説明

屈折率に優れた分岐型アクリル共重合体およびその製造方法

本発明の分岐型(メタ)アクリレート共重合体は、(A)メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体約20〜約99.999重量%と、(B)単官能性不飽和単量体約10〜約79.999重量%と、(C)架橋性単量体約0.001〜約10重量%とからなる単量体混合物を重合したものであって、屈折率が約1.495〜約1.590であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い屈折率を有する分岐型(メタ)アクリレート共重合体およびその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体に架橋性単量体を導入することによって、ポリカーボネートとの相溶性に優れた分岐型(メタ)アクリレート共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の大型化および軽量化傾向に従って外装用素材への高性能および多機能特性の要求が増加している。特に、成形品の外観がさらに重要視されるにつれて、引っかき抵抗性と高級質感とを同時に発現し、さらに火災に対する安定性を有する耐熱性素材の要求が高まっている。
【0003】
引っかき抵抗性および難燃性を同時に得るための方法は、ポリカーボネート(PC)樹脂と(メタ)アクリレート樹脂、好ましくはポリメチルメタクリレート(PMMA)をアロイすることである。
【0004】
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度に非常に優れ、透明性、熱安定性、自己消火性、寸法安定性などに優れた樹脂であって、電気・電子製品および自動車部品に広範囲に用いられている。また、ポリカーボネート樹脂は、化学構造上、難燃性であるため、汎用高分子に比べて少ない量の難燃剤で難燃性を得ることができる。しかしながら、ポリカーボネート樹脂のみでの引っかき抵抗性は、2Bの鉛筆硬度かそこらで低いため、ポリカーボネート樹脂だけで良好な引っかき抵抗性を得ることはできない。
【0005】
その反面、ポリメチルメタクリレート樹脂は、引っかき抵抗性に優れ、3H〜4H程度の鉛筆硬度を有しているが、既存の難燃剤で難燃性を得るのが非常に難しいという短所を有している。
【0006】
従って、PC樹脂とPMMA樹脂とを混合して引っかき抵抗性および難燃性の双方改善することが提案されている。しかしながら、PC樹脂とPMMA樹脂とは高温で溶融混練しても、それぞれの相(phase)は相溶性を欠如するため分離する。そのため、PCとPMMAのアロイが電気・電子製品の外装用素材に使用されるのは極めて困難である。PC樹脂およびPMMA樹脂の屈折率は異なるため(それぞれ1.59および1.49)、PC樹脂とPMMA樹脂とのアロイは、光を散乱しうる。このことが高彩度を有する色相を提供し難くして、射出の際に、溶融接合線がはっきり見える。
【0007】
ポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリレート樹脂との相溶化を改善するために、特許文献1は、混練工程中にステアリン酸金属エステルを用いてポリカーボネートの分子量を低下させる方法を開示している。しかしながら、上記方法は、機械的特性が急激に低下する短所を有している。
【0008】
特許文献2は、樹脂の表面をコーティングして引っかき抵抗性を改善する方法を開示している。しかしながら、上記方法は、追加の工程を要する。
【0009】
したがって、本発明者らは、メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体に架橋性単量体を導入して重合することにより、ポリカーボネート樹脂と相溶性に優れ、ポリカーボネート樹脂の屈折率と類似している、高い透明性および高い着色性を発現する分岐型(メタ)アクリレート共重合体およびその製造方法を開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第2004−79118号公報
【特許文献2】米国特許第4,027,073号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ポリカーボネートと好適な相溶性を有する分岐型(メタ)アクリレート共重合体を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、超高分子量および約1.495〜約1.590の屈折率を有する分岐型(メタ)アクリレート共重合体を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、約100,000〜5,000,000の超高分子量を有する分岐型(メタ)アクリレート共重合体を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、ポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリレート樹脂との屈折率の差を減少させて、透明性および着色性の低下を最小化させうる分岐型(メタ)アクリレート共重合体を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、高い溶融点で起こるポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリレート樹脂間の相溶性の低下を最小化しうる分岐型(メタ)アクリレート共重合体を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、熱分解による耐熱性の低下や機械的特性の低下なしに安定的に分岐型(メタ)アクリレート共重合体を製造しうる新たな製造方法を提供することである。
