屈曲型送受波器
【課題】 電気信号の印加による伸縮に伴って振動する駆動用振動子と、駆動用振動子により駆動されて屈曲振動を発生して音波を放射する音波放射用振動子とを組み合せた板状振動子を備える屈曲型送受波器において、小型化及び軽量化を図る。
【解決手段】 電気信号の印加による伸縮に伴って振動する駆動用振動子と、該駆動用振動子により駆動されて屈曲振動を発生して音波を放射する音波放射用振動子とを組み合せた板状振動子をn個備える屈曲型送受波器であって、前記n個の板状振動子は、中空n角形状柱体を形成するように配置され、該中空n角形状柱体の外面を形成する面の幅が内面を形成する面の幅よりも小さなことを特徴とする。
【解決手段】 電気信号の印加による伸縮に伴って振動する駆動用振動子と、該駆動用振動子により駆動されて屈曲振動を発生して音波を放射する音波放射用振動子とを組み合せた板状振動子をn個備える屈曲型送受波器であって、前記n個の板状振動子は、中空n角形状柱体を形成するように配置され、該中空n角形状柱体の外面を形成する面の幅が内面を形成する面の幅よりも小さなことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に音波を放射する電気音響変換器に係り、特に振動体の屈曲振動により水中に音波を放射する屈曲型送受波器に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋観測等の水中内を観測する分野においては、観測媒体として音波が用いられるが、音波の中でも、減衰が少なくて伝播特性が良好であるという特長を有する、低周波の音波を利用した各種の送受波器が実用化されている。これらの低周波の送受波器では、効率よく音波を送受波するために、構造体の機械的共振を利用した振動子が用いられている。
【0003】
一般に機械的構造体は、その寸法が大きくなるほど機械的共振周波数が低下するので、上述のような低周波の送受波器を構成するには必然的にその寸法は大きくなる。したがって、低周波の送受波器では、常に小型化と軽量化が求められ、小型の構造で機械的共振周波数を低下させた振動子の実現が技術的課題となっている。ここで、金属等の薄板は弾力性が低く共振周波数を低くできるために、その薄板を振動板として用いる板状振動子は、構造が単純で小型軽量な振動子を実現できるので、従来から低周波の送受波器に広く用いられている。
【0004】
このような送受波器の中でも振動子の屈曲振動を利用した屈曲型送受波器が普及している。この屈曲振動を利用する板状振動子は、図11(A),(B)に示すように電気信号の印加による伸縮に伴って振動する圧電磁器から成る駆動用振動子(圧電磁器振動子)101と、この駆動用振動子101により励振されて屈曲振動を発生する金属薄板102で構成される。
【0005】
金属薄板102に質量の重い駆動用振動子101(圧電磁器振動子)が付与され、かつその圧電磁器振動子自体が駆動体となっていることで、振動の変位が大きく、低周波化も成されるものである。これらの振動子の屈曲振動を利用した屈曲型送受波器は特許文献1、特許文献2に示される。その中でも、特許文献1に開示されている屈曲型送受波器は、n角形状柱体を形成するように配置されたn個の板状振動子を、緩衝材を介して上下の蓋により挟持しており、形成されたn型柱状体は絶縁シースにより覆われている。緩衝材を介して上下の蓋で挟持することで、端部を固定する場合よりも自由振動部を長くすることができるため、それにより小型・軽量化を図るものである。
【0006】
特許文献2に開示されている屈曲型送受波器は、軸方向に複数のスリットを設けた金属等の円筒状振動板(音波放射用振動子)の内面あるいは外面に圧電振動子(駆動用振動子)を貼り付けた構成にして、圧電振動子に電気信号を印加することで振動させ、さらにその圧電振動子により振動板に屈曲振動を発生させて音波を放射させるもので、高能率で小型軽量化を実現するものである。
【特許文献1】特開2008−244895号公報
【特許文献2】特開平03−011898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および、特許文献2に開示されている従来の屈曲型送受波器には、次のような課題がある。
【0008】
特許文献1に開示されている屈曲型送受波器では、板状振動子の断面は矩形状となっているため、n角形状柱体を形成するようにn個の板状振動子を配置する際には、配置寸法の制約により小型・軽量化が困難となっていた。
