説明

屈曲性和紙調不燃シート

【課題】建築基準法の不燃要件を満たし、建築材料としての耐久性を持ち、施工時の取り扱い性に優れ、間仕切り材や光天井材に好適な不燃建築材料の提供。
【解決手段】無機長繊維によるシート状織物と、難燃不織布シートとの積層体として、シート状織物と難燃不織布シートとの間に、難燃樹脂層を設け、難燃不織布シートと難燃樹脂層とが部分的に接着されているようにすることにより接着部と非接着部を構成し、非接着部の合計面積の占有比を5〜30%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屈曲性和紙調不燃シートに関するものであって、さらに詳しくは、シート状繊維織物を基材として含み和紙調外観を有する間仕切り材や天井材などの内装建材に好適なシート状建築材料であって、特に建築基準法に適合する不燃特性を有する屈曲性和紙調不燃シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築材料においては省エネルギー効果の高い設計が取り入れられ、太陽光の有効利用、照明効果の効率化、断熱性の向上など、様々な機能を有する材料が採用されている。なかでも間仕切りや光天井の用途では、より光を透過して明るさを保ちながら、しかも隠蔽性を保持することが重要である。これらの間仕切りや光天井材料は乳白色〜白色であることが、光線透過による室内採光に好ましく、その原材料としてはアクリル樹脂板や塩化ビニル樹脂板などが多用されている。これらの樹脂板は着色されたもの、粒状、鱗片状、フレーク状の光輝性物質を含有するもの、印刷層を有するもの、エンボス模様を有し、部分的に透光率差を有するものなど多種多様の意匠が施されている。なかでも透光性の和紙外観は和洋の建築物を問わず室内調和性に優れている。しかし、一方で公共施設や大型店舗などでは、安全性の観点から高度の遮炎性と延焼防止性とを備えた建築材料が要求されるため、可燃性材料を多く含む室内装飾材料を大量に用いることは敬遠されている。このため和紙等を直接金属板、石膏ボードなどの不燃材上に貼り付けてなる和紙調外観の建築材料が提案されている(特許文献1)。しかしこれらの材料では光を透過しないため、透光性間仕切りや光天井の用途には不適切である。
【0003】
また、ガラス織物に樹脂加工を施し柔軟性をもたらした不燃シートは不燃建築材料として膜構造建築物に使われている(特許文献2)。しかしながら、建築基準法における不燃材料要件は厳しく、可燃物である紙材料や樹脂材料との複合化では要件を満たす事が困難であった。それは、紙材料や樹脂材料に不燃性の付与が困難である事と、不燃性を高めるために樹脂材料の割合を減らす処方では建築材料としての性能を満たす事ができないためで、特にガラス織物を基材とし、樹脂材料や紙材料との複合化をする場合、それらの材料との接着性が建築材料としての性能に大きく影響する。接着力が弱く、その耐久性能が劣るものは建築材料として不十分なものであり、施工取り扱い時の折り曲げによりチョークマークや折れ皺、浮き皺が発生し易いなどの取り扱い性が悪い問題があった(特許文献3)。また、これらのガラス織物加工品に和紙調の柄を印刷して和紙調外観の不燃建築材料とすることは、建築基準法における不燃材料要件を満たせば可能であるが、和紙模様の印刷では直視外観と透過陰影との両立バランスが困難となる(特許文献4)。そこで、建築材料として充分な耐久性を持ち、建築基準法の不燃要件を満たし和風の柔らかな雰囲気をそのまま生かしてなる取り扱い性に優れた和紙調不燃シートが望まれていたが、まだそのような和紙調不燃シートは未だ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−30421号公報
【特許文献2】特開2003−276113号公報
【特許文献3】特開2007−90546号公報
【特許文献4】特開2004−43983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記技術的背景を鑑み、建築基準法の不燃要件を満たし、建築材料としての耐久性を持ち、施工時の取り扱い性にも優れ、間仕切り材や光天井材に好適な、屈曲性和紙調不燃シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の屈曲性和紙調不燃シートは、無機長繊維織物層と、難燃性樹脂組成物からなり、かつ前記無機長繊維織物層の少なくとも1面を被覆して接合している難燃樹脂接着層と、難燃化処理された繊維を含み、かつ前記難燃樹脂接着層上に積層されている難燃性不織布層とを含み、
前記難燃性不織布層と、前記難燃樹脂接着層とが、互に部分的に接着して、これら両層間に接着部と非接着部とを形成しており、前記接着部及び非接着部のいずれか一方が、互に離間して分布する多数の離間分布域において形成され、かつ、他方が、前記離間分布域を取り囲む連続域において形成されており、
前記非接着部の合計面積の、前記接着部と前記非接着部との総合計面積に対する比が、5〜30%の範囲内にある
ことを特徴とするものである。
本発明の屈曲性和紙調不燃シートにおいて、前記難燃性不織布層の、前記難燃樹脂接着層に対向している内面側に、前記非接着部の面積及び形状に対応する凹部が形成されていることが好ましい。
本発明の屈曲性和紙調不燃シートにおいて、前記難燃性不織布層が、その合計質量に対して50〜92質量%のセルロース繊維成分と、3〜15質量%の難燃剤とを含むことが好ましい。
本発明の屈曲性和紙調不燃シートにおいて、前記無機長繊維織物層が、ガラス長繊維及びシリカ長繊維から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
本発明の屈曲性和紙調不燃シートにおいて、前記難燃樹脂接着層の質量の、前記無機長繊維織物層及び前記難燃性不織布層の合計質量に対する比が5〜60%の範囲内にあることが好ましい。
本発明の屈曲性和紙調不燃シートは、JIS Z 8722に準拠して測定された15%以上50%以下の光線透過率を有することが好ましい。
本発明の屈曲性和紙調不燃シートは、輻射電気ヒーターを用いて、熱流密度が50kw/m2の輻射熱を照射する発熱性試験(ISO 5660 part1に準拠)に供したとき、加熱開始から20分後までの総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ加熱開始から20分後までの間において、最高発熱速度が、10秒間以上継続して、上限値200kw/m2を超えない燃焼特性を示すことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る屈曲性和紙調不燃シートは、和紙状不織布層を含む積層体でありながら、建築基準法における不燃材料の要件を満たし、折り曲げでチョークマークや折れ皺、浮き皺が発生し難くいことにより施工時の取り扱いが快適であり、更に適度な透光性を有するものであって、間仕切りや光天井等の内装材用途に用いる意匠性建築膜材料として有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の和紙調不燃シート用難燃性不織布の一例の表面写真。
