説明

局部載荷試験装置および試験方法

【課題】 従来よりも小型で持ち運びに便利で、人工構造物または地盤のあらゆる面から所望の深さ位置での強度を簡便に計測することができ、さらに人工構造物または地盤に与える損傷を最小限にとどめ、また操作の煩雑さを解消することができる局部載荷試験装置および試験方法を提供することである。
【解決手段】 試験装置本体2と、この試験装置本体2に設けられ、コンクリート構造物50に削孔された孔51の孔壁の面を直接局部載荷する載荷部とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部載荷試験装置および試験方法に関し、詳しくは、トンネルや橋梁、ダム、ビルなどのコンクリートの人工構造物(コンクリート構造物)のほか、金属や木材、樹脂(たとえばプラスチック)等による人工構造物や、そのほか、岩盤や岩石、土砂地盤といった地盤の試験を行うための局部載荷試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トンネルや橋梁、ダム、ビルなどのコンクリートの人工構造物(コンクリート構造物)のほか、金属や木材、樹脂(たとえばプラスチック)等による人工構造物や、そのほか、岩盤や岩石、土砂地盤といった地盤の、すなわち人工構造物または地盤の試験を微破壊で行う需要がある。
【0003】
人工構造物または地盤の一例としてコンクリート構造物についていうと、コンクリート構造物の強度に劣化が生じるとその補修等が必要となるため、その劣化度合いの指標であるコンクリートの強度を計測する方法が従来から知られている。
【0004】
コンクリート構造物の経時劣化の進行が常に一定であるならば、ある特定期間が経過した時点で補修等を行えばよいが、実際にはその周辺環境等の影響を大きく受けるので、コンクリート構造物の劣化の進行具合は構築場所や部位によって様々である。
【0005】
このため、コンクリート構造物の強度を知るためには、そのコンクリート構造物個々について実際に計測をする必要がある。この計測方法の例としては、計測対象のコンクリート構造物の表面から、たとえば直径100mm、長さ200mm程度の円柱状のコンクリートコアを供試体として採取し、その供試体を用いて圧縮強度試験を行う方法が従来から知られている。
【0006】
このような圧縮強度試験は試験結果の信頼性も高く、従来から広く用いられているが、供試体全体を圧縮するため、その全体の平均強度を計測することになってしまう。ところが、コンクリート構造物の劣化はその表面から徐々に進行することが知られており、どの程度の深さまで劣化が進行しているかを調べることも重要と考えられる。
【0007】
これに対応した従来技術の一例としての特許文献1に記載の試験装置では、コンクリート構造物から採取した円柱状の供試体の側面に針を貫入させ、針の貫入量とその貫入時に針にかかる荷重とを計測し、両者の関係からコンクリート構造物の強度を求めるようにし、また、円柱状の供試体の長さはコンクリート構造物の表面からの深さに対応するので、供試体の側面の針貫入位置を変えることによって、コンクリート構造物の表面からの異なる深さでの強度計測を可能にしている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−90150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが上述の特許文献1に記載の試験装置では、上述のように円柱状の供試体に対してその外側から針を貫入してコンクリート構造物の強度を計測するものであるため、供試体の大きさよりも試験装置が大きくなってしまうことは避けられず、その試験装置を、計測対象であるコンクリート構造物の現場に持ち込むのは困難であり、現場で計測を済ませてしまうようなことは困難であった。
【0010】
また特許文献1に記載の試験装置では、供試体すなわちコンクリート構造物から採取したコンクリートコア自身の強度を計測するものであるため、コンクリート構造物から供試体を採取する際に損傷してしまっては試験において使い物にならなくなってしまう。このため、コンクリート構造物にひびが入っていたりして供試体を損傷してしまった場合には供試体を再度採取する必要があり、コンクリート構造物にさらなる損傷を与えてしまうおそれがあるという問題があった。
