7)には、アスコルビルホスフェート塩、アスコルビルスルフェート塩、およびその混合物などのアスコルビン酸誘導体を含む組成物を利用した、哺乳動物皮膚剥離または剥脱の速度を増強する方法が記載されている。明細書に定義されているように、皮膚なる語は、上皮と真皮により範囲の限定された構造を意味し、正常な細胞のターンオーバー時間(基底細胞形成から外表面剥離までの期間)は、約28日間である。発明者らが記載した組成物および方法によって、23%も細胞ターンオーバーが増加するが、こうした剥離の増加も、自然の口腔粘膜組織(硬口蓋、頬側粘膜、口腔粘膜底)ターンオーバー速度(通常、皮膚速度より約10%から約100%速い速度範囲にある)により非常に影は薄くなる。
【0011】
局所用のアルキル-2-O-アスコルビルホスフェートが、米国特許第5,607,968号(特許文献8)および第5,780,504号(特許文献9)に記載されている。スキンケア組成物中にこれらの新規成分を調合する上で必要とされる水に対する安定性を示すが、口腔に適用した場合、アスコルビン酸および非誘導体化ホスフェート部分の両方が、遊離して直ちに生物学的に利用されることはないようである。これらの誘導体およびその局所調合物の口腔における毒性も不明である。
【0012】
アスコルビルホスフェートは、ニトロソ化反応およびその後のニトロソアミン形成を防ぐために、イミニウムイオン捕獲剤と共に、美容調合物および化粧調合物にも使用されている(米国特許第5,807,542号;特許文献10を参照されたい)。多くの異なる美容成分および化粧成分を同じ調合物中に配合する結果、亜硝酸イオンおよびイミニウムイオンが生じる場合があるが;使用者が一部を摂取するに適したものでなければならないと定義される口腔用組成物内にこのような成分を一緒に含めることは不適切である。
【0013】
Kayaneら(米国特許第5,244,651号;特許文献11)は、多価金属塩とポリオールホスフェートを混合することにより生じたコロイドで歯を処理することからなる、知覚過敏な象牙質を脱感作する方法を記載している。記載の有用な多価金属は、発明を実施する上で有用であるためには、水不溶性(または難溶性)水酸化物を形成することが必要とされる(2段落、20〜23行)。水酸化カルシウムは水溶性ではなく、従って、発明者らは、発明の歯脱感作法に有用な多価金属としては記載していない。
【0014】
Spaltroら(米国特許第5,202,111号;特許文献12)は、歯石抑制に適用する、リン酸化ポリヒドロキシ化合物を記載している。リン酸化類似体の製造において出発物質として使用したポリヒドロキシ化合物は、非環式ポリオール、環式ポリオール、および重合度の高いオリゴ糖として記載され、糖、糖アルコール、修飾糖質、および多糖類を含む。アスコルビン酸は、出発物質として具体的に予想されておらず、記載のリン酸化法(実施例1〜4、5段落および6段落を参照されたい)がアスコルビルホスフェートの製造に適していると予想されてもいない。
【0015】
従って、フリーラジカルを捕獲でき、それにより、口腔組織に対して反応性酸素種が及ぼす可能性のある作用を軽減または排除することのできる化合物を含む、口腔用組成物および方法が必要である。
【0016】
また、ホスフェートイオンの利用能を高めることにより、歯表面の再ミネラル強化能を高めることのできる、口腔用組成物および方法も必要である。
【0017】
また、口腔でフリーラジカルを捕獲でき、同時に、ホスフェートイオンの利用能を高めることにより、歯表面の再ミネラル強化能を高めることのできる、口腔用組成物および方法も必要である。
【0018】
抗う蝕剤、歯石抑制剤、抗歯垢剤、抗菌剤、抗歯肉炎剤、脱感作剤、およびそれらの組合せなどの一つまたは複数の追加的な歯科用治療成分と組合せて、アスコルビルホスフェート化合物を含む、歯科用組成物および方法がさらに必要である。
【0019】
また、上記したようなフリーラジカルを捕獲するという利点を実施でき、同時に、口腔組織に少なくとも1つの他の治療利点を与えることのできる、歯科用組成物および方法も必要である。
【0020】
また、口腔で使用する前にパッケージング内で劣化しない、安定なアスコルビン酸源を含む、水性歯科用組成物が必要である。
【0021】
口腔組織と接触すると、生物学的に活性であるアスコルビン酸源が提供される、安定な歯科用組成物がさらに必要である。
【0022】
【特許文献1】米国特許第4,999,437号
【特許文献2】米国特許第5,110,950号
【特許文献3】米国特許第5,149,829号
