説明

屋上緑化システム

【課題】 屋上緑化において植物の生育に十分な通気性を確保するとともに、屋根面の垂直方向に対する優れた耐久性を備えた屋上緑化システムを提供することを課題とする。
【解決手段】 屋根や屋上に植物を育成させる屋上緑化システムであって、長さ方向に設けられた複数の凸条が幅方向に互いに平行に並設された薄肉金属パネル200上に透水シート105と植物を育成させるための軽量土106を配置した生育基盤100を、その長さ方向が雨水流出方向に対して直角になるように屋根や屋上に備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上緑化システムに関し、ことに、工場または一般住宅などの建築物の屋上、屋根上またはベランダ等(以下、これらの総称を屋上という)で植物を栽培可能にする屋上緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に関するニュースがマスメディアで頻繁に取り上げられて、その影響について世間の注目が集められている。
この地球温暖化は、大気中に存在する二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度が上昇することによって引き起こされる。この影響により、自然生態系の変化や海水面の上昇といった深刻な環境破壊が問題となっている。
特に、都市部では、緑地の少なさ等からヒートアイランド現象と呼ばれる高温化現象が生じており、その対応が急務となっている。
【0003】
このような地球温暖化問題を解消するために、ビルや工場の屋上に芝や樹木等を植栽した屋上緑化を施工するケースが増えている。この屋上緑化を施工すると、植栽した芝や樹木が大気中の二酸化炭素を吸収し酸素を放出するので、地球温暖化の要因となる二酸化炭素濃度を減少させ、大気を浄化させることができる。また、階下に伝わる熱を削減する効果もあるので、その結果、屋内の冷暖房効率が上がり、エアコンの使用頻度を軽減させ、省エネルギー効果も期待することができる。
【0004】
このような屋上緑化を利用した従来技術の1つとして特許文献1に開示される緑化屋根が提案されている。
この特許文献1に開示される緑化屋根は、屋根上面を形成する波型折板状の外囲板の上面に、同じく波型折板状の保水板を敷き込んで構成されている。そして、この保水板上に吸水材及びネットを介して土壌を盛り、植栽を行って、屋上緑化を実現している。
また、外囲板と保水板の波型溝が互いに重なるように、保水板を敷き込むので、外囲板の下面と保水板の上面との間には、建物の棟から軒下方向に沿って角柱状の空気層が形成される。この空気層により、屋根の断熱効果を高めるとともに、植物の育成に好ましくない結露を防止することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−16982
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1に開示される緑化屋根には、以下にあげる2つの問題点がある。
その1つ目の問題点は、前述の空気層における通気が不十分であるという点である。その理由は、空気層による空気の流路が、建物の棟から軒下方向に沿った方向に限定されているためである。従って、風向きによっては十分な通気が行われないことがあるから、植物の根に対し、生育に必要な空気を充分に供給できないおそれがある。
また、2つ目の問題点は、屋根面の垂直方向にはたらく荷重への耐強度が不十分であるという点である。その理由は、前述のように、保水板は外囲板と波型溝が重なるように敷き込まれるので、特に、その重なった波型溝部分の強度が脆弱であるためである。従って、降雨により植栽部分の重量が増すと、外囲板及び保水板が変形・破損するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、屋上緑化において植物の生育に十分な通気性を確保するとともに、屋根面の垂直方向に対する優れた耐久性を備えた屋上緑化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の屋上緑化システムは、屋根や屋上に植物を育成させる屋上緑化システムであって、長さ方向に設けられた複数の凸条が幅方向に互いに平行に並設された薄肉金属パネル上に透水シートと植物を育成させるための土壌を配置した生育基盤を、その長さ方向が雨水流出方向に対して直角になるように前記屋根や屋上に備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記薄肉金属パネルの前記凸条間には、複数のリブが前記凸条とほぼ平行にパネル幅方向に並設され、前記凸条とこの凸条に隣接する前記リブとの間に、パネル表裏に貫通している所定長さの切込みが、前記凸条とほぼ平行にパネル長さ方向に一定間隔ごとに設けられていることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記屋根を構成する折板山部にハゼつかみ金物を設置し、このハゼつかみ金物に設けられたボルトを用いて前記生育基盤を固定することを特徴とする。
【0011】
前記生育基盤上にタイマーの設定時刻に応じて自動散水する自動散水システムを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成することにより、本発明は、植物の生育に十分な通気性を確保できるとともに、組み立て建設が容易で、屋根面の垂直方向に対する優れた耐久性を備え、必要に応じて自動散水が可能な屋上緑化システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る屋上緑化システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明は発明をより深く理解するためのものであって、特許請求の範囲を限定するためのものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態における屋上緑化システムを示す上面図である。また、図2は、本発明の一実施の形態における屋上緑化システムを示す側面断面図である。
図に示すように、本実施の形態における屋上緑化システムは、植物を植えつけ生育させる生育基盤100と、薄肉金属パネル200等により構成されその生育基盤100の骨組みとなるパネル構成体101と、このパネル構成体101を鉄骨梁103上に設けられた屋根を構成する折板102に取り付けて固定する取付固定部300とを有して構成される。
【0015】
生育基盤100は、パネル構成体101内の底に透水シート105を敷き、軽量土106を埋め込み、この軽量土106上に植物の種を直接蒔くか植生マット110で被覆し、この軽量土106または植生マット110上に飛散防止ネット107を張り、この飛散防止ネット107を針金130により取付固定部300に固定して構成されている。
この飛散防止ネット107の固定方法の詳細については後述するものとする。
【0016】
また、取付固定部300は、前述の屋根の折板102上に列状に複数取り付けられるハゼつかみ金物104と、これら複数のハゼつかみ金物104上に載置して、薄肉金属パネル200に対する垂直下方向の耐強度を強化するアングル310とを有して構成される。
このハゼつかみ金物104は、パネル構成体101を屋根上に取り付けるための部材であり、屋根の折板102上に設けられているハゼ取合部111を挟持して取り付けられる。
また、アングル310は、2枚の同一形状・同一寸法の長板状部材を、その長手方向において略直角に連設して構成される断面L字状の部材である。
【0017】
ここで、前述のパネル構成体101について詳しく説明する。
図3は、パネル構成体101の外観斜視図である。
パネル構成体101は、その底面1及び側面4を構成する薄肉金属パネル200と、この薄肉金属パネル200の端部を覆って薄肉金属パネル200を支持する断面コの字型のチャンネルからなるランナー2、3やキャップ5と、ランナー2、3やキャップ5のコーナ部分を覆って固定するコーナ部材6から構成される。
【0018】
薄肉金属パネル200は、図4にその上面図(a)と下面図(b)を、図5にその断面図を示すように、鋼製の板形状の材質を、正面略方形状かつ断面略角波形状に折り曲げ、切断加工して成形した金属パネルである。例えば、この薄肉金属パネル200の完成品の大きさは、長さ2000mm、幅600mm、厚さ0.4mm程度である。
この薄肉金属パネル200を複数枚連続して並べることにより、様々な大きさのパネル構成体101にも対応して構築することができ、フレキシビリティに富んだ屋上緑化システムを構築することができる。
【0019】