【図2】本発明の屈曲性和紙調不燃シートの一例の断面説明図。
【図3】凹凸を有する難燃性不織布を抄造するための、所定のパターンに従って離間分布している多数の凸部を有する漉簀(すきす)の一例の表面説明図。
【図4】図4Aは難燃性不織布に凸部及び凹部を形成するためのエンボスロールの説明図であり、図4B−(a)〜(g)の各々は、エンボスロール表面の部分11aに形成された凹部又は凸部の形状及び分布状態の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の和紙調不燃シートには、基布として無機長繊維からなる織物が用いられる。無機長繊維としては、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、ガラス繊維及び金属繊維などが使用される。これらのなかで優れた強度及び耐熱性を有するガラス糸条及びシリカ糸条からなる織布を用いることが好ましい。またガラス繊維糸条とシリカ繊維糸条の混織布またはガラス繊維とシリカ繊維との混用糸条からなる織布を用いてもよい。難燃性の高い炭素繊維やポリアミド繊維などをガラス繊維及びシリカ繊維に混用していてもよい。
【0010】
本発明に用いられる無機長繊維織物からなる基布の織組織の格別の制限はないが、平織、綾織、朱子織、畝織、魚子織、二重織、その他の多重織などを用いることが好ましい。また本発明に用いられる基布用無機長繊維織物の経糸及び緯糸は、下記式(1)により表される特性値a;
a=K/N-0.7 (1)
[但し、Kは経糸または緯糸の、下記式(2)により表されるカバーファクターを表し、
K=n/√N (2)
nは、無機長繊維織物の経及び緯方向長さ1インチ当たりの経糸または緯糸の密度を表し、Nは経糸または緯糸のtex繊度を表す]
が60以上であることが好ましい。特性値aが60未満であると、火災により膜材が燃焼した場合、膜材に空隙が発生し、遮煙性や遮炎性の維持が困難になる。
基布用織布としてガラス繊維布帛を用いる場合、このガラス繊維織布を構成するガラス繊維糸条にサイジング処理が施されていてもよい、またヒートクリーニング処理等でサイジングが除かれたものを用いてもよい。サイジング剤としては、デンプン、コーンスターチなどの親水性サイジング剤やプラスチックサイジング剤など疎水性サイジング剤の何れの処理剤であってもよい。
【0011】
本発明の和紙調不燃シートに用いられる難燃性不織布の構成組織などに特別の制限は無く、表面に不規則な凹凸を有し、かつ、和紙調意匠を有する難燃性不織布を用いることができる。難燃性不織布にはセルロース繊維が50質量%以上含有されていることが好ましく、セルロース成分には、三椏、楮、パルプ、木綿、麻、竹、ケナフ、藁、バナナ、シュロなどから精製した植物性繊維成分の合計が難燃性不織布の合計質量に対して50〜92質量%であることが好ましい。セルロース成分として前記セルロース繊維の合計が50質量%未満の含有量では和紙調外観に乏しく、屈曲性が不十分となることがある。またセルロース成分として前記セルロース繊維の合計が50質量%以上含有している場合、和紙調外観を損なわない範囲で、長さ30〜200mm長のポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、フェノール繊維、炭素繊維などの公知の繊維を併用して、和紙調外観の意匠性を調整したものであってもよい。また難燃性不織布に用いるこれらのセルロース成分としてセルロース繊維及び、上記公知繊維にはバインダーとしてデンプン糊や合成糊、およびアクリル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、軟質ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂成分を含み、さらに酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、架橋剤、抗菌剤、防かび剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。特に難燃性不織布に用いるこれらのセルロース成分が、リン酸系化合物水溶液、またはホウ酸系化合物水溶液によって前処理され、セルロースの基本単位であるグルコースの有する水酸基と反応又は配位させることによって難燃化された難燃セルロールであることが好ましい。
【0012】
また、難燃性不織布シートは、難燃剤により難燃化された繊維により構成されており、難燃剤としては不織布シートの難燃性を高めるためであれば格別の制限は無く、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、及びオクチルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル類、高分子量化したポリホスフェートなどの縮合リン酸エステル類、ホスホン酸、ジホスフィン酸、ホスフィン酸等の亜リン酸及び縮合亜リン酸のエステル類、リン酸アンモニウムなどのリン酸系難燃剤及びホウ酸、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウムなどのホウ酸系難燃剤が好適に用いることができる。難燃性不織布シートに含有される難燃剤の量は、3〜15質量%が好ましい。難燃剤含有量が3質量%未満では、充分な難燃性が発現せず、15質量%を超えると、難燃樹脂層との接着が不十分になることがあり、また難燃性不織布シート層が汚れ易くなり内装用建材としては使い勝手が悪くなる。
【0013】
難燃性不織布の製造方法に特別の制限は無く、難燃化処理された所定繊維を用いて一般的な方法で抄造すればよく、抄造時に漉簀(すきす)に所望のパターンに従って形成された凹凸を持つ漉紗を用いれば所望のパターンに従う凸凹を持つ不織布が得られる。柄模様凹凸を持つ不織布を得るには、適宜柄模様の漉紗を用いればよい。不織布を構成する繊維への難燃剤の付与は原料を水に溶かす時点で難燃剤を添加してもよく、抄造後に難燃剤を含有させてもよい。難燃性不織布は素材にかかわらず質量が150g/m2以下であることが好ましい。質量が150g/m2を超えると難燃処理を施していても不燃性能が不十分になることがある。