【特許文献4】米国特許第5,420,302号
【特許文献5】米国特許第6,063,937号
【特許文献6】米国特許第6,121,464号
【特許文献7】米国特許第6,184,247号
【特許文献8】米国特許第5,607,968号
【特許文献9】米国特許第5,780,504号
【特許文献10】米国特許第5,807,542号
【特許文献11】米国特許第5,244,651号
【特許文献12】米国特許第5,202,111号
【発明の開示】
【0023】
発明の概要
本発明の態様は、口腔に、例えば口腔の組織表面上に存在するフリーラジカルを捕獲でき、それにより、口腔組織に対して反応性酸素種が及ぼす可能性のある作用を軽減または排除することのできる化合物を含む、組成物および方法を目的とする。本発明の組成物は、口腔組織表面に置かれると、フリーラジカル捕獲剤を生成する前駆化合物を含む。その次に、フリーラジカル捕獲剤は、接触してきたフリーラジカルを捕獲し、それにより、口腔内のフリーラジカル濃度を減少させる。口腔内のフリーラジカル捕獲剤の還元により、口腔内のフリーラジカルの存在から生じる状態および疾患の作用は軽減する。
【0024】
本発明の態様は、さらに、ホスフェートイオンの利用能を高めることにより、歯表面の再ミネラル強化能を高めることのできる、組成物および方法に関する。本発明の組成物は、口腔組織表面上に置かれると、ホスフェートイオンを生じることのできる、ホスフェート前駆化合物を含む。ホスフェート前駆化合物から生じたホスフェートイオンは、口腔に存在するカルシウムイオンなどのカチオンと複合して、リン酸カルシウムを形成し、これが歯エナメル質上もしくは象牙質細管上または歯エナメル質内もしくは象牙質細管内に沈着し、よって、歯を再ミネラル強化する。
【0025】
本発明の態様は、口腔内のフリーラジカルを捕獲し、同時に、ホスフェートイオンの利用能を高めることにより、歯表面の再ミネラル強化能を高めることのできる、化合物を含む、組成物および方法に関する。
【0026】
本発明の他の態様は、上記したようなフリーラジカルを捕獲するという利点を実施でき、同時に、口腔組織に少なくとも1つの他の治療利点を与えることのできる、組成物および方法を含む。本発明によると、該組成物は、抗う蝕剤、歯石抑制剤、抗歯垢剤、抗菌剤、抗歯肉炎剤、脱感作剤、およびその組合せなどの、一つまたは複数の追加の歯科用治療成分を選択的に含む。
【0027】
本発明の組成物は、口腔すすぎ液、うがい薬、研磨剤含有または非含有歯磨剤、練り歯磨き粉、クリーム、ゲル、および当業者に公知のその他の局所調合物の形状である成分を含む。
【0028】
本発明の他の態様は、口腔で使用する前に、パッケージング内でその効力を保持し劣化しない、安定なアスコルビン酸源を含む、水性歯科用組成物を含む。本発明のさらに他の態様は、口腔組織と接触した時に、生物学的に活性なアスコルビン酸源を含む、安定な歯科用組成物を提供する。
【0029】
本発明の特定の態様は、フリーラジカルの存在に関連した、種々の口腔疾患過程または症状を予防または治癒するために、選択的な補助治療成分と共に、口腔で許容される担体中に、アスコルビルホスフェートを含む、治療用歯科用組成物および方法に関する。本発明のこの側面によると、アスコルビルホスフェートを含む組成物を、口腔組織と接触させる。アスコルビルホスフェートはアスコルビン酸を生成し、これはその後、口腔内の組織表面上に存在するフリーラジカルを捕獲し、これにより、口腔に存在するフリーラジカル濃度は減少する。特に好ましいアスコルビルホスフェートはアスコルビル-2-ホスフェートである。
【0030】
本発明のさらに他の態様は、フリーラジカルの存在に関連した、口腔の疾患または容態に罹患した個体を治療処置する方法を含む。該方法は、口腔内の組織を、治療有効量のフリーラジカル捕獲化合物またはフリーラジカル捕獲前駆化合物を含む組成物と、口腔内のフリーラジカル濃度を減少させるように接触させることを含む。本発明の1つの側面によると、組成物を、フリーラジカル濃度を減少させるに十分な時間、口腔内の組織と接触させる。特定の態様によると、組成物を、組織と、60分間以下、好ましくは5分間より長く、またはより好ましくは10分より長く接触させる。フリーラジカル捕獲化合物は、アスコルビン酸を含む。フリーラジカル捕獲前駆化合物は、アスコルビルホスフェート化合物を含む。フリーラジカル捕獲前駆化合物は、フリーラジカル捕獲化合物を生成し、これはその後、口腔内に存在するフリーラジカルを捕獲する。
