説明

屋根構造

【課題】部材数の削減を図りつつ顧客によって異なる屋根の断熱性能に応じ得ると共に、当該屋根の断熱性能を確保した上で集熱層に対する断熱性能を備えることを可能とする屋根構造を提供する。
【解決手段】建物の屋根面を形成する屋根面形成層(1)と、該屋根面形成層(1)上に敷設されて当該屋根に要求される断熱性能を確保した断熱層(2)と、該断熱層(2)の上方に防水層(5)を備えた屋根構造において、前記断熱層(2)を、上面を平坦にして形成されると共に、当該断熱層(2)上に熱媒の流通を可能とする集熱管(3e)を備える集熱層(3)を載置したものとし、当該集熱層(3)を防水層(5)により覆う構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽熱による熱エネルギーを住宅の給湯等に利用する目的で、太陽熱集熱パネルを屋根に取り付ける太陽集熱装置が知られている。当該太陽集熱装置においては、太陽熱集熱パネルを固定するための専用瓦や柱脚等の支持部材を屋根に取り付けることが必要となるが、屋根の防水機能を確保しつつ支持部材を屋根に設置することは著しく手間となる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1や特許文献2に示す如く、集熱層の下方に当該集熱層に対する断熱性を確保する断熱層を嵌合させて一体とした集熱装置を防水層の下方に設ける構成が提案されている。また、当該特許文献の構成においては、集熱装置の断熱層のほかに屋根構成としての断熱層は記載されておらず、そうすると、当該集熱装置の断熱層に屋根の断熱性能を兼ねさせているか、または当該集熱装置の断熱層の下方に、別途屋根構成としての断熱層が存在することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−343963号公報
【特許文献2】特開平7−103577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献において、当該集熱装置の断熱層に屋根の断熱性能を兼ねさせている場合、当該屋根に要求される断熱性能を加味して集熱装置の断熱層の厚さを調整する必要があるので、集熱装置の設計当初から屋根の断熱性能を考慮する必要があり、集熱装置のコスト増に繋がる。特に、顧客の要望によって建築計画が適宜異なる注文住宅においては、顧客の注文によって住宅毎に屋根の断熱性能が異なる場合が少なくなく、そうすると、各屋根の断熱性能に対応しえる断熱層を有している集熱装置を予め複数機種準備しておくか、屋根の断熱性能を決定した後に集熱装置を製作する必要があり、生産効率の観点からも集熱装置のコスト増となる問題がある。
【0006】
また、屋根全面に亘って集熱装置を設けることは稀であり、そうすると、集熱装置を設けない部位には別途断熱層を設ける必要が生じる。すなわち集熱装置による屋根断熱と、そうでない屋根断熱の二種類の仕様を混在させることになり、生産コストが増大するのみならず、屋根の断熱施工が複雑化する虞がある。
また、水勾配を断熱層の厚さを調整することで得る陸屋根等では、当該断熱層を形成する部材が多様化する傾向があるが、当該断熱層に前記特許文献による集熱装置を取り付けるとなると、さらに多数種の集熱装置が必要となって生産効率が著しく低下するのみならず、かかる多数種の集熱装置の屋根への配備も複雑化して現場の混乱を招来することも考えられる。
【0007】
一方、前記特許文献において、当該集熱装置の断熱層の下方に、別途屋根構成としての断熱層が存在する場合には、当該部分においては断熱層が重複することとなり、建築コストや工期面での無駄となる。
【0008】
そこで、本発明は、部材数の削減を図りつつ顧客によって異なる屋根の断熱性能に応じ得ると共に、当該屋根の断熱性能を確保した上で集熱層に対する断熱性能を備えることを可能とする屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題解決のための具体的手段として、本願発明は、
(1)建物の屋根面を形成する屋根面形成層と、該屋根面形成層上に敷設されて当該屋根に要求される断熱性能を確保した断熱層と、該断熱層の上方に防水層を備えた屋根構造において、
前記断熱層は、上面を平坦にして形成されると共に、当該断熱層上に熱媒の流通を可能とする集熱管を備える集熱層を載置し、当該集熱層を防水層により覆っていることを特徴としている。
【0010】