【0014】
本発明の和紙調不燃シートの難燃樹脂接着層に用いられる樹脂としては、塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質塩化ビニル樹脂)、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、シリコン樹脂、シリコン系共重合体樹脂、及びフッ素含有共重合体樹脂など単独で用いてもよく、もしくは2種以上を併用してもよい。本発明において、難燃樹脂接着層は前記樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有し、難燃樹脂接着層の基布への複合化方法は、有機溶剤に可溶化した樹脂、水中で乳化重合された樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは樹脂を水中に強制分散させて安定化したディスパージョン樹脂などの水分散樹脂、軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル、等を用いるディッピング加工(繊維基布への両面加工)、及びコーティング加工(繊維基布への両面加工、または片面加工)等によって製造することができる。
【0015】
難燃樹脂接着層には難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、架橋剤、抗菌剤、防かび剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。難燃樹脂接着層には難燃剤が含有されており、難燃剤としては難燃樹脂層の難燃性を高めるものであれば格別の制限は無く、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、及びオクチルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル類、高分子量化したポリホスフェートなどの縮合リン酸エステル類、ホスホン酸、ジホスフィン酸、ホスフィン酸等の亜リン酸、縮合亜リン酸のエステル類及びリン酸アンモニウムなどのリン酸系難燃剤及びホウ酸、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウムなどのホウ酸系難燃剤、2,4,6,−トリブロモフェノール、テトラブロモビスフェノールA、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモフェニルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、ポリ−ジブロモフェニレンオキシド、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)トリアジン、デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモベンゼンなどのハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤が好適に用いることができる。難燃樹脂接着層の付着量は、無機長繊維織物の質量と、難燃性不織布の質量合計に対する、難燃樹脂接着層の付着割合が5〜60%であることが好ましい。難燃樹脂接着層の割合が5%未満では、難燃樹脂接着層と難燃性不織布シート間の接着力及び難燃樹脂接着層と無機長繊維織物間の接着力が不十分になる事があり、その結果、屈曲耐久性に劣るものとなる。難燃樹脂接着層の割合が60%を超えると難燃処方であっても建築基準法における不燃要件を満たすことが困難になる。難燃樹脂接着層に含有される難燃剤は10〜60質量%が好ましい。難燃剤含有量が10質量%未満では、充分な難燃性が発現せず、60質量%を超えると、難燃樹脂層の樹脂強度が不十分で、折り曲げ時に内装用建材として充分な性能が発揮できなくなり使い勝手が悪くなる。
【0016】
難燃性不織布と難燃樹脂接着層との積層接着において、前記難燃性不織布層と、前記難燃樹脂接着層とが、互に部分的に接着して、これら両層間に接着部と非接着部とを形成しており、前記接着部及び非接着部のいずれか一方が、互に離間して分布する多数の離間分布域において形成され、かつ、他方が、前記離間分布域を取り囲む連続域において形成されており、
前記非接着部の合計面積の、前記接着部と前記非接着部との総合計面積に対する比(以下非接着部の占有比と記す)が、5〜30%の範囲内にある。非接着部の合計面積の占有比5〜30%を確保する手段としては、難燃性不織布の抄造時に用いる漉簀(すきす)に、例えば、図3に示された説明図のように、難燃性不織布製造用漉簀9に所望のパターンに従って、所定寸法、形状の多数の凸部10を設けておき、このような漉簀9を用いて抄紙すると、得られた不織布の、漉簀に接する表面側に、漉簀9の凸部に対応する凹部が形成され、得られた不織布の漉簀に接しない裏面側に、漉簀の凸部に対応する凸部が形成される。漉簀9上に形成される多数の凸部の形状、寸法、分布、個数はデザインされた所望のパターンに従って設定することができる。図1に示されているように、このようにして得られた難燃性不織布1には多数の凹部3が、互に離間して分非連続に分布し、これらの凹部3は、連続した凸部2によって取り囲まれている。上記の漉簀を用いて製造された難燃性不織布は、その凹部を有する面を、無機長繊維織物層上の難燃樹脂接着層に、重ね合せて押圧、接着操作を施すと、難燃性不織布と、難燃樹脂接着層とは、部分的に接着し、前記難燃性不織布の接合面の凹部は、互に離間して分布している多数の非接着部を形成し、かつ前記離間分布している非接着部と取り囲む連続接着部を形成する。非接着部の占有比を5〜30%の範囲内にするためには、漉簀9に設ける凸部10の寸法、形状、分布、個数を所望占有比に適合するように適宜に設定すればよい。上記凸部10を有する漉簀を用いて、製造された凹凸を有する難燃性不織布において、凹凸形成により不織布中の繊維分布密度はほぼ均一である。
【0017】
図2には本発明の和紙調不燃シートの一例の断面説明図が示されている。図2において、和紙調不燃シート1は、無機長繊維織物層4と、その上に含浸又は塗布法により積層接着された難燃樹脂接着層5と、その上に積層され部分的に接着された難燃性不織布層6とから構成されたものであって、難燃樹脂接着層5と、難燃性不織布6との界面には、接着部7と、非接着部8とが形成されており、また難燃性不織布層6の上表面は、粗面をなしている。
【0018】