【0031】
さらに、本明細書に記載した好ましいアスコルビルホスフェート化合物は、歯エナメル質表面を含む口腔組織への驚くべき粘着度を示す。歯エナメル質表面へ粘着または付着することにより、アスコルビン酸およびホスフェートイオンが固有なホスファターゼ酵素により唾液中へと遊離する実効持続時間を延長できる。
【0032】
「局所」なる用語は、本開示において、目的の標的口腔組織表面への適用を意味するが、本発明の組成物の全部または一部が、口腔組織亜表面を通して浸透する結果、該口腔組織亜表面も含む。例えば、本発明の組成物の歯エナメル質表面への局所適用は、無傷歯エナメル質を通して浸透することにより、もしくは、代替的には、歯治療中にこのような根底にある口腔組織構造が一過的に暴露されることにより、組成物に暴露される場合がある、根底にある歯構造(象牙質、歯髄など)も含む。
【0033】
本発明のこれらおよびその他の目的、特徴、および利点は、明細書の残りの部分および特許請求の範囲を参照することにより、明らかになると思われる。
【0034】
特定の好ましい態様の詳細な説明
本発明の特定の好ましい態様によると、口腔で許容される担体、および選択的に、治療に有効な薬剤と組合わせた、フリーラジカル捕獲前駆化合物を含む、局所用口腔ケア組成物が提供される。好ましいフリーラジカル捕獲前駆化合物は、アスコルビルホスフェート化合物のファミリーである。該組成物を、口腔内の組織と約5分間〜約60分間の時間にわたり接触させた状態で、口腔内に置く。
【0035】
アスコルビルホスフェートおよびその塩、例えばアスコルビル-2-モノホスフェートの三ナトリウム塩を、毒性学的に許容される口腔担体に添加すると、虫歯に対抗し、歯の着色蓄積を予防し、歯周病組織の再生過程を補助するのに使用し得る、有用な口腔ケア組成物が得られる。
【0036】
アスコルビルホスフェートは、下記式I
【化2】

(式中、nは1〜10であり、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜3であり、特にnは1、2、3、4または5以上であり得る)
により記載される、「アスコルビルホスフェート」なる語により一般的に理解されているもの、並びに、L-アスコルビン酸のリン酸エステル、および、その塩を含む。
【0037】
前記化合物の好ましい塩は、化合物のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、およびカルシウム塩を含む。式Iの化合物により示されるように、本発明の化合物は、アスコルビン酸分子の2位に、ホスフェート基(モノ、ジ、トリまたはポリホスフェート部分)を含む。1つの好ましい側面に従って、ホスフェート基は誘導体化できるが、口腔組織と接触した時に、すなわち、アスコルビルホスフェート化合物が口腔内のホスファターゼ酵素と接触した時に、直ちに生物学的に有効なホスフェートイオンが唾液溶液中に遊離されてしまうために、ホスフェート基は式Iに示したように誘導体化していない。生物学的有効性は、リン酸カルシウムの形成および沈着に関与することを含み得る。本発明の組成物のアスコルビン酸部分およびホスフェート部分は両方共、口腔と接触した後に生物学的に有効となる。
【0038】
D-アスコルビン酸形のアスコルビルホスフェートは、フリーラジカル捕獲のみが望まれ、その他の生物学的機能は望まれない、特定の口腔適用に実用性があり得る(L-アスコルビン酸が唯一の活性形である)。式Iは、本発明に記載の好ましい化合物を示すが、フリーラジカル捕獲特性を有するその他の化合物も当業者には公知であり、本発明の実施において有用であることを理解されたい。
【0039】
口腔で許容される担体は、式Iの化合物群などのフリーラジカル捕獲前駆化合物を、口腔内の1箇所以上の組織表面に送達できる、液状担体または固状担体と送達装置の組合せを含む、任意のベヒクルまたは送達手段を含む。口腔で許容される担体は、練り歯磨き粉(歯磨剤)、ゲル、うがい薬、すすぎ液、チューインガム、ロゼンジ(lozenge)、デンタルフロス、歯間刺激棒(interdental stimulating sticks)、義歯接着剤、頬側パッチ、歯香油、デンタルトレイ投与ゲルまたはペースト、スプレー、咀嚼可能な対象(担体として生皮を含んだ動物用の噛むおもちゃなど)、食品または食餌コーティング剤、局所用包帯、または歯用光沢剤などの、投与形を含む。口腔で許容される担体はまた、歯科用トレイ、プラスチック片、頬側パッチ、歯肉退縮索、または治癒可能な修復材料(一時的セメントまたはフリーラジカルで重合する歯複合材料など)などの、アセンブリまたは装置あるいはその一部を用いて、口腔に投与し得る。本明細書に列挙した以外の、アスコルビルホスフェート用の、口腔で許容される担体または送達手段は、当業者には既知であり、本発明の実施に有用性があると考えられる。