【0009】
また、n角形状柱体を形成するように板状振動子を配置した場合には、板状振動子間の柱体外面側に大きな間隙ができてしまい、水圧下ではその部分の板状振動子の屈曲振動が、水圧負荷により阻害されるという難点があった。
【0010】
また、特許文献1に開示されている屈曲型送受波器では、板状振動子を端部固定材によって固定することなく、緩衝材を介して上下の蓋で挟持することで、端部を固定する場合よりも自由振動部を長くすることで小型・軽量化を図っていたが、この構造では緩衝材の性質上、水圧による屈曲型送受波器の収縮変動があり、そのため共振周波数に大きな水圧依存性が見られた。
【0011】
特許文献2に開示されている従来の屈曲型送受波器では、板状振動子上下の端部が一対の端部固定材に固定された構成になっているため、自由振動部が短くなってしまい共振周波数が高くなってしまう。より共振周波数を低めたい場合には、板状振動子を長くしなければならないため、低周波化を図るには板状振動子の軸方向の長さ寸法が大きくなるだけでなく、全体の重量も増大することになる。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、小型化及び軽量化を図り、また水圧による影響を受けにくい構造の屈曲型送受波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の屈曲型送受波器は、電気信号の印加による伸縮に伴って振動する駆動用振動子と、該駆動用振動子により駆動されて屈曲振動を発生して音波を放射する音波放射用振動子とを組み合せた板状振動子をn個備える屈曲型送受波器であって、
前記n個の板状振動子は、中空n角形状柱体を形成するように配置され、該中空n角形状柱体の外面を形成する面の幅が内面を形成する面の幅よりも小さなことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の屈曲型送受波器によれば、n角形状柱体を形成するように配置されたn個の板状振動子は、n角形状に合わせた形状と構造であることを特徴とするため、屈曲型送受波器の寸法を小型化することができ、軽量化も図ることができる。また水圧特性に依存せずに安定した性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1中の板状振動子1の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態の構成部品の嵌合構造を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の構成部品の嵌合構造を示す斜視図である。
【図5】図1中のB−Bの矢視断面図である。
【図6】本発明の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図8】水圧負荷時の絶縁シースが変形する様子を示す断面図である。
【図9】(A),(B)のそれぞれは、本実施形態による小型化の効果を比較して示す断面図である。
【図10】(A)〜(D)のそれぞれは、板状振動子1の形状を示す上面図である。
【図11】(A)は圧電磁器振動子の伸縮を表す図であり、(B)は圧電磁気振動子の収縮による屈曲振動を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である屈曲型送受波器14の概略構成を示す斜視図、図2は図1中の板状振動子1の構成を示す斜視図、図3および図4のそれぞれは、屈曲型送受波器14の構成部品の嵌合構造を示す断面図および斜視図であり、図3は図1中のA−Aの矢視断面図である。
【0018】
本実施形態の屈曲型送受波器14は、上部蓋5、下部蓋6、これらの間に設けられた円筒型支柱7および板状振動子1から構成されている。
【0019】
板状振動子1は、図2に示すように圧電用振動子2と振動板3が貼り合わされたもので、8個用いられており、各板状振動子1の一端部及び他端部には凸部4a,4bが設けられている。図4に示すように、上部蓋5及び下部蓋6には凹部9が設けられ、該凹部9に凸部4a,4bを挿通する嵌め合い構造となっている。
【0020】