難燃性不織布の接着面に所望のパターンに従う凹部及び凸部を形成するために、ほぼ平坦な表・裏面を有する難燃性不織布に、エンボス加工を施してもよい。図4(A)に示されたエンボスロール11の表面には所望のパターンに従って、凹部12及び凸部13が形成されている。エンボスロール11の表面の部分11aに形成された凹部及び凸部の形成パターンの数例が図4(B)(a)〜(g)に示されている。図4(B)−(a)〜(d)及び(f)〜(g)においては、多数の凸部13が互に離間して分布配置しており、これらの凸部13を取り囲む連続凹部12が形成されている。このようなパターンに従って形成された凹部及び凸部を有するエンボスロール11により平坦な両面を有する難燃性不織布にエンボス加工を施すと、難燃性不織布の、エンボスロール11に接触した面側には、ロール上の多数の互に離間して分布している凸部13に対応する離間分布した多数の凹部が形成され、かつロール上の連続凹部に対応する連続凸部が、上記離間分布している凹部を取りかこんで形成される。前記難燃性不織布の一面側に形成された離間分布した多数の凹部は、この面を、難燃樹脂接着層上に重ねて、接着操作を施すと、この場合界面に互に離間分布している多数の非接着部を形成し、この多数の非接着部は連続した接着部により取りかこまれる。また、図4(B)(e)に示されたエンボスロール周面の凹凸パターンにおいて、多数の互に離間して、分布している凹部12の間に連続凸部13が形成されている。このようなパターンの凹凸を有するエンボスロール11により、エンボス加工された難燃性不織布の、エンボスロール11との接触面側には、連続凸部13に対応する連続凹部が形成され、またエンボスロール11上の凹部12に対応して、難燃性不織布の接触面側には、互に離間した多数の凸部が形成される。このようにしてエンボス加工された難燃性不織布のエンボス加工面を、難燃樹脂接着層に圧着すると、前記離間分布している多数の凸部において接着部が形成され、前記連続凹部において、非接着部が形成される、このようにして、エンボス加工された難燃性不織布においては、押圧により凹部を形成している部分は、繊維密着が高くなるので、この部分における光の透過、分散、反射性などが他の部分と相違し、このため照明器具に用いられたとき、特殊な照明効果を発揮することができる。また、前記エンボスロール機の代りに、上記と同様の所望パターンの凹凸を有するエンボス加工板を用いてもよい。
【0019】
さらに、難燃性不織布に予じめ、凹凸を形成することなしに、難燃性不織布を部分的に接着する方法として、無機長繊維織物に含浸又は塗布により接合されている難燃樹脂接着層上に、難燃性不織布を、表面に凹凸のあるラミネートロールにより接着することも可能である。この場合、ラミネート機の加熱加圧ロールとして、周面に、所定のパターンに従って形成された凹部と凸部と有するものを用いると、難燃性不織布は、ラミネートロールの凸部により加熱加圧された部分のみにおいて、難燃樹脂接着層に接着され、難燃性不織布の、ラミネートロールの凹部に対向した部分は、難燃樹脂接着層に接着されることはない。このときのラミネートロール周面上の凹部及び凸部は、前記エンボスロールの周面における凹部及び凸部と同様に形成配置すればよい。また上記エンボスロールの代りに所望のパターンに従って形成された凹凸を有するラミネート加圧板を用いてもよい。
【0020】
またこれらの積層において、難燃樹脂接着層は無機長繊維織物からなる基布の片面または両面に形成され、難燃性不織布は基布の片面または両面に積層される。難燃性不織布を難燃樹脂接着層上に熱圧着により積層する方法、難燃樹脂接着層を無機長繊維織物に塗布した後、ウェット状態で難燃性不織布を積層する方法等いずれの方法でもかまわないが、積層時の圧着圧は0.1〜5Paであることが好ましい。圧着圧が0.1Pa未満では圧着が不十分で難燃性不織布の凹凸が大きい場合、難燃性不織布と難燃樹脂接着層との間の非接着部の合計面積の占有比が30%を超えて、難燃不織布との接着が弱くなり、折り曲げ時に難燃不織布シートの剥離が発生し内装材としての実用耐久性に劣る物となることがある。圧着圧が5Paを超えると、難燃性不織布の凹凸が平らになり和紙調外観が損なわれ、難燃性不織布と難燃樹脂接着層との非接着部の合計面積の占有比が5%未満となり、シートを折り曲げた場合チョークマークが発生し、外観不良となり易く問題となることがある。
【0021】
本発明の和紙調不燃シートの光線透過率は、JIS−Z−8722による試験で光線透過率が15%以上50%以下であることが好ましい。更に好ましくは20%以上45%以下である。内装用建築材料において特に間仕切りや光天井用途では、照明の消費電力を抑えるために透光率が高い物が求められており、光線透光率が15%未満では照明等に大容量の器具を使用することになり省エネの観点から不利になる。また、光線透過率が50%を超えると、和紙状光散乱性が不十分になり、所望の和紙調照明効果が不十分になる。
【0022】
本発明の和紙調不燃シートは、輻射電気ヒーターを用いて50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験(ISO 5660,part1)において、加熱開始から20分間後までの総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ加熱開始から20分間後までの間において、最高発熱速度が10秒以上継続して、上限値200kW/m2を超えないという燃焼特性を示すものでなければ、延焼性に劣る物となり、建築基準法における不燃要件を満たすことができない。
【実施例】
【0023】
本発明の下記の実施例及び比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。下記に示す試験方法に基づいて本発明の屈曲性和紙調不燃シートの性能評価を行った。
(1)耐屈曲性評価
JIS−P−8115 紙及び板紙のMIT型試験機による耐折り強さ試験方法にて、試験片に9.8Nの荷重を掛け、500回折り曲げた。折り曲げ部分を目視観察し異常の有無を判断した。樹脂層の耐久性が劣る場合、無機繊維基布が損傷をうける、損傷が大きい時には基布の破断が起こる。表面紙層と接着層の接着力が不十分であると、表面紙層と接着層間で剥離が生じ建築材料としては使い勝手に劣るものとなる。
(2)光線透光率評価
JIS−Z−8722に準拠し、ミノルタ(株)製分光測色計CM−3600dを用いて条件g、C光源、2度視野にて測定を行った。
(3)燃焼性評価
ISO 5660 part1に準拠するコーンカロリーメーターを用いる発熱性試験において輻射電気ヒーターを用いて50kW/m2の輻射熱を照射し、加熱開始後20分間の総発熱量と加熱開始後20分間、発熱速度が継続して200kW/m2を超え時間を測定し、目視で燃焼後のサンプルを評価した。