【0011】
また、試験対象物の一例であるコンクリート構造物の試験を行う場合には、そのコンクリート構造物のある点からたとえば上下左右といった所定方向での強度を知りたい場合があるが、特許文献1に記載の試験装置では、円柱状の供試体の側面のうちのどの位置がコンクリート構造物の上下左右のいずれに対応するのかを、予めしっかり記録しておかなければならず、処理が煩雑であるという問題があった。
【0012】
本発明は上記の点にかんがみてなされたもので、従来よりも小型で持ち運びに便利で、人工構造物または地盤のあらゆる面から所望の深さ位置での強度を簡便に計測することができ、さらに人工構造物または地盤に与える損傷を最小限にとどめ、また操作の煩雑さを解消することができる局部載荷試験装置および試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の局部載荷装置は、試験装置本体と、前記試験装置本体に設けられ、人工構造物本体または地盤の面を直接局部載荷する載荷部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
人工構造物の例としては、コンクリート構造物のほか、金属や木材、樹脂(たとえばプラスチック)等による構造物が挙げられ、また、コンクリート構造物の例としては、トンネルや橋梁、ダム、ビルなどが挙げられ、さらに、地盤の例としては岩盤や岩石、土砂地盤などが挙げられる。
【0015】
また、人工構造物本体または地盤の面の例としては、壁面の表面でもよいし、壁面に設けた孔の孔壁、孔底の各面、また、壁面の溝、亀裂などスリット状の部分の内面など、載荷部が当接することができるすべての面を含む。
【0016】
また本発明は請求項1に記載の発明において、前記載荷部を駆動する駆動手段と、前記載荷部の変位量を計測する変位計測手段とをさらに備えたことを特徴とする。
【0017】
また本発明は請求項2に記載の発明において、前記載荷部による局部載荷の際の荷重を計測する荷重計測手段と、前記荷重計測手段によって計測した荷重と前記変位計測手段によって計測した変位量とに基づいて前記載荷部による前記人工構造物本体または地盤の面の変形量を求め、前記荷重計測手段によって計測した荷重と前記変形量とに基づいて前記人工構造物本体または地盤の物性値を求める手段とをさらに備えたことを特徴とする。
【0018】
物性値の例としては、圧縮強度、弾性係数、ポアソン比、密度、単位粗骨材容積、水セメント比、空隙率、弾性波速度、硬度などを挙げることができる。
【0019】
また本発明は請求項1ないし3のうちのいずれか1項に記載の発明において、前記試験装置本体の胴体部の一部に凹んだ収容スペースを有し、非載荷時には前記収容スペースに前記載荷部が収容されていることを特徴とする。
【0020】
また本発明は請求項1ないし4のうちのいずれか1項に記載の発明において、前記試験装置本体が円柱状の形状であり、前記試験装置本体の軸線方向に対してほぼ垂直な方向に前記載荷部が突出して前記局部載荷を行うことを特徴とする。
【0021】
また本発明は請求項1ないし5のうちのいずれか1項に記載の発明において、前記人工構造物本体または地盤の面のうち前記載荷部によって局部載荷される部分を観測する観測手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0022】
また本発明は請求項6に記載の発明において、前記観測手段がファイバースコープであることを特徴とする。
【0023】
また本発明の局部載荷試験方法は、人工構造物本体または地盤の面を直接局部載荷することを特徴とする。
【0024】
また本発明は請求項8に記載の発明において、前記局部載荷の際の荷重と前記人工構造物本体または地盤の面の変形量とを求め、前記荷重と前記変形量とに基づいて前記人工構造物本体または地盤の物性値を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来よりも小型で持ち運びに便利で、人工構造物または地盤のあらゆる面から所望の深さ位置での強度を簡便に計測することができ、さらに人工構造物または地盤に与える損傷を最小限にとどめ、また操作の煩雑さを解消することができる局部載荷試験装置および試験方法を提供することができる。
【0026】