【0017】
本発明のその他の目的および応用は、以下の開示および添付の請求項から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
技術的解決方法
本発明の一つの態様は、分岐型(メタ)アクリレート共重合体を提供する。当該共重合体は、(A)メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体約20〜約99.999重量%と、(B)単官能性不飽和単量体約0〜約79.999重量%と、(C)架橋性単量体約0.001〜約10重量%と、を含む単量体混合物を重合したものである。
【0019】
前記メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体(A)は、約1.49より大きく約1.59以下の屈折率を有する。
【0020】
前記分岐型(メタ)アクリレート共重合体は、重量平均分子量が約100,000〜約5,000,000の範囲であり、屈折率が約1.495〜約1.590である。
【0021】
本発明は、前記分岐型(メタ)アクリレート共重合体を製造する新たな方法を提供する。上記方法は、約1.49より大きく約1.59以下の屈折率を有する芳香族または脂肪族(メタ)アクリレート単量体および架橋性単量体を含む単量体混合物に開始剤および連鎖移動剤を投入して反応溶液を調製する段階と、当該反応溶液を懸濁安定剤が溶解されたものを含む水溶液に投入して約70℃〜約120℃で懸濁重合する段階と、を含む。
【0022】
前記単量体混合物は、単官能性不飽和単量体(B)をさらに含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明を実施するための最良の形態
分岐型(メタ)アクリレート共重合体
本発明の分岐型(メタ)アクリレート共重合体は、メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体由来の単位および架橋性単量体由来の単位を含む。
【0024】
本発明の一実施形態では、前記分岐型(メタ)アクリレート共重合体は、(A)メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体約20〜約99.999重量%と、(B)単官能性不飽和単量体約0〜約79.999重量%と、(C)架橋性単量体約0.001〜約10重量%と、を含む単量体混合物を重合したものである。前記分岐型(メタ)アクリレート共重合体の重合は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合など従来の重合法により調製されうるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0025】
メチルメタクリレートより屈折率の高い前記(メタ)アクリレート単量体(A)は、約1.49より大きく約1.59以下の屈折率を有する。
【0026】
メチルメタクリレートより屈折率の高い前記(メタ)アクリレート単量体(A)は、下記化学式1または2の構造で表示される芳香族または脂肪族メタクリレートである。
【0027】
【化1】

【0028】
(式中、mは0〜10の整数であり、Xはシクロへキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロへキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基およびベンジルフェニル基からなる群から選択される。)
【0029】
【化2】

【0030】
(式中、mは0〜10の整数であり、Yは酸素(O)または硫黄(S)であり、Arはシクロへキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロへキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基およびベンジルフェニル基からなる群から選択される。)
前記芳香族または脂肪族メタクリレートの実施形態としては、制限されるものではないが、シクロへキシルメタクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロへキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレートおよび2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートなどがある。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いられうる。
【0031】