評価基準及び表示は、下記のとおりである。
総発熱量 8MJ/m2以下:〇 8MJ/m2超えるもの:×
発熱速度 発熱量200kW/m2を超える時間が10秒未満:〇
発熱量200kW/m2を超える時間が10秒以上:×
総発熱量が8MJ/m2超えるものや発熱速度において発熱量200kW/m2を超える時間が10秒以上のものは延焼防止性に乏しく、また燃焼後にピンホールが発生するものは遮炎性や遮煙性に乏しくこれも延焼防止性が不十分となり、建築基準法における不燃材料を満たすことができない。
【0024】
実施例1
無機長繊維による織物として、下記の織り組織を有するガラス織物を使用した。このガラス織物の質量は215g/m2であり、前記式(1)により表される特性値aは経:103.8、緯:77.9であった。
67.5dtex×67.5dtex

44.7×33.5(本/25.4mm)
この基布の片面に、下記難燃樹脂接着層用配合物をコンマコーターによりコーティング加工し、180℃で1分間熱処理することにより質量60g/m2の難燃樹脂接着層を形成した。
<難燃樹脂層配合>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(ジオクチルフタレート、可塑剤) 65質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 15質量部
エポキシ化大豆油 2.0質量部
Ba−Zn系安定剤 1.5質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
次いで、下記組成からなる質量85g/m2難燃性不織布を、加圧面に、図4(B)(a)に記載のパターンの凹凸が形成されている加熱加圧板を用い、160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂接着層に積層した。但し、このときの難燃樹脂層と難燃性不織布シート間の非接着部の合計占有比が15%になるように、上記凹凸配置パターンを調節した。
<難燃性不織布組成>
パルプ由来セルロース 80質量部
楮由来セルロース 10質量部
デンプン糊 5質量部
ホウ酸アルミニウム 5質量部
得られた和紙調不燃シートの全質量に対する難燃樹脂接着層の付着割合は16.7%であった。評価結果を表1に示す。
【0025】
実施例2
無機長繊維による織物として、下記の織り組織を有するガラス織物を使用した。このガラス織物の質量は215g/m2であり、特性値aは経:103.8、緯:77.9であった。
67.5dtex×67.5dtex

44.7×33.5(本/25.4mm)
この基布を下記難燃樹脂層配合中に浸漬し、マングルで絞り基布の両面に難燃樹脂接着層用組成物をコーティング加工し、180℃で1分間熱処理することにより質量120g/m2の難燃樹脂接着層を形成した。
<難燃樹脂接着層配合>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(ジオクチルフタレート、可塑剤) 65質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 15質量部
エポキシ化大豆油 2.0質量部
Ba−Zn系安定剤 1.5質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
次いで、下記組成からなる質量85g/m2難燃性不織布を、加圧面に図4(B)(a)に記載のパターンの凹凸を有する加熱加圧板を用いて、160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂接着層の片面に積層した。但し、このときの難燃樹脂層と難燃不織布シートとの間の非接着部の合計占有比が15%になるように前記凹凸配置パターンを調節した。
<難燃性不織布組成>
パルプ由来セルロース 80質量部
楮由来セルロース 10質量部
デンプン糊 5質量部
ホウ酸アルミニウム 5質量部
得られた和紙調不燃シートの全質量に対する難燃樹脂接着層の付着割合は28.6%であった。評価結果を表1に示す。
【0026】
実施例3
無機長繊維による織物として、下記の織り組織を有するガラス織物を使用した。このガラス織物の質量は215g/m2であり、特性値aは経:103.8、緯:77.9であった。
67.5dtex×67.5dtex

44.7×33.5(本/25.4mm)
この基布を下記難燃樹脂接着層用配合物中に浸漬し、マングルで絞り基布の両面に難燃樹脂層をコーティング加工し、180℃で1分間熱処理することにより質量143g/m2の難燃樹脂接着層を形成した。
<難燃樹脂接着層配合>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(ジオクチルフタレート、可塑剤) 65質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 15質量部
エポキシ化大豆油 2.0質量部
Ba−Zn系安定剤 1.5質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
次いで、下記組成からなる質量55g/m2難燃性不織布を、加圧面に図4(B)(e)に記載のパターンの凹凸が形成されている加熱加圧板を用いて、160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂層の両面に積層した。但し、このときの難燃樹脂接着層と難燃性不織布シート間の非接着部の合計占有比が10%になるように前記凹凸配置パターンを調節した。
<難燃性不織布組成>
パルプ由来セルロース 90質量部
デンプン糊 5質量部
ホウ酸アルミニウム 5質量部
得られた和紙調不燃シートの全質量に対する難燃樹脂層の付着割合は34.6%であった。評価結果を表1に示す。
【0027】
実施例4
無機長繊維による織物として、下記の織り組織を有するガラス織物を使用した。このガラス織物の質量は215g/m2であり、特性値aは経:103.8、緯:77.9であった。
67.5dtex×67.5dtex

44.7×33.5(本/25.4mm)
この基布を下記難燃樹脂層配合中に浸漬し、マングルで絞り基布の両面に難燃樹脂接着層をコーティング加工し、180℃で1分間熱処理することにより質量143g/m2の難燃樹脂接着層を形成した。
<難燃樹脂接着層配合>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(ジオクチルフタレート、可塑剤) 65質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 30質量部