このように、パネル鋼板を断面略角波形状に折り曲げることで、薄肉金属パネル200には、互いに平行な複数の凸条11が所定間隔で並設され、パネル200自体の強度を補強している。また、パネル断面を等辺角波型に成形することで、特に表面又は裏面側からの力に対して優れた強度を発揮する。
なお、本実施の形態においては、この凸条11の形成方向を薄肉金属パネル200の「長さ方向」とし、薄肉金属パネル200においてその長さ方向に垂直な方向を「幅方向」とする。
【0020】
図に示すように、その凸条11は、上面31と、この上面31の両幅方向に連設されている2面の側面32とにより構成されている。この上面31の幅方向の長さはここでは15mm、側面32の幅方向(奥行き方向)の長さはここでは18mm程度とする。
また、互いに隣接する凸条11の幅方向の間隔は、ここでは50mmとする。
【0021】
また、各凸条11間の凹面には、所定間隔ごとに、複数の幅方向の断面凸状のリブ12と、幅方向の断面凹状の溝部16が、凸条11に平行に繰り返し形成されている。
本実施の形態では、幅方向に凸条11→溝部16→リブ12→溝部16→リブ12→・・・→溝部16→凸条11→・・・というように設けられており、凸条11の幅方向の両側には、溝部16が連設されている。
このリブ12は、幅8mm程度、高さ5mm程度で、その幅方向断面が例えば半円弧状に形成されている。また、溝部16は、幅5mm程度に形成されている。
【0022】
さらに、凸条11のパネル幅方向の両端、すなわち、リブ12とそのリブ12に隣接する溝部16との間の境界線上には、所定長の切込み13が、所定間隔で凸条11と平行に破線状に設けられている。
この破線状の切込み13列に沿って薄肉金属パネル200を所定の角度に折り曲げることにより、パネル構成体101の側面側のコーナー部分に使用することができるようになっている。
また、この破線状の切込み13列に沿って、薄肉金属パネル200を、正逆方向に数回繰り返し折り曲げることにより、薄肉金属パネル200を所望のサイズに容易に切断することができるようになっている。
【0023】
図6は、本発明の実施の形態における薄肉金属パネルの正面拡大図である。
図6に示すように、凸条11の上面31側には、円の一部分を残して表裏に貫通したC字状の切込み21と、その切込み21を設けずに残した円の一部分である折返部22とが設けられて、蓋部14を形成している。
この折返部22に沿って蓋部14を折り返すことにより、蓋部14が開蓋状態になり、ボルト挿入孔15が形成されるようになっている。
【0024】
本実施の形態のパネル構成体101の底面1は、このような薄肉金属パネル200の端部の凸条11を重ねることで幅方向の長さを延長して、生育基盤100を屋根の折板102の長さ方向に広げて構成する。
このとき、屋根の折板102の長さ方向(雨水の流出方向)に対して、薄肉金属パネル200の長さ方向(凸条11の方向)が互いに直角になるように配置して構成される。これによって、風向きに関係なく植物の生育に必要な充分な通気性を得ることが出来る。
一方、本実施の形態のパネル構成体101の側面4は、図7に示すように薄肉金属パネル200の長さ方向が縦方向になるように配置して構成される。この縦方向の長さはここでは2000mm程度であって、この薄肉金属パネル200を組み合わせて敷き込んで、パネル構成体101を構成する。
【0025】
底面1及び側面4とも薄肉金属パネル200の端部は、断面コの字型のチャンネル201からなるランナー2、3やキャップ5で覆われて保持される。
図8に底面1の側辺端部を覆うランナー2の、図9(a)に側面4の下側端部を覆うランナー3の外観斜視図を、図9(b)に側面4の上側端部を覆うキャップ5の外観斜視図を示す。
ランナー2、3は、側面または底面となる中間面26とその両幅方向に連設されている2面の側面27とにより構成され、これらの各面によって構成される空間28に、底面1または側面4を構成する薄肉金属パネル200の端部を挟み込んで保持するようになっている。
同様に、キャップ5は上面となる中間面36とその両幅方向に連設されている2面の側面37とにより構成され、これらの各面によって構成される空間38に、側面4を構成する薄肉金属パネル200の上端部を挟み込んで保持するようになっている。
【0026】
さらに、パネル構成体101の各角の部分では、図10に示されるようなコーナ部材6が用いられる。図10(a)は底面側のコーナ部材6であり、図10(b)は上面側のコーナ部材6である。