これによれば、屋根の断熱性能は断熱層により確保されており、当該断熱層の上方に集熱層を設けることで当該集熱層に要求される断熱性能も確保される。すなわち、当該屋根の断熱層が集熱層に対する断熱層を兼ねることとなり、これによって、屋根の断熱性能を確保した上で集熱層に対する断熱も満たされ、集熱層に対する断熱性能が確保される一方、屋根の断熱性能が疎かになってしまう虞はない。また、上述の如く断熱層は屋根の断熱層として形成され、当該断熱層に集熱層が載置される構成であるので、集熱層と断熱層とは夫々独立に形成され、一方の形成の当初から他方の構成を加味する必要はなく、これによって、夫々の層形成を比較的少数種にして標準化を図ることができ、生産コスト等の削減を図ることができるばかりでなく、現場での屋根施工においても部材の選定・組立の容易化が図られることとなる。同様に、集熱層を屋根全面に敷設しない場合であっても断熱層を屋根全面に敷設することができ、別途断熱層を要することなく低コスト化が図られることとなる。
【0011】
また、上述の如く屋根の断熱層と集熱層とは夫々独立して敷設可能に形成されているため、新たに屋根を形成する新築時のみならず、屋根面形成層上に断熱層を設けている屋根構造に集熱層を設ける改築を行う場合にも、手際よく施工を行うことができる。
【0012】
(2)また、前記集熱層は、前記集熱管と、前記集熱管を収容する収容部を備える平板部とを備えるパネル状に形成されて前記断熱層上に敷設されていることが好ましい。
これによれば、集熱層はパネルを敷設するだけで形成されることとなり、集熱層形成のための集熱管工事が省略できるので施工が容易となる。
【0013】
(3)また、前記防水層は、前記集熱層に密着して設けられていることが好ましい。
防水層は直接日光を受けるために容易に表面温度が上昇する。上記構成によれば、防水層の温度を上昇させる熱の殆どを集熱層に伝達することができ、集熱効率を著しく高めることができる。
【0014】
(4)また、前記屋根面形成層が水平状に形成されると共に、前記断熱層が水勾配を有して形成されていることが好ましい。
これによれば、集熱層を、断熱層によって水勾配を確保する陸屋根に採用することができる。陸屋根は、傾斜屋根に比較して受熱時期や受熱時間について方位の影響を受け難く、かかる陸屋根に集熱層を設けることにより、建物方位に拘束される傾斜屋根に設ける場合よりも集熱機会を向上させることが可能となる。
【0015】
(5)また、上記課題解決のための他の具体的手段として、本願発明は、
建物の屋根面を形成する屋根面形成層と、該屋根面形成層上に敷設されて当該屋根に要求される断熱性能を確保した断熱層と、該断熱層の上方に防水層を備えた屋根構造において、
前記屋根面形成層は水平状に敷設され、前記断熱層は、上面を平坦にして形成されると共に水勾配を有して形成されており、当該断熱層上に熱媒の流通を可能とする集熱管を備える集熱層が載置され、前記防水層は、前記集熱層に密着した状態で前記集熱層を前記断熱層と共に覆って設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の屋根構造によれば、部材数の削減を図りつつ顧客によって異なる断熱性能に応じ得ると共に、当該屋根の断熱性能を確保した上で集熱層に対する断熱性能を備えることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】陸屋根に対して実施した本発明の第一実施形態に係る屋根構造の断面図である。
【図2】第一実施形態に係る屋根構造の要部の構成を示す斜視構成図である。
【図3】第一実施形態に係る屋根構造に使用されている集熱パネルの拡大断面図である。
【図4】第一実施形態に係る屋根構造に使用されている集熱パネルの平面図である。
【図5】第一実施形態に係る屋根構造に設けられた集熱パネルが接続されるソーラーシステムの全体構成を説明するための概略図である。
【図6】傾斜屋根に対して実施した本発明の第二実施形態に係る屋根構造の要部の概略を示す斜視構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜5を参照して、本発明に係る屋根構造を陸屋根について実施する場合の一実施形態を説明する。
図1中、Fは建物のH鋼等の構造躯体、1は該構造躯体Fに支持されて建物の略水平な陸屋根面を形成する屋根面形成層となる屋根スラブである。該屋根スラブ1は、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concreteの略))製の例えば75mm又は100mmの厚さのパネルを敷設することにより形成される。
屋根スラブ1の上面にはその全面に亘って、図1〜2に示すように、断熱材2が敷設される。該断熱材2は、屋根に要求される断熱性能と集熱した太陽熱を逃がさないための断熱性能の双方を満たすように、その材料、厚みが決定されるが、通常は建物の屋根に必要とされる断熱性能の方が高いので、屋根の断熱用として必要であった断熱材であり、集熱した太陽熱を逃がさないための断熱材は実質的には追加されていないことになる。