酸化チタン 5質量部
エポキシ化大豆油 2.0質量部
Ba−Zn系安定剤 1.5質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
次いで、下記組成からなる質量55g/m2難燃性不織布を、加圧面に図4(B)(e)に記載のパターンの凹凸が形成されている加熱加圧板を用いて、160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂接着層の両面に積層した。但し、このときの難燃樹脂接着層と難燃性不織布間の非接着部の合計占有比が10%になるように前記凹凸配置パターンを調節した。
<難燃性不織布組成>
パルプ由来セルロース 85質量部
デンプン糊 5質量部
ホウ酸アルミニウム 5質量部
酸化チタン 5質量部
得られた、和紙調不燃シートの全質量に対する難燃樹脂層の付着割合は30.6%であった。難燃樹脂接着層中の酸化チタンの添加により白度の高いものとなったが、光線透過率は8%であった。評価結果を表1に示す。
【0028】
実施例5
無機長繊維による織物として、下記の織り組織を有するガラス織物を使用した。このガラス織物の質量は215g/m2であり、特性値aは経:103.8、緯:77.9であった。
67.5dtex×67.5dtex

44.7×33.5(本/25.4mm)
この基布の片面に、下記難燃樹脂接着層用配合物をコンマコーターによりコーティング加工し、180℃で1分間熱処理することで質量30g/m2の難燃樹脂接着層を形成した。
<難燃樹脂接着層配合>
ウレタン系樹脂(固形分:38質量%) 100質量部
((株)ADEKA製、商標;アデカボンタイターHUX−380)
メラミンシアヌレート 30質量部
トリイソプロピルベンゼンカルボジイミド 3.0質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
次いで、下記組成からなる質量85g/m2難燃不織布を、加熱面に図4(B)(g)に記載のパターンの凹凸が形成されている加熱加圧板を用いて、160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂接着層に積層した。但し、このときの難燃樹脂接着層と難燃性不織布間の非接着部の合計占有比は15%になるように前記凹凸配置パターンを調節した。
<難燃性不織布組成>
パルプ由来セルロース 90質量部
デンプン糊 5質量部
ホウ酸アルミニウム 5質量部
得られた和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂層の付着割合は9.1%であった。評価結果を表1に示す。
【0029】
実施例6
無機長繊維による織物として、下記の織り組織を有するガラス織物を使用した。このガラス織物の質量は215g/m2であり、特性値aは経:103.8、緯:77.9であった。
67.5dtex×67.5dtex

44.7×33.5(本/25.4mm)
この基布の片面に、下記難燃樹脂接着層配合をコンマコーターによりコーティング加工し、180℃で1分間熱処理することで質量30g/m2の難燃樹脂接着層を形成した。
<難燃樹脂接着層配合>
ウレタン系樹脂(固形分:30質量%) 100質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製、商標;ニッポラン5111)
メラミンシアヌレート 30質量部
コロネートHL 3.0質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
次いで、下記組成からなる質量85g/m2難燃性不織布を、加圧面に図4(B)(g)に記載のパターンの凹凸が形成されている加熱加圧板を用いて、160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂接着層に積層した。但し、このときの難燃樹脂接着層と難燃性不織布間の非接着部の合計占有比は15%になるように前記凹凸配置パターンを調節した。
<難燃性不織布組成>
パルプ由来セルロース 80質量部
三椏由来セルロース 10質量部
デンプン糊 5質量部
ホウ酸アルミニウム 5質量部
得られた和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂層の付着割合は9.1%であった。評価結果を表1に示す。
【0030】
実施例7
実施例1と同様にして和紙調不燃シートを作製した。但し、下記難燃樹脂層配合をコンマコーターによりコーティング加工し、160℃で1分間熱処理することにより質量30g/m2の難燃樹脂接着層を形成した。
<難燃樹脂接着層配合>
エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂(固形分:55質量%) 100質量部
(住化ケムテックス(株)製、商標;スミカフレックス400HQ)
リン酸アンモニウム 30質量部
トリイソプロピルベンゼンカルボジイミド 3.0質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
但し、このときの難燃樹脂層と難燃不織布シート間の非接着部の占有比が15%になるように前記凹凸配置パターンを調節した。
得られた和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂接着層の付着割合は9.1%であった。評価結果を表1に示す。
【0031】
実施例8
実施例1と同様にして和紙調不燃シートを作製した。但し、難燃性不織布の抄造時に図4(B)(b)に記載の凹凸配置パターンを有する漉簀を用いて50μの凹凸高低差を持つ凹部の占有比25%に調整した。このときの難燃樹脂層と難燃不織布シート間非接着部の占有比は25%であった。得られた、和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂層の付着割合は16.7%であった。評価結果を表1に示す。
【0032】
実施例9
実施例1と同様にして和紙調不燃シートを作製した。但し、下記組成からなる質量85g/m2の難燃性不織布を160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂接着層に積層した。このときの難燃樹脂層と難燃不織布シート間の非接着部の占有比は20%であった。
<難燃性不織布組成>
パルプ由来セルロース 60質量部
ポリエステル綿 20質量部
楮由来セルロース 10質量部
デンプン糊 5質量部