【0040】
口腔で許容される担体成分は、水溶性液体、水溶性固体、水不溶性液体、水不溶性固体、保湿剤、増粘剤、研磨剤、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、および双性イオン性)、甘味剤、芳香剤、着色剤(ダイおよび色素)、研磨剤、安定剤、ポリマー膜形成剤、ガム基剤を含む。
【0041】
水溶性液体は、水、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量は約1000未満)、ブチレングリコール、エチルアルコール、およびその混合物を含む。
【0042】
水溶性固体は、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、他の多価アルコール、ポリエチレングリコール(分子量は約1000より大きい)、およびその混合物を含む。
【0043】
水不溶性液体は、鉱油、植物油、天然または合成的に得られた流動エステル、およびその混合物を含む。
【0044】
水不溶性固体は、ワセリン、ワックス(天然および合成)、ポリブチレン、低分子量ワックス状ポリマー、およびその混合物を含む。
【0045】
保湿剤は、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量は約200〜約8000)、ブチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、他の多価アルコール、およびその混合物を含む。いくつかの保湿剤はまた、口腔で許容される担体内で水溶性固体として機能し得る。
【0046】
増粘剤は、カルボキシポリメチレン、アクリレートポリマーおよびコポリマー、カルボキシメチルセルロース(好ましくはナトリウム塩)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ポリ(マレイン酸無水物/メチルビニルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)、ビニルピロリドンコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、酢酸ビニルコポリマー、水和シリカ、ヒュームドシリカ、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、および当技術分野で既知であるその他のポリマー性または無機の増粘剤を含む。前記に列挙した増粘剤の塩も考えられる。前記増粘剤の混合物も、有利に使用することができる。
【0047】
界面活性剤(表面活性剤、目的とする機能に応じて、洗浄剤、発泡剤、分散剤、可溶化剤、または乳化剤とも呼ばれる)は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシネートナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ポロキサマー(Pluronicの商標名で販売)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tweenの商標名で販売)、脂肪アルコールエトキシレート、ポリエチレンオキシドとアルキルフェノールの縮合物、ココアミドプロピルベタイン、およびその混合物を含む。
【0048】
甘味剤は、糖、糖アルコール、サッカリン、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロース、およびその混合物を含む。
【0049】
芳香剤は、ウィンターグリーン油、ペパーミント油、スペアミント油、サリチル酸メチル、メントール、チモール、アネトール、丁子油、オイカプリトール、ユージノール、シナモン油、バニリン、並びにその混合物を含む。
【0050】
着色剤は、口腔で許容されるFD&CおよびD&Cダイおよびレーキ、酸化亜鉛、二酸化チタン、天然および合成の着色剤、並びにその混合物を含む。
【0051】
