説明

屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材

【課題】施工時には一定の可使時間を確保することができ、硬化後は、その表面の粘着性が抑制されて良好な仕上がりとなる、優れた屋内外施設用表面仕上げ材を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とするA剤と、ポリオールを主成分とし、架橋剤および充填剤を含有するB剤とを組み合わせてなる2液型常温硬化性ポリウレタン組成物であって、上記A剤のポリイソシアネートが、2,4′−MDIを50重量%以上含有するものであり、かつ上記充填剤が、pH7未満の酸性充填剤を含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、競技場、多目的運動場、公園や遊歩道等の屋内外施設における舗装面や、建築建造物の床面、外装面、屋根面等の表面仕上げに用いられる屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
競技場、多目的運動場、公園や遊歩道等の屋内外施設における舗装面や、建築建造物の床面、外装面、屋根面等の表面には、(1)その外観を、長期間にわたって美麗に維持すること、(2)その面が果たす機能に応じて必要な特性を付加すること、(3)対象となる施設の利用者の安全を確保すること、等を目的として、各種表面仕上げ材による表面層を形成することが行われている。
【0003】
このような表面仕上げ材としては、例えば、トリレンジイソシアネート(以下「TDI」という)やジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」という)とポリオールとを反応して得られるウレタンプレポリマーを主成分とする主剤(A剤)と、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(以下「MOCA」という)等のアミン系架橋剤とポリオールの混合物を主成分とする硬化剤(B液)とからなる、2液型常温硬化性ポリウレタン組成物が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、特定のイソシアネート末端プレポリマーとジメチルチオトルエンジアミン(以下「DMTDA」という)を用いて注型またはスプレー成形により得られるウレタンエラストマー(特許文献2)や、MDI異性体の混合物とカルボイミド変性MDIとからなる(A)成分と、ポリオールおよび硬化剤を主成分とする(B)成分の2成分からなる、エラストマー形成性スプレー用組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特公昭56−40205号公報
【特許文献2】特開平8−85717号公報
【特許文献3】特開2001−172360公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された、アミン系架橋剤であるMOCAは、人体に対し発ガン性を有するおそれがあることから、作業環境の安全や作業者の安全を確保するために、細心の注意を払って作業を行う必要があり、その負担が大きいという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献2に記載されたものは、以下に述べる特許文献3に記載されたものに比べると、反応性が比較的緩やかであるが、塗工時間の長い手塗り作業には不向きなため、その反応性を意図的に遅らせると、基本的な反応が進まず、強度の発現性が悪いという問題がある。さらに、気泡を巻き込んで表面状態が悪化したり粘着性を生じ、その影響で強度低下を招くおそれがある。
【0007】
一方、上記特許文献3に記載されたものは、反応性が極めて速く、スプレー機等の施工機械を用いて迅速に塗工作業を行わなければならず、手塗り施工には不向きであるという問題を有する。
【0008】
そこで、2液混合後の反応時間を遅らせ、一定の可使時間を確保するために、用いるプレポリマーやポリオールの種類、架橋剤の種類、NCO/OHの割合等を検討することが行われているが、未だ実用的なものは得られていないのが、実情である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、施工時には一定の可使時間を確保することができ、硬化後は、その硬化表面の粘着性が抑制されて良好な仕上がりとなる、優れた屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(以下「ウレタンプレポリマー」という)を主成分とするA剤と、ポリオールを主成分とし、架橋剤および充填剤を含有するB剤とを組み合わせてなるポリウレタン系組成物であって、上記A剤のポリイソシアネートが、2,4′−MDIを50重量%以上含有するものであり、かつ上記充填剤が、pH7未満の酸性充填剤を含有するものである屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