【0019】
上記断熱材2としては、所望の断熱性能を有するものであれば如何なる材料のものでも利用でき、また単一種の材料を使用しても複数種の材料を併用してもよいし、予め積層体として形成された材料を用いてもよい。一例では、ポリスチレン樹脂フォーム、例えばダウ化工株式会社製のスタイロフォーム(商標)のような押出法ポリスチレンフォームを使用でき、他の例では、フェノール樹脂フォーム、例えば旭化成建材株式会社製のネオマフォーム(商標)を用いることができる。
【0020】
上記屋根スラブ1は略水平であるが、降雨が雨水排水溝Wへ向かって流れるように陸屋根面に勾配を設ける必要がある。そこで、上記断熱材2にはその上面に1/100程度の勾配が設けられ、水上では厚く、水下では薄くなるように構成されるが、最薄部でも例えば80mm程度の厚みとなるようにすることで、建物の屋根に要求される断熱性能を担保しかつ後述する集熱パネルで集めた熱が下方へ逃げないようにするために十分な断熱性能を備えている。また、断熱材2に水勾配を持たせる場合、下方に一定厚さの断熱材を配し、上方に水勾配を付与した断熱材を配した2層の積層構造とすると、設備コスト、断熱性能、施工性等の観点から好ましい場合がある。一例を挙げると、屋根スラブ1の上面に当接させて厚さ60mmのネオマフォームを敷設し、その上に最薄部の厚みが25mm程度で1/100程度の水勾配を持たせたスタイロフォームを敷設することができる。
なお、住まい手が更なる断熱性能を求めている場合や、寒冷地などの更に高い断熱性能を具備させる必要がある場合には、断熱材2を適宜厚くすればよい。
【0021】
上記断熱材2の上面には、複数枚の平板状の集熱パネル3が敷設されて集熱層が形成されている。上記集熱パネル3は、例えば図3〜4に示す如く、集熱パネル3の本体となるパーティクルボード等の平板部3aと、平板部3aの一面側に連続して形成された溝部からなる収容部3bと、収容部3bに収容され、熱媒が流通させられる銅管等からなる集熱管3cと、両縁部が収容部3bの開口縁に配されて集熱管3cの収容部3bの内面側に対向する外周面を覆う熱伝導率の高いアルミテープ等からなる伝熱材3dと、平板部3aの上記一面側に被せられて収容部3bを含めてその全体を覆う熱伝導率の高いアルミ板等からなる集熱板3eを具備してなる。ここで、集熱管3cは、集熱効率が高くなるように蛇行状に配されている。伝熱材3dは、集熱管3cを通した熱移動量が多くなるように集熱管3cのほぼ全長に亘って繋がっている。また、集熱板3eの表面には、集熱管3cが収容されている位置が赤等の明色で印刷されている。
上記集熱管3c内を流通させられて集熱をなすための熱媒は、通常の水でもよいが、寒冷地や冬場での使用を考慮して一般には不凍液とされる。不凍液の種類は、その目的を達しうるならば如何なる組成のものでも構わず、例えば水とエチレングリコールの混合物からなる不凍液が利用できる。
【0022】
上記集熱パネル3は断熱材2の上面全面に亘って敷設されてもよいが、通常は上面の一部にのみ敷設され、図2に示す如く、集熱パネル3を敷設しない断熱材2の上面には、集熱パネル3と略同じ厚さの合板からなるスペーサー4が敷設される。そして、該集熱パネル3とスペーサー4が防水下地を構成し、この上に、例えば塩ビシートからなる防水シート5が密着して設けられて、防水層が形成されている。
なお、集熱パネル3を断熱材2の上面の一部に敷設する場合、断熱材2の上ならば、どこにでも自由に配置することができ、よって、屋根の最も日当たりの良い位置で、かつ集熱パネル3の熱媒を後述する蓄熱槽へ導くのに最適な位置に設置することができる。
【0023】
防水下地は太陽熱によって膨張・収縮するため、その上に防水シート5が全面接着されていると、防水下地どうしの境界面で破断する恐れがある。このため、防水シート5は、防水下地上にほぼ等間隔で並ぶ円盤6にのみに接着されている。円盤6は、防水下地及び断熱材2を貫通するネジ(不図示)等によって屋根スラブ1に固定されるが、集熱パネル3の表面の集熱板3eには集熱管3cの位置が印刷してあるので、集熱管3cを傷つけずに前記ネジ等を打つことが可能である。
【0024】
このように防水シート5は部分的な接着によって防水下地に取り付けられているが、集熱板3eの間に外気が流通する隙間がある瓦葺きと異なり、重力によって防水下地に密着しており、日光で防水シートが熱せられるとその熱は集熱パネル3の集熱板3eに直接伝わる上、熱せられる防水シート5も瓦より薄いので熱効率が極めてよい。