すなわち本発明は、人工構造物または地盤のたとえば孔に挿入して計測することができるので、試験装置は従来よりも小型化することができるし、局部載荷を実現しているので人工構造物または地盤の表面から所望の深さ位置での強度を簡便に計測することができる。また、これにより、人工構造物または地盤の圧縮強度や弾性係数、ポアソン比、密度、単位粗骨材容積、水セメント比、空隙率、弾性波速度、硬度などの物性値を求めることもできる。
【0027】
また本発明では、人工構造物または地盤に対して削孔した孔を利用することができるので、従来技術での供試体に相当する、削孔時に取り除いたコアは不要であり、そのコアが損傷したとしても何ら問題なく試験を行うことができ、このため人工構造物または地盤に与える損傷を最小限にとどめることができる。
【0028】
また本発明では、人工構造物または地盤に削孔した孔を用いて試験を行うことができるので、その人工構造物または地盤のある点からたとえば上下左右といった所定方向は、その孔壁の上下左右といった方向で試験することができ、処理、操作が容易である。
【0029】
また本発明では、人工構造物または地盤に対して削孔した孔を利用するので、削孔時に取り除いたコアは別の試験に利用することもでき、人工構造物または地盤に与える損傷を最小限にとどめながら様々な試験を行うことができるという効果もある。
【0030】
また本発明によれば、人工構造物または地盤に対して削孔する孔の直径を小さくすることができるので、人工構造物または地盤に与える損傷が小さくて済むし、人工構造物または地盤の一例のコンクリート構造物に鉄筋が埋め込まれている場合にもその鉄筋を避けることができ、鉄筋を切断することなく削孔を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
本発明の局部載荷試験装置および試験方法は、トンネルや橋梁、ダム、ビルなどのコンクリートの人工構造物(コンクリート構造物)のほか、金属や木材、樹脂(たとえばプラスチック)等による人工構造物や、そのほか、岩盤や岩石、土砂地盤といった地盤を、すなわち人工構造物または地盤を試験対象とすることができるが、本実施の形態では、その一例としてコンクリート構造物の試験を行う場合について説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施の形態による局部載荷試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【0034】
本実施の形態の局部載荷試験装置1は、コンクリート構造物50に試験用孔51を削孔し、図1に示すようにその試験用孔51に局部載荷試験装置本体2を挿入して用いる。
【0035】
なお、本実施の形態の局部載荷試験装置1では、孔内の側壁に対して局部載荷する例を示すが、本発明はこれに限られるものではなく、あらゆる人工構造物本体または地盤の面に対して局部載荷するものであってよい。人工構造物本体または地盤の面の例としては、壁面の表面でもよいし、壁面に設けた孔の側壁、孔底の各面、また、壁面の溝、亀裂などスリット状の部分の内面など、外部から載荷可能なあらゆる面を含むものである。このような面の載荷の際にはその反力をとる必要があるが、たとえば壁面の表面に対して載荷する場合には局部載荷試験装置をアンカーなどの固定治具によってその壁面に固定するような反力装置を設けるようにすればよい。
【0036】
この局部載荷試験装置1は、試験装置本体2のほかに、試験装置本体2に設けた載荷部である後述の載荷先端8を駆動する駆動手段としての加圧ポンプ3や、試験用孔51の内壁すなわち孔壁のうち載荷先端8によって載荷する部位の状態を観測する観測手段としての後述のファイバースコープ10からの映像を表示するディスプレイ4や、試験装置本体2に設けた変位計測手段である後述の変位量計測器5cからの変位量データや加圧ポンプ3からの圧力データ等を収集しデータの整理や解析等を行うデータ収集装置5を備えて構成される。
【0037】
試験装置本体2のファイバースコープ10で撮影した映像は、ファイバースコープ用配線4aを介してディスプレイ4に送信され、ディスプレイ4にて表示される。なお、ディスプレイ4を設けず、ファイバースコープ10の終端を直接に覗くようにしてもよい。また、ファイバースコープ10を後述のパソコン14に接続し、ファイバースコープ10で撮影した映像をパソコン14に取り込み、記録し、後に再生できるようにしてもよい。