図5は、図1中のB−Bの矢視断面図であり、板状振動子1の取り付け状態を示す図である。板状振動子1は上部蓋5及び下部蓋6により図3に示すギャップ15を設けて挟持され、図5に示すように八角形状柱体を形成するように一体化されている。
【0021】
上部蓋5と下部蓋6には固定用ねじ穴8(図4参照)が設けられており、上部蓋5と下部蓋6は、板状振動子1を挟持した状態で、板状振動子1により形成された八角形状柱体の内部を貫通するように挿入された円筒型支柱7の両端にねじ止めされている。図6および図7の断面図に示すように、八角形状柱体の外周面にできた間隙16には緩衝材10が配され、八角形状柱体の外周周囲は絶縁シース11で覆われている。
【0022】
図7において、八角形状柱体の周囲は絶縁シース11に覆われて、屈曲型送受波器14の全体が水密構造に保持されている。しかしながら、板状振動子1を並べて柱状体を形成する本構造の屈曲型送受波器14は、図7のように板状振動子1を8個配置した場合に八角形状柱体の外周面には間隙16が生じてしまう。
【0023】
水中で使用される本構成の屈曲型送受波器14は、水圧が加わることにより図8に示すように、間隙16部の絶縁シース11に変形が生じ、さらには板状振動子1個々の振動を阻害することになる。
【0024】
そのため、本実施形態では、八角型柱状体の外周面に生じる間隙6に、図6に示すように緩衝材10を入れることで水圧による絶縁シースの変形を防ぐことができる。また、水圧により屈曲型振動子個々の振動を阻害することもなく、安定した水圧性能を得ることが可能となる。なお、ここでは緩衝材10として屈曲型振動子の振動を阻害することなく水圧にも耐えるコルクを使用している。
【0025】
上述したように、図1に示す屈曲型送受波器14には、8個の板状振動子1が用いられている。これらの板状振動子1は、中空八角形状柱体の外面を形成する面の幅が内面を形成する面の幅よりも小さなものとされ、柱体内面側に位置する振動板3の角は、八角形状に合わせた角度に面取りが施され、圧電磁器振動子である駆動用振動子2と一体化されて楔状の多角形を成している。
【0026】
八角形状柱体を形成する8個の板状振動子1のすべての上端部及び下端部には、図2に示すように駆動用振動子2により励振されて屈曲振動を発生する振動板3と一体構造である凸4a,4b部が設けられ、図4に示すように上部蓋5及び下部蓋6には凹部9が設けられ、これらを図3に示すように嵌め合い構造とすることで、板状振動体は固定保持される。
【0027】
さらにすべての上端部及び下端部に設けた凸部4a,4bが、凹部9を設けた上部蓋5及び下部蓋6と嵌合の際に、図3に示すようにギャップ15を設けて挟持される構造となっている。この構造は、上部蓋5及び下部蓋6の嵌め合い構造とすることで送受波器全体の構造をより強固にすることができ、水圧による影響を受けにくくなる。
【0028】
さらに上部蓋5及び下部蓋6によりギャップ15を設けて挟持することで特許文献1に示されるような緩衝材を介して板状振動子を挟持する方法を取ることなく両端が自由振動することができるため、強固な構造でありながら、小型化を図ることができる。
【0029】
ここで板状振動子1の断面形状は、屈曲型送受波器の柱状体角数により寸法がかわり、3個以上であれば任意の数(n個)を選ぶことができるn角形状の屈曲型送受波器の構造体となる。
【0030】
また、板状振動子1の断面形状は、図1ないし図3、図5ないし図7に示した形状に限定されるものではない。図10(A)〜(D)のそれぞれは、板状振動子1の形状を示す上面図であるが、板状振動子1の断面形状は、圧電磁器振動子2、振動板3ともに加工された図10(B)に示される台形でも良く、また柱体内面側に圧電磁器振動子2を固定した図10(C)に示される形状のものでも良い。さらには、振動板3の両面に圧電磁器振動子を固定した図10(D)に示される形状のものでも良い。重要なのはn角形状柱体の外面を形成する面の幅が内面を形成する面の幅よりも小さなものとすることであり、このような寸法とすることで、外面の幅と内面の幅が同じ場合よりも形成されるn角形状柱体を小型化することができる。
【0031】
以下の表1は、板状振動子1の形状を、図10(A)に示される面取りを行わない形状のものと、図10(B)に示される台形状のものとしたときの直径および容積の比を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