本発明の(メタ)アクリレート単量体(A)は、全単量体混合物のうち約20〜約99.999重量%、好ましくは約40〜約99重量%、より好ましくは約50〜約99重量%、最も好ましくは約60〜約98重量%の量で用いられる。本発明の一実施形態では、約70〜約98重量%の量で用いられうる。(メタ)アクリレート単量体(A)を20重量%以上用いられた場合は、重合された(メタ)アクリレート共重合体は、平均屈折率1.495以上で得られる。
【0032】
前記単官能性不飽和単量体(B)は、前記(メタ)アクリレート単量体(A)と共重合可能な任意のビニル単量体でありうる。
【0033】
前記単官能性不飽和単量体(B)の例としては、制限されるものではないが、C−Cのアルキルメタクリレート、C−Cのアルキルアクリレート、不飽和カルボン酸単量体、酸無水物単量体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド単量体、不飽和ニトリル単量体および芳香族ビニル化合物などを含み、必ずしもこれらに制限されるものではない。前記単官能性不飽和単量体の具体例は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、およびブチルメタクリレートを含むメタクリル酸エステル単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、および2−エチルへキシルアクリレートを含むアクリル酸エステル単量体;アクリル酸およびメタクリル酸を含む不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸を含む酸無水物単量体;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、およびモノグリセロールアクリレートを含むヒドロキシ基を含有するエステル単量体;アクリルアミド、およびメタクリルアミドを含む(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルを含む不飽和ニトリル単量体;アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタクリレート;ならびにスチレン、およびα−メチルスチレンを含むスチレン単量体などを用いることができる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いられうる。
【0034】
前記単量体混合物は、任意で前記単官能性不飽和単量体(B)を含むことができる。前記単官能性不飽和単量体(B)は、約79.999重量%以下、好ましくは約1〜約60重量%、より好ましくは約1.5〜約50重量%、最も好ましくは約2〜約30重量%の量で用いられうる。ある実施形態では、前記単官能性不飽和単量体(B)は約25重量%以下の量で用いられうる。
【0035】
ラジカル重合が可能な重合性不飽和基を二つ以上有する分岐構造形成単量体は前記架橋性単量体(C)として用いられうる。
【0036】
前記架橋性単量体(C)は、25℃で約0.1cps〜約60,000cpsの粘度を有しうる。前記粘度が0.1cps以上の場合、分岐構造を形成することができ、60,000cps以下とする場合、操作が容易であり生産性を向上させることができる。前記架橋性単量体(C)は、好ましくは約0.5〜約15,000cps、より好ましくは約1cps〜約6,000cpsの粘度を有しうる。本発明の一実施形態では、約0.1cps〜約10cpsの粘度を有しうる。本発明の他の実施形態では、約1cps〜約50cpsの粘度を有しうる。本発明のさらに他の実施形態では、約60cps〜約100cpsの粘度を有しうる。本発明のさらに他の実施形態では、約150cps〜約500cpsの粘度を有しうる。本発明のさらに他の実施形態では、約700cps〜約1,000cpsの粘度を有しうる。
【0037】
前記架橋性単量体(C)の例は、シランまたはシロキサン化合物、芳香族架橋性単量体、ビニル基含有単量体、アリル化合物、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物などを含む。
【0038】
前記架橋性単量体(C)の具体例は、ジビニルテトラメチルジシロキサン、およびテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどの不飽和炭化水素基を含有するシリコーン含有架橋性単量体を含むシランまたはシロキサン化合物;ジビニルベンゼンを含む芳香族架橋性単量体;1,4−ジビニルオキシブタンおよびジビニルスルホンを含むビニル基含有単量体;ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、トリアリル(イソ)シアヌレート、およびトリアリルトリメリテートを含むアリル化合物;ならびに1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレートを含む(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどを含む。これらを単独で用いるか、2種以上を並行して用いることもできる。これらの中で下記化学式3または4で表示されるシランまたはシロキサン化合物が好ましい。
【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