材を第1の要旨とし、そのなかでも、特に、上記B剤に含有される架橋剤が、芳香族アミン系架橋剤である屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材を第2の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、上記ウレタンプレポリマーを主成分とするA剤と、ポリオールを主成分とし、架橋剤および充填剤を含有するB剤とを組み合わせてなるポリウレタン系組成物であって、上記A剤のポリイソシアネートが、2,4′−MDIを50重量%以上含有するものであり、かつ上記架橋剤が、芳香族アミン系架橋剤である屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材を第3の要旨とする。
【0012】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記A剤とB剤との混合液の、B型粘度計〔BH式〕によって測定される粘度(7号ロータ、20回転/分、30℃)が5000mPa・Sから50000mPa・Sに達するまでの時間が20分以上である屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材を第4の要旨とする。
【0013】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記A剤とB剤とを用いた表面仕上げ材の、養生硬化後における表面粘着性が抑制されている屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材を第5の要旨とする。
【0014】
なお、上記「養生硬化後における表面粘着性が抑制されている」状態とは、下記の方法に従って測定される表面仕上げ材層の表面粘着力が、2N/cm2 以下となる状態をいう。
【0015】
〔表面仕上げ材層の表面粘着力の測定方法〕
(1)A剤とB剤とを、埃や粉塵等のない清浄な雰囲気下で混合し、その混合液を用いて厚み6mmの表面仕上げ材層を形成する。
(2)上記表面仕上げ材層を、23℃×7日、もしくは23℃×1日+50℃×1日の間、養生して硬化させる。
(3)そして、上記硬化した表面仕上げ材層の表面に、重量166.7g、直径2.512cm(底面積4.95cm2 )のステンレス製円柱を、垂直姿勢で静かに乗せ、10秒間静置して自然荷重をかけた後、上記ステンレス製円柱を、引き上げ速度28.5mm±2.5mm/分で静かに引き上げ、そのときの粘着力を測定する。測定は、ステンレス製円柱を乗せる位置を変えて5回行い、その最大値と最小値を除いた中間3点の平均値を、「表面仕上げ材層の表面粘着力(単位:N/cm2 )」とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材(以下「表面仕上げ材」という)は、上記のように、2,4′−MDIを50重量%以上含有するポリイソシアネートとポリオールとを反応させた特殊なウレタンプレポリマーを主成分とするA剤と、ポリオールを主成分とし、架橋剤と、pH7未満の酸性充填剤を含有する特殊な充填剤とを含有するB剤とを組み合わせるか、上記と同様のA剤と、ポリオールを主成分とし、芳香族アミン系架橋剤と、充填剤とを含有するB剤とを組み合わせたものである。この表面仕上げ材によれば、A剤とB剤の混合後、硬化反応が遅延され、比較的長く可使時間が確保されるため、スプレー機等の施工機械によらず、手塗り作業に用いることができるという利点を有する。
【0017】
また、本発明の表面仕上げ材は、可使時間が長いという利点を有するだけでなく、施工中に気泡を巻き込んで表面が発泡したり表面状態が悪化したりすることがないため、得られる表面仕上げ層に強度低下を招くおそれがなく、例えば表面仕上げ層を形成して1日後には、その上が歩行可能な程度にまで強度が発現する、という利点を有する。そして、可使時間の長いものは、長期間養生後もその表面に粘着性が残りやすいという問題を有するが、本発明の表面仕上げ材を用いると、作業しやすく、また表面の粘着性が抑制されるため良好に仕上がり、得られる外観も美麗なものとなる。
【0018】
なお、上記「可使時間」とは、A剤とB剤を混合して施工に供する際、その混合液を平滑に均して塗工することができる時間をいい、混合液の粘度上昇が遅いほど、可使時間が長いといえる。
【0019】
ちなみに、本発明の代表的なもの(後述する実施例を参照)において、A剤とB剤を混合した混合液の、可使時間の目安となる特定粘度まで増粘するのに要する時間を測定(粘度は、B型粘度計〔BH式〕により測定、7号ロータ、20回転/分、30℃)すると、5000〜100000mPa・sで25分以上、5000〜80000mPa・sで23分以上、5000〜50000mPa・sで20分以上、5000〜30000mPa・sで15分以上、となり、充分な可使時間が得られることがわかる。
【0020】