上記の構造において、図9(B)に示す八角形状柱体の外径及び容積を、板状振動子1の音響放射面積が同等の矩形状の板状振動子を使用した図9(A)に示す八角形状柱体と比較すると、直径115mmから90mmと約22%、高さが200mmとした場合の屈曲型送受波器の容積比で約36%の小型化となり、本発明による小型化の効果が大きなことが分かる。
【0034】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、板状振動子の数は一例として8個を用いる例で説明したが、3個以上であれば任意の数(n個)を選ぶことができる。また、絶縁シースの形成方法はモールド法や、予め成形されたゴム等の水密性を有する弾性材のケースを用いることもできる。また、この発明の屈曲型送受波器は、水中に投下して使用する小型音源ブイ、船舶から吊下して使用される低周波音源等の分野に広く活用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 板状振動子
2 駆動用振動子
3 振動板
4a,4b 凸部
5 上部蓋
6 下部蓋
7 円筒型支柱
8 固定用ねじ穴
9 凹部
10 緩衝材
11 絶縁シース
14 屈曲型送受波器
15 ギャップ
16 間隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に音波を放射する電気音響変換器に係り、特に振動体の屈曲振動により水中に音波を放射する屈曲型送受波器に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋観測等の水中内を観測する分野においては、観測媒体として音波が用いられるが、音波の中でも、減衰が少なくて伝播特性が良好であるという特長を有する、低周波の音波を利用した各種の送受波器が実用化されている。これらの低周波の送受波器では、効率よく音波を送受波するために、構造体の機械的共振を利用した振動子が用いられている。
【0003】
一般に機械的構造体は、その寸法が大きくなるほど機械的共振周波数が低下するので、上述のような低周波の送受波器を構成するには必然的にその寸法は大きくなる。したがって、低周波の送受波器では、常に小型化と軽量化が求められ、小型の構造で機械的共振周波数を低下させた振動子の実現が技術的課題となっている。ここで、金属等の薄板は弾力性が低く共振周波数を低くできるために、その薄板を振動板として用いる板状振動子は、構造が単純で小型軽量な振動子を実現できるので、従来から低周波の送受波器に広く用いられている。
【0004】
このような送受波器の中でも振動子の屈曲振動を利用した屈曲型送受波器が普及している。この屈曲振動を利用する板状振動子は、図11(A),(B)に示すように電気信号の印加による伸縮に伴って振動する圧電磁器から成る駆動用振動子(圧電磁器振動子)101と、この駆動用振動子101により励振されて屈曲振動を発生する金属薄板102で構成される。
【0005】
金属薄板102に質量の重い駆動用振動子101(圧電磁器振動子)が付与され、かつその圧電磁器振動子自体が駆動体となっていることで、振動の変位が大きく、低周波化も成されるものである。これらの振動子の屈曲振動を利用した屈曲型送受波器は特許文献1、特許文献2に示される。その中でも、特許文献1に開示されている屈曲型送受波器は、n角形状柱体を形成するように配置されたn個の板状振動子を、緩衝材を介して上下の蓋により挟持しており、形成されたn型柱状体は絶縁シースにより覆われている。緩衝材を介して上下の蓋で挟持することで、端部を固定する場合よりも自由振動部を長くすることができるため、それにより小型・軽量化を図るものである。
【0006】
特許文献2に開示されている屈曲型送受波器は、軸方向に複数のスリットを設けた金属等の円筒状振動板(音波放射用振動子)の内面あるいは外面に圧電振動子(駆動用振動子)を貼り付けた構成にして、圧電振動子に電気信号を印加することで振動させ、さらにその圧電振動子により振動板に屈曲振動を発生させて音波を放射させるもので、高能率で小型軽量化を実現するものである。
【特許文献1】特開2008−244895号公報
【特許文献2】特開平03−011898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および、特許文献2に開示されている従来の屈曲型送受波器には、次のような課題がある。
【0008】
