説明

屋外用構築材及びその製造方法

【課題】 強度・耐久性に優れているばかりか、空隙部および浸透性を備え、雨水などを保水して地表の乾燥を回避するとともに気化熱による冷却効果を発揮することができ、更に、透水性にも優れた屋外用の構築部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 屋外用構造材を短径が1mm〜5mmの木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm2/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び細骨材として砂25〜35体積部、及び20〜25体積部の水を混練したものをブロック状に成型・固化してなり、空隙率を25〜35%とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外用構築材、殊に、均一な透水性、保水性及び強度を備えた屋外用構築材及その製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌のような保水機能を有する屋外用構築材が望まれており、例えば特開2001−158676号公報、特開2003−238224号公報などに提示されている。
【0003】
ところが、前記特開2001−158676号公報に提示されている屋外用構築材は、微細な連続空隙を有する軽量骨材をコンクリート固化体の表面部に連通させるものであり、保水性が低く、保水性を高めるために炭酸ガスを豊富に含んだ水溶液に浸漬させるなど複雑な工程を必要とし、安価に提供することが困難である。
【0004】
また、前記特開2003−238224号公報に提示されている屋外用構築材は、セメント、骨材、植物短繊維、水、混和剤を配合して形成するものであり、従来のコンクリート自体に物理的通路を形成したものでなく、形成材自身が保水性を有している点で優れている。
【0005】
しかしながら、前記特開2003−238224号公報に提示されている屋外用構築材は、空隙率が10〜20%程度であり、充分とは言い難い。
【特許文献1】特開2001−158676号公報
【特許文献2】特開2003−238224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、強度・耐久性に優れているばかりか、空隙部および浸透性を備え、雨水などを保水して地表の乾燥を回避するとともに気化熱による冷却効果を発揮することができ、更に、透水性にも優れた屋外用の構築部材およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた本発明である屋外用構造材は、短径が1mm〜5mmの木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm2/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び細骨材として砂25〜35体積部、及び20〜25体積部の水を混練したものをブロック状に成型・固化してなり、空隙率を25〜35%としたことを特徴とする。
【0008】
本発明である屋外用構造材は、細骨材により一層強度・耐久性に優れたものとなり、雨水などが空隙部および浸透性を備えたセメント系バインダの薄膜内部の木質細片が保水材として機能し、地表の乾燥を回避するとともに気化熱による冷却効果を発揮することができる。
【0009】
加えて、木質細片を平均粒径が1〜3mmのおが屑状の木質細片中に、短径1〜4mm、長径10〜30mmに細断された木質細長片が木質細片全体に対し25〜35体積%含まれたものとすれば、更に、強度・耐久性に極めて優れるとともに透水性に優れたものとなる
【0010】
また、本発明は、セメント系バインダは、その組成においてポルトランドセメントが90体積%以上を占めるものとすれば、安価で入手しやすく比較的短時間で固化するポルトランドセメントをバインダに用いたことで、低コスト且つ短期間で製造できるものとなる。そして、このセメント系バインダとして、ポルトランドセメントに所定の添加剤を添加することにより得たセメント系土壌硬化剤を用いるものとすれば、有機物にも親和性の高い土壌硬化剤からなるバインダ自体が木質細片表面に堅固に結合するため、少ないバインダ量でも固化後の強度・耐久性が一層優れたものとなる。
【0011】
更に、本発明である屋外用構造材の製造方法は、木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm2/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び15〜20体積部及び細骨材として砂25〜35体積部、及び20〜25体積部の水を混練したものを型枠に投入した後、振動プレスを所定時間与えて成型し、形状が安定してから型枠を取り外して所定期間被覆養生して製造するものであり、比較的簡易な工程により低廉な製造コストでムラの少ない均一な透水性と強度とを備えたものとなる。
【発明の効果】
【0012】
木質細片と細骨材とをセメント系バインダの比較的少量で成型・固化させた本発明は、25〜35%という空隙率を有し、高い多孔性材料となって良好な透水能および保水性を備えたものとなり、地表の乾燥を回避するとともに気化熱による冷却効果を発揮するなど土壌に似た性質を持った屋外用構造材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明である屋外用構造材の好ましい実施の形態の製造方法を説明するためのフローチャートを示しており、平均粒径1〜3mmのおが屑状の木質細片65〜75体積部と、短径1〜4mm、長径10〜30mmに細断された細長い木質細長片25〜35体積部とで合計100体積部前後とした木質細片、更に、平均粒径が1mm前後で最大粒径が9mm未満程度のセメントに通常混入される一般的な補強用の砂からなる細骨材25〜35体積部を加えて、ミキサに投入しこれに比表面積5000cm2/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部を加える。斯かるセメント系バインダは、所謂超早強セメント等や、所定のポルトランドセメント系土壌硬化剤をそのまま用いることができる。
【0014】
そして、ミキサを回して撹拌混合しながら15〜20体積部の水を加える。水は、天候により変動する材料の湿度に応じて量を調整し、適度な粘性を持つまで混練しながら注水する。例えば、木質細片26リットルにセメント系バインダ7.8リットルを加えた場合、通常の湿度であれば注水量は4.5リットル程度となる。
【0015】