そして、本発明のなかでも、特に、上記B剤として、酸性充填剤を含有する充填剤を用い、かつ架橋剤として、芳香族アミン系架橋剤、例えば、イソブチル−4−クロロ−3,5−ジアミノベンゾエート(以下「ICDAB」という)やDMTDAを、それぞれ単独で用いるか、両方を組み合わせて用いたものは、安全性に問題のあるMOCAを用いることなく、芳香族アミン系架橋剤を用いながら、A剤とB剤の2液混合後の可使時間の遅延化を達成することができる。
【0021】
また、本発明のなかでも、特に、上記A剤とB剤との混合液の、B型粘度計〔BH式〕によって測定される粘度(7号ロータ、20回転/分、30℃)が5000mPa・Sから50000mPa・Sに達するまでの時間が20分以上であるもの、さらには、上記A剤とB剤とを用いた表面仕上げ材の、養生硬化後における表面粘着性が抑制されているものは、とりわけ使い勝手がよく、好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0023】
本発明の表面仕上げ材は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とするA剤と、ポリオールを主成分とし架橋剤および充填剤を含有するB剤とを組み合わせてなるポリウレタン組成物によって構成されている。
【0024】
上記A剤の主成分であるウレタンプレポリマーに用いられるポリイソシアネートは、2,4′−MDIを50重量%(以下「%」と略す)以上含有するものでなければならず、なかでも70〜98%含有するものを用いることが好適である。すなわち、上記2,4′−MDIの含有量が50%未満では、4,4′−MDIと2,4′−MDIとの反応バランスが悪く、その表面仕上げ材の施工表面が、長期間養生後もべたついて粘着力が残留して、作業性が悪いものとなるからである。そして、長い可使時間と強度、粘着力残留の抑制の点から、特に、80〜98%、さらには95〜98%という高濃度で2,4′−MDIを含有するものを用いることが、より好適である。
【0025】
なかでも、上記ポリイソシアネートは、工業的に製造されたMDIであって、その50%以上が2,4′−MDIで、残りの50%未満が、上記2,4′−MDIの異性体である4,4′−MDIのみか、4,4′−MDIとごく少量の2,2′−MDIとで構成された、MDIタイプのポリイソシアネートであることが望ましく、なかでも、その70〜98%、特に80〜98%、さらには95〜98%が2,4′−MDIで構成されたものが最適である。すなわち、2,4′−MDIが多ければ多いほど、本発明の効果に優れているからである。ただし、場合によっては、MDIタイプ以外の、例えばTDI等を含有するものであっても差し支えないが、その場合は、上記主成分である2,4′−MDIとのバランスから、通常、ポリイソシアネート全体に対し、20%以下の割合で用いることが、効果の点で好ましい。
【0026】
上記MDI系以外のポリイソシアネートとしては、例えば、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、2,4−TDI、2,6−TDI、2,4−TDIと2,6−TDIの混合イソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族系のイソシアネートや、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、さらには、イソホロンジイソシアネート、水素添加TDI、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等があげられる。
【0027】
また、本発明に用いられるウレタンプレポリマーにおいて、上記ポリイソシアネートとともに用いられるポリオールは、特に限定するものではなく、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリカプロラクタンポリオール、ポリエステルポリオール等があげられ、なかでも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールに、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド等を付加重合して得られるポリオキシアルキレンポリオールが好適である。そして、そのなかでも、特に、好ましいのは、分子量100〜10000、官能基数2〜3のポリオキシアルキレンポリオールであり、さらに好ましいのは、分子量1000〜80000、官能基数2〜3のポリオキシプロピレンポリオールである。
【0028】
本発明に用いられるウレタンプレポリマーは、上記ポリイソシアネートとポリオールとを用い、例えば、つぎのようにして得ることができる。すなわち、まず、上記ポリイソシアネートを、ポリオールに対し過剰となる割合で、ポリオールと混合し、所定温度(例えば50〜120℃)で撹拌することにより、目的とするウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0029】