コーナ部材6は直角に曲がったL字型面を持つ中間面74とその両幅方向に連設されている2面の側面75とを備え、これらの各面によって構成される空間76に、ランナー2、3やキャップ5で覆われた薄肉金属パネル200の端部を挟み込んで保持するようになっている。このコーナ部材6には、中間面74及び各側面75にそれぞれねじ用の開口77a、77bが設けられていて、この開口77a、77bにボルトを立てて薄肉金属パネル200やランナー2、3やキャップ5に固定することができる。したがって、このコーナ部材6をパネル構成体101の各角部に設けることによって、パネル構成体101の強度を維持して構造を保つことができる。
なお、コーナ部材6の内側の側面75の角部分には、薄肉金属パネル200の挿入が容易になるように割り込みが入っている。
【0027】
生育基盤100を形成するには、まず、このような構成のパネル構成体101の底面1に透水シート105を敷く。透水シート105は生育基盤100へ潅水された水を徐徐に透過させるとともに生育基盤100に植えられた植物の根がこれよりも下に伸びるのを防ぐ防根の役割を果たすものである。
ついで、この透水シート105の上に軽量土106を埋め込む。軽量土106の代わりに植物の生育が可能なやしのみ繊維マットのようなマットを用いても良い。
そうしてこの軽量土106を埋め込む。軽量土106や繊維マットに植物の種を直接蒔くか、あるいは予め種や植物が植え込まれた植生マット110で被覆しても良い。
【0028】
次に、この軽量土106または植生マット110の上に土やマットを押さえるために飛散防止ネット107を張る。
この飛散防止ネット107は、例えばステンレス製の紐状の針金130により植生マット110上に敷設固定される。
すなわち、針金130を飛散防止ネット130上に架け渡して、そのネット130が突風又は強風などで巻き上がったり、吹き飛ばされたりしないようにする。この紐状の針金130の両端は、それぞれ飛散防止ネット130上からパネル構成体101の側面4を経て、裏面側へ折り返し、ハゼつかみ金物104に結びつけて固定する。
例えば、針金130の一端を、ある折板102の山部の軒側に配置されたハゼつかみ金物104に結びつけ、もう一方の他端を、その折板102の山部とは異なる山部の棟側に配置されたハゼつかみ金物104に結びつける。
そうすると、図1に示すように、折板102山部の形成される方向とは非平行に針金130が架け渡されるので、平行に架け渡される場合と比べて、より効果的に飛散防止ネット130が引き飛ばされるのを防止することができる。
このようにして、本発明の屋上緑化システムに用いる植物の生育基盤100が構成できる。
【0029】
次に、この育成基盤100を取付固定部300により金属屋根の折板102上に取り付ける方法について説明する。
【0030】
図11は、その取付固定部300を構成するハゼつかみ金物104を示す図であって、(a)は側面、(b)は正面をそれぞれ示している。
図に示すように、ハゼつかみ金物104は、一対の同形状の金属部材が互いに噛合して構成されており、ボルトを締めると、その一対の金属部材の下方の先端がハゼ部を両側から挟む力が増し、薄肉金属パネル200を折板102に強固に固定することができるようになっている。
なお、本実施の形態では、図に示すように、一対の金属部材により挟み込むハゼつかみ金物104を用いているが、その形状はこれに限定されない。ハゼつかみ金物104は、屋根のハゼの形状に応じて最適なものを用いるものとする。
【0031】
また、図12は、同様に取付固定部300を構成するアングル310を示す斜視図である。
図に示すように、アングル310は、長板状の部材をその長手方向を軸に略直角に折り曲げて正面視略L字状に形成したものであり、長板状の上面板部311と、この上面板部131と略同形状の側面板部312とが略直角に連設されて構成される。
また、上面板部131には、その長手方向に沿って、ハゼつかみ金物104のボルトを挿入するための取付孔313が列状に複数設けられている。
【0032】
図13は、金属屋根の折板102の頂点(山部)にハゼ取合部111が設けられている場合において、その取付固定部300を用いて、パネル構成体101を折板102に取り付ける方法を示す説明図である。
この場合、まず、ハゼ取合部111を挟むことにより、ハゼつかみ金物104を折板102の山部に沿って列状に複数取り付ける。次に、その折板102の山部上の複数のハゼつかみ金物104上にアングル310の上面板部311を載置して取り付ける。このとき、ハゼつかみ金物104から立ち上がっているボルトを上面板部311に設けられた取付孔313に挿入させる。