【0041】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、相同または相違であり、それぞれ独立して水素原子、C1〜5の直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロへキシル基を含む脂環式炭化水素基、C6〜10の芳香族基、またはC2〜12の不飽和炭化水素基であり、xは1〜20であり、yは1〜20である。)
本発明の一実施形態では、前記R1、R2、R3、R4、R5およびR6はヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、カルボキシル基、ハロゲン基またはエステル基で置き換えることもできる。前記R1、R2、R3、R4、R5およびR6のうち少なくとも二つは、重合可能な不飽和炭化水素基を含みうる。本発明の実施形態では、x+yは約2〜約40の範囲の値を有しうる。
【0042】
前記架橋性単量体(C)は、(メタ)アクリレート共重合体に、約0.001〜約10重量%、好ましくは約0.01〜約7重量%、より好ましくは約0.1〜約5重量%で含まれる。約0.001重量%以上の場合、超高分子量の分岐型構造を形成することができ、約10重量%以下の場合、優れた加工性およびポリカーボネート樹脂との優れた相溶性が得られうる。
【0043】
本発明の分岐型(メタ)アクリレート共重合体は、約100,000〜約5,000,000、好ましくは約500,000〜約4,000,000、より好ましくは約700,000〜約3,500,000の重量平均分子量を有しうる。
【0044】
このように超高分子量の分岐型構造を有する共重合体粒子がポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリレート樹脂間の相分離を妨げる。さらに、溶融状態では、粘度の減少によって前記相分離が最小化し、異種樹脂間の相溶性が改善されうる。
【0045】
分岐型(メタ)アクリレート共重合体は、約1.50〜約1.59の高屈折率を有する。このように分岐型(メタ)アクリレート共重合体の屈折率とポリカーボネートの屈折率との差を減少させて、既存の混合物で屈折率の差によって生じる透明性および着色性の低下を減少させうる。したがって、相溶性および透明性が向上したポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリレート樹脂との混合物を可能にし、既存のポリカーボネート樹脂と比較してより優れた透明性および着色性を有するポリカーボネート樹脂が得られうる。
分岐型(メタ)アクリレート共重合体の製造方法
本発明の他の実施形態では、前記分岐型(メタ)アクリレート共重合体の製造方法を提供する。上記方法は、約1.49より大きく約1.59以下の屈折率を有する芳香族または脂肪族メタクリレート単量体および架橋性単量体(C)を含む単量体混合物に開始剤および連鎖移動剤を投入して反応溶液を調製する段階と、当該反応溶液を懸濁安定剤の溶解された水溶液に投入して約70〜約120℃で懸濁重合する段階と、を含む。
【0046】
前記単量体混合物は、単官能性不飽和単量体(B)をさらに含むことができる。
【0047】
本発明の一実施形態では、前記単量体混合物は、(A)メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体を約20〜約99.999重量%と、(B)単官能性不飽和単量体を約0〜約79.999重量%と、(C)架橋性単量体を約0.001〜約10重量%とを含みうる。
【0048】
前記連鎖移動剤は、分子量調節だけでなく熱安定性向上のために用いられる。
【0049】
本発明で使用に適した連鎖移動剤の例は、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−アミルメルカプタンなどのCH(CHSHの一般式で表されるアルキルメルカプタン;およびカーボンテトラクロライドなどのハロゲン化合物;ならびにα−メチルスチレンダイマーおよびα−エチルスチレンダイマーなどの芳香族化合物などを含みうる。
【0050】
一般的に連鎖移動剤の使用量は種類により変わりうる。連鎖移動剤の含量は、単量体混合物100重量部に対して約0.01〜約10重量部が好ましい。もし、連鎖移動剤が約0.01重量部未満で用いられる場合、熱分解が起こり耐熱性が下がりうる。連鎖移動剤が約10重量部より多い場合、重合物の分子量が低くなり機械的特性が悪くなる。
【0051】
前記開始剤は、制限されるものではないが、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、モノクロロベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、p−メチルベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−(2,4−ジメチル)−バレロニトリルなどを含む。開始剤の含量は、単量体混合物100重量部に対して約0.01〜約1重量部で用いられうる。
【0052】
本発明の前記(メタ)アクリレート単量体は、滑剤、紫外線吸収剤、顔料、抗酸化剤などの添加剤を含むことができる。これらは、制限されるものではないが、重合工程またはペレット化工程に添加できる。