研磨剤は、シリカ(沈降およびゲル)、リン酸二カルシウム二水和物、無水リン酸二カルシウム、水和アルミナ、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、およびその混合物を含む。研磨剤が望まれる場合、フッ化物イオン源などの多くの有効な治療成分に対して不活性であることから、シリカ研磨剤が好ましい。
【0052】
安定剤は、キレート剤(EDTA、ビスホスホネート、クエン酸、およびグルコン酸など)、保存剤(安息香酸およびその塩、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸カリウム、並びにその混合物など)、並びに、特定の有効成分および/または調合物の有効期限を延長またはその活性を向上できる他の成分を含む。
【0053】
本発明の組成物は、使用中に、一つまたは複数の形態のリン酸カルシウムを沈降しやすくするための、カルシウムイオン源も含んでいてもよい。または、カルシウムイオン源は、口腔中の唾液でも、唾液でコーティングされた表面でもよい。アスコルビルホスフェートエステルおよびカルシウムイオン源の両方を含む組成物は、歯エナメル質の再ミネラル強化に有用であり得、初期の根面う蝕病変などの、初期段階の口腔硬組織疾患過程の回復に有用であり得る。1つの態様において、カルシウムイオン源は、一部構成の組成物の一成分でもよく、すなわち、アスコルビルホスフェートも含む単一混合物中に調合され、一部構成の混合物としてパッケージングされている。別の態様において、カルシウムイオン源は、二部構成の組成物の中の一部の一成分でもよく、すなわち、アスコルビルホスフェートを含む第二混合物とは分離され別個である第一混合物中に調合されている。この特定の態様において、2つの混合物を、互いに別々にパッケージングして、使用時点または口腔への適用時点まで、混合または互いに接触することを避ける。この態様において特に有用なパッケージは、スタティックミキサーアセンブリが取り付けられたデュアルチャンバーシリンジであり、第一のカルシウムイオン含有混合物を、2つのチャンバーの一方に入れ、第二のアスコルビルホスフェート含有混合物を、2つのチャンバーの他方に入れ、シリンジ・プランジャにかかった外圧で、2つの混合物を、スタティックミキサーアセンブリへと押した。スタティックミキサーアセンブリを通じてこのように押された2つの混合物は、スタティックミキサーアセンブリのバッフルを通過最中または通過した時に、配合および混合され、カルシウムイオンおよびアスコルビルホスフェートの両方を含む単一混合物となる。混合物は、2つの別々の混合物が最初にスタティックミキサーアセンブリに入った開口部から遠い、スタティックミキサーアセンブリの開口部から出る。表面上に置かれ、スパーテルまたは類似の道具を用いて攪拌した、2つの混合物を手で混合することも考えられる。さらに別の態様において、カルシウムイオン源は唾液または口腔表面に見出し得、ここでは、アスコルビルホスフェート混合物とカルシウムイオンの混合はインサイチューで行われる、すなわち、1箇所以上の口腔表面上で行われる。
【0054】
他の補助有効成分または補足有効成分(その多くは当業者に既知である)も、アスコルビルホスフェート組成物に含め得、より詳細に以下に記載する。このような補助成分は、追加的な、場合によっては補足的な生物学的または治療的活性をアスコルビルホスフェートに付与し得る。
【0055】
抗う蝕剤
一つまたは複数の抗う蝕剤、特にフッ化物含有またはフッ化物遊離化合物を、有利には、アスコルビルホスフェート組成物に含め得る。有用な抗う蝕剤は、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化アミン、並びに、う蝕形成(虫歯)に対する口腔のミネラル化組織の抵抗性を向上できる他のフッ化物含有化合物を含む。抗う蝕剤は、組成物の約0.1重量%から約4重量%、好ましくは組成物の約0.2重量%から約0.8重量%の濃度でアスコルビルホスフェート組成物中に含め得る。
【0056】
歯石抑制化合物
抗う蝕剤としても知られる、一つまたは複数の歯石抑制剤を、アスコルビルホスフェート組成物中に使用して、歯上における歯石形成の減少または予防を補助し得る。有用な歯石抑制剤は、ピロリン酸、トリポリリン酸およびポリリン酸のナトリウム塩およびカリウム塩、並びに、当技術分野において既知のカルシウムキレート剤またはカルシウム捕獲剤を含む。歯石抑制化合物は、組成物の約0.1重量%から約10重量%、好ましくは約1重量%〜約4重量%の濃度で、アスコルビルホスフェート組成物中に含め得る。
【0057】
抗菌剤