【0038】
加圧ポンプ3は油圧ホース3aおよび3bを介して試験装置本体2に接続され、その油圧にて載荷先端8を駆動する。駆動された載荷先端8の変位は、変位量計測器5cよって計測され、信号配線5aを介してデータ収集装置5に送られる。また、加圧ポンプ3による圧力も信号配線3cを介してデータ収集装置5に送られる。
【0039】
なお、油圧ホース3aおよび3bは一方が加圧用のもので、他方が減圧用のものであり、本実施の形態では、油圧ホース3aが加圧用のホースであり、油圧ホース3bが減圧用のホースである。
【0040】
また、各信号配線は有線であってもよいし、無線であってもかまわない。
【0041】
本実施の形態では、試験装置本体2を円柱状の形状にし、その直径を40mm程度にしている。コンクリート試験の際は、この試験装置本体2をコンクリート構造物50に挿入して行うため、試験用孔51は、円柱をくり貫いた、直径42mm程度のもので済む。
【0042】
このように試験装置本体2および試験用孔51の断面を円形にすることによって、試験用孔51内で試験装置本体2の向きを自由に変えることができ、試験用孔51の側壁のうちの所望の面を載荷することができる。
【0043】
ただし、本発明による局部載荷試験装置の試験装置本体の形状が円柱状に限られるものではなく、多角柱状であったり、球形状であったり、どのような形状であってもかまわない。
【0044】
図2は、図1に示した局部載荷試験装置1の試験装置本体2を示す斜視図である。
【0045】
図2に示すように、本実施の形態の試験装置本体2は円柱状の形状であり、先端部6の方から試験用孔51に挿入する。
【0046】
試験装置本体2の胴体部7には、胴体部7の円柱の側面よりも凹んだ収容スペース7aが設けられており、この収容スペース7aには、試験用孔51に試験装置本体2が挿入されたときに試験用孔51の孔壁を載荷する載荷先端8と、載荷先端8の変位を後述の変位量計測器5cに伝達する連結板9と、試験用孔51の孔壁のうち載荷先端8によって載荷する部位の状態を観測する観測手段としてのファイバースコープ10とが設けられる。
【0047】
図3は、図2に示した試験装置本体2のA−B断面図である。なお、この図3では図2に示したファイバースコープ10を取り外した状態を示している。
【0048】
図3に示すように、収納スペース7aは、胴体部7の円柱の側面よりも凹んで設けられ、載荷先端8等が設けられている。
【0049】
非載荷時には、この収容スペース7aに載荷先端8等が収容され、載荷先端8等が試験装置本体2の径よりも出っ張らないようにすることができ、試験に必要な試験用孔51の径を小さくすることができ、また試験装置本体2の試験用孔51への挿入をスムーズに行うことができる。
【0050】
胴体部7には、図2に示した油圧ホース3aおよび3b、ファイバースコープ用配線4a並びに信号配線5aを通すための穴が設けられており、油圧ホース3aおよび3b、ファイバースコープ用配線4a並びに信号配線5aは、この穴を通って収納スペース7aの周辺に導かれる。油圧ホース3aは穴3dを通り載荷先端8の駆動に用いる油圧を供給する。
【0051】
載荷先端8はピストン8aに取り付けられており、この載荷先端8はピストン8aとともに油圧ホース3aによる油圧の加圧によって図3における上方向に押し上げられる。載荷先端8およびピストン8aの引き下げは、図3では図示していないが、油圧ホース3bによる油圧の減圧によって行う。この押し上げおよび引き下げが載荷先端8の駆動である。
【0052】
本実施の形態において、載荷先端8による載荷は、試験装置本体2の軸線方向とほぼ垂直な方向に載荷先端8が突出して(押し上げられて)行われる。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、載荷対象面との方向関係、試験装置本体の向きとの方向関係において、あらゆる方向に対して載荷を行うことができるものであってよい。
【0053】
載荷先端8の上下動は、載荷先端8に固定された連結板9の上下動となり、さらに連結板9に固定された変位ロッド5bを上下させ、この上下の変位は変位量計測器5cによって検出される。
【0054】