次に、そのアングル310上にパネル構成体101を載置して取り付ける。このとき、パネル構成体101の底面1の薄肉金属パネル200の蓋部14を折り返して開蓋状態にしたボルト挿入孔15に、そのアングル310の取付孔313から立ち上がっているボルトを挿入し、そのボルト挿入孔15から立ち上がっているボルトを座金とナット109で固定する。この蓋部14のピッチは例えば50mm程度であり、折板102の頂点の相互の間隔は、例えば300〜550mm程度であるので、ボルト挿入孔15の位置を折板102の頂点に合わせることが容易である。
【0033】
このように、本実施の形態における屋上緑化システムは、パネル構成体101を、アングル310を介して屋根上に取り付けているので、パネル構成体101及び生育基盤100の重量に十分に耐えて、撓らずに支持することが可能となっている。
【0034】
本発明の屋上緑化システムは、さらに、自動散水システム120を備えて、適宜に散水を行わせることもできる。図14に、このような自動散水システム120の一実施例の該略図をしめす。
自動散水システム120は、生育基盤100上に配列された塩化ビニールチューブ121と、塩化ビニールチューブ121の本管と分岐部とをつなぐT字型連結具122と、塩化ビニールチューブ121に水を送り出すポンプ123と、雨水をためておく雨水タンク125と、ポンプ123を所定の時刻に駆動させるタイマー124と、雨水タンク125からポンプ123に至る水管を開閉するコック126と、雨水を集めて雨水タンク125に回収する雨樋127と、この雨樋127により集められた雨水を軒下や地下等に設置される雨水タンク125へ送水する縦管128を有して構成されている。
【0035】
雨水は屋根から雨樋127及び縦管128を伝って雨水タンク125に溜められている。雨水で足りない場合は水道水で雨水タンク125を満たしても良い。また、この雨水タンク125の貯水量が一定量を超えると、自動的に下水管(図示せず)へ排水される。
予め決められた散水時刻になると、タイマー124が働いてポンプ123を駆動させ、塩化ビニールチューブ121の本管からT字型連結具122を経て分岐部へと加圧した雨水を送り出す。塩化ビニールチューブ121の分岐部には所定の位置に散水孔が設けられているので、ここから雨水が散布される。
これにより、散水時刻と散水終了時刻をタイマー124に設定しておけば、自動的に所定時刻に所定量の散水が可能になる。なお、散水を停止したい場合は、タイマー124をとめておくか、コック126を閉めて雨水タンク125からポンプ123に水が送られないようにしておけばよい。
この自動散水システム120を用いることにより、屋上緑化システムの保水性を利用してゆっくり雨水を気化させることができ、建物室内の熱負荷を軽減することができる。
なお、育成基盤100からの水の透過量は、透水シート105の選択や、底面1での図6に示す蓋部14の開閉の数や度合いによって広範囲に制御することが出来る。
【0036】
ここで、簡単に、本実施の形態において、自動散水システム120を備える場合の屋上緑化システムの作成方法を図15のフローチャートに添って説明する。
まず、折板屋根に記号や線を入れて位置決めのための墨だしを行う(ステップS101)。
次に、墨だし位置に基づいて、複数のハゼつかみ金物104を折板102の山部に沿って列状に装着する(ステップS102)。
【0037】
次に、その列状に装着した複数のハゼつかみ金物104上にアングル310を装着する(ステップS103)。
【0038】
さらに、底面1を構成する薄肉金属パネル200を、折板102の各山部に装着されたアングル310の上面板部311上に敷き込み、ハゼつかみ金物104のボルトに座金とナット109で固定して取り付ける(ステップS104)。
このとき、薄肉金属パネル200の長さ方向が、屋根を構成する折板102の長さ方向(雨水流出方向)に対して直角に配置するように薄肉金属パネル200を敷き込む。
また、薄肉金属パネル200は、隣接するパネル200同士の端部が互いに重なるように敷き込まれる。このとき、互いに隣接するパネル200のボルト挿入孔15の位置が重なるようにし、この重なったボルト挿入孔15に前述のハゼつかみ金物104のボルトを挿入し、このボルトにナットを締め付けて薄肉金属パネル200を固定する。
【0039】