上記ウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート含有率(以下「NCO%」という)は、1.0〜10.0%、なかでも、3.0〜5.0%に設定することが好適である。すなわち、3.0%未満では、得られる表面仕上げ層に粘着性が残留するおそれがあり、3.0%以上で、NCO%を増やしていくと、反応の進行が早くなって表面に粘着性が残留する時間をより短縮することができるが、5.0%を超えると、表面仕上げ層の状態は良好となる反面、可使時間が短くなるおそれがあるからである。
【0030】
なお、上記A剤には、上記ウレタンプレポリマーだけでなく、可塑剤や消泡剤等、必要に応じて適宜の添加剤を配合することができる。上記可塑剤としては、フタル酸ジイソノニル(以下「DINP」という)、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等があげられる。また、上記消泡剤としては、ジメチルシロキサン系消泡剤、ポリアクリレート系消泡剤等があげられる。
【0031】
一方、本発明のB剤の主成分であるポリオールは、前記A剤のウレタンプレポリマーを調製するのに用いるポリオールと同様であり、その説明を省略するが、好ましくは、分子量2000〜10000、官能基数2〜4のポリオールである。なお、上記ポリオールの種類は、A剤のウレタンプレポリマーに用いるポリオールと同じであっても異なっていてもよい。
【0032】
また、上記B剤において、上記ポリオールとともに用いられる架橋剤としては、ICDAB、DMTDA、1,4−ブタンジオール(以下「1,4−BD」という)、1,3−ジフェニルグアニジン(以下「DPG」という)、ジエチルトルエンジアミン(以下「DETDA」という)等があげられ、なかでも、芳香族アミン系架橋剤を用いることが、強度や伸び等の性能維持・向上効果を得ながら可使時間の延長効果を得る上で、好適である。上記芳香族アミン系架橋剤としては、ICDAB、DMTDAが好ましく、これらを単独で用いるか、両者を併用した場合に、特に優れた効果を得ることができる。また、充分に安全に配慮した環境においては、架橋剤としてMOCAを用いてもよい。
【0033】
そして、上記B剤に用いられる充填剤としては、pH7未満の酸性充填剤を含有する充填剤を用いることが望ましい。このとき、上記酸性充填剤の含有量は、全充填剤中の25%以上、なかでも、50%以上に設定することが好適である。もちろん、充填剤の全てが、上記酸性充填剤であってもよい。ただし、同じ名称の充填剤であっても、その成分組成や処理方法によって微妙にpHが異なるため、必ずしも名称によって上記「酸性充填剤」を特定することはできないが、例えば、クレー、カオリン(いわゆる「カオリンクレー」といわれているものを含む)、シリカ等であってpH7未満のもの、とりわけpH5以下のものが、優れた可使時間遅延効果および表面粘着性残留抑制効果を得ることができ、好適である。より具体的には、市販品であるカオリンクレーHA−A(山陽クレー工業社製、pH4.5〜5.5)や、特号クレーW(竹原化学工業社製、pH3.84)を用いることが好適である。これらの酸性充填剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
なお、上記充填剤のpHは、JIS K5101(pH測定、常温法)に準拠して測定することにより求めることができる。ただし、本発明では、試料10gに対しイオン交換水90gを用いる。
【0035】
また、上記B剤に用いられる充填剤には、上記酸性充填剤とともに、非酸性充填剤を用いることができる。しかも、架橋剤として前記芳香族アミン系架橋剤を用いた場合でも、上記酸性充填剤を含有することなく、非酸性充填剤のみを用いても、本発明の効果を得ることができる。このような非酸性充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ゼオライト、タルク、無水石膏(CaSO4 )、雲母等があげられ、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
なお、これらの充填剤全体の量は、B剤全体に対し90%以下、例えば1〜70%に設定することが好適である。
【0037】
なお、上記B剤には、これらの必須成分以外に、必要に応じて、触媒、着色剤、吸湿剤、消泡剤、可塑剤、安定剤、レベリング剤、改質剤等を、適宜添加することができる。上記触媒としては、オクチル酸鉛(OctPb)、ナフテン酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジメチル錫ジラウレート等があげられ、上記着色剤としては、酸化第二鉄、酸化チタン、ベンガラ、酸化クロム、カーボンブラック等があげられる。また、吸湿剤としては、ゼオライト等があげられ、消泡剤としては、ジメチルシロキサン系消泡剤、ポリアクリレート系消泡剤等があげられる。さらに、上記可塑剤としては、DINP、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等があげられ、上記安定剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ベンゾチアゾール等があげられる。