また、陸屋根の場合には、防水シート5を歩行に耐えられる強度として屋上を物干し場などとして利用する場合が少なくないが、防水シート5に同じものを使用して、集熱パネル3も人間の重さに耐えられる構造とすれば、集熱機能を持たない陸屋根と全く変わることなく利用でき、見た目にも違和感がない。
かかる人間の重さに耐えられる集熱パネル3としては、床暖房パネルが安価に販売されているのでこれを転用するのが最適である。床暖房パネルには、通常、耐候性が備わっていないが、本発明の屋根構造であれば、防水シート5がその上に密着して設けられるため、耐候性に問題はない。
【0025】
上記集熱パネル3は、図5に一例を示すようなソーラーシステムSに接続される。該ソーラーシステムSを流通循環する不凍液は、集熱ポンプ10の吐出側から吐出管10aを介して集熱パネル3の集熱管3cの入口部に送られ、太陽熱により加熱される。その後、集熱管3cの出口部から吸引管10bを介して蓄熱槽11内部の熱交換器に至り、集熱ポンプ10へ還流する。蓄熱槽11では、底部に水を補給する給水管11aが、上部に採湯管11bがそれぞれ接続されている。湯は、必要に応じて更に加温する補助熱源機器12と給湯管12aを介して、浴槽・洗面所14、台所15等に給湯がなされる構成とされている。なお、吐出管10a及び吸引管10bは、屋内のパイプスペースや屋根裏を経由し、屋根スラブ1に形成された貫通孔を通過させられて上記集熱パネル3の集熱管3cの入口部及び出口部に接続される。このため、配管は外部に露出することがほとんど無く、外観を損なうことがない。
【0026】
上記構成の陸屋根構造では、太陽熱が集熱パネル3に当たると、集熱管3cに流通させられる不凍液が温められ、該温められた不凍液が蓄熱槽11内の熱交換器を通る間に、蓄熱槽11内の水が熱交換により温められて湯となる。そして、浴槽・洗面所14、台所15等の湯栓が開かれると、給水管11aの給水圧力に押し出されて出湯する。このとき、貯湯槽11での加温が不十分な場合は、所望温度まで補助熱源機器12により加温される。
上記構成の陸屋根構造では、集熱パネル3が設置されている部分とそうでない部分の見分けがつかず、平坦に仕上げることができ、屋根の見栄えが良好なものとなる。また屋根の断熱性能を確保している断熱材2が集熱パネル3に対する断熱も兼ねているので、部材数が低減され、コストの削減、施工性の向上を図ることができる上に、必要十分な断熱性能が担保される。また集熱パネル3として床暖房パネルを採用することができ、集熱パネル3上を歩行可能である。
【0027】
また、断熱材2と集熱パネル3を完全に分離しているので、断熱材2の割付に関係なく集熱パネル3の配置を決定することができ、設計や施工が極めて容易である。例えば、設計面では、水勾配つきの断熱材2を排水に適した割付とするが、これに捉われることなく、受熱に最適な位置に最適な面積で集熱パネルを配置することができる。施工面では、断熱材と集熱部材が一体型のパネルであれば、屋根部位に依存する水勾配と集熱管方向の積となる多種類のパネルを選択しながら固定しなければならないところ、本発明では、まず、屋根位置によって異なる厚みであるが、集熱管方向には依存しないため、前述の一体型パネルに比べて種類が少ない軽量の勾配つき断熱材2を屋根の所定箇所に固定したのち、集熱パネル3を固定する。集熱パネル3も厚みはただ一通りで、平面形状も設計によってはただ一通りで済むため、部材選択の手間が格段に省ける。
更には、隣り合うパネルと集熱管を連結する場合、断熱材一体型パネルでは、断熱材と集熱管の双方に生産精度や施工精度が要求されるが、本屋根構造では断熱材は隙間ができない精度を、集熱パネルは集熱管が接続できる精度をそれぞれ満たしていればよく、その心配もない。
【0028】
更に本実施形態には次のような利点もある。
ひとつは、防水シート5の長寿命化である。防水シート5の劣化要因のひとつは温度上昇であるが、本発明では太陽熱で温まった防水シート5の熱を、集熱パネル3を介して集熱管3cを流れる熱媒に伝達するので、防水シート5の温度上昇が抑えられ、その耐用年数を延ばすことができる。
もうひとつは、断熱材2として発泡プラスチックを使用した場合の二次発泡の防止である。発泡プラスチック製断熱材2は、製造時に完全には発泡せず、断熱材2の現場施工後に、例えば太陽熱を受けて再び発泡して防水面が隆起することがある。稀な例ではあるが、防水シート5を一旦取り除いて発泡プラスチック製断熱材2を交換する必要が生じた場合には、その回収には大変な時間と費用がかかる。本実施形態によれば、前述のように屋根の温度上昇が抑えられるので、このような二次発泡を防止することができる。
【0029】