【0053】
本発明の一実施形態では、前記重合工程おいて、前記反応溶液に滑剤、紫外線吸収剤、顔料および抗酸化剤などの添加剤を一つ以上投入することができる。
【0054】
前記抗酸化剤は、オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4ヒドロフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス−3(3−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリー−ブチルフェノール)、トリス(2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル)ホスファイト、n−オクタデシル−3(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリ(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、3−3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルチオプロピオネートメタン、ジフェニル−イソオクチルホスファイトなどを含むことができる。
【0055】
前記懸濁安定剤は、制限されるものではないが、ポリアルキルアクリレート−アクリル酸、ポリオレフィン−マレイン酸、ポリビニルアルコール、セルロースなどの有機懸濁安定剤およびトリカルシウムホスフェートなどの無機懸濁安定剤を用いることができる。
【0056】
本発明では、前記懸濁安定剤と共に懸濁安定補助剤を用いることができる。本発明に適した前記懸濁安定補助剤としては、リン酸一水素二ナトリウムまたはリン酸二水素一ナトリウムを用いることができる。また、水溶性高分子や単量体の溶解度性を制御するために硫酸ナトリウムなどを用いることができる。
【0057】
本発明の高い屈折率を有する(メタ)アクリレート樹脂組成物は、約70〜120℃の温度で約2〜8時間重合反応させて製造されうる。
【0058】
本発明の方法は、前記懸濁重合の後で分岐型(メタ)アクリレート共重合体のペレット化をさらに含むことができる。
【0059】
本発明の一実施形態では、重合反応の後に生成物を洗浄し、脱水しおよび乾燥して粒子状の重合物が得られる。このように得られた粒子状の重合物は、押出工程を経てペレット化して得られる。
【0060】
本発明の他の実施形態では、前記ペレット化工程の際に分岐型(メタ)アクリレート共重合体に滑剤、紫外線吸収剤、顔料および抗酸化剤などの添加剤を一つ以上投入してすることができる。
【0061】
上記の方法で製造された共重合体は、分岐型構造を有し、重量平均分子量を約100,000〜5,000,000の範囲で有し、屈折率は約1.50〜約1.59の高い屈折率を有しうる。したがって、このような分岐型の高い屈折率を有する(メタ)アクリレート共重合体でポリカーボネート樹脂をアロイする時、既存のポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリレート樹脂間の屈折率の差による透明性および着色性の低下の問題を克服できる。また、前記2つの樹脂の相溶性を改善するために、引っかき抵抗性、透明性および着色性の改善された熱可塑性樹脂を得ることが可能となる。
【0062】
ポリカーボネート樹脂に本発明の分岐型の(メタ)アクリレート共重合体をアロイした熱可塑性樹脂組成物は、優れた引っかき抵抗性、透明性および着色性を有するので、より優れた物性を求められる各種のプラスチック成形品に用いられ、特に電気・電子製品または自動車用の部品からレンズまたはガラス窓に至るまで用いられうる。
【0063】
本発明は、下記実施例によってさらによく理解されることができ、下記実施例は本発明の例示目的のためのものであり、添付された特許請求の範囲によって限定される保護範囲を制限しようとするのではない。
【実施例】
【0064】
実施例1
フェニルメタクリレート40重量部、シクロへキシルメタクリレート40重量部、メチルメタクリレート17重量部、メチルアクリレート2.5重量部およびジビニルテトラメチルジシロキサン0.5重量部を含む単量体混合液にラウリルペルオキシド0.3重量部、ノルマル−オクチルメルカプタン0.31重量部を加え、当該単量体混合物をよく攪拌して均一にした。
【0065】
攪拌機付きステンレス製の高圧反応機にイオン交換水110重量部に懸濁補助安定剤としてジソジウムハイドロゲンホスフェートおよびソジウムスルフェートを溶解させ、懸濁安定剤として分子量1,000,000以上のポリエチルアクリレート−メチルアクリル酸を0.15重量部投入して攪拌する。窒素またはアルゴンなどの不活性気体で反応機の内部を置換して加熱し、懸濁安定剤が溶解する水溶液に前記単量体混合液を投入し、激しく攪拌する。反応は、72℃で2時間、110℃で1時間行い重合反応を完了した。生成物を洗浄し、脱水し、および乾燥して粒子状の高分子を得た。次に前記高分子の分子量を測定した。高分子粒子を押出、試験片に注入した。その試験片の物性を測定し、その結果が表1に示される。
実施例2
フェニルメタクリレート40重量部、シクロへキシルメタクリレート57重量部、メチルアクリレート2.5重量部およびジビニルテトラメチルジシロキサン0.5重量部を含む単量体混合物を投入したことを除いては上記実施例1と同様に行った。