【0038】
本発明に用いられるB剤は、上記必須成分であるポリオール、架橋剤、充填剤と、必要に応じて配合される任意成分とを、所定温度(例えば50〜150℃)で撹拌しながら混合することにより、得ることができる。
【0039】
本発明の表面仕上げ材は、前記特定のA剤と、上記特定のB剤とを組み合わせてなる2液常温硬化性ポリウレタン組成物で、通常、A剤とB剤とが、互いに異なる容器で保管されるようになっている。そして、実際の施工開始直前に、上記A剤とB剤とを混合し、その可使時間内に、上記混合液を、対象とする部位に塗工して用いられる。なお、上記A剤とB剤の混合液のNCOインデックスは、100〜150に設定することが好適である。
【0040】
そして、本発明の表面仕上げ材は、すでに述べたように、2液混合後の硬化反応の進行が遅く、可使時間が長い(通常、20分以上、特には30分以上)という特徴を有するため、従来の常温硬化型のウレタン系表面仕上げ材のように、スプレー機等の施工機械による短時間の吹き付け作業等に限定されることがなく、手作業による丁寧な施工を行うことができる。
【0041】
しかも、本発明の表面仕上げ材を用いて得られる表面仕上げ層は、養生硬化の際、作業しやすく、表面の粘着性が抑制されて良好に仕上がるため、その外観が美麗なものとなる。加えて、上記表面仕上げ層において、強度の低下を招くことがなく、例えば表面仕上げ層を形成して1日後には、その上が歩行可能な程度にまで強度が発現する、という利点を有する。
【0042】
なお、本発明の表面仕上げ材を用いる対象は、屋内、屋外を問わず、各種の施設であり、より具体的には、一般住宅の他、商業施設、公共施設等の床面、屋上面、外装面、ベランダ面、駐輪・駐車面等を対象とする。また、陸上競技場や公園、遊歩道、ジョギング走路、多目的運動場、テニスコート等に設けられる人工面等に対する舗装仕上げ、防水仕上げ等に好適に用いることができる。
【0043】
そして、本発明の表面仕上げ材を用いた施工において、その施工厚みは、通常、1〜100mm、なかでも1〜50mmに設定することが好適である。
【0044】
また、本発明の表面仕上げ材を用いて表面仕上げを行う際、上記表面仕上げ材のみを用いて塗工する以外に、この表面仕上げ材をベースとし、これに、ポリウレタン、EPDM、天然ゴム、合成ゴム等からなる弾性粒子や砂利、セラミック粒子、ガラス粉砕物等の無機物を分散含有させるか散布し、この混合組成物によって、表面仕上げを行う用途に用いることもできる。
【実施例】
【0045】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限るものではない。なお、以下に示す成分組成は、すべて重量基準である。
【0046】
<A剤の調製>
下記の表1〜表4に記載されたポリイソシアネート、ポリオール等を窒素雰囲気下で混合し、80℃で20時間反応させた後冷却することにより、末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とするA剤(A−1〜A−15)を得た。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
<B剤の調製>
下記の表5〜表7に記載されたポリオール等を高速回転撹拌機で混合することにより、ポリオールを主成分とするB剤(B−1〜B−11)を得た。
【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
【表7】

【0055】
〔実施例1〜26、比較例1〜3〕
このようにして得られた15種類のA剤と11種類のB剤とを、後記の表8〜表13に示すように組み合わせることにより、目的とする実施例品および比較例品を得た。
【0056】
そして、これらの実施例品および比較例品のA剤とB剤を混合し、所定厚みに塗工後、養生硬化させることにより、表面仕上げ層を形成した。その際、2液混合後の可使時間、得られた表面仕上げ層の表面状態等について、下記のとおり評価し、その結果を、後記の表8〜表13に併せて示した。
【0057】
〔可使時間〕
A剤およびB剤を、100〜600回転/分のエアミキサーとペントナイフとを用い、約1分30秒間撹拌混合した後、その混合液を約110mlのスクリュー瓶に適量移し、7号ロータ、20回転/分、30℃の条件下で、B型粘度計〔BH式〕を用いて測定される粘度が50000mPa・Sに達する時間(分)を測定し、可使時間とした。
【0058】
〔表面状態1および発泡の有無〕
2液混合後、これを、型内面にテフロン(登録商標)加工を施した、縦75mm×横75mm×深さ6mmのアルミ型(離型剤は不使用、常温)に注入して成型し、23℃で24時間養生した。そして、専門モニター5名に、その表面を指触させて、表面粘着性を評価した。評価は、◎…粘着性がなく硬化面が非常に良好、○…粘着性がなく硬化面が良好、△…粘着性が少し有るが問題なし、×…粘着性があり問題、××…粘着性が非常に有り、もしくは未硬化で実用不可、の5段階の基準に従うものとし、3名以上の評価が一致するところを求めた。また、このとき、硬化面の発泡の有無を目視により観察した。