次に、底面1の薄肉金属パネル200の周囲にランナー2を取り付けるとともに、側面4の立ち上がり位置に側面4の下側を支えるランナー3を取り付け、このランナー3のコーナ部分に図10(a)に示した底面側のコーナ部材6を被せた上でランナー3をランナー2にボルトで固定する(ステップS105)。
【0040】
次に、側面4の薄肉金属パネル200をランナー3に立て込んで、ランナー3の横方向からボルトで固定する(ステップS106)。
そうして側面4の上部にキャップ5を被せて横方向よりボルトで側面4に固定する。次に、このキャップ5のコーナ部分に図10(b)に示した上面側のコーナ部材6を取り付け、上側からキャップ5をボルトで固定する(ステップS107)。
このように、側面の薄肉金属パネル200の上側(天端)の直線部分にキャップ5を被せ、コーナ部分にコーナ部材6を被せて、側面4の薄肉金属パネル200の上側(天端)を一体化する。
なお、平板状の薄肉金属パネル200をランナー3に立て込んで各側面4を形成するようにしてもよいし、前述のように、切込み13列に沿って薄肉金属パネル200を所定の角度に折り曲げて、パネル構成体101の側面側のコーナ部分に使用するようにしてもよい。
【0041】
このようにして、パネル構成体101が構成された後、底面1の上に透水シート105を敷きこむ(ステップS108)。そうして軽量土106を透水シート105の上に敷設する(ステップS109)。
【0042】
こうして出来た土の上に、植生マット110を敷いて植栽を植え込むか種子を蒔く(ステップS110)。
この植生マット110に植え込む植栽としては、セダム、コケ類又は岩だれ草などの対候性に優れた種類のものを選ぶことが好ましい。
【0043】
この後、自動散水システム120を設置する(ステップS111)。
【0044】
次に、自動散水システム120を設置した後、植生マット110上に飛散防止ネット107を敷き込んで生育基盤100を構成する(ステップS112)。
【0045】
そして、飛散防止ネット107上に針金130を架け渡して、その針金130の両端をパネル構成体101の外側からまわして底面1の裏側に引き出し、ハゼつかみ金物104に結びつけて、飛散防止ネット107を植生マット110上に固定する(ステップS113)。
このように、飛散防止ネット107で植生マット110を押さえることにより、強風や台風時に植栽が飛散するのを防ぐことが可能となる。また、パネル構成体101の底面1裏側を通過する風がパネル構成体101を上方に引き剥がそうとする揚力に対し、浮き上がらないようにしっかりと固定することが可能となる。
以上で、屋上緑化システムを完成する。
【0046】
また、図16は、自動散水システム120を備えない場合の屋上緑化システムの作成方法を示すフローチャートである。
この自動散水システム120を備えない場合は、ステップS111の工程が省かれている点を除いて、前述の自動散水システム120を備える場合と同様の工程を経て屋上緑化システムが作成される。
【0047】
このように、本実施形態の屋上緑化システムは比較的簡単な作業によって屋根上に建設することが出来る。
【0048】
以上のように、本実施の形態の屋上緑化システムは構成されるので、既成の薄肉金属パネル200を用いて構成し、その蓋部14をボルト挿入孔15として使用できるので、植物の生育基盤100の骨格となるパネル構成体101の組み立てが容易に実行でき、屋上緑化システムの施工能率を向上することができる。
また、組み立てたパネル構成体101は、軽量であるが、植栽の荷重や強い風にも耐えられる充分な強度を有するとともに、新築の屋根にも既存の屋根にも使え、錆びにくくアルカリにも強く、長期に亙って利用できる特性を備えている。
さらに、パネル構成体101の底面1を構成する薄肉金属パネル200の長さ方向が、屋根を構成する折板102の長さ方向(雨水流出方向)に対して直角に配置されているので、どのような方向から風が吹いても風向きに関係なく、生育基盤100の上下を風が抜けるので、屋根に熱がこもることがなく、また、植物の生育の障害となる結露や着霜の発生の危険が少なく、植物の生育に必要な充分な通気性が得られる。
また、この屋上緑化システムは、種子型、マット型、植生ロール型など広い植生の形態に対応でき、生育基盤100の取り付け、配置を考えれば屋根上ばかりでなく、屋上やテラスなどにも用いることができる、広い利用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る屋上緑化システムの上面図とパネル構成体の上面図である。