図6は、本発明に係る屋根構造を傾斜屋根について実施する場合の第二実施形態を示すもので、第一実施形態の場合と同様の構成、構造については、第一実施形態の場合と同じ符号を付してその説明を省略する。
図6中、20は垂木、21は垂木20上に敷設されて傾斜した屋根面形成層となる野地板である。
上記野地板21の上面には、その全面に亘って断熱材2が貼られ、該断熱材2の上面に集熱パネル3と、集熱パネル以外の部分はスペーサー4が敷設される。断熱材2は、第一実施形態の場合と同様の材料で形成することができ、またウレタンフォーム等の一般的な断熱材料でも構わない。集熱パネル3も第一実施形態の場合と同様の材料で同様の構造に形成することができる。
【0030】
集熱パネル3とスペーサー4から構成された平面より上は、一般的な木造住宅の屋根葺き工事とほぼ同様の工事がなされる。即ち、防水部材としてアスファルトルーフィング(図示省略)とスレート瓦22が葺かれる。これらもタッカーや釘で固定されるが、前述のように、集熱パネル3には赤く集熱管3cの位置が印刷されているため、集熱管3cを傷つけないようにタッカーや釘を打ち込むことが可能である。
このように、本発明によれば、建物の防水部材の下に集熱パネル3が配置されるため、一般的な太陽熱温水器のように集熱部材に耐候性を持たせる必要がないので、安価に提供することができる。その上、外観上集熱パネルを設置していない屋根と何ら変わることがなく、外観を損ねることもない。
【0031】
上記では、本発明に係る屋根構造を、戸建て住宅の陸屋根構造、傾斜屋根構造に適用した場合を説明したが、当該屋根構造は戸建て住宅のみでなく、集合住宅、商業施設や工場等、他の建築物においても採用することができる。
また、屋根面形成層、断熱槽、集熱層の各層の厚さ、利用する材料等は、建物の実情にあわせて適宜変更することができる。
更に、集熱パネルに接続するソーラーシステムは説明した形態に限定されるものではなく、例えば蓄熱槽を設けないで給水をそのまま循環加温させて利用する系に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 屋根スラブ(屋根面形成層)
2 断熱材(断熱層)
3 集熱パネル(集熱層)
3a 平板部
3b 収容部
3c 集熱管
3d 伝熱材
3e 集熱板
4 スペーサー
5 防水シート(防水層)
6 円盤
10 集熱ポンプ
10a 吐出管
10b 吸引管10b
11 蓄熱槽
11a 給水管
11b 採湯管
12 補助熱源機器
12a 給湯管
14 浴槽・洗面所
15 台所
20 垂木
21 野地板(屋根面形成層)
22 スレート瓦
F 構造躯体
W 雨水排水溝
S ソーラーシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根面を形成する屋根面形成層と、該屋根面形成層上に敷設されて当該屋根に要求される断熱性能を確保した断熱層と、該断熱層の上方に防水層を備えた屋根構造において、
前記断熱層は、上面を平坦にして形成されると共に、当該断熱層上に熱媒の流通を可能とする集熱管を備える集熱層を載置し、当該集熱層を防水層により覆っていることを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
前記集熱層は、前記集熱管と、前記集熱管を収容する収容部を備える平板部とを備えるパネル状に形成されて前記断熱層上に敷設されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
前記防水層は、前記集熱層に密着して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根構造。
【請求項4】
前記屋根面形成層が水平状に形成されると共に、前記断熱層が水勾配を有して形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の屋根構造。
【請求項5】
建物の屋根面を形成する屋根面形成層と、該屋根面形成層上に敷設されて当該屋根に要求される断熱性能を確保した断熱層と、該断熱層の上方に防水層を備えた屋根構造において、
前記屋根面形成層は水平状に敷設され、前記断熱層は、上面を平坦にして形成されると共に水勾配を有して形成されており、当該断熱層上に熱媒の流通を可能とする集熱管を備える集熱層が載置され、前記防水層は、前記集熱層に密着した状態で前記集熱層を前記断熱層と共に覆って設けられていることを特徴とする屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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