なお、図3において、ネジ穴7bは後述の径調節用アタッチメント15を取り付けるためのアタッチメント取付用ネジ穴である。
【0055】
図4は、図1に示した局部載荷試験装置1の制御に関する構成を示すブロック図である。
【0056】
試験装置本体2に設けられたファイバースコープ10によって撮影された映像は、ディスプレイ4にて表示される。
【0057】
加圧ポンプ3は油圧の加圧および減圧が可能なもので、この油圧の加圧および減圧は油圧ホース3aおよび3bによって試験装置本体2に伝達され、これによって載荷先端8が駆動され、上下動する。加圧ポンプ3は電動式のものでもよいし、操作者による手動式のものであってもよい。加圧ポンプ3による圧力は荷重計測手段である圧力計測器3eによって計測され、データ収集装置5の圧力指示計11に送信される。
【0058】
載荷先端8の上下動の変位は変位量計測器5cによって検出され、データ収集装置5の変位指示計12に送信される。
【0059】
データ収集装置5は、たとえば、圧力計測器3eからの計測圧力値を受信する圧力指示計11と、変位量計測器5cからの計測変位量を受信する変位指示計12と、圧力指示計11によって受信した計測圧力値と変位指示計12によって受信した計測変位量とを対応付けて高速に記録する高速レコーダ13と、高速レコーダ13に記録してある計測圧力値や計測変位量に基づいてコンクリート試験の結果を解析するパソコン14とを有して構成される。
【0060】
圧力指示計11や変位指示計12は、圧力計測器3eや変位量計測器5cから受信した電気信号を操作者が所望する単位系に変換する変換手段や、その単位系に変換した計測圧力値や計測変位量を操作者に向けて表示する表示部を備えてもよい。
【0061】
圧力指示計11や変位指示計12や高速レコーダ13は回路基板上に構成され、これらをパソコン14内に搭載してデータ収集装置5を一体化してもよいし、別々の筐体にしてもかまわない。
【0062】
次に、本実施の形態の局部載荷試験装置1の動作について図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0063】
図5は、図1に示した局部載荷試験装置1によってコンクリート構造物の試験を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
試験対象のコンクリート構造物50に試験装置本体2を挿入する孔がない場合は、操作者は、コンクリート構造物50に試験用孔51を削孔し、図1に示すようにその試験用孔51に試験装置本体2を挿入する(A−1)。
【0065】
続いて操作者は、ディスプレイ4に映っているファイバースコープ10によって撮影している映像を参照しながら、試験装置本体2の挿入の向きや深さを調節し、試験用孔51の孔壁の所望位置に載荷先端8を合わせ、その所望位置を載荷先端8によって局部載荷できるようにする。
【0066】
コンクリートは一般に粗骨材とモルタルとが混在して構成されているが、載荷先端8による局部載荷の際、載荷先端8が粗骨材部分に当っているのとモルタル部分に当っているのとでは、載荷先端8を変位させるのに必要な圧力、荷重に大きな違いがある。そこで本実施の形態の局部載荷試験装置1では、載荷される試験用孔51の孔壁の状態をファイバースコープ10によって操作者が観測できるようにし、所望の部位の局部載荷ができるようにしている。すなわち、粗骨材部分を局部載荷したい場合、モルタル部分を局部載荷したい場合の両方に対応することができる。ただし、通常のコンクリートの強度を計測する場合には、モルタル部分を局部載荷するのが望ましい。
【0067】
操作者は、ディスプレイ4に映っているファイバースコープ10による映像を参照しながら、所望位置の局部載荷ができるように試験装置本体2の挿入の向きや深さを調節したならば(A−2)、加圧ポンプ3による加圧を開始し計測を行う(A−3)。この計測は、圧力計測器3eによって計測した圧力値とともに、その圧力値のときに変位量計測器5cによって計測した変位量が随時高速レコーダ13に記録されることによって行われる。
【0068】
計測終了(A−4)の条件としては、たとえば、
(1)載荷先端8が試験用孔51の孔壁に触れてから、必要な量の変位が得られた。
(2)ピストン8aがストローク一杯に押し出された。
(3)加圧ポンプ3による加圧能力の限界に達した。