リン酸アンモニウム 5質量部
得られた和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂接着層の付着割合は16.7%であった。評価結果を表1に示す。
【0033】
実施例10
無機長繊維によるシート状織物として、下記の織り組織を有するガラス織物を使用した。このガラス織物の質量は325g/m2であり、特性値aは経:84.0、緯:73.2であった。
135dtex×135dtex

31.5×27.4(本/25.4mm)
この基布の片面に、下記難燃樹脂接着層用配合物をコンマコーターによりコーティング加工し、180℃で1分間熱処理することで質量80g/m2の難燃樹脂接着層を形成した。
<難燃樹脂接着層配合>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(ジオクチルフタレート、可塑剤) 65質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 15質量部
エポキシ化大豆油 2.0質量部
Ba−Zn系安定剤 1.5質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
次いで、下記組成からなる質量75g/m2難燃性不織布を、加圧面に、図4(B)(a)に記載のパターンの凹凸を有する加熱加圧板を用いて、160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂接着層に積層した。但し、このときの難燃樹脂接着層と難燃性不織布間の非接着部の占有比が15%になるように、前記凹凸配置パターンを調節した。
<難燃性不織布組成>
パルプ由来セルロース 80質量部
楮由来セルロース 10質量部
デンプン糊 5質量部
トリクレジルホスフェート 5質量部
得られた和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂層の付着割合は16.7%であった。評価結果を表1に示す。
【0034】
実施例11
無機長繊維による織物として、酸処理により二酸化珪素95質量%以上のシリカ長繊維からなる、下記の織り組織を有するシリカ織物を使用した。このシリカ織物の質量は325g/m2であり、特性値aは経:84.0、緯:73.2であった。
135dtex×135dtex

31.5×27.4(本/25.4mm)
この基布を下記難燃樹脂層配合中に浸漬し、マングルで絞り基布の両面に難燃樹脂層をコーティング加工し、180℃で1分間熱処理することで質量143g/m2の難燃樹脂接着層を形成した。
<難燃樹脂接着層配合>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(ジオクチルフタレート、可塑剤) 65質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 15質量部
エポキシ化大豆油 2.0質量部
Ba−Zn系安定剤 1.5質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
次いで、下記組成からなる質量55g/m2難燃性不織布を、加圧面に、図4(B)(a)に記載のパターンの凹凸を有する加熱加圧板を用いて、160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂接着層の両面に積層した。但し、このときの難燃樹脂接着層と難燃性不織布との間の非接着部の占有比が10%になるように上記凹凸配置パターンを調節した。
<難燃性不織布組成>
パルプ由来セルロース 90質量部
デンプン糊 5質量部
ホウ酸アンミニウム 5質量部
得られた和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂層の付着割合は24.7%であった。評価結果を表1に示す。
【0035】
実施例12
実施例1と同様にして和紙調不燃シートを作製した。但し、下記組成からなる質量60g/m2の難燃性不織布を160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂接着層に積層した。このときの難燃樹脂層と難燃不織布シート間の非接着部の占有比は15%であった。
<難燃性不織布組成>
難燃ポリエステル綿 95質量%
(オキシホスホラン化合物を10重量%ポリエステル綿に共重合させた物)
デンプン糊 5質量%
得られた和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂接着層の付着割合は17.9%であった。評価結果を表1に示す。
【0036】
実施例13
実施例2と同様にして和紙調不燃シートを作製した。但し、難燃樹脂接着層に更に下記組成からなる難燃樹脂層をコンマコーターによりコーティング加工し、160℃で1分間熱処理することで質量30g/m2の難燃樹脂接着層を積層した。
<積層する難燃樹脂接着層配合>
ウレタン系樹脂(固形分:30質量%) 100質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製、商標;ニッポラン5111)
メラミンシアヌレート 30質量部
コロネートHL 3.0質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
得られた和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂接着層の付着割合は33.3%であった。評価結果を表1に示す。
【0037】
実施例14
実施例1と同様にして和紙調不燃シートを作製した。但し、下記組成からなる質量60g/m2の不織布を下記難燃処理液に浸漬してピックアップ率100%に調整されたニップロールで圧搾した後、180℃で20秒間乾燥して、難燃性不織布とした。この難燃性不織布を160℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂接着層に積層した。このときの難燃樹脂層と難燃不織布シート間の非接着部の占有比は15%であった。
<不織布組成>
ポリエステル綿 95質量%
デンプン糊 5質量%
<難燃処理液>
環式ホスホン酸エステル化合物(難燃剤) 10質量部
希釈水 90質量部
得られた和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂接着層の付着割合は17.6%であった。評価結果を表1に示す。
【0038】
比較例1