特許文献1に開示されている屈曲型送受波器では、板状振動子の断面は矩形状となっているため、n角形状柱体を形成するようにn個の板状振動子を配置する際には、配置寸法の制約により小型・軽量化が困難となっていた。
【0009】
また、n角形状柱体を形成するように板状振動子を配置した場合には、板状振動子間の柱体外面側に大きな間隙ができてしまい、水圧下ではその部分の板状振動子の屈曲振動が、水圧負荷により阻害されるという難点があった。
【0010】
また、特許文献1に開示されている屈曲型送受波器では、板状振動子を端部固定材によって固定することなく、緩衝材を介して上下の蓋で挟持することで、端部を固定する場合よりも自由振動部を長くすることで小型・軽量化を図っていたが、この構造では緩衝材の性質上、水圧による屈曲型送受波器の収縮変動があり、そのため共振周波数に大きな水圧依存性が見られた。
【0011】
特許文献2に開示されている従来の屈曲型送受波器では、板状振動子上下の端部が一対の端部固定材に固定された構成になっているため、自由振動部が短くなってしまい共振周波数が高くなってしまう。より共振周波数を低めたい場合には、板状振動子を長くしなければならないため、低周波化を図るには板状振動子の軸方向の長さ寸法が大きくなるだけでなく、全体の重量も増大することになる。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、小型化及び軽量化を図り、また水圧による影響を受けにくい構造の屈曲型送受波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の屈曲型送受波器は、電気信号の印加による伸縮に伴って振動する駆動用振動子と、該駆動用振動子により駆動されて屈曲振動を発生して音波を放射する音波放射用振動子とを組み合せた板状振動子をn個備える屈曲型送受波器であって、
前記n個の板状振動子は、中空n角形状柱体を形成するように配置され、該中空n角形状柱体の外面を形成する面の幅が内面を形成する面の幅よりも小さなことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の屈曲型送受波器によれば、n角形状柱体を形成するように配置されたn個の板状振動子は、n角形状に合わせた形状と構造であることを特徴とするため、屈曲型送受波器の寸法を小型化することができ、軽量化も図ることができる。また水圧特性に依存せずに安定した性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1中の板状振動子1の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態の構成部品の嵌合構造を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の構成部品の嵌合構造を示す斜視図である。
【図5】図1中のB−Bの矢視断面図である。
【図6】本発明の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図8】水圧負荷時の絶縁シースが変形する様子を示す断面図である。
【図9】(A),(B)のそれぞれは、本実施形態による小型化の効果を比較して示す断面図である。
【図10】(A)〜(D)のそれぞれは、板状振動子1の形状を示す上面図である。
【図11】(A)は圧電磁器振動子の伸縮を表す図であり、(B)は圧電磁気振動子の収縮による屈曲振動を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である屈曲型送受波器14の概略構成を示す斜視図、図2は図1中の板状振動子1の構成を示す斜視図、図3および図4のそれぞれは、屈曲型送受波器14の構成部品の嵌合構造を示す断面図および斜視図であり、図3は図1中のA−Aの矢視断面図である。
【0018】
本実施形態の屈曲型送受波器14は、上部蓋5、下部蓋6、これらの間に設けられた円筒型支柱7および板状振動子1から構成されている。
【0019】
板状振動子1は、図2に示すように圧電用振動子2と振動板3が貼り合わされたもので、8個用いられており、各板状振動子1の一端部及び他端部には凸部4a,4bが設けられている。図4に示すように、上部蓋5及び下部蓋6には凹部9が設けられ、該凹部9に凸部4a,4bを挿通する嵌め合い構造となっている。
【0020】