【0069】
ステップ(A−4)にて終了条件になったならば、加圧ポンプ3による減圧を行ってピストン8aを押し下げ、載荷先端8が胴体部7よりも出っ張らないようにした上で、試験用孔51から試験装置本体2を抜き取って回収する(A−5)。
【0070】
その後は、高速レコーダ13に記録された圧力値と変位量との対応付けを用いて、パソコン14にて、任意の試験結果整理(A−6)、解析(A−7)が行われる。この試験結果整理、解析はパソコン14にて自動で行ってもよいし。操作者が手動で行ってもかまわない。
【0071】
たとえば、試験結果すなわち圧力値と変位量との対応付けに基づいて、変形量−荷重曲線を求めることができる。以下にこの点について説明する。
【0072】
まず、計測変位量から、載荷先端8が加圧しない状態から試験用孔51の孔壁に触れるまでの変位を除くよう補正し、試験用孔51の孔壁を変形させた長さと、そのときの圧力値から算定される載荷先端8に加わる荷重との曲線を求める。次に、抵抗値を求める。この抵抗値は、適した変形量領域において、数1で表される。
【0073】
【数1】

抵抗値と、試験用孔51の削孔に採取した供試体の一軸試験による圧縮強度や静弾性係数とを比較し、コンクリート構造物50の物性値を求めることができる(物性値を求める手段)。物性値の例としては、圧縮強度、弾性係数、ポアソン比、密度、単位粗骨材容積、水セメント比、空隙率、弾性波速度、硬度などが挙げられる。
【0074】
次に、試験装置本体2の径調節用アタッチメントについて説明する。
【0075】
図6は、図1に示した局部載荷試験装置1の試験装置本体2の径を調節するためのアタッチメントについて説明する図であり、(a)は試験装置本体2の図3におけるC−D断面図であり、(b)は(a)にアタッチメントを装着した状態を示す断面図である。
【0076】
上述のように、本実施の形態の局部載荷試験装置1では、試験装置本体2を挿入可能な径の試験用孔51を削孔すればよいため、試験用孔の径を小さくすることができ、コンクリート構造物51に与える損傷を小さくすることができるという効果を奏することができる。
【0077】
ところが、すでに従来の試験方法によって直径100mm程度の孔が削孔されていた場合には、本実施の形態の試験のために直径42mm程度の孔を削孔を新たに行うよりも、すでにある直径100mm程度の孔を利用した方がコンクリート構造物に損傷をさらに与えずに済む。
【0078】
そこで本実施の形態では、図6(b)に示すように、より大きな孔にも試験装置本体2を挿入可能とするアタッチメント15を提供する。このアタッチメント15は、少なくとも載荷先端8の位置にて、試験装置本体2の径を補うものである。
【0079】
アタッチメント15は、アタッチメント取付用ネジ15aをアタッチメント取付用ネジ穴7bにネジ入れることによって試験装置本体2に装着可能であり、このアタッチメント15を装着すれば直径100mm程度の孔にも対応可能である。また、様々なサイズのアタッチメントを用意すれば、直径100mm程度の大きさ以外の様々な径の孔にも対応することができる。
【0080】
ところで、このアタッチメント15の底部すなわち孔壁に接する部分の形状は、孔壁に接する面積が広くなるように、孔壁の形状、曲率等に合わせる(ほぼ同じ形状、曲率等)のが望ましいが、平らであってもよいし、孔壁と異なるものであってもかまわない。
【0081】
なお、本実施の形態では、図2に示したように先端が半球状の載荷先端8を用いるようにしたが、本発明の局部載荷のための載荷先端の形状はこれに限られるものではなく、先端が所定の面積を有する平面でもよいし、円錐状でもよいし、載荷する人工構造物本体または地盤の面の形状や曲率等に合わせた(ほぼ同じ形状、曲率等)形状であってもよいし、そのほかの形状であってもよい。この載荷先端の形状は、載荷する人工構造物本体または地盤の面に応じて選択することができ、その載荷先端は現場で選択し交換することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施の形態による局部載荷試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した局部載荷試験装置の試験装置本体を示す斜視図である。