【図2】本発明に係る屋上緑化システムの側面断面図である。
【図3】本発明に係る屋上緑化システムに用いられるパネル構成体の外観斜視図である。
【図4】パネル構成体に用いられる薄肉金属パネルの外観斜視図である。
【図5】パネル構成体に用いられる薄肉金属パネルの断面図である。
【図6】パネル構成体に用いられる薄肉金属パネルの正面拡大図である。
【図7】パネル構成体の側面に用いられる薄肉金属パネルの外観図である。
【図8】パネル構成体の底面の側辺端部を覆うランナーの外観斜視図である。
【図9】(a)は、パネル構成体の側面の下側端部を覆うランナーの外観斜視図であり、(b)は、側面の上側端部を覆うキャップの外観斜視図である。
【図10】パネル構成体に用いられるコーナ部材の外観斜視図である。
【図11】ハゼつかみ金物を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図12】取付固定部を構成するアングルを示す斜視図である。
【図13】金属屋根の折板にハゼ取合部が設けられている場合の取り付け方法の説明図である。
【図14】本発明に用いられる自動散水システムの該略図である。
【図15】本発明の散水システムを備える場合の屋上緑化システムの作成方法を示すフローチャートである。
【図16】本発明の散水システムを備えない場合の屋上緑化システムの作成方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 底面
2,3 ランナー
4 側面
5 キャップ
6 コーナ部材
11 凸条
12 リブ
13 切込み
14 蓋部
15 ボルト挿入孔
16 溝部
21 切込み
22 折返部
26,36,74 中間面
27,32,37,75 側面
28,38,76 空間
31 上面
77a,77b 開口
100 生育基盤
101 パネル構成体
102 折板
103 鉄骨梁
104 ハゼつかみ金物
105 透水シート
106 軽量土
107 飛散防止ネット
109 座金、ナット
110 植生マット
111 ハゼ取合部
112 ボルト
120 自動散水システム
121 塩化ビニールチューブ
122 T字型連結具
123 ポンプ
124 タイマー
125 雨水タンク
126 コック
127 雨樋
128 縦管
130 針金
200 薄肉金属パネル
300 取付固定部
310 アングル
311 上面板部
312 側面板部
313 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根や屋上に植物を育成させる屋上緑化システムであって、
長さ方向に設けられた複数の凸条が幅方向に互いに平行に並設された薄肉金属パネル上に透水シートと植物を育成させるための土壌を配置した生育基盤を、その長さ方向が雨水流出方向に対して直角になるように前記屋根や屋上に備えたことを特徴とする屋上緑化システム。
【請求項2】
前記薄肉金属パネルの前記凸条間には、複数のリブが前記凸条とほぼ平行にパネル幅方向に並設され、
前記凸条とこの凸条に隣接する前記リブとの間に、パネル表裏に貫通している所定長さの切込みが、前記凸条とほぼ平行にパネル長さ方向に一定間隔ごとに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の屋上緑化システム。
【請求項3】
前記屋根を構成する折板山部にハゼつかみ金物を設置し、このハゼつかみ金物に設けられたボルトを用いて前記生育基盤を固定することを特徴とする請求項1または2に記載の屋上緑化システム。
【請求項4】
前記生育基盤上にタイマーの設定時刻に応じて自動散水する自動散水システムを備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の屋上緑化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−259409(P2010−259409A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114749(P2009−114749)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(505204446)日本環境製造株式会社 (12)
【Fターム(参考)】