【0059】
〔表面状態2〕
2液混合後、これを、上記と同様のアルミ型に注入して成型し、23℃×7日(もしくは23℃×1日+50℃×1日)の間、養生を行い、養生後の表面粘着性を、上記〔表面状態1〕の場合と同様にして評価した。
【0060】
〔表面状態3〕
上記〔表面状態2〕の場合と同様の養生を行い、養生後の表面仕上げ材の表面粘着力を、前述の方法にしたがって測定した。そして、得られた測定値から、下記の評価基準により、その粘着性を評価した。
○…2N/cm2 以下
×…2N/cm2 を超える
【0061】
〔硬度1〕
上記〔表面状態1〕の場合と同様の養生を行い、養生後の表面硬度を、A型硬度計(高分子計器社製、アスカーゴム硬度計)を用いて測定した。
【0062】
〔硬度2〕
上記〔表面状態2〕の場合と同様の養生を行い、養生後の表面硬度を、上記と同様のA型硬度計を用いて測定した。
【0063】
〔引張強度〕
2液混合後、これを、型内面にテフロン(登録商標)加工を施した、縦300mm×横150mm×深さ2mmのアルミ型(離型剤は不使用、常温)に注入して成型し、23℃×7日(もしくは23℃×1日+50℃×1日)の間、養生を行うことにより、厚み2mmのシートを得た。このシートに対し、JIS−K6251に準じて引張強度(MPa)を測定した。
【0064】
〔伸び率〕
上記〔引張強度〕の場合と同様にして得られた、厚み2mmのシートに対し、JIS−K6251に準じて伸び率(%)を測定した。
【0065】
〔引裂強度〕
上記〔引張強度〕の場合と同様にして得られた、厚み2mmのシートに対し、JIS−K6252に準じて引裂強度(N/mm)を測定した。
【0066】
【表8】

【0067】
【表9】

【0068】
【表10】

【0069】
【表11】

【0070】
【表12】

【0071】
【表13】

【0072】
上記の結果から、実施例品は、いずれも、可使時間が長く、しかも7日間の養生硬化後には表面の粘着性が抑制されたものとなり、良好な仕上がりとなるとともに、強度低下を招かないことがわかる。これに対し、比較例品は、いずれも、可使時間が短すぎて手塗り作業を行うことができないか、養生硬化後に粘着性が残留するものであり、使い勝手が悪いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とするA剤と、ポリオールを主成分とし、架橋剤および充填剤を含有するB剤とを組み合わせてなるポリウレタン系組成物であって、上記A剤のポリイソシアネートが、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを50重量%以上含有するものであり、かつ上記充填剤が、pH7未満の酸性充填剤を含有するものであることを特徴とする屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材。
【請求項2】
上記B剤に含有される架橋剤が、芳香族アミン系架橋剤である請求項1記載の屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材。
【請求項3】
ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とするA剤と、ポリオールを主成分とし、架橋剤および充填剤を含有するB剤とを組み合わせてなるポリウレタン系組成物であって、上記A剤のポリイソシアネートが、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを50重量%以上含有するものであり、かつ上記架橋剤が、芳香族アミン系架橋剤であることを特徴とする屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材。
【請求項4】
上記A剤とB剤との混合液の、B型粘度計〔BH式〕によって測定される粘度(7号ロータ、20回転/分、30℃)が5000mPa・Sから50000mPa・Sに達するまでの時間が20分以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材。
【請求項5】
上記A剤とB剤とを用いた表面仕上げ材の、養生硬化後における表面粘着性が抑制されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の屋内外施設用常温硬化性表面仕上げ材。

【公開番号】特開2009−7481(P2009−7481A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170504(P2007−170504)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【Fターム(参考)】