歯肉炎、歯周病、う蝕、および口臭などの口腔疾患に関与する微生物を減少または排除するために、抗菌剤を、本発明のアスコルビルホスフェート組成物中に含め得る。このような化合物は当技術分野において公知であり、トリクロサン、クロロヘキシジン(およびその塩)、セチルピリジニウムクロリド、および精油(メントール、オイカプリトール、チモール、およびサリチル酸メチルを含む)を含む。抗菌剤は、組成物の約0.01重量%から約2重量%、好ましくは組成物の約0.1重量%〜約1重量%の濃度で、アスコルビルホスフェート組成物中に含め得る。
【0058】
歯脱感作剤
本明細書に記載したアスコルビルホスフェート化合物はまた、口腔と接触した時に唾液溶液にホスフェートイオンを遊離するため(よって、歯表面におけるリン酸カルシウムの沈着から生じる歯の再ミネラル強化が進められる)、脱感作剤としての活性も示し得るが、歯の感受性をさらに軽減するために、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、または塩化ストロンチウム六水和物などの補足的な歯脱感作剤を添加することが有利であり得る。このような補足的な歯脱感作剤は、組成物の約0.1重量%から約10重量%の濃度で、アスコルビルホスフェート組成物中に含め得る。硝酸カリウムは、好ましい補足的な歯脱感作剤であり、組成物の約3重量%から約6重量%、好ましくは組成物の約5重量%の濃度で、組成物中に含め得る。
【0059】
アスコルビルホスフェート組成物は、任意の補助有効成分と一緒に、練り歯磨き粉(歯磨剤)、ゲル、うがい薬、チューインガム、ロゼンジ、デンタルフロス、歯間刺激棒(stimulating sticks)、義歯接着剤、頬側パッチ、歯香油、デンタルトレイ投与ゲルまたはペースト、スプレー、咀嚼可能な対象(担体として生皮を含んだ動物用の噛むおもちゃなど)、食品または食餌コーティング、局所用包帯、または歯用光沢剤の形態であり得る。
【0060】
アスコルビルホスフェート組成物の適用は、担体の性質に依存するが、一般に、ブラッシング、すすぎ、スプレー、咀嚼、塗布、粘着、または、別様に1箇所以上の口腔組織表面に該組成物を適用することにより行い得る。適用は、アスコルビルホスフェートエステル含有組成物、例えばゲルを、デンタルトレイに入れ、トレイを、歯の上顎(上部)弓および/または下顎(下部)弓に付着させ、よって、歯を、トレイ内のゲルと接触させることにより行い得る。
【0061】
以下の実施例は、本発明の代表例として示す。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、これらの態様およびその他の均等な態様は、本発明の開示、表、および添付の特許請求の範囲を鑑みれば明らかになると思われる。
【0062】
実施例1
本発明の特定の態様によると、フリーラジカル捕獲前駆化合物、すなわち、アスコルビル-2-モノリン酸ナトリウムを、下記に示した成分を含むうがい薬へと調合する。
【0063】

【0064】
上記組成物のpHは8.86であり、比重は1.058であり、屈折率は1.3530であった。
【0065】
実施例2
本発明の特定の態様によると、フリーラジカル前駆化合物、すなわち、アスコルビル-2-モノリン酸ナトリウムを含む練り歯磨き粉を、以下の成分を含むように調合する。
【0066】

【0067】
以下の図表は、アスコルビルホスフェート化合物を含んだ、うがい薬および練り歯磨き粉の組成物の成分についての、およその濃度範囲(重量基準)の要約である。アスコルビルホスフェートなる語は、一つまたは複数のアスコルビン酸のリン酸エステルを、単独でまたは組合せて含む。アスコルビルホスフェートなる語はまた、アスコルビン酸のリン酸エステルの対応する無機塩および有機塩のいずれかを含む。好ましいアスコルビルホスフェートは、アスコルビル-2-モノホスフェートであり、より好ましいアスコルビルホスフェートは、単にリン酸アスコルビルナトリウムとしても知られる、アスコルビル-2-モノホスフェートの三ナトリウム塩である。
【0068】
【表1】

【0069】
前記の表1の比率は、調合物の全重量を基準とした、重量%である。
【0070】
式Iの化合物はまた、他のタイプの口腔ケア組成物、並びに、特定のタイプの食品(チューインガムを含むがこれに限定されない)、デンタルフロス、歯ホワイトニングゲルおよびペースト、口臭予防スプレー、頬側パッチ、医薬送達片、およびロゼンジに添加し得る。さらに、式Iの化合物を口腔の硬組織表面および/または軟組織表面に送達するための任意の装置または担体が、本発明の組成物の送達システムまたは装置として、並びに、本発明の実施において、有用性を有すると考えられる。