図5は、図1中のB−Bの矢視断面図であり、板状振動子1の取り付け状態を示す図である。板状振動子1は上部蓋5及び下部蓋6により図3に示すギャップ15を設けて挟持され、図5に示すように八角形状柱体を形成するように一体化されている。
【0021】
上部蓋5と下部蓋6には固定用ねじ穴8(図4参照)が設けられており、上部蓋5と下部蓋6は、板状振動子1を挟持した状態で、板状振動子1により形成された八角形状柱体の内部を貫通するように挿入された円筒型支柱7の両端にねじ止めされている。図6および図7の断面図に示すように、八角形状柱体の外周面にできた間隙16には緩衝材10が配され、八角形状柱体の外周周囲は絶縁シース11で覆われている。
【0022】
図7において、八角形状柱体の周囲は絶縁シース11に覆われて、屈曲型送受波器14の全体が水密構造に保持されている。しかしながら、板状振動子1を並べて柱状体を形成する本構造の屈曲型送受波器14は、図7のように板状振動子1を8個配置した場合に八角形状柱体の外周面には間隙16が生じてしまう。
【0023】
水中で使用される本構成の屈曲型送受波器14は、水圧が加わることにより図8に示すように、間隙16部の絶縁シース11に変形が生じ、さらには板状振動子1個々の振動を阻害することになる。
【0024】
そのため、本実施形態では、八角型柱状体の外周面に生じる間隙6に、図6に示すように緩衝材10を入れることで水圧による絶縁シースの変形を防ぐことができる。また、水圧により屈曲型振動子個々の振動を阻害することもなく、安定した水圧性能を得ることが可能となる。なお、ここでは緩衝材10として屈曲型振動子の振動を阻害することなく水圧にも耐えるコルクを使用している。
【0025】
上述したように、図1に示す屈曲型送受波器14には、8個の板状振動子1が用いられている。これらの板状振動子1は、中空八角形状柱体の外面を形成する面の幅が内面を形成する面の幅よりも小さなものとされ、柱体内面側に位置する振動板3の角は、八角形状に合わせた角度に面取りが施され、圧電磁器振動子である駆動用振動子2と一体化されて楔状の多角形を成している。
【0026】
八角形状柱体を形成する8個の板状振動子1のすべての上端部及び下端部には、図2に示すように駆動用振動子2により励振されて屈曲振動を発生する振動板3と一体構造である凸4a,4b部が設けられ、図4に示すように上部蓋5及び下部蓋6には凹部9が設けられ、これらを図3に示すように嵌め合い構造とすることで、板状振動体は固定保持される。
【0027】
さらにすべての上端部及び下端部に設けた凸部4a,4bが、凹部9を設けた上部蓋5及び下部蓋6と嵌合の際に、図3に示すようにギャップ15を設けて挟持される構造となっている。この構造は、上部蓋5及び下部蓋6の嵌め合い構造とすることで送受波器全体の構造をより強固にすることができ、水圧による影響を受けにくくなる。
【0028】
さらに上部蓋5及び下部蓋6によりギャップ15を設けて挟持することで特許文献1に示されるような緩衝材を介して板状振動子を挟持する方法を取ることなく両端が自由振動することができるため、強固な構造でありながら、小型化を図ることができる。
【0029】
ここで板状振動子1の断面形状は、屈曲型送受波器の柱状体角数により寸法がかわり、3個以上であれば任意の数(n個)を選ぶことができるn角形状の屈曲型送受波器の構造体となる。
【0030】
また、板状振動子1の断面形状は、図1ないし図3、図5ないし図7に示した形状に限定されるものではない。図10(A)〜(D)のそれぞれは、板状振動子1の形状を示す上面図であるが、板状振動子1の断面形状は、圧電磁器振動子2、振動板3ともに加工された図10(B)に示される台形でも良く、また柱体内面側に圧電磁器振動子2を固定した図10(C)に示される形状のものでも良い。さらには、振動板3の両面に圧電磁器振動子を固定した図10(D)に示される形状のものでも良い。重要なのはn角形状柱体の外面を形成する面の幅が内面を形成する面の幅よりも小さなものとすることであり、このような寸法とすることで、外面の幅と内面の幅が同じ場合よりも形成されるn角形状柱体を小型化することができる。
【0031】
以下の表1は、板状振動子1の形状を、図10(A)に示される面取りを行わない形状のものと、図10(B)に示される台形状のものとしたときの直径および容積の比を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