【図3】図2に示した試験装置本体のA−B断面図である。
【図4】図1に示した局部載荷試験装置の制御に関する構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示した局部載荷試験装置によってコンクリート構造物の試験を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図1に示した局部載荷試験装置の試験装置本体の径を調節するためのアタッチメントについて説明する図であり、(a)は試験装置本体の図3におけるC−D断面図であり、(b)は(a)にアタッチメントを装着した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 局部載荷試験装置
2 局部載荷試験装置本体
3 加圧ポンプ
3a、3b 油圧ホース
3c 信号配線
3d 油圧ホース用穴
3e 圧力計測器
4 ディスプレイ
4a ファイバースコープ用配線
5 データ収集装置
5a 信号配線
5b 変位ロッド
5c 変位量計測器
6 先端部
7 胴体部
7a 収容スペース
7b アタッチメント取付用ネジ穴
8 載荷先端
8a ピストン
9 連結板
10 ファイバースコープ
11 圧力指示計
12 変位指示計
13 高速レコーダ
14 パソコン
15 アタッチメント
15a アタッチメント取付用ネジ
50 コンクリート構造物
51 試験用孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験装置本体と、前記試験装置本体に設けられ、人工構造物本体または地盤の面を直接局部載荷する載荷部とを備えたことを特徴とする局部載荷試験装置。
【請求項2】
前記載荷部を駆動する駆動手段と、前記載荷部の変位量を計測する変位計測手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の局部載荷試験装置。
【請求項3】
前記載荷部による局部載荷の際の荷重を計測する荷重計測手段と、前記荷重計測手段によって計測した荷重と前記変位計測手段によって計測した変位量とに基づいて前記載荷部による前記人工構造物本体または地盤の面の変形量を求め、前記荷重計測手段によって計測した荷重と前記変形量とに基づいて前記人工構造物本体または地盤の物性値を求める手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の局部載荷試験装置。
【請求項4】
前記試験装置本体の胴体部の一部に凹んだ収容スペースを有し、非載荷時には前記収容スペースに前記載荷部が収容されていることを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれか1項に記載の局部載荷試験装置。
【請求項5】
前記試験装置本体が円柱状の形状であり、前記試験装置本体の軸線方向に対してほぼ垂直な方向に前記載荷部が突出して前記局部載荷を行うことを特徴とする請求項1ないし4のうちのいずれか1項に記載の局部載荷試験装置。
【請求項6】
前記人工構造物本体または地盤の面のうち前記載荷部によって局部載荷される部分を観測する観測手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし5のうちのいずれか1項に記載の局部載荷試験装置。
【請求項7】
前記観測手段がファイバースコープであることを特徴とする請求項6に記載の局部載荷試験装置。
【請求項8】
人工構造物本体または地盤の面を直接局部載荷することを特徴とする局部載荷試験方法。
【請求項9】
前記局部載荷の際の荷重と前記人工構造物本体または地盤の面の変形量とを求め、前記荷重と前記変形量とに基づいて前記人工構造物本体または地盤の物性値を求めることを特徴とする請求項8に記載の局部載荷試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−214897(P2006−214897A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28679(P2005−28679)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(501254955)川崎地質株式会社 (11)
【Fターム(参考)】