【0071】
また、本発明の組成物中に、フッ化物イオン源などのホスファターゼ酵素阻害剤を包含することも考えられる。歯石抑制、歯漂白もしくは歯ホワイトニング、口臭排除もしくは口臭予防、および微生物抑制に使用した成分などの、他の補助的口腔ケア成分も含め得る。また、式Iの化合物を、より長い時間(例えば、1時間を超過して)硬組織表面または軟組織表面に保持するための一つまたは複数の成分も考えられる。このような成分は、歯または口腔粘膜表面に密接または近接して保つように、式Iの化合物と物理的またはイオン的に結合している、ポリマーを含み得る。
【0072】
本発明の組成物は、一部構成の組成物として使用するために調製およびパッケージングし得る(組成物を口腔に適用する前に成分を混合する必要はない)。適切なパッケージには、いくつか例を挙げると、シリンジ、チューブ、瓶、ジャー、および単位用量パッケージが含まれる。
【0073】
または、二部構成の組成物(2つの別々にパッケージングされた成分が、口腔に適用する直前に配合されて、単一成分の混合物を形成する)を使用してもよい。二部構成の組成物は、システムの一方の成分をデュアルチャンバーシリンジの一方のチャンバーに入れ、他方の成分をデュアルチャンバーシリンジの他方のチャンバーに入れることによりパッケージングし得る。2成分の混合は、シリンジプランジャーに圧力をかけ、これによって、デュアルチャンバーシリンジの一端に取り付けられた一連の混合構成要素へ向かって、およびこの混合構成要素を通じて、両方のチャンバーの内容物を押すことにより行われる。このような混合構成要素アセンブリは、当技術分野においてスタティックミキサーとして知られている。スタティックミキサーの一端へと、スタティックミキサーを通して押すにつれて、2成分はこのように混合され、最終的にスタティックミキサーアセンブリの他端から出てくる。スタティックミキサーアセンブリの端から出た混合物は、長い時間保存するのではなく、好ましくは、口腔に直接適用する。
【0074】
さらに、二部構成システムまたは多部構成システムを連続的に適用してもよく、ここでは、1つの別々にパッケージングした成分を口腔表面に適用し、次に、第二の別々にパッケージングした成分を口腔(同じ口腔表面)に適用する。このようにして、2つ以上の成分の混合を、適用前ではなく、インサイチューで行う。
【0075】
実施例3
過酸化物による歯ホワイトニングに伴う歯の感受性を予防する方法
外因性および内因性の着色歯の両方を排除または減少することのできる大半の歯ホワイトニング組成物は、酸化化合物を含んでいる。典型的には、酸化化合物は、過酸化水素、または、過酸化水素の前駆体、例えば過酸化カルバミド、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、およびその他である。過酸化水素は、無傷エナメル質および象牙質を通って浸透できることが知られており(エナメル質亀裂または暴露された根面表面を通じて、より簡単に浸透する)、よって、過酸化物の歯ホワイトニング組成物が歯表面に最初に接触した時から15分以内に、重要な歯髄組織に到達する。歯髄チャンバーにおける過酸化物の存在は、このような歯ホワイトニング手法に伴う歯感受性の主な原因の1つであると推測される。
【0076】
本発明のアスコルビルホスフェート組成物の特に有用な適用は、過酸化物を含む歯ホワイトニング組成物の使用に伴うことの多い歯感受性を軽減または予防するためである。過酸化物を含む歯ホワイトニング組成物で処理しておいた歯表面と接触した場合、アスコルビルホスフェート組成物は、口腔に存在するホスファターゼ酵素による加水分解時にアスコルビン酸源を提供する。アスコルビン酸は、強力なフリーラジカル捕獲剤であることが知られている。任意の特定の理論で固めたくはないが、口腔に適用したアスコルビルホスフェートからのアスコルビン酸の遊離により、ヒドロキシラジカル(・OH)およびペルヒドロキシラジカル(・OOH)などの、過酸化水素のフリーラジカル分解生成物を捕獲することにより、歯髄組織傷害の発生率が減少する場合がある。他の利点は、遊離ホスフェートイオンが唾液溶液へと歯表面において遊離され、これにより、象牙質細管内でのリン酸カルシウム結晶の形成(典型的には沈着による)が非常に行われ易い条件を創造する点で、アスコルビルホスフェート分子の加水分解後にもたらされ得る。象牙質細管の遮断は、熱、寒さ、および吸湿性食品との接触などの外的刺激により引き起こされた細管内での液体運動の発生率を低減することにより、歯感受性を低減することが知られている。