実施例1と同様にして和紙調不燃シートを作製した。但し、難燃性不織布の積層は、160℃の温度、圧着圧10Paで3分間圧着して難燃樹脂層に積層した。但しこのときの難燃樹脂接着層と難燃性不織布との間の非接着部の占有比が3%になるように前記凹凸配置パターンを調節した。得られた接着面における非接着部が過小であった。得られた、和紙調不燃シートの難燃樹脂接着層の付着割合は16.7%であった。評価結果を表1に示す。
【0039】
比較例2
実施例8と同様にして和紙調不燃シートを作製した。但し、難燃不織布シートの抄造時に、100μの高低差を持つ、図4B(d)に記載の凹凸パターンの、凸部の合計占有比が50%に調節された漉簀を用いた。このときの難燃樹脂層と難燃不織布シートとの間の非接着部の占有比は50%であった。
得られた、和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂層の付着割合は16.7%であった。評価結果を表1に示す。
【0040】
比較例3
実施例1と同様にして和紙調不燃シートを作成した。但し、下記組成からなる質量85g/m2の難燃性不織布を120℃の温度、圧着圧2Paで1分間圧着して難燃樹脂層に積層した。但しこのときの難燃樹脂層と難燃不織布シート間の非接着部の占有比が3%になるように、前記凹凸配置パターンを調節したところ、ポリエチレン綿が溶融して凹凸形状が失われて平滑であった。
<難燃性不織布シート組成>
パルプ由来セルロース 25質量部
ポリエチレン繊維 60質量部
酢酸ビニル系樹脂 5質量部
デンプン糊 5質量部
リン酸アンモニウム 5質量部
得られた、和紙調不燃シートの質量に対する難燃樹脂層の付着割合は16.7%であった。評価結果を表1に示す。
【0041】
比較例4
実施例1と同様にして和紙調不燃シートを作成した。但し、無機長繊維からなる織物に替えて下記の織り組織を有するポリエステルフィラメント織物を使用した。このポリエステルフィラメント織物の質量は165g/m2で特性値aは経:99.2、緯:134.5であった。
555dtex×555dtex

28×35(本/25.4mm)
得られた、和紙調不燃シート中の難燃樹脂接着層の付着量は60g/m2で、和紙調不燃シートの質量に対する付着割合は19.4%であった。難燃樹脂層と難燃不織布シートとの間の非接着部の占有比は15%であった。基布がポリエステル織物のため、難燃性に劣り、建築基準法の不燃要件を満たす事ができなかった。評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の屈曲性に優れた和紙調不燃シートにおいて、無機長繊維によるシート状織物と、難燃不織布シートの間に難燃樹脂層を設けて難燃不織布シートと難燃樹脂層とを部分接着させ、非接着部の占有比を5〜30%に調節することで、和紙調の柔らかい雰囲気を醸し出すという高い意匠性を持ちながら、折り曲げ時にチョークマークの発生が無く、難燃不織布シートの剥離が無い屈曲性に優れたものとなった。本発明の屈曲性に優れた和紙調不燃シートは、間仕切りや光天井等の内装用不燃建築材料として実用的に優れたものである。
【符号の説明】
【0044】
1 凹部及び凸部を有する難燃性不織布層の表面
2 凸部
3 凹部
4 無機長繊維織物層
5 難燃樹脂接着層
6 凹部及び凸部を有する難燃性不織布層
7 接着部
8 非接着部
9 凸部を有する難燃性不織布製造用漉簀
10 漉簀の凸部
11 難燃性不織布に凹凸を形成するエンボスロール
11a エンボスロール表面の一部分
12 エンボスロール表面上の凸部
13 エンボスロール表面上の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機長繊維織物層と、難燃性樹脂組成物からなり、かつ前記無機長繊維織物層の少なくとも1面を被覆して接合している難燃樹脂接着層と、難燃化処理された繊維を含み、かつ前記難燃樹脂接着層上に積層されている難燃性不織布層とを含み、
前記難燃性不織布層と、前記難燃樹脂接着層とが、互に部分的に接着して、これら両層間に接着部と非接着部とを形成しており、前記接着部及び非接着部のいずれか一方が、互に離間して分布する多数の離間分布域において形成され、かつ、他方が、前記離間分布域を取り囲む連続域において形成されており、
前記非接着部の合計面積の、前記接着部と前記非接着部との総合計面積に対する比が、5〜30%の範囲内にある
ことを特徴とする屈曲性和紙調不燃シート。
【請求項2】
前記難燃性不織布層の、前記難燃樹脂接着層に対向している内面側に、前記非接着部の面積及び形状に対応する凹部が形成されている、請求項1に記載の屈曲性和紙調不燃シート。
【請求項3】
前記難燃性不織布層が、その合計質量に対して50〜92質量%のセルロース繊維成分と、3〜15質量%の難燃剤とを含む、請求項1又は2に記載の屈曲性和紙調不燃シート。
【請求項4】
前記無機長繊維織物層が、ガラス長繊維及びシリカ長繊維から選ばれた1種以上を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の屈曲性和紙調不燃シート。
【請求項5】
前記難燃樹脂接着層の質量の、前記無機長繊維織物層及び前記難燃性不織布層の合計質量に対する比が5〜60%の範囲内にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の屈曲性和紙調不燃シート。
【請求項6】
JIS Z 8722に準拠して測定された15%以上50%以下の光線透過率を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の屈曲性和紙調不燃シート。
【請求項7】
輻射電気ヒーターを用いて、熱流密度が50kw/m2の輻射熱を照射する発熱性試験(ISO 5660 part1に準拠)に供したとき、加熱開始から20分後までの総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ加熱開始から20分後までの間において、最高発熱速度が、10秒間以上継続して、上限値200kw/m2を超えない燃焼特性を示す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の屈曲性和紙調不燃シート。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−131504(P2011−131504A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293167(P2009−293167)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】