実施例3
ベンジルメタクリレート40重量部、シクロへキシルメタクリレート40重量部、メチルメタクリレート17重量部、メチルアクリレート2.5重量部およびジビニルテトラメチルジシロキサン0.5重量部を含む単量体混合物を投入したことを除いては上記実施例1と同様に行った。
実施例4
ベンジルメタクリレート40重量部、シクロへキシルメタクリレート57重量部、メチルアクリレート2.5重量部およびジビニルテトラメチルジシロキサン0.5重量部を含む単量体混合物を投入したことを除いては上記実施例1と同様に行った。
実施例5
フェノキシエチルメタクリレート40重量部、シクロへキシルメタクリレート40重量部、メチルメタクリレート17重量部、メチルアクリレート2.5重量部およびジビニルテトラメチルシロキサン0.5重量部を含む単量体混合物を投入したことを除いては上記実施例1と同様に行った。
実施例6
フェノキシエチルメタクリレート40重量部、シクロへキシルメタクリレート57重量部、メチルアクリレート2.5重量部およびジビニルテトラメチルジシロキサン0.5重量部を含む単量体混合物を投入したことを除いては上記実施例1と同様に行った。
実施例7
フェニルメタクリレート40重量部、シクロへキシルメタクリレート40重量部、メチルメタクリレート17重量部、メチルアクリレート2.5重量部およびジビニルベンゼン0.5重量部を含む単量体混合物を投入したことを除いては上記実施例1と同様に行った。
比較例1
メチルメタクリレート97.5重量部およびメチルアクリレート2.5重量部を含む単量体混合物を投入したことを除いては上記実施例1と同様に行った。
比較例2
メチルメタクリレート97重量部、メチルアクリレート2.5重量部およびジビニルテトラメチルジシロキサン0.5重量部を含む単量体混合物を投入したことを除いては上記実施例1と同様に行った。
【0066】
前記実施例および比較例の物性の結果および単量体のデータは表1に示される。
【0067】
【表1】

【0068】
物性評価方法
(1)分子量:相対的な重量平均分子量を、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用い、標準ポリスチレン重合体を基準として得た試料の溶出曲線より算出した。
2)屈折率:ATAGO社製の「DR−A1」を用いて、試験片の厚さ2.5mmで測定した。
【0069】
上記表1のように本発明の実施例1〜7は、他のアクリレート単量体を用いた比較例1および2より屈折率に優れていることを確認することができる。
【0070】
以上において、本発明は特に好ましい実施例に基づき記載される。しかし、本発明の単なる変形または変更は、この分野における通常の知識を有する者であれば容易に実施することができ、かかる変形や変更は全て本発明の保護範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体約20〜約99.999重量%と、(B)単官能性不飽和単量体約0〜約79.999重量%と、(C)架橋性単量体約0.001〜約10重量%と、を含む単量体混合物を重合して製造された分岐型(メタ)アクリレート共重合体。
【請求項2】
前記メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体(A)が、約1.49より大きく約1.59以下の屈折率を有する、請求項1に記載の分岐型(メタ)アクリレート共重合体。
【請求項3】
前記メチルメタクリレートより屈折率の高い(メタ)アクリレート単量体(A)が、下記化学式1または2で表示される芳香族または脂肪族メタクリレートである、請求項1に記載の分岐型(メタ)アクリレート共重合体。
【化1】

(式中、mは0〜10の整数であり、Xはシクロへキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロへキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基およびベンジルフェニル基からなる群から選択される。)
【化2】

(式中、mは0〜10の整数であり、Yは酸素(O)または硫黄(S)であり、Arはシクロへキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロへキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基およびベンジルフェニル基からなる群から選択される。)
【請求項4】
前記芳香族または脂肪族メタクリレートが、シクロへキシルメタクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロへキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレートおよび2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートからなる群から選択される一つ以上である、請求項3に記載の分岐型(メタ)アクリレート共重合体。
【請求項5】