【0077】
過酸化物による歯ホワイトニング手法に伴う歯感受性を減少または排除する好ましい方法は、以下の連続的段階を含む。
1.歯表面または歯表面群を、過酸化物を含む歯ホワイトニング組成物と、歯ホワイトニングを奏功する時間接触させ、
2.同じ歯表面または歯表面群を、アスコルビルホスフェートなどの、式Iの化合物を含む組成物と接触させる。
【0078】
任意選択的に、前記方法のアスコルビルホスフェート組成物は、保湿剤、増粘剤、保存剤、発泡剤、可溶化剤、粘着増強剤、ホスファターゼ酵素阻害剤、抗菌剤、抗う蝕剤、歯石抑制剤、歯脱感作剤、甘味剤、および芳香剤などの、口腔ケア調合物に一般的に使用される他の成分も含み得る。
【0079】
前記方法におけるアスコルビルホスフェートの担体または散在手段は、液体、ゲル、ペースト、クリーム、スティック、チューインガム、または当業者に公知の任意の他の口腔ケアベヒクルであり得る。前記方法の組成物は、すすぐ、ブラッシング、スプレー、または咀嚼により、口腔表面内に近接して適用または配置し得る。口腔表面は、歯の表面、口腔粘膜、舌、またはさらには、根冠または掘削した穴などの、歯科手術中に一過性に暴露される表面でもよい。前記方法の組成物を口腔表面に適用する別の手段は、組成物を、デンタルトレイ、片またはパッチ上に配置し、その後、口腔中の、該デンタルトレイ、片またはパッチを、好ましくは処置しようとしている口腔表面に直接接触させて配置することによる。
【0080】
実施例4
アスコルビル-2-ホスフェートのナトリウム/カルシウム混合塩を含む義歯接着剤
入れ歯を口腔粘膜表面に一時的に付着するための、義歯接着剤として使用した場合に、抗酸化活性を示す、有用な組成物を調製した。このような義歯接着剤の一例を、下記の表に示す。
【0081】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)口腔的に許容される担体、および
(b)下記の構造
【化1】

(式中、nは1〜10である)
を有するアスコルビル-2-ホスフェート化合物またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩を含む、口腔ケア組成物。
【請求項2】
nが2である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
nが3である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
nが1〜5である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
カルシウムイオン源をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
カルシウムイオン源を含む唾液と混合した、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
アスコルビルホスフェートが、アスコルビル-2-モノホスフェート、アスコルビル-2-ジホスフェート、アスコルビル-2-トリホスフェート、アスコルビル-2-ポリホスフェート、またはその組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
抗う蝕剤、歯石抑制剤、抗菌剤、および脱感作剤の一つまたは複数を任意選択的に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
式Iの化合物が歯または歯肉に粘着するのを促進する成分をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
成分がポリマーである、請求項9記載の組成物。

【公開番号】特開2007−131636(P2007−131636A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9929(P2007−9929)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【分割の表示】特願2002−558996(P2002−558996)の分割
【原出願日】平成14年1月24日(2002.1.24)
【出願人】(506253078)ブライトスマイル プロフェッショナル インク. (1)
【Fターム(参考)】