そして、充分に混練してから型枠に投入し、振動プレスを所定時間実施してムラのないように平板状に成型する。尚、この振動プレスは通常10秒程度で充分である。このように振動を与えることで、成型・固化後に均一な多孔質体となり均一な透水性および強度を備えたものとなる。その後、形状が安定してから型枠を取り外し、所定期間被覆養生することで完成する。
【0016】
このように比較的簡易な手順で完成した屋外用構造材は、粉末度の高いセメント系バインダが木質細片表面に強力に接着して薄膜状に覆いながら木質細片同士を堅固に結合させるため、強度・耐久性に優れたものとなる。また、繊維状に細長い木質細片が立体的に絡み合い、空隙の連通性が高いものとなって極めて透水性に優れたものとなる。また、木質細片を覆って結合させるバインダに粉末度の高いセメント系バインダを比較的少量用いたことで、これが木質細片表面に対し極めて密着度の高い薄膜となるため、その膜内外において浸透性を有して木質細片内側と空隙側とで水分が出入りする。
【0017】
上述したように、本実施の形態に係る屋外用構造材は、通常は廃棄にコストを要してしまう木質廃材を細片化するだけで利用できるとともに、入手しやすく安価なセメントを主成分としたバインダを用いて、極めて簡単な手順で製造することができるため、低コストで、比重の軽い木質細片を粉末度が高く結合力の強いセメント系バインダで結合させたことに加え、補強材にもなる木質細長片を混練したことで、比重が軽くしかも強度・耐久性に優れたものとなる。
【0018】
加えて、細骨材が混入されたことで、空隙率が25〜35%となって強度・耐久性に富むものとなり、例えば、25cm×25cm×6cm程度の平板状に成型して屋外歩道用の舗装材に用いれば、雨水などで流出した有害物質を捕捉することに加え、水吸収力および保水能力に優れて水溜まりの発生を防ぐとともに、雨の少ない乾燥時には地表の乾燥を防いで植物の育成に役立つものとなる。或いは、建築物の屋上にこれを配設することで気温上昇時に水分の蒸発による気化熱で冷却効果を発揮することができるものとなる。
【0019】
尚、本発明に係る屋外用構造材の開発にあたり、本願発明者らは木質細片について様々な形状・サイズ・量を用い、また、セメント系バインダについて様々な粉末度のものを様々な割合で用いて、成型後の透水性、有害物質吸着性、強度、耐久性について試験した。その結果、上述の解決手段に示した各構成がこれらの観点において優れていたことから採用したものである。
【0020】
即ち、木質細片の短径が1mm未満になると空隙率が不充分となって透水性が大きく低下し、5mmを超えると空隙部分におけるバインダ表面の合計表面積が不充分となって保水性が低下したからである。また、細長い形状の木質細長片を木質細片全体に対し25〜35体積%としたのは、25体積%未満で空隙率が大きく低下し、35体積%を超えると水を通しすぎて吸着能が急に低下するからである。さらに、セメント系バインダは25体積部未満になると結合力が大きくに低下し、35体積部を超えると空隙率が大きく低下し、また、比表面積が5000cm2/g未満では木質細片同士の結合力が急に低下して強度・耐久性が不充分となったからである。一方、ポルトランドセメント系土壌硬化剤は、有機物を含む土壌を堅固に固化させる作用に優れている点が、木質細片表面への接着力の強さに影響したものと推定される。尚、本発明において、空隙率とは気中時空隙率を指すとともに、試料への湿潤時間を5分程度の短時間とした場合を指す。従って、空隙率測定において試料を浸水させた場合、最初の短時間で木質細片間の空隙に急速に吸水してから、その後バインダの薄膜を介して徐々に木質細片内部に水が浸透するものであるが、本発明においては最初の短時間で吸水した分を吸水量としたものである。即ち、屋外用構造材において木質細片間で形成される空隙容積の全体容積に対する割合を指しており、木質細片内の細胞壁内や細管等で形成される微小空隙まで含むものではない。また、本発明における比表面積とは、JISのセメントの物理試験方法のうち、比表面積試験:R5201による比表面積を指す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好ましい実施の形態における屋外用構造材の製造方法を示すフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短径が1mm〜5mmの木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm2/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び細骨材として砂25〜35体積部、及び20〜25体積部の水を混練したものをブロック状に成型・固化してなり、空隙率が25〜35%の屋外用構造材。
【請求項2】
前記木質細片が、平均粒径が1〜3mmのおが屑状の木質細片中に、短径1〜4mm、長径10〜30mmに細断された木質細長片が前記木質細片全体に対し25〜35体積%含まれている請求項1記載の屋外用構造材。
【請求項3】
前記セメント系バインダは、その組成においてポルトランドセメントが90体積%を占めている請求項1または2に記載の屋外用構造材。
【請求項4】
前記セメント系バインダがポルトランドセメントに所定の添加剤を添加することにより得たセメント系土壌硬化剤である請求項3に記載の屋外用構造材。
【請求項5】
木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm2/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び15〜20体積部及び細骨材として砂25〜35体積部、及び20〜25体積部の水を混練したものを型枠に投入した後、振動プレスを所定時間与えて成型し、形状が安定してから型枠を取り外して所定期間被覆養生して製造するものとしたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載した屋外用構造材の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−225259(P2006−225259A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35931(P2006−35931)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【分割の表示】特願2005−38531(P2005−38531)の分割
【原出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(593210949)小林工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】