前記単官能性不飽和単量体(B)が、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートおよびブチルメタクリレートを含むメタクリル酸エステル単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2−エチルへキシルアクリレートを含むアクリル酸エステル単量体;アクリル酸およびメタクリル酸を含む不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸を含む酸無水物単量体;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートおよびモノグリセロールアクリレートを含むヒドロキシ基を含有するエステル単量体;アクリルアミドおよびメタクリルアミドを含むアミド単量体;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルを含むニトリル単量体;アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタクリレート;スチレンおよびα−メチルスチレンを含むスチレン単量体ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の分岐型(メタ)アクリレート共重合体。
【請求項6】
前記架橋性単量体(C)が、不飽和炭化水素基を含有するシリコーン含有架橋性単量体を含むシランまたはシロキサン化合物;ジビニルベンゼンを含む架橋性芳香族単量体;1,4−ジビニルオキシブタンおよびジビニルスルホンを含むビニル基含有単量体;ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、トリアリル(イソ)シアヌレートおよびトリアリルトリメリテートを含むアリル化合物;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートおよびグリセロールトリ(メタ)アクリレートを含む(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の分岐型(メタ)アクリレート共重合体。
【請求項7】
前記シランまたはシロキサン化合物が、下記化学式3または4で表示される、請求項6に記載の分岐型(メタ)アクリレート共重合体。
【化3】

【化4】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6が、相同または相違であり、およびそれぞれ独立して水素、C1〜5の直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロへキシル基を含む脂環式炭化水素基、C6〜10の芳香族基またはC2〜12の不飽和炭化水素基であり、xは1〜20であり、yは1〜20である。)
【請求項8】
前記R1、R2、R3、R4、R5およびR6のうち少なくとも二つが、不飽和炭化水素基である、請求項7に記載の分岐型(メタ)アクリレート共重合体。
【請求項9】
前記x+yが2〜40である、請求項7に記載の分岐型(メタ)アクリレート共重合体。
【請求項10】
前記分岐型(メタ)アクリレート共重合体が、重量平均分子量が約100,000〜約5,000,000の範囲であり、屈折率が約1.495〜約1.590である、請求項6に記載の分岐型(メタ)アクリレート共重合体。
【請求項11】
約1.49より大きく約1.59以下の屈折率を有する芳香族または脂肪族メタクリレート単量体(A)および架橋性単量体(C)を含む単量体混合物に開始剤および連鎖移動剤を投入して反応溶液を調製する段階と、当該反応溶液を懸濁安定剤が溶解された水溶液に投入して約70〜約120℃で懸濁重合する段階と、を含む分岐型(メタ)アクリレート共重合体の製造方法。
【請求項12】
前記単量体混合物が、単官能性不飽和単量体(B)をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記連鎖移動剤が、単量体混合物100重量部に対して約0.01〜10重量部で用いられる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記重合の前に、前記反応溶液に滑剤、紫外線吸収剤、顔料および抗酸化剤からなる群から選択される一つ以上の添加剤を投入する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記懸濁重合後に、分岐型(メタ)アクリレート共重合体をペレット化する段階をさらに含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ペレット化する段階中に、前記分岐型(メタ)アクリレート共重合体に滑剤、紫外線吸収剤、顔料および抗酸化剤からなる群から選択される一つ以上の添加剤を投入する、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2011−506746(P2011−506746A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539286(P2010−539286)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007157
【国際公開番号】WO2009/078602
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】