上記の構造において、図9(B)に示す八角形状柱体の外径及び容積を、板状振動子1の音響放射面積が同等の矩形状の板状振動子を使用した図9(A)に示す八角形状柱体と比較すると、直径115mmから90mmと約22%、高さが200mmとした場合の屈曲型送受波器の容積比で約36%の小型化となり、本発明による小型化の効果が大きなことが分かる。
【0034】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、板状振動子の数は一例として8個を用いる例で説明したが、3個以上であれば任意の数(n個)を選ぶことができる。また、絶縁シースの形成方法はモールド法や、予め成形されたゴム等の水密性を有する弾性材のケースを用いることもできる。また、この発明の屈曲型送受波器は、水中に投下して使用する小型音源ブイ、船舶から吊下して使用される低周波音源等の分野に広く活用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 板状振動子
2 駆動用振動子
3 振動板
4a,4b 凸部
5 上部蓋
6 下部蓋
7 円筒型支柱
8 固定用ねじ穴
9 凹部
10 緩衝材
11 絶縁シース
14 屈曲型送受波器
15 ギャップ
16 間隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号の印加による伸縮に伴って振動する駆動用振動子と、該駆動用振動子により駆動されて屈曲振動を発生して音波を放射する音波放射用振動子とを組み合せた板状振動子をn個備える屈曲型送受波器であって、
前記n個の板状振動子は、中空n角形状柱体を形成するように配置され、該中空n角形状柱体の外面を形成する面の幅が内面を形成する面の幅よりも小さなことを特徴とする屈曲型送受波器。
【請求項2】
請求項1項記載の屈曲型送受波器において、
前記n個の板状振動子により形成される中空n角形状柱体の外周を覆う絶縁シースと、
前記板状振動子の柱体外面側の間隙に配置された緩衝材と、を有することを特徴とする屈曲型送受波器。
【請求項3】
請求項1項または請求項2記載の屈曲型送受波器において、
前記板状振動子は、上端部及び下端部にそれぞれ設けられた凸部を有し、凹部が設けられた上部蓋及び下部蓋と嵌合されて一体化されることを特徴とする屈曲型送受波器。
【請求項4】
請求項3項記載の屈曲型送受波器において、
板状振動子は、上端部及び下端部に設けられた凸部が、上部蓋及び下部蓋に設けられた凹部とギャップを有するように挟持されることを特徴とする屈曲型送受波器。
【請求項1】
電気信号の印加による伸縮に伴って振動する駆動用振動子と、該駆動用振動子により駆動されて屈曲振動を発生して音波を放射する音波放射用振動子とを組み合せた板状振動子をn個備える屈曲型送受波器であって、
前記n個の板状振動子は、中空n角形状柱体を形成するように配置され、該中空n角形状柱体の外面を形成する面の幅が内面を形成する面の幅よりも小さなことを特徴とする屈曲型送受波器。
【請求項2】
請求項1項記載の屈曲型送受波器において、
前記n個の板状振動子により形成される中空n角形状柱体の外周を覆う絶縁シースと、
前記板状振動子の柱体外面側の間隙に配置された緩衝材と、を有することを特徴とする屈曲型送受波器。
【請求項3】
請求項1項または請求項2記載の屈曲型送受波器において、
前記板状振動子は、上端部及び下端部にそれぞれ設けられた凸部を有し、凹部が設けられた上部蓋及び下部蓋と嵌合されて一体化されることを特徴とする屈曲型送受波器。
【請求項4】
請求項3項記載の屈曲型送受波器において、
板状振動子は、上端部及び下端部に設けられた凸部が、上部蓋及び下部蓋に設けられた凹部とギャップを有するように挟持されることを特徴とする屈曲型送受波器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−55551(P2013−55551A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193095(P2011−193095)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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